説明

パッキン

【課題】 扉受け側に設けられた逆テーパの溝に嵌り易く、また、扉に押圧されるパッキンがその全長(扉の全周)に亘って均等、かつ、柔軟に変形して完璧なパッキン効果を発揮できるパッキンを、従来技術を検討した上で鋭意研究した結果、本発明の完成を見たのである。
【解決手段】 柔軟な合成ゴム乃至合成樹脂で形成されほぼ三角形状の外面1とその外面形状に沿ったほぼ三角形状の内面2を有する中空のパッキンPであって、内面2の左右斜辺と頂部にパッキンPの長さ方向に沿った溝部3a,3b,4を形成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧乃至は断熱などの目的でエアタイト性が要求される扉に適用して特に好適なパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に耐圧性や断熱性など扉の内,外で遮断性が求められる部屋や保管庫などの開口部に設置される扉は、その扉受けの部位に、扉の外周縁に沿って弾力性のあるパッキンが装着されることが多い。
【0003】
このようなパッキンにおいて、扉受け側にパッキン装着用の溝が形成されている場合には、その溝に嵌り易く、かつ、嵌めた後にその溝から容易には離脱しない断面のパッキンが用いられる。例えば、扉受け側に「あり溝」状の逆テーパ断面の溝が設けられている場合、溝の断面の入口が溝の底より狭いため、溝の断面に合った断面形状に嵌合部を形成したゴム製やプラスチック製のパッキンであると、溝に嵌めた後、離脱し難いという利点がある一方、溝に嵌める作業に手間取る、つまり、溝に嵌まり難いという問題がある。
【0004】
溝に嵌まり易いことを考えると、O−リング状断面のチューブ状のパッキンを使いたくなるが、O−リング状断面のパッキンでは、溝に嵌まった状態で扉受けの外面からの突出量が少なくなるため、十分なパッキン効果が得られないおそれがある。
【0005】
また、装着されたパッキンによって、扉を閉じたときにそのパッキンが扉の全周に亘り均等に変形しないと、扉全体において均等な遮断性能(耐熱や耐圧など)が得られない場合がある。
【0006】
従来、扉用のシール材乃至パッキン材として断面が中空の略三角形状、或は、充実した略三角形状のシール材やパッキン材が特許文献1〜5などとして公知であるが、いずれも上述した問題点を解決できる形態(断面形状)を備えたものではない。
【特許文献1】特許第2849502号公報
【特許文献2】特開平8−61507号公報
【特許文献3】実用新案登録第2558147号公報
【特許文献4】特公平7−38614号公報
【特許文献5】実開平61−71784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者らは、扉受け側に設けられた逆テーパの溝に嵌り易く、また、扉に押圧されるパッキンがその全長(扉の全周)に亘って均等、かつ、柔軟に変形して完璧なパッキン効果を発揮できるパッキンを、従来技術を検討した上で鋭意研究した結果、本発明の完成を見たのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明者らが上記課題を解決することを目的として完成した本発明パッキンの構成は、柔軟な合成ゴム乃至合成樹脂で形成されほぼ三角形状の外面とその外面形状に沿ったほぼ三角形状の内面を有する中空のパッキンであって、内面の左右斜辺と頂部にパッキンの長さ方向に沿った溝部を形成したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明パッキンには、その外面の底辺央部に微小凸部を形成したものもある。また、パッキンの内面に形成する溝は、内面斜辺では略凹状の断面を有する溝であり、内部頂部の溝は小径の円形状の断面の溝であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明パッキンは、柔軟な合成ゴム乃至合成樹脂で形成されたほぼ三角形状の外面とその外面形状に沿ったほぼ三角形状の中空内面を有するようにパッキンを形成すると共に、中空内面の左右斜辺と頂部にこのパッキンの長さ方向に沿った溝部を形成して構成したので、扉受け側の設けた逆テーパ状断面の溝に容易に嵌めることができる一方、脱落することがなく、また、中空内面に設けた溝によって、パッキン全体が均等に変形するので、高いパッキン効果を得ることができる。しかも、この三角形中空断面のパッキンは、押出成形により容易に大量生産できるので、そのコストも至って低廉になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明パッキンの実施の形態例について、図を参照して説明する。図1は本発明パッキンの正断面図、図2は、図1のパッキンを扉受けの外面に形成した逆テーパ溝に嵌めた本発明パッキンの状態の要部の平断面図、図3は図2のパッキンと閉じた扉の当り面との関係を例示した平断面図である。
【0012】
図1において、Pは、外形1を大略正三角形状乃至はそれに近い形状に形成した本発明パッキンの一例で、内部が外形1とほぼ相似形をなす三角形状の中空部2に形成されている。
【0013】
上記パッキンPは、一例としてシリコンゴムの押出し成形により形成するが、使用する材質はシリコンゴムに限られるものではなく、成形可能で柔軟な他の合成ゴムやプラスチック材であってもよい。また、図1に示した本発明パッキンPは、この例では、外形の1辺が15mm前後の三角形状に成形されているが、この寸法も例示したものに限られるものではない。
【0014】
本発明パッキンPは、上記の押出し成形時、その内部の中空部2の各辺に、以下に説明する形状,形態が同時に付与される。
【0015】
即ち、図1における中空部2の左,右の斜辺の略中間部には、断面が略凹状をなす溝部3a,3bが形成されると共に、頂部には、小径の略円形断面の溝部4が形成される。そして、この実施形態例では、三角形状の底辺の外面央部に微小凸部5が形成される。
【0016】
図1の本発明パッキンPは、図2に例示した片開き扉用の扉受け6の外面6aに、後述する扉8の内面(当り面)8aにおける外周縁の内側に対応して、平断面が逆テーパ状をなすパッキン嵌入溝7が形成されているので、この溝7に、当該パッキンPがその三角形状の底辺側から嵌入される。この嵌入において本発明パッキンPは、柔軟性のあるシリコンゴムなどによる中空の成形品であるから、溝7への嵌入時に容易に変形して嵌入作業を容易にする。しかも、このパッキンPにおける外形1の底辺側と2つの斜辺が、逆テーパ状の溝7にほぼ合致する形状であるため、一旦溝7に嵌入されると、溝7から容易に離脱することはない。
【0017】
図2のように本発明パッキンPが溝7に装着された状態の扉受け6に、片開き扉8が閉じられ、その内面8aが溝7に保持された本発明パッキンPにおいて、前記溝7から突出している外形1の頂部に当接すると、当該パッキンPは、中空部2の両斜辺が、扉8が当接する内面頂部に形成した溝部4の作用で左右均等に開き、全体として三角形が頂点から潰され加減になると共に、左右の斜辺の潰れ作用が凹状の溝3a,3bによって当該左右の斜辺に均等に伝わり、偏った潰れ変形をすることがない。
【0018】
因みに、図2において、本発明パッキンPは、扉受け6の外面から約4〜5mm程度突出しており、扉8の内面8aが当接すると図3に例示したように、約2mm前後の隙間を保って、当該パッキンPにおける外形1の頂部が押し潰された形になる。
【0019】
この結果、扉受け6の外面6aと扉8の内面8aとは、本発明パッキンの三角形状をなす外形1の頂部と底辺外面の微小凸部5によってほぼ完成に遮断されるので、扉8の内,外において耐熱,耐圧等の遮断性が要求される扉におけるその扉と扉受けとの間に介在させるパッキンとしてきわめて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は以上の通りであって、柔軟な合成ゴム乃至合成樹脂によりほぼ三角形状の外面とその外面形状に沿ったほぼ三角形状の内面を有する中空のパッキンを形成すると共に、内面の左右斜辺と頂部にこのパッキンの長さ方向に沿った溝部を形成して本発明パッキンを構成したので、扉受け側に設けた逆テーパ状断面の溝に容易に嵌って脱落することがなく、また、内面に設けた溝部によって、パッキン全体が均等に変形するので、扉の内外面における高い遮断性を実現するパッキン効果を得ることができる。
【0021】
しかも、本発明パッキンは、断面形状が簡潔かつ端正であるから、成形金型も容易に作成でき、よって、高性能パッキンを低コストで大量生産することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明パッキンの一例の正断面図。
【図2】図1のパッキンを扉受けの外面に形成した溝に嵌めた本発明パッキンの状態の要部の平断面図。
【図3】図2のパッキンと閉じた扉の面との関係を例示した平断面図。
【符号の説明】
【0023】
P パッキン
1 パッキンの外形
2 パッキンの中空部
3a,3b 中空部2の左右の斜辺の溝部
4 中空部2の頂部の溝部
5 外部底辺の微小凸部
6 扉受け
7 パッキン嵌入溝
8 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な合成ゴム乃至合成樹脂で形成されほぼ三角形状の外面とその外面形状に沿ったほぼ三角形状の内面を有する中空のパッキンであって、内面の左右斜辺と頂部にパッキンの長さ方向に沿った溝部を形成したことを特徴とするパッキン。
【請求項2】
外面の三角形状は略二等辺三角形乃至正三角形である請求項1のパッキン。
【請求項3】
パッキンの内面に形成する溝は、内面斜辺では略凹状の断面を有する溝であり、内部頂部の溝は小径の円形状の断面を有する溝である請求項1又は2のパッキン。
【請求項4】
外面の底辺央部に微小凸部を形成した請求項1〜3のいずれかのパッキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−100386(P2007−100386A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291566(P2005−291566)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】