説明

パターン形成基板の製造方法及びその製造装置

【課題】 撥液性のある隔壁が形成されているパターン形成基板において、機能液が吐出されるパター形成領域内に紫外線を照射し、機能液の濡れ性を向上させることができるパターン形成基板の製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【解決手段】 マザー基板12に形成された撥液性効果のある隔壁6によって区画されたフィルタエレメント形成領域7にフィルタエレメント材料13を吐出した後で、該フィルタエレメント材料13が固形化する前に、マザー基板12の隔壁6が形成されている面の反対側の面から紫外線86を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成基板の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴吐出ヘッドから基板に対して機能液を吐出して画素のパターンを有するカラーフィルタを製造する場合において、基板に形成されたカラーフィルタを構成するフィルタエレメント形成領域に機能液を吐出したときに、前記形成領域内に微量有機物の残渣があったり、機能液の粘度が高いと機能液がフィルタエレメント形成領域内の全体に濡れ広がらず、前記領域内の隅部等で色抜け状態となり、品質不具合品となってしまう。
【0003】
このような問題を解消するため、基板全体に対して紫外線を照射することにより前記微量有機物を除去し、フィルタエレメント形成領域の表面を清浄化しておくことにより機能液の濡れ性を向上させる方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−136013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法は、基板全体を紫外線照射させているので、フィルタエレメント形成領域はもちろんのこと、フィルタエレメント形成領域を区画している撥液性のある隔壁部にも紫外線が照射されることになるので、隔壁の撥液性が損なわれ、機能液が隔壁をのり上げてしまい隣接する別のフィルタエレメント形成領域にも濡れ広がり、その結果として、混色や色むら等の品質不具合が発生するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであって、撥液性のある隔壁により区画されているパターン領域に対して吐出される機能液の濡れ性を向上させることができるパターン形成基板の製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のパターン形成基板の製造方法は、基板に対して機能液を吐出してパターンを形成するパターン形成基板の製造方法であって、基板に疎液処理した隔壁を形成する隔壁形成工程と、隔壁形成工程によって区画されたパターン領域に機能液を吐出する機能液吐出工程と、機能液吐出工程によって機能液を吐出したパターン領域に紫外線を照射する紫外線照射工程と、パターン領域に吐出された機能液を乾燥する乾燥工程とを有することを要旨とする。
【0008】
これによれば、紫外線照射は、機能液吐出工程の終了後から乾燥工程の開始までに行われるので、パターン領域の清浄効力の低下を防止して、効果的に機能液の濡れ性を向上させることができる。
【0009】
本発明のパターン形成基板の製造方法の紫外線は、少なくとも隔壁を除いた機能液が吐出されたパターン領域に照射してもよい。
【0010】
これによれば、機能液が吐出されたパターン領域に紫外線を照射するので、パターン領域の表面が清浄化され、機能液の濡れ性を向上させることができる。
【0011】
本発明のパターン形成基板の製造方法の紫外線は、隔壁が形成された基板面の反対面から照射してもよい。
【0012】
これによれば、隔壁がマスキングの効果を有し、微細パターン領域のみに照射されることになるので、微細パターン領域内における機能液の濡れ性を向上させることができる。
【0013】
本発明のパターン形成基板の製造方法の紫外線は、機能液が濡れ広がっていない領域を少なくとも含むパターン領域の局所部分に対して照射してもよい。
【0014】
これによれば、局所領域に対して紫外線照射するので、パターン領域のうち機能液の濡れ広がり不足が発生した領域を修正することができる。
【0015】
本発明のパターン形成基板の製造方法の紫外線は、パターン領域内の隅部に対して照射してもよい。
【0016】
これによれば、機能液はパターンの隅部で濡れ広がり不足が発生しやすいので、紫外線を隅部に照射することにより、隅部に係る機能液の濡れ性を向上させることができる。
【0017】
本発明のパターン形成基板の製造方法の紫外線は、パターン領域内において機能液が濡れ広がっていない箇所に対して照射してもよい。
【0018】
これによれば、機能液が濡れ広がっていない箇所に対して紫外線照射するので、この箇所が親液化され機能液を濡れ広がらせることができる。
【0019】
本発明のパターン領域は、カラーフィルタを構成するフィルタエレメント形成領域であってもよい。
【0020】
これによれば、フィルタエレメント形成領域は、機能液が吐出された後に紫外線照射によって清浄化されるので、機能液の濡れ性を向上させることができる。
【0021】
本発明のパターン形成基板の製造装置は、基板に対して機能液を吐出してパターンを形成するパターン形成基板の製造装置であって、基板に対して機能液を液滴として吐出する液滴吐出部と、液滴吐出部を構成する液滴吐出ヘッドと基板を相対移動させる移動部と、機能液を吐出した基板に紫外線を照射する紫外線照射部とを備えたことを要旨とする。
【0022】
これによれば、液滴吐出ヘッドは基板と相対移動しながら液滴吐出部より機能液を吐出する。その後、基板は紫外線照射部によって紫外線を照射される。従って、一連の製造工程を簡略化し、工数削減をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0024】
まず、液滴吐出ヘッドを用いて製造されるパターン形成を有するカラーフィルタについて説明する。図1(a)は、カラーフィルタの平面的構造を示す平面図であり、図1(b)は、カラーフィルタの基礎となるマザー基板の平面図である。
【0025】
カラーフィルタ1は、本実施形態では、例えば、ガラスやプラスチック等によって形成された方形状で透光性の基板2の表面に複数のフィルタエレメント3をドットパターン状(本実施例では、ドット・マトリクス状)に形成されている。フィルタエレメント3は、透光性のない樹脂材料によって格子状のパターンに形成された隔壁6によって区画されて、ドット・マトリクス状に並んだ複数の方形状の領域を機能液で埋めることによって形成される。また、これらのフィルタエレメント3は、それぞれが、R(赤)、G(緑)、B(青)のうちいずれか1色の機能液によって形成され、それらの各色フィルタエレメント3が所定の配列に並べられている。この配列としては、例えば、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等が知られている。
【0026】
図1(a)において、カラーフィルタ1の大きさは、例えば、1.8インチである。また、1個のフィルタエレメント3の大きさは、例えば30μm×100μmである。また、各フィルタエレメント3のピッチは、例えば、75μmである。
【0027】
本実施形態のカラーフィルタ1をフルカラー表示のための光学要素として用いる場合には、R、G、Bの3個のフィルタエレメント3を1つのユニットとして1つの画素を形成し、1画素内のR、G、Bのいずれか1つまたはそれらの組み合わせに光を選択的に通過させることにより、フルカラー表示を行う。このとき、透過性のない樹脂材料によって形成された隔壁6はブラックマスクとして作用する。
【0028】
上記のカラーフィルタ1は、例えば、図1(b)に示すように大面積のマザー基板12から切り出される。具体的には、まず、マザー基板12内に設定された複数のカラーフィルタ形成領域11のそれぞれの表面にカラーフィルタ1の1個分のパターンを形成し、さらにそれらのカラーフィルタ形成領域11の周りに切断溝を形成し、さらにそれらの溝に沿ってマザー基板12を切断することにより、個々のカラーフィルタ1が形成される。
【0029】
次に、微細パターン製造装置としてのカラーフィルタ製造装置について説明する。図2は、カラーフィルタ製造装置の構成を示す斜視図である。
【0030】
カラーフィルタ製造装置16は、R、G、Bのうち1色、例えばR色の機能液を液滴として、マザー基板12内の各カラーフィルタ形成領域11内の所定位置に吐出して付着させるための装置である。G色の機能液およびB色の機能液のための液滴吐出装置もそれぞれに用意できるが、それらの構造は図2と同じにすることができるので、それらについての説明は省略する。なお、一つのカラーフィルタ製造装置16でR、G、Bの3色を吐出することも可能である。
【0031】
図2において、カラーフィルタ製造装置16は、液滴吐出ヘッド22を備えたキャリッジ26と、液滴吐出ヘッド22の位置を制御するヘッド位置制御装置17と、マザー基板12の位置を制御する基板位置制御装置18と、液滴吐出ヘッド22をマザー基板12に対して主走査移動させる主走査駆動装置19と、マザー基板12を液滴吐出ヘッド22に対して副走査移動させる副走査駆動装置21と、マザー基板に紫外線を照射する紫外線照射装置83と、マザー基板12をカラーフィルタ製造装置16内の所定の作業位置へ供給する基板供給装置23と、カラーフィルタ製造装置16の全般の制御を司るコントロール装置24とで構成されている。
【0032】
ヘッド位置制御装置17、基板位置制御装置18、主走査駆動装置19、副走査駆動装置21、そして紫外線照射装置83の各装置はベース9の上に設置される。また、それらの装置は必要に応じてカバー14によって覆われている。
【0033】
基板供給装置23は、マザー基板12を収容する基板収容部57と、マザー基板12を搬送するロボット58を有している。ロボット58は、床、地面等といった設置面に置かれる基台59と、基台59に対して昇降移動する昇降軸61と、昇降軸61を中心として回転する第1アーム62と、第1アーム62に対して回転する第2アーム63と、第2アーム63の先端下面に設けられた吸着パッド64とを有する。吸着パッド64は、空気吸引力等によってマザー基板12を吸着できる。
【0034】
主走査駆動装置19によって駆動されて主走査移動する液滴吐出ヘッド22の軌道下にあって副走査駆動装置21の一方の脇位置に、キャッピング装置76およびクリーニング装置77が配置される。また、他方の脇位置に電子天秤78が配置されている。クリーニング装置77は液滴吐出ヘッド22を洗浄するための装置である。電子天秤78は、後述する液滴吐出ヘッド22に設けられたノズル27から吐出される機能液としてのフィルタエレメント材料Mの液滴8の重量を測定する機器である。そして、キャッピング装置76は液滴吐出ヘッド22が待機状態にあるときノズル27の乾燥を防止するための装置である。
【0035】
液滴吐出ヘッド22の近傍には、その液滴吐出ヘッド22と一体に移動するヘッド用カメラ81が配置されている。また、ベース9上に設けられた支持装置(図示せず)に支持された基板用カメラ82がマザー基板12を撮影できる位置に配置される。
【0036】
紫外線照射装置83は、マザー基板12に対して紫外線照射を行う装置であり、マザー基板12を載置して紫外線照射装置83の内外に出し入れできるトレイ部84と紫外線を照射するランプ85で構成されている。ランプ85は、例えば、低圧水銀灯である。トレイ部84は、マザー基板12の載置する部分には開口部が設けられており、マザー基板12のパターン形成面と反対側の面から紫外線が照射されるように構成されている。従って、ランプ85は、トレイ部84の下側部分に備えられている。
【0037】
紫外線照射装置83は、上記説明したマザー基板12に機能液を吐出する構成装置の近傍に設置されている。マザー基板12は、ロボット58によって、テーブル49からトレイ部84への搬送、トレイ部84から基板収容部57への搬送が可能である。なお、本実施形態では、紫外線照射装置83をベース9に設置したが、作業効率を考慮し、例えば、ベルト搬送機上に紫外線照射装置83を設置し、ロボット58によってマザー基板12をテーブル49から前記ベルト搬送機に移動させ、ベルト搬送しながら紫外線を照射する構成を採用してもよい。なお、図示しないが、紫外線照射装置83に必要な反射板、排気ファン、排気筒、吸気口等が適宜備えられている。また、図2においては、ランプ85は1個しか記述されていないが、使用に応じて複数個のランプを用いてもよい。
【0038】
コントロール装置24は、プロセッサを収容したコンピュータ本体部66と、入力装置としてのキーボード67と、表示装置としてのCRT等のディスプレイ68とを有する。
【0039】
図3は、カラーフィルタ製造装置16の電気制御ブロック図である。図3において、プロセッサとして各種の演算処理を行うCPU(演算処理装置)69と、各種情報を記憶するメモリすなわち情報記憶媒体71とを有する。
【0040】
ヘッド位置制御装置17、基板位置制御装置18、主走査駆動装置19、副走査駆動装置21、液滴吐出ヘッド22内の圧電素子材41を駆動するヘッド駆動回路72、紫外線照射装置83の各機器は、入出力インターフェース73およびバス74を介してCPU69およびメモリ71に接続されている。また、基板供給装置23、入力装置67、ディスプレイ68、電子天秤78、クリーニング装置77およびキャッピング装置76の各機器も入出力インターフェース73およびバス74を介してCPU69およびメモリ71に接続されている。
【0041】
メモリ71は、RAM、ROM等といった半導体メモリや、ハードディスク、CD−ROMといった外部記憶装置を含む概念であり、機能的には、カラーフィルタ製造装置16の動作の制御手順が記述されたプログラムを記憶する記憶領域や、R、G、Bのうちの1色のマザー基板12内における吐出位置を座標データとして記憶するための記憶領域や、副走査方向Yへのマザー基板12の副走査移動量を記憶するための記憶領域や、マザー基板12に対する紫外線照射位置を記憶するため記憶領域や、CPU69のためのワークエリアやテンポラリファイル等として機能する領域や、その他各種の記憶領域が設定される。
【0042】
CPU69は、メモリ71内に記憶されたプログラムに従って、マザー基板12の表面の所定位置に機能液を液滴吐出したり、マザー基板に紫外線を照射するための制御を行うものであり、具体的な機能実現部として、クリーニング処理を実現するための演算を行うクリーニング演算部と、キャッピング処理を実現するためのキャッピング演算部と、電子天秤78を用いた重量測定を実現するための演算を行う重量測定演算部と、液滴吐出ヘッド22によって機能液を吐出するための演算を行う吐出演算部と、マザー基板に紫外線を照射するための演算を行う紫外線照射演算部を有する。
【0043】
吐出演算部を詳しく分割すれば、液滴吐出ヘッド22を液滴吐出のための初期位置へセットするための吐出開始位置演算部と、液滴吐出ヘッド22を主走査方向Xへ所定の速度で走査移動させるための制御を演算する主走査制御演算部と、マザー基板12を副走査方向Yへ所定の副走査量を移動するための制御を演算する副走査制御演算部と、液滴吐出ヘッド22内の複数あるノズル27のうちのいずれを作動させて機能液を吐出するかを制御するための演算を行うノズル吐出制御演算部等といった各種の機能演算部を有する。
【0044】
なお、本実施形態では、上記の各機能がCPU69を用いてソフトウエアにより実現することとしたが、上記の各機能がCPUを用いない単独の電子回路によって実現できる場合には、そのような電子回路を用いることも可能である。
【0045】
次に、以上のように構成されたカラーフィルタ製造装置16に備えられた液滴吐出ヘッド22について説明する。図4(a)は、液滴吐出ヘッド22の一部破断した斜視図であり、図4(b)は、液滴吐出ヘッド22の一部を示した側断面図である。
【0046】
図4(a)において、液滴吐出ヘッド22は、例えば、ステンレス製のノズルプレート29と、それの対向面に振動板31と、それらを互いに接合する複数の仕切部材32とを有する。ノズルプレート29と振動板31との間には、仕切部材32によって複数の機能液室33と機能液溜り部34とが形成されている。複数の機能液室33と機能液溜り部34とは通路38を介して互いに連通している。機能液室33は、仕切部材32によって区画され、均等間隔で配列して形成されている。
【0047】
振動板31の適所には機能液供給孔36が形成され、この機能液供給孔36に機能液供給装置37が接続される。機能液供給装置37は、R、G、Bのうち1色、例えば機能液としてのR色のフィルタエレメント材料Mを機能液供給孔36へ供給する。供給されたフィルタエレメント材料Mは機能液溜り部34に充満し、さらに通路38を通って機能液室33に充満する。
【0048】
ノズルプレート29には、機能液室33からフィルタエレメント材料Mをジェット状に噴射するためのノズル27が設けられている。また、振動板31の機能液室33を形成する面の裏面には、該機能液室33に対応させて機能液加圧体39が取り付けられている。この機能液加圧体39は、図4(b)に示すように、圧電素子材41とこれを狭持する一対の電極42aおよび42bを有する。圧電素子材41は、電極42aおよび42bへの通電によって矢印Bで示す外側へ突出するように撓み変形し、これにより機能液室33の容積が増大する。すると、増大した容量分に相当するフィルタエレメント材料Mが機能液溜り部34から通路38を通って機能液室33へ流入する。
【0049】
次に、圧電素子材41への通電を解除すると、該圧電素子材41と振動板31は共に元の形状へ戻る。これにより、機能液室33も元の容積に戻るため機能液室33の内部にあるフィルタエレメント材料Mの圧力が上昇し、ノズル27からマザー基板12へ向けてフィルタエレメント材料Mが液滴8となって噴射する。なお、ノズル27の周辺部には、液滴8の飛行曲がりやノズル27の孔詰まり等を防止するために、例えばNi−テトラフルオロエチレン共析メッキ層からなる撥機能液層43が設けられている。
【0050】
以下、上記のように構成されたカラーフィルタ製造装置16とカラーフィルタ製造方法の作用について図5を用いて説明する。図5は、カラーフィルタ1の製造方法を工程順に示した模式図である。
【0051】
図5(a)に示すように、隔壁形成工程において隔壁が形成される。まず、マザー基板12の表面に透明性のない樹脂材料によって隔壁6を矢印A方向から見て格子状パターンに形成される。格子状パターンの格子穴の部分はフィルタエレメント3が形成される領域、すなわちフィルタエレメント形成領域7である。この隔壁6によって形成される個々のフィルタエレメント形成領域7の矢印A方向から見た場合の平面寸法は、例えば30μm×100μm程度に成形される。
【0052】
隔壁6は、フィルタエレメント形成領域7に供給される機能液としてのフィルタエレメント材料13が隣接する別のフィルタエレメント形成領域7に供給されたフィルタエレメント材料13に流動しないように阻止するため機能であり、撥水処理が施されている。また、隔壁6は、フルカラー表示するためのブラックマスクの機能を併せて有している。隔壁6は任意のパターニング手法、例えば、フォトリソグラフィー法によって形成され、さらに必要に応じてヒータによって加熱されて焼成される。
【0053】
隔壁6の形成後、図5(b)に示すように、機能液吐出工程において、機能液としてのフィルタエレメント材料13の液滴8を各フィルタエレメント形成領域7に供給することにより、各フィルタエレメント形成領域7が埋められる。図5(b)において、符号13RはR(赤)の色を有するフィルタエレメント材料を示し、符号13GはG(緑)の色を有するフィルタエレメント材料を示し、符号13BはB(青)の色を有するフィルタエレメント材料を示している。
【0054】
各フィルタエレメント形成領域7にフィルタエレメント材料13が供給された後、フィルタエレメント材料13に流動性がある間に、図5(c)に示すように、紫外線照射工程において、隔壁6が形成されているマザー基板12面の反対側の面に対してランプ85から紫外線86が照射される。具体的には、図2において、液滴吐出ヘッド22からフィルタエレメント材料13を吐出した後に、マザー基板12は、ロボット58によって紫外線照射装置83のトレイ部84に搬送され、トレイ部84に載置されたマザー基板12は、紫外線照射装置83内に挿入される。その後、メモリ71から紫外線照射プログラムによってCPU69の紫外線照射演算部が稼動し、紫外線86が照射される。紫外線は500mJ/cm2〜100,000mJ/cm2の照射量が可能であり、紫外線の波長は200〜350nmで紫外線の照射時間は5〜60秒であることが望ましい。
【0055】
ここで、フィルタエレメント形成領域7にフィルタエレメント材料13が液滴吐出された時に、例えば、図6に示すように、フィルタエレメント形成領域7のある箇所にフィルタエレメント材料13の濡れ広がり不足が発生し、フィルタエレメント材料13の色が着色していない色抜け箇所90を有するフィルタエレメント形成領域7が存在する場合がある。これは、例えば、フィルタエレメント形成領域7の表面に微量の有機物が付着しているために、フィルタエレメント材料13の流動が阻害されていると考えられる。そこで、前記紫外線照射工程によって、紫外線を使って活性酸素を発生させ、同時にフィルタエレメント形成領域7の表面に付着した有機物を分解、酸化揮発除去することにより表面の清浄化を図るものである。
【0056】
紫外線86の照射後、乾燥工程で、ヒータによってマザー基板12を例えば70℃程度に加熱して、フィルタエレメント材料13の溶媒を蒸発させる。この蒸発により、図5(d)に示すように、フィルタエレメント材料13の体積が減少し、平坦化される。以上の処理により、最終的にフィルタエレメント材料の固形分のみが残留して膜化し、これにより、希望するフィルタエレメント3が形成される。
【0057】
以上によりフィルタエレメント3が形成された後、図5(e)に示すように、フィルタエレメント3と隔壁6の表面に保護膜4が形成される。保護膜4の形成方法は、例えば、スピンコート法、ロールコート法、リッピング法またはインクジェット法等といった適宜の手法により形成される。なお保護膜4は、フィルタエレメント3等の保護膜およびカラーフィルタ1の表面を平坦化するために形成される。
上記のようにして製造されたマザー基板12は、マザー基板12に形成されたカラーフィルタ形成領域11の周りの切断溝に沿って切断され、個々のカラーフィルタ1が形成される。
【0058】
従って、本実施形態によれば以下に示す効果がある。
【0059】
(1)マザー基板12に機能液吐出工程と終了から乾燥工程の開始までに紫外線86を照射するので、フィルタエレメント形成領域7の表面が清浄効力の低下を防ぎ、フィルタエレメント材料13の濡れ性を向上させ、色抜け等による不具合発生を低減することができる。
【0060】
(2)紫外線86は、隔壁6が形成されているマザー基板12面の反対側の面から紫外線86を照射させるだけなので、マスク等の設備構築のためのコストを削減することができ、また、マスク合わせ等の作業時間は不要となるので、工数を削減することができる。
【0061】
(3)紫外線86照射によって親液処理すると隔壁6の撥液性が阻害される場合があり、隣接するフィルタエレメント形成領域7との混色を招く危険性があるが、本実施形態では、マザー基板12の反対側の面から紫外線86を照射するので、隔壁6の撥液性を維持し、混色を防止することができる。
【0062】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、以下のように実施してもよい。
【0063】
(変形例1)本実施形態では、マザー基板12の隔壁6が形成されている面の反対側の面に対して紫外線を照射したが、これに限定されない。例えば、図7に示すように、フィルタエレメント形成領域7にフィルタエレメント材料13を吐出した後に、マザー基板12の隔壁6が形成されている面に対して、紫外線86を照射してもよい。照射する際には、隔壁6にマスキングされるようにマスク87が設けられている。この場合でも、隔壁6には紫外線86が照射されないので、隔壁6の撥水効果を保持しつつ、フィルタエレメント形成領域7の表面を清浄化することにより、フィルタエレメント材料13の濡れ性を向上させ、濡れ広がらせることができる。
【0064】
(変形例2)本実施形態では、マザー基板12の隔壁6が形成されている面の反対側の面に対してマザー基板12の全体を紫外線86照射したが、これに限定されない。例えば、図6に示すように、マザー基板12のフィルタエレメント形成領域7にフィルタエレメント材料13を吐出したときに、マザー基板12全体に対してある箇所にフィルタエレメント材料13の濡れ広がり不足が発生し、フィルタエレメント材料13の色が着色していない色抜け箇所90を有するフィルタエレメント形成領域7が存在する場合がある。この場合において、図8に示すように、色抜け箇所90に紫外線86を照射されるように他の箇所をマスク88によってマスキングして行ってもよい。また、マスク88の開口部は、フィルタエレメント形成領域7の外形に合わせてもよいし、フィルタエレメント形成領域7の外形に対して隅部のみ開口していてもよい。この場合でも、フィルタエレメント材料13が濡れ広がり不足しているフィルタエレメント形成領域7のみに紫外線86を照射することにより、特定個所におけるフィルタエレメント材料13の濡れ性を向上させ、濡れ広がらせることができる、また、色抜け箇所90の部分を修正することにより、歩留りを向上させることができる。
【0065】
(変形例3)本実施形態では、紫外線86を照射するランプ85として低圧水銀灯を用いたが、これに限定されない。例えば、マキシマランプを使用してもよい。この場合でも、マキシマランプのエキシマ光でフィルタエレメント形成領域7を清浄化して、フィルタエレメント材料13の濡れ性を向上させることができる。
【0066】
(変形例4)本実施形態では、フィルタエレメント材料13としてR、G、Bを用いたが、これらに限定されることなく、例えば、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)を採用してもよい。この場合でも、R、G、Bのフィルタエレメント材料に代えて、C、M、Yの色を有するフィルタエレメント材料を用いることにより、フィルタエレメントを吐出することができる。
【0067】
(変形例5)本実施形態では、機能液としてフィルタエレメント材料13を例として説明したが、これに限定されることなく、例えば、EL(Electro―Luminescence)発光材料、シリカガラス前駆体、金属化合物等の導電材料、誘電体材料等の材料が選択可能である。この場合でも、基板上のパターンの形成を行うことができる。
【0068】
(変形例6)本実施形態では、パターン形成としてのカラーフィルタの製造方法及びその製造装置を説明したが、これに限定されることなく、例えば、EL装置の製造方法及び製造装置、各種半導体素子(薄膜トランジスタ、薄膜ダイオード等)、各種配線パターン、及び絶縁膜の形成等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)は、フィルタエレメントの平面図、(b)は、マザー基板の平面図。
【図2】カラーフィルタ製造装置を示す斜視図。
【図3】カラーフィルタ製造装置の電気制御ブロック図。
【図4】(a)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す一部断面の斜視図、(b)は、液滴吐出ヘッドの側断面図。
【図5】(a)〜(e)は、本実施例の作用を説明するためのカラーフィルタの製造過程を模式的に示した断面図。
【図6】フィルタエレメント材料の濡れ広がり不足を説明するためのマザー基板の平面図。
【図7】他の実施形態を示すカラーフィルタの断面図。
【図8】他の実施形態を示すカラーフィルタの断面図。
【符号の説明】
【0070】
1…画素のパターンを有するカラーフィルタ、2…基板、3…フィルタエレメント、4…保護膜、6…隔壁、7…パターン領域としてのフィルタエレメント形成領域、8…液滴、9…ベース、11…カラーフィルタ形成領域、12…マザー基板、13…機能液としてのフィルタエレメント材料、14…カバー、16…パターン形成基板の製造装置としてのカラーフィルタ製造装置、17…ヘッド位置制御装置、18…基板位置制御装置、19…主走査駆動装置、21…副走査駆動装置、22…液滴吐出ヘッド、23…基板供給装置、24…コントロール装置、26…キャリッジ、76…キャッピング装置、77…クリーニング装置、78…電子天秤、81…ヘッド用カメラ、82…基板用カメラ、83…紫外線照射装置、84…トレイ部、85…ランプ、86…紫外線、87、88…マスク、90…色抜け箇所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して機能液を吐出してパターンを形成するパターン形成基板の製造方法であって、
前記基板に疎液処理した隔壁を形成する隔壁形成工程と、
前記隔壁形成工程によって区画されたパターン領域に前記機能液を吐出する機能液吐出工程と、
前記機能液吐出工程によって機能液を吐出した前記パターン領域に紫外線を照射する紫外線照射工程と、
前記パターン領域に吐出された前記機能液を乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とするパターン形成基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成基板の製造方法において、
前記紫外線は、少なくとも前記隔壁を除いた前記機能液が吐出された前記パターン領域に照射することを特徴とするパターン形成基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパターン形成基板の製造方法において、
前記紫外線は、前記隔壁が形成された前記基板面の反対面から照射することを特徴とするパターン形成基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のパターン形成基板の製造方法において、
前記紫外線は、前記機能液が濡れ広がっていない領域を少なくとも含む前記パターン領域の局所部分に対して照射することを特徴とするパターン形成基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のパターン形成基板の製造方法において、
前記紫外線は、前記パターン領域内の隅部に対して照射することを特徴とするパターン形成基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のパターン形成基板の製造方法において、
前記紫外線は、前記パターン領域内において前記機能液が濡れ広がっていない箇所に対して照射することを特徴とするパターン形成基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のパターン形成基板の製造方法において、
前記パターン領域は、カラーフィルタを構成するフィルタエレメント形成領域であることを特徴とするパターン形成基板の製造方法。
【請求項8】
基板に対して機能液を吐出してパターンを形成するパターン形成基板の製造装置であって、
前記基板に対して前記機能液を液滴として吐出する液滴吐出部と、
前記液滴吐出部を構成する液滴吐出ヘッドと前記基板を相対移動させる移動部と、
前記機能液を吐出した前記基板に紫外線を照射する紫外線照射部とを備えたことを特徴とするパターン形成基板の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−75661(P2006−75661A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259320(P2004−259320)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】