説明

パック化粧料

【課題】シェア耐性に優れ、使用感の良好なマッド状のパック化粧料を提供する。
【解決手段】含硫珪酸アルミニウム1〜30質量%を含む珪酸塩と、アルギン酸の水可溶性塩0.2〜1質量%をマッド状のパック化粧料に含有させる。ただし、アルカリ土類金属の水可溶性塩を含有させない。本発明によれば、シェアによる硬度の低下防止効果に優れ、ぬめり感、摩擦感といった使用感の良好なマッド状のパック化粧料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッド状のパック化粧料に関し、さらに詳細にはシェアをかけた場合でも保形性に優れた、使用感の良好なパック化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
パック化粧料は、皮膚の毛穴を塞ぐ塵埃やメークアップ化粧料などの外因性の汚れ、皮脂、汗、角層老廃物などの内因性の汚れを効果的に除去し、それに含有する有効成分をパック基材などで閉塞し、その吸収を高める等の効果を有する化粧料の形態であり、閉塞する手段として、高分子被膜形成剤を利用したもの、高融点ワックスのエマルションを利用したもの、珪酸塩類と水の作る高粘度組成物を利用したもの、高分子を含有する泡を利用したもの等が知られている。特に珪酸塩類は、粉体特性や界面活性作用を生かして毛穴の角栓等の汚れを効果的に吸着して除去する作用を有し、中でも珪酸塩類を含有するマッド状又はクリーム状のパック化粧料が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)。しかしながらこの場合、該パック化粧料がいったん外力によりその形状が破壊されると、シェアにより粘度あるいは硬度の低下が生じ、その結果、該パック化粧料の形状保持が困難な状態、即ち、シェア耐性が不十分になってしまうという問題が生じていた。一方、アルギン酸を用いたパック化粧料も知られているが(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7を参照)、いずれも被膜形性の向上を目的としたピールオフタイプのパック化粧料であり、シェア耐性向上のためにアルギン酸の水可溶性塩をマッド状のパック化粧料製剤に用いることに関しては全く知られていなかった。さらに、珪酸塩類とアルギン酸の水可溶性塩とを含有するマッド状のパック化粧料についてもこれまで知られていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−233722号公報
【特許文献2】特開2000−355515号公報
【特許文献3】特開2006−28034号公報
【特許文献4】特開2006−69991号公報
【特許文献5】特開平06−329525号公報
【特許文献6】特開平06−65048号公報
【特許文献7】特開平06−179614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シェア耐性に優れ、使用感の良好なパック化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況に鑑みて、本発明者らは鋭意研究した結果、マッド状のパック化粧料において、珪酸塩類とアルギン酸の水可溶性塩の状態で含有させることにより、シェア耐性に優れ、使用感が良好であることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明のパック化粧料は、以下に示すとおりである。
(1)珪酸塩と、アルギン酸の水可溶性塩とを含有し、アルカリ土類金属の水可溶性塩を含有しないことを特徴とする、マッド状のパック化粧料。
(2)前記アルギン酸の水可溶性塩を0.2〜1質量%含有することを特徴とする、(1)に記載のマッド状のパック化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シェア耐性に優れ、使用感の良好な、マッド状のパック化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(1) 本発明のパック化粧料の必須成分である珪酸塩
本発明のパック化粧料は、珪酸塩を1〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%含有することを特徴とする。この量より少なくなると毛穴の角栓等の汚れを吸着して除去する作用が十分に発揮できなくなる場合があり、この量を超えて配合すると、製剤的に固くなりすぎるため、皮膚への密着性が低下して、やはり毛穴の角栓等の汚れを吸着して除去する作用が十分に発揮できなくなる場合があるからである。ここで、本発明で言う珪酸塩とは、水不溶性の珪酸塩であり、化粧品などの分野で使用されうるものを意味し、例えば、カオリン、タルク、雲母、ベントナイト、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、無水珪酸、珪酸アルミニウム、含硫珪酸アルミニウムなどが例示でき、これらの中では、タルク、無水珪酸、ベントナイト、含硫珪酸アルミニウム及びカオリンから選ばれる1種乃至は2種以上であることが好ましく、含硫珪酸アルミニウムを含有していることが更に好ましい。この含硫珪酸アルミニウムとしては海草由来の海泥化石を乾燥・粉砕したものが好ましく、「ミロネクトン」の商品名で大日本化成株式会社より市販されているものが、市販品の中では好ましい。これら珪酸塩は何れも化粧品の汎用原料であり、その入手に問題はない。
【0008】
(2)本発明のパック化粧料の必須成分であるアルギン酸の水可溶性塩
本発明のパック化粧料は、アルギン酸の水可溶性塩を含有することを特徴とする。その塩としては、生理的に許容され、水溶性を有するものであれば特段の限定なく用いることが出来、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩やトリエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩やアルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示でき、中でもその使用実績からナトリウム塩が特に好ましい。これらアルギン酸の水可溶性塩の含有量は、0.2〜1質量%が好ましく、0.4〜0.8質量%がさらに好ましい。この量より少なくなると、本発明のパック化粧料がいったん外力によりその形状が破壊されると、シェアにより粘度あるいは硬度の低下が生じ、その結果、該パック化粧料の形状保持が困難な状態、即ち、シェア耐性が不十分になってしまう場合があり、この量を超えて配合すると、使用感が悪くなる場合があるからである。さらに、本発明のパック化粧料は、アルカリ土類金属の水可溶性塩を含有しないことを特徴とする。本発明のパック化粧料にアルカリ土類金属の水可溶性塩を含有せしめると、本発明の効果を奏さないためである。
【0009】
本発明のパック化粧料は、上記珪酸塩とアルギン酸の水可溶性塩とを含有し、さらにアルカリ土類金属の水可溶性塩を含有しないことにより、優れた製剤安定性を有する。本発明の化粧料においては、前記必須成分である珪酸塩とアルギン酸の水可溶性塩以外に、化粧品で通常使用されている任意成分を本発明の効果を損なわない範囲において、含有することができる。
【0010】
この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、必須成分には属しない分子量域のポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類などが好ましく例示できる。この中で、キサンタンガムを0.1〜0.8質量%、好ましくは0.2〜0.5質量%含有せしめることが、アルギン酸の水可溶性塩によるシェア耐性向上作用を相乗的に高める点において、特に好ましい。
【0011】
本発明はパック化粧料に関するものであり、パック化粧料の製剤的な特徴から、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類、その他美白剤、細胞賦活剤、美肌成分などの有効成分も含有でき、好ましい。このような有効成分として例えば、緑茶エキス、ハマメリスエキス、ホップエキス、オトギリソウエキス等の各種ハーブエキスや海泥化石に分類されない海藻エキス、黒砂糖エキス等が好ましく例示できる。
【0012】
黒砂糖エキスは、黒砂糖(粗製糖)又は糖蜜をアルコール抽出し、濃縮した後、水に溶解し、吸着剤で脱色精製したものであり、このような黒砂糖エキスを0.05〜0.5質量%含有することができ、好ましい。このようなものとしては、太陽化学株式会社製の「モラシズリキッド」が例示できる。
【0013】
以下に実施例を示して本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明は、これらの実施例にのみ限定を受けないことはいうまでもない。
【実施例】
【0014】
<実施例1〜5>
下記に示す表1の処方に従って、本発明のパック化粧料を作製した。即ち、(A)を混合し75℃に加温、これに混合後75℃に加温した(B)を添加・撹拌、さらに混合後75℃に加温した(C)を添加・撹拌した。撹拌しながら冷却し、(D)、(E)をさらに添加・撹拌し、本発明の実施例であるマッド状のパック化粧料1〜5を得た。同様に操作して、比較例1〜3も作製した。
【0015】
【表1】

【0016】
<試験例>
本発明の各実施例及び比較例のパック化粧料について、シェア耐性試験を実施した。即ち、前記各パック化粧料を、それぞれハンドシェア機に一度、さらに小型モーノポンプに二度通した後、1日静置後の硬度を、パック化粧料作製直後の初期硬度に対する割合をシェア耐性度として求めて評価した。即ち、シェア耐性度が大きいほうが、硬度が低下しにくい、即ちシェア耐性に優れるといえる。又、同時にぬめり感、摩擦感といった使用感についても評価した。◎を非常に良好、○を良好、×を不良として、3段階評価を行った。結果を表2に示す。本発明のパック化粧料は、シェア耐性に優れ、使用感が良好であることが判る。
【0017】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸塩と、アルギン酸の水可溶性塩とを含有し、アルカリ土類金属の水可溶性塩を含有しないことを特徴とする、マッド状のパック化粧料。
【請求項2】
前記アルギン酸の水可溶性塩を0.2〜1質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載のマッド状のパック化粧料。

【公開番号】特開2012−136490(P2012−136490A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291496(P2010−291496)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】