説明

パッケージ監視装置

【課題】発光素子と受光素子を用いて糸巻取途中におけるパッケージ表面状態を監視するとともに、ドラム表面での光の乱反射に起因する不良糸部分の誤検出を抑えることである。
【解決手段】糸巻取中にパッケージPの表面を監視するパッケージ監視装置25は、パッケージPの表面に沿って光を発する発光素子26、及び、発光素子26からの光を受光する受光素子27とを備え、発光素子26と受光素子27は、共に、パッケージPとこのパッケージPに接触する綾振ドラム13との接点近傍からパッケージPの周方向に離れた位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を巻取管に巻取ってパッケージを形成する糸巻取機において、糸巻取中にパッケージの表面を監視するパッケージ監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糸を巻取管に巻取ってパッケージを形成する糸巻取機として、自動ワインダが知られている。特許文献1に開示されているように、自動ワインダは、給糸ボビンから解舒された糸に存在する欠陥を検出し除去する糸欠陥検出装置と、糸切れ時、あるいは、糸欠陥検出装置による糸欠陥除去時(糸切断時)に、パッケージ側の糸端と給糸ボビン側の糸端をそれぞれ捕捉する2つの糸端捕捉手段と、2つの糸端捕捉手段でそれぞれ捕捉された2本の糸を継ぐ糸継装置と、クレードルアームに支持される巻取管に形成されるパッケージの表面に接触し、パッケージを接触摩擦によって回転駆動する駆動ドラム(綾振ドラム)等を備えている。
【0003】
ここで、パッケージの形成途中(糸巻取途中)において、糸自体の欠陥は、糸欠陥検出装置によって除去されるため、この糸欠陥により不良パッケージが発生するということは通常ない。しかし、このような糸自体の欠陥以外の糸不良がパッケージに混入することによって不良パッケージが発生してしまうことは想定され得る。例えば、糸切れ後や糸欠陥除去後の糸継装置による糸継時に、糸端捕捉手段(サクションマウス)によってパッケージ側の糸端を捕捉する際に、糸端を捕捉すると同時に、既にパッケージに巻かれた糸をも引き出してしまうこと(二重口出し)によって、パッケージ表面から糸が飛び出してしまう。また、周囲に浮遊する糸屑がパッケージ表面に付着することも考えられる。このようなパッケージ表面から飛び出した糸部分(不良糸部分)がパッケージに巻取られて一旦パッケージ内部に混入してしまうと、このような不良糸部分を次工程に進む前に発見する(即ち、不良パッケージであると判断する)ことは難しい。
【0004】
そこで、特許文献1〜3には、パッケージの形成途中に、パッケージの表面に不良糸部分が存在していないかを監視する装置が開示されている。このパッケージ監視装置は、発光素子と受光素子とを有し、発光素子からパッケージ表面に沿って発せられた光が受光素子で受光されるか否かにより、パッケージ表面から飛び出した不良糸部分を検出することが可能となっている。尚、パッケージの巻き径変化に応じて検出位置を変えなくて済むように、発光素子と受光素子はパッケージとドラムの接点近傍に設けられている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−328256号公報
【特許文献2】実開平2−147468号公報
【特許文献3】特開平10−182005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来のパッケージ監視装置では、発光素子と受光素子はパッケージと綾振ドラムの接点近傍に設けられているため、発光素子から発せられた光が綾振ドラムの表面で乱反射し、受光素子で受光される光量が減少してしまう。この場合、パッケージ表面に不良糸部分が存在していない正常な状態であっても、発光素子からの光が糸で遮断されて受光量が減少したと判断してしまうことになり、不良なパッケージであると誤って判別してしまう虞がある。
【0007】
また、図12は、パッケージPの巻太りによるパッケージ周面の変化を示す図である。この図12に示すように、パッケージPの巻太りに従って、パッケージPを支持するクレードルアームは傾きが大きくなり、図中の一点鎖線で示すようにパッケージPの中心が一方(図中左方)へ移動していく。これに伴い、発光素子101及び受光素子102のセンシング位置である、パッケージPと綾振ドラム100の接点近傍においては、パッケージPが大径になるにつれてその周面が図中左方へずれていき、センシング位置から離れていく。つまり、発光素子101及び受光素子102のセンシング位置がパッケージPとドラム100の接点近傍にある場合には、パッケージPが大径である方が、その表面の不良糸部分の検出精度が落ちてしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、発光素子と受光素子を用いて糸巻取途中におけるパッケージ表面状態を監視するとともに、ドラム表面での光の乱反射に起因する不良糸部分の誤検出を抑えることにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
第1の発明のパッケージ監視装置は、糸を巻取管に巻取ってパッケージを形成する糸巻取機の、糸巻取中に前記パッケージ表面を監視するパッケージ監視装置であって、
前記パッケージの表面に沿って光を発する発光素子、及び、前記発光素子からの光を受光する受光素子とを備え、前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、共に、前記パッケージとこのパッケージに接触するドラムとの接点近傍から前記パッケージの周方向に離れた位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、発光素子と受光素子が、パッケージとドラムの接点近傍からパッケージの周方向に離れた位置にある。そのため、発光素子から発せられた光の、ドラムの表面における乱反射が小さくなり、受光素子の受光量減少が抑えられる。従って、不良糸部分のない正常なパッケージを、不良パッケージであると誤って検出してしまうのが防止される。
【0011】
尚、本発明において、「不良糸部分」とは、パッケージに巻取られた、あるいは、これから巻取られる糸と繋がった糸部分だけでなく、巻取対象の糸とは繋がっていない、外部から付着した糸屑等も含むものとする。
【0012】
第2の発明のパッケージ監視装置は、前記第1の発明において、前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、前記パッケージ表面との距離が、前記ドラム表面との距離よりも小さくなる位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、発光素子と受光素子とが、ドラム表面よりもパッケージ表面に近い位置に配置されていることから、ドラム表面における光の乱反射による不良糸部分の誤検出を防止できる。
【0014】
第3の発明のパッケージ監視装置は、前記第1又は第2の発明において、前記糸巻取機は、糸切れ時又は糸切断時に前記パッケージの表面近傍に移動して、前記パッケージ側の糸端を捕捉する糸端捕捉手段を有し、
前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、前記パッケージと前記ドラムの接点から、前記糸端捕捉手段の糸端捕捉位置よりも前記パッケージの周方向に離れた位置にあることを特徴とするものである。
【0015】
糸切れ時、あるいは、糸欠陥を除去する際の糸切断時に、糸継ぎを行うために、糸端捕捉手段が、パッケージとドラムの接点近傍の糸端捕捉位置まで移動して、パッケージ側の糸端を捕捉する。このとき、発光素子と受光素子は、糸端捕捉手段の糸端捕捉位置よりも、パッケージとドラムの接点からパッケージの周方向に離れているため、糸端捕捉位置に移動した糸端捕捉手段が発光素子から発せられた光と干渉しない。従って、糸端捕捉時に糸端捕捉手段によって光が遮られることによる不良糸部分の誤検出は発生しないし、このような誤検出を防止するために糸端捕捉時には不良糸部分の検出を停止するなどの制御も不要である。
【0016】
第4の発明のパッケージ監視装置は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、少なくとも前記巻取管に一定量以上の糸が巻取られたときに、前記パッケージ表面に対して所定の離間距離範囲で近接して、パッケージ表面から飛び出た前記不良糸部分を検出可能となることを特徴とするものである。
【0017】
発光素子と受光素子がパッケージとドラムの接点からパッケージ周方向に離れた位置にあると、パッケージの巻き径の変化に応じて、発光素子及び受光素子と、パッケージの表面との距離が変化する。そのため、発光素子と受光素子の位置が固定されている場合には、全ての巻き径範囲において、発光素子と受光素子がパッケージ表面に近接して不良糸部分を精度よく検出することは難しくなり、発光素子と受光素子の固定位置に応じた特定の巻き径範囲においてのみ、不良糸部分を検出可能となる。そこで、このような場合には、前記特定の巻き径範囲が、不良糸部分が特に生じやすい巻き径範囲であることが好ましい。
【0018】
ここで、一般的に、パッケージの巻き径が大きくなるにつれて、糸がパッケージの軸方向端面から落ちる、いわゆる、端面落ちが生じやすいことが知られている。これは、巻き径が大きくなるほどパッケージの表面の周速が速くなり、糸に作用する遠心力が大きくなることが1つの原因と考えられる。このように、パッケージに端面落ちが生じると、糸切れが発生して糸端捕捉手段がパッケージ側の糸端を捕捉する際に、糸端捕捉手段が、本来捕捉すべき糸端と共に端面落ちした糸をも同時に捕捉してしまい、二重口出しが生じやすくなるなど、パッケージ表面に不良糸部分が発生しやすくなる。そこで、不良糸部分を検出可能となるパッケージの巻き径がある範囲に限定される場合には、特に一定量以上の糸が巻取られて、パッケージの巻き径が大きくなったときに、パッケージの表面に対して、不良糸部分を確実に検出することが可能な位置となるように、発光素子と受光素子が配置されることが好ましい。
【0019】
第5の発明のパッケージ監視装置は、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記不良糸部分を検出する前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、前記パッケージの巻き径の変化に応じて、位置を変更可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、パッケージの巻き径変化に応じて、不良糸部分を検出する発光素子と受光素子の位置が変更できるため、不良糸部分を精度よく検出することが可能となるパッケージの巻き径範囲が広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、給糸ボビンから解舒された糸を巻取管に巻取って巻取パッケージを形成する巻取ユニットを多数備えた、自動ワインダに本発明を適用した一例である。図1は本実施形態に係る自動ワインダの概略構成を示す正面図、図2は自動ワインダの1つの巻取ユニットの正面図である。
【0022】
図1、図2に示すように、自動ワインダ1は、列設された多数の巻取ユニット2(糸巻取機)と、これら多数の巻取ユニット2に沿ってそれらの列設方向に走行自在に設けられた玉揚装置3と、自動ワインダ1の全体制御を司る機台制御装置4とを備えている。尚、機台制御装置4は、巻取ユニット2の列設方向一端側に配置されている。
【0023】
そして、この自動ワインダ1は、機台制御装置4から多数の巻取ユニット2の巻取ユニット制御装置30に対して指令を送り、各々の巻取ユニット2において給糸ボビンから解舒される糸を巻取管に巻取ってパッケージを形成するように構成されている。また、ある巻取ユニット2に満玉パッケージが形成されたときには、玉揚装置3がその巻取ユニット2の頭上に移動して、満玉パッケージを空の巻取管に取り替えるようになっている。
【0024】
次に、各々の巻取ユニット2の詳細な構成について説明する。図3は、巻取ユニット2の上部の側面図である。図2、図3に示す巻取ユニット2は、給糸ボビンBから解舒される紡績糸をトラバースさせながら巻取管11に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージPを形成するものである。
【0025】
巻取ユニット2は、機台としてのユニットフレーム10と、このユニットフレーム10に設けられて巻取管11を回転自在に把持するクレードル12と、ユニットフレーム10に回転自在に支持された綾振ドラム13とを備えている。図2、図3に示すように、ユニットフレーム10の上端部の前面には、巻取ユニット2が異常状態にあることを作業者に報知するための、ランプやブザー等からなる報知部14が設けられている。
【0026】
図3に示すように、クレードル12は、巻取管11の両端部をそれぞれ回転自在に保持する2つのホルダ15と、巻取管11(パッケージP)の軸方向両側において2つのホルダ15をそれぞれ支持する2本のクレードルアーム16とを備えている。
【0027】
綾振ドラム13は、表面に光沢を有する金属材料で形成され、ユニットフレーム10内に格納されたドラム駆動モータ40(図6参照)により回転駆動される。また、この綾振ドラム13の周面には螺旋状の綾振溝13aが形成されており、この綾振溝13aによって紡績糸Yをトラバースさせるように構成されている。そして、巻取ユニット2は、綾振ドラム13が、綾振溝13aによって紡績糸Yをトラバースさせながら、巻取管11に形成されたパッケージPに接触した状態で回転することで、綾振ドラム13との接触摩擦によってパッケージPを回転させて、ボビンBから解舒された糸を巻取るように構成されている。
【0028】
また、図2に示すように、給糸ボビンBと綾振ドラム13の間の糸走行経路中には、給糸ボビンB側から順に、解舒補助装置17、ヤーンフィーラ18、テンション付与装置19、糸継装置20、ヤーンクリアラー21(糸欠陥検出装置)がそれぞれ配設されている。
【0029】
解舒補助装置17は、給糸ボビンBの解舒と共に芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸の解舒を補助するものである。ヤーンフィーラ18は、解舒補助装置17とテンション付与装置19との間における紡績糸Yの有無を検出するものである。テンション付与装置19は、走行する紡績糸Yに所定のテンションを付与するものである。図2に示される例では、固定の櫛歯19aに対して可動の櫛歯19bを配置するゲート式のものが用いられている。櫛歯19aに対して櫛歯19bが噛み合わせ状態または開放状態になるように旋回自在になっており、その旋回はロータリー式のソレノイドにより行われる。
【0030】
糸継装置20は、次述のヤーンクリアラー21により検出された糸欠陥を除去するために行われる糸切断時、または解舒中の糸切れ時などに、給糸ボビンB側の下糸とパッケージP側の上糸とを糸継ぎするものである。図2には、糸継装置20として、円盤状のディスク部材20a,20bを備えたディスクスプライサが示されており、ディスク部材20a,20bが下糸Y1と上糸Y2とを挟持している状態で、ディスク部材20a,20bを互いにすり合わせることにより、下糸Y1と上糸Y2を解撚・加撚して糸継ぎするように構成されている。
【0031】
ヤーンクリアラー21は、紡績糸Yの欠陥を検出するためのものであって、クリアラーからの紡績糸Yの太さに応じた信号が適宜のアナライザで処理されることで、スラブ等の糸欠陥を検出する。また、このクリアラー21には、糸欠陥を検出した時の糸切断用のカッター21aが付設されている。
【0032】
糸継装置20の上下には、給糸ボビンB側の下糸Y1を捕捉して糸継装置20へ案内する下糸捕捉案内部材22と、パッケージP側の上糸Y2を捕捉して糸継装置20へ案内する上糸捕捉案内部材23が設けられている。解舒中の糸切れ時、あるいは、ヤーンクリアラー21による糸切断時には、下糸捕捉案内部材22の吸引口22aは、図2に示されている位置において下糸Y1の糸端を捕捉し、下から上へと旋回して糸継装置20に下糸Y1を案内する。同時に、上糸捕捉案内部材23は、そのサクションマウス23a(糸端捕捉手段)が、図2に示されている位置から、パッケージPと綾振ドラム13の接点近傍の糸端捕捉位置(図3において二点鎖線で示される位置)まで旋回し、この糸端捕捉位置においてパッケージPから上糸Y2の糸端を捕捉した後に再び下へと旋回し、糸継装置20に上糸Y2を案内するようになっている。
【0033】
ところで、パッケージPの巻取中に、パッケージPの表面に飛び出た(又は付着した)不良な糸部分が生じたまま、パッケージPの巻取が進行してしまうと、この不良糸部分がパッケージPの中に混入してしまい、不良パッケージを生じさせることがある。
【0034】
例えば、巻取中のテンション変動による糸切れや、ヤーンクリアラー21で検出された糸欠陥を除去する際のカッター21aによる糸切断後に行われる、糸継装置20による糸継時には、上糸捕捉案内部材23のサクションマウス23aが、糸端捕捉位置まで移動してパッケージP側の糸端を捕捉することになるが、このとき、糸端を捕捉すると同時に、既にパッケージPに巻かれた糸Yをも引き出してしまうこと(二重口出し)によって、引き出された糸YがパッケージPの表面から飛び出した状態でパッケージPに巻取られてしまうことがある。
【0035】
また、給糸ボビンBから解舒された糸Yのテンションが瞬間的に低下した場合などに、糸Yの一部がちぢれてしまい、このちぢれた部分(ビリともいう)がパッケージPに巻取られることもある。あるいは、巻取ユニット2の周囲に浮遊する糸屑がパッケージP表面に付着した状態で巻取られてしまうことも考えられる。
【0036】
そこで、本実施形態の巻取ユニット2には、糸巻取途中にパッケージPの表面の品質(より具体的には、パッケージP表面の不良糸部分の有無)を監視するパッケージ監視装置25が設けられている。図4は、パッケージP、綾振ドラム13、及び、パッケージ監視装置25の位置関係を示す、巻取ユニット2の上部拡大図であり、図5は、図4の左側面図である。図2〜図4に示すように、このパッケージ監視装置25は、巻取ユニット2の前面側(図2の紙面手前側)において、水平方向に関して相対向するように設けられた発光素子26と受光素子27とを有する。
【0037】
発光素子26は、綾振ドラム13の右側に位置するユニットフレーム10の上端面に配置され、パッケージPの表面に沿って水平(左方)に光を照射する。一方、受光素子27は、綾振ドラム13を覆うドラムカバー28の、ユニットフレーム10とは反対側の端部(図2の左端部)に、発光素子26と対向するようにブラケット29を介して取り付けられている。このように、発光素子26と受光素子27は同じ高さ位置にあり、発光素子26と受光素子27を結ぶ直線(センシング位置)がパッケージPとドラム13の接線(接平面)と平行になっている。
【0038】
これにより、パッケージPの表面から飛び出した不良糸部分が存在しない場合には、発光素子26からパッケージPの表面に沿って水平に照射された光は、受光素子27により受光される。一方、図5に二点鎖線で示すように、パッケージPの表面に不良糸部分Ybが存在する場合には、発光素子26から照射された光の一部が不良糸部分Ybにより遮られて、受光素子27の受光量が減少することにより、不良糸部分Ybを検出することが可能である。
【0039】
ここで、従来構成のように、発光素子26と受光素子27がパッケージPと綾振ドラム13の接点近傍に設けられると、発光素子26から発せられた光が、金属製で光沢を有する綾振ドラム13の表面で乱反射し、受光素子27で受光される光量が減少してしまうという問題があった。そこで、本実施形態においては、図4、図5に示すように、パッケージ監視装置25の発光素子26と受光素子27は、パッケージPとこのパッケージPの下部表面に接触するドラム13との接点近傍から、パッケージPの周方向(前斜め上方)に離れた位置に配置されている。つまり、発光素子26と受光素子27とが、ドラム13の表面から離れるように配置されている。そのため、発光素子26から発せられた光の、ドラム13の表面における乱反射が小さくなり、受光素子27の受光量減少が抑えられるため、不良糸部分Ybのない正常なパッケージPを、不良パッケージであると誤って検出してしまうのが防止される。
【0040】
また、図3に示すように、発光素子26と受光素子27は、パッケージPとドラム13の接点から、糸継時に下方から旋回する、上糸捕捉案内部材23のサクションマウス23aの糸端捕捉位置よりも、さらにパッケージPの周方向に離れた位置(上方の位置)に配置されている。そのため、上糸Y2の糸端捕捉時に糸端捕捉位置に移動したサクションマウス23aが、発光素子26から発せられた光と干渉することはない。従って、糸端捕捉時にサクションマウス23aによって光が遮られることによる誤検出は発生しないし、このような誤検出を防止するために糸端捕捉時に、発光素子26と受光素子27による不良糸部分の検出を停止するなどの制御も不要である。
【0041】
尚、上述したように、発光素子26と受光素子27とが、パッケージPとドラム13の接点から周方向に離れていると、パッケージPの巻太りに伴って、発光素子26及び受光素子27と、パッケージPの表面との距離が多少変化する。図6は、パッケージPの巻太りによるパッケージ周面の変化を示す図である。図6に示すように、パッケージPの巻太りに応じてクレードルアーム16の傾斜角度が大きくなるため、図6の一点鎖線で示すように、パッケージPの中心が後方(図中左方)に移動し、パッケージPの周面の位置が変化する。しかし、このように、パッケージPの巻き径変化に応じて、発光素子26及び受光素子27と、パッケージP表面との距離が多少変化するとしても、ドラム13表面における光の乱反射を抑えつつ、パッケージP表面から飛び出した不良糸部分Ybを精度よく検出するためには、パッケージPの巻き径に関わらず常に、発光素子26と受光素子27は、パッケージP表面との距離がドラム13表面との距離よりも小さくなる位置に配置されていることが好ましい。
【0042】
その一方で、発光素子26と受光素子27を、パッケージP表面とドラム13との接点から、あまりに遠くまで離しすぎると(例えば、パッケージPの頂部位置(図5の位置A)など)、パッケージPの巻き径の変化に対する、発光素子26及び受光素子27とパッケージP表面との距離の変化が大きくなる。従って、このような場合には、パッケージP表面に近接して不良糸部分Ybを確実に検出することが可能な、パッケージPの巻き径範囲が狭くなる。そこで、発光素子26と受光素子27は、接点からパッケージPの周方向に離れすぎない位置に配置されていることが好ましい。この場合には、パッケージPの巻き径の変化に対する、発光素子26及び受光素子27とパッケージP表面との距離の変化が小さくなり、不良糸部分を精度よく検出可能となるパッケージPの巻き径範囲が大きくなる。
【0043】
また、本実施形態のように、発光素子26と受光素子27の位置が固定されており、これら発光素子26と受光素子27の位置に応じた特定のパッケージ巻き径範囲においてのみ不良糸部分を検出可能である場合には、前記特定の巻き径範囲が、不良糸部分が特に生じやすい巻き径範囲であることが好ましい。
【0044】
ここで、一般的に、パッケージPの巻き径が大きくなるにつれて、糸YがパッケージPの回転軸方向端面から落ちる、いわゆる、端面落ちが生じやすいことが知られている。これは、巻き径が大きくなるほど、パッケージPの表面に巻き付けられる糸Yに作用する遠心力が大きくなることが1つの原因と考えられる。このように、パッケージPに端面落ちが生じた状態で、糸継ぎのためにサクションマウス23aがパッケージP側の糸端を捕捉する場合には、サクションマウス23aが、本来捕捉すべき糸端と共に端面落ちした糸Yをも同時に捕捉してしまい、二重口出しが発生しやすく、この二重口出しに起因した不良糸部分が生じやすくなる。
【0045】
そこで、発光素子26と受光素子27は、特に、巻取管11に一定量以上の糸(例えば、パッケージ巻き径が最大パッケージ径の50%以上となる糸量)が巻取られ、パッケージPの巻き径が十分大きくなったときに、接近しすぎによる誤検出が生じない程度に、そのパッケージPの表面に対して所定の離間距離範囲で近接して、パッケージPの表面から飛び出した不良糸部分Ybを検出可能となることが好ましい。
【0046】
上記の検出を行うための具体的なセンシング位置の一例を以下に示す。図6に示すように、発光素子26と受光素子27とを結ぶ直線61(センシング位置)は、半巻パッケージP1(パッケージ径Rが、満巻パッケージP1の径(R1)の半分(R2)であるパッケージ)の、最前面から垂下させた仮想的な鉛直面60に含まれ、且つ、半巻きパッケージP2の周面近傍に位置している。この位置では、半巻パッケージP2から満巻パッケージP1までパッケージ径が変化しても、パッケージPの周面の変化は、パッケージPとドラム13との接点近傍よりも小さい。つまり、発光素子26と受光素子27のセンシング位置を図6の位置にすることで、従来構成(図11参照)と比べて、半巻パッケージP2から満巻パッケージP1に至るまでの不良糸部分の検出を、より高精度に行うことができる。
【0047】
本実施の形態のように、コーン状のパッケージPを巻き取る場合には、上述のセンシング位置の設定は、大径側、小径側それぞれのパッケージ径に対して設定するとよい。例えば、発光素子26は大径側を基準にセンシング位置を決定し、受光素子27は小径側を基準にセンシング位置を決定する。このように、センシング位置を決定することによって、パッケージ表面に沿ったセンシング位置が規定され、パッケージ表面の全幅を監視することができる。
【0048】
次に、巻取ユニット2の制御構成について説明する。図7は巻取ユニット2の制御構成を示すブロック図である。巻取ユニット2のユニットフレーム10(図2参照)内には巻取ユニット2を制御する巻取ユニット制御装置30が設けられている。この巻取ユニット制御装置30は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read-Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)、及び、外部とのデータの入出力を行う入出力インターフェース等で構成されている。
【0049】
巻取ユニット制御装置30は、給糸ボビンBから解舒された糸Yを巻取管11に巻き付けてパッケージPを形成する、一連の糸巻取動作を制御する糸巻取制御部31と、パッケージ監視装置25からの信号に基づいてパッケージPの品質を判定する品質判定部32とを有する。尚、糸巻取制御部31と品質判定部32の機能は、前述したCPUが、ROMに格納された制御プログラムを実行することによって実現される。
【0050】
糸巻取制御部31は、自動ワインダ1の全体動作を制御する機台制御装置4から送られた指令に基づいて、綾振ドラム13を駆動するドラム駆動モータ40を制御して、綾振ドラム13によって巻取管11を回転させてこの巻取管11にパッケージPを形成する。また、糸巻取中に、糸切れが発生した場合、あるいは、ヤーンクリアラー21により検出された糸欠陥を除去するためにカッター21aによる糸切断が行われた場合には、糸継装置20を制御してパッケージP側の上糸Y2と給糸ボビンB側の下糸Y1の糸継ぎを行う。
【0051】
品質判定部32は、パッケージ監視装置25の発光素子26と受光素子27によって、パッケージPの表面に不良糸部分が検出された場合には、そのパッケージの品質は不良であると判定し、糸巻取制御部31により制御されている糸巻取動作を一時停止させる。同時に、品質判定部32は、ユニットフレーム10に設けられた、ランプやブザー等からなる報知部14を動作させ、不良パッケージが発生したことを作業者に知らせる。
【0052】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0053】
1]前記実施形態では、下糸捕捉時にサクションマウス23aが接近してくる方向である、巻取ユニット2の前面側に、パッケージ監視装置25の発光素子26と受光素子27が設けられているが(図5参照)、図8に示すように、巻取ユニット2の背面側に発光素子26と発光素子27が設けられていてもよい。この場合には、サクションマウス23aの糸端捕捉位置とは無関係に発光素子26と受光素子27とを配置することができる。
【0054】
2]前記実施形態のように、発光素子26と受光素子27が1組のみで、且つ、その位置が固定されている場合には、パッケージPの巻き径変化に応じて発光素子26及び受光素子27とパッケージPの表面との距離が変化するために、場合によっては、不良糸部分を検出可能なパッケージ巻き径範囲が狭い範囲に限られてしまう。そこで、不良糸部分を検出する発光素子26と受光素子27が、パッケージPの巻き径の変化に応じて、位置を変更可能に構成されていてもよい。
【0055】
例えば、図9に示すように、パッケージPを支持する両側のクレードルアーム16に発光素子26と受光素子27がそれぞれ設けられ、さらに、各々のクレードルアーム16に、発光素子26あるいは受光素子27が長手方向に複数設けられてもよい。
【0056】
この形態では、図9(a)に示すように、パッケージPが小径の場合には、クレードルアーム16の最も先端側(パッケージP側)に位置する発光素子26aと受光素子27aが、パッケージPの表面に最も近接することから、この1組の発光素子26aと受光素子27aにより、パッケージP表面の不良糸部分が検出されることになる。一方、図9(b)に示すように、パッケージPの径が大きくなると、小径時に使用されたものよりもクレードルアーム16の基端側(パッケージPと反対側)に位置する発光素子26bと受光素子27bがパッケージPの表面に最も近接することになり、この1組の発光素子26bと受光素子27bにより、パッケージP表面の不良糸部分が検出されることになる。つまり、パッケージPの巻き径が大きくなるにつれて、不良糸部分を検出する発光素子26と受光素子27の位置が、クレードルアーム16の基端側に変更される。
【0057】
または、1組の発光素子26と受光素子27が位置変更可能であり、パッケージPの巻き径変化に応じて自らの位置を変更するように構成されてもよい。この構成の具体例を以下に挙げる。
【0058】
図10(a),(b)に示す構成では、パッケージPを支持する両側のクレードルアーム16に、発光素子26と受光素子27がそれぞれクレードルアーム16に対して長手方向に移動可能に設けられている。その上で、パッケージPの巻太りに伴ってクレードルアーム16の傾斜角度が大きくなるにつれて、クレードルアーム16に設けられた発光素子26と受光素子27が、それぞれバネ50を介して引っ張られて、クレードルアーム16の基端側に位置を変更するように構成されている。
【0059】
また、図11(a),(b)に示す構成では、パッケージPを支持する両側のクレードルアーム16に、発光素子26と受光素子27がそれぞれクレードルアーム16に対して長手方向に移動可能に設けられるとともに、クレードルアーム16にはその傾斜角度を検出する角度検出センサ51が設けられている。また、クレードルアーム16に設けられた発光素子26と受光素子27には、これら発光素子26と受光素子27をそれぞれクレードルアーム16の長手方向に駆動する、モータや流体圧シリンダ等のアクチュエータ52が連結されている。そして、角度検出センサ51で検出されたクレードルアーム16の傾斜角度に応じて、アクチュエータ52が発光素子26と受光素子27を駆動することで、発光素子26と受光素子27が、クレードルアーム16の基端側に位置を変更するように構成されている。
【0060】
3]前記実施形態においては、パッケージPに接触するドラム(綾振ドラム13)は、このパッケージPを摩擦接触によって回転駆動する駆動ドラムであったが、ドラムがパッケージPを駆動する目的以外で設けられている場合でも本発明を適用することができる。例えば、巻取管11を直接駆動するモータ等の駆動手段がドラムとは別に設けられており、パッケージPの表面に接触するドラムは、主に、パッケージPの表面形状を整えるために接圧を付与する目的で設けられるものである場合であってもよい。
【0061】
4]前記実施形態の巻取ユニットは、図2、図3に示されているように、軸方向一端が他端よりも小径のコーン状のパッケージを形成するものであるが、軸方向に関してパッケージ径が一定の、チーズ状のパッケージを形成するものであってもよい。
【0062】
5]前記実施形態では、発光素子26と受光素子27がパッケージPの両端位置にそれぞれ設けられていたが、発光素子26と受光素子27がパッケージの一端側に共に配置された上で、パッケージ他端側には発光素子26からの光を反射する反射部材が設けられ、反射部材で反射された光を受光素子27が受光するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態に係る自動ワインダを概略的に示す正面図である。
【図2】巻取ユニットの正面図である。
【図3】巻取ユニットの上部の左側面図である。
【図4】パッケージ、綾振ドラム、及び、パッケージ監視装置の位置関係を示す、巻取ユニットの上部拡大図である。
【図5】図4の左側面図である。
【図6】パッケージの巻太りによるパッケージ周面の変化を示す図である。
【図7】巻取ユニットの制御構成を示すブロック図である。
【図8】変更形態に係る巻取ユニットの上部拡大図である。
【図9】別の変更形態に係る巻取ユニットの上部拡大図であり、(a)はパッケージ径が小径、(b)はパッケージ径が大径の状態をそれぞれ示す。
【図10】さらに別の変更形態に係る巻取ユニットの上部拡大図であり、(a)はパッケージ径が小径、(b)はパッケージ径が大径の状態をそれぞれ示す。
【図11】さらに別の変更形態に係る巻取ユニットの上部拡大図であり、(a)はパッケージ径が小径、(b)はパッケージ径が大径の状態をそれぞれ示す。
【図12】従来技術における、パッケージPの巻太りによるパッケージ周面の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
2 巻取ユニット
11 巻取管
13 綾振ドラム
23 上糸捕捉案内部材
23a サクションマウス(糸端捕捉手段)
25 パッケージ監視装置
26 発光素子
27 受光素子
P パッケージ
Y 糸
Yb 不良糸部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻取管に巻取ってパッケージを形成する糸巻取機の、糸巻取中に前記パッケージ表面を監視するパッケージ監視装置であって、
前記パッケージの表面に沿って光を発する発光素子、及び、前記発光素子からの光を受光する受光素子とを備え、
前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、共に、前記パッケージとこのパッケージに接触するドラムとの接点近傍から前記パッケージの周方向に離れた位置に配置されていることを特徴とするパッケージ監視装置。
【請求項2】
前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、前記パッケージ表面との距離が、前記ドラム表面との距離よりも小さくなる位置に配置されていることを特徴とするパッケージ監視装置。
【請求項3】
前記糸巻取機は、糸切れ時又は糸切断時に前記パッケージの表面近傍に移動して、前記パッケージ側の糸端を捕捉する糸端捕捉手段を有し、
前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、前前記パッケージと前記ドラムの接点から、前記糸端捕捉手段の糸端捕捉位置よりも前記パッケージの周方向に離れた位置にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のパッケージ監視装置。
【請求項4】
前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、少なくとも前記巻取管に一定量以上の糸が巻取られたときに、前記パッケージ表面に対して所定の離間距離範囲で近接して、パッケージ表面から飛び出た前記不良糸部分を検出可能となることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のパッケージ監視装置。
【請求項5】
前記不良糸部分を検出する前記発光素子と前記受光素子によるセンシング位置は、前記パッケージの巻き径の変化に応じて、位置を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のパッケージ監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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