説明

パック剤組成物

【課題】海藻パックと同様の効果を、アレルギー反応を人に生じさせることなく且つヒートマットや遠赤外線ドームサウナでの加温を必要とせずに、家庭でも手軽に得られるパック剤組成物を提供する。
【解決手段】パック剤組成物は、緑藻類化石の粉末を含有する。必要に応じ、増粘剤及びpH調製剤を更に含有する。緑藻類化石の粉末の含有量は、50〜90重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パック剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タラソテラピーの療法の一つとして海藻療法が行われており、その代表的な形態として、各種ビタミンやミネラル、酸性多糖体(フコイダン)に富んだ昆布やわかめの粉末を主成分とする海藻パックが用いられている。通常、ペースト状の海藻パックを全身に適用した後、海藻パックの有効成分の経皮吸収を促進させ、皮膚の新陳代謝を高めるため、20分前後、ヒートマットや遠赤外線ドームサウナで加温することが行われている。このような処置より、血行や代謝機能が促進され、皮膚再生サイクルの正常化が促され、肌に張りと弾力が付与され、皮膚の保湿性も向上する(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】“タラソテラピー”[平成19年3月20日検索]、インターネット<URL:http://www.reshi.net/taraso/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昆布やワカメ等の海藻は有機物であるため、人によってはアレルギー反応を引き起こす場合があった。また、所期の効果を得るためにはヒートマットや遠赤外線ドームサウナでの加温が必要となるため、家庭やエステサロンで手軽に海藻パックを利用することができなかった。
【0005】
本発明は、以上の問題を解決しようとするものであり、海藻パックと同様の効果を、アレルギー反応を人に生じさせることなく且つヒートマットや遠赤外線ドームサウナでの加温を必要とせずに、家庭でも手軽に得られるパック剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、海藻パックの主成分である海藻粉末に代えて、元来は有機物であったが地殻の変性作用を受けて無機物となった、緑藻類の化石の粉末を使用することにより、予想外にも上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、緑藻類化石の粉末を含有することを特徴とするパック剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパック剤組成物は、無機物である、緑藻類の化石の粉末を含有しているので、人にアレルギー反応を生じさせ難く、しかも加温しなくても海藻パックと同等の効果(血行や代謝機能の促進、皮膚再生サイクルの正常化、肌の張りと弾力、皮膚の保湿性)を同程度の時間で得ることができ、更に、皮膚に美白効果を付与し、毛髪のダメージを改善することができる。そればかりでなく、本発明のパック剤組成物を痛み緩和用パック剤として使用した場合には、筋肉のハリやコリ、あるいは腱や靭帯の炎症による痛みを緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のパック剤組成物は、緑藻類化石の粉末を含有する。
【0010】
本発明で使用する緑藻類化石は、古代の海水性緑藻類もしくは淡水性緑藻類が化石として産出したものである。このような緑藻類化石は、例えば、約三億年前の古代クロレラ藻が水成砂岩と幾層にも重なって一体となった化石として入手できる。具体的には、長崎県と山口県(秋吉台)で産出しており、フィールド総合研究所のコスモスミントという商品名で市販されているものを使用できる。
【0011】
本発明においては、緑藻類化石を粉末として使用するが、その粉末の粒度は、小さすぎると水と混合した際にダマが生じ易く、大きすぎると皮膚や毛髪に適応した際にザラザラした感じを使用者に与えるので、好ましくは0.1〜150μm、より好ましくは3〜50μmである。なお、緑藻類化石を粉末化する方法は、公知の鉱石粉砕化方法により行うことができる。
【0012】
本発明のパック剤組成物における緑藻類化石の粉末の含有量は、パック剤組成物の使用目的、適用部位、剤型等に応じて異なるが、少なすぎると所期の効果が得られず、多すぎても添加量に見合う効果が得られないので、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは65〜85重量%である。
【0013】
本発明のパック剤組成物は、緑藻類化石の粉末に加えて、増粘剤及びpH調製剤を含有することが好ましい。増粘剤を含有することにより、水と混合した際に高粘性組成物を与えることができる。また、水と混合して得られる粘性組成物が高粘度であることは、皮膚や毛髪に塗布した際の液だれを防止し、高粘性組成物と皮膚又は毛髪との接触時間を増長させ、緑藻類化石由来のミネラル等を始めとするパック剤組成物の含有成分の皮膚や毛髪への作用効果を強化できる。また、pH調整剤を含有することにより、高粘性組成物のpH値を、所期のpH値に調整することができる。例えば、皮膚によいとされている弱酸性〜酸性に保つこともでき、防腐性も向上させることができる。
【0014】
本発明において使用可能な増粘剤としては、ゼラチン、カゼイン、ヒアルロン酸、アルブミン、キサンタンガム、アラビアゴム、アルギニン・カルボマー、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、シクロデキストリン、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。中でも、入手容易性、コスト等の点からキサンタンガムを好ましく使用できる。
【0015】
本発明のパック剤組成物中の増粘剤の含有量は、少なすぎると水と混合した際に得られる粘性組成物の粘度を高く維持することができず、多すぎると粘度が高くなりすぎて、皮膚や毛髪への適用性が低下する。また、増粘剤の種類等によっても粘度は異なるから、使用する増粘剤の種類や剤型等に応じて適宜選択することができる。例えば、キサンタンガムの場合には、好ましくは9〜30重量、より好ましくは15〜25重量%である。
【0016】
本発明において使用可能なpH調整剤としては、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸、アスコルビン酸もしくはその塩等が挙げられる。中でも、皮膚に適した弱酸性に保持するためにクエン酸を好ましく使用することができる。
【0017】
本発明のパック剤組成物中のpH調整剤の含有量は、使用するpH調製剤の種類や所期のpH値等に応じて適宜選択することができる。例えば、クエン酸又はその塩の場合、所期のpHは約4.5±0.5であり、その使用量は好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1.5〜8重量%である。
【0018】
本発明のパック剤組成物には、皮膚や毛髪に対する保湿効果やしっとり感を付与するために、更にコラーゲンを含有することができる。コラーゲンとしては、化粧品グレードの市販品を使用することができる。
【0019】
本発明のパック剤組成物中のコラーゲンの含有量は、少なすぎると添加効果が期待できず、多すぎると水と混合した際にだまになりやすくなるので好ましくは5〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%である。
【0020】
本発明のパック剤組成物は、更に必要に応じて、従来のパック剤組成物において用いられている種々の添加剤、例えば、界面活性剤、着色剤、香料等を適宜含有することができる。
【0021】
本発明のパック剤組成物は、緑藻類化石の粉末、必要に応じて添加される増粘剤、pH調整剤、コラーゲン等を、常法に応じて均一に混合することで製造することができる。
【0022】
本発明のパック剤組成物の好ましい態様としては、水と混合したパック剤が挙げられる。
【0023】
このようなパック剤は、本発明のパック剤組成物を水と混合することにより調製される。通常は水のみを分散媒として使用する。本発明のパック剤組成物と分散媒との配合割合はパック剤の使用用途(例えば化粧皮膚用、毛髪用、痛み緩和用等)により適宜選択することができる。通常、パック剤組成物1重量部に対し、水を好ましくは5〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部を使用する。
【0024】
なお、分散媒として使用する水としては、精製水、蒸留水、深層海洋水などを適宜使用することができる。また、必要に応じ、エタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを併用することもできる。
【0025】
本発明のパック剤組成物の使用態様として、皮膚又は毛髪に塗布し、所定時間、例えば15〜30分経過後に、水で洗い流すという態様を好ましく挙げることができる。
【0026】
なお、本発明のパック剤組成物は、それから高粘性組成物を調製し、それを不織布等の基材に塗布して得られるパック用シートとして利用することもできる。この場合には、皮膚に適用した後、所定時間経過後にシート自体を皮膚から引き剥がせばよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0028】
実施例1
緑藻類化石粉末(コスモスミント、フィールド総合研究所社)30g、キタンサンガム10g及びクエン酸1.0gを均一に混合することにより、パック剤組成物を調製した。
【0029】
実施例2
緑藻類化石粉末(コスモスミント、フィールド総合研究所社)30g、キタンサンガム10g、クエン酸1.0g及びコラーゲン(食べるコラーゲン、株式会社華舞)5gを均一に混合することにより、パック剤組成物を調製した。
【0030】
比較例1
緑藻類化石粉末に代えて、乾燥昆布粉末を使用した以外は、実施例1と同様にパック剤組成物を調製した。
【0031】
評価実験例1
得られた実施例1、2及び比較例1のパック剤組成物の粉末に水を加え調製した化粧用パック剤について以下に説明するように試験し評価した。得られた結果を表1に示す。
【0032】
<化粧用パック剤として顔皮膚に使用した際の評価>
実施例1、2及び比較例1のパック剤組成物粉末のそれぞれ40gをボール型のプラスチック容器に入れ、40℃の400gの温水を加え、手に持ったへらで混合して実施例1、2及び比較例1の化粧用パック剤を調製した。得られた化粧用パック剤を、化粧をきれいに拭き取った後のパネラー(40歳台の女性10人)の顔に塗ってもらい、温めることなく、30分間放置し、水で洗い流した。水で洗い流した後の1時間経過した時点での“肌の張りと弾力”、“皮膚の保湿性”、“アレルギー反応惹起性”を、それぞれ以下の基準に従って評価した。なお、“肌の美白効果”については、上述のパック処理を1日1回7日間行った後に評価した。
【0033】
<肌の張りと弾力>
ランク 評価基準
AA:10人全員が、以前にも増して肌の張りと弾力があると判断した。
A: 7〜9人が、以前にも増して肌の張りと弾力があると判断した。
B: 4〜6人が、以前にも増して肌の張りと弾力があると判断した。
C: 以前にも増して肌の張りと弾力あると判断した人が3人以下であった。
【0034】
<皮膚の保湿性>
ランク 評価基準
AA:10人全員が、以前にも増して潤い感があると判断した。
A: 7〜9人が、以前にも増して潤い感があると判断した。
B: 4〜6人が、以前にも増して潤い感があると判断した。
C: 以前にも増して潤い感があると判断した人が3人以下であった。
【0035】
<肌の美白効果>
ランク 評価基準
AA:10人全員が、美白効果があると判断した。
A: 7〜9人が、美白効果があると判断した。
B: 4〜6人が、美白効果があると判断した。
C: 美白効果があると判断した人が3人以下であった。
【0036】
<アレルギー反応惹起性>
ランク 評価基準
A: パネラー全員にアルルギー反応が観察されなかった。
C: パネラーのうち1人でもアレルギー反応が観察された。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から解るように、実施例1及び2の化粧用パック剤は、温めることなく常温でパックしたにも係わらず、緑藻類の化石を使用しているので、上述した評価項目のいずれにおいても良好な結果が得られた。また、コラーゲンを併用した実施例2の場合には、更に「肌の張りと弾力」が実施例1に比べ向上していた。それに対し、緑藻類の化石に代えて、乾燥昆布を用いた比較例1の化粧用パック剤は、加温していないために、「肌の張りと弾力」と「皮膚の保湿性」について、実施例1、2に比べ劣っていた。しかも、美白効果は無く、また、アレルギー反応を惹起してしまった。
【0039】
評価実験例2
評価実験例1で調製した化粧用パック剤を、以下に説明するように毛髪に適用し評価した。得られた結果を表2に示す。
【0040】
<毛髪用パック剤として毛髪に適用した際の評価>
評価実験例1で調製した化粧用パック剤を、毛髪用パック剤として、パネラー(40歳台の女性10人)の洗髪後の濡れた状態の髪に塗布してもらい、温めることなく、30分間放置し、水で洗い流し、自然乾燥させた。乾燥した後の毛髪についてダメージの改善状態を以下の基準に従って評価した。
【0041】
<ダメージヘア改善効果>
ランク 評価基準
A: 7〜10人がダメージヘアの改善効果が出たと判断した。
B: 4〜6人がダメージヘアの改善効果が出たと判断した。
C: ダメージヘアの改善効果が出たと判断した人が3人以下であった。
【0042】
【表2】

【0043】
表2から解るように、実施例1及び2の毛髪用パック剤は、常温でパックしたにも拘わらず、緑藻類の化石を使用しているので、毛髪のダメージを改善することができた。それに対し、緑藻類の化石に代えて、乾燥昆布を用いた比較例1のパック剤は、温めずにパックしたため、毛髪のダメージの改善を図ることができなかった。
【0044】
評価実験例3
評価実験例1で調製した化粧用パック剤を、以下に説明するように肩こりに適用し評価した。得られた結果を表3に示す。
【0045】
<痛みの緩和用パック剤として肩こりの箇所に使用した際の評価>
評価実験例1で調製した化粧料パック剤を、痛み緩和用パック剤として、肩こりを有するパネラー10人の肩こり領域に塗ってもらい、温めることなく、15分間放置し、水で洗い流した。水で洗い流した後の肩こりの緩和効果について、以下の基準に従って評価した。
【0046】
<使用後の肩こりの緩和効果>
ランク 評価基準
A: 7〜10人が肩こりの緩和効果があると判断した。
B: 4〜6人が肩こりのハリ・コリの緩和効果があると判断した。
C: 肩こりの緩和効果があると判断した人が3人以下であった。



【0047】
【表3】

【0048】
表3から解るように、実施例1及び2の痛みの緩和用パック剤は、温めることなく常温でパックしたにも拘わらず、緑藻類の化石を使用しているので、15分という短いパック時間で肩こりを緩和することができた。それに対し、緑藻類の化石に代えて乾燥昆布を用いた比較例1のパック剤は、肩こりを緩和することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のパック剤組成物は、無機物である、緑藻類の化石の粉末を含有しているので、人にアレルギー反応を生じさせ難く、しかも加温しなくても海藻パックと同等の効果(血行や代謝機能の促進、皮膚再生サイクルの正常化、肌の張りと弾力、皮膚の保湿性)を同程度の時間で得ることができ、更に、皮膚に美白効果を付与し、毛髪のダメージを改善することができる。そればかりでなく、本発明のパック剤組成物を痛み緩和用パック剤として使用した場合には、肩こりや筋肉のハリやコリ、あるいは腱や靭帯の炎症による痛みを緩和することができる。従って、本発明のパック剤組成物は、化粧用パック剤、毛髪用パック剤、痛み緩和用パック剤の原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑藻類化石の粉末を含有することを特徴とするパック剤組成物。
【請求項2】
更に、増粘剤及びpH調製剤を含有する請求項1記載のパック剤組成物。
【請求項3】
緑藻類化石の粉末を50〜90重量%含有する請求項1又は2記載のパック剤組成物。
【請求項4】
増粘剤がキサンタンガムであり、pH調製剤がクエン酸又はその塩である請求項1〜3のいずれかに記載のパック剤組成物。
【請求項5】
キサンタンガムを9〜30重量%、クエン酸又はその塩を0.5〜10重量%含有する請求項4記載のパック剤組成物。
【請求項6】
更に、コラーゲンを5〜20重量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載のパック剤組成物。

【公開番号】特開2008−239537(P2008−239537A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81178(P2007−81178)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(501173298)
【Fターム(参考)】