説明

パチンコ遊技機

【課題】通常の遊技球より径大な径大球を近接スイッチの球検出孔部に詰まらせて、電波により近接スイッチを誤作動させる不正行為を防止し得るパチンコ遊技機を提供する。
【解決手段】入賞口から近接スイッチ17の球検知孔部19による検知可能領域Lの直前位置までの球流路に、球検知孔部19の直径と略等しい直径または幅員で、球検知孔部19の直径より径大な径大球X2 を停留させ、かつ検知可能領域Lへの径大球X2 の進入を阻止する径大球停留部26を設けた。これにより、不正行為者が径大球X2 を入賞口に入賞させると、該径大球X2 が径大球停留部26に停留されて、検知可能領域Lに到達しないため、不正行為者が発射する電波によって近接スイッチ17が球検知信号を送出する誤作動を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入賞口と連通する球流路に近接スイッチが配設されたパチンコ遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機に対して行われる不正行為としては、例えば、磁石を用いて遊技球を入賞口に導く不正行為、パチンコ遊技機を叩いたり揺すったりして振動を与えることで遊技球を入賞口に導く不正行為、遊技盤を覆う前面扉を開放して遊技球を入賞口に直接入賞させる不正行為等が知られている。
【0003】
このような不正行為に対する不正検知手段として、磁石を検知するセンサを設けたもの(例えば、特許文献1参照)、振動を検知するセンサを設けたもの(例えば、特許文献2参照)、前面扉の開放を検知する扉開閉センサを設けたもの(例えば、特許文献3参照)等が案出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−186766号公報
【特許文献2】特開2005−46522号公報
【特許文献3】特開平9−276511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、入賞口に入賞した遊技球の検知手段としては、入賞口と連通する球流路に配設されて、球検知孔部を遊技球が通過することにより球検知信号を送出する高周波誘導型の近接スイッチが多用されているが、近年、この近接スイッチを誤作動させる手口の不正行為が行われている。これは、近接スイッチの球検知孔部を通過可能な通常の遊技球より径大な径大球を発射して、入賞口に入賞させ、図6(A)に示すように、近接スイッチaの球検知孔部bに径大球cを詰まらせた状態とした後、該径大球cに向けて電波を発射することにより、近接スイッチaを誤作動させて球検知信号を送出させるものである。
【0006】
ここで、高周波誘導型の近接スイッチaは、図6(B)に示すように、球検知孔部bの内周壁を囲繞するようにしてコイルeが配設されており、該コイルeに流れる電流によって磁束fが形成されている。これにより、球検知孔部bを金属製の遊技球が通過するとインピーダンスが変化するため、そのインピーダンスの変化により、金属体を検知するようになっている。従って、その原理上、電気的なノイズに弱く、球検知孔部bに詰まった径大球cが電波を受けることにより発生する電気的なノイズが磁束fを乱し、その乱れがインピーダンスを変化させることによって、遊技球を検知したものとして球検知信号を送出する誤作動を近接スイッチaに生じさせることとなるのである。
【0007】
本発明は、かかる径大球を用いた不正行為を防止し得るパチンコ遊技機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、遊技領域に入賞口を備え、該入賞口と連通する球流路に、球検知孔部を遊技球が通過することにより球検知信号を送出する近接スイッチからなる入賞検知スイッチが配設されたパチンコ遊技機において、前記入賞口から球検知孔部による検知可能領域の直前位置までの球流路に、球検知孔部の直径と略等しい直径または幅員で、球検知孔部の直径より径大な径大球を停留させ、かつ検知可能領域への径大球の進入を阻止する径大球停留部を設けたことを特徴とするパチンコ遊技機である。
【0009】
ここで、近接スイッチとしては、球検知孔部の内周壁の外側に、該内周壁を囲繞するコイルが配設された高周波誘導型の近接スイッチが好適に用いられ得る。また、近接スイッチの球検知孔部は、入賞口と連通する球流路の一部を構成するものである。
【0010】
上記パチンコ遊技機にあって、径大球停留部が、球検知孔部の上部を嵩上げして設けられている構成が提案される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述したように、入賞口から球検知孔部による検知可能領域の直前位置までの球流路に、球検知孔部の直径と略等しい直径または幅員で、球検知孔部の直径より径大な径大球を停留させ、かつ検知可能領域への径大球の進入を阻止する径大球停留部を設けたので、不正行為者が、通常の遊技球より径大な径大球を入賞口に入賞させると、該径大球が径大球停留部に停留されて、球検知孔部による検知可能領域に到達しないため、不正行為者が発射する電波によって近接スイッチが球検知信号を送出する誤作動を防止することができる。
【0012】
また、前記径大球停留部が、球検知孔部の上部を嵩上げして設けられている構成にあっては、近接スイッチの外郭を構成するケース本体の球検知孔部分の厚みを嵩高に形成することにより径大球停留部とすることができるため、径大球停留部を極めて容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例にかかるパチンコ遊技機の遊技盤1を示す正面図である。
【図2】同上の実施例の可変入賞装置13の拡大正面図である。
【図3】近接スイッチ17の配設態様を示す要部の断面図である。
【図4】(A)は近接スイッチ17の外観斜視図、(B)は近接スイッチ17の断面図、(C)は球検知孔部19の検知可能領域Lを示す説明図である。
【図5】変形実施例にかかる近接スイッチ17の外観斜視図である。
【図6】(A)は従来構成の近接スイッチaの球検知孔部bに詰まらせた径大球cに向けて電波を発射する不正行為を示す説明図、(B)は従来構成の近接スイッチaの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施例を、図1〜図4に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、パチンコ遊技機の遊技盤1には、その前面側に略円形の誘導レール3で囲繞された遊技領域4が設けられており、該遊技領域4の略中央にセンターケース5が配設されている。このセンターケース5には、液晶表示器からなる図柄表示装置6が組み付けられており、該図柄表示装置6の表示画面7には、三つの特別図柄A,B,Cが変動表示される。また、表示画面7の一部領域には、普通図柄表示部9が設けられており、該普通図柄表示部9には右図柄と左図柄とからなる二つの普通図柄E1 ,E2 が変動表示される。この普通図柄E1 ,E2 は、「7」と「−」の二種類の図柄で構成されており、右図柄及び左図柄がともに「7」で停止する当り図柄態様が確定表示された場合には、後述する可変入賞装置13の可動翼片15,15が開閉駆動される。尚、前記図柄表示装置6としてはCRT表示器等を用いることも可能である。
【0016】
センターケース5の左右側方には、普通図柄始動ゲート(普通図柄始動領域)12,12が配設されており、遊技球の通過により、各普通図柄始動ゲート12が具備する普通図柄始動スイッチ(図示省略)から遊技球検知信号が発生すると、前記普通図柄表示部9の普通図柄E1 ,E2 が変動し、所定時間経過後に停止して種々の組み合わせの図柄態様が表示される。
【0017】
センターケース5の下方には、左右一対の可動翼片15,15を備えた可変入賞装置13が配設されている。可動翼片15,15は、図2に示すように、基部が夫々支軸10,10によって回動可能に軸支されており、図2(A)に示すように入賞口14の左右両側で、一個の遊技球が上方から入賞可能な間隔で起立する起立位置と、図2(B)に示すように前記起立位置から逆ハ字形に外側方に拡開して遊技球の入賞を容易とする傾動位置とに変換駆動されることにより、入賞口14の開口度が変化するようになっている。
【0018】
そして、前記普通図柄表示部9の表示結果が所定の当り図柄態様の場合には、普通電動役物ソレノイド27の駆動を介して可動翼片15,15が所定時間(約 0.2秒間)外側方に拡開されて、入賞口14に遊技球が入り易い状態となる。該入賞口14は、前記図柄表示装置6の特別図柄A,B,Cを変動させる契機となる図柄始動口となっており、該入賞口14と連通する球流路16(図3参照)に配設された近接スイッチ17による遊技球の入賞検知に伴って、前記図柄表示装置6の表示画面7に特別図柄A,B,Cを変動表示する図柄生成行程が実行される。尚、この近接スイッチ17は本発明の要部にかかるものであり、詳しくは後述する。
【0019】
可変入賞装置13の下方には変動入賞装置23が配設されている。該変動入賞装置23は、横長矩形状の開閉扉22を有する大入賞口21を備えており、開閉扉22がソレノイド(図示省略)等の駆動源によって前後方向に開閉駆動されることによって、大入賞口21が開放状態と閉鎖状態とに変換されるようになっている。
【0020】
そして、前記図柄表示装置6の表示画面7に変動表示される特別図柄A,B,Cが、所定の組み合わせの当り図柄態様で確定表示された場合に大当たりとしての特別遊技作動が実行される。この特別遊技作動は、開閉扉22が前方に傾倒して開き、その開放状態で開閉扉22の上面の案内作用を介して、大入賞口21内へ遊技球を案内するとともに、所定開放時間(例えば30秒間)の満了、またはその所定開放時間中における所定個数(例えば 9個)の遊技球の入賞により開閉扉22が起立して大入賞口21が閉鎖される遊技作動を、大入賞口21の内部に設けられた特定領域の球通過を条件として所定制限回数(例えば14回)継続するものであって、この特別遊技作動の実行によって多量の遊技球が入賞し、遊技者に所定の利益が供与される。
【0021】
また、遊技領域4には、複数の一般入賞口24が配設されており、その内部に具備する入賞検知スイッチとしての近接スイッチ(図示省略)による遊技球の入賞検知に伴って所定数の賞球が払い出される。
【0022】
尚、パチンコ遊技機は、各種遊技作動を実行する複数の副制御基板(図示省略)と、該副制御基板を統括的に制御するマイクロコンピュータを具備した主制御基板(図示省略)とからなる遊技制御手段を備えており、該遊技制御手段によって種々の遊技作動が制御実行されるようになっている。
【0023】
次に、本発明の要部について説明する。
前記入賞口14の内奥部は、図3に示すように、入賞した遊技球が流下する球流路16と連通しており、該球流路16に高周波誘導型の近接スイッチ17からなる入賞検知スイッチが略水平状に配設されている。該近接スイッチ17は、図4(A)に示すように、その外郭を構成する合成樹脂からなる矩形状のケース本体18を備えており、該ケース本体18の長手方向の一端寄り位置に表裏面を貫通する球検知孔部19が形成されている。そして、該球検知孔部19が遊技球の流下する球流路16の一部となっている。該球検知孔部19の内周壁20の外側には、図4(B)に示すように、その下部に位置させて内周壁20を囲繞するようにコイル25が配設されており、ケース本体18の長手方向の他端寄り位置には、該コイル25と接続されたスイッチ回路基板(図示省略)が収納されている。尚、該スイッチ回路基板は主制御基板と電気的に接続されており、球検知孔部19を遊技球が通過することにより送出される球検知信号が主制御基板に入力される。
【0024】
前記入賞口14から球検知孔部19による検知可能領域の直前位置までの球流路16には、球検知孔部19の直径と略等しい直径または幅員で径大球停留部26が設けられている。本実施例では、ケース本体18の上下方向の厚みを、図6(B)に示す従来構成の近接スイッチaの厚みに比して厚く形成することによって、球検知孔部19の上部が嵩上げされており、これによって、ケース本体18の上面に球検知孔部19の直径と略等しい直径の孔部からなる径大球停留部26が設けられている。ここで、球検知孔部19及び径大球停留部26の直径は11.4±0.1mmで形成されており、直径11±0.05mmで形成される通常の遊技球X1 (図4(C)参照)は通過可能となっている。一方、球検知孔部19及び径大球停留部26の直径11.4±0.1mmを超える通常の遊技球より径大な径大球X2 (図4(B)参照)は通過不能であり、径大球停留部26に停留されることとなる。また、通過する遊技球X1 を球検知孔部19内で検知可能な領域は、図4(C)に示す検知可能領域Lとなっており、該検知可能領域Lに径大球X2 が上方から進入しない高さ位置に径大球停留部26が設けられている。
【0025】
かかる構成にあって、不正行為者が発射した通常の遊技球より径大な径大球X2 が入賞口14に入賞すると、該径大球X2 は球流路16を流下して該球流路16に設けられた近接スイッチ17の径大球停留部26に停留される。これにより、該径大球X2 が球検知孔部19による検知可能領域Lに到達しないため、不正行為者が発射する電波によって近接スイッチ17が球検知信号を送出する誤作動を防止することができる。
【0026】
また、近接スイッチ17の外郭を構成するケース本体18の、少なくとも球検知孔部19部分を嵩上げすることにより径大球停留部26を設けたので、球流路16の他の部分の構成を何ら変更することなく径大球停留部26を極めて容易に設けることができる。
【0027】
尚、上記実施例にあっては、径大球停留部26を、球検知孔部19の直径と略等しい直径の孔部としているが、図5に示す変形実施例のように、球検知孔部19の直径と略等しい幅員の溝部28によって構成することも可能である。また、このように近接スイッチ17のケース本体18に径大球停留部26を一体形成する構成に代えて、入賞口14から近接スイッチ17に至る球流路16内に、丸孔または角孔からなる径大球停留部26を設けることも可能である。
【0028】
また、近接スイッチ17からなる入賞検知スイッチが配設された球流路16と連通する入賞口14として、左右一対の可動翼片15,15が、起立位置と、該起立位置から逆ハ字形に外側方に拡開して遊技球の入賞を容易とする傾動位置とに変換駆動される可変入賞装置13について説明したが、入賞口14はこれ以外に、横長矩形状の開閉扉22が前後方向に開閉駆動される変動入賞装置23の大入賞口21や、固定的な開口部を備えた一般入賞口24であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
4 遊技領域
14 入賞口
16 球流路
17 近接スイッチ(入賞検知スイッチ)
19 球検知孔部
26 径大球停留部
L 検知可能領域
X2 径大球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技領域に入賞口を備え、該入賞口と連通する球流路に、球検知孔部を遊技球が通過することにより球検知信号を送出する近接スイッチからなる入賞検知スイッチが配設されたパチンコ遊技機において、
前記入賞口から球検知孔部による検知可能領域の直前位置までの球流路に、球検知孔部の直径と略等しい直径または幅員で、球検知孔部の直径より径大な径大球を停留させ、かつ検知可能領域への径大球の進入を阻止する径大球停留部を設けたことを特徴とするパチンコ遊技機。
【請求項2】
径大球停留部が、球検知孔部の上部を嵩上げして設けられていることを特徴とする請求項1記載のパチンコ遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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