説明

パケット送受信システム

【課題】通信路を介してパケットの送受信を行うシステムにおいて、送信端末と受信端末の処理のみで、パケットロスがルータ転送とネットワーク伝送のどちらの失敗により生じているのかを切り分けることができるようにすること。
【解決手段】送信端末1のパケット送信部1−2は、単位時間当たりの送出パケット数を計測する。受信端末2のパケット受信部2−1は、単位時間当たりのパケットロス数を計測し、送信端末1へフィードバックする。パケットロス原因判定部1−3は、前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移とパケットロス数の遷移との相関度を計算し、計算した相関度からパケットロスの原因を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパケットを送受信するシステム及びパケットロス原因推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広義のインターネット(狭義のインターネット(The Internet)や企業内LAN及びNGN等を含む)は、複数のネットワークがルータにより相互接続された形態をとる。ここでネットワークの種類は多岐に渡る。例えば、有線ネットワークとしてはイーサネット(登録商標)や光ケーブルがあるし、無線ネットワークとしては802.11や広域移動体網(3G/3.5G/等)が存在する。これら種々のネットワークを相互接続しているルータは、ネットワーク間でパケットを転送する機能を有し、転送するパケットを一時貯留しておくための有限バッファを持つ。
【0003】
インターネットに接続した端末装置間でパケットを送受信する際の動作は以下の通りである。送信端末は自身が接続されたネットワークに対してパケットを送出する。当該パケットはネットワーク上を伝送され(これを以降ではネットワーク伝送と呼称する)ルータへと到着する。当該パケットはルータのバッファに一時貯留された上で、ルータにより接続された別のネットワークへと転送される(これを以降ではルータ転送と呼称する)。以上のネットワーク伝送とルータ転送を繰り返すことで、送信端末から送出されたパケットは複数のネットワークとルータを介して受信端末が接続されたネットワークへと到着する。そして、当該ネットワーク上を伝送されたパケットが受信端末へと到着することになる。しかし、送信端末から送出したパケットが受信端末へと到着せずにインターネット上で破棄される場合がある(これを以降ではパケットロスと呼称する)。このパケットロスはルータ転送とネットワーク伝送のいずれかの失敗により起きる。
【0004】
パケットロスが、ルータ転送とネットワーク伝送のどちらの失敗により起きているかを推定する方法の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1では、以下の手順によりパケットロスの原因を推定する。
【0005】
・インターネットが(送信端末+有線ネットワーク群+無線ネットワーク群+受信端末)で構成されているとする。
・有線ネットワーク群(ルータ転送の失敗によるパケットロスが生じ易い)と無線ネットワーク群(ネットワーク伝送の失敗によるパケットロスが生じ易い)との間にゲートウェイを設置する。
・ゲートウェイと受信端末のそれぞれでパケットロス率を測定した上で、それらを送信端末へとフィードバックする。
・フィードバックされた2つのパケットロス率を用いることで、受信端末側でパケットロスが有線ネットワーク群と無線ネットワーク群のどちらで生じているかを切り分ける。すなわち、有線ネットワーク群でのパケットロスはルータ転送の失敗により生じていると判定し、無線ネットワークでのパケットロスはネットワーク伝送の失敗により生じていると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3708950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1による上述した方法は、送信端末から受信端末に至る通信路の途中までのパケットロス率を計測する必要がある。このため、送信端末と受信端末との間の通信路の途中にパケットロス率を測定するための専用装置を設置する必要がある。例えば、インターネットとして狭義のThe Internetを用いる時など、インターネット内に専用装置を配置する必要がある。従って、インターネットの構成を変更できない場合は、特許文献1の手法は適用することができない。また、例えばインターネットとして社内LANを用いる時など、インターネットの構成を変更できる場合においても、特許文献1の手法では複数の専用装置をインターネット内に配置する必要があり煩雑である。
【0008】
本発明の目的は、通信路を介してパケットの送受信を行うシステムにおいて、送信端末と受信端末の処理のみで、パケットロスがルータ転送とネットワーク伝送のどちらの失敗により生じているのかを切り分けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1のパケット送受信システムは、複数のネットワークとルータから構成される通信路を介して送信端末と受信端末との間でパケットを送受信するパケット送受信システムであって、前記送信端末における単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測する第1の計測手段と、前記受信端末における単位時間当たりのパケットロス数の遷移を計測する第2の計測手段と、前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移とパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定する推定手段とを備える。
【0010】
本発明の第1のパケットロス原因推定方法は、複数のネットワークとルータから構成される通信路を介して送信端末と受信端末との間でパケットを送受信するパケット送受信システムにおけるパケットロス原因推定方法であって、a)前記送信端末における単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測するステップと、b)前記受信端末における単位時間当たりのパケットロス数の遷移を計測するステップと、c)前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移とパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定するステップとを含む。
【0011】
本発明の第1の端末装置は、複数のネットワークとルータから構成される通信路を介してパケット送信先の端末装置との間でパケットを送受信するパケット送信元の端末装置であって、単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測する第1の計測手段と、前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移と、前記パケット送信先の端末装置から受信した単位時間当たりのパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定する推定手段とを備える。
【0012】
本発明の第2の端末装置は、複数のネットワークとルータから構成される通信路を介してパケット送信元の端末装置との間でパケットを送受信するパケット送信先の端末装置であって、単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測する第1の計測手段と、単位時間当たりのパケットロス数の遷移を計測する第2の計測手段と、前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移とパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定する推定手段とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信路を介してパケットの送受信を行うシステムにおいて、送信端末と受信端末の処理のみで、パケットロスがルータ転送とネットワーク伝送のどちらの失敗により生じているのかを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態のブロック図。
【図2】単位時間当たりの送信パケット数とパケットロス数の遷移を示す図。
【図3】単相関係数による相関度導出の説明図。
【図4】本発明の第2の実施の形態のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態におけるパケット送受信システムの構成を示すブロック図である。この図1を参照して、本実施の形態のシステム構成について詳述する。
【0016】
本実施の形態のパケット送受信システムは、パケット送信元の送信端末1およびパケット送信先の受信端末2を含む。送信端末1および受信端末2は、例えば通信機能を有するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成される。送信端末1と受信端末2は、通信路3を介して接続される。通信路3は、複数のネットワークとルータから構成される。ネットワークの種類は多岐に渡る。例えば、有線ネットワークとしてはイーサネットや光ケーブルがあるし、無線ネットワークとしては802.11や広域移動体網(3G/3.5G/等)がある。
【0017】
送信端末1は、パケット生成部1−1とパケット送信部1−2とパケットロス原因判定部1−3と制御部1−4とを具備する。パケット生成部1−1は、パケットを生成する手段として機能する。パケット送信部1−2は、単位時間当たりの送信パケット数を調整しながらパケットを送信する手段として機能する。パケットロス原因判定部1−3は、単位時間当たりの送信パケット数の変動と単位時間当たりのパケットロス数の変動との相関度からパケットロスの原因がルータ転送とネットワーク伝送のどちらの失敗であるかを判定する手段として機能する。制御部1−4は、パケットロスの原因に応じてパケットロス対策を行うための制御を行う手段として機能する。
【0018】
受信端末2は、パケット受信部2−1とパケットロス数返却部2−2とを具備する。パケット受信部2−1は、パケットを受信してパケットロス数を計測する手段として機能する。パケットロス数返却部2−2は、パケットロス数を送信端末1へとフィードバックする手段として機能する。
【0019】
次に、本発明の第1の実施の形態の動作について、図1を参照しながら詳述する。
【0020】
送信端末1のパケット生成部1−1は、データを格納したパケットを生成する。データには任意のものを用いることができるが、例えば「ストリーミング映像」「VOIP音声」等が考えられる。なお、パケットを生成するにあたり、制御部1−4の指示により、パケットロス対策のための処理を行う場合もある(詳細は後述する)。パケット生成部1−1は、生成したパケットを接続1−aを通してパケット送信部1−2へと供給する。
【0021】
パケット送信部1−2は、供給されたパケットを接続3−aを通して受信端末2へと送信する。この際、パケット送信部1−2は、単位時間当たりの送信パケット数を変動させる。変動のさせ方としては、パケット生成部1−1の単位時間当たりの生成パケット数の変動を利用する方法(A)と、パケット送信部1−2が送信パケット数を故意に変動させる方法(B)の2種類がある。例えばデータとして「ストリーミング映像」をパケットに格納する場合は、方法(A)を用いることができる。この場合、当該データの圧縮に用いるコーデックの特性により、パケット生成部1−1が単位時間当たりに生成するパケット数が変動する。したがって、パケット送信部1−2は、パケット生成部1−1からパケットが供給される度に当該パケットを送信することで、単位時間当たりの送信パケット数を変動させることができる。また、例えばデータとして「VOIP音声」をパケットに格納する場合は方法(B)を用いることができる。この場合、当該データの圧縮に用いるコーデックの特性により、パケット生成部1−1が単位時間当たりに生成するパケット数は一定となることが多い。そこで、パケット送信部1−2は、パケット生成部1−1から供給されたパケットを一時的に貯留した上で送信タイミングを調整しながら送信することで、単位時間当たりの送信パケット数を変動させる。なお、パケット送信部1−2は、単位時間当たりの送信パケット数を接続1−bを通してパケットロス原因判定部1−3へと伝達する。
【0022】
受信端末2のパケット受信部2−1は、送信端末1から送信されたパケットを受信する。このとき、送信端末1が送信した全パケットがパケット受信部2−1に到着するわけではなく、いくつかのパケットは、ネットワーク伝送やルータ転送の失敗により通信路3においてパケットロスする。この単位時間当たりのパケットロス数をパケット受信部2−1は計測して接続2−aを通してパケットロス数返却部2−2へと伝達する。ここで、パケット受信部2−1でのパケットロス検出には任意の方法を用いることができる。例えば、パケットの伝送プロトコルとしてRTP(Real−Time Transport Protocol)を用いる場合には、到着するRTPパケットのシーケンス番号の不連続が生じた場合にパケットロスが起きたと判断することができる。その他にも、任意の伝送プロトコルを用いる場合であれば、送信端末1で送信パケットにシーケンス番号を任意の形式で挿入しておき、パケット受信部2−1は、当該シーケンス番号の不連続が生じた場合にパケットロスが起きたと判断する方法を採ることができる。
【0023】
パケットロス数返却部2−2は、伝達された単位時間当たりのパケットロス数を接続3−bを通して送信端末1へと定期的にフィードバックする。ここで、フィードバックの方法には任意の方法を用いることができる。例えば、データ送信部1−2から送信するパケットの伝送プロトコルとしてRTPを用いている場合は、パケットロス数返却部2−2からのフィードバックには一般的にはRTCP(RTP Control Protocol)を用いるが、このときはRTCPのRR(Receiver Report)を用いることで、パケットロス数返却部2−2から送信端末1へと定期的にパケットロス数をフィードバックすることができる。また、例えば、パケットロス数返却部2−2から送信端末1へとTCP(Transmission Control Protocol)のコネクションを常時確立しておき、当該コネクション上でHTTP(Hypertext Transfer Protocol)等の電文としてパケットロス数をフィードバックする方法も採ることができる。
【0024】
送信端末1のパケットロス原因判定部1−3は、パケット送信部1−2から供給された単位時間当たりの送信パケット数の遷移(a)と、受信端末2からフィードバックされた単位時間当たりのパケットロス数の遷移(b)とを比較することで両者の相関度を求める。この(a)と(b)の相関度が高い場合、すなわち、単位時間当たりの送信パケット数が増大したときにパケットロス数が増大して、送信パケット数が減少したときにパケットロス数が減少する場合、当該パケットロスはルータの有限バッファの溢れによるルータ転送の失敗に起因しているものと判定する。逆に(a)と(b)の相関度が低い場合、すなわち、送信パケット数の増減に関係なくパケットロスが生じている場合(例えば一定の割合でパケットロスが常時発生しているときなど)、当該パケットロスはネットワーク伝送の失敗に起因しているものと判定する。このような判定を行う理由は以下の通りである。
【0025】
(ア)後述するように、ルータ転送失敗はルータのバッファ溢れに起因する。そのため、「ルータが受信する単位時間当たりのパケット数」と「ルータ転送失敗によるパケットロスの確率」とは相関する。
(イ)一方で、ネットワーク伝送失敗は、有限バッファ溢れとは関係ないので、「ネットワークに流入する単位時間当たりのパケット数」と「ネットワーク伝送失敗によるパケットロスの確率」とは相関しない。
(ウ)ここで、前記「ルータが受信する単位時間当たりのパケット数」と「ネットワークに流入する単位時間当たりのパケット数」が、「送信側での単位時間当たりの送信パケット数」に比例するものと考えると、(ア)と(イ)とから「単位時間当たりの送信パケット数と単位時間当たりのパケットロス数との相関度が高ければ、パケットロス原因はルータ転送失敗にあり、相関度が低ければ、パケットロス原因はネットワーク伝送失敗にある」という関係を導くことができる。相関度が高いか、低いかを判別する方法としては、例えば、予め高低を切り分けるための閾値を設定しておき、相関度と閾値とを比較し、相関度が閾値を超えていれば相関度が高いと判定し、相関度が閾値を超えていなければ相関度が低いと判定することができる。
【0026】
ここで、相関度を求める方法としては任意のものを用いることが可能である。例えば、単相関係数を求めるようにしてよい。例えば、パケット送信部1−2から供給された単位時間当たりの送信パケット数の遷移(a)と、受信端末2からフィードバックされた単位時間当たりのパケットロス数の遷移(b)とが図2のようになる場合、(a)と(b)の単相関係数は図3のようにして求められ、その計算結果は0.85となる。ここで、単相関係数が1に近いほど相関度は高くなる。
【0027】
パケットロス原因判定部1−3は、判定したパケットロス要因(ルータ転送失敗、もしくは、ネットワーク伝送失敗)を接続1−cを通して制御部1−4へと伝達する。制御部1−4は、伝達されたパケットロス要因に応じて、有効なパケットロス対策のための処理を決定した上で、当該処理を行うことを接続1−dを通してパケット生成部1−1へと伝達する。パケットロスに対して有効な対策は、それがルータ転送とネットワーク伝送のいずれの失敗により生じているかにより異なる。それぞれのパケットロス対策としては種々のものを採ることができる。幾つかの例について以下に示す。
【0028】
(1)ルータ転送失敗によるパケットロス対策
まず、ルータ転送の失敗について説明する。パケットを受信したルータは、当該パケットを自身の有限バッファへと貯留する。そして、転送先ネットワークのネットワーク伝送が可能になってから、有限バッファに貯留しておいたパケットを取り出して転送先ネットワークへと送出する。ここで、転送先ネットワークがネットワーク伝送可能となるより前に次パケットを受信した場合、当該パケットも有限バッファへと貯留されることになる。このように有限バッファにパケットを受信するばかりで転送を行えない状況が続くと、有限バッファがパケットで一杯になってしまい、新たな受信パケットを有限バッファに貯留することができなくなる。その結果、受信パケットが転送されることなく破棄されてしまうようになる。以上のルータの有限バッファの溢れによるパケットロスが、ルータ転送の失敗に起因するパケットロスである。
【0029】
このルータ転送の失敗によるパケットロスを防ぐには、ルータが頻繁にパケット受信することで有限バッファを使い果たすことのないように、単位時間あたりの送信パケット数を送信端末側で減らす必要がある。つまり、パケット送信部1−2での単位時間当たりの送信パケット数を減らすことが有効である。そのためには、パケット生成部1−1での単位時間当たりの生成パケット数を減らす必要がある。これは、データの始まりから終わりまでの伝送時間に関する制約がないデータをパケットに格納する場合、データの中身は変えずにパケット生成部1−1で生成する単位時間当たりのパケット数だけを減らすことで実現できる。この場合、一連のデータの開始から終了までの全体を送信し終えるのに要する時間は増える。また、「ストリーミング映像」「VOIP音声」をデータとしてパケットに格納する場合など、一連のデータの開始から終了までの伝送時間に制約がある場合には、コーデックで圧縮する際の圧縮率を上げるなどしてデータの総量を減らすことで、パケット生成部1−1で単位時間当たりに生成するパケット数を減らす。この場合は、一連のデータの開始から終了までの全体を送信し終えるのに要する時間は変わらない。
【0030】
(2)ネットワーク伝送の失敗によるパケットロス対策
まず、ネットワーク伝送の失敗について説明する。既に述べた通り、ネットワークの種類は多岐に渡るが、ネットワーク媒体の物理的損傷や周辺環境によっては、ネットワーク伝送が常に成功するとは限らない。例えば、無線ネットワークであれば、電波状況の悪化によりネットワークリンク誤りが発生して、全パケットのうちの数パーセントものパケットがネットワーク伝送中にパケットロスすることがある。また、有線ネットワークであっても、ネットワーク媒体の物理的損傷でネットワークリンク誤りが発生して、ネットワーク伝送の成功確率が下がり、パケットロスが発生することがある。以上のネットワークリンク誤りに起因するネットワーク伝送中のパケットロスが、ネットワーク伝送の失敗によるパケットロスである。このネットワーク伝送の失敗に起因するパケットロスを防ぐには、ロスしたものとは別のパケットを用いることでデータを受信端末側で復元することができるよう、データをコピーした上で複数のパケットとして送信するなど、パケットの冗長度を上げるといった制御を送信端末側で行う必要がある。つまり、通信路3でパケットロスが生じた場合に、そのパケットに格納されていたデータを、受信端末2に到着した別のパケットを用いて復元できるようにすることが有効である。そのための手法としてFEC(Forward Error Collection)を用いることが考えられる。FECの最も単純なものは同じデータを複数のパケットにコピーして格納しておくものである。これにより、通信路3でパケットロスが生じた場合にも、受信端末2では受信した別のパケットを用いてデータを復元できる可能性が高まる。
【0031】
以上の仕組みにより、送信端末1と受信端末2の処理のみで、パケットロスがルータ転送とネットワーク伝送のどちらの失敗により生じているのかを切り分けることができる。また、本実施の形態によれば、さらに、有効なパケットロス対策を実施することが可能となる。
【0032】
[第2の実施の形態]
パケットロスの原因の判定をパケット受信する受信端末で行う形態も考えられる。図4がこの形態を示すブロック図である。この図を参照して、本発明の第2の実施の形態の構成について詳述する。
【0033】
本実施の形態のパケット送受信システムは、パケット送信元の送信端末4およびパケット送信先の受信端末5を含む。送信端末4および受信端末5は、例えば通信機能を有するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成される。送信端末4と受信端末5は、通信路6を介して接続される。通信路6は、通信路3と同様に複数のネットワークとルータから構成される。
【0034】
送信端末4は、パケット生成部4−1とパケット送信部4−2と制御部4−3とを具備する。パケット生成部4−1は、パケットを生成する手段として機能する。パケット送信部4−2は、単位時間当たりの送信パケット数を調整しながらパケットを送信する手段として機能する。制御部4−3は、パケットロスの原因に応じてパケットロス対策を行うための制御を行う手段として機能する。
【0035】
受信端末5は、パケット受信部5−1とパケットロス原因判定部5−2とを具備する。パケット受信部5−1は、パケットを受信して送信パケット数とパケットロス数とを計測する手段として機能する。パケットロス原因判定部5−2は、単位時間当たりの送信パケット数の変動と単位時間当たりのパケットロス数の変動との相関度からパケットロスの原因がルータ転送とネットワーク伝送のどちらの失敗であるかを判定して、結果を受信端末5へとフィードバックする手段として機能する。
【0036】
次に、本実施の形態の動作について、図4を参照しながら詳述する。
【0037】
送信端末4のパケット生成部4−1は、データを格納したパケットを生成する。第1の実施の形態と同様に、データには任意のものを用いることができる。なお、パケットを生成するにあたり、制御部4−3の指示により、パケットロス対策のための処理を行う場合もある。パケット生成部4−1は、生成したパケットを接続4−aを通してパケット送信部4−2へと供給する。パケット送信部4−2は、供給されたパケットを接続6−aを通して受信端末5へと送信する。この際、パケット送信部4−2は単位時間当たりの送信パケット数を変動させる。変動のさせ方は、第1の実施の形態で述べた方法と同様である。
【0038】
受信端末5のパケット受信部5−1は、送信端末4から送信されたパケットを受信する。このとき、送信端末4が送信した全パケットがパケット受信部5−1に到着するわけではなく、いくつかのパケットは、ネットワーク伝送やルータ転送の失敗により通信路6においてパケットロスする。この単位時間当たりのパケットロス数をパケット受信部5−1は計測して接続5−aを通してパケットロス原因判定部5−2へと伝達する。第1の実施の形態と同様に、パケットロス検出の方法には任意のものを用いることができる。また、パケット受信部5−1は、単位時間当たりの受信パケット数とパケットロス数とを足すことで、送信端末4が単位時間当たりに送信したパケット数を求める。パケット受信部5−1は、求まった単位時間当たりの送信パケット数を接続5−aを通してパケットロス判定部5−2へと伝達する。
【0039】
パケットロス原因判定部5−2は、パケット受信部5−1から伝達された、単位時間当たりの送信パケット数の遷移(a)と、単位時間当たりのパケットロス数の遷移(b)とを比較することで両者の相関度を求める。この(a)と(b)の相関度が高い場合、すなわち、単位時間当たりの送信パケット数が増大したときにパケットロス数が増大して、送信パケット数が減少したときにパケットロス数が減少する場合、当該パケットロスはルータの有限バッファの枯渇によるルータ転送の失敗に起因しているものと判定する。逆に(a)と(b)の相関度が低い場合、すなわち、送信パケット数の増減に関係なくパケットロスが生じている場合(例えば一定の割合でパケットロスが常時発生しているときなど)、当該パケットロスはネットワーク伝送の失敗に起因しているものと判定する。なお、第1の実施の形態で述べたとおり、相関度を求める方法および求めた相関度の高低を判別する方法には任意のものを用いることができる。
【0040】
パケットロス原因判定部5−2は、判定したパケットロス要因(ルータ転送失敗、もしくは、ネットワーク伝送失敗)を接続6−bを通して、送信端末4の制御部4−3へとフィードバックする。制御部4−3は、フィードされたパケットロス要因に応じて、有効なパケットロス対策のための処理を決定した上で、当該処理を行うことを接続4−bを通してパケット生成部4−1へと伝達する。第1の実施の形態で述べたとおり、パケットロス対策としては種々のものを採ることができる。
【0041】
以上の仕組みにより、受信端末2の処理のみで、パケットロスがルータ転送とネットワーク伝送のどちらの失敗により生じているのかを切り分けることができる。また、本実施の形態によれば、さらに、有効なパケットロス対策を実施することが可能となる。
【0042】
[その他の実施の形態]
図1に示した第1の実施の形態の構成において、パケットロス原因判定部1−3を送信端末1から受信端末2へ移した第3の実施の形態が考えられる。この第3の実施の形態では、パケット送信部1−2で計測した単位時間当たりの送出パケット数を送信端末1から受信端末2のパケットロス原因判定部1−3へ通信路3を通じて送信する。パケットロス原因判定部1−3は、パケット送信部1−2から受信した単位時間当たりの送出パケット数の変動と、パケット受信部2−1から通知された単位時間当たりのパケットロス数の変動との相関度を計算してパケットロス原因を推定し、推定結果を受信端末2から送信端末1へとフィードバックする。
【0043】
また図4に示した第2の実施の形態の構成において、パケットロス原因判定部5−2を受信端末5から送信端末4へ移した第4の実施の形態が考えられる。この第4の実施の形態では、パケット受信部5−1で計測された単位時間当たりの送出パケット数とパケットロス数が通信路6を通じて送信端末4のパケットロス原因判定部5−2に返却される。
【0044】
また上述した各実施の形態における送信端末のパケット生成部、パケット送信部、パケットロス原因判定部、制御部は、その有する機能をハードウェアにより実現することができる以外に、送信端末を構成するコンピュータとプログラムとで実現することができる。プログラムは、送信端末を構成するコンピュータのメモリに記憶され、そのコンピュータの立ち上げ時などにそのコンピュータに読み取られ、そのコンピュータの動作を制御することにより、そのコンピュータ上に、パケット生成部、パケット送信部、パケットロス原因判定部、制御部を実現する。
【0045】
また上述した各実施の形態における受信端末のパケット受信部、パケットロス数返却部、パケットロス原因判定部は、その有する機能をハードウェアにより実現することができる以外に、受信端末を構成するコンピュータとプログラムとで実現することができる。プログラムは、受信端末を構成するコンピュータのメモリに記憶され、そのコンピュータの立ち上げ時などにそのコンピュータに読み取られ、そのコンピュータの動作を制御することにより、そのコンピュータ上に、パケット受信部、パケットロス数返却部、パケットロス原因判定部を実現する。
【符号の説明】
【0046】
1…送信端末
1−1…パケット生成部
1−2…パケット送信部
1−3…パケットロス原因判定部
1−4…制御部
2…受信端末
2−1…パケット受信部
2−2…パケットロス数返却部
3…通信路
4…送信端末
4−1…パケット生成部
4−2…パケット送信部
4−3…制御部
5…受信端末
5−1…パケット受信部
5−2…パケットロス原因判定部
6…通信路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のネットワークとルータから構成される通信路を介して送信端末と受信端末との間でパケットを送受信するパケット送受信システムであって、
前記送信端末における単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測する第1の計測手段と、
前記受信端末における単位時間当たりのパケットロス数の遷移を計測する第2の計測手段と、
前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移とパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定する推定手段と、
を備えることを特徴とするパケット送受信システム。
【請求項2】
前記推定手段は、前記計算した相関度が予め定められた閾値より高ければ、パケットロスの原因はルータ転送の失敗にあると推定し、そうでなければパケットロスの原因はネットワーク伝送の失敗にあると推定することを特徴とする請求項1に記載のパケット送受信システム。
【請求項3】
前記送信端末は、単位時間当たりの送出パケット数を変動させる手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のパケット送受信システム。
【請求項4】
前記送信端末は、前記推定手段で推定されたパケットロスの原因に応じたパケットロス対策処理の実行を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のパケット送受信システム。
【請求項5】
前記第1の計測手段と前記推定手段とを前記送信端末に有し、前記第2の計測手段を前記受信端末に有し、前記第2の計測手段は計測結果を前記通信路を通じて前記推定手段へ送信することを特徴とする請求項4に記載のパケット送受信システム。
【請求項6】
前記第1の計測手段と前記第2の計測手段と前記推定手段を前記受信端末に有し、前記推定手段は推定結果を前記通信路を通じて前記制御手段へ送信することを特徴とする請求項4に記載のパケット送受信システム。
【請求項7】
複数のネットワークとルータから構成される通信路を介してパケット送信先の端末装置との間でパケットを送受信するパケット送信元の端末装置であって、
単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測する第1の計測手段と、
前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移と、前記パケット送信先の端末装置から受信した単位時間当たりのパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定する推定手段と、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項8】
複数のネットワークとルータから構成される通信路を介してパケット送信元の端末装置との間でパケットを送受信するパケット送信先の端末装置であって、
単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測する第1の計測手段と、
単位時間当たりのパケットロス数の遷移を計測する第2の計測手段と、
前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移とパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定する推定手段と、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項9】
複数のネットワークとルータから構成される通信路を介してパケット送信先の端末装置との間でパケットを送受信するパケット送信元の端末装置を構成するコンピュータを、
単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測する第1の計測手段と、
前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移と、前記パケット送信先の端末装置から受信した単位時間当たりのパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定する推定手段と、
して機能させるためのプログラム。
【請求項10】
複数のネットワークとルータから構成される通信路を介してパケット送信元の端末装置との間でパケットを送受信するパケット送信先の端末装置を構成するコンピュータを、
単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測する第1の計測手段と、
単位時間当たりのパケットロス数の遷移を計測する第2の計測手段と、
前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移とパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定する推定手段と、
して機能させるためのプログラム。
【請求項11】
複数のネットワークとルータから構成される通信路を介して送信端末と受信端末との間でパケットを送受信するパケット送受信システムにおけるパケットロス原因推定方法であって、
a)前記送信端末における単位時間当たりの送出パケット数の遷移を計測するステップと、
b)前記受信端末における単位時間当たりのパケットロス数の遷移を計測するステップと、
c)前記計測された単位時間当たりの送出パケット数の遷移とパケットロス数の遷移との相関度を計算し、該計算した相関度からパケットロスの原因を推定するステップと、
を含むことを特徴とするパケットロス原因推定方法。
【請求項12】
前記ステップcでは、前記計算した相関度が予め定められた閾値より高ければ、パケットロスの原因はルータ転送の失敗にあると推定し、そうでなければパケットロスの原因はネットワーク伝送の失敗にあると推定することを特徴とする請求項11に記載のパケットロス原因推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−233192(P2010−233192A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81602(P2009−81602)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】