説明

パッケージトレイ

【課題】十分な強度を有し、しかも吸音特性に優れた安価なパッケージトレイとする。
【解決手段】連泡率が50%以上の連続気泡構造をもち、硬度が5N/cm2 以上、密度が0.03〜0.15g/cm3 、セル径が 0.5〜10mm、1〜2KHz の音の平均吸音率が45%以上、の各特性を備えた硬質発泡ウレタン層2を有する。
上記特性を有する硬質発泡ウレタン層2を備えているので、物を載せるに十分な強度を有し、吸音特性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のリア席後部に設けられ、物を載せる場所あるいはスピーカを組み込む場所などとして用いられるパッケージトレイに関し、詳しくは走行時の騒音や車外の騒音が車室内に侵入するのを防止できるパッケージトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車車室内の静粛性の改善が求められ、風切り音、タイヤからの騒音などが車室内へ侵入するのを抑制する手段が種々採用されている。例えば自動車のリア席後部に設けられるパッケージトレイは、物を載せるスペースとして機能するばかりでなく、ラゲッジルームと車室との隔壁として機能し、走行音などがラゲッジルームから車室内に進入するのを防止している。
【0003】
従来のパッケージトレイは、物を載せるのに十分な強度を付与することを第1の課題とし、繊維強化プラスチック、木質合板などからなる基材の表面にファブリックなどからなる表皮を積層したものが一般的である。そのため、遮音性能は有するものの吸音性能はほとんどなく、防音性能を向上させるためには吸音特性を有するようにすることが求められている。
【0004】
そこで特開平09−216303号公報には、基材層の端部に通気孔を備えた厚肉部を形成し、通気孔の周囲に吸音材を包囲したパッケージトレイが提案されている。このパッケージトレイによれば、吸音性能と通気性能とが両立するとされている。しかし近年の乗用車では、通気手段はダクトクォータベントなどによって行われるのが主流であり、パッケージトレイに通気孔を形成する必要がない。また吸音材が軟質であるため剛性がなく、荷物を載せた場合に凹みが生じるという問題が残る。
【0005】
また特開2004−025945号公報には、表面に面一に吸音材を埋め込んだパッケージトレイが提案されている。このパッケージトレイによれば、パッケージトレイに近接する傾斜窓とパッケージトレイとの間で音波が多数回反射して吸音材に吸収されることで漸次減衰するため、車室内への騒音の伝搬を抑制することができる。しかしこの技術では傾斜窓が必須であり、車種によっては適用できない場合がある。また、埋め込まれた吸音材がフェルトや軟質の発泡体であるために、荷物を載せた場合に凹みが生じるという問題が依然として残る。
【0006】
そこで、車室側には硬質板状の基材層を配置し、軟質発泡ウレタンなどの吸音層をラゲッジルーム側に向かうように配置することで、ラゲッジルーム内の騒音を吸音することができ、車室内への進入を抑制することができる。しかしながらこのようなパッケージトレイでは、車室側の騒音を吸音することが困難である。また車種によっては、ラゲッジルームとの間に格子状などの仕切り板が設けられている場合があるが、軟質の吸音層を仕切り板の上に配置すると不安定となるので吸音層を分離する必要がある。そうすると、取付工数が増大するという問題がある。
【特許文献1】特開平09−216303号
【特許文献2】特開2004−025945号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、十分な強度を有し、しかも吸音特性に優れた安価なパッケージトレイとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のパッケージトレイの特徴は、ラゲッジルームと車室とを隔てるように配設されるパッケージトレイであって、少なくとも一部に硬質発泡ウレタン層が形成され、硬質発泡ウレタン層は、硬度が5N/cm2 以上、密度が0.03〜0.15g/cm3 であって、連泡率が50%以上の連続気泡構造を有し、セル径を 0.5〜10mmとすることで、1〜2KHz の音の平均吸音率がパッケージトレイ全体で45%以上になるように構成されていることにある。
【0009】
なお、ここでいう1〜2KHz における平均吸音率とは、1、1.25、1.6 、2KHz の1/3オクターブ毎の周波数における吸音率(JIS A 1405の基準に従い、垂直入射法により測定)の平均値をいう。
【0010】
硬質発泡ウレタン層は、型成形によって最終形状に形成されていることが望ましい。
【0011】
また硬質発泡ウレタン層の表面には、軟質の吸音層がさらに積層されていることが好ましい。
【0012】
硬質発泡ウレタン層の表面には、硬質発泡ウレタン層内部のセルと連通する連通部を有することが好ましい。なお硬質発泡ウレタン層表面に形成されたスキン層の平均厚さが2mm以下であれば、連通部を形成する必要はない。
【0013】
さらに、硬質発泡ウレタン層の表面には遮音層が積層されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパッケージトレイによれば、上記特性をもつ硬質発泡ウレタン層を有しているので、物を載せるに十分な強度を有している。また車両への取付け時に変形しにくいので、容易に取付けることができる。そして上記特性をもつことで硬質発泡ウレタン層は吸音特性に優れ、ラゲッジルーム内の騒音あるいは籠もり音が車室内に伝搬するのを抑制することができる。さらに硬質発泡ウレタン層は、軽量であるため燃費も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のパッケージトレイは、上記特性をもつ硬質発泡ウレタン層を有しているので、物を載せるに十分な強度を有し、安価なパッケージトレイとなる。
【0016】
ところで一般的な硬質発泡ウレタンは、連泡率が15%程度、硬度が70N/cm2 程度、密度が 0.1g/cm3 程度、セル径が 0.1〜 0.5mm程度であり、1〜2KHz の音の平均吸音率は10%程度であるので、軟質発泡ウレタンに比べて吸音特性がきわめて低い。
【0017】
そこで本発明では、硬度が5N/cm2 以上、密度が0.03〜0.15g/cm3 であって、連泡率が50%以上の連続気泡構造を有し、セル径を 0.5〜10mmの硬質発泡ウレタン層とすることで、1〜2KHz の音の平均吸音率がパッケージトレイ全体で45%以上になるように構成されている。このような特性を備えることで、軟質発泡ウレタンに匹敵する吸音特性が発現される。
【0018】
硬度が5N/cm2 未満では軟質となって物を載せる強度に不足し、 100N/cm2 を超えると、音の反射などにより吸音機能が損なわれる可能性があるため、硬度は5〜 100N/cm2 の範囲とすることが好ましい。また取付工数をより少なく抑え、吸音機能をより多く確保するためには、硬度を10〜80N/cm2 とすることが好ましく、より好ましくは20〜70N/cm2 とする。なお硬度は、JIS K 6400に準拠して測定される数値である。
【0019】
密度が0.03g/cm3 未満では硬度と連泡率との両方を上記範囲とすることが困難であり、密度が0.15g/cm3 を超えると通気量が低下し十分な吸音特性が得られなくなるとともに、重量が増大してしまう。密度は0.04〜0.12g/cm3 であることがより好ましく、0.05〜 0.1g/cm3 であることが特に好ましい。
【0020】
連泡率は高いほど好ましく、 100%であってもよいが、50%未満では吸音特性が不十分となって実用的でない。
【0021】
またセル径が 0.5mm未満では吸音特性が低下し、10mmを超えると十分な強度が得られない。強度を保ち吸音機能を確保するには、セル径は1〜8mmであることがより好ましく、さらに好ましくは 1.5〜7mm、特に好ましくは2〜6mmである。
【0022】
さらに本発明のパッケージトレイは、全体で1〜2KHz の音の平均吸音率が45%以上の特性を有している。このような吸音特性を有することで、ラゲッジルームの騒音あるいは籠もり音を効果的に吸音することができ、防音パッケージトレイとして特に効果的である。
【0023】
一般的な硬質発泡ウレタンは、硬質でありかつ内部のセル径が小さいために、吸音特性は低いものである。しかし消泡剤を加えて発泡成形することで、発泡樹脂の表面張力を部分的に低下させることができ、発泡させた際にセルが連続気泡構造となるとともに平均セル径を大きくすることができるので、上記したような特性をもつ硬質発泡ウレタンを製造することができる。
【0024】
なお、本発明に用いる硬質発泡ウレタンを製造する際に必要な成分及び含有量は、下記のとおりである。
【0025】
ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールなどが例示され、これらの単独あるいは2種以上の混合品を用いることができる。
【0026】
ポリイソシアネートは、芳香族系、脂肪族系及び脂環族系から選ばれる各種ポリイソシアネートを用いることができる。クルードMDIが特に好ましい。このポリイソシアネートの配合量は、イソシアネートインデックスとして50〜 500、好ましくは80〜 400、より好ましくは 100〜 300である。イソシアネートインデックスが50未満の場合、発泡が正常に行われず、割れが生じたり、泡体の崩落が発生することがある。
【0027】
発泡剤は特に制限されないが、通常、水が用いられる。またメチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩化アルキレン、イソペンタンなどを用いてもよい。この発泡剤の配合量は特に限定されないが、ポリオール 100質量部に対して、通常、1〜15質量部、好ましくは2〜10質量部、より好ましくは3〜8質量部である。
【0028】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、油脂径、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、リン酸エステル系のものが挙げられる。中でもシリコーン系消泡剤が特に好ましい。このシリコーン系消泡剤としては、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、エマルジョン型、自己乳化型及び粉末型のものが例示され、特にオイル型のものが好ましい。
【0029】
消泡剤は、HLB値が5以下であることが好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは 0.5〜 3.5、特に好ましくは1〜3である。HLB値が5を超えると、親水性が強くなり過ぎるため、連続気泡構造の硬質発泡ウレタンが得られなくなることがある。なお、このHLB値は、グリフィンの式{20×(親水基の質量比)}に基づいて算出した値である。
【0030】
消泡剤の配合量は、ポリオール 100質量部に対して、通常、 0.001〜1質量部、好ましくは 0.002〜 0.8質量部、より好ましくは 0.004〜 0.6質量部である。この範囲で配合することで、好ましい平均セル径を有する連泡硬質発泡ウレタンが得られる。この配合量が 0.001質量部未満では、セルが荒れて均一なセルが得られず、硬度が不足する。また1質量部を超えると、平均セル径が小さくなって吸音特性が不十分となる。
【0031】
また架橋剤を配合すれば、架橋構造により樹脂強度に優れた硬質発泡ウレタンを形成することができる。この架橋剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミンなどのトリオール、ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ペンタエリスリトールなどのテトラオールが挙げられる。
【0032】
硬質発泡ウレタン層の厚さは、5mm以上とすることが望ましい。厚さが5mm未満では、強度が不足したり、所望の吸音特性が発現されない場合がある。なお厚さは厚いほど好ましいが、スペース上の制約や重量アップなどの問題により上限が決定される。
【0033】
硬質発泡ウレタン層は、予め形成された板状の硬質発泡ウレタンから切り出すことで所定形状とすることもできるが、型成形によって最終形状に形成されていることが望ましい。このようにすれば、パッケージトレイの形状が複雑であってもその形状とすることが容易であり、局所的に厚さに差があっても容易に形成することができる。したがって補強リブなども容易に形成することができ、強度及び吸音特性を高く維持しつつ軽量とすることも容易である。
【0034】
また、硬質発泡ウレタン層の内部のセルを介して、硬質発泡ウレタン層の一方の表面から他方の表面まで連通していることが好ましい。すなわち、硬質発泡ウレタン層の内部に形成されたセルが各々閉じられた状態ではなく、各セルどうしが空気を行き来可能に連通している状態であることが好ましい。これによって、型成形過程において、硬質発泡ウレタン層の表面にスキン層が形成された場合であっても、このスキン層に起因するパッケージトレイの吸音特性の低下を回避することができる。
【0035】
なお、前述のように、硬質発泡ウレタン層においてその一方の表面から他方の表面まで連通していることで、硬質発泡ウレタン層の内部のセルとともにレゾネータ機能を果たすことが可能になるため、より高い防音性能をもたらすことも可能となる。
【0036】
硬質発泡ウレタン層の製造過程において、あらかじめ硬質発泡ウレタン層表面から内部まで連通する空洞を作成することで、硬質発泡ウレタン層が連通した状態となるが、硬質発泡ウレタン層の表面に前記スキン層が形成された場合は、このスキン層を削り取って硬質発泡ウレタン層の表面に開口を表出させるか、スキン層に穴を形成することで、前述のような硬質発泡ウレタン層の連通した状態を形成する必要がある。
【0037】
またスキン層を薄くすれば、意図的に連通させなくても吸音特性を満足させることができる。この場合は、スキン層の平均厚さを2mm以下、より好ましくは1mm以下とすればよい。スキン層をこのように薄く形成するには、発泡成形時間を短縮することで行うことができ、具体的には型温を高くする方法、触媒などで硬化時間を調節する方法などがある。
【0038】
また硬質発泡ウレタン層は、上記特性値の組み合わせによっては、吸音特性が相対的に低くなる場合もある。そのような場合には、硬質発泡ウレタン層の表面に軟質の吸音層をさらに積層することが好ましい。このように硬質発泡ウレタン層と軟質の吸音層との2色積層体とすることで、同じ厚さ及び同じ重量の硬質発泡ウレタンのみの場合に比べて広い周波数域で吸音特性が向上する場合がある。この吸音層の材質は、吸音特性に優れた軟質発泡ウレタンが特に好ましい。
【0039】
なお、ピーク周波数が異なる軟質ウレタン発泡体どうしを組み合わせた場合、個々の特性が必ずしも生かされるような結果になるとは限らず、広い周波数域で吸音特性に優れる結果にはならない。ただし、本発明のように、ピーク周波数が異なる硬質発泡ウレタンと軟質発泡ウレタンとを組み合わせた場合には、比較的広い周波数域で吸音特性が優れるようになることが確認されている。
【0040】
軟質の吸音層をさらに積層する場合、硬質発泡ウレタン層の表裏面のどちらに用いても吸音特性が向上するが、吸音層は硬質発泡ウレタン層のラゲッジルームに向かう表面側に積層するのが好ましい。またこの場合、硬質発泡ウレタン層の厚さは強度が確保できればよく、5mm以上とすればよい。
【0041】
硬質発泡ウレタン層は、表面に遮音層が積層されていることも好ましい。このようにすれば、硬質発泡ウレタン層を透過した音が遮音層で反射する度に硬質発泡ウレタン層を通過し、それによって吸音特性がさらに向上する。遮音層としてはある程度の質量が必要であるが、二次騒音を考慮すると軟質であることが好ましい。
【0042】
この遮音層は、他の内装品に色を合わせたり、シボ模様の加工を施すなどして意匠性をアップすることにより、遮音層が意匠層を兼ねることもできる。製造コストやスペース上の制約を考慮した場合、遮音層が意匠層を兼ねるようにした方が好ましい。
【0043】
本発明のパッケージトレイでは、硬質発泡ウレタン層の車室内に表出する表面に意匠層を形成することも好ましい。また上記したように、意匠層が遮音機能を備える場合や、遮音層が硬質発泡ウレタン層との間に介在しない場合は、意匠層は硬質発泡ウレタン層と一体であることが望ましい。一体化する方法として、硬質発泡ウレタン層と接着剤などで接合してもよいが、意匠層を型内に配置して硬質発泡ウレタン層を発泡成形して一体化する方が、接合工数が低減されるため、より好ましい。
【0044】
なお意匠層の材質は、基本的に意匠性を有するものであれば特に限定されるものではないが、遮音層でも例示したようなPVC、熱可塑性エラストマ、ゴムの他にも、ファブリック、皮革などから形成することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0046】
(実施例1)
図1に本実施例のパッケージトレイ1をもつ自動車を示し、図2に本実施例のパッケージトレイの要部断面図を示す。このパッケージトレイ1は、厚さ15mmの硬質発泡ウレタン層2と、硬質発泡ウレタン層2の表面に一体的に積層された厚さ10mmの意匠層3とから形成され、硬質発泡ウレタン層2の表面がラゲッジルームに向かうように取付けられる。
【0047】
硬質発泡ウレタン層2は、連泡率が95%以上の連続気泡構造をもち、硬度が30N/cm2 、密度が 0.1g/cm3 、セル径が4mmの各特性を備えている。
【0048】
意匠層3は炭酸カルシウムを20〜50重量%含有するPVCから形成され、硬度はショアA50以上である。
【0049】
このパッケージトレイは、先ず意匠層3を真空成形法によって所定形状に形成し、その意匠層3を発泡成形型の型面に沿うように配置して、表1に示す配合で消泡剤を含む硬質発泡ウレタン樹脂から硬質発泡ウレタン層2を形成した。これにより意匠層3は、硬質発泡ウレタン層2と一体的に接合されている。なお硬質発泡ウレタン層2の表面には、厚さ1mmの図示しないスキン層が形成されている。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1のパッケージトレイによれば、硬質発泡ウレタン層2は30N/cm2 の硬度を有しているので、パッケージトレイとして物を載せるのに十分な強度を有している。また硬質発泡ウレタン層2によって形状が保持されているので取付けが容易であり、軽量で安価である。
【0052】
(実施例2)
図3に本実施例のパッケージトレイの要部断面図を示す。このパッケージトレイは、実施例1と同様の硬質発泡ウレタンからなり厚さ10mmの硬質発泡ウレタン層20と、低周波数域における吸音特性に優れ表2に示す配合で形成された厚さ5mmの軟質発泡ウレタン層21とから構成され、硬質発泡ウレタン層20の表面に実施例1と同様の意匠層3が一体的に積層されていること以外は実施例1と同様である。軟質発泡ウレタン層21は、連泡率が92%の連続気泡構造をもち、硬度が3N/cm2 、密度が 0.1g/cm3 、セル径が 0.2mmの各特性を備えている。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例2のパッケージトレイでは、実施例1と同様の硬質発泡ウレタン層20を有しているので、パッケージトレイとして物を載せるのに十分な強度がある。さらにラゲッジルームに向かう表面に軟質発泡ウレタン層21を有しているので、ラゲッジルーム内の騒音及び籠もり音を効率よく吸音することができ防音性能がさらに向上する。
【0055】
なお、図示はしていないが、硬質発泡ウレタン層20は、車体に直接取り付けられている。
【0056】
(実施例3)
実施例2のパッケージトレイに対して、硬質発泡ウレタン層20の表面から剣山状の針で7mm突き刺して針穴を形成した。1個の針の直径は1mmであり、針穴は表面積の1cm2 に対して2個の割合で形成した。
【0057】
本実施例のパッケージトレイの拡大断面図を図4に示す。この防音部材は、実施例1と同様の硬質発泡ウレタン層20と、実施例2と同様の軟質発泡ウレタンBからなる軟質発泡ウレタン層21とから構成され、硬質発泡ウレタン層20の表面に実施例1と同様の意匠層2が一体的に積層されている。そして硬質発泡ウレタン層20には、硬質発泡ウレタン層20を厚さ方向に貫通する針穴22が形成されている。
【0058】
(比較例1)
硬質発泡ウレタン層2に代えて、表3に示す配合で同一形状に形成された軟質発泡ウレタン層を形成したこと以外は実施例1と同様のものを比較例1のパッケージトレイとした。軟質発泡ウレタン層は、連泡率が90〜95%の連続気泡構造をもち、硬度が0.01〜0.05N/cm2 、密度が0.07g/cm3 、セル径が 0.1〜 0.5mmの各特性を備えている。しかしこのパッケージトレイは、軟質で柔軟であるために、物を載せるパッケージトレイとしては用を成さない。
【0059】
【表3】

【0060】
(比較例2)
実施例1の硬質発泡ウレタン層2が、実施例2の軟質発泡ウレタン層21に用いた軟質発泡ウレタンBから形成されたものを比較例2とした。
【0061】
比較例2のパッケージトレイにおいても、比較例1と同様に軟質で柔軟であるために、物を載せるパッケージトレイとしては用を成さない。
【0062】
(比較例3)
発泡成形型の温度を変えたこと以外は実施例1と同様にして硬質発泡ウレタン層2を形成した。実施例1及び比較例3ともに硬質発泡ウレタン層2にはスキン層が形成されているが、実施例1のスキン層の厚さは1mmであるのに対し、比較例3では3mmと厚くなっている。
【0063】
比較例3のパッケージトレイにおいては、実施例1と同様の硬質発泡ウレタン層2を有しているため、パッケージトレイとして物を載せるのに十分な強度がある。
【0064】
なお、各実施例及び比較例のパッケージトレイにおける吸音特性を確認するため、以下に示す1〜4の試験を行った。
【0065】
<試験例1>
実施例1と比較例1の吸音特性を比較するために、硬質発泡ウレタン層2及び軟質発泡ウレタン層の厚さを15mmとした試験片を用い、吸音特性をそれぞれ評価した。なお意匠層3は形成されていない。吸音特性は JIS A 1405に規定された方法に従って各周波数で吸音率を測定し、 200〜3150Hzの周波数の吸音率で比較した。結果を図5に示す。
【0066】
図5より実施例1は、1〜2KHz の音の平均吸音率が45%以上(46.9%)であり、比較例1における1〜2KHz の音の平均吸音率(39.4%)より高い吸音特性を示している。また1KHz を超える高周波数域で比較例1より高い吸音特性を示し、防音パッケージトレイとして特に好適であることがわかる。
【0067】
<試験例2>
実施例2と比較例2及び実施例1の吸音特性を比較するために、硬質発泡ウレタン層10と軟質発泡ウレタン層11の合計厚さ及び軟質発泡ウレタン層の厚さを15mmとした試験片を用い、試験例1と同様に吸音特性をそれぞれ評価した。なお意匠層3は形成されていない。また実施例2の試験片において、硬質発泡ウレタン層20の厚さは5mm、軟質発泡ウレタン層21の厚さは10mmである。結果を図6に示す。
【0068】
図6より、実施例2は1〜2KHz の音の平均吸音率が45%以上(70.4%)であり、実施例1における1〜2KHz の音の平均吸音率(46.9%)より高い吸音特性を示している。また実施例2は、2KHz 以上の高周波数域で比較例2より高い吸音特性を示し、広い周波数域で吸音特性に優れていることが明らかである。
【0069】
すなわち、比較的低周波数域で吸音特性が良好な軟質発泡ウレタンを組み合わせることで、同じ厚さ及びほぼ同じ重量としても、広い周波数域で高い吸音特性を確保することができる。
【0070】
<試験例3>
実施例2と実施例3の吸音特性を比較するために、硬質発泡ウレタン層10と軟質発泡ウレタン層11の合計厚さを15mmとした試験片を用い、試験例1と同様にして吸音特性をそれぞれ評価し、結果を図7に示す。なお意匠層3は形成されていない。
【0071】
図7から、実施例3では実施例2より1〜2KHz の音の平均吸音率が73.1%とさらに向上していることがわかり、これは針穴を形成した効果であることが明らかである。すなわちスキン層に硬質発泡ウレタン層10内部のセルと連通する針穴(連通部)を形成することで、吸音特性がさらに向上する。
【0072】
<試験例4>
実施例1と比較例3の吸音特性を比較するために、硬質発泡ウレタン層2及び軟質発泡ウレタン層の厚さを15mmとした試験片を用い、試験例1と同様にして吸音特性をそれぞれ評価し、結果を図8に示す。なお意匠層3は形成されていない。
【0073】
図8から、比較例3では実施例1より1〜2KHz の音の平均吸音率が19.5%と低く、スキン層を厚くすると吸音率が低下することが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施例のパッケージトレイをもつ自動車の斜視図である。
【図2】本発明の一実施例のパッケージトレイの要部断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例のパッケージトレイの要部断面図である。
【図4】本発明の第3の実施例のパッケージトレイの要部断面図である。
【図5】周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図6】周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図7】周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図8】周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1:パッケージトレイ 2:硬質発泡ウレタン層 3:意匠層
20:硬質発泡ウレタン層 21:軟質発泡ウレタン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラゲッジルームと車室とを隔てるように配設されるパッケージトレイであって、少なくとも一部に硬質発泡ウレタン層が形成され、
該硬質発泡ウレタン層は、硬度が5N/cm2 以上、密度が0.03〜0.15g/cm3 であって、連泡率が50%以上の連続気泡構造を有し、セル径を 0.5〜10mmとすることで、1〜2KHz の音の平均吸音率がパッケージトレイ全体で45%以上になるように構成されていることを特徴とするパッケージトレイ。
【請求項2】
前記硬質発泡ウレタン層は、型成形によって最終形状に形成されている請求項1に記載のパッケージトレイ。
【請求項3】
前記硬質発泡ウレタン層の表面には軟質の吸音層がさらに積層されている請求項1又は請求項2に記載のパッケージトレイ。
【請求項4】
前記硬質発泡ウレタン層の表面には、前記硬質発泡ウレタン層内部のセルと連通する連通部を有する請求項2又は請求項3に記載のパッケージトレイ。
【請求項5】
前記硬質発泡ウレタン層表面に形成されたスキン層は、平均厚さが2mm以下となるように構成された請求項2又は請求項3に記載のパッケージトレイ。
【請求項6】
前記硬質発泡ウレタン層の表面には遮音層が積層されている請求項1〜5のいずれかに記載のパッケージトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−15857(P2006−15857A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195331(P2004−195331)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
【Fターム(参考)】