説明

パターンの形成方法

【課題】 エッチングマスクの耐性を向上させ、エッチングマスクの存在により形成される凹部の被エッチング箇所寸法が25nm以下、特に20nm以下であっても当該箇所のエッチング加工が可能となるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 第1マスクおよび当該第1マスクの存在により形成された難侵入性凹部を有する基材を準備する工程と、第1マスクが形成された側から物理蒸着法により、第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を第1マスクの頂上表面全体と前記難侵入性凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成する工程と、第1マスクおよび第2マスクを介して前記基材をエッチングする工程と、を含み、難侵入性凹部の寸法は、基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を堆積させようとしたときに、第2マスク形成用材料が凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要望される凹凸の加工パターンが微細になり、凹部の加工寸法が例えば25nm以下、特に20nm以下になっても、当該凹凸パターンの形成加工を確実に行なうことができるパターンの形成方法に関する。本発明のパターンの形成方法は、例えば、半導体集積回路を備える電子部品や高密度記録媒体の製造に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は微細化、高集積化が進み、この微細加工を実現するためのパターン形成技術として種々のフォトリソグラフィ技術の開発が検討されている。近年、種々のフォトリソグラフィ技術に替わるパターン形成技術として、インプリント方法やブロックコポリマーの自己組織化の技術も注目されている。
【0003】
しかしながら、上記のいずれの技術を利用した場合においても、要求される加工パターンが微細になればなるほど、サイドエッチングの影響等でエッチングマスク耐性が不十分になり、基板のエッチング加工が困難となる場合がある。特に、凹凸パターンのサイズとしてピッチが40nm以下(凹部寸法が例えば25nm以下、特に20nm以下)ではこのような問題が顕著となる傾向が生じていた。
【0004】
すなわち、例えばインプリントモールドを用いたインプリント手法でピッチ40nm程度の凹凸の樹脂パターンを形成し、当該樹脂パターンをエッチングマスクとして被加工体をエッチング加工する場合、当該エッチングマスクの耐性が小さく、被加工体に所望の深さを加工する前にエッチングマスクが消失してしまうという問題が生じていた。
【0005】
また、例えばブロックコポリマーの自己組織化により、エッチング耐性を有する相と、エッチング耐性の低い相に相分離を生じさせることによってピッチ40nm程度の微細凹凸パターンが形成されたパターン層を形成し、エッチング耐性のあるパターン層をマスクとして残して被加工体をエッチング加工する場合においてもやはり同様な問題が生じていた。
【0006】
このような問題を解決するためにエッチング条件の改善により選択比を向上させたり、レジスト等のエッチングマスクのエッチング耐性を向上させたり、ハードマスク導入等のプロセスフロー等の変更をしたりするなどの各種のアプローチが試みられているが、いずれの場合もその効果が十分であるとは言えない。
【0007】
なお、本願発明に関連すると思われる先行技術として、下記特許文献1および特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−194170号公報
【特許文献2】特開2009−235434号公報
【0009】
特許文献1には、室温ナノインプリント法で基板の上にナノサイズのSiO2マスクパターンを形成させ、マスクパターンに隣接するSiO2インプリント残渣をRIEで除く際にパターンの線幅精度を低下させないように、微細パターンの凸部の最上面に金属膜を斜め蒸着法により形成させる技術が開示されている。しかしながら、特許文献1における凸部の最上面に形成された金属膜は、SiO2インプリント残渣を除去する際にSiO2マスクパターンを保護する膜であり、当該金属膜は、基板に微細パターンを形成する際には存在しておらず、パターン形成のためのエッチングマスクの耐性を向上させるためのものとは異なる。また、特許文献1は斜め蒸着法により凸部の最上面に金属膜を形成させているが、凹部に蒸着物を堆積させないようにするためには、凹凸パターンが基板の全面において一定の規則性がある場合以外では、適用が困難であるという問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2には、微細凹凸パターンを備えた構造体の微細凹凸パターン側を真空蒸着源に指向させた状態で対向・配置させ、その際微細凹凸パターンの凹部の一部が蒸着されるように構造体を真空蒸着源に対して所定角度だけ傾斜させ、その状態で真空斜め蒸着を施して構造体の微細凹凸パターン側にエッチングマスクを堆積・設置させ、次いで、エッチングを行い微細凹凸パターンよりもさらに細かな微細凹凸パターンを形成させる技術が開示されている。しかしながら、特許文献2では、微細凹凸パターンの凹部の一部に積極的にエッチングマスクを堆積・設置させる際、凹部における堆積するマスクの境界位置を安定させることが困難であり、パターンの精度の制御は極めて困難であると言える。さらに、特許文献2では、上記の特許文献1と同様に、凹凸パターンが基板の全面において一定の規則性がある場合以外では、適用が困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであり、その目的は、エッチングマスクの耐性を向上させ、エッチングマスクの存在により形成される被エッチング箇所の凹部寸法が例えば25nm以下、特に20nm以下であっても当該箇所の所望のエッチング加工が可能となるパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するために、本発明のパターン形成方法は、第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を主面上に有する基材を準備する工程と、前記第1マスク側から物理蒸着法により、前記第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記難侵入性凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成する工程と、前記第1マスクおよび前記第2マスクを介して前記基材をエッチングする工程と、を含み、前記第2マスクを形成する工程は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させる操作を含み、前記難侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定されるように構成される。
【0013】
また、本発明の好ましい態様として、前記難侵入性凹部の寸法は、25nm以下に設定される。
【0014】
また、本発明の好ましい態様として、前記難侵入性凹部の寸法は、6〜20nmに設定される。
【0015】
また、本発明の好ましい態様として、前記第2マスク形成用材料が、金属もしくは半導体、またはこれらの酸化物もしくは窒化物であるように構成される。
【0016】
また、本発明の好ましい態様として、自己組織化により、配列したポリマーを含有する膜をパターニングして、前記第1マスクおよび前記難侵入性凹部が形成される。
【0017】
また、本発明の好ましい態様として、ナノインプリントモールドを用いてパターニングして、前記第1マスクおよび前記難侵入性凹部が形成される。
【0018】
また、本発明の好ましい態様として、前記基材をエッチングする工程の後に、前記第1マスクおよび前記第2マスクを除去する工程が設けられる。
【0019】
本発明のモディファイされたパターン形成方法は、前記第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を主面上に有する基材を準備する工程において、難侵入性凹部に加えてさらに易侵入性凹部が形成されており、前記第2マスクを形成する工程において、前記第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料が前記第1マスクの上部面の全体と、易侵入性凹部の底部に堆積させられ、前記第1マスクおよび前記第2マスクを介して前記基材をエッチングする工程は、前記易侵入性凹部の底部に堆積した底部堆積層が除去された後、残余の前記第1マスクおよび前記第2マスクを介して行われ、前記第2マスクを形成する工程は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させる操作を含み、前記難侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定されてなるように構成される。
【0020】
前記モディファイされたパターン形成方法における前記易侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記易侵入性凹部の底面に実質的に到達できる大きさに設定されてなるように構成される。
【0021】
本発明のさらなる他のモディファイされたパターン形成方法は、前工程として、第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部を主面上に有する基材を準備する工程、難侵入性凹部を封止材料で封止する工程、および前記第1´マスクを介して前記基材をエッチングする工程が行われ、しかる後、上記本発明の要部工程が行われるパターン形成方法であって、前記第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を主面上に有する基材を準備する工程において、難侵入性凹部に加えてさらに易侵入性凹部が形成され、前記第2マスクを形成する工程において、前記第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料が前記第1マスクの上部面の全体と、易侵入性凹部の底部に堆積させられ、前記第2マスクを形成する工程は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させる操作を含み、前記難侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定されてなるように構成される。
【0022】
前記さらなる他のモディファイされたパターン形成方法における前記易侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記易侵入性凹部の底面に実質的に到達できる大きさに設定されてなるように構成される。
【0023】
前記さらなる他のモディファイされたパターン形成方法における好ましい態様として、前記第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部、並びに前記第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部は、それぞれ、同一のナノインプリントモールドを用いてパターニングすることにより形成されるように構成される。
【0024】
前記さらなる他のモディファイされたパターン形成方法における好ましい態様として、前記封止材料は、第1´マスク材料と同一材料から形成されるように構成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明のパターン形成方法は、第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を主面上に有する基材を準備する工程と、前記第1マスク側から物理蒸着法により、前記第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記難侵入性凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成する工程と、前記第1マスクおよび前記第2マスクを介して前記基材をエッチングする工程と、を含み、前記第2マスクを形成する工程は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させる操作を含み、前記難侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定されているので、エッチングマスクの耐性を向上させることができ、エッチングマスクの存在により形成される難侵入性凹部の被エッチング箇所寸法が例えば25nm以下、特に20nm以下であっても当該箇所のエッチング加工ができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1(a)〜(c)は、それぞれ、インプリント方法を用いた本発明のパターン形成方法の一例を経時的に示した概略断面図であり、難侵入性凹部のみが存在する場合の実施形態である。
【図2】図2(a)〜(d)は、図1から連続する本発明のパターン形成方法の一例を経時的に示した概略断面図であり、難侵入性凹部のみが存在する場合の実施形態である。
【図3】図3は、円柱ピラーを正方形ピッチ配列した平面図である。
【図4】図4は、円柱ピラーを正三角形ピッチ配列した平面図である。
【図5】図5は、正四角柱ピラーを正方形ピッチ配列した平面図である。
【図6】図6は、正四角柱ピラーを正三角形ピッチ配列した平面図である。
【図7】図7(a)〜(e)は、ブロックコポリマーの自己組織化法を用いた本発明のパターン形成方法の一例を経時的に示した概略断面図である。
【図8】図8は、第1マスクの形状が半球に近い椀形状をなしている場合の、1マスクの上部面の定義および難侵入性凹部の側面の定義を説明するための図面である。
【図9】図9(a)〜(c)は、それぞれ、インプリント方法を用いた本発明のパターン形成方法の一例を経時的に示した概略断面図であり、難侵入性凹部に加えて易侵入性凹部が存在する場合の実施形態である。
【図10】図10(a)〜(d)は、図9から連続する本発明のパターン形成方法の一例を経時的に示した概略断面図であり、難侵入性凹部に加えて易侵入性凹部が存在する場合の実施形態である。
【図11】図11(a)〜(e)は、それぞれ、インプリント方法を用いた本発明のパターン形成方法の一例を経時的に示した概略断面図であり、難侵入性凹部に加えて易侵入性凹部が存在する場合の実施形態である。
【図12】図12(a)〜(g)は、図11から連続する本発明のパターン形成方法の一例を経時的に示した概略断面図であり、難侵入性凹部に加えて易侵入性凹部が存在する場合の実施形態である。
【図13】図13は、図11〜図12に示されるパターン形成方法において、難侵入性凹部の配置間隙と、易侵入性凹部を形成するエリアとの関係を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明は以下に説明する形態に限定されることはなく、技術思想を逸脱しない範囲において種々変形を行なって実施することが可能である。また、添付の図面においては、視認可能な状態で説明するために上下、左右の縮尺を誇張して図示することがあり、実際のものとは縮尺が異なる場合がある。
【0028】
本発明のパターン形成方法は、基材の表面をエッチングして凹凸パターンを形成する方法であって、第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を有する基材を準備する工程と、前記第1マスク側から物理蒸着法により、前記第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記難侵入性凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成する工程と、前記第1マスクおよび前記第2マスクを介して前記基材をエッチングする工程と、を含んで構成される。
【0029】
そして、このような工程を含む本発明において、前記第2マスクを形成する工程は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛ばせて堆積させる操作を含んで構成されており、上記の凹部の寸法は、基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により第2マスク形成用材料を堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定される。なお、以下に示す2つの実施形態は、全ての凹部が難侵入性凹部から形成されている場合を例示している。
【0030】
以下、各工程毎に詳細に説明する。
上記の第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程において、第1マスクの形成およびそれに伴なう難侵入性凹部の形成の好適な方法として、いわゆるナノインプリントモールドを用いるナノインプリント法や、ブロックコポリマーやポリマーブレンド等の自己組織化法を挙げることができる。前者を第1の実施形態、後者を第2の実施形態として取り挙げて以下に説明するが、これらに限定されるものではなく、EBリソグラフィ法やフォトリソグラフィ法を用いるようにしてもよい。
【0031】
〔第1の実施形態〕
<第1マスクの存在により凹部を有する基材を準備する工程>
第1の実施形態においては、ナノインプリント法を用いて、第1マスクおよび当該第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程が行われる。
【0032】
ナノインプリント方法として、例えば、光ナノインプリント方法や熱ナノインプリント方法が知られているが、ここでは光ナノインプリント方法を一例として取り挙げて説明する。
【0033】
光ナノインプリント方法では、例えば、図1(a)に示されるように、基材であるナノインプリント用の基材7(基材を基板と称す場合もある)の表面7aに被転写物として光硬化性の樹脂材料5が供給・配設される。樹脂材料5を供給する手段としては、ディスペンサ方式やインクジェット方式等を挙げることができる。また、図示の例では、樹脂材料5の液滴が複数個示されているが、樹脂材料5の液滴の数、滴下位置は適宜設定することができ、さらに液滴の量も個々に異なるようにしてもよい。また、スピンコート等により、基材7の表面7aに光硬化性の樹脂材料5を一様な膜として形成してもよい。また、上記の例に限らず、樹脂材料は、基材7側ではなくモールド1側に配設するようにしてもよい。
【0034】
インプリント用の基材7は、例えば、石英やソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス、シリコンやガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基板、金属基板、あるいは、これらの材料の任意の組み合わせからなる複合材料基板であってよい。
【0035】
また基材7は必ずしも平坦である必要はなく、予め所定の構造を有していてもよい。例えば、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等の所望のパターン構造物が形成されたものであってもよい。ただし転写の際、それらの構造が転写の阻害とならないよう、モールド1の形状を考慮したり、モールド1が有する凹凸構造とは緩衝しないよう配置するか、または例えばパターン構造体の凹部に材料を充填して平坦化するなど転写方法を考慮することが好ましい。
【0036】
図1(a)に示されるように、インプリント用の基材7に対向するようにモールド1が配置、準備される。モールド1の面1aは、転写すべき構造である凹部2を有する凹凸構造領域A1と、転写すべき凹凸構造が形成されていない非凹凸構造領域A2から構成されている。なお、図面では転写すべき構造が、非凹凸構造領域A2に対して凹状となっているが、転写すべき構造は凸状であってもよいし、凹凸の両方を含んでいてもよい。
【0037】
モールド1の材質は適宜選択することができるが、樹脂材料5が光硬化性である場合には、樹脂材料5を硬化させるための照射光が透過可能な透明基材を用いて形成され、例えば、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等のガラスや、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂等、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。ただし、基材7が照射光を透過可能である場合にはモールド1は必ずしも透明基材である必要はなく、例えばニッケル、チタン、アルミニウムなどの金属、シリコンや窒化ガリウム等の半導体などを用いてもよい。
【0038】
モールド1の厚さは凹凸構造の形状、基材の強度、取り扱い適性等を考慮して設定することができ、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定することができる。また、モールド1は、凹凸構造領域A1全体が非凹凸構造領域A2に対して凸構造となっている、いわゆるメサ構造としてもよい。メサ構造の段数の数も1段に限らず、複数段としてもよい。
【0039】
次いで、図1(b)に示されるように、配設された樹脂材料5に所望の凹凸構造を有するモールド1の面1aを接触させる。被転写物である樹脂材料5は、樹脂材料5の粘度にもよるが、毛管現象によってモールド1の凹凸構造内に充填される。また必要に応じて、モールド1又は基材7を対向する他方の面側に押圧して、凹凸構造内への被転写物の充填をアシストするようにしてもよい。このようにして樹脂材料5を介してモールド1と基材7を接触させた状態において、樹脂材料5は凹凸構造を有する樹脂層となり、当該樹脂層に対して紫外線照射が行なわれることによって、樹脂材料5が硬化される(いわゆる樹脂硬化工程)。
【0040】
しかる後、図1(c)に示されるように、インプリント用の基材7とモールド1との間隙距離を広げるように引き剥がし力を作用させて樹脂層5´からモールド1を引き離す剥離工程が行なわれる。引き離し操作の際、モールド1側および基材7側のいずれか一方、あるいは両方から引き離しのための力を加えてもよい。
【0041】
モールド1側に引き離しの力を加える場合、樹脂層5´に均一に力を加えてもよいが、より引き離しを容易にするために樹脂層5´に不均一に力を加えるのが好ましい。樹脂層5´に不均一に力を加えることで、剥離の開始点を作ることができ、それを起点としてスムーズな剥離が行えるからである。
【0042】
樹脂層5′からモールド1を引き離すことにより、モールド1が有する凹凸構造が反転した凹凸構造を有する樹脂層5′がインプリント用の基材7に転写される。なお、樹脂材料5は、図1(b)に示されるモールドの押し込み工程の際に、全てモールド1の凹部に収納されるわけではなくて、余剰分が基材7の表面7a上に残膜(あるいは残渣)として存在する。
【0043】
このようにして、図1(c)に示されるように、第1マスクおよび当該第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を有する基材を準備する工程が完了する。凸構造を有する樹脂層5′が第1マスクに該当し、凸構造を有する樹脂層5′(第1マスク)の存在により難侵入性凹部6が形成される。なお、残膜の除去処理を行なうことによって、第1マスク5′および当該第1マスク5′の存在により形成される難侵入性凹部6を有する基材を準備する工程を完了するようにしてもよいが、この時点での残膜の除去処理は、第1マスクの高さを減少させるように作用するので、残膜の除去処理は、後述する第2マスク形成後とすることが望ましい。
【0044】
なお、図2(a)は、基材7の上に形成されている樹脂層5′(残膜を含む)の形成状態を示したものであり、図1(c)における基材7の上に形成されている樹脂層5′(残膜を含む)の形成状態と同じものである。ただし、後述する本発明の要部の説明をわかりやすくするために、図2(a)において、残膜の記載は省略してあることに留意されたい。
【0045】
本発明において、上記難侵入性凹部6の寸法設定は特に重要であり、難侵入性凹部6の寸法Wrは、後述するように基材7の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛ばせて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が難侵入性凹部6の底面に実質的に到達できない大きさに設定される。ここで言う、「実質的に到達できない」とは、後工程で難侵入性凹部6の底面をドライエッチング加工を施した場合において、難侵入性凹部6の底面がきれいに加工できる場合は、実質的に到達できない大きさのレベルとして許容される。より具体的には、難侵入性凹部6の底面にまったく第2マスク形成用材料が存在していないことは勿論のこと、仮に、難侵入性凹部6の底面に第2マスク形成用材料が島状に分散している場合や、難侵入性凹部6の底面に薄く一層成膜されている場合であっても、後工程で凹部6の底面をドライエッチング加工を施した場合において、難侵入性凹部6の底面がきれいに加工できる場合は、実質的に到達できない大きさのレベルとして許容される。
【0046】
難侵入性凹部6の寸法Wrは、基材の主面に対して垂直に成膜を行うことを大前提にして決定され得るが、飛行する成膜粒子の大きさや、難侵入性凹部6を構成する幅に対する高さの比であるアスペクト比等が影響を及ぼすことがある。例えば、飛行する成膜粒子の大きさが大きくなれば許容できる難侵入性凹部6の寸法Wrはわずかではあるが大きくなる傾向にある。またアスペクト比が大きくなれば、許容できる難侵入性凹部6の寸法Wrはわずかではあるが大きくなる傾向にある。また、物理蒸着法であっても、例えば、スパッタ法と真空蒸着法との成膜方法の違いによっても許容できる難侵入性凹部6の寸法Wrは異なる傾向にある。すなわち、スパッタ法は、真空蒸着法と比較して、微細パターンの難侵入性凹部6への成膜がされにくく、許容できる難侵入性凹部6の寸法Wrはわずかではあるが大きくなる傾向にある。スパッタ法はターゲットへのイオン衝撃や、残留ガスとの衝突によって飛行時の原子散乱によって、パターンへの回り込みが大きくなるからである。このような観点から、本発明ではスパッタ法を用いることが好ましい。
【0047】
難侵入性凹部6の底面まで飛行する成膜粒子を到着させないように作用させる寸法Wrの具体的な数値レベルを示すと、Wrは25nm以下、特に20nm以下、好ましくは6〜20nm、さらに好ましくは6〜15nmとされる。
【0048】
第1マスク5′の存在により形成される難侵入性凹部6のパターン態様に応じた難侵入性凹部6の寸法Wrの定め方について、以下、考察しておく。
【0049】
第1マスク5′の存在により形成される難侵入性凹部6のパターンの種類としては、例えば、(1)複数のホールが所定の位置に配列配置された密集ホールや、1つのホールからなる孤立ホール、(2)いわゆるラインアンドスペースとして一定ピッチに配列された複数の長溝形状の凹部や、一個のみからなる長溝形状の凹部である孤立溝(3)いわゆる凸部構造のピラーを複数個、配列・配置したいわゆる密集ピラーを形成したことにより生じる凹部パターン等が挙げられる。これらの中では、特に上記の(2)および(3)の態様を本発明の対象とすることが好ましい。これらの特定された態様は、エッチャントに晒される面積が大きく、微細パターンのエッチング耐性がもともと小さいため、本発明の効果が顕著となるためである。
【0050】
上記(1)のホールを備える態様では、平面視でホール内に内接できる円の中で最大の径をWrとして選定することが原則となる。例えば、平面視で円のホールを備える態様では、難侵入性凹部6の寸法Wrとしては直径の長さを選べばよい。また、平面視で楕円形のホールを備える形態では、難侵入性凹部6の寸法Wrとして短軸の長さを選べばよい。また、平面視で正多角形あるいは不定形多角形のホールを備える形態では、平面視でホール内に内接できる円の中で最大の径をWrとして選定すればよい。同様に、平面視でまったくの不定形のホールを備える形態では、平面視でホール内に内接できる円の中で最大の径をWrとして選定すればよい。また、種々の異なる大きさのホールが複数存在している場合には、最も大きな値を有するWr値を難侵入性凹部6の寸法Wrとして定めるようにすればよい。
【0051】
上記(2)の長溝スペースを備える態様では、溝の幅(長溝方向に対して直角方向)を難侵入性凹部6の寸法Wrとして定めればよい。これもまた、上記(1)のホールを備える態様と同様に平面視でホール内に内接できる円の中で最大の径をWrとして選定するという上記の原則に基づくものである。
【0052】
上記(3)の密集ピラーを形成したことにより生じる凹部のパターンを備える態様については、平面視において複数のピラーからなる凸部パターンの側面に外接するように配置した円の中で最大径の円の直径dを難侵入性凹部6の寸法Wrとして定めることが原則となる。
【0053】
規則性のある配置である(A)正方格子配置(正方形ピッチ配列)の場合と(B)最密充填配置(正三角形ピッチ配列)の場合を例にとって説明する。
【0054】
図3は、複数の円柱ピラーを正方格子配置(正方形ピッチ配列)したものであって、説明の便宜上、隣接する4つの円柱ピラーを選定して示した平面図である。この場合、上記の原則に基づき複数のピラーからなる凸部パターンの側面に外接するように配置した円の直径dを難侵入性凹部6の寸法Wrとして定めればよい。正方格子配置(正方形ピッチ配列)の場合、図示される円の直径dは、原則としてどこで測定されても同じであり最大径に該当する。
【0055】
図4は、複数の円柱ピラーを最密充填配置(正三角形ピッチ配列)したものであって、説明の便宜上、隣接する3つの円柱ピラーを選定して示した平面図である。この場合、上記の原則に基づき複数のピラーからなる凸部パターンの側面に外接するように配置した円の直径dを難侵入性凹部6の寸法Wrとして定めればよい。最密充填配置(正三角形ピッチ配列)の場合、図示される円の直径dは、原則としてどこで測定されても同じであり最大径に該当する。
【0056】
また、図5は、複数の正四角柱ピラーを正方格子配置(正方形ピッチ配列)したものであって、説明の便宜上、隣接する4つの正四角柱ピラーを選定して示した平面図である。この場合、上記の原則に基づき複数のピラーからなる凸部パターンの側面に外接するように配置した円の直径dを難侵入性凹部6の寸法Wrとして定めればよい。正方格子配置(正方形ピッチ配列)の場合、図示される円の直径dは、原則としてどこで測定されても同じであり最大径に該当する。
【0057】
また、図6は、複数の正四角柱ピラーを最密充填配置(正三角形ピッチ配列)したものであって、説明の便宜上、隣接する3つの正四角柱ピラーを選定して示した平面図である。この場合、上記の原則に基づき複数のピラーからなる凸部パターンの側面に外接するように配置した円の直径dを難侵入性凹部6の寸法Wrとして定めればよい。最密充填配置(正三角形ピッチ配列)の場合、図示される円の直径dは、原則としてどこで測定されても同じであり最大径に該当する。
【0058】
上記の具体例の説明は、規則性のある配置例の場合であったが、規則性のない不規則配置(ランダム配置)の場合であっても、上記の原則に従って難侵入性凹部6の寸法Wrを求めればよい。すなわち、平面視において複数のピラーからなる凸部パターンの側面に外接するように配置した円の中で最大径の円の直径dを難侵入性凹部6の寸法Wrとして定めればよい。また上記例の正四角柱ピラーや円柱ピラーが形態を変えて、平面視で他の定形あるいは不定形のピラーとなったとしても、上記の原則に従って難侵入性凹部6の寸法Wrを求めればよい。
【0059】
図2(a)〜図2(d)を参照しつつ、さらに製造方法の説明を行う。
<第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に第2マスクを形成する工程>
図2(b)に示されるように、第1マスク5´よりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記難侵入性凹部6の側面6aに周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスク9を形成する工程が行われる。
【0060】
なお、本発明における「周状に」とは、難侵入性凹部6の側面6aをぐるりと一周するように配設された状態をいう。さらに付け加えるならば、第1マスクの所定の位置における平面視において、難侵入性凹部6の側面の全面を囲むように第2マスクが被覆されている状態をいう。
【0061】
本実施の形態の場合、第1マスク5′の凸部形状は比較的明瞭な断面矩形形状から構成されているために、上部面とは、凸状の第1マスク5´の略平坦な頂部5aが該当する。難侵入性凹部6の側面6aとは、凸状の第1マスク5´の略平坦な頂部の周縁5bから垂下する面6aが該当する。第1マスク5´の上部面5aに形成される第2マスク9の部分を第2マスク上部9aと称し、第1マスク5´の側面に相当する難侵入性凹部6の側面6aに形成される第2マスク9の部分を第2マスク側部9bと称す。
【0062】
凸状の第1マスク5´の略平坦な上部面(頂部)5aの上に成膜される第2マスク上部9aの厚さt1は、例えば0.5〜3nm程度とされる。この値が例えば0.5nm未満となると第2マスク形成によるエッチング耐性を向上させることが困難となる傾向が生じ、この厚さが例えば3nmを超えて成膜時間が長くなり過ぎると、難侵入性凹部が閉じてしまうおそれが生じる傾向ある。
【0063】
なお、難侵入性凹部6の側面6aの上から下までの全面に第2マスク形成用材料を堆積させて第2マスク側部9bを形成することが理想ではあるが、本発明ではそこまでの構成は必要とされない。すなわち、難侵入性凹部6の側面6aの上端5b(凸状の第1マスク5´の略平坦な頂部5aの周縁5bと同じ)から下方(基材7側)に向かう一部分に第2マスク形成用材料を堆積させて第2マスク側部9bを形成すればよい。そして、難侵入性凹部6の側面6aの全面の面積をS1とした場合、凹部6の側面6aに堆積される第2マスク側部9bの面積割合は、(0.3〜1.0)S1の範囲、より好ましくは(0.5〜1.0)S1の範囲とすることが望ましい。第1マスク5´の側面におけるサイドエッチング耐性を向上させるためである。
【0064】
なお、第2マスク側部9bの第2マスク形成用材料の堆積量は、難侵入性凹部6の側面6aの上端5bの部分が最も多く、下方(基材7側)に向かうにつれて漸減する傾向がある。
【0065】
第2マスク形成用材料としては、例えば、金属、金属酸化物、もしくは金属窒化物、または半導体、半導体酸化物、もしくは半導体窒化物から構成されることが好ましい。具体的には、Cr、Al、Si、Ta、Ti、Ag、Au、Co、Cu、Ni、Pd、Pt、およびMoのグループから選択された少なくとも1種、あるいは、これらのグループの元素の窒化物または酸化物等を挙げることができる。ただし、前述のごとく第2マスク形成用材料は、第1マスク5´よりも高いエッチング耐性を有することが必要であり、第1マスク5´の材料および具体的エッチング手法を考慮しながら適宜選定するようにすればよい。
【0066】
本発明における当該工程では、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとする操作を備えている。本発明における基材の主面に対して垂直とは、±10°の誤差範囲を許容するものであるが好ましくは±5°の範囲内が好ましい。物理蒸着法としては、各種のスパッタ法(コンベンショナル・スパッタリング、マグネトロン・スパッタリング、イオンビーム・スパッタリング、ECRスパッタリングなど)や、各種の蒸着法(真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着など)を例示することができる。
【0067】
また、これらの中ではスパッタ法が特に好ましい。スパッタ法では真空蒸着法と比べてターゲットのイオン衝突や残留ガスとの衝突によって飛行時の原子散乱によりパターンの回り込みが大きくなるため、微細パターンの底部への成膜がされにくいからである。
【0068】
本発明における当該工程では、上述したように第2マスク形成用材料を前記第1マスク5´の上部面5aの全体と難侵入性凹部6の側面6aに周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスク9を形成する操作が行われる。この際、難侵入性凹部6の底面6bには第2マスク形成用材料からなる成膜は実質的にされない。上述したように、難侵入性凹部6の寸法Wrは、後述するように基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部6の底面6bに実質的に到達できない大きさに設定されているからである。このように当該工程を要望通りに実行させるには、難侵入性凹部6の寸法Wrの設定が的確に行われていること、および垂直に成膜を行うことが重要であり、さらに必要であれば成膜時間の調整を行なうようにすればよい。
【0069】
<第1マスクおよび前記第2マスクを介して基材をエッチングする工程>
次いで、図2(c)に示されるように前記第1マスク5′および前記第2マスク9を介して基材7をエッチングする工程が行われる。
【0070】
すなわち、第1マスク5′の上に第2マスク9からなる薄膜を被着させた凸部をマスクとして難侵入性凹部6をエッチングすることで基材7の表面に難侵入性凹部6の底部寸法に相当する微細な凹部11が形成される。なお、上記の第1マスクをナノインプリント法により形成する場合には、通常、難侵入性凹部6の底面6bには残膜が存在しているので、当該残膜を酸素プラズマ処理(アッシング処理)等によって除去した後に、本工程である基材7をエッチングする工程を行うことが好ましい。
【0071】
基材7をエッチングするには、通常、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることが望ましい。
【0072】
基材7をエッチングするためのエッチングガスの選定は、例えば、基材7の材質を基本にして耐エッチング性に優れる第2マスク9の材質を考慮しつつ、エッチングの選択比が大きくなるような組み合わせを適宜選定するようにすればよい。例えば、基材7の材質が石英である場合には、第2マスクの材質をCrとし、エッチングガスを四フッ化炭素(CF4)とすることが好ましい。また、基材7の材質がシリコンである場合には、第2マスクの材質をSiO2とし、エッチングガスを臭化水素(HBr)とすることが好ましい。
【0073】
図2(d)に示されるようにエッチング可能な基材7の凹部11の深さDpは、第1マスク5´および第2マスク9のエッチング耐性等により定まるものであるが、本発明ではエッチング耐性に優れる第2マスク9を設けているために、凹部11の深さDpは、例えば20nm程度に至るまで可能とされる。
【0074】
<第1マスクおよび第2マスクを除去する工程>
上述のごとく基材7をエッチングした工程の後に、第1マスク5´および第2マスク9を除去する工程が設けられ、図2(d)に示される状態に至る。これによって所望のパターンの凹部11が形成された基材7を得ることができる。
【0075】
このような所望のパターンが形成された基材7は、例えば、半導体集積回路を備える電子部品や高密度記録媒体の製造に適用することができる。
【0076】
〔第2の実施形態〕
図7を参照しつつ第2の実施形態を説明する。
<第1マスクの存在により凹部を有する基材を準備する工程>
上記の第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程において、第1マスクの形成およびそれに伴なう凹部の形成方法として、ブロックコポリマーの自己組織化法、すなわち、ブロックコポリマーの自己組織的な相分離構造を利用する方法が用いられる。
【0077】
本実施の形態では、自己組織的な相分離作用を奏するブロックコポリマーの好適な一例として、1つの有機ブロックとしてポリスチレン(PS)および1つの無機ブロックとしてポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むポリスチレン(PS)−ポリジメチルシロキサン(PDMS)ブロックコポリマーを取り挙げて説明する。なお、ポリジメチルシロキサン(PDMS)は有機成分であるポリスチレン(PS)と比較して例えば酸素プラズマに対して良好な耐性を有する。
【0078】
図7(a)に示される状態に至る前の前段階として、ブロックコポリマーおよびこの成分を溶解させる溶媒を含んでなる組成物が基材7の上に塗布され組成物層が形成される。組成物を塗布する方法としてはスピンコート法、ディップ法、スプレー法等いずれであってもよい。
【0079】
次いで、組成物層を加熱処理することによって、図7(a)に示されるようにブロックコポリマーの自己組織化を図り、例えば略球状に形成されたポリジメチルシロキサン(PDMS)を主成分とするエッチング耐性を備える第1ポリマー相21(PDMS)と、第1ポリマー相21よりもエッチング耐性の低いポリスチレン(PS)を主成分とする第2ポリマー相25(PS)との相分離された構造が形成される。なお、本実施形態において、エッチング耐性を有する第1ポリマー相21は略球形状をなしているが、必ずしも球形状に限定されるわけではない。
【0080】
本実施形態における第1ポリマー相21は基材7の平面上で、例えば所定ピッチに配列された規則配列構造の形態をとり、通常、最密充填の配置(正三角形ピッチ配列)である六方格子状に近い形態に配列される。
【0081】
次いで、基材7上において2相に分離している組成物層を酸素プラズマ等の反応性エッチング(RIE)により、エッチング処理することにより、基材7の上に、第1ポリマー相21が存在していた位置を中心としてパターン化された椀状の第1マスク30が形成される。第1マスク30は、図7(b)に示されるごとくポリジメチルシロキサン(PDMS)を主成分とするエッチング耐性を有する第1ポリマー相21を頂部に残し、その下部周辺にポリスチレン(PS)を主成分とする第2ポリマー相25が残存した椀形状をなしている。
【0082】
そして、隣り合う椀状の第1マスク30の間隙に難侵入性凹部6が存在する。
【0083】
なお、本発明における第1マスクの凸部のパターン形成およびそれに伴なう凹部形成方法は、上記のポリスチレン(PS)−ポリジメチルシロキサン(PDMS)ブロックコポリマーの使用に限定されることなく、他のブロックコポリマーの自己組織的な相分離構造を利用することもできる。
【0084】
例えば、ブロックコポリマー、ケイ素化合物、およびこれらの成分を溶解させる溶媒を含んでなる組成物を基材7に塗布して組成物層を形成した後に、組成物層を加熱処理することによって、ブロックコポリマーの自己組織化を図り、ケイ素化合物が偏在したエッチング耐性を有する第1ポリマー相21と、第1ポリマー相21よりもエッチング耐性の低い第2ポリマー相25との相分離された構造を形成するようにすることもできる。この場合、用いられるケイ素化合物としては、ブロックコポリマーの第1の成分と第2の成分のうち、第1の成分とケイ素化合物とが親和性であり、かつ、第2の成分とケイ素化合物とが非親和性であるものが好ましく用いられる。
【0085】
また、ブロックコポリマーを相分離させて第1ポリマー相と第2ポリマー相を最初に形成させておき、しかる後、これらのいずれか一方のポリマー相に選択的に、ケイ素化合物等の微小粒子を吸着させて、一方のポリマー相のエッチング耐性を向上させるようにすることもできる。
【0086】
ここで、ブロックコポリマーの自己組織化法について、一般的な説明を加えておく。
【0087】
ブロックコポリマーとしては、熱処理によって自己組織的に相分離化の性能を有するコポリマーが用いられるのであって、好適例として、2種類のポリマー鎖AとBとが結合したA−B型の「ジブロックコポリマー」を挙げることができる。
【0088】
このようなA−B型のジブロックコポリマーとしては、ポリスチレンーポリジメチルシロキサン、ポリスチレン−ポリイソブテン、ポリスチレン−イソプレン、ポリジメチルシロキサン−ポリイソブテン、ポリスチレン−ポリエチレンオキシド、ポリスチレン−ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリ(シアノビフェニルオキシ)ヘキシルメタクリレート、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン−ポリメタクリル酸、ポリエチレンオキシド−ポリビニルピリジン、ポリスチレン−ポリビニルピリジン、ポリイソプレ−ポリヒドロキシスチレン、などが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0089】
また、これ以外に、2種類のポリマー鎖がA−B−A型に結合したものや、3種類のポリマー鎖がA−B−C型に結合した「トリブロックコポリマー」も用いられ得る。
【0090】
2種類のポリマー鎖がA−B−A型に結合したコポリマーとしては、例えば、上記のA−B型のジブロックコポリマーの一方成分が他方成分の末端にさらに結合した構造が挙げられる。
【0091】
規則配列構造を構成する第1ポリマー相21と第2ポリマー相25の形状およびサイズは、例えば、ブロックコポリマーを構成する各ブッロクのポリマー鎖(A、BおよびC)の長さ(分子量)等に依存し、これらを調整することによって、微細なサイズのパターンを形成することができる。また、相分離に際しては、球状、ラメラ状、シリンダ状等の所望の形状制御も可能である。
【0092】
<第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に第2マスクを形成する工程>
次いで、図7(c)に示されるように、第1マスク30よりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を前記第1マスク30の上部面の全体と前記難侵入性凹部6の側面6aに周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスク40を形成する工程が行われる。
【0093】
本実施の形態の場合、前記第1マスクの形状は略半球に近い椀形状をなしているために、前述した第1の実施形態の第1マスクの上部面の定義および難侵入性凹部6の側面6aの定義をそのまま適用することができない。そこで、第1マスク30の上部面の定義および難侵入性凹部6の側面6aの定義を、図8を参照しつつ説明する。
【0094】
すなわち、図8に示される第1マスクである椀形状の全体の体積を算出し、底面積(A3−A3面)を同じとしてこの椀形状の体積と同じ円柱(図8において点線で描かれている)の上面(高さH1)で切取られる第1マスクの椀形状の表面を考え、切取られた上側に位置する面(A1−A2−A1面)を1マスク30の上部面31とし、切取られた下側に位置する面(A2−A3面)を難侵入性凹部6の側面6aとして定義する。
【0095】
図7(c)に示されるように上記のごとく定義される椀状の第1マスク30上部面31の上に成膜される第2マスク40の厚さは、例えば0.5〜3nm程度とされる。
【0096】
なお、前述したように上記のごとく定義される難侵入性凹部6の側面6aの上から下までの全面に第2マスク形成用材料を堆積させて第2マスク40の側部を形成する必要はなく、側面6aの上端(図8の符号A2)から下方(基材7側)に向けての一部に第2マスク形成用材料を堆積させて第2マスク40の側部を形成すればよい。そして、難侵入性凹部6の側面6aの全面の面積をS1とした場合、難侵入性凹部6の側面6aに堆積される第2マスク側部の面積割合は、(0.3〜1.0)S1の範囲、より好ましくは(0.5〜1.0)S1の範囲とすることが望ましい。第1マスク30の側面におけるサイドエッチング耐性を向上させるためである。
【0097】
なお、難侵入性凹部6の側面6aに堆積される第2マスク形成用材料の堆積量は、難侵入性凹部6の側面6aの上端の部分が最も多く、下方(基材7側)に向かうにつれて漸減する傾向がある。
【0098】
第2マスク形成用材料としては、前述した第1の実施形態で説明したのと同様な材料を用いることができる。ただし、前述のごとく第2マスク形成用材料は、第1マスク30よりも高いエッチング耐性を有することが必要であり、第1マスク30の材料および具体的エッチング手法を考慮しながら適宜選定するようにすればよい。
【0099】
本発明における当該工程では、前述した第1の実施形態と同様に、前記基材7の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとする操作を備えている。
【0100】
本発明における当該工程では、前述した第1の実施形態と同様に、第2マスク形成用材料を前記第1マスク30の上部面31の全体と難侵入性凹部6の側面6aに周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスク40を形成する操作が行われる。この際、難侵入性凹部6の底面6bには第2マスク形成用材料からなる成膜は行われない。難侵入性凹部6の寸法Wrは、前述したように基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部6の底面6bに実質的に到達できない大きさに設定されているからである。このように当該工程を要望通りに実行させるには、難侵入性凹部6の寸法Wrの設定が的確に行われていること、および正確に垂直からの成膜を行うことが重要であり、さらに必要であれば成膜時間の調整を行なうようにすればよい。
【0101】
<第1マスクおよび前記第2マスクを介して基材をエッチングする工程>
次いで、図7(d)に示されるように第1マスク30および第2マスク40を介して基材7をエッチングする工程が行われる。すなわち、第1マスク30の上に第2マスク40を被着させた凸部をマスクとして難侵入性凹部6をエッチングすることで基材7の表面に凹部50が形成される。基材7をエッチングするには、通常、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることが望ましい。
【0102】
基材をエッチングするためのエッチングガスの選定は、例えば、基材の材質を基本にして耐エッチング性に優れる第2マスクの材質を考慮しつつ、エッチングの選択比が大きくなるような組み合わせを適宜選定するようにすればよい。例えば、基材の材質が石英である場合には、第2マスクの材質をCrとし、エッチングガスを四フッ化炭素(CF4)とすることが好ましい。また、基材の材質がシリコンである場合には、第2マスクの材質をSiO2とし、エッチングガスを臭化水素(HBr)とすることが好ましい。
【0103】
図7(e)に示されるようにエッチング可能な基材7の凹部50の深さDpは、第1マスク30および第2マスク40のエッチング耐性により定まるものであるが、本発明ではエッチング耐性に優れる第2マスク40を設けているために、凹部50の深さDpは、例えば20nm程度に至るまで可能とされる。
【0104】
<第1マスクおよび第2マスクを除去する工程>
上述のごとく基材7をエッチングした工程の後に、第1マスク30および第2マスク40を除去する工程が設けられ、図7(e)に示される状態に至る。これによって所望のパターンの凹部50が形成された基材7を得ることができる。
【0105】
このような所望のパターンが形成された基材7は、例えば、半導体集積回路を備える電子部品や高密度記録媒体の製造に適用することができる。
【0106】
上述してきた実施形態は、第1マスクの存在により形成される凹部がすべて難侵入性凹部から形成されている場合であったが、実際には、難侵入性凹部の大きさを超える易侵入性凹部の存在を考慮しなければならない態様が存在し得る。
【0107】
以下、上述してきた難侵入性凹部に加えて易侵入性凹部が存在する場合のパターンの形成方法について説明する。
【0108】
なお、易侵入性凹部とは、後述のパターンの形成方法の説明からも明らかなように、基材7の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛ばせて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が易侵入性凹部6の底面に実質的に到達できる大きさ(寸法)に設定されている凹部をいう。特に、後工程で易侵入性凹部の底面をドライエッチング加工を施した場合において、易侵入性凹部の底面がきれいに加工できない場合は、実質的に到達できる大きさのレベルとして判定される。
【0109】
〔第3の実施形態〕
図9(a)〜図9(c)および図10(a)〜図10(d)に基づき、第3の実施形態のパターン形成方法について説明する。第3の実施形態においても、基本となる工程として、上記第1の実施形態および第2の実施形態と同様の要部工程が含まれる。
【0110】
そして、本実施形態によれば、難侵入性凹部よりも凹部寸法が大きい易侵入性凹部が存在しても、当該易侵入性凹部に該当する箇所の基材のエッチング加工ができることはもとより、難侵入性凹部に該当する箇所の基材のエッチング加工が上記の第1の実施形態等の場合と同様にできる。
【0111】
<第1マスクの存在により難侵入性凹部および易侵入性凹部を有する基材を準備する工程>
第3の実施形態においては、好適なナノインプリント法を用いて、第1マスクおよび当該第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部を有する基材を準備する工程が行われる。
【0112】
ナノインプリント方法として、前述の第1の実施形態と同様に、光ナノインプリント方法を一例として取り挙げて説明する。
【0113】
光ナノインプリント方法では、例えば、図9(a)に示されるように、基材であるナノインプリント用の基材7の表面7aに被転写物として光硬化性の樹脂材料5が供給・配設される。樹脂材料5を供給する手段としては、ディスペンサ方式やインクジェット方式等を挙げることができる。また、図示の例では、樹脂材料5の液滴が1つ示されているが、樹脂材料5の液滴の数、滴下位置は適宜設定することができ、さらに液滴の量も個々に異なるようにしてもよい。また、スピンコート等により、基材7の表面7aに光硬化性の樹脂材料5を一様な膜として形成してもよい。また、上記の例に限らず、樹脂材料は、基材7側ではなくモールド1側に配設するようにしてもよい。
【0114】
インプリント用の基材7の材質や形状・構造等は、例えば、前述した第1の実施形態に準ずるようにすればよい。
【0115】
図9(a)に示されるように、インプリント用の基材7に対向するようにモールド1が配置、準備される。モールド1の面1aは、難侵入性凹部を含む部位を形成することができる凹凸構造領域B1と、易侵入性凹部を含む部位を形成することができる凹凸構造領域B2とを含み構成されている。なお、図面では転写すべき構造が、モールド1の面1aに対して凸状となっているが、転写すべき構造は凹状であってもよいし、凹凸の両方を含んでいてもよい。
【0116】
モールド1の材質は適宜選択することができるが、樹脂材料5が光硬化性である場合には、樹脂材料5を硬化させるための照射光が透過可能な透明基材を用いて形成される。具体的な材料は前述したとおりである。ただし、基材7が照射光を透過可能である場合にはモールド1は必ずしも透明基材である必要はなく、例えばニッケル、チタン、アルミニウムなどの金属、シリコンや窒化ガリウム等の半導体などを用いてもよい。
【0117】
モールド1の厚さは凹凸構造の形状、基材の強度、取り扱い適性等を考慮して設定することができ、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定することができる。また、モールド1は、凹凸構造領域B1,B2が、外周領域の非凹凸構造領域に対して凸構造となっている、いわゆるメサ構造としてもよい。メサ構造の段数の数も1段に限らず、複数段としてもよい。
【0118】
次いで、図9(b)に示されるように、配設された樹脂材料5に所望の凹凸構造を有するモールド1の片側の面1aを接触させる。被転写物である樹脂材料5は、樹脂材料5の粘度にもよるが、毛管現象によってモールド1の凹凸構造内に充填される。また必要に応じて、モールド1又は基材7を対向する他方の面側に押圧して、凹凸構造内への被転写物の充填をアシストするようにしてもよい。このようにして樹脂材料5を介してモールド1と基材7を接触させた状態において、樹脂材料5は凹凸構造を有する樹脂層となり、当該樹脂層に対して紫外線照射が行なわれることによって、樹脂材料5が硬化される(いわゆる樹脂硬化工程)。
【0119】
しかる後、図9(c)に示されるように、インプリント用の基材7とモールド1との間隙距離を広げるように引き剥がし力を作用させて樹脂層5´からモールド1を引き離す剥離工程が行なわれる。引き離し操作の際、モールド1側および基材7側のいずれか一方、あるいは両方から引き離しのための力を加えてもよい。
【0120】
モールド1側に引き離しの力を加える場合、樹脂層5´に均一に力を加えてもよいが、より引き離しを容易にするために樹脂層5´に不均一に力を加えるのが好ましい。樹脂層5´に不均一に力を加えることで、剥離の開始点を作ることができ、それを起点としてスムーズな剥離が行えるからである。
【0121】
樹脂層5′からモールド1を引き離すことにより、モールド1が有する凹凸構造が反転した凹凸構造を有する樹脂層5′がインプリント用の基材7に転写される。なお、樹脂材料5は、図9(b)に示されるモールドの押し込み工程の際に、全てモールド1の凹部に収納されるわけではなくて、余剰分が基材7の表面7a上に残膜(あるいは残渣)として存在する。
【0122】
このようにして、図9(c)に示されるように、第1マスクおよび当該第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部6および易侵入性凹部16を有する基材を準備する工程が完了する。凸構造を有する樹脂層5′が第1マスクに該当し、凸構造を有する樹脂層5′(第1マスク)の存在により難侵入性凹部6(寸法Wr)および易侵入性凹部16(寸法We)がそれぞれ形成される。
【0123】
なお、残膜の除去処理を行なうことによって、第1マスク5′および当該第1マスク5′の存在により形成される難侵入性凹部6および易侵入性凹部16を有する基材を準備する工程を完了するようにしてもよいが、この時点での残膜の除去処理は、第1マスクの高さを減少させるように作用するので、残膜の除去処理は、後述する第2マスク形成後とすることが望ましい。
【0124】
本発明において、前述したように上記難侵入性凹部6の寸法設定は特に重要であり、難侵入性凹部6の寸法Wrは、基材7の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛ばせて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が難侵入性凹部6の底面に実質的に到達できない大きさに設定される。
【0125】
前述したごとく、難侵入性凹部6の寸法Wrは、基材の主面に対して垂直に成膜を行うことを大前提にして決定され得るが、飛行する成膜粒子の大きさや、難侵入性凹部6を構成する幅に対する高さの比であるアスペクト比等が影響を及ぼすことがある。例えば、飛行する成膜粒子の大きさが大きくなれば許容できる難侵入性凹部6の寸法Wrはわずかではあるが大きくなる傾向にある。またアスペクト比が大きくなれば、許容できる難侵入性凹部6の寸法Wrはわずかではあるが大きくなる傾向にある。また、物理蒸着法であっても、例えば、スパッタ法と真空蒸着法との成膜方法の違いによっても許容できる難侵入性凹部6の寸法Wrは異なる傾向にある。すなわち、スパッタ法は、真空蒸着法と比較して、微細パターンの難侵入性凹部6への成膜がされにくく、許容できる難侵入性凹部6の寸法Wrはわずかではあるが大きくなる傾向にある。スパッタ法はターゲットへのイオン衝撃や、残留ガスとの衝突によって飛行時の原子散乱によって、パターンへの回り込みが大きくなるからである。このような観点から、本発明ではスパッタ法を用いることが好ましい。
【0126】
難侵入性凹部6の底面まで飛行する成膜粒子を到着させないように作用させる寸法Wrの具体的な数値レベルを示すと、Wrは25nm以下、特に20nm以下、好ましくは6〜20nm、さらに好ましくは6〜15nmとされる。
【0127】
第1マスク5′の存在により形成される難侵入性凹部6のパターン態様に応じた難侵入性凹部6の寸法Wrの定め方については、前述の第1の実施形態における説明を参照されたい。
【0128】
この一方で、易侵入性凹部16の寸法Weは、基材7の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛ばせて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が易侵入性凹部16の底面に実質的に到達でき、堆積層を形成できるような大きさとされる。易侵入性凹部16の寸法Weは、例えば、30nm以上10μm以下、好ましくは、50nm以上1μm以下程度とされる。
【0129】
この寸法が30nm未満となるとマスク形成用材料が易侵入性凹部16の底面に到達できなくなる傾向が生じ得る。また、易侵入性凹部16の底面にマスク形成用材料が堆積できたとしても、当該底面に堆積した堆積層のその後のエッチング除去操作がマイクロローディング効果により困難となってしまう傾向がある。
【0130】
また、10μmを超えた場合には、凹部の底面に堆積する厚さが、凸部の上面に堆積した厚さと同等となり、後工程で、エッチングにより凸部の上面に堆積した堆積物をマスクとして残しつつ、凹部の底面に堆積した堆積物のみを除去するという操作が困難となり得る。
【0131】
図10(a)〜図10(d)を参照しつつ、さらに製造方法の説明を行う。
【0132】
<第1マスクの上部面の全体と、前記難侵入性凹部の側面に周状に第2マスクを形成する工程>
図10(a)に示されるように、第1マスク5´よりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記難侵入性凹部6の側面6aに周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスク9を形成する工程が行われる。なお、図10(a)では、描かれている図面が小さいために難侵入性凹部6の側面6aに第2マスク9を周状に堆積させている状態が明確に示されていないが、この状況のイメージは、第1の実施形態の図2(b)を参照されたい。
【0133】
なお、本発明における「周状に」とは、前述した第1の実施形態の場合に説明した内容と同義である。
【0134】
また、本実施の形態の場合においても、前述した第1の実施形態の場合と同様に、第1マスクの上部面とは、凸状の第1マスク5´の略平坦な頂部5aが該当し、難侵入性凹部6の側面とは、難侵入性凹部6を構成する凸状の第1マスク5´の略平坦な頂部5aの周縁5bから垂下する面が該当する。第1マスク5´の上部面に形成される第2マスク9の部分を第2マスク上部9aと称する。第1マスク5´の側面に相当し、かつ難侵入性凹部6の側面に形成される第2マスク9の部分(図面では省略)を第2マスク側部と称す。
【0135】
さらに、本実施の形態の場合、難侵入性凹部6に加えて易侵入性凹部16を有しているので、図示のごとく易侵入性凹部16の底面16bに第2マスク形成用材料が堆積して底部堆積層9´が形成される。底部堆積層9´は第2マスク9に類し、第2マスク9形成の際、第2マスク9から派生された堆積層ということができ、「易侵入性凹部の底部に堆積した第2マスク部分」と称することができる。この底部堆積層9´の厚さをt2とする。なお、第2マスク形成の際、通常、易侵入性凹部16の側面16aにも第2マスク形成用材料が堆積するが、図面上の記載は省略されている。
【0136】
物理蒸着により第2マスクを形成する際に形成される第2マスク上部9aの厚さt1と、易侵入性凹部16の底面16b上の底部堆積層9´の厚さt2とを比較すると、t1>t2の関係となる。物理蒸着による凹凸パターン上への第2マスク形成用材料を堆積させる場合、上述したような寸法Weを有する易侵入性凹部16の中よりも、凸部表面の方が第2マスク形成用材料が堆積しやすいからである。
【0137】
凸状の第1マスク5´の略平坦な上部面(頂部)5aの上に成膜される第2マスク上部9aの厚さt1は、例えば0.5〜3nm程度とされる。
【0138】
なお、前述した第1の実施形態の場合と同様に、難侵入性凹部6の側面6aの上から下までの全面に第2マスク形成用材料を堆積させて第2マスク側部を形成することが理想ではあるが、本発明ではそこまでの構成は必要とされない。すなわち、難侵入性凹部6の側面6aの上端5b(凸状の第1マスク5´の略平坦な頂部5aの周縁5bと同じ)から下方(基材7側)に向かう一部分に第2マスク形成用材料を堆積させて第2マスク側部を形成すればよい。そして、難侵入性凹部6の側面6aの全面の面積をS1とした場合、凹部6の側面6aに堆積される第2マスク側部の面積割合は、(0.3〜1.0)S1の範囲、より好ましくは(0.5〜1.0)S1の範囲とすることが望ましい。第1マスク5´の側面におけるサイドエッチング耐性を向上させるためである。
【0139】
なお、第2マスク側部の第2マスク形成用材料の堆積量は、難侵入性凹部6の側面6aの上端5bの部分が最も多く、下方(基材7側)に向かうにつれて漸減する傾向がある。
第2マスク形成用材料としては、例えば、金属、金属酸化物、もしくは金属窒化物、または半導体、半導体酸化物、もしくは半導体窒化物から構成されることが好ましい。具体的には、Cr、Al、Si、Ta、Ti、Ag、Au、Co、Cu、Ni、Pd、Pt、およびMoのグループから選択された少なくとも1種、あるいは、これらのグループの元素の窒化物または酸化物等を挙げることができる。ただし、前述のごとく第2マスク形成用材料は、第1マスク5´よりも高いエッチング耐性を有することが必要であり、第1マスク5´の材料および具体的エッチング手法を考慮しながら適宜選定するようにすればよい。
【0140】
本発明における当該工程では、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとする操作を備えている。本発明における基材の主面に対して垂直とは、±10°の誤差範囲を許容するものであるが好ましくは±5°の範囲内が好ましい。物理蒸着法としては、各種のスパッタ法(コンベンショナル・スパッタリング、マグネトロン・スパッタリング、イオンビーム・スパッタリング、ECRスパッタリングなど)や、各種の蒸着法(真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着など)を例示することができる。
【0141】
また、これらの中ではスパッタ法が特に好ましい。スパッタ法では真空蒸着法と比べてターゲットのイオン衝突や残留ガスとの衝突によって飛行時の原子散乱によりパターンの回り込みが大きくなるため、微細パターンの底部への成膜がされにくいからである。
【0142】
本発明におけるこの工程では、上述したように第2マスク形成用材料を前記第1マスク5´の上部面5aの全体と難侵入性凹部6の側面6aに周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスク9を形成する操作が行われる。この際、難侵入性凹部6の底面6bには第2マスク形成用材料からなる成膜は実質的にされないが、易侵入性凹部16を備える本実施形態では、易侵入性凹部16の底面16bに第2マスク形成用材料が堆積して底部堆積層9´が形成される。さらに、易侵入性凹部16の側面16aにも第2マスク形成用材料が堆積して図示していない側面層が形成される。
【0143】
難侵入性凹部6の底面6bに第2マスク形成用材料からなる成膜が実質的に行なわれないのは、上述したように、難侵入性凹部6の寸法Wrが基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部6の底面6bに実質的に到達できない大きさに設定されているからである。このように当該工程を要望通りに実行させるには、難侵入性凹部6の寸法Wrの設定が的確に行われていること、および垂直に成膜を行うことが重要であり、さらに必要であれば成膜時間の調整を行なうようにすればよい。
【0144】
<易侵入性凹部の底部に堆積した底部堆積層を除去する工程>
次いで、図10(b)に示されるように、易侵入性凹部16の底面16bに堆積した底部堆積層9´を除去する工程が行われる。底部堆積層9´は、エッチング処理により除去される。この際、易侵入性凹部16の側面16aに形成されていた第2マスク形成用材料からなる側面層も除去される。エッチング処理としては、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)、反応性ガスエッチング等のドライエッチングを用いることが望ましい。ドライエッチングを用いることによって、難侵入性凹部6の底面6bにはダメージを与えることなく、易侵入性凹部16の底面16bに形成された底部堆積層9´を選択的に除去することが可能となる。一般的に、ドライエッチングではマイクロローディング効果と呼ばれる、微細パターンほどエッチングが行われ難くなる現象が生じるからである。特に、エッチング条件を、適宜設定することによってマイクロローディング効果の大小を制御することが可能となる。
【0145】
なお、易侵入性凹部16の底面16bに存在していた底部堆積層9´の除去を終えた際、第1マスクの頂部に形成されていた第2マスク上部9aは、多少その厚さが減少しているもののマスクとして機能する厚さ分は残存している。上述したように、第2マスクを形成する際に形成される第2マスク上部9aの厚さt1と、易侵入性凹部16の底面16bに形成される底部堆積層9´の厚さt2とを比較すると、t1>t2の関係となるからである。
【0146】
なお、この工程において易侵入性凹部16の中に堆積した堆積層は完全に除去される必要はなく、次工程の基材をエッチングする工程での基材のエッチングに支障がなければ問題はない。
【0147】
<第1マスクおよび前記第2マスクを介して基材をエッチングする工程>
次いで、図10(c)に示されるように前記第1マスク5′および前記第2マスク9を介して基材7をエッチングする工程が行われる。
【0148】
すなわち、第1マスク5′の上に第2マスク9からなる薄膜を被着させた凸部をマスクとして難侵入性凹部6および易侵入性凹部16をエッチングすることで基材7の表面に難侵入性凹部6の底部寸法に相当する微細な凹部11および易侵入性凹部16の底部寸法に相当する微細な凹部19がそれぞれ形成される。なお、上記の第1マスク5′をナノインプリント法により形成する場合には、通常、難侵入性凹部6の底面6bおよび易侵入性凹部16の底面16bには残膜が存在しているので、当該残膜を酸素プラズマ処理(アッシング処理)等によって除去した後に、本工程である基材7をエッチングする工程を行うことが好ましい。
【0149】
基材7をエッチングするには、通常、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることが望ましい。
【0150】
基材7をエッチングするためのエッチングガスの選定は、例えば、基材7の材質を基本にして耐エッチング性に優れる第2マスク9の材質を考慮しつつ、エッチングの選択比が大きくなるような組み合わせを適宜選定するようにすればよい。例えば、基材7の材質が石英である場合には、第2マスクの材質をCrとし、エッチングガスを四フッ化炭素(CF4)とすることが好ましい。また、基材7の材質がシリコンである場合には、第2マスクの材質をSiO2とし、エッチングガスを臭化水素(HBr)とすることが好ましい。
【0151】
図10(d)に示されるようにエッチング可能な基材7の凹部11の深さDpは、第1マスク5´および第2マスク9のエッチング耐性等により定まるものであるが、本発明ではエッチング耐性に優れる第2マスク9を設けているために、エッチングにより形成される凹部11および凹部19の深さDpは、例えば20nm程度に至るまで可能とされる(図10(d)参照)。
【0152】
<第1マスクおよび第2マスクを除去する工程>
上述のごとく基材7をエッチングした工程の後に、第1マスク5´および第2マスク9を除去する工程が設けられ、図10(d)に示される状態に至る。これによって所望のパターンの凹部11が形成された基材7を得ることができる。
【0153】
このような所望のパターンが形成された基材7は、例えば、半導体集積回路を備える電子部品や高密度記録媒体の製造に適用することができる。
【0154】
〔第4の実施形態〕
図11(a)〜図11(e)および図12(a)〜図12(g)に基づき、第4の実施形態のパターン形成方法について説明する。
【0155】
第4の実施形態は、上述した第3の実施形態と同様に、難侵入性凹部に加えて易侵入性凹部が存在する場合のパターンの形成方法である。第4の実施形態においても、基本となる工程として、上記第1の実施形態〜第3の実施形態と同様の要部工程が含まれる。
そして、本実施形態によれば、難侵入性凹部よりも凹部寸法が大きい易侵入性凹部が存在しても、当該易侵入性凹部に該当する箇所の基材のエッチング加工ができることはもとより、難侵入性凹部に該当する箇所の基材のエッチング加工が上記の第1の実施形態等の場合と同様にできる。
【0156】
第4の実施形態においては、前工程として、第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部を有する基材を準備する工程、難侵入性凹部を封止材料で封止する工程、および前記第1´マスクを介して前記基材をエッチングする工程が行われ、しかる後、第1の実施形態等と同様の要部工程を含む操作が行なわれる。
【0157】
以下、図面に沿って順次説明する。
【0158】
<第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部を有する基材を準備する工程>
好適な手法としてナノインプリント方法を取り挙げ、ナノインプリント方法として、前述の第1の実施形態と同様に、光ナノインプリント方法を取り挙げて説明する。
【0159】
光ナノインプリント方法では、例えば、図11(a)に示されるように、基材であるナノインプリント用の基材7の表面7aに被転写物として光硬化性の樹脂材料55が供給・配設される。樹脂材料55を供給する手段としては、ディスペンサやインクジェット方式等を挙げることができる。また、図示の例では、樹脂材料55の液滴が1つ示されているが、樹脂材料55の液滴の数、滴下位置は適宜設定することができ、さらに液滴の量も個々に異なるようにしてもよい。また、スピンコート等により、基材7の表面7aに光硬化性の樹脂材料55を一様な膜として形成してもよい。また、上記の例に限らず、樹脂材料は、基材7側ではなくモールド1側に配設するようにしてもよい。
【0160】
インプリント用の基材7の材質や形状・構造等は、前述した第1〜3の実施形態に準ずるようにすればよい。
【0161】
図11(a)に示されるように、インプリント用の基材7に対向するようにモールド1が配置、準備される。モールド1の一方の面1aは、難侵入性凹部を含む部位を形成することができる凹凸構造領域B1と、易侵入性凹部を含む部位を形成することができる凹凸構造領域B2とを含み構成されている。なお、図面では転写すべき構造が、モールド1の面1aに対して凸状となっているが、転写すべき構造は凹状であってもよいし、凹凸の両方を含んでいてもよい。
【0162】
モールド1の材質は適宜選択することができるが、樹脂材料55が光硬化性である場合には、樹脂材料55を硬化させるための照射光が透過可能な透明基材を用いて形成される。具体的な材料は前述したとおりである。ただし、基材7が照射光を透過可能である場合にはモールド1は必ずしも透明基材である必要はなく、例えばニッケル、チタン、アルミニウムなどの金属、シリコンや窒化ガリウム等の半導体などを用いてもよい。
【0163】
モールド1の厚さは凹凸構造の形状、基材の強度、取り扱い適性等を考慮して設定することができ、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定することができる。また、モールド1は、凹凸構造領域B1,B2が、外周領域の非凹凸構造領域に対して凸構造となっている、いわゆるメサ構造としてもよい。メサ構造の段数の数も1段に限らず、複数段としてもよい。
【0164】
次いで、図11(b)に示されるように、配設された樹脂材料55に所望の凹凸構造を有するモールド1の面1aを接触させる。被転写物である樹脂材料55は、樹脂材料55の粘度にもよるが、毛管現象によってモールド1の凹凸構造内に充填される。また必要に応じて、モールド1又は基材7を対向する他方の面側に押圧して、凹凸構造内への被転写物の充填をアシストするようにしてもよい。このようにして樹脂材料55を介してモールド1と基材7を接触させた状態において、樹脂材料55は凹凸構造を有する樹脂層となり、当該樹脂層に対して紫外線照射が行なわれることによって、樹脂材料55が硬化される(いわゆる樹脂硬化工程)。なお、本工程で用いられる樹脂材料55は、後述する樹脂材料59および樹脂材料5と同じ材料とすることが好ましいが、異なる材料であってもよい。
【0165】
しかる後、図11(c)に示されるように、インプリント用の基材7とモールド1との間隙距離を広げるように引き剥がし力を作用させて樹脂層55´からモールド1を引き離す剥離工程が行なわれる。引き離し操作の際、モールド1側および基材7側のいずれか一方、あるいは両方から引き離しのための力を加えてもよい。
【0166】
モールド1側に引き離しの力を加える場合、樹脂層55´に均一に力を加えてもよいが、より引き離しを容易にするために樹脂層55´に不均一に力を加えるのが好ましい。樹脂層55´に不均一に力を加えることで、剥離の開始点を作ることができ、それを起点としてスムーズな剥離が行えるからである。
【0167】
樹脂層55′からモールド1を引き離すことにより、モールド1が有する凹凸構造が反転した凹凸構造を有する樹脂層55′がインプリント用の基材7に転写される。なお、樹脂材料55は、図11(b)に示されるモールドの押し込み工程の際に、全てモールド1の凹部に収納されるわけではなくて、余剰分が基材7の表面7a上に残膜(あるいは残渣)として存在する。
【0168】
このようにして、図11(c)に示されるように、第1´マスクおよび当該第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部6および易侵入性凹部16を有する基材を準備する工程が完了する。凸構造を有する樹脂層55′が第1′マスクに該当し、凸構造を有する樹脂層55′(第1′マスク)の存在により難侵入性凹部6(寸法Wr)および易侵入性凹部16(寸法We)がそれぞれ形成される。難侵入性凹部6および易侵入性凹部16に要求される作用およびそれに伴う大きさの設定等は上述したとおりである。
【0169】
<難侵入性凹部を封止材料で封止する工程>
次いで、図11(e)に示されるように、難侵入性凹部6が封止材料で封止される工程が設けられる。封止の手法としては、例えば、難侵入性凹部6に対応するパターン領域に樹脂材料59を滴下させて、当該樹脂を硬化させて樹脂層59´で覆うようにすればよい。
樹脂材料59は前述の樹脂材料55および後述する樹脂材料5と同じ材料とすることが好ましいが、異なる材料であってもよい。また、硬化手段も何ら限定されない。樹脂材料59を前述の樹脂材料55とすることによって、後工程の基材エッチング工程の際のエッチングレート、選択比を安定させることができる。また、樹脂材料55は後述のように例えば、O2プラズマを用いたアッシング等で除去できる材料とすることが望ましい。
難侵入性凹部6を封止材料であらかじめ封止しておくのは、後述の第1´マスクを介して基材をエッチングする工程において、まず、最初に易侵入性凹部16に対応する部分の基材表面をエッチングして当該基材部分に凹部19を形成させておくためである(図12(a)参照)。
【0170】
樹脂材料59を滴下させる手法としては、インクジェット方式、ディスペンサー方式、スポイト方式等を用いることができる。好ましくは、インクジェット方式がよい。滴下させる位置および滴下量を精密に制御できるからである。
【0171】
なお、難侵入性凹部6を樹脂等の封止材料で封止する際、封止材料は難侵入性凹部6の凹部の内部まで入れてもよいが、あえて内部まで入れる必要はない。封止材料(例えば樹脂材料59)により難侵入性凹部6に対応するパターン領域を覆うことができ、後工程での基材エッチングの際のマスクとして機能できればよく、さらにその後、封止材料単独で、あるいは、封止材料と樹脂層55´とが一体となった状態で剥離できればよい。
【0172】
<第1´マスクを介して基材をエッチングする工程>
図12(a)に示されるように、封止材料である樹脂層59´を含む第1´マスクを介して基材7をエッチングすることによって、易侵入性凹部16に対応する部分の基材の表面がエッチングされ、当該部分に凹部19が形成される。
【0173】
基材7をエッチングするには、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることが望ましが、易侵入性凹部16のサイズがミクロンオーダー以上であれば、ウエットエッチングを用いることもできる。なお、基材7をエッチングする前に、易侵入性凹部16の底面に存在する残膜の除去処理を行なうようにしてもよい。
【0174】
このようにして凹部19が形成された後、封止材料である樹脂層59´を含む第1´マスクが除去され、図12(b)の下方位置に示されるような凹部19を有する基材7が形成される。封止用の樹脂層59´を含む第1´マスクの除去は、例えば、O2プラズマを用いたアッシング法、硫酸過水等の強酸を使った剥離手法等を用いればよい。
【0175】
<第1マスクの存在により難侵入性凹部および易侵入性凹部を有する基材を準備する工程>
前工程として述べた、第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部を準備する工程と同様な手順によって、第1マスクの存在により難侵入性凹部および易侵入性凹部を有する基材を準備する工程が行われる。すなわち、本実施の形態では、前工程で用いたのと同一の凹凸パターンを備えたモールドを用い、ナノインプリント方法により形成した難侵入性凹部および易侵入性凹部を有する基材を準備する。
【0176】
この際、前工程において第1´マスクの存在により形成された難侵入性凹部および易侵入性凹部と、それぞれ同じ位置に第1マスクの存在により難侵入性凹部および易侵入性凹部がそれぞれ形成されるように位置合わせの操作が行われる。位置合わせは、例えば、モールドと基材に予めアライメントマークを入れておき、双方の位置が合致していることを光学顕微鏡やSEM等により確認するようにすればよい。
【0177】
なお、本実施の形態で用いられるモールドは、通常、前工程で用いたのと同一のモールドを用いることが望ましいが、同一の凹凸パターンを備えるモールドであれば、必ずしも前工程で用いたのと同一のモールドを用いる必要はない。
【0178】
上記の実施形態と同様にして、ナノインプリント方法として、光ナノインプリント方法を一例として取り挙げて説明する。
【0179】
例えば、図12(b)に示されるように、凹部19を有する基材7の片側の表面7aに被転写物として光硬化性の樹脂材料5が供給・配設される。図示の例では、樹脂材料5の液滴が1つ示されているが、樹脂材料5の液滴の数、滴下位置は適宜設定することができ、さらに液滴の量も個々に異なるようにしてもよい。また、スピンコート等により、基材7の表面7aに光硬化性の樹脂材料5を一様な膜として形成してもよい。また、上記の例に限らず、樹脂材料は、基材7側ではなくモールド1側に配設するようにしてもよい。この場合、凹部19の内部も樹脂材料5で満たされる。
【0180】
次いで、図12(c)に示されるように、配設された樹脂材料5に所望の凹凸構造を有するモールド1の片側の面1aを接触させる。被転写物である樹脂材料5は、樹脂材料5の粘度にもよるが、毛管現象によってモールド1の凹凸構造内に充填される。このようにして樹脂材料5を介してモールド1と基材7を接触させた状態において、樹脂材料5は凹凸構造を有する樹脂層となり、当該樹脂層に対して紫外線照射が行なわれることによって、樹脂材料5が硬化される(いわゆる樹脂硬化工程)。
【0181】
しかる後、図示していないが、インプリント用の基材7とモールド1との間隙距離を広げるように引き剥がし力を作用させて樹脂層5´からモールド1を引き離す剥離工程が行なわれる。
【0182】
樹脂層5′からモールド1を引き離すことにより、図12(d)に示されるように、モールド1が有する凹凸構造が反転した凹凸構造を有する樹脂層5′がインプリント用の基材7に転写される。このようにして、図12(c)の状態からモールド1を引き離すことによって、第1マスクおよび第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部6および易侵入性凹部16を有する基材を準備する工程が完了する(図12(d)参照)。
【0183】
図12(d)に示されるように凸構造を有する樹脂層5′が第1マスクに該当し、凸構造を有する樹脂層5′(第1マスク)の存在により難侵入性凹部6(寸法Wr)および易侵入性凹部16(寸法We)がそれぞれ形成される。
【0184】
本発明において、前述したように上記難侵入性凹部6の寸法設定は特に重要であり、難侵入性凹部6の寸法Wrは、基材7の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛ばせて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が難侵入性凹部6の底面に実質的に到達できない大きさに設定される。
【0185】
前述したように難侵入性凹部6の底面まで飛行する成膜粒子を到着させないように作用させる寸法Wrの具体的な数値レベルを示すと、Wrは25nm以下、特に20nm以下、好ましくは6〜20nm、さらに好ましくは6〜15nmとされる。
【0186】
この一方で、易侵入性凹部16の寸法Weは、前述したように基材7の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛ばせて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が易侵入性凹部16の底面に実質的に到達でき、堆積層を形成できる大きさである。易侵入性凹部16の寸法Weは、例えば、30nm以上10μm以下、好ましくは、50nm以上1μm以下程度とされる。
【0187】
<第1マスクの上部面の全体と、前記難侵入性凹部の側面に周状に第2マスクを形成する工程>
次いで、図12(e)に示されるように、第1マスク5´よりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記難侵入性凹部6の側面6aに周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスク9を形成する工程が行われる。図12(e)では、描かれている図面が小さいために難侵入性凹部6の側面6aに第2マスク9を周状に堆積させている状態が明確に示されていないが、この状況のイメージは、第1の実施形態の図2(b)を参照されたい。
【0188】
なお、本発明における「周状に」とは、例えば、前述した第1の実施形態の場合に説明した内容と同義である。
【0189】
また、本実施の形態の場合においても、前述した第1の実施形態の場合と同様に、第1マスクの上部面とは、凸状の第1マスク5´の略平坦な頂部5aが該当し、難侵入性凹部6の側面とは、難侵入性凹部6を構成する凸状の第1マスク5´の略平坦な頂部5aの周縁5bから垂下する面が該当する。第1マスク5´の上部面に形成される第2マスク9の部分を第2マスク上部9aと称する。第1マスク5´の側面に相当し、かつ難侵入性凹部6の側面に形成される第2マスク9の部分(図面では省略)を第2マスク側部と称す。
【0190】
さらに、本実施の形態の場合、難侵入性凹部6に加えて易侵入性凹部16を有しているので、本工程においては、当該易侵入性凹部16の底面16bに第2マスク形成用材料が堆積して底部堆積層9´が形成される。底部堆積層9´は第2マスク9に類し、第2マスク9形成の際、第2マスク9から派生された堆積層ということができ、「易侵入性凹部の底部に堆積した第2マスク部分」と称することができる。なお、第2マスク形成の際、通常、易侵入性凹部16の側面16aにも第2マスク形成用材料が堆積するが、図面上の記載は省略されている。
【0191】
凸状の第1マスク5´の略平坦な上部面(頂部)5aの上に成膜される第2マスク上部9aの厚さt1は、例えば0.5〜3nm程度とされる。
【0192】
なお、難侵入性凹部6の側面6aの上から下までの全面に第2マスク形成用材料を堆積させて第2マスク側部を形成することが理想ではあるが、本発明ではそこまでの構成は必要とされない。すなわち、難侵入性凹部6の側面6aの上端5b(凸状の第1マスク5´の略平坦な頂部5aの周縁5bと同じ)から下方(基材7側)に向かう一部分に第2マスク形成用材料を堆積させて第2マスク側部を形成すればよい。そして、難侵入性凹部6の側面6aの全面の面積をS1とした場合、凹部6の側面6aに堆積される第2マスク側部の面積割合は、(0.3〜1.0)S1の範囲、より好ましくは(0.5〜1.0)S1の範囲とすることが望ましい。第1マスク5´の側面におけるサイドエッチング耐性を向上させるためである。
【0193】
なお、第2マスク側部の第2マスク形成用材料の堆積量は、難侵入性凹部6の側面6aの上端5bの部分が最も多く、下方(基材7側)に向かうにつれて漸減する傾向がある。
第2マスク形成用材料としては、例えば、金属、金属酸化物、もしくは金属窒化物、または半導体、半導体酸化物、もしくは半導体窒化物から構成されることが好ましい。具体的には、Cr、Al、Si、Ta、Ti、Ag、Au、Co、Cu、Ni、Pd、Pt、およびMoのグループから選択された少なくとも1種、あるいは、これらのグループの元素の窒化物または酸化物等を挙げることができる。ただし、前述のごとく第2マスク形成用材料は、第1マスク5´よりも高いエッチング耐性を有することが必要であり、第1マスク5´の材料および具体的エッチング手法を考慮しながら適宜選定するようにすればよい。
【0194】
本発明におけるこの工程では、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとする操作を備えている。本発明における基材の主面に対して垂直とは、±10°の誤差範囲を許容するものであるが好ましくは±5°の範囲内が好ましい。物理蒸着法としては、各種のスパッタ法(コンベンショナル・スパッタリング、マグネトロン・スパッタリング、イオンビーム・スパッタリング、ECRスパッタリングなど)や、各種の蒸着法(真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着など)を例示することができる。
【0195】
また、これらの中ではスパッタ法が特に好ましい。スパッタ法では真空蒸着法と比べてターゲットのイオン衝突や残留ガスとの衝突によって飛行時の原子散乱によりパターンの回り込みが大きくなるため、微細パターンの底部への成膜がされにくいからである。
【0196】
本発明におけるこの工程では、上述したように第2マスク形成用材料を前記第1マスク5´の上部面5aの全体と難侵入性凹部6の側面6aに周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスク9を形成する操作が行われる。この際、難侵入性凹部6の底面6bには第2マスク形成用材料からなる成膜は実質的にされないが、易侵入性凹部16を備える本実施形態では、易侵入性凹部16の底面16bに第2マスク形成用材料が堆積して底部堆積層9´が形成される。さらに、易侵入性凹部16の側面16aにも第2マスク形成用材料が堆積して図示していない側面層が形成される。
【0197】
難侵入性凹部6の底面6bに第2マスク形成用材料からなる成膜が実質的に行なわれないのは、上述したように、難侵入性凹部6の寸法Wrが基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部6の底面6bに実質的に到達できない大きさに設定されているからである。このように当該工程を要望通りに実行させるには、難侵入性凹部6の寸法Wrの設定が的確に行われていること、および垂直に成膜を行うことが重要であり、さらに必要であれば成膜時間の調整を行なうようにすればよい。
【0198】
<第1マスクおよび前記第2マスクを介して基材をエッチングする工程>
次いで、図12(f)に示されるように前記第1マスク5′および前記第2マスク9を介して基材7をエッチングする工程が行われる。
【0199】
すなわち、第1マスク5′の上に第2マスク9(易侵入性凹部16に形成された第2マスク形成用材料からなる底部堆積層9´を含む)をマスクとして難侵入性凹部6をエッチングすることで基材7の表面に難侵入性凹部6の底部寸法に相当する微細な凹部11が形成される。なお、上記の第1マスク5′をナノインプリント法により形成する場合には、通常、難侵入性凹部6の底面6bには残膜が存在しているので、当該残膜を酸素プラズマ処理(アッシング処理)等によって除去した後に、本工程である基材7をエッチングする工程を行うようにしてもよい。
【0200】
基材7をエッチングするには、通常、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることが望ましい。
【0201】
基材7をエッチングするためのエッチングガスの選定は、例えば、基材7の材質を基本にして耐エッチング性に優れる第2マスク9の材質を考慮しつつ、エッチングの選択比が大きくなるような組み合わせを適宜選定するようにすればよい。例えば、基材7の材質が石英である場合には、第2マスクの材質をCrとし、エッチングガスを四フッ化炭素(CF4)とすることが好ましい。また、基材7の材質がシリコンである場合には、第2マスクの材質をSiO2とし、エッチングガスを臭化水素(HBr)とすることが好ましい。
【0202】
図12(g)に示されるようにエッチング可能な基材7の凹部11の深さDpは、第1マスク5´および第2マスク9のエッチング耐性等により定まるものであるが、本発明ではエッチング耐性に優れる第2マスク9を設けているために、エッチングにより形成される凹部11の深さDpは、例えば20nm程度に至るまで可能とされる(図12(g)参照)。
【0203】
<第1マスクおよび第2マスクを除去する工程>
上述のごとく基材7をエッチングした工程の後に、第1マスク5´および第2マスク9を除去する工程が設けられ、図12(g)に示される状態に至る。これによって前工程で予め形成されていた凹部19と、後に形成された凹部11とを有する所望のパターンが形成された基材7を得ることができる。なお、凹部19と凹部11との深さは、各々のエッチング条件の選定よって、同一にすることもできるし、異なるようにすることもできる。本実施形態において、凹部19と凹部11の深さは、エッチングの時期がそれぞれ異なるために、個別の深さに任意に設定することができる。
【0204】
このような所望のパターンが形成された基材7は、例えば、半導体集積回路を備える電子部品や高密度記録媒体の製造に適用することができる。
【0205】
なお、上述してきた第4の実施形態では、前工程で形成した難侵入性凹部が存在するエリアのみを、封止材料で封止する封止工程が存在する。
【0206】
当該封止工程において、封止材料が封止対象でない易侵入性凹部に入らないようにするためには、封止材料により形成される最小封止エリアの大きさを予め知る必要がある。そして、この最小封止エリアの大きさを考慮して、難侵入性凹部が存在するエリアと易侵入性凹部が存在するエリアの配置を定めるようにすればよい。
【0207】
例えば、難侵入性凹部が存在するエリアを挟むように略対向配置される易侵入性凹部が存在する場合において、封止材料により封止できる最小封止エリアとの関係で、易侵入性凹部が存在するエリア同士の所定の間隙を定めて配置することができる。この易侵入性凹部が存在するエリア同士の所定の間隙について、図13を参照しつつ説明する。ここでは、封止材料により封止できる最小封止エリアを円と仮定して説明をする。
【0208】
図13には、3つの易侵入性凹部が存在するエリア16A、16B、16Cが所定の間隙を空けて配置されている。ここでは、3つのエリア16A、16B、16Cの間隙に難侵入性凹部が存在するエリアが存在することを想定する。そして、封止材料が3つのエリア16A、16B、16Cに触れることなく、難侵入性凹部が存在するエリアのみに封止材料が設けられるためには、図示のごとく、易侵入性凹部が存在するエリア16A、16B、16Cのうち、互いに易侵入性凹部と外接する円C1,C2,C3(点線で表示した3つの円)の直径が、封止材料により封止できる最小封止エリアの直径よりも大きくなるようにすればよい。具体的な数値の一例を挙げると、例えば、25μm以上の間隙とするようにすればよい。
【0209】
円の直径が25μm以上となるエリアであれば、当該エリアに難侵入性凹部を存在させても例えばインクジェット方式で易侵入性凹部に影響を与えることなく、難侵入性凹部が存在するエリアのみに封止材料を設けることができ得るからである。なお、25μm以上という数値は、好適な一例を挙げたに過ぎず、この数値に限定されるものではない。インクジェット方式の液滴の最小直径は、基板の濡れ性、封止材料(樹脂)の種類、インクジェット装置の性能等によって変化し得るからである。また、インクジェット方式に限らず他の封止手法をもちいることもできる。
【実施例】
【0210】
以下、具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例I−1]
図1および図2に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0211】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅(平坦部幅)/スペース(凹部幅)が16nm/24nmで200本繰り返されたパターンとした。
【0212】
またモールド表面には離型剤としてオプツールDSX(ダイキン工業製)を塗布した。
【0213】
インプリント用の基材として、径の大きさが6インチの石英基板を用いた。
【0214】
上記のインプリント用の基材の表面上であって、モールドの凹凸構造のパターンを備える面に略対応し、かつ、長方形の樹脂層の形態ができるように、下記組成の光硬化性の樹脂材料を、凹凸構造のパターン領域よりも大きい領域に、所定のピッチで滴下した。この樹脂材料の滴下はインクジェット装置を用いて行った。
【0215】
(光硬化性樹脂材料の組成)
・イソボルニルアクリレート … 38重量%
・エチレングリコールジアクリレート … 20重量%
・ブチルアクリレート … 38重量%
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
… 2重量%
・2−ペルフルオロデシルエチルアクリレート … 1重量%
・メチルペルフルオロオクタノレート … 1重量%
【0216】
上記のように樹脂材料を供給したインプリント用の基板に、凹凸構造のパターンを備えるモールドを接近させた。
【0217】
この状態で、インプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールド側に100mJ/cm2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂材料を硬化させて樹脂層とした。樹脂層は、長方形の形態となった。
【0218】
次いで、樹脂層からモールドを引き離す剥離工程を実施し、6インチの石英基板の上に、ラインアンドスペースのパターンを形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の上に形成されたパターンのピッチは40nmであり凹部の寸法Wrは16nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。
【0219】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるCrをスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。
【0220】
次いで、エッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングした。
【0221】
しかる後、石英基板の上に残存しているCrからなる第2マスクおよび樹脂層からなる第1マスクをエッチングにて除去し、深さ15nm、幅16nm、長さ2mmの長溝形状の凹部が40nmピッチで配設されたラインアンドスペースが形成された基板を得ることができた。
【0222】
なお、第2マスク形成用材料が第1マスクの上部面の全体のみならず凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされた石英基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0223】
また、前記第2マスク形成用材料が凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0224】
[実施例I−2]
図1および図2に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0225】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅/スペースが20nm/20nmで200本繰り返されたパターンとした。
【0226】
このモールドを用いて上記の実施例I−1と同様なナノインプリント法を用いて、6インチの石英基板の上に、ラインアンドスペースのパターンを形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の上に形成されたパターンのピッチは40nmであり凹部の寸法Wrは20nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。
【0227】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるCrをスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。
【0228】
次いで、エッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングした。
【0229】
しかる後、石英基板の上に残存しているCrからなる第2マスクおよび樹脂層からなる第1マスクをエッチングにて除去し、深さ15nm、幅20nm、長さ2mmの長溝形状の凹部が40nmピッチで配設されたラインアンドスペースが形成された基板を得ることができた。
【0230】
なお、第2マスク形成用材料が第1マスクの上部面の全体のみならず凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされた石英基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0231】
また、前記第2マスク形成用材料が凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0232】
[実施例I−3]
図1および図2に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0233】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅/スペースが25nm/25nmで200本繰り返されたパターンとした。
【0234】
このモールドを用いて上記の実施例I−1と同様なナノインプリント法を用いて、6インチの石英基板の上に、ラインアンドスペースのパターンを形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の上に形成されたパターンのピッチは50nmであり凹部の寸法Wrは25nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。
【0235】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるCrをスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。
【0236】
次いで、エッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングした。
【0237】
しかる後、石英基板の上に残存しているCrからなる第2マスクおよび樹脂層からなる第1マスクをエッチングにて除去し、深さ15nm、幅25nm、長さ2mmの長溝形状の凹部が50nmピッチで配設されたラインアンドスペースが形成された基板を得ることができた。
【0238】
なお、第2マスク形成用材料が第1マスクの上部面の全体のみならず凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされた石英基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0239】
また、前記第2マスク形成用材料が凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0240】
[比較例I−1]
図1および図2に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0241】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅/スペースが30nm/30nmで200本繰り返されたパターンとした。
【0242】
このモールドを用いて上記の実施例I−1と同様なナノインプリント法を用いて、6インチの石英基板の上に、ラインアンドスペースのパターンを形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の上に形成されたパターンのピッチは60nmであり凹部の寸法Wrは30nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。
【0243】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるCrをスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。
【0244】
次いで、エッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板をエッチング処理することを試みたが、凹部の底部に第2マスク形成用材料のCrが膜状に堆積しており、凹部の底部のエッチング処理はできなかった。なお、第2マスク形成用材料の成膜時間を種々調整して、第2マスクの厚さを種々変えたサンプルを作製しても、目標とする所望の深さのエッチング処理はできなかった。
【0245】
[実施例II−1]
図1および図2に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0246】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅(平坦部幅)/スペース(凹部幅)が16nm/24nmで200本繰り返されたパターンとした。
【0247】
またモールド表面には離型剤としてオプツールDSX(ダイキン工業製)を塗布した。
【0248】
インプリント用の基材として、径の大きさが6インチのSi基板を用いた。
【0249】
上記のインプリント用の基材の表面上であって、モールドの凹凸構造のパターンを備える面に略対応し、かつ、長方形の樹脂層の形態ができるように、下記組成の光硬化性の樹脂材料を、凹凸構造のパターン領域よりも大きい領域に、所定のピッチで滴下した。この樹脂材料の滴下はインクジェット装置を用いて行った。
【0250】
(光硬化性樹脂材料の組成)
・イソボルニルアクリレート … 38重量%
・エチレングリコールジアクリレート … 20重量%
・ブチルアクリレート … 38重量%
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
… 2重量%
・2−ペルフルオロデシルエチルアクリレート … 1重量%
・メチルペルフルオロオクタノレート … 1重量%
【0251】
上記のように樹脂材料を供給したインプリント用の基板に、凹凸構造のパターンを備えるモールドを接近させた。
【0252】
この状態で、インプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールド側に100mJ/cm2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂材料を硬化させて樹脂層とした。樹脂層は、長方形の形態となった。
【0253】
次いで、樹脂層からモールドを引き離す剥離工程を実施し、6インチのSi基板の上に、ラインアンドスペースのパターンを形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の上に形成されたパターンのピッチは40nmであり凹部の寸法Wrは16nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。
【0254】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるSiO2をスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。
【0255】
次いで、エッチングガスとしてHBrを用いて、凹部の底部に位置するSi基板を深さ15nmにエッチングした。
【0256】
しかる後、Si基板の上に残存しているSiO2からなる第2マスクおよび樹脂層からなる第1マスクをエッチングにて除去し、深さ15nm、幅16nm、長さ2mmの長溝形状の凹部が40nmピッチで配設されたラインアンドスペースが形成された基板を得ることができた。
【0257】
なお、第2マスク形成用材料が第1マスクの上部面の全体のみならず凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされたSi基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0258】
また、前記第2マスク形成用材料が凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてHBrを用いて、凹部の底部に位置するSi基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0259】
[実施例II−2]
図1および図2に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0260】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅/スペースが20nm/20nmで200本繰り返されたパターンとした。
【0261】
このモールドを用いて上記の実施例II−1と同様なナノインプリント法を用いて、6インチのSi基板の上に、ラインアンドスペースのパターンを形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の上に形成されたパターンのピッチは40nmであり凹部の寸法Wrは20nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。
【0262】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるSiO2をスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。
【0263】
次いで、エッチングガスとしてHBrを用いて、凹部の底部に位置するSi基板を深さ15nmにエッチングした。
【0264】
しかる後、Si基板の上に残存しているSiO2からなる第2マスクおよび樹脂層からなる第1マスクをエッチングにて除去し、深さ15nm、幅20nm、長さ2mmの長溝形状の凹部が40nmピッチで配設されたラインアンドスペースが形成された基板を得ることができた。
【0265】
なお、第2マスク形成用材料が第1マスクの上部面の全体のみならず凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされたSi基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0266】
また、前記第2マスク形成用材料が凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてHBrを用いて、凹部の底部に位置するSi基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0267】
[実施例II−3]
図1および図2に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0268】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅/スペースが25nm/25nmで200本繰り返されたパターンとした。
【0269】
このモールドを用いて上記の実施例II−1と同様なナノインプリント法を用いて、6インチのSi基板の上に、ラインアンドスペースのパターンを形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の上に形成されたパターンのピッチは50nmであり凹部の寸法Wrは25nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。
【0270】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるSiO2をスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。
【0271】
次いで、エッチングガスとしてHBrを用いて、凹部の底部に位置するSi基板を深さ15nmにエッチングした。
【0272】
しかる後、Si基板の上に残存しているSiO2からなる第2マスクおよび樹脂層からなる第1マスクをエッチングにて除去し、深さ15nm、幅25nm、長さ2mmの長溝形状の凹部が50nmピッチで配設されたラインアンドスペースが形成された基板を得ることができた。
【0273】
なお、第2マスク形成用材料が第1マスクの上部面の全体のみならず凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされたSi基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0274】
また、前記第2マスク形成用材料が凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてHBrを用いて、凹部の底部に位置するSi基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0275】
[比較例II−1]
図1および図2に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0276】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅/スペースが30nm/30nmで200本繰り返されたパターンとした。
【0277】
このモールドを用いて上記の実施例II−1と同様なナノインプリント法を用いて、6インチのSi基板の上に、ラインアンドスペースのパターンを形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の上に形成されたパターンのピッチは60nmであり凹部の寸法Wrは30nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。
【0278】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるSiO2をスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。
【0279】
次いで、エッチングガスとしてHBrを用いて、凹部の底部に位置するSi基板をエッチング処理することを試みたが、凹部の底部に第2マスク形成用材料のSiO2が膜状に堆積しており、凹部の底部のエッチング処理はできなかった。なお、第2マスク形成用材料の成膜時間を種々調整して、第2マスクの厚さを種々変えたサンプルを作製しても、目標とする所望の深さのエッチング処理はできなかった。
【0280】
[実施例III−1]
図7に示される要領でポリスチレン(PS)−ポリジメチルシロキサン(PDMS)ブロックコポリマーの自己組織化法によるパターン形成方法を実施した。
【0281】
塗布用のポリマー溶液として、ポリスチレン(PS)−ポリジメチルシロキサン(PDMS)ブロックコポリマーを溶媒に溶解させた塗布組成物を準備した。
【0282】
塗布組成物を6インチの石英基板の上に、スピンコートで塗布した。その後、アニールを行うことによって、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を主成分とするエッチング耐性を有する第1ポリマー相21と、第1ポリマー相21よりもエッチング耐性の低いポリスチレン(PS)を主成分とする第2ポリマー相25との相分離された構造を形成した。第1ポリマー相21は略球状形状をなし、6インチの石英基板の平面上で所定ピッチで最密充填配置(正三角形ピッチ配列)に配列した。
【0283】
次いで、基材7上の2相に分離している組成物層を反応性エッチング(RIE)により、エッチング処理することにより、基材7の上に、第1ポリマー相21の存在位置を中心として最密充填配置(正三角形ピッチ配列)にパターン化された椀状の第1マスク30を形成した(図7(b)および図4に示されるパターン参照)。図4に示される状態で観察される凹凸パターンのピッチは略30nmであり、凹部の寸法Wr=d≒15nmであった。凹部の側面の高さは12nmであった。
【0284】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるCrをスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた(図7(c)参照)。
【0285】
次いで、エッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングした(図7(d)参照)。
【0286】
しかる後、石英基板の上に残存している第2マスクおよび第1マスクをエッチングにて除去し、マスクの配列に対応して略30nmピッチで凸部が島状に残存した基板を得ることができた。
【0287】
なお、第2マスク形成用材料が第1マスクの上部面の全体のみならず凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされた石英基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0288】
また、前記第2マスク形成用材料が凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0289】
[実施例III−2]
図7に示される要領でポリスチレン(PS)−ポリジメチルシロキサン(PDMS)ブロックコポリマーの自己組織化法によるパターン形成方法を実施した。
【0290】
上記の実施例III−1の場合と比べて、用いたブロックコポリマーの分子量を変えた。すなわち、ポリスチレン(PS)の分子量およびポリジメチルシロキサン(PDMS)の分子量がそれぞれ小さいものを用いた。その結果、基板の上に形成された第1マスクのパターンは、以下のように変化した。すなわち、図4に示される状態で観察される凹凸パターンのピッチは略17nmであり凹部の寸法Wr=d≒8nmであった。凹部の側面の高さは12nmであった。
【0291】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるCrをスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた(図7(c)参照)。
【0292】
次いで、エッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングした(図7(d)参照)。
【0293】
しかる後、石英基板の上に残存している第2マスクおよび第1マスクをエッチングにて除去し、マスクの配列に対応して略17nmピッチで凸部が島状に残存した基板を得ることができた。
【0294】
なお、第2マスク形成用材料が第1マスクの上部面の全体のみならず凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされた石英基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0295】
また、前記第2マスク形成用材料が凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0296】
[比較例III−1]
図7に示される要領でポリスチレン(PS)−ポリジメチルシロキサン(PDMS)ブロックコポリマーの自己組織化法によるパターン形成方法を実施した。
【0297】
上記の実施例III−1の場合と比べて、用いたブロックコポリマーの分子量を変えた。すなわち、ポリスチレン(PS)の分子量およびポリジメチルシロキサン(PDMS)の分子量がそれぞれ大きいものを用いた。その結果、基板の上に形成された第1マスクのパターンは、以下のように変化した。すなわち、図4に示される状態で観察される凹凸パターンのピッチは略60nmであり凹部の寸法Wr=d≒30nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。
【0298】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるCrをスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成させた(図7(c)参照)。
【0299】
次いで、エッチングガスとしてCF4を用いて、凹部の底部に位置する石英基板をエッチング処理することを試みたが、凹部の底部に第2マスク形成用材料のCrが膜状に堆積しており、凹部の底部のエッチング処理はできなかった。なお、第2マスク形成用材料の成膜時間を種々調整して、第2マスクの厚さを種々変えたサンプルを作製しても、目標とする所望の深さのエッチング処理はできなかった。
【0300】
[実施例IV]
図9および図10に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0301】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、難侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B1として、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅(凸部幅)/スペース(凹部幅)が16nm/24nmで200本繰り返されたパターンとした。さらに、用いたモールドは、石英ガラスの4隅の位置(中心から(±15mm、±15mm)の4箇所)に、易侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B2として、縦100μm×横100μmの十字形状のパターンが形成されており、その幅(凸部幅)は1μm、深さは25nmとした。
【0302】
モールド表面には離型剤としてオプツールDSX(ダイキン工業製)を塗布した。
【0303】
インプリント用の基材として、径の大きさが6インチの石英基板を用いた。
【0304】
上記のインプリント用の基材の表面上であって、モールドの凹凸構造のパターンを備える面に略対応し、かつ、長方形の樹脂層の形態ができるように、下記組成の光硬化性の樹脂材料を、難侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B1および易侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B2の凹凸構造のパターン領域よりも大きい領域に、滴下した。この樹脂材料の滴下はインクジェット装置を用いて行った。
【0305】
(光硬化性樹脂材料の組成)
・イソボルニルアクリレート … 38重量%
・エチレングリコールジアクリレート … 20重量%
・ブチルアクリレート … 38重量%
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
… 2重量%
・2−ペルフルオロデシルエチルアクリレート … 1重量%
・メチルペルフルオロオクタノレート … 1重量%
【0306】
上記のように樹脂材料を供給したインプリント用の基板に、凹凸構造のパターンを備えるモールドを接近させた。
【0307】
この状態で、インプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールド側に100mJ/cm2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂材料を硬化させて樹脂層とした。樹脂層は、長方形の形態となった。
【0308】
次いで、樹脂層からモールドを引き離す剥離工程を実施し、6インチの石英基板の上の中央部にラインアンドスペースのパターン(難侵入性凹部)および四隅に十字形状の凹部(易侵入性凹部)を形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の中央部に形成されたパターンのピッチは40nmであり凹部(難侵入性凹部の寸法Wrは16nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。また、基板の四隅に形成された十字形状の凹部(易侵入性凹部)の寸法Weは、1μmであった。
【0309】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるCrをスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させるように、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。この際、本実施例では難侵入性凹部6に加えて易侵入性凹部16を有しているので、当該易侵入性凹部16の底面に第2マスク形成用材料が堆積して底部堆積層9´が形成された。なお、易侵入性凹部16の側面にも第2マスク形成用材料が堆積して側面層を形成した。
【0310】
次いで、Cl2ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、易侵入性凹部16の底面に堆積していた第2マスク形成用材料が堆積した底部堆積層9´および易侵入性凹部16の側面層を除去した。
【0311】
次いで、エッチングガスとしてCF4を用いて、難侵入性凹部6および易侵入性凹部16の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングした。
【0312】
しかる後、石英基板の上に残存しているCrからなる第2マスクおよび樹脂層からなる第1マスクをO2プラズマを使ったアッシングにて除去し、深さ15nm、幅16nm、長さ2mmの長溝形状の凹部が40nmピッチで配設されたラインアンドスペースを中央部に有し、さらに、四隅に深さ15nm、幅1μmの十字形状の凹部を有する基板を得ることができた。
【0313】
なお、第2マスク形成用材料が難侵入性凹部を形成する第1マスクの上部面の全体のみならず難侵入性凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされた石英基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0314】
また、前記第2マスク形成用材料が難侵入性凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてCF4を用いて、難侵入性凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0315】
[実施例V]
図11および図12に示される要領でナノインプリント法を用いたパターン形成方法を実施した。
【0316】
用いたモールドは、表面の大きさ40×40mm、厚み6.35mmの石英ガラスとした。石英ガラスの略中央部には、難侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B1として、ラインアンドスペースのパターンが形成されており、その形態は、パターンの深さ25nm、長さ2mm、ライン幅(凸部幅)/スペース(凹部幅)が16nm/24nmで200本繰り返されたパターンとした。さらに、用いたモールドは、石英ガラスの4隅の位置(中心から(±15mm、±15mm)の4箇所)に、易侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B2として、縦100μm×横100μmの十字形状のパターンが形成されており、その幅(凸部幅)は1μm、深さは25nmとした。
【0317】
モールド表面には離型剤としてオプツールDSX(ダイキン工業製)を塗布した。
【0318】
インプリント用の基材として、径の大きさが6インチの石英基板を用いた。
【0319】
上記のインプリント用の基材の表面上であって、モールドの凹凸構造のパターンを備える面に略対応し、かつ、長方形の樹脂層の形態ができるように、下記組成の光硬化性の樹脂材料を、難侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B1および易侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B2の凹凸構造のパターン領域よりも大きい領域に、滴下した。この樹脂材料の滴下はインクジェット装置を用いて行った。
【0320】
(光硬化性樹脂材料の組成)
・イソボルニルアクリレート … 38重量%
・エチレングリコールジアクリレート … 20重量%
・ブチルアクリレート … 38重量%
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
… 2重量%
・2−ペルフルオロデシルエチルアクリレート … 1重量%
・メチルペルフルオロオクタノレート … 1重量%
【0321】
上記のように樹脂材料を供給したインプリント用の基板に、凹凸構造のパターンを備えるモールドを接近させた。
【0322】
この状態で、インプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールド側に100mJ/cm2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂材料を硬化させて樹脂層とした。樹脂層は、長方形の形態となった。
【0323】
次いで、樹脂層からモールドを引き離す剥離工程を実施し、6インチの石英基板の上の中央部にラインアンドスペースのパターン(難侵入性凹部)および四隅に十字形状の凹部(易侵入性凹部)を形成し、樹脂層からなる第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の中央部に形成されたパターンのピッチは40nmであり凹部(難侵入性凹部)の寸法Wrは16nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。また、基板の四隅に形成された十字形状の凹部(易侵入性凹部)の寸法Weは、1μmであった。
【0324】
次いで、難侵入性凹部を封止材料で封止した。すなわち、難侵入性凹部に対応するパターン領域に上記の樹脂材料(上記の第1´マスク材料と同じ)をインクジェット方式で滴下させて、当該樹脂を硬化させて樹脂層で覆うことにより封止を行った。
【0325】
次いで、封止材料である樹脂層を含む第1´マスクを介して易侵入性凹部16に対応する部分の石英基板を深さ15nmにエッチングした(凹部19の形成)。エッチングは、エッチングガスとしてCF4を用いた誘導結合プラズマ(ICP)エッチングとした。
【0326】
次いで、封止材料である樹脂層59´を含む第1´マスクを、O2プラズマを使用したアッシングで除去し、凹部19を有する基材7を形成した。
【0327】
次いで、前工程として行った、第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部を準備する工程と同様な手順によって、第1マスクの存在により難侵入性凹部および易侵入性凹部を有する基材を準備する工程を実施した。すなわち、上記の凹部19を有する基板の表面上であって、モールドの凹凸構造のパターンを備える面に略対応し、かつ、長方形の樹脂層の形態ができるように、光硬化性の樹脂材料を、難侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B1および易侵入性凹部を含む部位を形成するための凹凸構造領域B2の凹凸構造のパターン領域よりも大きい領域に、滴下した。この樹脂材料の滴下はインクジェット装置を用いて行った。光硬化性の樹脂材料は、上記の第1´マスク形成材料と同じものを用いた。
【0328】
上記のように樹脂材料を供給したインプリント用の基板に、凹凸構造のパターンを備えるモールドを接近させた。なお、この際、前工程において第1´マスクの存在により形成された難侵入性凹部および易侵入性凹部とそれぞれ同じ位置に、第1マスクの存在により難侵入性凹部および易侵入性凹部が形成されるようにモールドと基板を位置合わせする操作を行なった。位置合わせは、モールドと基板に予め形成されたアライメントマークを一致させることによって行った。
【0329】
この状態で、インプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールド側に100mJ/cm2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂材料を硬化させて樹脂層とした。樹脂層は、長方形の形態となった。
【0330】
次いで、樹脂層からモールドを引き離す剥離工程を実施し、6インチの石英基板の上の中央部にラインアンドスペースのパターン(難侵入性凹部)および四隅に十字形状の凹部(易侵入性凹部)を形成し、樹脂層からなる第1マスクの存在により形成される凹部を有する基材を準備する工程を完了させた。基板の中央部に形成されたパターンのピッチは40nmであり凹部(難侵入性凹部)の寸法Wrは16nmであった。凹部の側面の高さは25nmであった。また、基板の四隅に形成された十字形状の凹部(易侵入性凹部)の寸法Weは、1μmであった。
【0331】
次いで、第1マスクが形成された基板の主面に対して垂直に第2マスク形成用材料であるCrをスパッタ成膜し、第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記凹部の側面に周状に堆積させるように、一連の膜からなる第2マスクを形成させた。この際、本実施例では難侵入性凹部6に加えて易侵入性凹部16を有しているので、当該易侵入性凹部16の底面に第2マスク形成用材料が堆積して底部堆積層9´が形成された。なお、易侵入性凹部16の側面にも第2マスク形成用材料が堆積して側面層を形成した。
【0332】
次いで、エッチングガスとしてCF4を用いて、難侵入性凹部6の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングした。
【0333】
しかる後、石英基板の上に残存しているCrからなる第2マスクおよび樹脂層からなる第1マスクをO2プラズマを使ったアッシングにて除去し、深さ15nm、幅16nm、長さ2mmの長溝形状の凹部が40nmピッチで配設されたラインアンドスペースを中央部に有し、さらに、四隅に深さ15nm、幅1μmの十字形状の凹部を有する基板を得ることができた。
【0334】
なお、第2マスク形成用材料が難侵入性凹部を形成する第1マスクの上部面の全体のみならず難侵入性凹部の側面にも周状に堆積していることは、マスクパターンの寸法に対するエッチングされた石英基板のエッチング形状の断面をSEM観察することにより、対比される寸法変化が極めて少ないことにより判断した。
【0335】
また、前記第2マスク形成用材料が難侵入性凹部の底面に実質的に到達していないことは、そのままの状態でエッチングガスとしてCF4を用いて、難侵入性凹部の底部に位置する石英基板を深さ15nmにエッチングできたことにより判断した。
【0336】
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明のパターン形成方法は、第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を有する基材を準備する工程と、前記第1マスク側から物理蒸着法により、前記第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記難侵入性凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成する工程と、前記第1マスクおよび前記第2マスクを介して前記基材をエッチングする工程と、を含み、前記第2マスクを形成する工程は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させる操作を含み、前記難侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定されているので、エッチングマスクの存在により形成される凹部の被エッチング箇所寸法が例えば25nm以下、特に20nm以下であっても当該箇所のエッチング加工ができる。
【0337】
また、本発明によれば、難侵入性凹部よりも凹部寸法が大きい易侵入性凹部が存在している場合であっても、当該易侵入性凹部に該当する箇所の基材のエッチング加工ができることはもとより、難侵入性凹部に該当する箇所の基材のエッチング加工ができる。
【産業上の利用可能性】
【0338】
本発明は、種々の微細加工を要する技術分野に利用可能であり、例えば、半導体集積回路を備える電子部品や高密度記録媒体の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0339】
5´、30…第1マスク
9、40…第2マスク
55´…第1´マスク
6…難侵入性凹部
16…易侵入性凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を主面上に有する基材を準備する工程と、
前記第1マスク側から物理蒸着法により、前記第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料を前記第1マスクの上部面の全体と前記難侵入性凹部の側面に周状に堆積させて、一連の膜からなる第2マスクを形成する工程と、
前記第1マスクおよび前記第2マスクを介して前記基材をエッチングする工程と、を含み、
前記第2マスクを形成する工程は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させる操作を含み、
前記難侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定されてなることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記難侵入性凹部の寸法は、25nm以下である請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記難侵入性凹部の寸法は、6〜20nmである請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記第2マスク形成用材料が、金属もしくは半導体、またはこれらの酸化物もしくは窒化物である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項5】
自己組織化により、配列したポリマーを含有する膜をパターニングして、前記第1マスクおよび前記難侵入性凹部を形成させる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項6】
ナノインプリントモールドを用いてパターニングして、前記第1マスクおよび前記難侵入性凹部を形成させる請求項1ないし請求項4いずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記基材をエッチングする工程の後に、前記第1マスクおよび前記第2マスクを除去する工程を有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を主面上に有する基材を準備する工程において、難侵入性凹部に加えてさらに易侵入性凹部が形成され、
前記第2マスクを形成する工程において、前記第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料が前記第1マスクの上部面の全体と、易侵入性凹部の底部に堆積させられ、
前記第1マスクおよび前記第2マスクを介して前記基材をエッチングする工程は、前記易侵入性凹部の底部に堆積した底部堆積層が除去された後、残余の前記第1マスクおよび前記第2マスクを介して行われ、
前記第2マスクを形成する工程は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させる操作を含み、
前記難侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定されてなる、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のするパターン形成方法。
【請求項9】
前記易侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記易侵入性凹部の底面に実質的に到達できる大きさに設定されてなる、請求項8に記載のするパターン形成方法。
【請求項10】
前工程として、第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部を主面上に有する基材を準備する工程、難侵入性凹部を封止材料で封止する工程、および前記第1´マスクを介して前記基材をエッチングする工程が行われ、しかる後、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載、または請求項6若しくは請求項7に記載された工程が行われるパターン形成方法であって、
前記第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部を主面上に有する基材を準備する工程において、難侵入性凹部に加えてさらに易侵入性凹部が形成され、
前記第2マスクを形成する工程において、前記第1マスクよりも高いエッチング耐性を有する第2マスク形成用材料が前記第1マスクの上部面の全体と、易侵入性凹部の底部に堆積させられ、
前記第2マスクを形成する工程は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させる操作を含み、
前記難侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記難侵入性凹部の底面に実質的に到達できない大きさに設定されてなる、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載、または請求項6若しくは請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記易侵入性凹部の寸法は、前記基材の主面に対して垂直に物理蒸着法により前記第2マスク形成用材料を飛行させて堆積させようとしたときに、前記第2マスク形成用材料が前記易侵入性凹部の底面に実質的に到達できる大きさに設定されてなる、請求項10に記載のするパターン形成方法。
【請求項12】
前記第1´マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部、並びに前記第1マスクの存在により形成される難侵入性凹部および易侵入性凹部は、それぞれ、同一のナノインプリントモールドを用いてパターニングすることにより形成される請求項10または請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記封止材料は、第1´マスク材料と同一材料から形成される請求項10ないし請求項12のいずれかに記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−84924(P2013−84924A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200315(P2012−200315)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】