パネルおよびその製造方法
【課題】表皮シート端末の剥がれが生じ難いパネルを提供する。
【解決手段】本発明にかかるパネル(1)は、表皮シート(7)が上面(2)に貼着されるパネル(1)であって、上面(2)の端部に段部(10)を有し、上面(2)と段部(10)との境界部分が曲面形状で形成されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明にかかるパネル(1)は、表皮シート(7)が上面(2)に貼着されるパネル(1)であって、上面(2)の端部に段部(10)を有し、上面(2)と段部(10)との境界部分が曲面形状で形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装パネルとして用いられるブロー成形製の表皮付きパネル、およびその製造方法ならびに貼り合せブロー成形方法に関するものである。表皮付きパネルはフロアパネル、ラゲッジボード、シェルフパネルなど自動車の荷室等の蓋体パネル、棚板などとして用いられる車両用内装パネルであり、表皮シートを一体に貼着したブロー成形製の中空二重壁構造のパネルである。表皮シートは樹脂シートに不織布を積層したものであり、樹脂シートは熱可塑性樹脂からなり立体模様が形成されている。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアパネル、ラージボードなど、自動車の荷室の蓋パネルなどは、その表面の感触を良好にし意匠的効果をもたせるため、パネルの表面に不織布などの表皮シートを貼着したものが用いられていた(特許文献1:特開平1−34720号公報、特許文献2:特開2000−289095号公報参照)。ところが、近年自動車の荷室等の活用方法が多様化してきており、従来の不織布を貼着したパネルの他にシボ模様等の立体模様が施された樹脂シートを一体に溶着したパネルなどが要望されるようになってきた。
【0003】
例えば、特許文献3:特開平9−39078号公報には、布張り中空成形品(パネル)の表壁に表皮シート、発泡体、繊維シートの3層構造の装飾布をブロー成形時に一体に貼着させたものであって、繊維シートが目付重量50〜250g/m2の不織布であることが記載されている。特許文献4:特開平9−39079号公報には、布張り中空成形品(パネル)の表壁に樹脂シートと繊維シートを接着した表皮シートをブロー成形時に一体に貼着させたものであって、樹脂シートは引張弾性率が3000〜12000kg/cm2のポリプロピレンまたはPET樹脂であることが記載されている。
【0004】
さらに、特許文献5:特開昭62−255117号公報には、ブロー成形時に被覆層(表皮シート)を加熱して一体に貼着する成形方法であって、表皮シートは軟質PVCに不織布を接着させたもので、金型の凹凸模様を転写させることが記載されている。また、特許文献6:特開平10−235720号公報には、毛羽を有する布(不織布)を一体に貼着させた車両用カーゴフロアパネルなどに用いられる表皮付パネルであって、インナーリブを有することが記載されている。またさらに、ブロー成形持にパリソンの一部を圧縮薄肉化して凹溝を有するヒンジ部を形成することが特許文献7:特開2001−277342号公報および特許文献8:特開2004−74660号公報にそれぞれ記載されており、表皮シートの接着強度を向上させる観点より表皮シートとパリソンの間に不織布を介在させることが記載されている。ブロー成形製の表皮付きパネルは、成形時において表皮シートを溶融状態のパリソンに一体に貼着して形成される。表皮シートとして通気性のない樹脂シートを用いた場合には、金型に配置された樹脂シートとパリソンとの間にエアが溜まる問題がある。これを防止するため一般に発泡体や不織布等を介在させた樹脂シートが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−34720号公報
【特許文献2】特開2000−289095号公報
【特許文献3】特開平9−39078号公報
【特許文献4】特開平9−39079号公報
【特許文献5】特開昭62−255117号公報
【特許文献6】特開平10−235720号公報
【特許文献7】特開2001−277342号公報
【特許文献8】特開2004−74660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両用内装パネルなどにおいては表皮シートの外表面に微細なシボ模様または規則正しいエンボス形状など凹凸状の立体模様が現出されていることが望まれる。しかし、凹凸状の立体模様を有する樹脂シートを用いてブロー成形を行う場合には、ブロー成形時の圧力とパリソンからの熱によって凹凸状の立体模様が潰れ、変形が生じる。さらに、樹脂シートが伸ばされることによって特にその末端部分において凹凸状の立体模様が大きく引き延ばされて外観性が著しく損なわれることとなる。
【0007】
また、表皮シートの外表面に凹凸状の立体模様を現出させる方法として金型のキャビティに沿った凹凸状の立体模様を転写等させることが可能であるが、発泡体や不織布等を介在させた樹脂シートは一般に厚みが大きく金型のキャビティに沿った立体模様の転写性が不十分なものとなる。特に、成形性の観点から樹脂シートを予め加熱し軟化させない場合にあっては外観の良好な立体模様を再現できないという問題があった。
【0008】
さらに、車両用内装パネルにおいては中空二重壁構造体の剛性を向上させるために裏壁より突出させて表壁の裏面に一体に溶着したリブを形成したり、フロアボックスの蓋体として用いられる場合には区分けされたフロアボックスに対応して部分的な開閉をさせるために表壁と裏壁を一体に溶着した薄肉状のヒンジ部が形成される。この場合、リブやヒンジ部は表壁と裏壁を一体に溶着することにより形成されるため溶着部分と表壁と裏壁の溶着されていない中空部に対応する部分との成形条件の差より樹脂シートの表面に現出される立体模様にはヒケや転写性にムラが生じ、結果として立体模様は部分的に転写が不充分でダレたり、潰れたりして外観が低下する問題があった。
【0009】
さらにまた、ブロー成形製の表皮付きパネルにあってはシート末端およびヒンジ部分において表皮シートの剥離が生じやすいという問題があり、表皮シートの剥がれおよび浮き上がり等を防止するために表皮シート末端をスライド金型を用いてパネルの裏面に巻き込み一体に成形したり、ヒンジ部分に表皮シート側から広い幅の凹部を形成して接着面積を広くするなどの対策が必要であった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表皮シート端末の剥がれが生じ難いパネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有する。
【0012】
本発明にかかるパネルは、
表皮シートが上面に貼着されるパネルであって、
前記上面の端部に段部を有し、前記上面と前記段部との境界部分が曲面形状で形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明にかかるパネルの製造方法は、
一対の分割金型を用いて熱可塑性プラスチックからなるパネルをブロー成形により製造する方法であって、
一対の前記分割金型には、キャビティの境界を形成するピンチオフ形成部が設けられており、一方の分割金型には、前記ピンチオフ形成部に沿って段部形成部と曲面とが設けられており、
前記一方の分割金型のキャビティと熱可塑性プラスチックのパリソンとの間に、表皮シートを配置し、型締めを行い、前記パリソン内に圧力流体を導入して、前記表皮シートおよび前記パリソンを前記キャビティ面に押圧させ、前記表皮シートが一体に貼着されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表皮シート端末の剥がれが生じ難いパネルおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両用内装パネルの斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の車両用内装パネルを裏面から見た一部の斜視図である。
【図4】車両用内装パネルを拡大して示す一部の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルの斜視図である。
【図6】図5の一部詳細斜視図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】本発明に係る車両用内装パネルの一例であるフロアパネルを自動車に装備した態様を示す斜視図である。
【図9】車両用内装パネルのブロー成形態様を示す断面図である。
【図10】図6の一部拡大断面図である。
【図11】型閉め後ブロー成形を完了した態様を示す一部拡大断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルのブロー成形態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明をより詳細に説述するために、添付の図面に従ってこれを説明する。
図1は本発明に係る車両用内装パネルの斜視図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1の車両用内装パネルを裏面から見た一部の斜視図、図4は車両用内装パネルを拡大して示す一部の断面図である。
【0017】
図1ないし図4において、1は車両用内装パネルである。この車両用内装パネル1は、熱可塑性樹脂をブロー成形した中空二重壁構造のものであって、間隔をおいて相対する第一壁2および第二壁3を有し、第一壁2と第二壁3との間に中空部4を形成する周囲壁5を有しており、第一壁2および第二壁3との間には第二壁3の一部を第一壁2に向けて突出させて第一壁2の裏面に一体に溶着し、かつその突出部分の壁面が折り畳まれて二枚分の壁面が互いに溶着一体化した板状の構造を有するインナーリブ6が形成されている。
【0018】
第一壁2には平均厚さが0.5〜3.0mmの表皮シート7が一体に貼着されており、表皮シート7は、樹脂シートに目付重量が250g/m2以下の不織布を接着した2層構造からなるものが特に好適であり、樹脂シートの表面には立体模様8が現出されている。樹脂シート自体の厚みは0.2〜0.6mm程度である。
【0019】
表皮シート7を構成する樹脂シートは、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)または熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)などの熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる樹脂製シートであり、接着性、エア溜まり防止のため裏面に不織布などの繊維シートを貼着したものが用いられる。熱可塑性エラストマーはオレフィン系エラストマー(TPO)、ウレタン系エラストマー(TPU)、スチレン系エラストマー(SBC)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)など適宜選択可能である。その中でも樹脂シートが、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)または熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)が立体模様を形成するため転写性などの観点から好適である。
【0020】
また、樹脂シートは、貫通孔が形成されていないものであって、常温時における引張弾性率が3500kg/cm2以下さらに好ましくは2000kg/cm2であり、100℃における引張弾性率が500kg/cm2未満、好ましくは300kg/cm2未満であり、さらに100℃における引張降伏点強度が50kg/cm2以下の熱可塑性樹脂である。ここで、引張弾性率および引張降伏点強度(引張降伏強さ)についてはJIS−K−7113に準拠して測定される。試験片は2号試験片を用い、試験速度は50mm/minで行う。ただし、環境温度を常温(23℃)または100℃として試験片の温度が安定した後に測定を行った。
【0021】
立体模様8は、ブロー成形時に表皮シート7が金型に押圧されることによりキャビティ面の模様を樹脂シートの表面に転写させることが好適であるが、表皮シート7の樹脂シートの表面に予め外観性や触感性を向上させる図柄や模様またはシボ模様が施されたものを用いることができる。
【0022】
樹脂シートの表面に現出される立体模様8は、200μm以上、好ましくは500〜2500μmの範囲の高さを有する複数形成された凹凸形状であり、梨地状、皮地状、幾何学模様、木目模様、石目模様などのシボ模様または半球状、円筒状、円錐状、円柱状、四角柱状、台形状などの凸形状の突起からなるエンボス模様などの立体模様が好適である。
【0023】
車両用内装パネル1は、図4に示すように、その平均厚さ(a)が20.0〜40.0mmの範囲に形成されおり、第一壁2と第二壁3の周囲をつなぐ周囲壁5において第一壁2面からパネルの平均厚さの35%の範囲内(b)または第一壁2面から8.0mm以下の厚さの範囲内にパーティングライン9が形成されている。パーティングライン9は周囲壁5の全周にわたって形成されるが、表皮シート7が一体に貼着される第一壁2の面より離れた位置に形成されると表皮シートの端末が引き延ばされることから、表皮シートの端末が引き延ばされない程度にパーティングラインの形成位置を第一壁2の面に近接させる必要がある。また、周囲壁5に形成されたパーティングライン9より第一壁2側寄りの部分にはその略全周にわたって幅cの段部10が形成されていて、表皮シート7の端末が前記段部10に沿って固着されている。段部10はその幅cが1.0mm以上、好ましくは1.5mm以上である。段部10の幅cは前記のように1.0mm以上とするが、表皮シート7の厚みにより適宜調整可能である。なお、段部10の幅cが1.0mm未満では表皮シート7の端末の溶着強度が十分でなく、表皮シート7の端末に剥がれが生じやすく、またバリ除去の作業性が低下する。
【0024】
さらに、第一壁2と段部10との境界部分は緩やかな曲面をなしており、段部10に端末が溶着された状態で表皮シート7の端末部分にはほとんど伸びが生じない。このため、表皮シート7が表面にシボ模様を施したものであっても、その外観性が低下しないばかりか、表皮シート7の端末が伸びをほとんど生じない状態で段部10に溶着されるので、その溶着部分に剥がれが生じ難くなる。
【0025】
また、インナーリブ6は、第二壁3の一部を突出させ第一壁2の内面に溶着し、さらに突出させた壁面を折り畳むようにして一体に溶着することで板状の構造としたものであり、車両用内装パネル1の外観には凹みなどの形状は現れない。インナーリブ6を形成した場合には、折り畳まれるようにして溶着した部分に生じる折れ肉によって一本の筋のみが第二壁3の表面に現出される。インナーリブ6によって生じる筋を外観上目立たなくする観点および筋によって生じる微細な突起が第二壁3の表面に突出するのを防止する観点より、第二壁3の表面にはインナーリブ6を形成した部位に対応する筋を第二壁3の表面より一段凹ませるように第二壁3の壁面の厚さより浅い凹溝11が形成されている。また、車両用内装パネル1には、第二壁3の一部を第一壁2に向けて突出させて第一壁2の裏面に一体に溶着し、かつその突出部分が凹状に形成されたウエルドリブ12が、インナーリブ6の長手方向の端部に一連に設けられている。
【0026】
また、本発明における他の実施形態を図5ないし図7において説明する。ただし、図1ないし図4と同一の態様については同一の符号を付してその説明を省略した。図5は本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルの斜視図、図6は図5の一部の詳細斜視図、図7は図6のB−Bの断面図である。
【0027】
車両用内装パネル1は、第二壁3の一部を第一壁2に向けて突出させて第一壁2の裏面に一体に溶着された中空部4を隔離する直線状のヒンジ部24を形成することができ、第一壁2と第二壁3を繋ぐ前記周囲壁5にはパーティングライン9が形成されている。ヒンジ部24は第一壁2と第二壁3を溶着させた直線状の薄肉の単壁構造であり、ヒンジ部24を介してパネルの一部を開閉自在とすることができる。さらに、パーティングライン9は略直線状の部分9aとヒンジ部24の近傍において第一壁2側へ近接した部分9bからなっている。第一壁2は略平坦に形成されており、ヒンジ部24は第一壁2と略同一面に形成されている。これにより、ヒンジ部24に対応する位置の第一壁2には溝などの凹みがなく、車両用内装パネル1の上に荷物等を載置した場合にガタツキや引っ掛かり等が生じることがないうえ、金型により立体模様を転写する際に立体模様に伸びやムラ等の変形が生じることなく外観の良好な車両用内装パネル1を得ることができる。
【0028】
また、インナーリブ6はヒンジ部24と平行して複数形成されており、ヒンジ部24と平行して伸びるインナーリブ6の両端は周囲壁5と間隔を空けて形成されており、中空部4はヒンジ部24のみによって隔離され、インナーリブ6によっては隔離されていないため、ブロー成形時に加圧流体がインナーリブ6によって阻害されることなく連通した中空部4に充満されるため、加圧流体をパリソン内に導入するためには最少で2つの吹込みノズルを設けることで足りる。インナーリブ6は加圧流体をパリソン内に均一に充満させるためさらに間欠的に形成することができる。つまり、周囲壁5の一端から他端に向けて直線状に形成されるインナーリブを分割して形成し、インナーリブ6同士の間の隙間により加圧流体の流通を可能とすることができる。
【0029】
図8は本発明に係る車両用内装パネルの一例であるフロアパネルを自動車に装備した態様を示す斜視図である。図1ないし図7に例示する車両用内装パネル1は、自動車のフロアパネル13であって、このフロアパネル13は、図8に示すように、自動車14の荷室15内に装備される。
【0030】
車両用内装パネル1を構成する熱可塑性樹脂は、ブロー成形が可能なものであればよく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、さらには、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等のエンジニアリング・プラスチックなど単独またはそれらの2以上の混合物として用いる。また、適宜にガラス繊維、カーボンファイバー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどの充填材を添加することができる。
【0031】
本発明に係る車両用内装パネル1は、図9ないし図11に示す態様の貼り合せブロー成形方法によりブロー成形される。図9は表皮付きブロー成形品のブロー成形態様を示す断面図、図10は図9の一部拡大断面図、図11は型閉め後ブロー成形を完了した態様を示す一部拡大断面図である。
【0032】
図9ないし図11において、16,17は一対の分割金型であり、その一方の金型16のキャビティは、表皮シート7の表面に形成する立体模様8を転写するための立体形状転写面18を有している。他方の金型17にはインナーリブ6を形成するためのスライドコア19が設けてある。20は押出ヘッド、21はパリソンである。
【0033】
車両用内装パネル1をブロー成形するにあたっては、分割金型16,17を開き、分割金型16,17の間にパリソン21を配置するとともに、パリソン21と一方の金型16のキャビティとの間に表皮シート7を介在させる。分割金型16,17間に配置する表皮シート7にはパリソン21と対向する面に不織布が介在させてある。
【0034】
一対の分割金型16,17の立体形状転写面を有する一方の金型16のキャビティとパリソン21との間に配置する表皮シート7は、平均厚さが2.0mm以下で100℃における引張弾性率が500kg/cm2以下であり、かつ100℃における引張降伏点強度が50kg/cm2以下の熱可塑性樹脂からなる貫通孔を有しない実質的に通気性のない樹脂シートに目付重量が250g/m2以下の不織布を接着した2層構造より構成される。
【0035】
さらに、分割金型16,17を型締めするとともに他方の金型17に設けたスライドコア19を進出させることによりスライドコア19に押されたパリソン21の一部が互いに接触して溶着される。次いでスライドコア19を他方の金型17のキャビティまで後退させるとともにパリソン21内に圧力流体を導入し、パリソンを膨張させることにより表皮シート7を一方の金型16のキャビティに押圧させて立体形状転写面に対応した立体模様8を表皮シート7の表面に転写させる。前記スライドコア19により突出された部分はその壁面が互いに溶着されて第一壁2と第二壁3との間に一体的な板状構造のインナーリブ6が形成される。
【0036】
すなわち、車両用内装パネル1は、目付重量が250g/m2以下の不織布が積層された略凹凸模様を有しない平坦な樹脂シートをパリソン21と分割金型16,17との間に配置し、ブロー成形することにより溶融状態のパリソン21と表皮シート7を一体に貼着するとともにキャビティに立体形状転写面18が形成された分割金型16に押圧させることにより、樹脂シートの表面には略半球状の突起その他の凸部、凹部または凹凸部さらにはシボ形状等からなる立体模様8が転写される。これにより、樹脂シート7がブロー成形時に引き延ばされた場合であっても、分割金型16のキャビティに設けた立体形状転写面18によって樹脂シートの表面に200〜2500μmの範囲の高さを有する突出状の立体模様を好適に形成した車両用内装パネル1を得ることができる。
【0037】
分割金型16のキャビティに形成された立体形状転写面18は、キャビティ面を切削加工またはエッチングなどにより凹状部を形成したものであり、ブロー成形時に樹脂シートがパリソン21と一体に貼着されるとともに、キャビティ面に押圧されることで樹脂シートの表面に凹状部に対応した形状が転写され、突出形状の立体模様を有する表皮付きブロー成形品1を得ることができる。ここで、立体形状転写面18はキャビティの少なくとも一部に形成されるが、規則的に配列された凹状部をキャビティ全面に設けたものが好適である。
【0038】
一対の分割金型16,17の一方の金型16キャビティには、ピンチオフ形成部22に沿ってキャビティの全周に段部形成部23を有しており、この段部形成部23において表皮シート7の末端をパリソン21と押圧させて一体に固着させるものである。
【0039】
また、表皮シート7は一対の分割金型16,17の一方の金型16キャビティとパリソン21の間に配置されるが、加熱工程により軟化されることなく型締めされることが成形サイクルを短縮する観点から望ましい。また、パリソン21を分割金型間に垂下させた後、型締め前にはパリソン内にプリブローによる予備的な加圧流体を導入することが成形上好ましい。
【0040】
上記車両用内装パネル1にあっては、押出ヘッド20より押し出された円筒状のパリソン21を用いた所謂ダイレクトブロー成形により製造する例を示したが、これに代えて所謂シートブロー成形により、予め成形したオレフィン系樹脂シートを金型間に配置および加熱溶融させてブロー成形を行うものまたは溶融押出されたシート状パリソンを用いるものであっても好適に成形することが可能である。シートブロー成形により車両用内装パネル1を形成する場合には表皮シートはオレフィン系樹脂シート等に予め貼着させておくことができる。
【0041】
さらに、図5ないし図7に示す本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルの製造方法について図12により説明する。ただし、図9ないし図11と同一の態様については同一の符号を付してその説明を省略した。
【0042】
図12は本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルのブロー成形態様を示す断面図である。他方の金型17のキャビティにはヒンジ形成部27が設けられており、略直線状のピンチオフ形成部25aとヒンジ形成部の近傍においてキャビティ面より突出したピンチオフ形成部26aからなる型割面を有し、一方の金型16のキャビティには略直線状のピンチオフ形成部25bと前記突出したピンチオフ形成部に対応したピンチオフ形成部26bからなる型割面を有している。
【0043】
車両用内装パネル1をブロー成形するにあたっては、パリソン21と一方の金型16との間に表皮シート7を配置して型締めして前記型割面に対応したパーティングライン9を形成し、他方の金型17に設けたヒンジ形成部27によりパリソンの一部を互いに溶着させて、次いでパリソン内に圧力流体を導入してブロー圧により中空部を隔離するヒンジ部24を第一壁2と略同一面に形成する。
【0044】
この実施態様によれば、中空二重壁構造のパネルの第一壁2と第二壁3を繋ぐ周囲壁5に、略直線状の部分9aとヒンジ部24の近傍において第一壁2側へ近接した部分9bからなるパーティングライン9が形成され、表皮シート7の端末を周囲壁5に形成されたパーティングライン9に沿って貼着されるので、第一壁2には不要な凹部が形成されることなく略平坦な面を得ることができるとともに表皮シートの端末が強固に固着されて剥がれが生じない。また、パーティングライン9に段部10を併設することで表皮シート7はその端末に過度な引き延ばしによるシワ、破れ等が生じさせることなく強固に固着される。また、パーティングライン9を形成する分割金型の型割面がヒンジ部24に対応する位置においていわゆるクセ割によって第一壁2側に近接した位置に形成されているため、表皮シート7の端末は強固に固着され、ヒンジ部の動きに起因するシートの剥がれが防止される。そのうえ第一壁2が略平坦に形成されるため表皮シート7の表面に立体模様8を転写させた場合であっても転写性のムラが生じず外観の良好な車両用内装パネル1を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 車両用内装パネル
2 第一壁
3 第二壁
4 中空部
5 周囲壁
6 インナーリブ
7 表皮シート
8 立体模様
9 パーティングライン
9a 略直線状の部分
9b 第一壁2側へ近接した部分
10 段部
11 凹溝
12 ウエルドリブ
24 ヒンジ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装パネルとして用いられるブロー成形製の表皮付きパネル、およびその製造方法ならびに貼り合せブロー成形方法に関するものである。表皮付きパネルはフロアパネル、ラゲッジボード、シェルフパネルなど自動車の荷室等の蓋体パネル、棚板などとして用いられる車両用内装パネルであり、表皮シートを一体に貼着したブロー成形製の中空二重壁構造のパネルである。表皮シートは樹脂シートに不織布を積層したものであり、樹脂シートは熱可塑性樹脂からなり立体模様が形成されている。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアパネル、ラージボードなど、自動車の荷室の蓋パネルなどは、その表面の感触を良好にし意匠的効果をもたせるため、パネルの表面に不織布などの表皮シートを貼着したものが用いられていた(特許文献1:特開平1−34720号公報、特許文献2:特開2000−289095号公報参照)。ところが、近年自動車の荷室等の活用方法が多様化してきており、従来の不織布を貼着したパネルの他にシボ模様等の立体模様が施された樹脂シートを一体に溶着したパネルなどが要望されるようになってきた。
【0003】
例えば、特許文献3:特開平9−39078号公報には、布張り中空成形品(パネル)の表壁に表皮シート、発泡体、繊維シートの3層構造の装飾布をブロー成形時に一体に貼着させたものであって、繊維シートが目付重量50〜250g/m2の不織布であることが記載されている。特許文献4:特開平9−39079号公報には、布張り中空成形品(パネル)の表壁に樹脂シートと繊維シートを接着した表皮シートをブロー成形時に一体に貼着させたものであって、樹脂シートは引張弾性率が3000〜12000kg/cm2のポリプロピレンまたはPET樹脂であることが記載されている。
【0004】
さらに、特許文献5:特開昭62−255117号公報には、ブロー成形時に被覆層(表皮シート)を加熱して一体に貼着する成形方法であって、表皮シートは軟質PVCに不織布を接着させたもので、金型の凹凸模様を転写させることが記載されている。また、特許文献6:特開平10−235720号公報には、毛羽を有する布(不織布)を一体に貼着させた車両用カーゴフロアパネルなどに用いられる表皮付パネルであって、インナーリブを有することが記載されている。またさらに、ブロー成形持にパリソンの一部を圧縮薄肉化して凹溝を有するヒンジ部を形成することが特許文献7:特開2001−277342号公報および特許文献8:特開2004−74660号公報にそれぞれ記載されており、表皮シートの接着強度を向上させる観点より表皮シートとパリソンの間に不織布を介在させることが記載されている。ブロー成形製の表皮付きパネルは、成形時において表皮シートを溶融状態のパリソンに一体に貼着して形成される。表皮シートとして通気性のない樹脂シートを用いた場合には、金型に配置された樹脂シートとパリソンとの間にエアが溜まる問題がある。これを防止するため一般に発泡体や不織布等を介在させた樹脂シートが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−34720号公報
【特許文献2】特開2000−289095号公報
【特許文献3】特開平9−39078号公報
【特許文献4】特開平9−39079号公報
【特許文献5】特開昭62−255117号公報
【特許文献6】特開平10−235720号公報
【特許文献7】特開2001−277342号公報
【特許文献8】特開2004−74660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両用内装パネルなどにおいては表皮シートの外表面に微細なシボ模様または規則正しいエンボス形状など凹凸状の立体模様が現出されていることが望まれる。しかし、凹凸状の立体模様を有する樹脂シートを用いてブロー成形を行う場合には、ブロー成形時の圧力とパリソンからの熱によって凹凸状の立体模様が潰れ、変形が生じる。さらに、樹脂シートが伸ばされることによって特にその末端部分において凹凸状の立体模様が大きく引き延ばされて外観性が著しく損なわれることとなる。
【0007】
また、表皮シートの外表面に凹凸状の立体模様を現出させる方法として金型のキャビティに沿った凹凸状の立体模様を転写等させることが可能であるが、発泡体や不織布等を介在させた樹脂シートは一般に厚みが大きく金型のキャビティに沿った立体模様の転写性が不十分なものとなる。特に、成形性の観点から樹脂シートを予め加熱し軟化させない場合にあっては外観の良好な立体模様を再現できないという問題があった。
【0008】
さらに、車両用内装パネルにおいては中空二重壁構造体の剛性を向上させるために裏壁より突出させて表壁の裏面に一体に溶着したリブを形成したり、フロアボックスの蓋体として用いられる場合には区分けされたフロアボックスに対応して部分的な開閉をさせるために表壁と裏壁を一体に溶着した薄肉状のヒンジ部が形成される。この場合、リブやヒンジ部は表壁と裏壁を一体に溶着することにより形成されるため溶着部分と表壁と裏壁の溶着されていない中空部に対応する部分との成形条件の差より樹脂シートの表面に現出される立体模様にはヒケや転写性にムラが生じ、結果として立体模様は部分的に転写が不充分でダレたり、潰れたりして外観が低下する問題があった。
【0009】
さらにまた、ブロー成形製の表皮付きパネルにあってはシート末端およびヒンジ部分において表皮シートの剥離が生じやすいという問題があり、表皮シートの剥がれおよび浮き上がり等を防止するために表皮シート末端をスライド金型を用いてパネルの裏面に巻き込み一体に成形したり、ヒンジ部分に表皮シート側から広い幅の凹部を形成して接着面積を広くするなどの対策が必要であった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表皮シート端末の剥がれが生じ難いパネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有する。
【0012】
本発明にかかるパネルは、
表皮シートが上面に貼着されるパネルであって、
前記上面の端部に段部を有し、前記上面と前記段部との境界部分が曲面形状で形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明にかかるパネルの製造方法は、
一対の分割金型を用いて熱可塑性プラスチックからなるパネルをブロー成形により製造する方法であって、
一対の前記分割金型には、キャビティの境界を形成するピンチオフ形成部が設けられており、一方の分割金型には、前記ピンチオフ形成部に沿って段部形成部と曲面とが設けられており、
前記一方の分割金型のキャビティと熱可塑性プラスチックのパリソンとの間に、表皮シートを配置し、型締めを行い、前記パリソン内に圧力流体を導入して、前記表皮シートおよび前記パリソンを前記キャビティ面に押圧させ、前記表皮シートが一体に貼着されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表皮シート端末の剥がれが生じ難いパネルおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両用内装パネルの斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の車両用内装パネルを裏面から見た一部の斜視図である。
【図4】車両用内装パネルを拡大して示す一部の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルの斜視図である。
【図6】図5の一部詳細斜視図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】本発明に係る車両用内装パネルの一例であるフロアパネルを自動車に装備した態様を示す斜視図である。
【図9】車両用内装パネルのブロー成形態様を示す断面図である。
【図10】図6の一部拡大断面図である。
【図11】型閉め後ブロー成形を完了した態様を示す一部拡大断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルのブロー成形態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明をより詳細に説述するために、添付の図面に従ってこれを説明する。
図1は本発明に係る車両用内装パネルの斜視図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1の車両用内装パネルを裏面から見た一部の斜視図、図4は車両用内装パネルを拡大して示す一部の断面図である。
【0017】
図1ないし図4において、1は車両用内装パネルである。この車両用内装パネル1は、熱可塑性樹脂をブロー成形した中空二重壁構造のものであって、間隔をおいて相対する第一壁2および第二壁3を有し、第一壁2と第二壁3との間に中空部4を形成する周囲壁5を有しており、第一壁2および第二壁3との間には第二壁3の一部を第一壁2に向けて突出させて第一壁2の裏面に一体に溶着し、かつその突出部分の壁面が折り畳まれて二枚分の壁面が互いに溶着一体化した板状の構造を有するインナーリブ6が形成されている。
【0018】
第一壁2には平均厚さが0.5〜3.0mmの表皮シート7が一体に貼着されており、表皮シート7は、樹脂シートに目付重量が250g/m2以下の不織布を接着した2層構造からなるものが特に好適であり、樹脂シートの表面には立体模様8が現出されている。樹脂シート自体の厚みは0.2〜0.6mm程度である。
【0019】
表皮シート7を構成する樹脂シートは、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)または熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)などの熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる樹脂製シートであり、接着性、エア溜まり防止のため裏面に不織布などの繊維シートを貼着したものが用いられる。熱可塑性エラストマーはオレフィン系エラストマー(TPO)、ウレタン系エラストマー(TPU)、スチレン系エラストマー(SBC)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)など適宜選択可能である。その中でも樹脂シートが、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)または熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)が立体模様を形成するため転写性などの観点から好適である。
【0020】
また、樹脂シートは、貫通孔が形成されていないものであって、常温時における引張弾性率が3500kg/cm2以下さらに好ましくは2000kg/cm2であり、100℃における引張弾性率が500kg/cm2未満、好ましくは300kg/cm2未満であり、さらに100℃における引張降伏点強度が50kg/cm2以下の熱可塑性樹脂である。ここで、引張弾性率および引張降伏点強度(引張降伏強さ)についてはJIS−K−7113に準拠して測定される。試験片は2号試験片を用い、試験速度は50mm/minで行う。ただし、環境温度を常温(23℃)または100℃として試験片の温度が安定した後に測定を行った。
【0021】
立体模様8は、ブロー成形時に表皮シート7が金型に押圧されることによりキャビティ面の模様を樹脂シートの表面に転写させることが好適であるが、表皮シート7の樹脂シートの表面に予め外観性や触感性を向上させる図柄や模様またはシボ模様が施されたものを用いることができる。
【0022】
樹脂シートの表面に現出される立体模様8は、200μm以上、好ましくは500〜2500μmの範囲の高さを有する複数形成された凹凸形状であり、梨地状、皮地状、幾何学模様、木目模様、石目模様などのシボ模様または半球状、円筒状、円錐状、円柱状、四角柱状、台形状などの凸形状の突起からなるエンボス模様などの立体模様が好適である。
【0023】
車両用内装パネル1は、図4に示すように、その平均厚さ(a)が20.0〜40.0mmの範囲に形成されおり、第一壁2と第二壁3の周囲をつなぐ周囲壁5において第一壁2面からパネルの平均厚さの35%の範囲内(b)または第一壁2面から8.0mm以下の厚さの範囲内にパーティングライン9が形成されている。パーティングライン9は周囲壁5の全周にわたって形成されるが、表皮シート7が一体に貼着される第一壁2の面より離れた位置に形成されると表皮シートの端末が引き延ばされることから、表皮シートの端末が引き延ばされない程度にパーティングラインの形成位置を第一壁2の面に近接させる必要がある。また、周囲壁5に形成されたパーティングライン9より第一壁2側寄りの部分にはその略全周にわたって幅cの段部10が形成されていて、表皮シート7の端末が前記段部10に沿って固着されている。段部10はその幅cが1.0mm以上、好ましくは1.5mm以上である。段部10の幅cは前記のように1.0mm以上とするが、表皮シート7の厚みにより適宜調整可能である。なお、段部10の幅cが1.0mm未満では表皮シート7の端末の溶着強度が十分でなく、表皮シート7の端末に剥がれが生じやすく、またバリ除去の作業性が低下する。
【0024】
さらに、第一壁2と段部10との境界部分は緩やかな曲面をなしており、段部10に端末が溶着された状態で表皮シート7の端末部分にはほとんど伸びが生じない。このため、表皮シート7が表面にシボ模様を施したものであっても、その外観性が低下しないばかりか、表皮シート7の端末が伸びをほとんど生じない状態で段部10に溶着されるので、その溶着部分に剥がれが生じ難くなる。
【0025】
また、インナーリブ6は、第二壁3の一部を突出させ第一壁2の内面に溶着し、さらに突出させた壁面を折り畳むようにして一体に溶着することで板状の構造としたものであり、車両用内装パネル1の外観には凹みなどの形状は現れない。インナーリブ6を形成した場合には、折り畳まれるようにして溶着した部分に生じる折れ肉によって一本の筋のみが第二壁3の表面に現出される。インナーリブ6によって生じる筋を外観上目立たなくする観点および筋によって生じる微細な突起が第二壁3の表面に突出するのを防止する観点より、第二壁3の表面にはインナーリブ6を形成した部位に対応する筋を第二壁3の表面より一段凹ませるように第二壁3の壁面の厚さより浅い凹溝11が形成されている。また、車両用内装パネル1には、第二壁3の一部を第一壁2に向けて突出させて第一壁2の裏面に一体に溶着し、かつその突出部分が凹状に形成されたウエルドリブ12が、インナーリブ6の長手方向の端部に一連に設けられている。
【0026】
また、本発明における他の実施形態を図5ないし図7において説明する。ただし、図1ないし図4と同一の態様については同一の符号を付してその説明を省略した。図5は本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルの斜視図、図6は図5の一部の詳細斜視図、図7は図6のB−Bの断面図である。
【0027】
車両用内装パネル1は、第二壁3の一部を第一壁2に向けて突出させて第一壁2の裏面に一体に溶着された中空部4を隔離する直線状のヒンジ部24を形成することができ、第一壁2と第二壁3を繋ぐ前記周囲壁5にはパーティングライン9が形成されている。ヒンジ部24は第一壁2と第二壁3を溶着させた直線状の薄肉の単壁構造であり、ヒンジ部24を介してパネルの一部を開閉自在とすることができる。さらに、パーティングライン9は略直線状の部分9aとヒンジ部24の近傍において第一壁2側へ近接した部分9bからなっている。第一壁2は略平坦に形成されており、ヒンジ部24は第一壁2と略同一面に形成されている。これにより、ヒンジ部24に対応する位置の第一壁2には溝などの凹みがなく、車両用内装パネル1の上に荷物等を載置した場合にガタツキや引っ掛かり等が生じることがないうえ、金型により立体模様を転写する際に立体模様に伸びやムラ等の変形が生じることなく外観の良好な車両用内装パネル1を得ることができる。
【0028】
また、インナーリブ6はヒンジ部24と平行して複数形成されており、ヒンジ部24と平行して伸びるインナーリブ6の両端は周囲壁5と間隔を空けて形成されており、中空部4はヒンジ部24のみによって隔離され、インナーリブ6によっては隔離されていないため、ブロー成形時に加圧流体がインナーリブ6によって阻害されることなく連通した中空部4に充満されるため、加圧流体をパリソン内に導入するためには最少で2つの吹込みノズルを設けることで足りる。インナーリブ6は加圧流体をパリソン内に均一に充満させるためさらに間欠的に形成することができる。つまり、周囲壁5の一端から他端に向けて直線状に形成されるインナーリブを分割して形成し、インナーリブ6同士の間の隙間により加圧流体の流通を可能とすることができる。
【0029】
図8は本発明に係る車両用内装パネルの一例であるフロアパネルを自動車に装備した態様を示す斜視図である。図1ないし図7に例示する車両用内装パネル1は、自動車のフロアパネル13であって、このフロアパネル13は、図8に示すように、自動車14の荷室15内に装備される。
【0030】
車両用内装パネル1を構成する熱可塑性樹脂は、ブロー成形が可能なものであればよく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、さらには、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等のエンジニアリング・プラスチックなど単独またはそれらの2以上の混合物として用いる。また、適宜にガラス繊維、カーボンファイバー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどの充填材を添加することができる。
【0031】
本発明に係る車両用内装パネル1は、図9ないし図11に示す態様の貼り合せブロー成形方法によりブロー成形される。図9は表皮付きブロー成形品のブロー成形態様を示す断面図、図10は図9の一部拡大断面図、図11は型閉め後ブロー成形を完了した態様を示す一部拡大断面図である。
【0032】
図9ないし図11において、16,17は一対の分割金型であり、その一方の金型16のキャビティは、表皮シート7の表面に形成する立体模様8を転写するための立体形状転写面18を有している。他方の金型17にはインナーリブ6を形成するためのスライドコア19が設けてある。20は押出ヘッド、21はパリソンである。
【0033】
車両用内装パネル1をブロー成形するにあたっては、分割金型16,17を開き、分割金型16,17の間にパリソン21を配置するとともに、パリソン21と一方の金型16のキャビティとの間に表皮シート7を介在させる。分割金型16,17間に配置する表皮シート7にはパリソン21と対向する面に不織布が介在させてある。
【0034】
一対の分割金型16,17の立体形状転写面を有する一方の金型16のキャビティとパリソン21との間に配置する表皮シート7は、平均厚さが2.0mm以下で100℃における引張弾性率が500kg/cm2以下であり、かつ100℃における引張降伏点強度が50kg/cm2以下の熱可塑性樹脂からなる貫通孔を有しない実質的に通気性のない樹脂シートに目付重量が250g/m2以下の不織布を接着した2層構造より構成される。
【0035】
さらに、分割金型16,17を型締めするとともに他方の金型17に設けたスライドコア19を進出させることによりスライドコア19に押されたパリソン21の一部が互いに接触して溶着される。次いでスライドコア19を他方の金型17のキャビティまで後退させるとともにパリソン21内に圧力流体を導入し、パリソンを膨張させることにより表皮シート7を一方の金型16のキャビティに押圧させて立体形状転写面に対応した立体模様8を表皮シート7の表面に転写させる。前記スライドコア19により突出された部分はその壁面が互いに溶着されて第一壁2と第二壁3との間に一体的な板状構造のインナーリブ6が形成される。
【0036】
すなわち、車両用内装パネル1は、目付重量が250g/m2以下の不織布が積層された略凹凸模様を有しない平坦な樹脂シートをパリソン21と分割金型16,17との間に配置し、ブロー成形することにより溶融状態のパリソン21と表皮シート7を一体に貼着するとともにキャビティに立体形状転写面18が形成された分割金型16に押圧させることにより、樹脂シートの表面には略半球状の突起その他の凸部、凹部または凹凸部さらにはシボ形状等からなる立体模様8が転写される。これにより、樹脂シート7がブロー成形時に引き延ばされた場合であっても、分割金型16のキャビティに設けた立体形状転写面18によって樹脂シートの表面に200〜2500μmの範囲の高さを有する突出状の立体模様を好適に形成した車両用内装パネル1を得ることができる。
【0037】
分割金型16のキャビティに形成された立体形状転写面18は、キャビティ面を切削加工またはエッチングなどにより凹状部を形成したものであり、ブロー成形時に樹脂シートがパリソン21と一体に貼着されるとともに、キャビティ面に押圧されることで樹脂シートの表面に凹状部に対応した形状が転写され、突出形状の立体模様を有する表皮付きブロー成形品1を得ることができる。ここで、立体形状転写面18はキャビティの少なくとも一部に形成されるが、規則的に配列された凹状部をキャビティ全面に設けたものが好適である。
【0038】
一対の分割金型16,17の一方の金型16キャビティには、ピンチオフ形成部22に沿ってキャビティの全周に段部形成部23を有しており、この段部形成部23において表皮シート7の末端をパリソン21と押圧させて一体に固着させるものである。
【0039】
また、表皮シート7は一対の分割金型16,17の一方の金型16キャビティとパリソン21の間に配置されるが、加熱工程により軟化されることなく型締めされることが成形サイクルを短縮する観点から望ましい。また、パリソン21を分割金型間に垂下させた後、型締め前にはパリソン内にプリブローによる予備的な加圧流体を導入することが成形上好ましい。
【0040】
上記車両用内装パネル1にあっては、押出ヘッド20より押し出された円筒状のパリソン21を用いた所謂ダイレクトブロー成形により製造する例を示したが、これに代えて所謂シートブロー成形により、予め成形したオレフィン系樹脂シートを金型間に配置および加熱溶融させてブロー成形を行うものまたは溶融押出されたシート状パリソンを用いるものであっても好適に成形することが可能である。シートブロー成形により車両用内装パネル1を形成する場合には表皮シートはオレフィン系樹脂シート等に予め貼着させておくことができる。
【0041】
さらに、図5ないし図7に示す本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルの製造方法について図12により説明する。ただし、図9ないし図11と同一の態様については同一の符号を付してその説明を省略した。
【0042】
図12は本発明の他の実施形態に係る車両用内装パネルのブロー成形態様を示す断面図である。他方の金型17のキャビティにはヒンジ形成部27が設けられており、略直線状のピンチオフ形成部25aとヒンジ形成部の近傍においてキャビティ面より突出したピンチオフ形成部26aからなる型割面を有し、一方の金型16のキャビティには略直線状のピンチオフ形成部25bと前記突出したピンチオフ形成部に対応したピンチオフ形成部26bからなる型割面を有している。
【0043】
車両用内装パネル1をブロー成形するにあたっては、パリソン21と一方の金型16との間に表皮シート7を配置して型締めして前記型割面に対応したパーティングライン9を形成し、他方の金型17に設けたヒンジ形成部27によりパリソンの一部を互いに溶着させて、次いでパリソン内に圧力流体を導入してブロー圧により中空部を隔離するヒンジ部24を第一壁2と略同一面に形成する。
【0044】
この実施態様によれば、中空二重壁構造のパネルの第一壁2と第二壁3を繋ぐ周囲壁5に、略直線状の部分9aとヒンジ部24の近傍において第一壁2側へ近接した部分9bからなるパーティングライン9が形成され、表皮シート7の端末を周囲壁5に形成されたパーティングライン9に沿って貼着されるので、第一壁2には不要な凹部が形成されることなく略平坦な面を得ることができるとともに表皮シートの端末が強固に固着されて剥がれが生じない。また、パーティングライン9に段部10を併設することで表皮シート7はその端末に過度な引き延ばしによるシワ、破れ等が生じさせることなく強固に固着される。また、パーティングライン9を形成する分割金型の型割面がヒンジ部24に対応する位置においていわゆるクセ割によって第一壁2側に近接した位置に形成されているため、表皮シート7の端末は強固に固着され、ヒンジ部の動きに起因するシートの剥がれが防止される。そのうえ第一壁2が略平坦に形成されるため表皮シート7の表面に立体模様8を転写させた場合であっても転写性のムラが生じず外観の良好な車両用内装パネル1を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 車両用内装パネル
2 第一壁
3 第二壁
4 中空部
5 周囲壁
6 インナーリブ
7 表皮シート
8 立体模様
9 パーティングライン
9a 略直線状の部分
9b 第一壁2側へ近接した部分
10 段部
11 凹溝
12 ウエルドリブ
24 ヒンジ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮シートが上面に貼着されるパネルであって、
前記上面の端部に段部を有し、前記上面と前記段部との境界部分が曲面形状で形成されていることを特徴とするパネル。
【請求項2】
前記段部は、前記上面から前記パネルの平均厚さの35%の範囲内(b)に有することを特徴とする請求項1記載のパネル。
【請求項3】
前記表皮シートの末端が、前記上面の前記曲面形状の部分から前記段部にかけて溶着されることを特徴とする請求項1または2記載のパネル。
【請求項4】
一対の分割金型を用いて熱可塑性プラスチックからなるパネルをブロー成形により製造する方法であって、
一対の前記分割金型には、キャビティの境界を形成するピンチオフ形成部が設けられており、一方の分割金型には、前記ピンチオフ形成部に沿って段部形成部と曲面とが設けられており、
前記一方の分割金型のキャビティと熱可塑性プラスチックのパリソンとの間に、表皮シートを配置し、型締めを行い、前記パリソン内に圧力流体を導入して、前記表皮シートおよび前記パリソンを前記キャビティ面に押圧させ、前記表皮シートが一体に貼着されたことを特徴とするパネルの製造方法。
【請求項1】
表皮シートが上面に貼着されるパネルであって、
前記上面の端部に段部を有し、前記上面と前記段部との境界部分が曲面形状で形成されていることを特徴とするパネル。
【請求項2】
前記段部は、前記上面から前記パネルの平均厚さの35%の範囲内(b)に有することを特徴とする請求項1記載のパネル。
【請求項3】
前記表皮シートの末端が、前記上面の前記曲面形状の部分から前記段部にかけて溶着されることを特徴とする請求項1または2記載のパネル。
【請求項4】
一対の分割金型を用いて熱可塑性プラスチックからなるパネルをブロー成形により製造する方法であって、
一対の前記分割金型には、キャビティの境界を形成するピンチオフ形成部が設けられており、一方の分割金型には、前記ピンチオフ形成部に沿って段部形成部と曲面とが設けられており、
前記一方の分割金型のキャビティと熱可塑性プラスチックのパリソンとの間に、表皮シートを配置し、型締めを行い、前記パリソン内に圧力流体を導入して、前記表皮シートおよび前記パリソンを前記キャビティ面に押圧させ、前記表皮シートが一体に貼着されたことを特徴とするパネルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−218819(P2011−218819A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171139(P2011−171139)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【分割の表示】特願2006−512874(P2006−512874)の分割
【原出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【分割の表示】特願2006−512874(P2006−512874)の分割
【原出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]