説明

パック電池

【課題】ユーザーがケースを分解し、内蔵する電池が交換されて安全性が低下するのを確実に阻止する。
【解決手段】パック電池は、電池91と直列に接続している電流遮断素子92と、電池91の電気特性の変化から電池91の交換を検出して改ざん信号を出力する改ざん検出部96と、この改ざん検出部96から出力される改ざん信号で電流遮断素子92をオフにする制御部103とを備える。よって、内蔵する電池が交換されていることがわかる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵する電池の交換を検出するパック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池や保護回路を内蔵するパック電池は、ユーザーがケースを分解、改造して安全性が低下するのを防止する必要がある。このことを実現するために、ケース表面に付着している外装ラベルに、ユーザーが剥した証拠が残るようにしている改ざんを防止する機能を設けたものが開発されている。特許文献1ないし3参照)。これらの公報に記載される外装ラベルは、改ざんされるとその証拠が残るので、故障や市場クレームが発生したときに原因を追求するのに役立つ。さらに、外装ラベルによって改ざんされた証拠が残ることをユーザーが予め知ることによって、改ざんしようと思わなくなるという抑制効果があり、その結果、改ざん防止につながっている。
【特許文献1】特開2003−68267号公報
【特許文献2】特開2002−311836号公報
【特許文献3】特開2003−195767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の公報に記載される外装ラベルは、改ざんした証拠を残るようにはできるが、ユーザーが外装ラベルを剥して、ケースを分解し、さらに電池を交換する等の改造をしてケースを組み立てて電気機器にセットすると再び使用できる弊害がある。このため、ケースを分解して改造したパック電池の安全性を保証できない。
【0004】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、ユーザーがケースを分解し、内蔵する電池が交換されて安全性が低下するのを確実に阻止できるパック電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1のパック電池は、電池91と直列に接続している電流遮断素子92と、電池91の電気特性の変化から電池91の交換を検出して改ざん信号を出力する制御回路97とを備える。
【0006】
本発明の請求項2のパック電池は、電池91と直列に接続している電流遮断素子92と、電池91の電気特性の変化から電池91の交換を検出して電流遮断素子92をオフにする制御回路97とを備える。
【0007】
本発明のパック電池は、電流遮断素子92を、ヒューズ95と、電池91の充電を阻止するスイッチング素子93と、電池91の放電を阻止するスイッチング素子94のいずれかとすることができる。
【0008】
本発明のパック電池は、複数の電池91を内蔵して、制御回路97が各々の電池91の電気特性を検出し、各々の電池91の電気特性の変化から電池91の交換を判定することができる。
【0009】
本発明のパック電池は、制御回路97が、各々の電池91の放電電圧を検出し、各々の電池91の放電電圧の変化、又は放電電圧の順番から電池91の交換を検出することができる。
【0010】
本発明のパック電池は、制御回路97が、各々の電池91の充電電圧を検出し、各々の電池91の充電電圧の変化、又は充電電圧の順番から電池91の交換を検出することができる。
【0011】
本発明のパック電池は、制御回路97が、各々の電池91の満充電後の放電電圧を検出し、各々の電池91の放電電圧の変化又は順番から電池91の交換を判定することができる。
【0012】
本発明のパック電池は、制御回路97が電池91の容量を検出し、容量の変化から電池91の交換を検出することができる。
【0013】
本発明のパック電池は、制御回路97が、非動作状態となる前の電池電圧を記憶する記憶部を備え、この記憶部に記憶される電圧値から電池91の交換を検出することができる。制御回路97は、記憶部に電池電圧を記憶することなく非動作状態となると、電池91が交換されたと判定することができる。また、制御回路97は、非動作状態となる前に記憶部に記憶した電圧値と、動作状態に復帰した後の電池電圧とを比較し、復帰後の電池電圧が記憶部に記憶される電圧値よりも大きい場合に、電池91が交換されたと判定することができる。
制御回路(97)が、起動した後に初期化するメインメモリー内の特定の領域を備え、非動作状態から起動したとき、特定の領域が初期化状態を維持しているなら、一時的な電力停止であって、電池(91)が交換されていないと判定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1のパック電池は、ユーザーが内蔵する電池を交換して、安全性が低下するのを確実に阻止できる特徴がある。それは、ユーザーがパック電池に内蔵される電池を交換すると、このことを制御回路が検出して改ざん信号を出力するからである。このパック電池は、電池が交換されるという危険な改造を確実に検出できるので、パック電池の安全性を保証できる。
【0015】
さらに、本発明の請求項2のパック電池は、ユーザーがパック電池に内蔵される電池を交換すると、このことを制御回路が検出して電流遮断素子をオフとしてパック電池を使用できなくするので、電池が交換されて改造されたパック電池の使用を阻止して、安全性を確実に保証できる。
【0016】
本発明の請求項3のパック電池は、ヒューズ、電池の充電を阻止するスイッチング素子、電池の放電を阻止するスイッチング素子のいずれかを電流遮断素子に併用するので、電池が交換された状態で使用できなくする電流遮断素子を特別に設ける必要がない。とくに、スイッチング素子やヒューズは、電池の充放電を制御し、あるいは電池を保護するためにパック電池に内蔵される素子であって、これらの素子を電流遮断素子に併用するので、製造コストを低減できる。
【0017】
さらに、本発明の請求項4のパック電池は、改ざん検出部が、内蔵される複数の電池の電気特性を検出し、各々の電池の電気特性の変化から電池の交換を判定するので、ユーザーがこの改ざん防止の構造を外観的に判断できない特長がある。このため、このパック電池は、改ざん防止の構造をユーザーに理解されることがなく、いいかえると、改ざん防止の構造に対応した改造方法をユーザーが考えにくく、その結果、改ざんを効果的に抑制できる特長がある。
【0018】
さらにまた、本発明の請求項9のパック電池は、制御回路が、非動作状態となる前の電池電圧を記憶する記憶部を備え、この記憶部に記憶される電圧値から電池の交換を検出するので、ユーザーが電池を交換したことを確実に検出できる特長がある。それは、パック電池に内蔵される電池が取り外されると、制御回路が非動作状態となる特性を巧みに利用
して、その前後の状態から電池の交換を検出するからである。とくに、本発明の請求項10のパック電池は、記憶部に電池電圧を記憶することなく非動作状態となると、電池が不正に外されたと判断できるので、電池の交換を正確に検出できる。また、請求項11のパック電池は、制御回路が非動作状態となる前に記憶部に記憶した電圧値に比べて、動作状態に復帰した後の電池電圧が大きいと、電池が交換されたと判定するので、電池容量が低下して制御回路が非動作状態となった場合においても、電池の交換を正確に検出できる。
また、制御回路97が、起動した後に初期化するメインメモリー内の特定の領域を備え、非動作状態から起動したとき、特定の領域が初期化状態を維持しているなら、一時的な電力停止であって、電池91が交換されていないと判定することができる。よって、一時的な電力停止による非動作状態、起動を、誤って、電池91が交換されたと判断することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのパック電池を例示するものであって、本発明はパック電池を以下のものに特定しない。
【0020】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0021】
図1に示すパック電池は、電池91と、この電池91と直列に接続している電流遮断素子92と、電池91の電気特性の変化から電池91の交換を検出して電流遮断素子92をオフにする制御回路97とを備える。制御回路97は、電池91の交換を検出して改ざん信号を出力する改ざん検出部96と、電流遮断素子92を制御する制御部103とを備える。この改ざん検出部96は、制御回路97内において、制御部103であるマイコンのプログラムによる動作によって機能している。制御部103は、改ざん検出部96から出力される改ざん信号を検出して電流遮断素子92をオフに制御する。
【0022】
電池91は、リチウムイオン二次電池である。ただ、電池は、ニッケル−水素電池やニッケルカドミウム電池とすることもできる。図のパック電池は、複数の電池91を内蔵している。複数の電池91は直列に接続されて、パック電池の出力電圧を高くしている。複数の電池は、並列に接続し、あるいは並列と直列に接続することもできる。
【0023】
図1のパック電池は、ヒューズ95と、充電用のスイッチング素子93と、放電用のスイッチング素子94のいずれか又は全てを電流遮断素子92に併用する。つまり、ヒューズ95と、充電用のスイッチング素子93と、放電用のスイッチング素子94のいずれか又は全てを電流遮断素子92として利用している。ヒューズ95は、電池91に過電流が流れるのを阻止し、また電池温度が異常に高くなるのを防止するために、パック電池に内蔵される。したがって、ヒューズ95は、電池91の過電流で溶断され、又は電池91の温度が異常に高くなると溶断される。ヒューズ95が溶断されると電池電流が遮断されて、パック電池は充電も放電できなくなる。すなわち使用できなくなる。したがって、電池91の交換を検出してヒューズ95を溶断して、パック電池を使用できなくできる。ヒューズ95を電流遮断素子92に併用するパック電池は、電池91が交換された状態で使用できなくする電流遮断素子を特別に設ける必要がない。
本実施例においては、電池91が交換された状態で、電流遮断素子92によりパック電池を使用できなくしているが、これに代わって、電池が交換された状態を示す異常信号を、図の鎖線Aで示すように、外部端子104に出力して、パック電池を電源とする電子機器にこの異常情報を送信することもできる。図のパック電池は、改ざん検出部96から異常信号を出力しているが、異常信号は制御部から出力することもできる。
【0024】
パック電池は、充電用のスイッチング素子93、又は放電用のスイッチング素子94を、電池91の交換を検出したときにパック電池を使用できなくする電流遮断素子92に併用することもできる。充電用のスイッチング素子93は、充電される電池91が満充電になるとオフに切り換えられて充電電流を遮断する。充電用のスッチング素子93は、充電電流を遮断して電池91の過充電を防止するスイッチである。このスイッチング素子93は、充電電流を遮断する状態で放電電流を遮断しない。
【0025】
放電用のスイッチング素子94は、放電される電池91の残容量が少なくなるとオフに切り換えられて放電電流を遮断する。このスイッチング素子94は、放電電流を遮断して電池91の過放電を防止するスイッチである。このスイッチング素子94は、放電電流を遮断する状態で充電電流を遮断しない。
【0026】
充電用のスイッチング素子93がオフに切り換えられると、パック電池は充電できなくなり、また放電用のスイッチング素子94をオフに切り換えると放電できなくなるので、これらのスイッチング素子93、94をオフ状態に保持することで、パック電池を使用できなくできる。したがって、電池91の充電用のスイッチング素子93又は放電用のスイッチング素子94を電流遮断素子92に併用して、電池91が交換されたパック電池を使用できなくできる。このパック電池も、電池91の充電用のスイッチング素子93又は放電用のスイッチング素子94を電流遮断素子92に併用するので、電池91が交換された状態で使用できなくする電流遮断素子92を特別に設ける必要がない。
【0027】
図1のパック電池は、充電電流を制御する充電用のスイッチング素子93と、放電電流を制御する放電用のスイッチング素子94と、過電流で溶断されるヒューズ95と、充電用のスイッチング素子93及び放電用のスイッチング素子94のオンオフを制御し、また過電流でヒューズ95を溶断する制御部103と、電池91の交換を検出して改ざん信号を出力する改ざん検出部96とを備える。
【0028】
充電用のスイッチング素子93と放電用のスイッチング素子94とヒューズ95は直列に接続されて、電池91の正極と出力端子100との間に接続している。充電用のスイッチング素子93と放電用のスイッチング素子94はFETである。ただ、充電用のスイッチング素子と放電用のスイッチング素子は、制御部の信号でオンオフに切り換えできる全ての素子、たとえばバイポーラトランジスター等の半導体スイッチング素子やリレー等も使用できる。
【0029】
ヒューズ95は、過電流で溶断され、さらに制御部103からの信号で強制的に溶断される。ヒューズ95を強制的に溶断するために、ヒューズ95に接近して加熱抵抗98を設け、さらに加熱抵抗98に通電するスイッチング素子99を制御部103でオンオフに制御する。制御部103がスイッチング素子99をオンに切り換えて、加熱抵抗98に通電し、加熱抵抗98がジュール熱で加熱され、これがヒューズ95を加熱して溶断する。図のパック電池は、電池91と直列にヒューズ95を設け、このヒューズ95を遮断するために、ヒューズ95に熱的に結合された加熱抵抗98と、この加熱抵抗98に直列接続されたFET等のスイッチング素子99とからなる遮断回路を、電池91の正極側と負極側との間に接続し、制御部103でスイッチング素子99のゲート信号を制御している。制御部103がスイッチング素子99をオン状態とすると、電池91から加熱抵抗98に電流が流れる。よって、加熱抵抗98が発熱し、ヒューズ95が溶断される。これにより、これ以後、パック電池の使用をできなくすることができる。
【0030】
充電用のスイッチング素子93は、電池91が満充電になるとオンからオフに切り換えられて、電池91の過充電を防止する。また、放電用のスイッチング素子94は、電池91が完全に放電されるとオフに切り換えられて、電池91の過放電を防止する。制御部103は、電池91に流れる電流を検出し、また、電圧を検出して、電池91の残容量を演算している。電池91の電流を検出するために、電池91と直列に接続している電流検出抵抗101を備える。この電流検出抵抗101の両端の電圧を検出して、電池91に流れ
る充電電流と、放電電流を判別して検出する。
【0031】
さらに、図のパック電池は、電池温度を検出する温度センサー102を備える。温度センサー102は、電池91に接近して熱結合状態で配設されるサーミスタである。温度センサー102は、電池91の温度で電気抵抗が変化して電池温度を検出する。制御部103は、温度センサー102で検出される電池温度が設定温度よりも高くなると、充電状態にあっては充電用のスイッチング素子93をオフに、放電状態にあっては放電用のスイッチング素子94をオフに切り換えて充電や放電を停止する。また、電池温度が異常に高くなると、ヒューズ95を溶断して充放電を停止する。
【0032】
改ざん検出部96は、電池91の電気特性の変化から電池91の交換を検出し、電池91が交換されたと判定すると改ざん信号を出力する。図1のパック電池は、複数の電池91を内蔵している。このパック電池は、改ざん検出部96で各々の電池91の電気特性を検出し、各々の電池91の電気特性の変化から電池91の交換を判定することができる。図のパック電池は、各々の電池91の電圧を検出するために、マルチプレクサ105で複数の電池91を切り換えてA/Dコンバータ106に入力し、入力された電圧をA/Dコンバータ106でデジタル信号に変換して改ざん検出部96に入力している。マルチプレクサ105は、制御部103から入力される同期信号でA/Dコンバータ106に入力する電池91を切り換えている。A/Dコンバータ106から出力される電池電圧のデジタル信号は、制御部103にも入力されて、電池91の残容量の演算に使用される。
【0033】
図2と図3は、放電されるパック電池の電池電圧の変化を示すグラフである。これらの図は、放電される3個の電池の電圧が変化する特性を示している。このパック電池は、改ざん検出部96でもって、各々の電池91の放電電圧を検出し、各々の電池91の放電電圧の変化、又は放電電圧の順番から電池91の交換を検出することができる。改ざん検出部96は、図2に示すように放電電圧が変化するとき、最も電圧が低くなる電池の電圧が、あらかじめ設定している最低電圧になるタイミングにおいて、電圧が高い電池の順番を記憶する。たとえば、図3にあっては、電圧が高い電池の順番は、電池A、電池B、電池Cとなっている。その後、再び同じ条件で電池電圧を検出して、電圧が高くなる電池の順番が変化して、電池A、電池B、電池Cの順番でなくなると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。
【0034】
また、改ざん検出部96は、図2と図3に示すように放電電圧が変化するとき、最も電圧が低くなる電池の電圧が、あらかじめ設定している最低電圧になるタイミングにおいて、各々の電池電圧を記憶する。その後、再び同じ条件で電池電圧を検出して、各々の電池電圧が記憶している電圧値よりも設定範囲以上に変化すると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。
【0035】
図4と図5は、充電されるパック電池の電池電圧の変化を示すグラフである。これらの図は、充電される3個の電池の電圧が変化する特性を示している。このパック電池は、改ざん検出部96でもって、各々の電池91の充電電圧を検出し、各々の電池91の充電電圧の変化、又は充電電圧の順番から電池91の交換を検出することができる。改ざん検出部96は、図4に示すように充電電圧が変化するとき、電池が満充電されたタイミングにおいて、電圧が高い電池の順番を記憶する。たとえば、図5にあっては、電圧が高い電池の順番は、電池A、電池B、電池Cとなっている。その後、再び同じ条件で電池電圧を検出して、電圧が高くなる電池の順番が変化して、電池A、電池B、電池Cの順番でなくなると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。
【0036】
また、改ざん検出部96は、図4と図5に示すように充電電圧が変化するとき、電池が満充電されるタイミングにおいて、各々の電池電圧を記憶する。その後、再び同じ条件で
電池電圧を検出して、各々の電池電圧が記憶している電圧値よりも設定範囲以上に変化すると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。
【0037】
さらに、改ざん検出部96は、電池91を満充電した後、数分経過したタイミングにおいて、各々の電池91の放電電圧を検出して、各々の電池91の放電電圧の変化、又は放電電圧の順番から電池91の交換を検出することができる。改ざん検出部96は、図5に示すように、満充電後、数分経過したタイミングにおいて、検出された各々の電池91の電圧から電池91の電圧の高い順番を記憶し、あるいは各々の電池91の電圧を記憶する。その後、再び同じ条件で電池電圧を検出して、電圧が高くなる電池の順番が変化し、あるいは各々の電池電圧が設定範囲よりも大きいと、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。図5に示すように、充電中においては、劣化が進んだ電池は、その内部抵抗が大きいことより、内部抵抗分の電圧が増加しているが、充電を停止すると、電圧がこの分低下すると共に、電池が充電中よりも化学的に安定状態となり電圧が低下する。
【0038】
さらに、改ざん検出部96は、電池91の容量を検出し、この容量の変化から電池91の交換を検出することもできる。この改ざん検出部96は、電池91の放電電圧と放電電流を検出し、この電圧値と電流値を積算して電池91の放電容量を演算する。この改ざん検出部96は、図の鎖線Bで示すように、電池91と直列に接続している電流検出抵抗101で放電電流を検出する。改ざん検出部96は、たとえば、電池を満充電状態から放電し、電池が完全に放電され、あるいは電池電圧が所定の最低電圧に低下するまでの放電量を積算して、電池の放電容量を演算する。その後、再び同じ条件で電池の容量を検出して、電池の容量が記憶している容量よりも設定範囲以上に変化すると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。電池容量の測定方法は、上述の放電容量を演算する方法以外でも、容量0%から満充電までの充電容量を測定する等の方法であっても良い。
【0039】
改ざん検出部96が、電池の電気特性から、電池91の交換を検出するフローチャートを図6ないし図12に示す。
図6は、各々の電池の放電電圧の順番から電池の交換を検出するフローチャートである。改ざん検出部は、以下のステップで電池の交換を検出する。
[n=1、2のステップ]
放電されるパック電池の各々の電池の放電電圧を検出し、最も電圧が低くなる電池の電圧が、あらかじめ設定している最低電圧まで低下したかどうかを検出する。
[n=3のステップ]
いずれかの電池の電圧が、あらかじめ設定している最低電圧まで低下すると、各々の電池の電圧を測定して、電圧が高い電池の順番を記憶する。
[n=4ないし6のステップ]
この電池の順番を、前回記憶した電池の順番と比較し、電圧が高くなる電池の順番が変化したかどうかを判定する。電池の順番が変化していると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。電池の順番が変化していないときは、電池が交換されていないと判定する。
【0040】
図7は、各々電池の放電電圧の変化から電池の交換を検出するフローチャートである。改ざん検出部は、以下のステップで電池の交換を検出する。
[n=1、2のステップ]
放電されるパック電池の各々の放電電池の電圧を検出し、最も電圧が低くなる電池の電圧が、あらかじめ設定している最低電圧まで低下したかどうかを検出する。
[n=3のステップ]
いずれかの電池の電圧が、あらかじめ設定している最低電圧まで低下すると、各々の電池の電圧を測定して、その電圧値を記憶する。
[n=4ないし6のステップ]
各々の電池の電圧を、前回記憶した各々の電池の電圧と比較し、各電池の電圧値が、記憶している電圧値よりも設定範囲以上に変化したかどうかを判定する。いずれかの電池の電圧が設定範囲以上に変化していると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。全ての電池の電圧が設定範囲以上に変化していないときは、電池が交換されていないと判定する。
【0041】
図8は、各々の電池の充電電圧の順番から電池の交換を検出するフローチャートである。改ざん検出部は、以下のステップで電池の交換を検出する。
[n=1、2のステップ]
充電されるパック電池の各々の電池の充電電圧を検出し、いずれかの電池が満充電されたかどうかを検出する。
[n=3のステップ]
いずれかの電池が満充電されると、各々の電池の電圧を測定して、電圧が高い電池の順番を記憶する。
[n=4ないし6のステップ]
この電池の順番を、前回記憶した電池の順番と比較し、電圧が高くなる電池の順番が変化したかどうかを判定する。電池の順番が変化していると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。電池の順番が変化していないときは、電池が交換されていないと判定する。
【0042】
図9は、各々電池の充電電圧の変化から電池の交換を検出するフローチャートである。改ざん検出部は、以下のステップで電池の交換を検出する。
[n=1、2のステップ]
充電されるパック電池の各々の電池の充電電圧を検出し、いずれかの電池が満充電されたかどうかを検出する。
[n=3のステップ]
いずれかの電池が満充電されると、各々の電池の電圧を測定して、その電圧値を記憶する。
[n=4ないし6のステップ]
各々の電池の電圧を、前回記憶した各々の電池の電圧と比較し、各電池の電圧値が、記憶している電圧値よりも設定範囲以上に変化したかどうかを判定する。いずれかの電池の電圧が設定範囲以上に変化していると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。全ての電池の電圧が設定範囲以上に変化していないときは、電池が交換されていないと判定する。
【0043】
図10は、満充電後の各々の電池の開放電圧の順番から電池の交換を検出するフローチャートである。改ざん検出部は、以下のステップで電池の交換を検出する。
[n=1、2のステップ]
充電されるパック電池の各々の電池の充電電圧を検出し、いずれかの、あるいは全ての電池が満充電されたかどうかを検出する。
[n=3、4のステップ]
電池の満充電が検出されると電池の充電を終了する。数分経過後、充電を停止し電流を停止した状態において、各々の電池の開放電圧を測定して、電圧が高い電池の順番を記憶する。
[n=5ないし7のステップ]
この電池の順番を、前回記憶した電池の順番と比較し、電圧が高くなる電池の順番が変化したかどうかを判定する。電池の順番が変化していると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。電池の順番が変化していないときは、電池が交換されていないと判定する。
【0044】
図11は、満充電後の各々の電池の放電電圧の変化から電池の交換を検出するフローチャートである。改ざん検出部は、以下のステップで電池の交換を検出する。
[n=1、2のステップ]
充電されるパック電池の各々の電池の充電電圧を検出し、いずれかの、あるいは全ての電池が満充電されたかどうかを検出する。
[n=3、4のステップ]
電池の満充電が検出されると電池の充電を終了する。数分経過後、充電を停止し電流を停止した状態において、各々の電池の開放電圧を測定して、その電圧値を記憶する。
[n=5ないし7のステップ]
各々の電池の電圧を、前回記憶した各々の電池の電圧と比較し、各電池の電圧値が、記憶している電圧値よりも設定範囲以上に変化したかどうかを判定する。いずれかの電池の電圧が設定範囲以上に変化していると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。全ての電池の電圧が設定範囲以上に変化していないときは、電池が交換されていないと判定する。
【0045】
図12は、電池の容量の変化から電池の交換を検出するフローチャートである。改ざん検出部は、以下のステップで電池の交換を検出する。
[n=1、2のステップ]
充電される電池の充電電圧を検出し、電池が満充電されたかどうかを検出する。
[n=3、4のステップ]
電池の満充電が検出されると、放電容量の演算を開始する。電池の放電容量は、電池の放電電圧と放電電流を積算して演算される。電池の放電容量は、電池が完全に放電されるまで積算して演算される。ただ、電池の放電容量は、電池電圧が所定の最低電圧に低下するまで積算して演算することもできる。
[n=5ないし7のステップ]
演算された電池の放電容量を、前回記憶した電池の放電容量と比較し、電池の容量が、記憶している電池の容量よりも設定範囲以上に変化したかどうかを判定する。電池の容量が設定範囲以上に変化していると、電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。電池の容量が設定範囲以上に変化していないときは、電池が交換されていないと判定する。
【0046】
制御部103は、改ざん検出部96からの改ざん信号を検出して、充電用のスイッチング素子93をオフに切り換えて充電できない状態とし、あるいは放電用のスイッチング素子94をオフに切り換えて放電できない状態とし、あるいはヒューズ95を溶断して充放電をできない状態として、パック電池を使用できない状態とする。制御部103は、改ざん検出部96の改ざん信号を検出すると、好ましくは、充電用のスイッチング素子93をオフ、放電用のスイッチング素子94をオフ、ヒューズ95を溶断する状態としてパック電池を使用できない状態とする。ただ、制御部103は、改ざん信号を検出して、充電用のスイッチング素子93と放電用のスイッチング素子94の何れかをオフとし、あるいはこれ等のスイッチをオフとすることなく、ヒューズ95を溶断してパック電池を使用できない状態とすることもできる。
【0047】
さらにまた、改ざん検出部96は、制御回路97が非動作状態となる前の電池電圧を記憶し、この電圧値から電池91の交換を検出することができる。この改ざん検出部96は、制御回路97が非動作状態となる前、すなわちシャットダウンされる前の電池電圧を記憶する記憶部(図示せず)を備える。この記憶部は、たとえば、不揮発メモリーである。この改ざん検出部96は、制御回路97がシャットダウンされるときに記憶部に記憶される電池電圧の記憶状態によって、制御回路97が正しくシャットダウンされたかどうか、いいかえると電池91が不正に外されてシャットダウンされたかどうかを判定できる。
【0048】
ここで、本実施例のパック電池の制御回路97がシャットダウンされるまでのプロセスについて説明する。パック電池を、ノート型のパーソナルコンピュータ等の電子機器の電源として利用するとき、電子機器を使用するとパック電池の電池91の容量が徐々に低下する。そして、電子機器を停止(電子機器に内蔵されるマイコンをシャットダウンする)すべき電池容量(例えば、リチウムイオン電池の場合、最低電圧の電池において、電池電圧=2.7V)となると、制御回路97は、上述の通信手段を利用して、外部端子104を介して、電子機器側に、容量低下情報(Terminate Discharge Alarm(TDA))を発信する。この情報を受け取った電子機器は、内蔵するマイコンをシャットダウンする。その後、充電されないなら、パック電池は、自己放電又は制御回路等のパック電池内の電力消費により、最低電池容量(例えば、リチウムイオン電池の場合、最低電圧の電池において、電池電圧=2.3V)となると、制御回路97をシャットダウンして非動作状態とする。このとき、制御回路97内の記憶部である不揮発メモリーに、複数の電池91の中から、ひとつの最低電池電圧を記録する。記憶部である不揮発メモリーは、制御回路97のシャットダウン時に最低電池電圧を記憶する“電圧値記録領域”を備え、この“電圧値記録領域”にシャットダウン時の最低電池電圧の電圧値を記憶する。そして、その後、パック電池を装着した電子機器が商用電源に接続されたとき、電子機器を介して、パック電池に電力が供給されて、制御回路97が再度起動して動作状態となる。
【0049】
したがって、改ざん検出部96は、制御回路97が非動作状態となる前に、記憶部に電池電圧が記憶されたかどうか、すなわち、制御回路97が正しくシャットダウンされたかどうかを判定することによって、電池91が不正に外されたかどうかを判定できる。つまり、電池91が不正に外されるときは、電池容量が低下することなく制御回路97への電力供給が遮断されるので、電池容量の低下情報としてシャットダウン時の電池電圧を記憶部に記憶することなく制御回路97がシャットダウンされる。したがって、シャットダウン時の電池電圧が記憶部に記憶されていないことを検出することにより、電池が不正に外されたことを検出できる。このような判定は、例えば、パック電池が電子機器等に接続され、電子機器から供給される電力で制御回路97が動作状態に復帰した後に行われる。すなわち、改ざん検出回路96は、制御回路97が動作状態に復帰した状態で、記憶部にシャットダウン時の電池電圧が記憶されているかどうか、いいかえると、記憶部に電池電圧を記憶することなく制御回路97が非動作状態となったかどうかを判定し、記憶部に電池電圧が記憶されていないときに改ざん信号を出力する。
【0050】
ところで、パック電池は、電池容量が低下して、制御回路97が正常にシャットダウンされた後に、電池91が不正に交換されることもある。このとき、記憶部には、電池容量の低下情報としてシャットダウン時の電池電圧が記憶されている。このような改ざんを検出するために、制御回路97は、非動作状態となる前に記憶部に記憶した電圧値と、動作状態に復帰した後の電池電圧を比較して電池の交換を検出することができる。すなわち、改ざん検出回路96は、制御回路97が動作状態に復帰した状態で、復帰後における電池電圧を検出し、この電池電圧を記憶部に記憶された電圧値と比較し、復帰後の電池電圧がシャットダウン時の電池電圧より大きいと、電池が不正に交換されたと判定して改ざん信号を出力する。
【0051】
図13は、制御回路が非動作状態となる前の電池電圧を記憶部に記憶し、この電圧値から電池の交換を検出するフローチャートである。改ざん検出部は、以下のステップで電池の交換を検出する。
[n=1のステップ]
制御回路がシャットダウンされて非動作状態にあるパック電池が電子機器に接続される。パック電池は、電子機器から電力が供給されて、制御回路97が再起動して動作状態となる。図のパック電池は、電子機器に接続された状態で電子機器側から制御回路97に電力を供給する回路を備える。
[n=2のステップ]
このステップでは、本実施例の検出機能の前提条件である検出条件を満たしているかどうかを判定する。このような検出条件は、以下の条件のうち、1つでも条件があえば本実施例の改ざん検出処理を行う。
(1) サイクル数が所定回数(例えば、100回)以上であること。
(2) 電池容量が、初期容量又は公称容量より少なく(例えば、半分以下)なっていること

(3) パック電池の使用を開始してから、所定期間(例えば、1年)以上が経過している
こと。(このような所定期間は、制御回路に内蔵されるタイマーで計測されるが、制御回路がシャットダウンしている間は、計測時間から除外される)
このような前提条件を付加するのは、電池交換は、電池が新品の間は交換されることはないと考えるからである。以上の前提条件の全てを満たさないときは、後述するn=6のステップに進む。なお、このステップは省略することもできる。
【0052】
[n=3のステップ]
制御回路97が非動作状態となる前に、電池電圧が記憶部に記憶されたかどうかを判定する。パック電池は、電池容量が低下して、制御回路97が正常にシャットダウンされた場合は、記憶部である不揮発メモリー内の“電圧値記録領域”にシャットダウン時の電池電圧が記憶されている。シャットダウン時に“電圧値記録領域”に記憶される電圧値は、たとえば、最低電池電圧である。したがって、改ざん検出部は、記憶部にシャットダウン時の最低電池電圧が記憶されたかどうかで、正常なシャットダウンであるかどうかを判定する。記憶部にシャットダウン時の最低電池電圧が記憶されたかどうかは、不揮発メモリー内の“電圧値記録領域”が初期値(0xFFFF)であるかどうかで判定される。“電圧値記録領域”が初期値であるなら、記憶部にシャットダウン時の電池電圧が記憶されていないと判定する。このとき、改ざん検出部は、正常なシャットダウンが行われずに、電池が不正に取り外されたと判定してn=7のステップに進む。
“電圧値記録領域”が初期値でない場合は、記憶部にシャットダウン時の最低電池電圧が記憶されて、正常なシャットダウンが行われたと判定して次のステップに進む。
[n=4のステップ]
このステップでは、不揮発メモリー内の“電圧値記録領域”に記憶された電圧値であるシャットダウン時の最低電池電圧Vshutが、所定の範囲内かどうかを判定する。このステップでは、たとえば、シャットダウン時の最低電池電圧Vshutが、1.3Vよりも大きく、4.2Vよりも小さいと、電池の電圧として正常であると判定する。シャットダウン時の最低電池電圧Vshutが、所定の範囲内のとき、正常であると判定して次のステップに進む。シャットダウン時の最低電池電圧Vshutが、所定の範囲外であるなら、電池電圧としては通常の値でないとして、すなわち電池が交換されたと判定してn=7のステップに進む。
[n=5のステップ]
再起動した制御回路97が、複数の電池91の各電池電圧を測定して、電池電圧が最低である電池を検出し、この最低電池電圧と、不揮発メモリー内の“電圧値記録領域”に記憶された電圧値(シャットダウン時の最低電池電圧Vshut)とを比較する。制御回路97が復帰後に検出した最低電池電圧が、記憶された電圧値Vshutより大きければ、電池が交換されたとしてn=7のステップに進む。復帰後の最低電池電圧が、記憶された電圧値Vshut以下のとき、正常であると判定して次のステップに進む。
[n=6のステップ]
このステップにおいて、記憶部の不揮発メモリー内の“電圧値記録領域”の値をクリアして初期値とし、通常のパック電池の動作、充電、放電等を開始する。
[n=7のステップ]
改ざん検出部96は、不正に電池が外され、あるいは電池が交換されたと判定して、改ざん信号を出力する。
【0053】
図13で説明した実施例に、更に、追加した実施例を、以下に、図14のフローを用いて説明する。
図13のフロー及び上記説明のステップ3において、n=3をNoとして、n=7のステップに進むとき、以下に説明するように、電池が不正に取り外されることがなくても、誤って、電池が不正に取り外されたと判定することがある。
例えば、ノイズを含めて短い時間の一時的な電力停止(=瞬断)等においては、制御回路97が正常でなく異常に停止(=シャットダウン)されることになり、記憶部である不揮発メモリー内の“電圧値記録領域”にシャットダウン時の電池電圧が記憶されることなく、シャットダウンされることになる。フロー図13の実施例において、このような場合、改ざん検出部は、正常なシャットダウンが行われずに、電池が不正に取り外されたと判定してn=7のステップに進む問題がある。
【0054】
図14のフローに示す実施例においては、このような問題点を解消するために、以下のような構成、方法を備えている。なお、図13で説明した実施例、フローと同様のステップ、方法については、同じステップ番号を付し、説明を省略し、異なるところのみ、以下に説明する。
制御回路97のマイコンである制御部103においては、プログラム実行時に使用するメモリーとしては、一般にマイコンに内蔵されているメインメモリ (main memory)である主記憶装置 として、揮発性メモリーであるDRAM又はSRAMが利用され、DRAM、SRAMは電源が落ちると内容を保持できなくなってしまい、次回起動時にはRAMの内容は不定でランダムな値になる。しかしながら、RAMの内容を保持するためのバックアップ機能が搭載されたマイコンでは、RAMの内容を保持しておくために電力をバックアップするコンデンサが接続されており、電源が瞬断したとしてもRAMの内容が直ぐに失われてしまうことはない。
制御部103は、内蔵するRAMの特定の領域(=瞬断判定領域)を備えて、起動した後、RAMにおいて、例えば16byte=128bitの瞬断判定領域をオール0に初期化する。
このような実施例においては、制御回路97が、起動した後に初期化するメインメモリー内の特定の領域を備え、非動作状態から起動したとき、特定の領域が初期化状態を維持しているなら、一時的な電力停止であって、電池91が交換されていないと判定することができる。よって、一時的な電力停止による非動作状態、起動を、誤って、電池91が交換されたと判断することがない。つまり、このようなメインメモリの特定の領域の内容が、電池91の電気特性を反映し、電気特性の変化を表している。
具体的には、 制御部103は、シャットダウンからの起動時に、瞬断判定領域をオール0に初期化する前に、RAMの瞬断判定領域の保存内容を確認する。このとき、前回の起動後においてオール0に初期化されていたRAMが、瞬断が発生し、この後の再起動においては、この16byteのRAMの内容は、上述のバックアップ機能により、ほとんどのbitが0に維持されていることになる(初期化状態を維持しており、1になっているbitは少ない)。一方、電池を不正に取り外された場合を含めて長時間停止後の起 動の場合は、RAMのバックアップ内容保持用コンデンサの電荷は完全に抜けてしまい、RAMの内容はバックアップされていないので、RAMのデータ保存特性として、bitのデータ内容が完全にランダムとなり平均的には0のbitと1のbitの個数が半分づつになっている傾向がある。
従って、起動時に、RAMのの瞬断判定領域の保存内容において、128bitにおいて、1になっているbitの数を数えて、所定数である例えば30個以上ある場合は長時間停止後の起動だと判断し、30個未満の場合は瞬断による停止後の起動だと判断できる。
【0055】
上述の機能を備える制御部103においては、次に説明するステップにより、電池91が不正に外されてシャットダウンされたかどうかを判定できる。図13で説明したフローと同様のステップ、方法については、説明を省略し、異なるところのみ、以下に説明する。
ステップ3において、“電圧値記録領域”が初期値でない場合は、記憶部にシャットダウン時の最低電池電圧が記憶されて、正常なシャットダウンが行われたと判定して次のステップ4に進む。一方、“電圧値記録領域”が初期値であるなら、記憶部にシャットダウン時の電池電圧が記憶されていないと判定する。そして、次に、ステップ10において、以下のように判定する。
RAMの瞬断判定領域の保存内容を確認し、128bitの中で、1になっているbitの数が、所定数(例えば、30個)以上あるかどうかを判定する。所定数以上のときは、YESとして、電池を不正に取り外されて、長時間停止後の起動であるとして、ステップ7に進む。一方、所定数未満のときは、NOとして、瞬断による停止であり不正に電池が取り外されていないと判断して、ステップ6に進む。ステップ6の後は、ステップ11にて、RAMの瞬断判定領域をゼロとして、初期値化する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例にかかるパック電池の回路図である。
【図2】放電されるパック電池の電池電圧の変化を示すグラフである。
【図3】図2に示すグラフの一部拡大図である。
【図4】充電されるパック電池の電池電圧の変化を示すグラフである。
【図5】図4に示すグラフの一部拡大図である。
【図6】制御回路が電池の交換を検出するフローチャートの一例である。
【図7】制御回路が電池の交換を検出するフローチャートの他の一例である。
【図8】制御回路が電池の交換を検出するフローチャートの他の一例である。
【図9】制御回路が電池の交換を検出するフローチャートの他の一例である。
【図10】制御回路が電池の交換を検出するフローチャートの他の一例である。
【図11】制御回路が電池の交換を検出するフローチャートの他の一例である。
【図12】制御回路が電池の交換を検出するフローチャートの他の一例である。
【図13】制御回路が電池の交換を検出するフローチャートの他の一例である。
【図14】制御回路が電池の交換を検出するフローチャートの他の一例である。
【符号の説明】
【0057】
91…電池
92…電流遮断素子
93…スイッチング素子
94…スイッチング素子
95…ヒューズ
96…改ざん検出部
97…制御回路
98…加熱抵抗
99…スイッチング素子
100…出力端子
101…電流検出抵抗
102…温度センサー
103…制御部
104…外部端子
105…マルチプレクサ
106…A/Dコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池(91)と直列に接続している電流遮断素子(92)と、電池(91)の電気特性の変化から電池(91)の交換を検出して改ざん信号を出力する制御回路(97)とを備えるパック電池。
【請求項2】
電池(91)と直列に接続している電流遮断素子(92)と、電池(91)の電気特性の変化から電池(91)の交換を検出して電流遮断素子(92)をオフにする制御回路(97)とを備えるパック電池。
【請求項3】
電流遮断素子(92)が、ヒューズ(95)と、電池(91)の充電を素子するスイッチング素子(93)と、電池(91)の放電を素子するスイッチング素子(94)のいずれかである請求項1または2に記載されるパック電池。
【請求項4】
パック電池が複数の電池(91)を内蔵しており、制御回路(97)が各々の電池(91)の電気特性を検出し、各々の電池(91)の電気特性の変化から電池(91)の交換を判定する請求項1または2に記載されるパック電池。
【請求項5】
制御回路(97)が、各々の電池(91)の放電電圧を検出し、各々の電池(91)の放電電圧の変化、又は放電電圧の順番から電池(91)の交換を検出する請求項4に記載されるパック電池。
【請求項6】
制御回路(97)が、各々の電池(91)の充電電圧を検出し、各々の電池(91)の充電電圧の変化、又は充電電圧の順番から電池(91)の交換を検出する請求項4に記載されるパック電池。
【請求項7】
制御回路(97)が、各々の電池(91)の満充電後の放電電圧を検出し、各々の電池(91)の放電電圧の変化又は順番から電池(91)の交換を判定する請求項4に記載されるパック電池。
【請求項8】
制御回路(97)が電池(91)の容量を検出し、容量の変化から電池(91)の交換を検出する請求項1または2に記載されるパック電池。
【請求項9】
制御回路(97)が、非動作状態となる前の電池電圧を記憶する記憶部を備え、この記憶部に記憶される電圧値から電池(91)の交換を検出する請求項1または2に記載されるパック電池。
【請求項10】
制御回路(97)が、記憶部に電池電圧を記憶することなく非動作状態となると、電池(91)が交換されたと判定する請求項9に記載されるパック電池。
【請求項11】
制御回路(97)が、非動作状態となる前に記憶部に記憶した電圧値と、動作状態に復帰した後の電池電圧とを比較し、復帰後の電池電圧が記憶部に記憶される電圧値よりも大きい場合に、電池(91)が交換されたと判定する請求項9に記載されるパック電池。
【請求項12】
制御回路(97)が、起動した後に初期化するメインメモリー内の特定の領域を備え、非動作状態から起動したとき、特定の領域が初期化状態を維持しているなら、一時的な電力停止であって、電池(91)が交換されていないと判定する請求項1または2に記載されるパック電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−21619(P2008−21619A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204007(P2006−204007)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】