説明

パッファ形ガス遮断器

【課題】高温の絶縁ガスを通して排出する筒状のパッファシャフトの構造を変更することにより、遮断性能を長期間維持できるパッファ形ガス遮断器を提供する。
【解決手段】容器1内に配置する遮断部10の可動側は、主接触子13やアーク接触子14、絶縁ガスを圧縮するパッファ装置を構成するパッファシリンダ15、絶縁ガスを案内してアークに吹き付ける絶縁ノズル17、パッファシリンダ15の軸中心に配置して高温の絶縁ガスを通して排気穴から排出する筒状のパッファシャフト18を備えている。パッファシャフト18は、操作側端部に排気穴20を設けた外側パイプ部材19と、外側パイプ部材19の内側に配置して固定する内側パイプ部材21とからなっており、内側パイプ部材21の端部に、外側パイプ部材19の排気穴20にガス案内突出部23Bを嵌め合わせるガス排出案内部材23を配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパッファ形ガス遮断器に係り、特に電流遮断時に発生するアークに吹き付けて高温となった絶縁ガスを排出するのに好適なパッファシャフトを備えたパッファ形ガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パッファ形ガス遮断器は金属製容器内に絶縁物によりそれぞれ支持される固定接触部側及び可動接触部側等からなる遮断部を配置し、絶縁性能や消弧性能が良好な六弗化硫黄(SF)等の消弧性の絶縁ガスを充填している。金属製容器の両端部に、固定側及び可動側の通電導体を配置し、これら通電導体を介して遮断部を送変電系統に接続して使用される。
【0003】
遮断部の固定接触部側は、固定側の主接触子や固定側のアーク接触子等を有している。また、遮断部の可動接触部側は、固定側の主接触子と接離する可動側の主接触子と、固定側のアーク接触子と接離する可動側のアーク接触子や、パッファシリンダ及びパッファピストンを備えて遮断時に絶縁ガスを圧縮するパッファ装置と、圧縮した絶縁ガスをアーク接触子部分のアークに吹き付ける絶縁ノズルと、先端に可動側のアーク接触子を設けて高温となった絶縁ガスの排出に用いる筒状のパッファシャフトと、及びパッファシャフトと操作器とを連結する絶縁ロッド等を有している。
【0004】
筒状のパッファシャフトは、可動側導体及びパッファピストンとパッファシリンダのパッファ装置の軸中心に配置されており、これらは操作器に連なる絶縁ロッドの動作で直線方向に自在に動作できるように構成している。
【0005】
パッファ形ガス遮断器では、遮断部で電流遮断するとき、パッファ装置にて絶縁ガスを圧縮し、これを固定側及び可動側のアーク接触子間に発生するアークに吹き付けて消弧する。アークに吹き付けて高温となった消弧性の絶縁ガスは、筒状のパッファシャフトの内部を通り、パッファシャフトの操作側端部に形成した排気穴から排出される。
【0006】
通常、筒状のパッファシャフトは、融点が高い金属である一体に形成して使用するが、この場合は重量が大きくなって遮断部の駆動操作に悪影響を与える。このため、筒状のパッファシャフトを外側のアルミニウム製等の金属パイプと、内側のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製等の絶縁パイプとで二重構造にすることが提案されている(特許文献1参照)。この構造とすることで、パッファ形ガス遮断器における遮断部の可動側の動作を高速化できるようにしている。
【0007】
また、絶縁ガスが内部を流れる筒状のパッファシャフトは、シャフトの内周壁面を高温の絶縁ガスから保護するために保護パイプを挿入し、この保護パイプの端面とシャフトの底部壁面との間に弾性部材を縮圧状態に介在させるパッファ形ガス遮断器も提案されている(特許文献2参照)。この構造では、高温の絶縁ガスがパッファシャフトの排気穴及びパッファシリンダの軸の排気穴を経由して外部に排出されるとき、絶縁ガスに混入して外部に放出される金属異物量を減少させ、遮断性能と絶縁性能を良好にすることができる。
【0008】
【特許文献1】特開平5−20987号公報
【特許文献2】特開平11−265647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の特許文献1及び2のパッファ形ガス遮断器では、高温の絶縁ガスが流れるパッファシャフトの中空部の内面に対する対策を行っている。これらは、絶縁ガスを排出するパッファシャフト端部の排気穴は、長時間高温の絶縁ガスに曝されるのに、対策が全く行われてない。このため、パッファシャフトの排気穴が熱劣化すると絶縁ガスの排出が円滑に行われなくて遮断性能を低下させ、極端な場合には短期間にパッファシャフト全体を交換せねばならず、経済的でない欠点がある。
【0010】
また、パッファ形ガス遮断器は、パッファシャフトの排気穴及びパッファシリンダ側の排気流路の位置を一致させるため、ねじや楔等によりパッファシャフトとパッファシリンダ部分とを固定し、両者間の回り止めを行っている。この構造の場合、部品の数が増えて組立作業が複雑になり、その上、投入・遮断時の振動によって回り止め部品が緩んでしまう恐れがあった。
【0011】
本発明の目的は、高温の絶縁ガスを通して排出する筒状のパッファシャフトを、排気穴部分を含めて構造を変更することにより、遮断性能を長期間維持できるパッファ形ガス遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のパッファ形ガス遮断器は、絶縁ガスを充填する容器内に操作器にて開閉操作される遮断部を配置し、前記遮断部は少なくとも固定側及び可動側の主接触子と、固定側及び可動側のアーク接触子と、パッファシリンダ及びパッファピストンにて絶縁ガスを圧縮するパッファ装置と、前記パッファ装置で圧縮した絶縁ガスを前記固定側及び可動側のアーク接触子間に生じたアークに吹き付ける絶縁ノズルと、先端部に前記可動側のアーク接触子を設けて前記パッファシリンダの軸中心に配置し、アークに吹き付け後の絶縁ガスを通して排気穴から排出する筒状のパッファシャフトとを備える際に、前記パッファシャフトは、操作側端部に排気穴を設けた外側パイプ部材と、前記外側パイプ部材の内側に配置して固定する内側パイプ部材とからなり、前記内側パイプ部材の端部に、前記外側パイプ部材の排気穴にガス案内突出部を嵌め合わせるガス排出案内部材を配置して構成したことを特徴としている。
【0013】
好ましくは、前記ガス排出案内部材は、前記内側パイプ部材の端部に形成したガス案内口部分に形成した平溝に配置する平板部と、前記外側パイプ部材の排気穴に嵌合するガス案内突出部を有することを特徴としている。
【0014】
また好ましくは、前記外側パイプ部材はアルミニウム合金材により形成し、前記内側パイプ部材は鉄材により形成し、かつ前記ガス排出案内部材は銅とタングステンの合金で形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のようにパッファ形ガス遮断器を構成すれば、筒状のパッファシャフトが外側パイプ部材とこの内側に配置して固定する内側パイプ部材とからなっており、内側パイプ部材の端部に、外側パイプ部材の排気穴にガス案内突出部を位置させるガス排出案内部材を配置したので、ガス排出案内部材で高温の絶縁ガスの排気を損なうことがなく、しかも排気穴の熱劣化を防止できる。このため、パッファ形ガス遮断器の遮断性能を低下させることがないばかりか、性能を長期間維持することができる。
【0016】
また、本発明のパッファシャフトは、パッファシリンダ側との回り止め用の固定部品が不要となるため、組立作業も容易に行えるし、パッファシャフトは高温の絶縁ガスで影響を受けるガス排出案内部材のみを交換して長期間使用できるため、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のパッファ形ガス遮断器では、絶縁ガスを充填する容器内に操作器にて開閉操作される遮断部を配置し、この遮断部は少なくとも固定側及び可動側の主接触子と、固定側及び可動側のアーク接触子と、パッファシリンダ及びパッファピストンにて絶縁ガスを圧縮するパッファ装置と、パッファ装置で圧縮した絶縁ガスを前記固定側及び可動側のアーク接触子間に生じたアークに吹き付ける絶縁ノズルと、パッファシリンダの軸中心に配置すると共に、先端部に可動側のアーク接触子を設けてアークに吹き付け後の絶縁ガスを通して排気穴から排出する筒状のパッファシャフトとを備えている。パッファシャフトは、操作側端部に排気穴を設けた外側パイプ部材と、前記外側パイプ部材の内側に配置して固定する内側パイプ部材とからなり、内側パイプ部材の端部に、外側パイプ部材の排気穴にガス案内突出部を嵌め合わせるガス排出案内部材を配置して構成している。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明のパッファ形遮断器を、図1から図4に示す実施例を用いて説明する。パッファ形遮断器は、架台2や操作器3の上方に配置する金属製の容器1内に、操作器3に連なる絶縁ロッド4により開閉操作される遮断部10を配置し、絶縁ガスを充填して構成している。
【0019】
遮断部10は、固定接触部側に固定側の主接触子11や固定側のアーク接触子12等を有し、可動接触部側には固定側と接離する可動側の主接触子13及びアーク接触子14や、遮断時に動作して絶縁ガスを圧縮するパッファシリンダ15及びパッファピストン16からなるパッファ装置と、圧縮した絶縁ガスをアーク接触子12、14間に生じたアークに吹き付ける絶縁ノズル17と、先端に可動側のアーク接触子7を設けてパッファシリンダ15の軸中心に配置する筒状のパッファシャフト18とを備えて構成している。
【0020】
パッファシリンダ15内の本発明のパッファシャフト18は、図2に示すように外側パイプ部材19と、この内側に配置して固定する内側パイプ部材21との2重構造にしている。外側パイプ部材19は、操作器3で駆動される絶縁ロッド4を連結する操作側端部に、高温の絶縁ガスを排出する長円状の排気穴20を設けて端面を閉鎖しており、端部に操作器3にて駆動される絶縁ロッド4が連結される。
【0021】
パッファシャフト18の内側パイプ部材21は、その操作側端部に外側パイプ部材19の排気穴20と連通する長円状のガス案内口22を形成すると共に、このガス案内口22部分の周囲に平溝24を形成している。そして、内側パイプ部材21のガス案内口22部分に、ガス排出案内部材23を配置し、高温の絶縁ガスが排気穴20に直接接触することなく排出できるようにしている。
【0022】
内側パイプ部材21のガス案内口22部分のガス排出案内部材23は、図3に示す如くガス案内口22部分の周囲に形成した平溝24に配置して位置を規制する平板部23Aと、外側パイプ部材19の排気穴20部分に嵌合配置するガス案内突出部23Bとを備えている。
【0023】
外側パイプ部材19と内側パイプ部材21を組み合せてパッファシャフト18を一体にし、両者の端部間にガス排出案内部材23を配置して構成するには、例えば以下に説明する手順で組み立てて製作する。
【0024】
即ち、外側パイプ部材19の各排気穴20にそれぞれ、ガス排出案内部材23のガス案内突出部23Bを嵌め合わせて仮止め材(図示せず)により仮固定する。その後、図4(a)及び(b)に示す如く外側パイプ部材19の内部に内側パイプ部材21を挿入し、ガス排出案内部材23を外側パイプ部材19との仮固定を外し、ガス案内口22部分の周囲に形成した平溝24にガス排出案内部材23の平板部23Aを係合させる。
【0025】
最後に、ア−ク接触子14を先端に固着する外側パイプ部材19の内面に、丸ナット25等の固定部材を螺着し、これにより内側パイプ部材21を押圧して固定して外側パイプ部材19と一体にし、パッファシャフト18を構成する。
【0026】
ガス排出案内部材23は、ガス案内突出部23Bで絶縁ガスを良好に排出案内することができる。しかも、ガス排出案内部材23のガス案内突出部23Bが排気穴20に嵌め合わされ、また平板部23Aがガス案内口22周囲の平溝24に配置しているため、ガス排出案内部材23が両パイプ部材19、21の回り止めを兼ねさせ、他の固定用部品を省略することができる。
【0027】
本発明のパッファシャフト18を用いた遮断部10は、遮断動作時にパッファ装置で圧縮した絶縁ガスを、絶縁ノズル17からアーク接触子12、14部分間に発生しているアークに向けて吹き付けて消弧作用を行わせる。
【0028】
消弧作用で高温となった絶縁ガスは、パッファシャフト18の内側パイプ部材22内を通ってガス案内口22を経て、外側パイプ部材19の排気穴20部分に嵌め合わせたガス排出案内部材23のガス案内突出部22Aから、容器1内に排出される。このため、外側パイプ部材19の排気穴20は、高温の絶縁ガスで損傷することがないのでパッファシャフト18を継続して使用でき、遮断部10の遮断性能を長期間維持することができる。
【0029】
パッファシャフト18を構成する外側パイプ部材19は、例えば操作器の駆動操作に影響を与えない軽量のアルミニウム合金材により形成し、また内側パイプ部材22は高温の絶縁ガスが通過しても熱劣化の少ない鉄材により形成する。このように、パッファシャフト18を2重構造にすると、機械的にも熱的にも優れた状態を維持し、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0030】
また、外側パイプ部材19と内側パイプ部材22間に配置するガス排出案内部材23は、融点及び沸点が高くて耐熱性のある材料、例えば銅とタングステンの合金で形成し、ガス案内突出部22Aを外側パイプ部材19の排気穴20部分に嵌合する。
【0031】
このようにすると、内側パイプ部材22内を通ってきた絶縁ガスは、ガス排出案内部材23のガス案内突出部22Aで案内され、外側パイプ部材19の排気穴20に直接接触することなく容器内に排出されるから、排気穴20付近の熱損傷が大幅に少なくなるので、遮断性能を損なうことなくパッファシャフト18を直期間使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用したパッファ形ガス遮断器の一実施例を示す概略縦断面図である。
【図2】図1の遮断部の可動側部分を示す概略縦断面図である。
【図3】図2のパッファシャフトを示す分解斜視図である。
【図4】(a)は図2のパッファシャフトを拡大して示す概略縦断面図、(b)は(a)のA−Aの断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1…容器、3…操作器、10…遮断部、11、13…主接触子、12、14…アーク接触子、15…パッファシリンダ、16…パッファピストン、17…絶縁ノズル、18…パッファシャフト、19外側パイプ部材、20…排気穴、21…内側パイプ部材、22…ガス案内口、23…ガス排出案内部材、23A…平板部、23B…ガス案内突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスを充填する容器内に操作器にて開閉操作される遮断部を配置し、前記遮断部は少なくとも固定側及び可動側の主接触子と、固定側及び可動側のアーク接触子と、パッファシリンダ及びパッファピストンにて絶縁ガスを圧縮するパッファ装置と、前記パッファ装置で圧縮した絶縁ガスを前記固定側及び可動側のアーク接触子間に生じたアークに吹き付ける絶縁ノズルと、先端部に前記可動側のアーク接触子を設けて前記パッファシリンダの軸中心に配置し、アークに吹き付け後の絶縁ガスを通して排気穴から排出する筒状のパッファシャフトと、を備えたパッファ形ガス遮断器において、前記パッファシャフトは、操作側端部に排気穴を設けた外側パイプ部材と、前記外側パイプ部材の内側に配置して固定する内側パイプ部材とからなり、前記内側パイプ部材の端部に、前記外側パイプ部材の排気穴にガス案内突出部を嵌め合わせるガス排出案内部材を配置して構成したことを特徴とするパッファ形ガス遮断器。
【請求項2】
請求項1において、前記ガス排出案内部材は、前記内側パイプ部材の操作側端部に形成したガス案内口部分に形成した平溝に配置する平板部と、前記外側パイプ部材の排気穴に嵌合するガス案内突出部を有することを特徴とするパッファ形ガス遮断器。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記外側パイプ部材はアルミニウム合金材により形成し、前記内側パイプ部材は鉄材により形成し、かつ前記ガス排出案内部材は銅とタングステンの合金で形成したことを特徴とするパッファ形ガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−67424(P2010−67424A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231663(P2008−231663)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】