説明

パック電池の異常判定方法及びパック電池

【課題】二次電池が複数並列に接続されパック電池で二次電池が異常であるか否かを確実に判定することが可能なパック電池の異常判定方法及びパック電池を提供する。
【解決手段】二次電池の充電中に、充放電路に介装されている充放電用のFETを250ms間(時刻T1からT2まで、及び時刻T3からT4まで)オフしてからオンに戻すことを10分毎に繰り返し、オフする前及びオンする前に検出した二次電池の電池電圧の差分(ΔV(1)及びΔV(2))と、オフする前に検出した充電電流とに基づいて、二次電池の内部抵抗を10分毎に算出してRAMに記憶する。ここで新たに算出した内部抵抗と、過去に算出してRAMに記憶した内部抵抗との差分が第1閾値より大きい場合、新たに算出したFCC(満充電容量)と、過去に算出してRAMに記憶したFCCとの差分を第2閾値と比較することによって、二次電池が異常であるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列接続された複数の二次電池を備えるパック電池で二次電池が異常であるか否かを判定するパック電池の異常判定方法、及びこの異常判定方法を実行するパック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、標準的な容量の二次電池(セル)を複数組み合わせて組電池(パック電池)として用いられることが多い。例えば、複数のセルを直列,並列に接続して端子電圧,電池容量を高めたり、複数のセルを直並列に接続することにより、端子電圧及び電池容量の両方を高めたりすることが可能である。このようにセルを組み合わせて接続されたパック電池で、各セルに印加される充電電圧及び各セルに流れる充放電電流が不均等となってセルバランスが崩れた場合、パック電池が過熱して発火、破裂等の事故に至る可能性がある。
【0003】
セルバランスが崩れる原因の1つとして、各セルを接続するタブが外れたり、CID(Current Interrupt Device )と呼ばれる電流制限素子がセル内部の回路を遮断したりすることが考えられる。また、セル内部での電極間の短絡(内部短絡)も原因の1つとなり得る。このようにセルバランスが崩れた場合であっても、二次電池の異常を確実に検出してパック電池の安全性を確保することが求められる。
【0004】
これに対し、特許文献1では、複数のセルが並列に接続された並列セルブロックを複数直列に接続した二次電池ブロックを特定の電流で放電させ、通電(放電)前後に算出した各並列セルブロックの電圧変化量から各並列セルブロックの内部抵抗を算出し、算出した内部抵抗の最小値に対する最大値の比率が設定値を超える場合に、セルが異常であると判定する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、複数の二次電池(セル)を並列に接続した並列ユニットを直列に接続してあるパック電池において、充放電電流が設定値よりも小さい場合、順次検出した各並列ユニットの電圧の電圧変化に基づいて(例えば、3分経過後の電圧変化が50mV以上であり、且つ他の並列ユニットの電圧変化の2倍以上であるか否かにより)並列ユニットの異常を判定する技術が開示されている。
【0006】
更に、特許文献3では、複数の並列セルからなるセルブロックが1又は複数直列に接続された電池パックにおいて、充放電期間及び非充放電期間の夫々について検出したセルブロックの電圧の差分と充放電電流とに基づいて内部抵抗値を算出し、算出した内部抵抗値又は内部抵抗値のばらつきが所定値以上のときに、並列セルの一部が脱落していると判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4606846号公報
【特許文献2】特開2007−240234号公報
【特許文献3】特開2008−27658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2に開示された技術は、並列セルブロックが複数個直列に接続されている場合にのみ適用が可能であり、複数の二次電池が単に複数個並列に接続されているパック電池には適用できないという問題があった。
【0009】
また、特許文献3に開示された技術は、単一の並列セルブロックにも適用が可能であるものの、並列セルブロックの内部抵抗又は該内部抵抗のばらつきだけから判定するものであるため、セルの特性差、温度変化、経年劣化等の変動要因で誤判定する虞があった。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二次電池が複数並列に接続されたパック電池で二次電池が異常であるか否かを確実に判定することが可能なパック電池の異常判定方法及びパック電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るパック電池の異常判定方法は、並列接続された複数の二次電池と、該二次電池の充放電路に介装されたスイッチとを備え、前記二次電池の満充電容量を算出して記憶するパック電池で前記二次電池が異常であるか否かを判定する方法において、前記二次電池の充電中に前記スイッチを時系列的にオフ及びオンし、オフする前又はオンした後に前記二次電池の充電電流を検出し、オフする前及びオンする前に前記二次電池の電圧を検出し、検出した電圧の差分及び充電電流に基づいて前記二次電池の内部抵抗を時系列的に算出して記憶し、内部抵抗を算出する都度、記憶済みの内部抵抗との差分を算出し、算出した内部抵抗の差分が第1閾値より大きいか否かを判定し、第1閾値より大きい場合、満充電容量を算出して、記憶済みの満充電容量との差分を算出し、算出した満充電容量の差分を第2閾値と比較することにより、前記二次電池が異常であるか否かを判定することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るパック電池の異常判定方法は、算出した満充電容量の差分が第2閾値より大きい場合、前記二次電池の少なくとも1つが並列接続されていないと判定することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るパック電池の異常判定方法は、前記二次電池を外部から充電するようにしてあり、前記二次電池の充放電電流を検出し、検出した充放電電流が所定電流より小さい場合、前記二次電池の電圧を時系列的に検出して記憶し、電圧を検出する都度、記憶済みの電圧との差分を算出し、算出した電圧の差分が第3閾値より大きい場合、所定の充電電流で充電し、充電中に所定時間を計時し、計時の開始時点及び終了時点における前記二次電池の電圧を検出し、検出した電圧の上昇分を算出し、算出した電圧の上昇分を第4閾値と比較することにより前記二次電池が異常であるか否かを判定することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るパック電池の異常判定方法は、算出した電圧の上昇分が第4閾値より小さい場合、前記二次電池の少なくとも1つが内部で短絡していると判定することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るパック電池は、並列接続された複数の二次電池と、該二次電池の充放電路に介装されたスイッチとを備え、前記二次電池の満充電容量を算出して記憶するパック電池において、前記二次電池の充電中に前記スイッチを時系列的にオフ及びオンする切替手段と、該切替手段がオフする前又はオンした後に前記二次電池の充電電流を検出する検出手段と、前記切替手段がオフする前及びオンする前に前記二次電池の電圧を検出する手段と、該手段が検出した電圧の差分及び前記検出手段が検出した充電電流に基づいて前記二次電池の内部抵抗を時系列的に算出して記憶する手段と、該手段が内部抵抗を算出する都度、記憶済みの内部抵抗との差分を算出する手段と、該手段が算出した内部抵抗の差分が第1閾値より大きいか否かを判定する手段と、該手段が第1閾値より大きいと判定した場合、満充電容量を算出して、記憶済みの満充電容量との差分を算出する手段と、該手段が算出した満充電容量の差分を第2閾値と比較する比較手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るパック電池は、前記二次電池の充放電電流を検出する手段と、該手段が検出した充放電電流が所定電流より小さい場合、前記二次電池の電圧を時系列的に検出して記憶する手段と、該手段が電圧を検出する都度、記憶済みの電圧との差分を算出する手段と、該手段が算出した電圧の差分が第3閾値より大きい場合、所定の充電電流で外部から充電させる手段と、該手段が充電させている場合、所定時間を計時する手段と、該手段による計時の開始時点及び終了時点における前記二次電池の電圧を検出する手段と、該手段が検出した電圧の上昇分を算出する手段と、該手段が算出した電圧の上昇分を第4閾値と比較する第2の比較手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るパック電池は、前記二次電池の充放電路に介装されており、該充放電路を遮断する非復帰スイッチを備え、前記比較手段又は第2の比較手段の比較結果に基づいて前記非復帰スイッチが遮断するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、二次電池の充電中に、充放電路に介装されているスイッチを一時的にオフしてからオンに戻すことを時系列的に(即ち反復的に)繰り返し、オフする前及びオンする前に検出した二次電池の電圧の差分(ΔV)と、オフする前又はオンした後に検出した充電電流とに基づいて、二次電池の内部抵抗を時系列的に算出して記憶する。充電電流は、スイッチをオフする前に検出することが好ましい。ここで新たに算出した内部抵抗と、過去に算出して記憶した内部抵抗との差分が第1閾値より大きい場合、新たに算出した満充電容量(Full Charge Capacity ;以下、FCCという)と、過去に算出して記憶したFCCとの差分を第2閾値と比較することによって、二次電池が異常であるか否かを判定する。FCCは、例えば、満充電を検出したときから放電終止を検出するときまでの放電容量として算出してもよいし、放電終止を検出したときから満充電を検出するときまでの充電容量として算出してもよい。過去に記憶したFCCは、1つ前に算出して記憶したFCCであってもよいし、初期値として記憶したFCCであってもよい。
つまり、順次算出した二次電池の内部抵抗が、それより前に算出した内部抵抗より第1閾値に相当する抵抗値以上増加している場合は、二次電池の並列容量に係る異常が発生して内部抵抗が増大した蓋然性が高いといえる。但し、内部抵抗のばらつき及び変動を考慮して誤検出を防止するために、新たに算出したFCC及びそれより前に算出したFCCの差分と第2閾値とを比較した結果により、並列容量の低下を確認した上で、二次電池が異常であるか否かを判定する。
【0019】
本発明にあっては、新たに算出したFCCと、過去に算出して記憶したFCCとの差分が第2閾値より大きい場合、並列に接続されているべき二次電池のうち、少なくとも1つが並列接続されていないと判定する。
つまり、新たに算出したFCCがそれより前に算出されたFCCより第2閾値に相当する容量値以上低下していた場合は、例えば、二次電池同士を接続するタブが外れたこと、又は二次電池内の電流制限素子(CID)が内部の回路を遮断したことが検出される。
【0020】
本発明にあっては、二次電池の充放電電流が所定電流より小さいことから、実質的に充電も放電もなされていない状態にある場合、二次電池の電圧を時系列的に検出して記憶する。そこで新たに検出した二次電池の電圧と、過去に検出して記憶した電圧との差分が第3閾値より大きい場合、二次電池を所定の充電電流で充電する。更に、充電中に計時する所定時間の開始時点及び終了時点で二次電池の電圧を検出して、所定時間中における電圧の上昇分を算出し、算出した電圧の上昇分を第4閾値と比較することによって、二次電池が異常であるか否かを判定する。
つまり、充放電がなされていない間に、新たに検出した二次電池の電圧が、それより前に検出した電圧より第3閾値に相当する電圧値以上低下している場合は、電極間に異常が発生して二次電池の電圧が低下した蓋然性が高いといえる。但し、二次電池の直列数が1であって直列に接続されている他の二次電池がない場合は、異常の判定が困難であるため、二次電池への充電を所定時間試みて、充電中の二次電池の電圧の上昇分と第4閾値とを比較した結果により、電圧が上昇する程度を確認した上で、二次電池が異常であるか否かを判定する。
【0021】
本発明にあっては、充電中の二次電池の電圧の上昇分が第4閾値より小さい場合、並列に接続されている二次電池のうちの少なくとも1つが内部で短絡していると判定する。
つまり、実際に充電したときの二次電池の電圧が、第4閾値に相当する電圧値より小さい電圧値しか上昇しない場合又は時間の経過と共に低下する場合は、二次電池の内部短絡が検出される。
【0022】
本発明にあっては、新たに算出したFCC及び過去に算出して記憶したFCCの差分を第2閾値と比較した結果、又は充電中の所定時間中に算出した二次電池の電圧の上昇分を第4閾値と比較した結果に基づいて、二次電池の充放電路に介装された非復帰スイッチが回路を遮断する。
つまり、二次電池の内部抵抗が第1閾値に相当する抵抗値以上増加したことから、新たに算出したFCC及びそれより前に算出したFCCの差分と第2閾値とを比較した場合、又は、充放電されていない間の二次電池の電圧が第3閾値に相当する電圧値以上上昇したことから、二次電池への充電を所定時間試みて充電中の二次電池の電圧の上昇分と第4閾値とを比較した場合、これらの比較結果によって二次電池の充放電路が遮断されるため、二次電池が異常となった場合の安全が確保される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数並列に接続された二次電池について、順次算出した内部抵抗が、それより前に算出した内部抵抗より第1閾値に相当する抵抗値以上増加していることから、二次電池の並列容量に係る異常が発生した蓋然性が高い場合は、新たに算出したFCC及びそれより前に算出したFCCの差分と第2閾値とを比較することにより、二次電池の並列容量の低下を確認して、二次電池が異常であるか否かを判定する。
従って、二次電池が複数並列に接続されたパック電池で二次電池が異常であるか否かを確実に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るパック電池の構成例を示すブロック図である。
【図2】Aは充放電用のFETをオフ及びオンするタイミングを示す説明図であり、Bは充電中に充電を一時停止した場合の電池電圧の時間変化を示す説明図である。
【図3】二次電池の内部抵抗の増大を検出するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】FCCを算出して二次電池が異常であるか否かを判定するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】充放電の停止中の電池電圧の時間変化を示す説明図である。
【図6】Aは所定電流による充電を開始するタイミングを示す説明図、Bは所定電流による充電中の電池電圧の時間変化を示す説明図である。
【図7】二次電池の内部短絡を検出するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係るパック電池の構成例を示すブロック図である。図中10は電池ブロックであり、電池ブロック10は、リチウムイオン電池からなる二次電池11,12,13を図示しない導電性のタブで並列接続してなる。電池ブロック10の近傍には、該電池ブロック10の温度を検出する温度センサ2が配されている。二次電池11,12,13は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の他の電池であってもよい。また、電池ブロック10を構成する二次電池の数は3つに限定されず、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0026】
二次電池11,12,13の正極端子は、該二次電池11,12,13の充放電電流を遮断する遮断部3を介してプラス(+)端子39に接続されている。二次電池11,12,13の負極端子は、該二次電池11,12,13の充放電電流を検出するための電流検出抵抗4を介してマイナス(−)端子49に接続されている。パック電池は、プラス(+)端子39と、マイナス(−)端子49と、後述する制御部5に接続された通信端子561,562とを介してパーソナルコンピュータ(PC)、携帯端末等の電気機器(図示せず)に着脱可能に装着される。プラス(+)端子39から、遮断部3、二次電池11,12,13及び電流検出抵抗4を介してマイナス(−)端子49に至る経路が、充放電路を構成する。
【0027】
遮断部3は、二次電池11,12,13の充放電電流を断続するPチャネル型のMOSFET(充放電用のFET)35,36と、2端子間にヒューズ31,31が直列に介装された非復帰スイッチ30との直列回路を有し、該直列回路が二次電池11,12,13の正極端子及びプラス(+)端子39間に接続されている。ヒューズ31,31の接続点と非復帰スイッチ30の他の1端子間には、加熱抵抗32,32の並列回路が介装されている。
【0028】
パック電池で充放電が可能な場合、FET35,36のゲートには、後述するI/Oポート53からL(ロウ)レベルのオン信号が与えられる。パック電池で放電及び充電を禁止する場合は、FET35,36のゲートにH(ハイ)レベルのオフ信号が与えられる。
尚、FET35,36に代えて、バイポーラトランジスタ等の他のスイッチング素子を用いてもよいし、Nチャネル型のFETを用いてもよい。
【0029】
遮断部3は、また、非復帰スイッチ30の他の1端子にドレインが接続されたNチャネル型のFET33を有する。FET33のソースは、二次電池11,12,13の負極端子に接続されている。FET33のゲートにHレベルのオン信号が与えられた場合、FET33のドレイン及びソース間が導通し、加熱抵抗32,32にヒューズ31,31を介して二次電池11,12,13の電圧(以下、電池電圧ともいう)及び/又は外部からの電圧が印加されて、ヒューズ31,31が溶断する。これにより、充放電路が非可逆的に遮断される。非復帰スイッチ30において充放電路を遮断するものは、ヒューズ31,31に限定されない。
【0030】
制御部5は、CPU50を有し、CPU50は、プログラム等の情報を記憶するROM51、一時的に発生した情報を記憶するRAM52、FET33,35,36のゲートにオン/オフ信号を与えるI/Oポート53、アナログの電圧をデジタルの電圧に変換するA/D変換器54、各種時間を並列的に計時するタイマ55、及び外部の電気機器と通信するための通信部56と互いにバス接続されている。
【0031】
A/D変換器54には、二次電池11,12,13の電池電圧と、温度センサ2の電圧と、電流検出抵抗4の両端電圧とが与えられており、A/D変換器54は、これらのアナログの電圧をデジタルの電圧値に変換する。尚、電流検出抵抗4を流れる充電電流(又は放電電流)が、正の(又は負の)電圧値に変換されるものとする。
【0032】
通信部56は、シリアルデータ(SDA)を授受するための通信端子561と、シリアルクロック(SCL)を受信するための通信端子562とに接続されており、外部の電気機器との間でSMBus(System Management Bus )方式による通信を行う。通信部56と外部の電気機器との間では、他の通信方式によって通信してもよい。
【0033】
上記パック電池の構成において、CPU50は、ROM51に予め格納されている制御プログラムに従って、演算及び入出力等の処理を実行する。例えば、CPU50は、A/D変換器54を介して電流検出抵抗4の電圧を時系列的に取り込み、取り込んだ電圧から換算された充放電電流を積算して二次電池11,12,13に充放電した容量と二次電池11,12,13の残容量とを算出すると共に残容量のデータを生成する。生成された残容量のデータは、通信部56を介して外部の電気機器に送信される。CPU50は、更に、A/D変換器54を介して温度センサ2の電圧を、例えば250m秒周期で時系列的に取り込み、取り込んだ電圧に基づいて電池温度を検出する。
【0034】
さて、上述したように、二次電池11,12,13は、タブによって相互に接続されているが、これらを接続しているタブが外れたり、何れかの二次電池のCIDが二次電池の内部回路を遮断した場合、残りの二次電池に充放電電流が集中して、二次電池の安全性が脅かされる。例えば、二次電池11,12,13のうち二次電池13のタブが外れた場合、二次電池11,12の夫々には、上記タブが外れる前との比較で概ね1.5倍の充放電電流が流れて、許容される最大充電電流及び最大放電電流を超える虞がある。
【0035】
そこで、本実施の形態1では、充電中に二次電池11,12,13の内部抵抗の並列値を算出し、算出した内部抵抗が第1閾値に相当する抵抗値以上増加している場合は、その後新たに算出したFCCが第2閾値に相当する容量値以上低下していることを確認したときに、二次電池11,12,13の少なくとも1つが並列接続されていないと判定する。ここでは、判定の結果を受けて、非復帰スイッチ30のヒューズ31,31を溶断して充放電路を遮断するため、パック電池全体の安全性が確保される。
【0036】
尚、二次電池11,12,13の内部抵抗の算出を放電中に行うことも可能であるが、後述するように、内部抵抗の算出には、一時的な充放電電流の遮断を伴うため、放電電流を遮断することによって外部の電気機器が影響を受ける場合は、充電中に行うことが好ましい。
【0037】
以下では、具体的な異常判定方法について説明する。
図2のAは充放電用のFET35,36をオフ及びオンするタイミングを示す説明図であり、Bは充電中に充電を一時停止した場合の電池電圧の時間変化を示す説明図である。図2A,2Bの横軸は時間を表し、縦軸は充放電用のFET35,36のオン/オフ状態及び電池電圧を表す。
【0038】
図2Aに示すように、充電中はFET35,36がオンされており、時刻T1,T3で一時的にFET35,36がオフされて充電電流が遮断され、時刻T2,T4で再びFET35,36がオンされて充電電流が導通する。時刻T1からT3までの時間は、本実施の形態1では10分とするが、これに限定されるものではない。図2Aでは、FET35,36のオフ/オンを2回だけ図示してあるが、実際にはこのようなオフ/オンが繰り返される。
【0039】
図2Bでは、図2Aと同じ時刻T1〜T4と、その前後とにおける電池電圧が示されている。時刻T1,T3の前では、FET35,36がオフされる前に二次電池11,12,13の充電電流が検出される。時刻T1,T3でFET35,36がオフされた場合、それまで二次電池11,12,13に流入していた充電電流が遮断されるため、二次電池11,12,13の内部抵抗の並列値に生じていた電圧降下が消失して、二次電池11,12,13の電池電圧がΔV(1),ΔV(2)だけ低下する。
【0040】
その後、時刻T2,T4でFET35,36がオンされて充電電流が導通した場合、二次電池11,12,13の電池電圧には、内部抵抗に生じる電圧降下が再び加算されるようになる。二次電池11,12,13の内部抵抗の算出に用いられる充電電流は、この段階で検出してもよいが、一旦遮断された充電電流が完全に回復するまでの時間を見越して検出することが好ましい。
【0041】
ここで、例えば時刻T2〜T3の間で二次電池13のタブが外れた場合、上述したように、二次電池11,12の夫々には、上記タブが外れる前との比較で概ね1.5倍の充電電流が流れるため、ΔV(2)はΔV(1)の約1.5倍となる(図2B参照)。つまり、ΔV(1),ΔV(2)を、検出した充電電流で除算して算出される二次電池11,12,13の内部抵抗の並列値が、時刻T2から時刻T3に至る間に約1.5倍に増大する。
【0042】
一方、二次電池11,12,13の内部抵抗は、電池温度、残容量(SOC;State Of Charge )等によって変動するが、分単位の時間内の変動は無視できるため、二次電池11,12,13の内部抵抗の並列値が分単位の時間内で第1閾値に相当する抵抗値(例えば、二次電池11,12,13夫々の内部抵抗を100mΩとした場合は10mΩ)以上増大した場合は、二次電池11,12,13の並列容量に係る異常が発生した蓋然性が高いと考えられる。
【0043】
但し、二次電池11,12,13の内部抵抗に関する上記のような変動と個々の二次電池におけるばらつきとを考慮して誤判定を防止するために、二次電池11,12,13の並列容量が実際に低下することを確認した上で、二次電池11,12,13が異常であるか否かを判定する。本実施の形態1では、並列容量として、適時算出されているFCCを用いる。
【0044】
FCCは、満充電から放電終止までの放電容量として算出してもよいし、放電終止から満充電をまでの充電容量として算出してもよい。FCCと1対1に対応するSOCは、二次電池11,12,13の開路電圧(OCV;Open Circuit Voltage )から導出することも可能である。しかしながら、二次電池13のタブが外れた場合であっても、二次電池11,12のOCVから導出されるSOCは、見かけ上変化しないため、OCVから導出されるSOCを、FCCに代わるものとしては用いないこととする。
【0045】
ところで、二次電池11,12,13の並列容量の低下を確認するためのFCCは、二次電池11,12,13の内部抵抗の並列値が第1閾値に相当する抵抗値以上増加した後に算出することに意味がある。従って、本実施の形態1では、二次電池11,12,13の内部抵抗が第1閾値に相当する抵抗値以上増加したと判定した後に、新たにFCCを算出し、算出したFCCと、それ以前に算出されて記憶されているFCCとの差分を、第2閾値と比較した結果により、二次電池11,12,13が異常であるか否かを判定する。
【0046】
例えば、二次電池13のタブが外れた場合、二次電池11,12のFCCは、二次電池11,12,13のFCCよりも比率にして33%小さい容量だけ減少すると考えられるため、第2閾値を、FCCの初期値の20〜25%程度に設定すればよい。
以上の判定により、二次電池11,12,13が異常であると判定した場合は、非復帰スイッチ30のヒューズ31,31を溶断して、パック電池の安全性を確保する。
【0047】
以下では、上述したパック電池の制御部5の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。以下に示す処理は、ROM51に予め格納された制御プログラムに従ってCPU50により実行される。
図3は、二次電池11,12,13の内部抵抗の増大を検出するCPU50の処理手順を示すフローチャートであり、図4は、FCCを算出して二次電池11,12,13が異常であるか否かを判定するCPU50の処理手順を示すフローチャートである。図3の処理は、10分毎に起動されるが、起動周期は10分に限定されない。図4の処理は、図3の処理から起動される。図3,4の処理中で検出された充電電流、電池電圧等のデータは、適宜RAM52に記憶される。
【0048】
図3の処理が起動された場合、CPU50は、A/D変換器54を介して電流検出抵抗4の電圧を取り込み、取り込んだ電圧を電流に換算して充放電電流を検出する(S11)。実際には、複数回取り込んだ電圧に基づいて充放電電流を検出するようにしてもよい。その後、CPU50は、検出した充放電電流が、例えば150mAより多いか否かを判定し(S12)、多くない場合(S12:NO)、必要十分な充電電流が流れていないか、又は放電中であるとみなして、図3の処理を終了する。
【0049】
検出した充放電電流が150mAより多い場合(S12:YES)、CPU50は、A/D変換器54を介して取り込んだ二次電池11,12,13の電圧値に基づいて電池電圧を検出する(S13)と共に、I/Oポート53からHレベルのオフ信号を与えて充放電用のFET35,36をオフする(S14)。この時点が、図2A,図2Bでは時刻T1,T3に対応する。これにより、二次電池11,12,13の充電電流が遮断される。
【0050】
その後、CPU50は、例えば250ms間待機する(S15)。この期間が、図2A,図2Bでは時刻T1〜T2,時刻T3〜T4に対応する。待機する期間は250msに限定されず、この期間内に二次電池11,12,13の電池電圧が十分に低下すればよい。
【0051】
次いで、CPU50は、A/D変換器54を介して取り込んだ二次電池11,12,13の電圧値に基づいて電池電圧を検出する(S16)と共に、I/Oポート53からLレベルのオン信号を与えて充放電用のFET35,36をオンする(S17)。これにより、二次電池11,12,13の充電電流が再び導通する。その後、CPU50は、ステップS13,S16で検出した電池電圧の差分を算出し(S18)、算出した差分を、ステップS11で検出した充放電電流(ここでは充電電流)で除して二次電池11,12,13の内部抵抗を算出する(S19)。
【0052】
次いで、CPU50は、算出した内部抵抗と、RAM52に記憶した内部抵抗との差分を算出する(S20)。ここで、“RAM52に記憶した内部抵抗”とは、図3の処理が前回起動されたときに、後述するステップS21で記憶された内部抵抗であるが、それより前の回に起動されたときに算出して記憶した内部抵抗であってもよい。その後、CPU50は、ステップS19で算出した内部抵抗を、次回の起動に備えてRAM52に記憶する(S21)。
【0053】
次いで、CPU50は、算出した内部抵抗の差分が第1閾値(例えば10mΩ)より大きいか否かを判定し(S22)、大きくない場合(S22:NO)、そのまま図3の処理を終了する。これに対し、算出した内部抵抗の差分が第1閾値より大きい場合(S22:YES)、CPU50は、図4に示すFCCを算出する処理を起動して(S23)、図3の処理を終了する。
【0054】
次に図4の処理について説明する。ここでのFCCは、二次電池11,12,13の放電終止状態から、満充電となるまでの充電電流を積算する。
図4の処理が起動された場合、CPU50は、FCCの算出の開始が可能か否か、即ち、FCCの算出が開始できる条件が整ったか否かを判定し(S31)、開始が可能となるまで待機する(S31:NO)。開始が可能な場合(S31:YES)、CPU50は、通信部56を介して外部の電気機器に充電させる充電電流を設定する(S32)。このときの充電電流は、例えば、リチウムイオン電池を定電流・定電圧で充電するときの定電流に対応する電流値である。外部の電気機器が充電電圧を設定できるものであるときは、充電電圧を設定してもよい。
【0055】
次いで、CPU50は、I/Oポート53からLレベルのオン信号を与えて充放電用のFET35,36をオンした(S33)後に、充電電流の積算処理を開始する(S34)。積算処理は、それ自体公知であるため、その説明を省略する。その後、CPU50は、二次電池11,12,13が満充電となったか否かを判定し(S35)、満充電となるまで待機する(S35:NO)。
【0056】
満充電となった場合(S35:YES)、CPU50は、I/Oポート53からHレベルのオフ信号を与えて充放電用のFET35,36をオフした(S36)後に、充電電流の積算処理を停止する(S37)。その後、CPU50は、積算した容量、即ち、新たに算出したFCCと、RAM52に記憶したFCCとの差分を算出する(S38)。ここで、“RAM52に記憶したFCC”とは、図4の処理が前回起動されたときに、後述するステップS41で記憶されたFCC、又は、図3からの起動とは別に起動された処理で算出されてRAM52に記憶されたFCCであるが、FCCの初期値であってもよい。
【0057】
次いで、CPU50は、算出した差分が第2閾値(例えばFCCの初期値)より大きいか否かを判定し(S39)、大きい場合(S39:YES)、二次電池11,12,13の何れかが並列に接続されていないと判定する。具体的には、タブが外れたか、二次電池11,12,13の何れか1つでCIDが内部回路を遮断したと想定される。この場合、CPU50は、I/Oポート53からHレベルのオン信号を与えてFET33をオンすることによってヒューズ31,31を溶断し(S40)、図4の処理を終了する。一方、算出した差分が第2閾値より大きくない場合(S39:NO)、CPU50は、新たに算出したFCCをRAM52に記憶して(S41)、図4の処理を終了する。
【0058】
以上のように本実施の形態1によれば、二次電池の充電中に、充放電路に介装されている充放電用のFETを250ms間オフしてからオンに戻すことを10分毎に繰り返し、オフする前及びオンする前に検出した二次電池の電池電圧の差分(ΔV)と、オフする前に検出した充電電流とに基づいて、二次電池の内部抵抗を10分毎に算出してRAMに記憶する。ここで新たに算出した内部抵抗と、過去に算出してRAMに記憶した内部抵抗との差分が第1閾値より大きい場合、新たに算出したFCCと、過去に算出してRAMに記憶したFCCとの差分を第2閾値と比較することによって、二次電池が異常であるか否かを判定する。
つまり、10分毎に順次算出した二次電池の内部抵抗が、それより前に算出した内部抵抗より第1閾値に相当する抵抗値以上増加している場合は、新たに算出したFCC及びそれより前に算出したFCCの差分と第2閾値とを比較した結果により、並列容量の低下を確認した上で、二次電池が異常であるか否かを判定する。
従って、二次電池が複数並列に接続されたパック電池で二次電池が異常であるか否かを確実に判定することが可能となる。
【0059】
また、新たに算出したFCCと、過去に算出してRAMに記憶したFCCとの差分が第2閾値より大きい場合、並列に接続されているべき二次電池のうち、少なくとも1つが並列接続されていないと判定する。
従って、新たに算出したFCCがそれより前に算出されたFCCより第2閾値に相当する容量値以上低下していた場合は、例えば、二次電池同士を接続するタブが外れたこと、又は二次電池内の電流制限素子(CID)が内部の回路を遮断したことを検出することが可能となる。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態1が、二次電池11,12,13の並列容量に係る異常を判定する形態であるのに対し、実施の形態2は、二次電池11,12,13の電池電圧に係る異常を判定する形態である。
例えば、二次電池11,12,13のうち二次電池13の内部で電極(正極及び負極)間に部分的な短絡の兆候が見出されているにも関わらず、これを放置した場合、電極間の短絡が進行してパック電池の発火、破裂等の事故に至る可能性がある。
【0061】
そこで、本実施の形態2では、充電も放電もされていない間に時系列的に検出した二次電池11,12,13の電池電圧について、新たに検出した電池電圧がそれより前に検出した電池電圧より第3閾値に相当する電圧値以上低下している場合、所定電流で二次電池11,12,13を所定時間だけ充電し、その間の電池電圧の上昇分が第3閾値より小さいときに、二次電池11,12,13の少なくとも1つが内部短絡していると判定する。ここでは、判定の結果を受けて、非復帰スイッチ30のヒューズ31,31を溶断して充放電路を遮断するため、パック電池全体の安全性が確保される。
【0062】
以下では、具体的な異常判定方法について説明する。
図5は、充放電の停止中の電池電圧の時間変化を示す説明図である。また、図6のAは所定電流による充電を開始するタイミングを示す説明図、Bは所定電流による充電中の電池電圧の時間変化を示す説明図である。図5,図6A,図6Bの横軸は時間を表し、縦軸は電池電圧,充電電流,電池電圧を表す。
【0063】
図5に示すように、時刻T5及び該時刻T5から所定時間(例えば30分)経過後の時刻T6における電池電圧の差分をΔV(3)とし、時刻T6及び該時刻T6から所定時間経過後の時刻T7における電池電圧の差分をΔV(4)とする。二次電池11,12,13が正常状態にある限り、充放電の停止中に検出したΔV(3)及びΔV(4)の差分は微々たるものである。
【0064】
ここで、例えば時刻T6から時刻T7までの間に二次電池13で内部短絡が進行し始めた場合、ΔV(4)は、ΔV(3)に対して、第3閾値に相当する電圧値(例えば20mV)以上低下する。しかしながら、二次電池11,12,13の所定時間内での電圧低下分が高々20mVより大きくなったところで、直ちに二次電池11,12,13の何れかに内部短絡が生じたと判定することは早計である。そこで、二次電池11,12,13への充電を所定時間試みて、電池電圧が上昇する程度を確認した上で、二次電池11,12,13が異常であるか否かを判定する。以下、図6を用いて説明する。
【0065】
図6Aに示すように、時刻T8までの充電電流は実質的にゼロであり、時刻T8から後では、充電電流を例えば150mAとするが、これに限定されるものではない。ここでの150mAは、外部の電気機器に設定し得る充電電流の下限に近い電流であり、所定時間(例えば15分)の経過後に、正常状態にある二次電池11,12,13の電池電圧に有意な電圧上昇を及ぼし得る値である。
【0066】
図6Bでは、図6Aと同じ時刻T8と、その前後とにおける電池電圧が示されている。時刻T8から時刻T9までの所定時間(例えば15分)における電池電圧の上昇分をΔV(5)とする。二次電池11,12,13が正常状態にある場合、ΔV(5)は数十mVのプラスの電圧値となる。一方、二次電池11,12,13の何れかで内部短絡が進行しつつある場合、ΔV(5)は、第4閾値(例えば10mV)より小さくなるか、むしろマイナスの電圧値になる。これにより、二次電池11,12,13が異常であると判定した場合は、非復帰スイッチ30のヒューズを溶断して、パック電池の安全性を確保する。
【0067】
以下では、上述したパック電池の制御部5の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。
図7は、二次電池11,12,13の内部短絡を検出するCPU50の処理手順を示すフローチャートである。図7の処理は、30分毎に起動されるが、起動周期は30分に限定されない。図7の処理中で検出された充電電流、電池電圧等のデータは、適宜RAM52に記憶される。
【0068】
図7の処理が起動された場合、CPU50は、A/D変換器54を介して電流検出抵抗4の電圧を取り込み、取り込んだ電圧を電流に換算して充放電電流を検出する(S51)。実際には、複数回取り込んだ電圧に基づいて充放電電流を検出するようにしてもよい。その後、CPU50は、検出した充放電電流が、−5mA(放電電流の領域)より大きく、且つ20mA(充電電流の領域)より小さいか否かを判定する(S52)。
【0069】
尚、A/D変換器54に変換誤差がある点と、パック電池内部に見かけ上の充電電流となる電流が存在する点とを考慮して、−5mA(放電方向)から20mA(充電方向)の範囲の電流を充放電電流として検出しないようにする。但し、ステップS52で充放電電流と比較すべき電流の大きさは、−5mA及び20mAに限定されるものではない。
【0070】
検出した充放電電流が−5mA以下であるか又は20mA以上である場合(S52:NO)は、放電中又は充電中である可能性があるため、CPU50は、そのまま何も実行せずに図7の処理を終了する。一方、検出した充放電電流が−5mAより大きく、且つ20mAより小さい場合(S52:YES)は、充放電が行われていないと判定して差し支えないため、CPU50は、A/D変換器54を介して取り込んだ二次電池11,12,13の電圧値に基づいて電池電圧を検出する(S53)。
【0071】
次いで、CPU50は、検出した電池電圧と、RAM52に記憶した電池電圧との差分を算出する(S54)。ここで、“RAM52に記憶した電池電圧”とは、図7の処理が前回起動されたときに、後述するステップS55で記憶された電池電圧である。その後、CPU50は、ステップS53で検出した電池電圧を、次回の起動に備えてRAM52に記憶する(S55)。
【0072】
次いで、CPU50は、算出した電池電圧の差分が第3閾値(例えば20mV)より大きいか否かを判定し(S56)、大きくない場合(S56:NO)、そのまま図7の処理を終了する。これに対し、検出した電池電圧が第3閾値より大きい場合(S56:YES)、CPU50は、通信部56を介して外部の電気機器に充電させる充電電流(例えば150mA)を設定する(S57)。
【0073】
その後、タイマ55を用いて計時を開始する(S58)と共に、A/D変換器54を介して取り込んだ二次電池11,12,13の電圧値に基づいて電池電圧を検出する(S59)。更に、CPU50は、タイマ55が所定時間(例えば15分)を計時したか否かを判定して(S60)、所定時間を計時するまで待機し(S60:NO)、所定時間を計時した場合(S60:YES)、A/D変換器54を介して取り込んだ二次電池11,12,13の電圧値に基づいて、再び電池電圧を検出する(S61)。
【0074】
次いで、CPU50は、ステップS59,S61で検出した電池電圧の上昇分を符号付きで算出し(S62)、算出した上昇分が第4閾値(例えば10mV)より小さいか否かを判定する(S63)。第4閾値より小さくない場合(S63:NO)、CPU50は、そのまま図7の処理を終了する。算出した上昇分が第4閾値より小さい場合(上昇分が負の値である場合を含む)(S63:YES)、CPU50は、二次電池11,12,13の何れかで内部短絡が発生したと判定する。この場合、CPU50は、I/Oポート53からHレベルのオン信号を与えてFET33をオンすることによってヒューズ31,31を溶断し(S64)、図7の処理を終了する。
【0075】
その他、実施の形態1に対応する箇所には同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0076】
以上のように本実施の形態2によれば、二次電池の充放電電流が−5mAより大きく、且つ20mAより小さいことから、実質的に充電も放電もなされていない状態にある場合、二次電池の電池電圧を30分毎に検出して記憶する。そこで新たに検出した二次電池の電圧と、過去に検出して記憶した電圧との差分が第3閾値より大きい場合、二次電池を150mAの充電電流で充電する。更に、充電中に計時する15分の開始時点及び終了時点で二次電池の電池電圧を検出して、15分の間における電池電圧の上昇分を算出し、算出した電池電圧の上昇分を第4閾値と比較することによって、二次電池が異常であるか否かを判定する。
つまり、充放電がなされていない間に、新たに検出した二次電池の電池電圧が、それより前に検出した電池電圧より第3閾値に相当する電圧値以上低下している場合は、二次電池への充電を15分間試みて、充電中の二次電池の電池電圧の上昇分と第4閾値とを比較した結果により、電池電圧が上昇する程度を確認した上で、二次電池が異常であるか否かを判定することが可能となる。
【0077】
また、充電中の二次電池の電池電圧の上昇分が第4閾値より小さい場合、並列に接続されている二次電池のうちの少なくとも1つが内部で短絡していると判定する。
つまり、実際に充電したときの二次電池の電池電圧が、第4閾値に相当する電圧値より小さい電圧値しか上昇しない場合又は時間の経過と共に低下する場合は、二次電池の内部短絡を検出することが可能となる。
【0078】
更に、実施の形態1,2によれば、新たに算出したFCC及び過去に算出して記憶したFCCの差分を第2閾値と比較した結果、又は150mAの充電電流で充電中の15分間に算出した二次電池の電池電圧の上昇分を第4閾値と比較した結果に基づいて、二次電池の充放電路に介装された非復帰スイッチに含まれるヒューズを溶断する。
つまり、二次電池の内部抵抗が第1閾値に相当する抵抗値以上増加したことから、新たに算出したFCC及びそれより前に算出したFCCの差分と第2閾値とを比較した場合、又は、充放電されていない間の二次電池の電圧が第3閾値に相当する電圧値以上上昇したことから、150mAの充電電流による二次電池への充電を15分間試みて充電中の二次電池の電池電圧の上昇分と第4閾値とを比較した場合、これらの比較結果によって二次電池の充放電路が遮断されるため、二次電池が異常となった場合の安全を確保することが可能となる。
【0079】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
11,12,13 二次電池
30 非復帰スイッチ
31 ヒューズ
35,36 FET(スイッチ)
4 電流検出抵抗(充放電電流を検出する手段の一部)
5 制御部
50 CPU
51 ROM
52 RAM(記憶する手段)
53 I/Oポート
54 A/D変換器(電圧を検出する手段の一部)
55 タイマ(計時する手段)
56 通信部(充電させる手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数の二次電池と、該二次電池の充放電路に介装されたスイッチとを備え、前記二次電池の満充電容量を算出して記憶するパック電池で前記二次電池が異常であるか否かを判定する方法において、
前記二次電池の充電中に前記スイッチを時系列的にオフ及びオンし、
オフする前又はオンした後に前記二次電池の充電電流を検出し、
オフする前及びオンする前に前記二次電池の電圧を検出し、
検出した電圧の差分及び充電電流に基づいて前記二次電池の内部抵抗を時系列的に算出して記憶し、
内部抵抗を算出する都度、記憶済みの内部抵抗との差分を算出し、
算出した内部抵抗の差分が第1閾値より大きいか否かを判定し、
第1閾値より大きい場合、満充電容量を算出して、記憶済みの満充電容量との差分を算出し、
算出した満充電容量の差分を第2閾値と比較することにより、前記二次電池が異常であるか否かを判定すること
を特徴とするパック電池の異常判定方法。
【請求項2】
算出した満充電容量の差分が第2閾値より大きい場合、前記二次電池の少なくとも1つが並列接続されていないと判定することを特徴とする請求項1に記載のパック電池の異常判定方法。
【請求項3】
前記二次電池を外部から充電するようにしてあり、
前記二次電池の充放電電流を検出し、
検出した充放電電流が所定電流より小さい場合、前記二次電池の電圧を時系列的に検出して記憶し、
電圧を検出する都度、記憶済みの電圧との差分を算出し、
算出した電圧の差分が第3閾値より大きい場合、所定の充電電流で充電し、
充電中に所定時間を計時し、
計時の開始時点及び終了時点における前記二次電池の電圧を検出し、
検出した電圧の上昇分を算出し、
算出した電圧の上昇分を第4閾値と比較することにより前記二次電池が異常であるか否かを判定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載のパック電池の異常判定方法。
【請求項4】
算出した電圧の上昇分が第4閾値より小さい場合、前記二次電池の少なくとも1つが内部で短絡していると判定することを特徴とする請求項3に記載のパック電池の異常判定方法。
【請求項5】
並列接続された複数の二次電池と、該二次電池の充放電路に介装されたスイッチとを備え、前記二次電池の満充電容量を算出して記憶するパック電池において、
前記二次電池の充電中に前記スイッチを時系列的にオフ及びオンする切替手段と、
該切替手段がオフする前又はオンした後に前記二次電池の充電電流を検出する検出手段と、
前記切替手段がオフする前及びオンする前に前記二次電池の電圧を検出する手段と、
該手段が検出した電圧の差分及び前記検出手段が検出した充電電流に基づいて前記二次電池の内部抵抗を時系列的に算出して記憶する手段と、
該手段が内部抵抗を算出する都度、記憶済みの内部抵抗との差分を算出する手段と、
該手段が算出した内部抵抗の差分が第1閾値より大きいか否かを判定する手段と、
該手段が第1閾値より大きいと判定した場合、満充電容量を算出して、記憶済みの満充電容量との差分を算出する手段と、
該手段が算出した満充電容量の差分を第2閾値と比較する比較手段と
を備えることを特徴とするパック電池。
【請求項6】
前記二次電池の充放電電流を検出する手段と、
該手段が検出した充放電電流が所定電流より小さい場合、前記二次電池の電圧を時系列的に検出して記憶する手段と、
該手段が電圧を検出する都度、記憶済みの電圧との差分を算出する手段と、
該手段が算出した電圧の差分が第3閾値より大きい場合、所定の充電電流で外部から充電させる手段と、
該手段が充電させている場合、所定時間を計時する手段と、
該手段による計時の開始時点及び終了時点における前記二次電池の電圧を検出する手段と、
該手段が検出した電圧の上昇分を算出する手段と、
該手段が算出した電圧の上昇分を第4閾値と比較する第2の比較手段と
を備えることを特徴とする請求項5に記載のパック電池。
【請求項7】
前記二次電池の充放電路に介装されており、該充放電路を遮断する非復帰スイッチを備え、
前記比較手段又は第2の比較手段の比較結果に基づいて前記非復帰スイッチが遮断するようにしてあること
を特徴とする請求項5又は6に記載のパック電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96752(P2013−96752A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237734(P2011−237734)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】