説明

パターン検査方法、パターン検査装置、フォトマスク製造方法、およびパターン転写方法

【課題】フォトマスクのパターンムラの有無を簡易かつ速やかに検査するのに好適なパターン検査方法を提供すること。
【解決手段】繰り返しパターンを所定の光束により照射する照射ステップと、光束による繰り返しパターンの照射により生じた回折光に対応するフーリエ変換像を検出するフーリエ変換像検出ステップと、検出されたフーリエ変換像に基づきフォトマスクのパターンムラの有無を判定するパターンムラ判定ステップを含み、フーリエ変換像検出ステップにおいて、フォトマスクのパターンムラに対応するフーリエ変換像と、正常パターンに対応するフーリエ変換像とが空間的に分離されるように、回折光のうち所定の高次回折光に対応するフーリエ変換像を検出するようにパターン検査方法を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、単位パターンの周期的配列からなる繰り返しパターンが透明基板上に形成されたイメージデバイス用フォトマスクのパターンムラを検査するパターン検査方法、パターン検査装置、該パターン検査方法を実施してフォトマスクを製造するフォトマスク製造方法、および該フォトマスク製造方法を実施して製造されたフォトマスクを使用して転写対象に転写パターンを転写するパターン転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ技術を用いたフォトマスクの技術分野では、マスクブランクに転写されたパターンが設計パターンを正確に再現しているか否かを判断する基準として所定のマスク品質仕様が知られている。代表的な品質項目としては、例えばパターン形状精度、パターン寸法(CD:Critical dimension)精度、パターン位置精度などがある。実装製品上で誤動作が起きないよう正確な回路パターンをデバイス用基板に転写させるためには、各品質項目が所定の品質仕様を満足する、つまり実質的に欠陥の無いフォトマスクを製造する必要がある。一方、上記繰り返しパターンに生じた周期乱れ(又は繰り返し誤差)を検査するパターン検査方法やパターン検査装置は、例えば特許文献1や2などの文献に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のパターン検査方法及びパターン検査装置は、フォトマスクによる所定次数以上の回折光を結像光学系に選択的に入射させる。次いで、入射された回折光を再合成させ、それによって得られる像を検出してCD欠陥などを検査する。
【0004】
特許文献2に記載のパターン検査方法及びパターン検査装置は、フォトマスクをフーリエ変換して得た空間周波数スペクトル中の所定周波数以上の成分を除去し、除去後の空間周波数スペクトルを分析してフォトマスク中の繰り返し誤差パターンを定量的に評価(検査)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−233869号公報
【0006】
【特許文献2】特開平8−194305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、フォトマスクの製造技術の分野においては、フォトマスクに形成された転写パターンの形状検査が行われ、必要に応じて欠陥修正が行われた上で、出荷がされる。特にイメージデバイス用のフォトマスクの量産にあたっては、出荷に先立ち、パターン形状欠陥のみでなく、パターンムラの有無を判定して品質保証を簡易かつ速やかに得ることが重要である。
【0008】
一般に、フォトマスクの欠陥の基準は、所定の品質仕様(実装製品を誤動作させないため、正確な回路パターンをデバイス用基板に転写させるのに必要な品質仕様)を基に設定される。従って、一般のLSI(Large Scale Integration)用フォトマスクにおいては、上記基準を満足させることが肝要である。一方、イメージデバイス用フォトマスクでは上記のような欠陥に関する品質仕様以外にも考慮すべき事項がある。例えば規則的に配列された正確なパターンに、それとは異なる規則性をもつエラーが含まれる場合を考える。かかるエラーは、たとえ、上記した欠陥に関する品質仕様を満足したとしても、必ずしも十分な製品性能をもつとは限らない。この種のエラーを看過して製造されたイメージデバイスの映像には、該エラーに起因する表示ムラが発生する虞がある。例えば、繰り返しパターンを構成する単位パターンとしては品質上問題のない程度の微小な線幅や位置ずれのエラーであっても、領域としてみたときに、ある規則的をもって多数配列したり、ある部分に多数が密集したりすると、上記表示デバイスといった最終製品においては、周囲と異なる色や濃度として視覚により認識され、恰も欠陥として識別されることがある。これらの表示ムラは、イメージデバイスの画質を低下させる原因であるため望ましくない。本明細書においては、単位パターンとしては欠陥と判断されない程度の微細なエラーであっても、一定の面積に含まれる繰り返しパターンを評価したときに表示ムラを生じさせるなどの不都合を生じるエラーを「パターンムラ」と表現する。
【0009】
特許文献1に記載のパターン検査方法及びパターン検査装置においては、例えば所定の検査対象を用いて、高次回折像を得た結果、不都合が見出されなかったとしても、該検査対象が品質保証を充足するか否かを判断することはできない。該文献においては、回折像の実像を観察するために、所定位置に撮像面を配置するが、その撮像面では検出できないパターンムラが存在することがあるからである。換言すれば、同一検査対象であっても、検査すべき欠陥種別に応じて検出できる検査条件(例えばフォーカス条件)が異なるため、フォトマスクと対物レンズとの間隔を変えてフォーカスを調整するなど検査条件を変更して、同一検査対象の検査を複数回実施する必要がある。そのため、欠陥の有無を判定するだけでも、複数の検査条件によって検査を行うこととなり、検査時間が長くリードタイム面で不利である。さらに、検査データが欠陥種別毎に存在するため、データ解析装置側の処理負荷を増大させる問題もある。
【0010】
特許文献2に記載のパターン検査方法及びパターン検査装置においては、フォトマスクの欠陥を高感度に検知するため、空間フィルタを用いて単位セルの内部と理想的な繰り返し周期に関する情報が選択的に除去される。しかし、被検体となるフォトマスクのパターン形状毎にフィルタリング用マスクを用意し、かつ設置しなければならない不都合があり、低次回折光のノイズを除去して十分な感度で検出することは困難であるため、当該方法及び装置を安易に採用することはできない。
【0011】
このように、従来型のパターン検査方法及びパターン検査装置は、検査の冗長性や装置設定の困難性などの問題があり、フォトマスクのパターンムラの有無を簡易かつ速やかに検査するには不向きな構成であった。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イメージデバイス用フォトマスクのパターンムラの有無を簡易かつ速やかに検査するのに好適なパターン検査方法、パターン検査装置、該パターン検査方法を実施してフォトマスクを製造するフォトマスク製造方法、及び該フォトマスク製造方法を実施して製造されたフォトマスクを使用して転写対象に転写パターンを転写するパターン転写方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係るパターン検査方法は、単位パターンの周期的配列からなる繰り返しパターンが透明基板上に形成されたフォトマスクのパターンムラを検査する方法に関し、以下の特徴を有する。すなわち、かかるパターン検査方法は、繰り返しパターンを所定の光束により照射する照射ステップと、光束による繰り返しパターンの照射により生じた回折光に対応するフーリエ変換像を検出するフーリエ変換像検出ステップと、検出されたフーリエ変換像に基づきフォトマスクのパターンムラの有無を判定するパターンムラ判定ステップとを含む。フーリエ変換像検出ステップにおいては、フォトマスクのパターンムラに対応するフーリエ変換像と、正常パターンに対応するフーリエ変換像とが空間的に分離されるように、回折光のうち所定の高次回折光に対応するフーリエ変換像を検出する。
【0014】
このようにフォトマスクの実像で無くフーリエ変換像を観測することにより、フォトマスクのパターンムラの有無を簡易かつ速やかに判定してフォトマスクの品質保証を迅速に得ることができるため、フォトマスクの製造効率が向上することとなる。
【0015】
本発明に係るパターン検査方法においては、フォトマスクのパターンムラに対応するフーリエ変換像と、正常パターンに対応するフーリエ変換像とを空間的に分離させるべく、例えば次数の絶対値が20〜700である高次回折光を利用してフーリエ変換像を生成するのが好適である。
【0016】
上記の課題を解決する本発明の別の側面に係るパターン検査方法は、単位パターンの周期的配列からなる繰り返しパターンが透明基板上に形成されたフォトマスクのパターンムラを検査する方法に関し、以下の特徴を有する。すなわち、かかるパターン検査方法は、繰り返しパターンを所定の光束により照射する照射ステップと、光束による繰り返しパターンの照射により生じた回折光に対応するフーリエ変換像を検出するフーリエ変換像検出ステップと、検出されたフーリエ変換像に基づきフォトマスクのパターンムラの有無を判定するパターンムラ判定ステップとを含む。フーリエ変換像検出ステップにおいては、光束の波長をλ(単位:μm)と定義し、単位パターンのピッチをω(単位:μm)と定義し、パターンムラを含む該単位パターンのピッチをω’(単位:μm)と定義し、光学系の焦点距離をf(単位:mm)と定義し、フーリエ変換像が検出されるフーリエ変換面の分解能をp(単位:mm)と定義し、0次の回折光に対してn次の回折光がなす角度をθn(単位:deg)と定義した場合に、回折光のうち次の条件を満たすn次の回折光、
f(tan(Δθn))>p
但し、Δθn=sin−1(nλ/ω)−sin−1(nλ/ω’)
に対応するフーリエ変換像を検出する。
【0017】
ここで、本発明に係るパターン検査方法は、好ましくは、フーリエ変換像が検出されるフーリエ変換面の法線と、照射ステップにおいて光束を照射する照明光学系との光軸とがなす角度をθiと定義した場合に、
0<θi<90
を満たす。
【0018】
照射ステップにおいて照射される光束には、フーリエ変換像を生成するため、少なくとも空間的に実質的にコヒーレントであって単波長の平行光束が好適である。
【0019】
パターンムラ判定ステップにおいては、フーリエ変換像検出ステップで検出されたフーリエ変換像と所定のリファレンス像とを比較し、比較結果に基づいてフォトマスクのパターンムラの有無を自動的に判定することが検査効率を向上させる上で好ましい。
【0020】
本発明に係るパターン検査方法は、一度に検査可能な検査領域がフォトマスクの検査対象全域より狭い場合に、フォトマスクを移動させて検査領域を連続的に走査しつつ、該検査領域に対して、照射ステップ、フーリエ変換像検出ステップ、パターンムラ判定ステップの各ステップを実施して、フォトマスクのパターンムラの有無を判定することが好ましい。
【0021】
また、上記の課題を解決する本発明の一形態に係るフォトマスク製造方法は、マスクブランクに所定のマスクパターンを形成してフォトマスクを製造する方法であって、上記に記載のパターン検査方法を実施して、マスクパターンが形成されたフォトマスクのパターンムラの有無を判定するステップを含むことを特徴とする。
【0022】
また、上記の課題を解決する本発明の一形態に係るパターン転写方法は、上記に記載のフォトマスク製造方法を実施して製造されたフォトマスクを用いて転写対象基板にマスクパターンを転写することを特徴とする。
【0023】
また、上記の課題を解決する本発明の一形態に係るパターン検査装置は、単位パターンの周期的配列からなる繰り返しパターンが透明基板上に形成されたフォトマスクのパターンムラを検査する装置に関し、以下の特徴を有する。すなわち、かかるパターン検査装置は、繰り返しパターンを所定の光束により照射する照射手段と、照射手段により繰り返しパターンを照射した際に生じた回折光に対応するフーリエ変換像を検出するフーリエ変換像検出手段と、検出されたフーリエ変換像に基づきフォトマスクのパターンムラの有無を判定するパターンムラ判定手段とを有する。フーリエ変換像検出手段は、フォトマスクのパターンムラに対応するフーリエ変換像と、正常パターンに対応するフーリエ変換像とが空間的に分離されるように、回折光のうち所定の高次回折光に対応するフーリエ変換像を検出するように構成される。
【0024】
本発明に係るパターン検査装置においては、フォトマスクのパターンムラに対応するフーリエ変換像と、正常パターンに対応するフーリエ変換像とを空間的に分離させるべく、例えば次数の絶対値が20〜700である高次回折光を利用してフーリエ変換像を生成するのが好適である。
【0025】
また、上記の課題を解決する本発明の別の側面に係るパターン検査装置は、単位パターンの周期的配列からなる繰り返しパターンが透明基板上に形成されたフォトマスクのパターンムラを検査する装置に関し、以下の特徴を有する。すなわち、かかるパターン検査装置は、繰り返しパターンを所定の光束により照射する照射手段と、照射手段により繰り返しパターンを照射した際に生じた回折光に対応するフーリエ変換像を検出するフーリエ変換像検出手段と、検出されたフーリエ変換像に基づきフォトマスクのパターンムラの有無を判定するパターンムラ判定手段とを有する。フーリエ変換像検出手段は、光束の波長をλ(単位:μm)と定義し、単位パターンのピッチをω(単位:μm)と定義し、パターンムラを含む該単位パターンのピッチをω’(単位:μm)と定義し、光学系の焦点距離をf(単位:mm)と定義し、フーリエ変換像が検出されるフーリエ変換面の分解能をp(単位:mm)と定義し、0次の回折光に対してn次の回折光がなす角度をθn(単位:deg)と定義した場合に、回折光のうち次の条件を満たすn次の回折光、
f(tan(Δθn))>p
但し、Δθn=sin−1(nλ/ω)−sin−1(nλ/ω’)
に対応するフーリエ変換像を検出するように構成される。
【0026】
本発明に係るパターン検査装置は、好ましくは、上記の照射手段が光束を照射するための照明光学系を有し、フーリエ変換像が検出されるフーリエ変換面の法線と、照明光学系との光軸とがなす角度をθiと定義した場合に、
0<θi<90
を満たすように構成される。
【0027】
ここで、上記の照射手段により照射される光束は、少なくとも空間的に実質的にコヒーレントであって単波長の平行光束であることが好ましい。
【0028】
また、上記のパターンムラ判定手段は、フーリエ変換像検出手段で検出されたフーリエ変換像と所定のリファレンス像とを比較し、比較結果に基づいてフォトマスクのパターンムラの有無を自動的に判定する構成としてもよい。
【0029】
本発明に係るパターン検査装置においては、一度に検査可能な検査領域がフォトマスクの検査対象全域より狭い場合に、フォトマスクを移動させて検査領域を連続的に走査させる検査領域走査手段をさらに有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るパターン検査方法、パターン検査装置、及びフォトマスク製造方法によれば、フォトマスクのパターンムラの有無を簡易かつ速やかに判定してフォトマスクの品質保証を迅速に得ることができるため、フォトマスクの製造効率が向上することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態のパターン検査装置の全体の構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態のパターン検査装置の主要部分の構成を概略的に示す図である。
【図3】パターンムラの無い理想的なフォトマスクを概略的に示す図である。
【図4】フォトマスクのパターン形成面に形成されるパターンムラの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態のパターン検査装置が有する撮像装置により撮影される空間周波数スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のパターン検査方法、パターン検査装置、フォトマスク製造方法、及びパターン転写方法について説明する。なお、各図においては説明の便宜上、各種構成部品を支持する支持部についての図示を一部省略している。
【0033】
本実施形態において検査対象とされるフォトマスクは、例えばFPD(Flat Panel Display、例えば液晶表示装置)、プラズマ表示装置、EL(Electro Luminescence)表示装置、LED(Light Emitting Diode)表示装置、DMD(Digital Mirror Device)表示装置などのイメージデバイス用基板を製造するために用いられる露光用マスクである。この種のフォトマスクは、一辺が例えば1mを超える大型な方形基板上に1個または複数個のイメージデバイス用転写パターンが形成されたものである。それぞれの転写パターンには、多数の同一パターンが繰り返し形成された繰り返しパターンが含まれる。
【0034】
図1は、本実施形態のパターン検査装置1の全体の構成を概略的に示した図である。パターン検査装置1は、透明基板11の表面に繰り返しパターン12が形成されたフォトマスク10のパターンムラを検査するのに適した構成を有している。本実施形態では、詳しくは後述するが、被検体となるフォトマスク10の裏面側(パターンのない側)から光を照射し、表面(パターン形成面)側で受光する構成が採用されている。別の実施形態では、フォトマスク10の表面側から光を照射し、裏面側で受光する構成にしてもよい。
【0035】
本実施形態において検査対象たるフォトマスク10の製造方法について説明する。フォトマスク10は、マスクブランク製造工程、レジストパターン形成工程、マスクパターン形成工程、パターン欠陥検査工程の各工程を経て製造される。また検査対象は上記フォトマスク10の中間体である、レジストパターンが形成されたもの、レジストパターンをマスクにしてマスクパターンが形成されたもの(レジストパターン剥離前のもの)でもかまわない。マスクパターンが形成される前段階の基板が検査対象である場合には、透過光を観察する図1の装置を変更し、反射光を観察することで検査が行える。
【0036】
マスクブランク製造工程においては、透明基板11の表面に遮光膜などの薄膜が形成される。透明基板11の材料には、例えば合成石英ガラス基板などが適している。また、繰り返しパターン12を構成する薄膜の材料には、例えばクロムなどの遮光性を有する材料や半透光性の材料が適している。かかる薄膜上にレジストが塗布されてレジスト膜が形成されることにより、マスクブランクが完成する。次いで、レジストパターン形成工程において、描画機によるレーザービームがマスクブランクのレジスト膜に照射される。ラスター描画方式などの任意の描画方式を用いた描画処理が施されて、所定のパターンがレジスト膜に露光される。所定のパターンを露光後、現像により、使用したレジスト(ポジレジストまたはネガレジスト)に応じて、描画部又は非描画部が選択的に除去されてレジストパターンが形成される。マスクパターン形成工程においては、レジストパターンをマスクとして薄膜がエッチングされて、繰り返しパターン(遮光膜パターン)12が形成される。次いで、残存レジストが除去される。フォトマスク10は、残存レジストが除去された後、フォトマスク10の製造工程の一環としてパターン欠陥検査工程が実施される。なお、上記フォトマスク10は、単層の遮光膜がパターニングされたいわゆるバイナリマスクであるほか、積層された遮光膜や半透光膜がそれぞれパターニングされてなる、多階調マスクであってもよい。積層膜をパターニングする場合には、マスクブランク製造工程からマスクパターン形成工程までの上記フォトリソグラフィ工程が複数回施される。
【0037】
パターン欠陥検査工程においては、個々のパターンに対して形状欠陥の検査を行うことができる。欠陥が発見された場合には、該フォトマスク10に、欠陥種別に応じて黒欠陥修正処理や白欠陥修正処理などを施すことができる。更に、上記レジスト除去後、または、上記パターン欠陥検査による修正処理の後に、フォトマスク10にはパターンムラの検査が行われる。この検査のため、上記フォトマスク10は、パターン検査装置1にセットされる。パターン欠陥検査工程において検査に合格したフォトマスク10にはペリクルが装着される。
【0038】
ペリクルが装着されたフォトマスク10を用いて、パターン転写工程が実施される。パターン転写工程においては、繰り返しパターン12を含む転写パターンがイメージデバイス用基板のレジスト膜に転写され、転写パターンに基づく画素パターンがイメージデバイス用基板の表面に形成される。上記画素パターンは、例えば液晶表示パネルの薄膜トランジスタや対向基板、カラーフィルタなどの繰り返しパターンである。
【0039】
次に、パターン欠陥検査工程においてフォトマスク10のパターンムラを検査するために用いられるパターン検査装置1の構成を説明する。
【0040】
フォトマスク10は、マスクパターン(又はレジストパターン)形成工程を経た後、図1に示されるようにステージ20に支持される。ステージ20は、例えばXYステージとして構成されており、フォトマスク10をX方向又はY方向に移動自在に支持する。本明細書においては、図1で紙面に垂直な方向をX方向と定義し、X方向と直交しかつ互いに直交する二方向をY方向、Z方向と定義する。かかる定義によれば、ステージ20は、繰り返しパターン12が形成されたフォトマスク10の表面(以下、「パターン形成面12a」と記す。)がXY平面と平行をなすようにフォトマスク10を支持する。また、撮像装置40は、その光軸AXがZ軸と平行をなすように支持されている。
【0041】
パターン検査装置1においては、照明装置30からの照射光により照射されたフォトマスク10の像を撮像装置40により撮影する必要がある。照射光を妨げないため、ステージ20が有する支持体は、例えばフォトマスク10の外周部分のみを支持するように枠状に形成されている。
【0042】
ステージ20によるフォトマスク10のX方向又はY方向の移動により、撮像装置40による撮影範囲(検査視野)が移動(走査)される。なお、ステージ20を固定ステージとした場合には、検査視野を走査すべく、照明装置30と撮像装置40を共にステージ20に対してX方向又はY方向に移動自在に構成する。
【0043】
図2は、パターン検査装置1の主要部分の構成を概略的に示す図である。図2に示されるように、照明装置30は、光源部31と照明光学系32を有している。光源部31には、例えば、少なくとも空間的に実質的にコヒーレントであって単波長の光を照射する光源が適している。この種の光源には例えば半導体レーザーなどのレーザーを使用することができる。
【0044】
照明光学系32は、フォトマスク10と光源部31との間に配置されている。照明光学系32は、光源部31からのコヒーレント光を平行化して透明基板11に入射角θi(単位:deg)で入射させる。なお、図2においては図面を明瞭化する便宜上、透明基板11内部を進む光線の図示は省略している。
【0045】
光源部31及び照明光学系32は、入射角θi(別の表現によれば、後述のフーリエ変換面の法線(光軸AX)と照明光学系32の光軸とがなす角度)が例えば0<θi<90の範囲(より好ましくは20<θi<80の範囲)に収まるように配置、構成されている。照明光学系32は、少なくとも撮像装置40による検査視野を含むパターン形成面12a上の一部の領域(例えばφ60〜70mm程度の領域)を照射する。フォトマスク10に対して照射光を斜入射させるように構成された装置を用いることにより、入射角に応じた所望の次数の回折光を利用して例えば液晶表示装置製造用などの表示デバイスに生じるパターンムラを容易に検出できるようになる。
【0046】
透明基板11は平行平面の光学基板である。そのため、コヒーレント光は、透明基板11から射出角θi(つまり入射角θiと同じ角度)で射出される。パターン形成面12aが射出角θiのコヒーレント光により照射されたとき、パターン形成面12aに形成された周期的構造(つまり繰り返しパターン12)により回折光が生じる。ここで、コヒーレント光は、撮像装置40の光軸AXに対して角度をなしている。そのため、0次を含む低次の回折光は、撮像装置40が位置する方向とは異なる方向に回折される。撮像装置40の光軸AXに平行な光路には、回折角θn(単位:deg)である−n次付近の高次の回折光が進む。撮像装置40が有する結像レンズ41には、実質的に、−n次およびそれより高次(絶対値が大きい)回折光のみが入射される。
【0047】
フォトマスク10の典型的なパターンムラは正常パターンに対して微細である。欠陥検査を精度良く行うには、物体の微細構造に関する情報を含む高次回折光を利用するのが好適である。そのため、パターン検査装置1は、低次回折光を排除すると同時に高次回折光を利用して、フォトマスク10のパターンムラの有無を検査するように構成されている。
【0048】
撮像装置40は、照明光学系32により照射されたパターン形成面12a上において生じた回折光を撮影するエリアカメラである。撮像装置40は、結像レンズ41の物体側焦点面をパターン形成面12aに位置させるように配置されている。また、撮像装置40は、固体撮像素子42(例えばCCD(Charge Coupled Device))を有している。固体撮像素子42は、受光面42aが結像レンズ41の像側焦点面に位置するように配置されている。そのため、パターン形成面12aを透過したコヒーレント光は、結像レンズ41によるフーリエ変換作用により、パターン形成面12aに置かれた透過画像に応じたフーリエ変換像を受光面42a上に形成する。固体撮像素子42は、受光面42a上のフーリエ変換像を光強度分布として検出して、得られた空間周波数スペクトルを検出光量に応じた電荷として蓄積し画像信号に変換する。変換された画像信号は、データ処理装置50に出力される。
【0049】
ここで、図3に、パターンムラの無い理想的なフォトマスク10を概略的に示す。図3に示されるように、理想的なパターン形成面12aには、繰り返しパターン12をなす複数の単位パターン13がマトリクス状に所定のピッチω(単位:μm)で配列される。本実施形態で想定される各単位パターン13は、例えば50〜600(単位:μm)の範囲に収まる線幅を有する。なお、図3に示される単位パターン13の数は便宜上である。パターン形成面12aに実際上形成される単位パターン13の数はより多数である。
【0050】
図4(A)〜図4(D)の各図に、パターン形成面12aに形成されるパターンムラの一例を示す。図4(A)〜図4(D)の各図においては、パターンムラが存在するパターン形成面12a上の欠陥領域に符号14を付す。図4(A)は、特定の単位パターン13群のピッチがピッチωと異なるパターンムラを示す。図4(B)は、特定の単位パターン13群の位置が他の単位パターン13群に対してずれたパターンムラを示す。図4(A)及び図4(B)に示されるパターンムラは、パターン位置精度に関するものであり、例えばレーザービームによる描画の繋ぎ目に生じる位置ズレが原因で発生する。図4(C)及び図4(D)は、特定の単位パターン13群が他の単位パターン13群より細く又は太くなるパターンムラを示す。図4(C)及び図4(D)に示されるパターンムラは、CD精度に関するものであり、例えば描画時におけるレーザービームの強度変動が原因で発生する。図4(A)〜図4(D)の各図に例示されるパターンムラ以外に、例えば特定の単位パターン13群に同じ形状欠陥が生じた場合なども、パターン検査装置1において対象となるパターンムラであることを言い添えておく。
【0051】
図5(A)、図5(B)の各図に、撮像装置40により撮影される空間周波数スペクトルを示す。なお、図5(A)、図5(B)の各図においては、図面の明瞭化のため、明暗を反転させて空間周波数スペクトルを図示している。
【0052】
図3に示されるように、単位パターン13群がパターンムラ無く規則的に配列されている場合、各単位パターン13の配列に起因して生じる回折光は、フーリエ変換面(受光面42a)に、ある周期をもって規則的に分布する。かかる場合、受光面42上で、十字型パターン100が等ピッチで並ぶ空間周波数スペクトルが検出される(図5(A)参照)。
【0053】
一方、図4(A)〜図4(D)の各図に示されるように、パターンムラがパターン形成面12aに形成されている場合、フーリエ変換面における回折光の分布がパターンムラに起因して乱れる。このときの乱れが空間周波数成分110となって現れる。空間周波数成分110は、典型的なパターンムラが正常な単位パターン13の形状に生じた空間周波数の高い異常成分であることから、図5(B)に示されるように、各十字型パターン100(の中心)から離れた位置に分布する。パターンムラの有無を精度良く検出するためには、空間周波数成分110を十字型パターン100から分離させて分布させる必要がある。ここで「分離」は、例えば一般的な情報端末による画像解析処理などにより、空間周波数成分110と十字型パターン100とが明確に区別できる程度に互いの画像が空間的に離れている状態を示す。
【0054】
具体的には、パターン形成面12aに形成された周期的構造により生じる回折光の回折次数の絶対値をnと定義し、光源部31が照射するコヒーレント光の波長をλ(単位:μm)と定義し、単位パターン13のピッチをω(単位:μm)と定義した場合に、n次回折光は、0次回折光に対して次の条件(1)
θn=sin−1(nλ/ω)・・・(1)を満たす角度で射出される。
【0055】
パターン形成面12aから距離L(単位:mm)離れた観察面上における0次回折光の位置とn次回折光の位置との差異(距離)をh(単位:mm)と定義した場合、距離hは、次の条件(2)
h=L(tanθn)・・・(2)
を満たす。
【0056】
さらに、検出したいエラー量をΔω(単位:μm)と定義し、エラーを含む部分の単位パターン13のピッチをω’(=ω±Δω、単位:μm)と定義し、単位パターン13のピッチがω、ω’であるときのそれぞれのn次回折光の上記観察面上における位置の差異(距離)をΔh(単位:mm)と定義した場合、距離Δhは、次の条件(3)
Δh=h−h’
=L(tanθn−tanθ’n)
=L{tan(sin−1(nλ/ω))−tan(sin−1(nλ/ω’))}・・・(3)
を満たす。
【0057】
距離Δhを観測する撮像装置40(結像レンズ41)の焦点距離をf(単位:mm)と定義し、単位パターン13のピッチがω、ω’であるときのそれぞれのn次回折光の受光面42a上における位置の差異(距離)をΔh’(単位:mm)と定義した場合、距離Δh’は、次の条件(4)
Δh’=f(tan(Δθn))・・・(4)
但し、Δθn=θn−θ’n
=tan−1(Δh’/f)
=sin−1(nλ/ω)−sin−1(nλ/ω’)
を満たす。
【0058】
さらに、固体撮像素子42の受光面42aに配列された画素のピッチをp(単位:mm)と定義する。このときパターンムラに起因して生じた空間周波数成分110を十字パターン100から分離させて撮影するためには、パターン検査装置1を次の条件(5)を満たすように構成する。
Δh’>p・・・(5)
【0059】
ところで、微細なパターンムラを高精度に検査するためには、先に述べたように高次回折光を利用することが好適である。本出願人は、フォトマスクの技術分野における技術常識(つまりフォトマスクの実像を観て欠陥検査を行う)に囚われること無く発想を転換し、フーリエ変換像を観て欠陥検査を行うことに着想した。そして、その着想から更に、パターンムラの有無を簡易かつ速やかに検査するため、上述した、パターンムラに対応するスペクトル(つまり空間周波数成分110)を十字型パターン100から分離させて観察する方法を想起している。本出願人は、パターンムラのサイズが正常パターン(単位パターン13)に対して微細であるほど、空間周波数成分110を十字型パターン100から分離させるにあたり、より高い次数の回折光の利用が好適であることを見出している。
【0060】
イメージデバイス用であるフォトマスク10の単位パターン13のピッチωと典型的なパターンムラのサイズとの関係を鑑みた場合、条件(5)を満たす構成のパターン検査装置1を用いて空間周波数成分110と十字型パターン100とを分離させるためには、結像レンズ41に入射させるn次回折光が次の条件(6)を満たすことが望ましい。
20≦n・・・(6)
n次回折光が条件(6)を満たす場合には、空間周波数成分110を十字型パターン100から分離させることができる。一方、n次回折光が条件(6)を満たさない場合には、空間周波数成分110を十字型パターン100から分離させることができない。
【0061】
ここで、回折光は、次数が高くなるほど光量が減少する。そのため、ノイズが増えるなどして検査精度が低下する懸念がある。そのため、n次回折光は、次の条件(7)を満たすことがより一層好ましい。
20≦n≦700・・・(7)
n次回折光が条件(7)を満たす場合には、受光面42a上で検出される空間周波数スペクトルのノイズによる劣化が抑えられるため、精度の高い検査が保障される。n次回折光が条件(7)の上限を超える場合には、空間周波数スペクトルのノイズが増加して、検査精度が低下する虞がある。
【0062】
なお、検査精度のより一層の向上には、n次回折光を例えば次の条件(8)を満たすように設定することが望ましい。
30<n<600・・・(8)
【0063】
以下に、パターン検査装置1の具体的数値構成を例示する。固体撮像素子42は、例えば1/3型でかつVGA(Video Graphics Array)である。この場合の画素ピッチpは6.35μmである。また、光源部31が照射するコヒーレント光の波長λ、結像レンズ41の焦点距離f、検査され得る典型的なパターンムラのサイズΔωは次の通りである。λ :0.532μm
f :50mm
Δω:0.1μm
【0064】
単位パターン13のピッチωが100μmであるとき、空間周波数成分110を十字型パターン100から分離させるには、−24次以上(フォトマスク10と照明装置30との位置関係によっては+24次以上)の次数の回折光を結像レンズ41に入射させるようにパターン検査装置1を構成する。また、単位パターン13のピッチωが200μm、300μmであるとき、空間周波数成分110を十字型パターン100から分離させるには、それぞれ、−92次以上(上記位置関係によっては+92次以上)、−200次以上(上記位置関係によっては+200次以上)の次数の回折光を結像レンズ41に入射させるようにパターン検査装置1を構成する。
【0065】
例えば単位パターン13のピッチωが400μm、500μm又は600μmのフォトマスク10を検査する場合を考える。ピッチωが400μm、500μm、600μmであるとき、空間周波数成分110を十字型パターン100から分離させるには、それぞれ、−339次以上(上記位置関係によっては+339次以上)、−502次以上(上記位置関係によっては+502次以上)、−681次以上(上記位置関係によっては+681次以上)の次数の回折光を結像レンズ41に入射させるようにパターン検査装置1を構成する。
【0066】
データ処理装置50は、例えば一般的なデスクトップPC(Personal Computer)であり、フォトマスク10の欠陥検査を行うための欠陥検査用アプリケーションがインストールされている。データ処理装置50は、欠陥検査用アプリケーションを起動して、固体撮像素子42から出力される画像信号に基づき検査画像(例えば図5(A)や図5(B)に示される画像)を生成する。次いで、生成された検査画像と所定のリファレンス画像(パターンムラが存在しない理想的なフォトマスク10の空間周波数スペクトルであって、実質的に空間周波数成分110が現れていない画像)とを比較して差分を検出する。データ処理装置50は、検出された差分に基づいてフォトマスク10に対するパターンムラの有無を判定する。具体的には、データ処理装置50は、空間周波数成分110が十字型パターン100から分離して現れているときには、フォトマスク10がパターンムラを含むと判定する。一方、空間周波数成分110が現れていないとき(空間周波数成分110が十字型パターン100から分離していないとき)には、フォトマスク10にパターンムラが含まれないと判定する。データ処理装置50による判定結果は、ディスプレイ60に表示される。
【0067】
作業者は、ディスプレイ60に表示される判定結果に基づき、フォトマスク10のはパターンムラの有無を確実に把握することができる。フォトマスク10に対するパターンムラの有無の判定は、例えばフォトマスク10の有効領域全体の走査が完了した時点、或いはパターンムラが検知された時点で終了する。
【0068】
本実施形態のパターン検査装置1によれば、従来のように欠陥種別を考慮して検査条件(フォーカスの調整など)を変更し欠陥種別に応じた検査を繰り返し行う必要が無い。検査条件を変更すること無くフォトマスク10を連続的に走査して検査できるため、検査時間が大幅に短縮される。フォトマスク10の有効領域全体を走査してパターンムラが無いと判定された場合には、フォトマスク10の品質保証が簡易かつ速やかに得られることとなる。この場合は、パターンムラの具体的内容を検査することなく次工程に進むことができ、製造効率の向上に資する。なお、パターンムラの具体的内容を検査、解析するため、例えば結像レンズ41によるフーリエ変換像を実像に変換し、変換された実像を撮影して解析する構成をパターン検査装置1に組み込んでもよい。
【0069】
このように、本実施形態のパターン検査装置1によれば、パターンムラの有無を簡易かつ速やかに検査できるため、検査時間が大幅に短縮されてリードタイム面などで有利である。また、本実施形態のパターン検査装置1は、低次回折光のノイズを除去するための空間フィルタを必須としない簡易な構成であるため、設計開発時又は製造時の負担が軽減される。
【0070】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 パターン検査装置
10 フォトマスク
20 ステージ
30 照明装置
40 撮像装置
50 データ処理装置
60 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位パターンの周期的配列からなる繰り返しパターンが透明基板上に形成されたフォトマスクのパターンムラを検査するパターン検査方法において、
前記繰り返しパターンを所定の光束により照射する照射ステップと、
前記光束による前記繰り返しパターンの照射により生じた回折光に対応するフーリエ変換像を検出するフーリエ変換像検出ステップと、
前記検出されたフーリエ変換像に基づき前記フォトマスクのパターンムラの有無を判定するパターンムラ判定ステップと、
を含み、
前記フーリエ変換像検出ステップにおいて、前記フォトマスクのパターンムラに対応するフーリエ変換像と、正常パターンに対応するフーリエ変換像とが空間的に分離されるように、前記回折光のうち所定の高次回折光に対応するフーリエ変換像を検出することを特徴とするパターン検査方法。
【請求項2】
前記高次回折光は、次数の絶対値が20〜700であることを特徴とする、請求項1に記載のパターン検査方法。
【請求項3】
単位パターンの周期的配列からなる繰り返しパターンが透明基板上に形成されたフォトマスクのパターンムラを検査するパターン検査方法において、
前記繰り返しパターンを所定の光束により照射する照射ステップと、
前記光束による前記繰り返しパターンの照射により生じた回折光に対応するフーリエ変換像を所定の光学系を介して検出するフーリエ変換像検出ステップと、
前記検出されたフーリエ変換像に基づき前記フォトマスクのパターンムラの有無を判定するパターンムラ判定ステップと、
を含み、
前記光束の波長をλ(単位:μm)と定義し、前記単位パターンのピッチをω(単位:μm)と定義し、前記パターンムラを含む該単位パターンのピッチをω’(単位:μm)と定義し、前記光学系の焦点距離をf(単位:mm)と定義し、前記フーリエ変換像が検出されるフーリエ変換面の分解能をp(単位:mm)と定義し、0次の前記回折光に対してn次の前記回折光がなす角度をθn(単位:deg)と定義した場合に、前記フーリエ変換像検出ステップにおいて、前記回折光のうち次の条件を満たすn次の前記回折光、
f(tan(Δθn))>p
但し、Δθn=sin−1(nλ/ω)−sin−1(nλ/ω’)
に対応するフーリエ変換像を検出することを特徴とするパターン検査方法。
【請求項4】
前記フーリエ変換像が検出されるフーリエ変換面の法線と、前記照射ステップにおいて前記光束を照射する照明光学系との光軸とがなす角度をθiと定義した場合に、
0<θi<90
を満たすことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れかに記載のパターン検査方法。
【請求項5】
前記照射ステップにおいて照射される前記光束は、少なくとも空間的に実質的にコヒーレントであって単波長の平行光束であることを特徴とする、請求項1から請求項4の何れかに記載のパターン検査方法。
【請求項6】
前記パターンムラ判定ステップにおいては、前記フーリエ変換像検出ステップで検出されたフーリエ変換像と所定のリファレンス像とを比較し、比較結果に基づいて前記フォトマスクのパターンムラの有無を判定することを特徴とする、請求項1から請求項5の何れかに記載のパターン検査方法。
【請求項7】
一度に検査可能な検査領域が前記フォトマスクの検査対象全域より狭い場合に、
前記フォトマスクを移動させて前記検査領域を連続的に走査しつつ、該検査領域に対して、前記照射ステップ、前記フーリエ変換像検出ステップ、前記パターンムラ判定ステップの各ステップを実施して、前記フォトマスクのパターンムラの有無を判定することを特徴とする、請求項1から請求項6の何れかに記載のパターン検査方法。
【請求項8】
マスクブランクに所定のマスクパターンを形成してフォトマスクを製造するフォトマスク製造方法において、
請求項1から請求項7に記載のパターン検査方法を実施して、前記マスクパターンが形成されたフォトマスクのパターンムラの有無を判定するステップを含むことを特徴とするフォトマスク製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のフォトマスク製造方法を実施して製造されたフォトマスクを用いて転写対象基板に前記マスクパターンを転写することを特徴とするパターン転写方法。
【請求項10】
単位パターンの周期的配列からなる繰り返しパターンが透明基板上に形成されたフォトマスクパターンムラを検査するパターン検査装置において、
前記繰り返しパターンを所定の光束により照射する照射手段と、
前記照射手段により前記繰り返しパターンを照射した際に生じた回折光に対応するフーリエ変換像を検出するフーリエ変換像検出手段と、
前記検出されたフーリエ変換像に基づき前記フォトマスクのパターンムラの有無を判定するパターンムラ判定手段と、
を有し、
前記フーリエ変換像検出手段は、前記フォトマスクのパターンムラに対応するフーリエ変換像と、正常パターンに対応するフーリエ変換像とが空間的に分離されるように、前記回折光のうち所定の高次回折光に対応するフーリエ変換像を検出することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項11】
前記高次回折光は、次数の絶対値が20〜700であることを特徴とする、請求項10に記載のパターン検査装置。
【請求項12】
単位パターンの周期的配列からなる繰り返しパターンが透明基板上に形成されたフォトマスクのパターンムラを検査するパターン検査装置において、
前記繰り返しパターンを所定の光束により照射する照射手段と、
前記照射手段により前記繰り返しパターンを照射した際に生じた回折光に対応するフーリエ変換像を検出するフーリエ変換像検出手段と、
前記検出されたフーリエ変換像に基づき前記フォトマスクのパターンムラの有無を判定するパターンムラ判定手段と、
を有し、
前記フーリエ変換像検出手段は、前記光束の波長をλ(単位:μm)と定義し、前記単位パターンのピッチをω(単位:μm)と定義し、前記パターンムラを含む該単位パターンのピッチをω’(単位:μm)と定義し、前記光学系の焦点距離をf(単位:mm)と定義し、前記フーリエ変換像が検出されるフーリエ変換面の分解能をp(単位:mm)と定義し、0次の前記回折光に対してn次の前記回折光がなす角度をθn(単位:deg)と定義した場合に、前記回折光のうち次の条件を満たすn次の前記回折光、
f(tan(Δθn))>p
但し、Δθn=sin−1(nλ/ω)−sin−1(nλ/ω’)
に対応するフーリエ変換像を検出することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項13】
前記照射手段は、前記光束を照射するための照明光学系を有し、
前記フーリエ変換像が検出されるフーリエ変換面の法線と、前記照明光学系との光軸とがなす角度をθiと定義した場合に、
0<θi<90
を満たすことを特徴とする、請求項10から請求項12の何れかに記載のパターン検査装置。
【請求項14】
前記光束は、少なくとも空間的に実質的にコヒーレントであって単波長の平行光束であることを特徴とする、請求項10から請求項13の何れかに記載のパターン検査装置。
【請求項15】
前記パターンムラ判定手段は、前記フーリエ変換像検出手段で検出されたフーリエ変換像と所定のリファレンス像とを比較し、比較結果に基づいて前記フォトマスクのパターンムラの有無を判定することを特徴とする、請求項10から請求項14の何れかに記載のパターン検査装置。
【請求項16】
一度に検査可能な検査領域が前記フォトマスクの検査対象全域より狭い場合に、
前記フォトマスクを移動させて前記検査領域を連続的に走査させる検査領域走査手段をさらに有することを特徴とする、請求項10から請求項15の何れかに記載のパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−181296(P2010−181296A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25473(P2009−25473)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】