説明

パターン付き基板の検査方法及びその装置

【課題】パターン付き基板の表面検査方法及びその装置において、周囲を隔壁で囲まれた有機EL発光層を形成する領域に存在する0.1μmよりも小さい異物欠陥を、感度よく検出する。
【解決手段】パターン付き基板の表面検査方法において、2次元状に並んで形成されたパターンの並びの一方の方向に基板を連続的に移動させ、線状に成形された光を連続的に移動している基板の表面に対して斜め方向から入射させて連続的に移動する方向に対して傾いた方向に照射し、基板上の線状の光が照射された領域からの反射散乱光のうち試料の法線方向に反射散乱した光を集光することにより基板上に形成されたパターンからの低次の回折光を検出することなく反射散乱光の像を基板の連続的に移動する方向に対して傾いた方向に設置された1次元または2次元のアレイセンサ上に結像して検出し、アレイセンサで検出して得た信号を処理して試料上の欠陥を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平面ディスプレイ基板の製造工程において、基板表面に付着した異物等の欠陥を検査するパターン付き基板の検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面ディスプレイの方式として現在種々の方式が提案され実用化されているが、その中でも、高輝度、高コントラスト、拘束応答、低消費電力を特徴とする方式として、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス:Organic Electroluminescence)の開発が進められている。
【0003】
有機ELディスプレイを量産する場合に、歩留まりを高く維持するためには、有機ELディスプレイを製造する工程において基板に異物が付着しないようにすること、また、前工程からの異物を次の工程に持ち込まないようにすることが重要である。特に有機ELディスプレイにおいて致命度が高いのは薄い有機膜を形成する前の工程でガラス基板上に付着した異物である。異物が付着した状態のガラス基板上に0.1μm程度の薄い有機膜を形成すると、その後の工程で形成する電極配線が層間で短絡して表示不良を起こす原因となってしまう。
【0004】
このような、パターンが形成されたガラス基板上に付着した異物欠陥を検出方法として、特許文献1には、レチクルやホトマスクに斜め方向から光を照射してその反射光を検出することにより回路パターン上に付着した異物を検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−304296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機ELのガラス基板上に形成されるパターンは、図1に示すように、例えば1画素が75〜150μmで有機EL発光層が形成される領域の周囲を光を通さない隔壁で囲むような構成になっている。このような構成の有機EL基板に特許文献1に記載されているような斜め方向から光を照射してその反射光を検出する方式をそのまま適当した場合には、隔壁部分からの反射散乱光がノイズとなって、有機EL発光層が形成される領域に存在する微小な異物からの反射散乱光の検出信号がノイズに埋もれてしまい異物欠陥の検出精度を上げることが難しい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、周囲を隔壁で囲まれた有機EL発光層を形成する領域に存在する0.1μmよりも小さい異物欠陥を、感度よく検出することを可能にするパターン付き基板の表面検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明では、表面に複数の規則的なパターンが2次元状に並んで形成された基板上の欠陥を検査する方法において、2次元状に並んで形成されたパターンの並びの一方の方向に基板を連続的に移動させ、線状に成形された光を連続的に移動している基板の表面に対して斜め方向から入射させて連続的に移動する方向に対して傾いた方向に照射し、基板上の線状の光が照射された領域からの反射散乱光のうち試料の法線方向に反射散乱した光を集光することにより基板上に形成されたパターンからの低次の回折光を検出することなく反射散乱光の像を基板の連続的に移動する方向に対して傾いた方向に設置された1次元または2次元のアレイセンサ上に結像して検出し、アレイセンサで検出して得た信号を処理して試料上の欠陥を検出するようにした。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明では、表面に複数の規則的なパターンが2次元状に並んで形成された基板上の欠陥を検査するパターン付き基板の検査装置を、基板を載置して基板を2次元状に並んで形成されたパターンの並びの一方の方向に連続的に移動させるステージ手段と、 線状に成形した光をステージ手段により一方の方向に連続的に移動している基板の表面に対して斜め方向から入射させて一方の方向に対して傾いた方向に照射する照明光学系手段と、照明光学系手段により線状の光が照射された基板上の領域からの反射散乱光のうち試料の法線方向に反射散乱した光を集光する集光レンズと、集光レンズにより基板上に形成されたパターンからの低次の回折光を検出することなく反射散乱光の像を結像する結像レンズと、結像レンズにより結像された反射散乱光の像を検出する前記一方の方向に対して傾いた方向に設置されたアレイセンサとを有する検出光学系手段と、検出光学系手段で検出して得た信号を処理して試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えて構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周囲を隔壁で囲まれた有機EL発光層を形成する領域に存在する0.1μmよりも小さい異物欠陥を、感度よく検出することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】検査対象の基板を拡大した平面図である。
【図2】本発明の実施例1のパターン付き基板の検査装置の概略の構成をしますブロック図である。
【図3】基板のパターンの並び方向に対して斜めに照射した線状の照明光の照明領域と、アレイセンサの検出領域を示す基板の平面図である。
【図4】基板のパターンの並び方向に照射した線状の照明光の照明領域と、アレイセンサの検出領域を示す基板の平面図である。
【図5】(a)は基板のパターンの並び方向に対して斜めに配置したアレイセンサ上を基板上の欠陥の像が通過していく状態を示したセンサアレイの平面図である。(b)は基板のパターンの並び方向に配置したアレイセンサ上を基板上の欠陥の像が通過していく状態を示したセンサアレイの平面図である。
【図6】(a)は基板のパターンの並び方向に対して斜めに配置したアレイセンサで検出した基板の歪んだ画像、(b)は基板の歪んだ画像に対して歪み補正処理を実行して歪みを取り去った後の画像である。
【図7】本発明の実施例2のパターン付き基板の検査装置の概略の構成をしますブロック図である。
【図8】本発明の実施例2における各検出光学系の基板上の検査領域を示す基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図2に本発明の第1の実施例によるパターン付き基板の検査装置の全体の構成を示す。検査装置全体は、照明光学系210と検出光学系220、ステージ系230及び信号処理・全体制御部200で構成されている。ただし、図2に示した装置構成において、検査対象試料であるガラス基板を検査装置に対して着脱するガラス基板のハンドリング機構は省略してある。
【0014】
ステージ系230は、試料100を載置してXY平面内で移動可能なテーブル231とテーブル231を支える架台部232を備えている。
【0015】
照明光学系210は、レーザ光源211、レーザ光源211から発射されたレーザのビーム径を拡大するビーム径拡大レンズ212、径が拡大されたレーザを平行光に変換するコリメートレンズ213、コリメートレンズ213により平行光となった径が拡大されてレーザを一方向に平行の状態を保ったままそれに直角な方向に集光するシリンドリカルレンズ214を備えて、テーブル231に載置された試料100の表面に対して斜め方向(仰角5〜30度の範囲)から線状に成形されたレーザを照射する。
【0016】
検出光学系220は、照明光学系210によりレーザが照射された試料100からの反射光のうち上方に反射散乱した光を集光する集光レンズ(対物レンズ)221と、集光レンズ221により集光された試料100からの反射散乱光の像を結像する結像レンズ222、結像レンズ222で結像された試料100からの反射・散乱光の像を検出するイメージセンサ223を備えている。
【0017】
信号処理・全体制御部200は、イメージセンサからの出力信号をA/D変換するA/D変換部240、A/D変換部で変換された信号を処理する信号処理部250、全体を制御する全体制御部260、全体制御部の制御信号を受けてステージ系230のテーブル231の位置を制御するステージ制御部270、信号処理部250でイメージセンサ223から出力された信号を処理した結果を出力する出力部280を備えている。
【0018】
ここで、検査対象の試料100は、図1に示したように表面に規則的なパターンが2次元状に繰り返し形成されている。
【0019】
図3に試料100に照射される線状に成形されたレーザの照射方向と照射領域、及びイメージセンサ223のとの関係を示す。照明光学系210のシリンドリカルレンズ214から出射した線状に成形されたレーザは、試料100に形成されたパターン101の並びの方向(X方向)に対して、45度の方向から入射して試料100上の領域301を照明する。検出光学系220はこの照明領域301の像を結像して、イメージセンサ223により領域2231の像が検出される。
【0020】
この状態でステージ制御部270で制御してテーブル231をY方向に一定の速度で移動させると、イメージセンサ223は試料100上のW1の幅の領域を検査することができる。
【0021】
一方、照明光学系210による試料100上の照明領域を図4に示すように試料100に形成されたパターン101のY方向の並びに沿わせて、イメージセンサ223による検出領域を2232のようにした場合、テーブル231をY方向に一定の速度で移動させると、イメージセンサ223は試料100上のW2の幅の領域を検査することができる。この場合W2はW1の約√2倍になる。
【0022】
図4のように、試料100に形成されたパターン101の並びの方向または並びに直角な方向(図3の場合は、X方向またはY方向)から照明光を照射してその反射散乱光の像を検出する場合、試料100に規則的に形成されたパターン101からの散乱による低次の回折光(1次回折光)が検出光学系220に入ってしまい、欠陥の検出感度を低下させてしまう。これを防止する方法として、検出光学系220のフーリエ変換面に空間フィルタ(図示せず)を配置して試料100上の規則的に形成されたパターン101からの散乱光を遮光し、空間フィルタで遮光されなかった反射散乱光をイメージセンサ223で検出して欠陥を抽出する方法がある。しかし、この方法では、空間フィルタにより試料100上の欠陥からの反射散乱光も遮光してしまう可能性があり、欠陥を見逃してしまう可能性がある。
【0023】
一方、図3のように、試料100に形成されたパターン101の並びの方向(図3の場合は、X方向またはY方向)に対して方位角が45度傾いた方向から照明光を照射することにより、試料100に規則的に形成されたパターン101からの散乱による低次の回折光(1次回折光)を検出光学系220に入らなくすることができ、空間フィルタを用いずに回折光による検出感度の低下を防止することができる。
【0024】
図5は、テーブル231をY方向に一定の速度で移動させたときの状態を、イメージセンサ223の側から試料100を見た状態を示す。(a)は図3のようにイメージセンサ223をY方向に対して45度傾けて撮像した場合に対応し、(b)は図4のようにイメージセンサ223をY方向に沿わせて撮像した場合に対応する。試料100上の欠陥103の像は、イメージセンサ223の各画素223n-1,223n,223n+1の上を横切るが、図5(a)のようにイメージセンサ223をY方向に対して45度傾けて撮像した場合に欠陥103の像がイメージセンサ223を横切る距離L1は、図5(b)のイメージセンサ223をY方向に沿わせて撮像した場合に欠陥103の像がイメージセンサ223を横切る距離L2よりも√2倍長くなる。
【0025】
即ち、イメージセンサ223をY方向に対して45度傾けて撮像したほうが、Y方向に沿わせて撮像した場合に比べて√2倍多くの欠陥検出信号を得ることができる。その結果、SNを向上させた信号検出を行うことができ、この検出信号を予め設定しておいた基準値を用いて2値化して基準値よりも大きな検出信号を欠陥と判定することにより、0.1μmよりも小さい、より微細な欠陥を検出することが可能になる。また、検出信号を2値化せずに、予め記憶したおいた欠陥がない試料を用いて検出した基準信号と比較することにより、0.1μmよりも小さい、より微細な欠陥を検出することが可能になる。
【0026】
一方、図3のようにイメージセンサ223をY方向に対して45度傾けて撮像した場合、得られる画像は、図6(a)に示すような歪んだ画像601になってしまう。これに対して信号処理部250では、イメージセンサ223のY方向への傾きの情報とステージ制御部270からテーブル231の位置情報を受けて画像歪補正処理を施して、図6(b)に示すような歪みのない画像602を作成し、この画像を処理して欠陥103を検出する。
【0027】
ここで、イメージセンサ223は1次元のセンサアレイの例を示したが、本実施例ではこれに限ることはなく、2次元状のセンサアレイを用いても良い。
【実施例2】
【0028】
本発明による第2の実施例を、図7と8とを用いて説明する。
図7は、照明光学系710−1〜4と検出光学系720−1〜4との対を複数備えて、比較的面積が大きい試料1000を検査する装置の構成を示す。照明光学系710−1〜4及び検出光学系720−1〜4の構成は、それぞれ図2で説明した照明光学系210及び検出光学系220の構成と同じである。790はアライメント検出系で、試料1000上に形成されたアライメントマークを検出して試料1000の位置をチェックする。
【0029】
図8に示すように、試料1000上での各検出光学系720−1〜4の検査領域720−10〜40が連続するように照明光学系710−1〜4と検出光学系720−1〜4との対のそれぞれの位置を調整することにより、試料1000を載置したステージ系730のテーブル731を制御系700のステージ制御部(図示せず)で制御してX方向に1回走査することで試料1000の全面を検査することを可能になる。
【0030】
この構成において、照明光学系710と検出光学系720との各対の試料1000上の照明領域をそれぞれ図3で説明したように設定することにより、照明光学系710と検出光学系720との各対を図5のような照明方式で単に横一列に設置した場合に比べて√2倍の欠陥検出信号を得ることができ、比較的大きな譴責の基板1000に対しても1回の走査で0.1μmよりも小さな欠陥を検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0031】
100,1000・・・試料 200・・・信号処理・全体制御系 210、710−1〜4・・・照明光学系 220、720−1〜4・・・検出光学系 230、730・・・ステージ系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の規則的なパターンが2次元状に並んで形成された基板上の欠陥を検査する方法であって、
前記基板を前記2次元状に並んで形成されたパターンの並びの一方の方向に連続的に移動させ、
線状に成形された光を前記連続的に移動している基板の表面に対して斜め方向から入射させて、前記連続的に移動する方向に対して傾いた方向に照射し、
前記基板上の線状の光が照射された領域からの反射散乱光のうち前記試料の法線方向に反射散乱した光を集光することにより、前記基板上に形成されたパターンからの低次の回折光を検出することなく該反射散乱光の像を前記基板の連続的に移動する方向に対して傾いた方向に設置された1次元または2次元のアレイセンサ上に結像して検出し、
該アレイセンサで検出して得た信号を処理して前記試料上の欠陥を検出する
ことを特徴とするパターン付き基板の検査方法。
【請求項2】
線状に成形された光を前記連続的に移動している基板の表面に対して5度乃至30度の方向から入射させることを特徴とする請求項1記載のパターン付き基板の検査方法。
【請求項3】
前記線状に成形された光を、前記連続的に移動する方向に対して45度傾いた方向に照射することを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン付き基板の検査方法。
【請求項4】
前記1次元または2次元のアレイセンサは、前記連続的に移動する方向に対して45度傾いた方向に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のパターン付き基板の検査方法。
【請求項5】
表面に複数の規則的なパターンが2次元状に並んで形成された基板上の欠陥を検査する装置であって、
前記基板を載置して該基板を前記2次元状に並んで形成されたパターンの並びの一方の方向に連続的に移動させるステージ手段と、
線状に成形した光を、前記ステージ手段により一方の方向に連続的に移動している基板の表面に対して斜め方向から入射させて、前記一方の方向に対して傾いた方向に照射する照明光学系手段と、
該照明光学系手段により線状の光が照射された前記基板上の領域からの反射散乱光のうち前記試料の法線方向に反射散乱した光を集光する集光レンズと、該集光レンズにより前記基板上に形成されたパターンからの低次の回折光を検出することなく該反射散乱光の像を結像する結像レンズと、該結像レンズにより結像された前記反射散乱光の像を検出する前記一方の方向に対して傾いた方向に設置されたアレイセンサとを有する検出光学系手段と、
該検出光学系手段で検出して得た信号を処理して前記試料上の欠陥を検出する信号処理手段と
を供えたことを特徴とするパターン付き基板の検査装置。
【請求項6】
前記照明光学系手段は、前記線状に成形された光を前記ステージ手段により一方の方向に連続的に移動している基板の表面に対して5度乃至30度の方向から入射させることを特徴とする請求項5記載のパターン付き基板の検査装置。
【請求項7】
前記照明光学系手段は、前記線状に成形された光を、前記ステージ手段により連続的に移動する一方の方向に対して45度傾いた方向に照射することを特徴とする請求項5又は6に記載のパターン付き基板の検査装置。
【請求項8】
前記検出光学系手段のアレイセンサは、前記ステージ手段により連続的に移動する一方の方向に対して45度傾いた方向に配置されていることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載のパターン付き基板の検査装置。
【請求項9】
前記照明光学系手段と前記検出光学系手段との組合せを複数の備えたことを特徴とする請求項5乃至8の何れかに記載のパターン付き基板の検査装置。
【請求項10】
前記複数の組合せの各前記検出光学系手段の前記基板上の検査領域が連続していることを特徴とする請求項9記載のパターン付き基板の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−88070(P2012−88070A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232606(P2010−232606)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】