説明

パッチアンテナ、アンテナモジュールおよび電子機器

【課題】本発明の目的は、小型化を達成しつつ、所望のインピーダンスを得ることができるパッチアンテナを提供すること、また、該パッチアンテナを備えたアンテナモジュールを提供すること、さらには、該パッチアンテナを備えた電子機器を提供することにある。
【解決手段】本発明のパッチアンテナ1は、誘電体基板2と、誘電体基板2の一方の面上に設けられた放射導体3と、誘電体基板2の他方の面上に設けられた接地導体4と、放射導体3と給電点34を介して導通する給電ピン5とを有している。給電点34は、放射導体3の中心Oからオフセットした位置に設けられており、放射導体3は、放射導体3の給電点34がオフセットされた側の外周部に設けられた第1のスリット部31と、第1のスリット部31と対向する側に設けられた第2のスリット部32とを有し、第1のスリット部31のスリット数が第2のスリット部32のスリット数よりも多く構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチアンテナ、アンテナモジュールおよび電子機器に関し、より詳しくは、例えば、GPS機能付き電子機器に搭載され、GPS信号を受信可能なパッチアンテナ、該パッチアンテナを備えたアンテナモジュールおよび該アンテナモジュールを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、デジタルカメラ、携帯ゲーム機器等の携帯電子機器として、GPS(Global Positioning System)機能を有するものが開発されている。
【0003】
このような携帯電子機器には、GPS衛星からの電波(GPS信号)を受信するためのGPS用アンテナとして平面アンテナであるパッチアンテナ(マイクロストリップアンテナ)が広く用いられている。
【0004】
パッチアンテナは、一般的に、誘電体基板と、誘電体基板の一方の面に設けられた放射導体(放射電極)と、誘電体基板の放射導体とは反対側の面に設けられた接地導体(接地電極)と、放射導体の中心からずれた(オフセットされた)位置に設けられた給電点にて、放射導体と導通する給電ピンとから構成されている。このような構成のパッチアンテナは、電波を受信すると、放射導体と接地導体との間で共振する共振器となり、アンテナとして動作する。
【0005】
このようなパッチアンテナでは、受信する周波数帯域の電波の波長に応じて、放射導体の寸法が決められている。より詳しくは、例えば、放射導体として矩形状の導体を用いた場合には、放射導体の給電点がオフセットされた側の辺と、その辺と対向する辺との距離を、受信する周波数帯域の電波の1/2波長の長さに設定する。これにより、上記の周波数帯域の電波をパッチアンテナが受信すると、受信する電波の1/2波長に設定された放射導体の一対の辺間に、受信した電波に共振する交流電流が流れる(電流分布が生じる)。そして、給電点における電流分布に対応する交流電圧が、給電ピンを介して機器の給電系に電気信号として伝送される。
【0006】
なお、近年の携帯電子機器の小型化に伴い、機器に搭載されるパッチアンテナの小型化が要求されている。所望の受信周波数帯域を実現しながら、パッチアンテナの小型化を図る技術として、矩形状の放射導体の各辺から中心方向に向かって切り込まれた複数のスリットを放射導体の外周部に設ける技術が知られている(特許文献1参照)。放射導体の外周部に上記のようなスリットを設けることにより、放射導体を流れる電流がスリットを迂回するようにして流れるため、放射導体を流れる電流の経路長が長くなり、アンテナの共振周波数が下がる。したがって、外周部にスリットを設けた放射導体では、受信する電波と共振するための共振周波数(電流の経路長)を得るために、そのサイズを、スリットを設けない放射導体に比べて小さくすることができ、結果として、パッチアンテナ全体のサイズを小さくすることができる。
【0007】
ところで、このようなパッチアンテナは、給電点が放射導体の中心に設けられた際には、インピーダンス(入力インピーダンス)がほぼ0Ωであり、給電点の位置を放射導体の外周部に近づけるにつれてインピーダンスの値は徐徐に高くなることが知られている。パッチアンテナで受信した電波を電気信号として機器の給電系に伝送する際に、電力損失を抑えるために、パッチアンテナのインピーダンスを機器の給電系のインピーダンス(出力インピーダンス)と整合させる必要がある。そのため、上述したように、放射導体に設けられる給電点は、中心からオフセットされた位置に設けられる。特許文献1に記載されたパッチアンテナでは、放射導体の中心から給電点までのオフセット長を変化させることによりインピーダンス整合(パッチアンテナのインピーダンスと機器の給電系のインピーダンスとを等しくすること)をとるように構成されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたパッチアンテナでは、矩形状の放射導体の各辺から中心方向に向かって切り込まれた複数のスリットがあるため、給電点をオフセットできる位置が制限されてしまう。このように、給電点をオフセットできる位置が制限されるため、パッチアンテナのインピーダンスを所望の値にすることができず、必要とされるインピーダンス整合をとることができないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−304413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、小型化を達成しつつ、所望のインピーダンスを得ることができるパッチアンテナを提供すること、また、該パッチアンテナを備えたアンテナモジュールを提供すること、さらには、該パッチアンテナを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は以下の(1)〜(7)の本発明により達成される。
(1) 誘電体基板と、
該誘電体基板の一方の面に設けられた放射導体と、
前記誘電体基板の他方の面に設けられた接地導体と、
一端が前記放射導体と給電点を介して導通しているとともに、他端が前記誘電体基板および前記接地導体を貫通した給電ピンとを有し、
前記給電点は、前記放射導体の中心からオフセットした位置に設けられており、前記放射導体は、前記放射導体の給電点がオフセットされた側の外周部に設けられた複数のスリットを有する第1のスリット部と、前記外周部の前記第1のスリット部と対向する側に設けられた複数のスリットを有する第2のスリット部とを有し、前記第1のスリット部のスリット数が前記第2のスリット部のスリット数よりも多いことを特徴とするパッチアンテナ。
【0012】
(2) 前記放射導体は短形状であり、前記第1のスリット部は、前記給電点がオフセットされた側の辺を開口して該放射導体の中心方向に切り込まれた複数のスリットを有しており、前記第2のスリット部は、前記第1のスリット部が設けられた辺と対向する辺を開口して前記放射導体の中心方向に切り込まれた複数のスリットを有している上記(1)に記載のパッチアンテナ。
【0013】
(3) 前記放射導体の前記第1のスリット部の前記スリットは、該スリットが設けられた辺の両端部に設けられた一対の第1のスリットと、該一対の第1のスリット間に設けられ、第1のスリットのスリット長よりも短いスリット長を有する第2のスリットとを有し、
前記給電点は、前記一対の第1のスリット間に挟まれるようにして、前記第2のスリットの先端に近接した位置に設けられている上記(2)に記載のパッチアンテナ。
【0014】
(4) 前記放射導体の前記第1のスリット部および前記第2のスリット部が設けられた一対の辺と直交する一対の辺のそれぞれに、各辺を開口して互いに等しい数のスリットを有する第3のスリット部が設けられた上記(3)に記載のパッチアンテナ。
【0015】
(5) 誘電体基板と、
該誘電体基板の一方の面に設けられた矩形状の放射導体と、
前記誘電体基板の他方の面に設けられた接地導体と、
一端が前記放射導体と給電点を介して導通しているとともに、他端が前記誘電体基板および前記接地導体を貫通した給電ピンとを有し、
前記放射導体の一方の一対の辺に、各辺を開口してなる互いに異なる数のスリットを有する第1のスリット部と第2のスリット部とが設けられていることを特徴とするパッチアンテナ。
【0016】
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のパッチアンテナを、該パッチアンテナが受信した信号を増幅するアンプを備えた回路基板に搭載したことを特徴とするアンテナモジュール。
(7) 上記(6)に記載のアンテナモジュールを備えたことを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射導体の外周部にスリット部を設けることにより、所望の受信周波数帯域を実現しながら、パッチアンテナの小型化を図ることができる。また、放射導体の給電点がオフセットされた側の外周部に設けられた第1のスリット部のスリット数を、第1のスリット部と対向する側の外周部に設けられた第2のスリット部のスリット数よりも多くすることによって、給電点のオフセット位置が制限された場合にも、パッチアンテナのインピーダンスを所望の値にすることができる。すなわち、小型化を達成しつつ、所望のインピーダンスを得ることができ、機器の給電系のインピーダンスと容易にインピーダンス整合をとることができるパッチアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のパッチアンテナの好適な実施形態を説明するための図であり、(a)は、本発明のパッチアンテナの好適な実施形態の上面図、(b)は、(a)に示すパッチアンテナの側面図、(c)は、(a)に示すパッチアンテナの底面図である。
【図2】図1に示すパッチアンテナを備えた本発明のアンテナモジュールの好適な実施形態を説明するための図であり、(a)は、本発明のアンテナモジュールの好適な実施形態の上面図、(b)は、(a)に示すアンテナモジュールの側面図、(c)は、(a)に示すアンテナモジュールの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のパッチアンテナ、アンテナモジュール、および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
【0020】
まず、本発明のパッチアンテナについて説明する。
図1は、本発明のパッチアンテナの好適な実施形態を説明するための図であり、(a)は本発明のパッチアンテナの好適な実施形態の上面図、(b)は、(a)に示すパッチアンテナの側面図、(c)は、(a)に示すパッチアンテナの底面図である。
【0021】
図1に示すように、パッチアンテナ1は、誘電体基板2と、誘電体基板2の一方の面(上面2u)に設けられた放射導体3と、誘電体基板2の他方の面(底面2d)に設けられた接地導体4と、放射導体3と導通する給電ピン5とを有している。
【0022】
誘電体基板2は、略直方体形状を成しており、例えば、チタン酸バリウムや、チタン酸マグネシウム等の高誘電率を有するセラミックス材料から構成されている。図1(b)に示すように、誘電体基板2は、互いに対向する上面2uおよび底面2dと、側面2sとを有している。誘電体基板2の側面2sは、パッチアンテナ1を回路基板に搭載する際に衝撃等により誘電体基板2が欠けるのを防止するため、面取りされている。また、誘電体基板2には、後述する放射導体3の給電点34の設置位置で、上面2uから底面2dに貫通する貫通孔21が設けられている。なお、このような誘電体基板2のサイズは、特に限定されるものではないが、例えば、パッチアンテナ1をGPS信号受信用に用いる場合は、幅:11mm、長さ:11mm、厚さ:2mmのサイズのものを用いることができる。
【0023】
放射導体3は、誘電体基板2の上面2u上に設けられ、銀や銅等から構成される矩形状の導電体であり、誘電体基板2の上面2uよりも一回り小さいサイズである。放射導体3には、その中心Oから図1(a)の右側にオフセットした位置に、給電ピン5の一端(給電ピン5の上端部51)と接続して導通する給電点34が設けられている。
【0024】
そして、放射導体3の外周部には、各辺を開口して中心O方向に切り込まれた複数のスリットが設けられている。すなわち、図1(a)に示すように、放射導体3には、放射導体3の給電点34がオフセットされた側の辺を開口してなる4本のスリットを有する第1のスリット部31と、第1のスリット部31が設けられた辺と対向する辺を開口してなる2本のスリットを有する第2のスリット部32とが設けられている。さらに、放射導体3には、第1のスリット部31および第2のスリット部32が設けられた一対の辺と直交する一対の辺のそれぞれを開口してなる、それぞれ3本のスリットを有する第3のスリット部33とが設けられている。
【0025】
パッチアンテナ1では、放射導体3の外周部に第1のスリット部31、第2のスリット部32、および第3のスリット部33を設けることにより、放射導体3を流れる電流が各スリットを迂回するように流れるため、放射導体3を流れる電流の経路長を十分に長くすることができる(その結果、パッチアンテナ1の共振周波数が低くなる)。これにより、所望の周波数帯域(例えば、GPS信号であれば、約1.54GHz)を受信するために必要となる放射導体3の寸法(周囲長)を小さくすることができ、結果として、パッチアンテナ1全体(誘電体基板2、放射導体3および接地導体4)のサイズを小さくすることができる。
【0026】
また、パッチアンテナ1では、放射導体3の給電点34がオフセットされた側の辺に設けられた第1のスリット部31のスリット数を、第1のスリット部31が設けられた辺と対向する辺に設けられた第2のスリット部32のスリット数よりも多くしている。すなわち、給電点34がオフセットされた側の放射導体3のパターン面積を少なくしている。このような構成にすることにより、放射導体3の各辺から中心O方向に切り込まれた複数のスリットがあるため、給電点34のオフセット位置が制限されるにもかかわらず、パッチアンテナ1のインピーダンスを所定の値に設定することができる。より具体的には、放射導体3の第1のスリット部31のスリット数を増やす、および/または、第2のスリット部32のスリット数を減らすことにより、パッチアンテナ1のインピーダンスの値を上げることができる。なお、本実施形態のパッチアンテナ1の構成(第1のスリット部31のスリット数:4、第2のスリット部32のスリット数:2)では、インピーダンスの値が約50Ωに設定される。
【0027】
したがって、上述したような放射導体3を有するパッチアンテナ1は、十分に小型化することができるとともに、所望のインピーダンスを得ることができるものとなる。すなわち、パッチアンテナ1は、小型化を達成しつつ、搭載される電子機器の給電系のインピーダンスと容易に整合をとることができるものとなる。
【0028】
また、本実施形態において、放射導体3の第1のスリット部31の4本のスリットは、第1のスリット部31が設けられた辺の両端部に設けられた一対(2本)の第1のスリット311と、一対の第1のスリット311間に設けられ、第1のスリット311のスリット長lよりも短いスリット長lを有する2本の第2のスリット312とを有する。そして、図1(a)に示すように、給電点34は、一対の第1のスリット311間に挟まれるようにして、第2のスリット312の先端312aに近接した位置(オフセット位置)に設けられる。このようなスリット形状にすることにより、給電点34を放射導体3の第1のスリット部31が設けられた辺方向にオフセットできるオフセット長が長くなり、パッチアンテナ1のインピーダンスの値の調整がより容易になる。
【0029】
なお、上記の説明では、放射導体3の給電点34の位置を基準として、給電点34がオフセットされた側の辺に設けられた第1のスリット部31のスリット数を、第1のスリット部31が設けられた辺と対向する辺に設けられた第2のスリット部32のスリット数よりも多くすることにより、パッチアンテナ1の小型化と、インピーダンスの値を調整することができることについて述べた。一方で、本発明では、給電点34の位置を基準にしなくても、上述した説明と同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
より具体的に述べると、給電点34の位置に関係なく、放射導体3の第1のスリット部31のスリット数と第2のスリット部32のスリット数とを異ならせることにより、パッチアンテナ1の小型化と、インピーダンスの値を調整することができる。これにより、例えば、パッチアンテナ1を搭載するアンテナモジュールや電子機器のレイアウトの関係で、放射導体3の給電点34の位置(給電ピン5の設置位置)が制限されることがあっても(給電点34を放射導体3の中心Oに設けた場合も含む)、小型化を達成しつつ、所望のインピーダンスの値を得ることができるパッチアンテナ1を提供することができる。
【0031】
また、放射導体3には、図1(a)に示すように、対向する一対の頂角部が切り欠かれてなる切り欠き部35、35が設けられている。これにより、パッチアンテナ1は、単一の給電点34のみで、円偏波を受信することができるものとなる。
【0032】
なお、このような放射導体3のパターン(外周部に設けられる各スリット部、給電点34等)は、例えば、フォトレジスト法やスクリーン印刷法を用いてパターニングすることができる。
【0033】
また、各スリット部を構成する各スリットの幅、長さ(各辺からの切り込み長)は、特に限定されないが、その幅は、放射導体3をパターニングした後に各スリットのトリミング(レーザートリミング又はリューター等による切削トリミング)を行って、インピーダンス値・周波数再調整の目的から、0.7mm以上であることが好ましい。
【0034】
また、本実施形態では、放射導体3には、第1のスリット部31および第2のスリット部32とは異なる第3のスリット部33が設けられているが、第3のスリット部33は設けなくてもよい。すなわち、パッチアンテナの受信周波数帯域および設計サイズに応じて、第3のスリット部を放射導体に設けてもよいし、設けなくてもよい。また、そのスリット数も適宜変更することができる。
【0035】
接地導体4は、誘電体基板2の底面2d上に設けられ、放射導体3と同様に、銀や銅等から構成される矩形状の導電体である。図1(c)に示すように、この接地導体4には、誘電体基板2に設けられた貫通孔21とほぼ同心であるとともに、貫通孔21の直径よりも大きな直径の開口部41が設けられている。これにより、パッチアンテナ1は、給電ピン5が給電点34にて放射導体3とのみ導通し、接地導体4とは導通しない構成となる。
【0036】
給電ピン5は、放射導体3の給電点34にて放射導体3と導通する上端部51と、誘電体基板2の貫通孔21および接地導体4の開口部41を貫通して図示しない回路基板に電気的に接続される下端部52とを有している。このような構成のパッチアンテナ1では、放射導体3のパターン、形状に応じた受信周波数帯域の電波を受信すると、放射導体3に電流分布が生じ、給電点34における電流分布に対応する交流電圧が、給電ピン5を介して電気信号として機器の給電系に伝送される。また、パッチアンテナ1のインピーダンスは、機器の給電系のインピーダンスと整合がとれているため、パッチアンテナ1から機器の給電系に電気信号を伝送する際の電力損失を抑えることができる。
【0037】
また、給電ピン5の上端部51と放射導体3との接合には、はんだ6が用いられる。図1(a)に示すように、パッチアンテナ1では、給電ピン5の上端部51を、放射導体3の給電点34付近の複数箇所(図中では3箇所)ではんだ6により接合(はんだ付け)している。このように、複数箇所に分けて給電ピン5の上端部51を給電点34にはんだ付けすることにより、1箇所におけるはんだ6の使用量を抑えることができるとともに、給電ピン5の上端部51を放射導体3の給電点34にはんだ付けする際に使用するはんだ量を一定とすることができる。また、給電ピン5の上端部51上にはんだ6がはみ出すのを抑制することができるため、パッチアンテナ1の高さを抑えることができる。そのため、搭載スペースが制限されるような小型の電子機器にも適用可能なパッチアンテナ1とすることができる。一般的に、給電ピンを放射導体にはんだ付けする際に使用するはんだ量によって、パッチアンテナのインピーダンス特性が変化するため、安定したパッチアンテナの製造には、上記のはんだ付け方法をとるのが望ましい。
【0038】
なお、上記の説明では、放射導体3の形状が矩形状であるものについて述べたが、本発明は、これに限定されず、例えば、放射導体の形状として円形状のものを用いてもよい。放射導体の形状が円形状である場合には、少なくとも、放射導体の中心から給電点がオフセットされた側の外周部に上述したような第1のスリット部を設けるとともに、第1のスリット部と対向する側に上述したような第2のスリット部を設けることにより、上記したパッチアンテナ1と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
次に、パッチアンテナ1を備えた本発明のアンテナモジュールおよび電子機器について説明する。
【0040】
図2は、図1に示すパッチアンテナ1を備えた本発明のアンテナモジュールの好適な実施形態を説明するための図であり、(a)は、本発明のアンテナモジュールの好適な実施形態の上面図、(b)は、(a)に示すアンテナモジュールの側面図、(c)は、(a)に示すアンテナモジュールの底面図である。
【0041】
本発明の電子機器(図示せず)は、図2に示すようなアンテナモジュール100を備えている。
【0042】
アンテナモジュール100は、図2に示すように、回路基板10と、回路基板10の一方の面(上面)上に搭載された本発明のパッチアンテナ1と、回路基板10の他方の面(底面)上に搭載され、パッチアンテナ1によってパッチアンテナ1が受信した電波(受信電波)から変換された電気信号を増幅する図示しないロー・ノイズ・アンプ(LNA)を含む各種電子部品が組み込まれた信号処理回路ユニット20とを有する。信号処理回路ユニット20は、パッチアンテナ1によって受信電波から変換された電気信号を増幅するとともに、電気信号から情報信号を復調する機能を有している。
【0043】
アンテナモジュール100は、電波を受信するアンテナとして、上述したような本発明のパッチアンテナ1を用いているため、パッチアンテナ1の小型化に伴い、アンテナモジュール100のサイズも小さくすることができる。そのため、搭載スペースが制限されるような小型の電子機器にも、搭載可能なアンテナモジュール100となる。
【0044】
また、上述したようにパッチアンテナ1は、そのインピーダンスの値を、電子機器(信号処理回路ユニット20を含む)の給電系のインピーダンスの値に容易に調整可能である(インピーダンス整合が容易である)。そのため、アンテナモジュール100は、パッチアンテナ1によって受信電波から変換された電気信号を、効率良く電子機器の回路に伝送することができるものとなる。特に、アンテナモジュール100の信号処理回路ユニット20が備えるLNAにより、パッチアンテナ1によって受信電波から変換された電気信号が、増幅されてから電子機器の回路に伝送されるため、パッチアンテナ1が受信した受信電波中に含まれるノイズ(不要な周波数成分)の影響が抑えられる。その結果、アンテナモジュール100は、パッチアンテナ1が受信した電波を変換してなる電気信号を、特に優れた効率で電子機器の回路に伝送することができるものとなる。
【0045】
なお、信号処理回路ユニット20は、上記のLNAに加え、パッチアンテナ1が受信した電波に含まれるノイズを除去するフィルタ素子(図示せず)をさらに含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…パッチアンテナ 2…誘電体基板 2u…上面 2s…側面 2d…底面 21…貫通孔 3…放射導体 31…第1のスリット部 311…第1のスリット 312…第2のスリット 312a…先端 32…第2のスリット 33…第3のスリット 34…給電点 35…切り欠き部 4…接地導体 41…開口部 5…給電ピン 51…上端部 52…下端部 6…はんだ 10…回路基板 20…信号処理回路ユニット 100…アンテナモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
該誘電体基板の一方の面に設けられた放射導体と、
前記誘電体基板の他方の面に設けられた接地導体と、
一端が前記放射導体と給電点を介して導通しているとともに、他端が前記誘電体基板および前記接地導体を貫通した給電ピンとを有し、
前記給電点は、前記放射導体の中心からオフセットした位置に設けられており、前記放射導体は、前記放射導体の給電点がオフセットされた側の外周部に設けられた複数のスリットを有する第1のスリット部と、前記外周部の前記第1のスリット部と対向する側に設けられた複数のスリットを有する第2のスリット部とを有し、前記第1のスリット部のスリット数が前記第2のスリット部のスリット数よりも多いことを特徴とするパッチアンテナ。
【請求項2】
前記放射導体は短形状であり、前記第1のスリット部は、前記給電点がオフセットされた側の辺を開口して該放射導体の中心方向に切り込まれた複数のスリットを有しており、前記第2のスリット部は、前記第1のスリット部が設けられた辺と対向する辺を開口して前記放射導体の中心方向に切り込まれた複数のスリットを有している請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項3】
前記放射導体の前記第1のスリット部の前記スリットは、該スリットが設けられた辺の両端部に設けられた一対の第1のスリットと、該一対の第1のスリット間に設けられ、第1のスリットのスリット長よりも短いスリット長を有する第2のスリットとを有し、
前記給電点は、前記一対の第1のスリット間に挟まれるようにして、前記第2のスリットの先端に近接した位置に設けられている請求項2に記載のパッチアンテナ。
【請求項4】
前記放射導体の前記第1のスリット部および前記第2のスリット部が設けられた一対の辺と直交する一対の辺のそれぞれに、各辺を開口して互いに等しい数のスリットを有する第3のスリット部が設けられた請求項3に記載のパッチアンテナ。
【請求項5】
誘電体基板と、
該誘電体基板の一方の面に設けられた矩形状の放射導体と、
前記誘電体基板の他方の面に設けられた接地導体と、
一端が前記放射導体と給電点を介して導通しているとともに、他端が前記誘電体基板および前記接地導体を貫通した給電ピンとを有し、
前記放射導体の一方の一対の辺に、各辺を開口してなる互いに異なる数のスリットを有する第1のスリット部と第2のスリット部とが設けられていることを特徴とするパッチアンテナ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のパッチアンテナを、該パッチアンテナが受信した信号を増幅するアンプを備えた回路基板に搭載したことを特徴とするアンテナモジュール。
【請求項7】
請求項6に記載のアンテナモジュールを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−49618(P2012−49618A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187231(P2010−187231)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 ミツミ電機株式会社(秋田事業所 技術部 営業技術G) 刊行物名 ANT−JM1のパンフレットおよびSPG−DF6xのパンフレット 発行年月日 2010年2月25日
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】