パネルの凹部に埋め込まれたパッドを有するストリンガを具備する複合構造体及び力の伝達方法
例えば航空機の翼または胴体の外板を形成し得る複合構造体は、パネル(20)と、パネル(20)の表面に結合された一連のストリンガ(21〜23)とを具備している。各ストリンガは、パネル(20)に垂直に延びるウェブ(24)と、パネルと共平面にある一対のフランジ(25,26)とを具備している。ウェブ(24)は、横の曲げ剛性及び軸方向剛性を次第に増加させること及び局部的応力集中を軽減することによって外板からストリンガへの荷重の伝達を促進するために、ラン・アウト(run-out)でテーパー付けされている。パッド(27)がストリンガ(22)の基部から下方へ突出して、ウェブ(24)及びフランジ(25,26)の端を越えて延びている。パッド(27)はパネルの凹部に埋め込まれている。凹部は、右側端壁(30)と左側端壁(31)とを有している。壁(30,31)はほぼ反対向きに配向されていて、ストリンガの長さにほぼ垂直にストリンガの幅を横切って延びている。端壁(30)はパッド(27)の右側端面(32)に係合し、端壁(31)はパッド(27)の左側端面(33)に係合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルと、前記パネルの表面に結合されたストリンガとを具備する複合構造体に関するものであり、前記ストリンガは、端面と、前記端面から遠ざかるようにストリンガに沿って縦方向に延びる一対の側面とを有するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、例えば航空機の翼又は胴体の外板を構成するパネル1のラン・アウト(run-out)部を示している。パネルは、該パネルの長さに沿って走る一連の細長いストリンガによって補強されており、前記ストリンガの一つが図1において断面で示されている。ストリンガ2は、パネルに対して垂直に延びるウェブ3と、パネル1に係合しているフランジ4とを具備している。
【0003】
ストリンガ2は図示されたように終端されている。ウェブ3は、横の曲げ剛性及び軸方向剛性を次第に増加させること及び局部的な応力集中を軽減することによって、外板からストリンガへの荷重の伝達を促進するために、終端の近くでテーパーを付けられている。さらにフランジ4は、スティフナの先端をより従順にして、パネルが曲げられたとき追随可能にするためにウェブの端を越えて延びている。
【0004】
層間剥離又は結合部の分離を防ぐために予張力発生ボルト5が使用される。図2に示されるように、予張力荷重6がパネル1の部分7及びフランジ4を圧縮状態にさせる。しかしながら、圧縮された領域7と、圧縮されていないフランジ4の先端9との間に端領域8がある。従ってボルト5は、フランジ4の先端9がパネル1に出会う界面10における破綻の開始を遅らせることができない。
【0005】
改良されたデザインが図3に示されている。この場合、厚さを貫く圧縮領域をフランジの先端まで移して先端における剥離破損モードを抑えるために座金11が使用される。しかしながら、図3の解決法は先端における滑り破損モードを抑えない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様は、パネルと、前記パネルの表面に結合されたストリンガにして、端面、及びストリンガの縦方向に沿って前記端面から遠ざかるように延びる一対の側面を有するストリンガとを具備する複合構造体であって、パネルの表面が、ストリンガの端面に係合する第1壁と、ストリンガの他の部分に係合する第2壁とを有するように形成されている複合構造体を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の複合構造体における力の伝達方法であって、
パネルの表面に形成された第1壁とストリンガの端面との間の法線反力によって、パネルからストリンガへ圧縮力を伝達する段階と、
パネルの表面に形成された第2壁とストリンガの他の表面との間の法線反力によって、パネルからストリンガへ引張力を伝達する段階と、を含む力の伝達方法を提供する。
【0008】
ストリンガとパネルとの間の結合が、それらの部品の間に接着剤の層を塗布することによって、又はそれらの部品を共に硬化させることによって、又は他の任意の方法で前記部品を共に結合することによって形成される。
【0009】
前記パネルは、単一部片から形成されるか、又は材料の二以上の層から形成されてよい。この場合、各層は、エポキシ樹脂基材で含浸された炭素繊維のような複合材料から典型的に形成される。
【0010】
一実施例では、ストリンガは、第1端面の反対側のストリンガの端部に第2端面を有しており、パネルに形成された第2壁がストリンガの第2端面に係合する。
【0011】
他の実施例では、ストリンガは、パネルの表面に結合された基部と、前記基部から突出してパネルの凹部に埋め込まれるパッドとを具備している。パッドは、凹部の第1端壁に係合する第1端面と、凹部の第2端壁に係合する第2端面とを有している。この場合、凹部は、パネル全体の幅を横切って延びてよい(及び従って側壁を有さない)が、より好適には、パッドは、凹部の第1側壁に係合する第1側面と、凹部の第2側壁に係合する第2側面とを有している。パッドは、凹部に結合されてよいが、より好適には、ストリンガの基部とパネルの表面との間の結合はパッドにおいて終端をなしている。この場合、パッドを凹部内に固定するために(ファスナーのような)他の手段が採用されてよい。
【0012】
前記壁は、ストリンガの幅を鋭角に横切って延びてよい、又は凹状若しくは凸状に形成されてよい。しかしながらより好適には、パネルの表面に形成された第1及び第2壁は、ほぼ反対向きに配向されて、ストリンガの長さにほぼ垂直にストリンガの幅を横切って延びる。この構成は、法線反力がパネルとストリンガとの間で効率的に伝達されることを可能にする。
【0013】
本発明の実施例が、添付図面を参照してここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の従来型のストリンガのラン・アウト(run-out)の縦断面図である。
【図2】図1のストリンガのラン・アウトの部分拡大図であって、予張力荷重の効果を図解する図である。
【図3】第2の従来型のストリンガのラン・アウトの縦断面図である。
【図4】本発明の第1実施例による複合構造体の斜視図である。
【図5】図4に示されるストリンガの一つのラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図6】図4に示されるストリンガの一つのラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図7】図4に示されるストリンガの一つのラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図8】ストリンガの様々な代替実施例のラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図9】ストリンガの様々な代替実施例のラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図10】ストリンガの様々な代替実施例のラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図11】ストリンガの様々な代替実施例のラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図12】本発明のさらに別の実施例による複合構造体の縦断面図である。
【図13】本発明のさらに別の実施例による複合構造体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図4は、例えば航空機の翼又は胴体の外板を形成する複合構造体の一部分を示している。前記構造体は、パネル20と、前記パネル20の表面に結合された一連のストリンガ21〜23とを具備している。各ストリンガは一対の端部(各端部は「ストリンガのラン・アウト(run-out)」として従来知られている)及びストリンガのラン・アウト(run-out)の間に縦方向に延びる一対の側面を有している。航空機の翼の場合には、ストリンガは翼の根元からその先端へ向けて翼幅方向に走っている。
【0016】
図4は、複合構造体の小部分だけを示している。図4に示される部分はストリンガ22のラン・アウト、及びストリンガ21及び23の中間区域(即ちストリンガ21及び23のラン・アウトは示されない)が示されている。各ストリンガは、パネル20に対して垂直に延びるウェブ24と、一対のフランジ25及び26とを具備しており、前記フランジ25及び26はパネルと共平面にある。
【0017】
ウェブ24は、横の曲げ剛性及び軸方向剛性を次第に増加させること、並びに局部的応力集中を軽減することによって、外板からストリンガへの荷重の伝達を促進するためにラン・アウトにおいてテーパー付けされている。
【0018】
パッド27が、ストリンガ22の基部から下方に突出してウェブ24及びフランジ25及び26の端を越えて延びている。パッド27は、パネルの凹部に埋め込まれていて、前記凹部は図5において縦断面で示されている。凹部は右側の端壁30と左側の端壁31とを有している。端壁30及び31は、ほぼ反対向きに方向付けられていて、ストリンガの長さに対してほぼ垂直に、ストリンガの幅を横切って延びている。端壁30は、パッド27の右側端面32に係合し、端壁31はパッド27の左側端面33に係合している。前記凹部は、ストリンガの長さに平行に走る側壁も有しており、前記側壁は図4で示される界面37及び38においてパッド27のそれぞれの側壁に係合する。
【0019】
パネル20は、“プリプレグ”(エポキシ樹脂基材で含浸された一軸炭素繊維の層)のスタックを積層し、次いでオートクレーブ内でスタックを硬化させることによって製造される。前記凹部は、パネルの表面に(例えば酸を所望の領域のパネルに塗布することによって)切り込まれることが可能である。代わりに、凹部が積層工程の間に形成されてもよい。つまり、プリプレグの各層が自動テープ敷設(ATL)機によって敷かれて、ATL機が一連の層を凹部の基部まで敷き、次いで凹部の領域で連続する層を終端させる。
【0020】
ストリンガ22は、二つのL形プリフォームを積層し、次にL形プリフォームをオートクレーブ内で背中合わせに配置して共に硬化させることによって製造される。各L形プリフォームはプリプレグのスタックをそれぞれのマンドレルに敷くことによって形成されたものである。
【0021】
ストリンガ22の基部は、次に接着剤層34によって被覆される。接着剤層34はパッド27の左側の端面33で終端している。ストリンガは、次に所定の場所に取り付けられて、接着剤34が硬化されて、ファスナ35が取り付けられてそれに予張力が発生させられる。
【0022】
図6に示されるように、圧縮荷重40が加えられたとき、この荷重は、表面30と32との間の右側の界面における法線反力σx右によってパネルからストリンガへ伝達される。図7に示されるように、引張荷重41が加えられたとき、この荷重は、表面31と33との間の左側の界面における法線反力σx左によってパネルからストリンガに伝達される。これらの界面における結合の欠如は、引張法線応力は前記界面を越えて伝達され得ないことを意味している。パッド27の基部と凹部の基部との間の界面36には、剪断反力は発生しない、というのもこの界面36も接着剤を有さないからである。
【0023】
応力集中及び端縁効果のどちらも、図4及び5で示される埋め込み構造形では誘発されず、従って継手の全体的強度は高いであろう。
【0024】
図5を見ると、表面30〜33と凹部の基部との間の角度は全て約90度である。代替実施例(不図示)では、これらの角度は90度より大又は90度未満であってよく、又は表面30〜33は平面ではなくてもよい。
【0025】
さらに別の実施例(不図示)では、接着剤層34が、凹部の基部と端壁と側壁とを被覆してもよい。この場合には、局部的な平面内全荷重の半分だけが、引張荷重を加えられた壁によって伝達される。他の半分は、圧縮荷重を加えられた壁によって負担されて、破損モードを誘発することはない。クラック伝播に対する損傷許容性及びフェイルセーフの観点では、クラックが壁の一つで発生したなら、クラックは接着剤から隣接する層へ飛び上がっておそらく組立体を通して伝播するだろう、というのも前記層はその中を通してクラックを伝播させるエネルギー量を少量しか必要としないからである。
【0026】
代わりに、パッドと凹部との間に共硬化結合を形成するために、ストリンガがパネルと共に硬化されてよい。共硬化結合は接着剤による結合よりも良好に機能する。クラックが、埋め込まれたパッド27と引張荷重を加えられた壁のパネルとの間の樹脂層で発生したなら、隣接する層が樹脂それ自身よりも強靭なので、クラックは同じ樹脂層を通して伝播するだろう。さらに、圧縮荷重を加えられた残りの壁は、他の壁の破損を償う、つまり破損された壁によって先に反作用を及ぼされた荷重のほとんど全量を支える。従って、埋め込まれたパッドは、フェイルセーフ要求の観点で冗長性を達成する。
【0027】
接着剤が界面36に沿って含まれるなら(又はストリンガとパネルとがこの界面に沿って共に硬化されることによって結合されるなら)、剪断応力が発生する。しかしながら、パッド27が、パネルの軸方向剛性に近似した軸方向剛性を有するように設計されているなら、この応力の成分は小さくまた無視され得る。
【0028】
代替の埋め込まれたパッドの外形が図8〜11に示される。
【0029】
図8の実施例では、ストリンガのパッドと凹部との間の左側界面50が、ウェブの先端53よりも右側に配置されている。滑らかな荷重の伝達を保証するため及び結合の分離に必要な強度を高めるために、フランジ51が、ストリンガのラン・アウトにおいてテーパ付けされた上表面52を有していることも注目される。
【0030】
図9の実施例では、ストリンガのパッドと凹部との間の左側界面60が、ウェブの先端よりも左側に位置決めされている。フランジ61が、ストリンガのラン・アウトにおいてテーパー付けされた上表面62を有していることも注目される。
【0031】
図10の実施例では、ストリンガのパッドと凹部との間の左側界面70がウェブの先端よりも左側に位置決めされている。フランジ71がストリンガのラン・アウトにおいてテーパー付けされた上表面72を有していること、及びストリンガの端面73がウェブの先端と同一線上にあることも注目される。
【0032】
図11の実施例では、ストリンガのパッドと凹部との間の左側界面80がウェブの先端よりも左側に位置決めされている。フランジ81がストリンガのラン・アウトにおいてテーパー付けされた上表面82を有していることも注目される。
【0033】
図12は、本発明のさらに別の実施例による複合構造体を示しており、前記複合構造体は、パネル84と、パネルの表面に結合されたストリンガ83とを具備している。ストリンガとパネルは図8〜11に示された外形に同様であるが、この場合にはストリンガはリブにボルト固定されており、前記リブは翼弦方向においてパネルの幅を横切って走っている(つまり図12の平面から出たり入ったりする)。リブはウェブ85及びフランジ86を具備している。ストリンガのパッド88及びリブのフランジ86は、ボルト87によってパネルにボルト固定されている。
【0034】
図13は、本発明のさらに別の実施例による複合構造体を示しており、前記複合構造体は、パネル90と、パネルの表面に結合されたストリンガ91とを具備している。図13は、ストリンガの一端のみを示す図4〜12とは対照的にストリンガの両端を示している。
【0035】
パネルの表面は、ストリンガの右側端93に係合する右側端壁92と、ストリンガの左側端に係合する左側端壁94とを備えて形成されている。図13の実施例ではストリンガの基部が完全に平坦であることが注目される。換言すると、ストリンガの両端において基部から突出するパッドはないということである。壁92及び93は、前述したように凹部を形成することによって、又は突出する部材をストリンガの両端におけるパネルに固定することによってパネルの表面に備えられる。
【0036】
圧縮荷重が加えられたとき、この荷重は、右側界面92及び93における法線反力によってパネルからストリンガに伝達され、また引張荷重が加えられたとき、この荷重は左側界面94及び95における法線反力によってパネルからストリンガに伝達される。
【0037】
本発明は、一つ以上の好適な実施例を参照して上で説明されたが、様々な変更又は修正が特許請求の範囲で規定された本発明の範囲から逸脱することなく為されることが理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルと、前記パネルの表面に結合されたストリンガとを具備する複合構造体に関するものであり、前記ストリンガは、端面と、前記端面から遠ざかるようにストリンガに沿って縦方向に延びる一対の側面とを有するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、例えば航空機の翼又は胴体の外板を構成するパネル1のラン・アウト(run-out)部を示している。パネルは、該パネルの長さに沿って走る一連の細長いストリンガによって補強されており、前記ストリンガの一つが図1において断面で示されている。ストリンガ2は、パネルに対して垂直に延びるウェブ3と、パネル1に係合しているフランジ4とを具備している。
【0003】
ストリンガ2は図示されたように終端されている。ウェブ3は、横の曲げ剛性及び軸方向剛性を次第に増加させること及び局部的な応力集中を軽減することによって、外板からストリンガへの荷重の伝達を促進するために、終端の近くでテーパーを付けられている。さらにフランジ4は、スティフナの先端をより従順にして、パネルが曲げられたとき追随可能にするためにウェブの端を越えて延びている。
【0004】
層間剥離又は結合部の分離を防ぐために予張力発生ボルト5が使用される。図2に示されるように、予張力荷重6がパネル1の部分7及びフランジ4を圧縮状態にさせる。しかしながら、圧縮された領域7と、圧縮されていないフランジ4の先端9との間に端領域8がある。従ってボルト5は、フランジ4の先端9がパネル1に出会う界面10における破綻の開始を遅らせることができない。
【0005】
改良されたデザインが図3に示されている。この場合、厚さを貫く圧縮領域をフランジの先端まで移して先端における剥離破損モードを抑えるために座金11が使用される。しかしながら、図3の解決法は先端における滑り破損モードを抑えない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様は、パネルと、前記パネルの表面に結合されたストリンガにして、端面、及びストリンガの縦方向に沿って前記端面から遠ざかるように延びる一対の側面を有するストリンガとを具備する複合構造体であって、パネルの表面が、ストリンガの端面に係合する第1壁と、ストリンガの他の部分に係合する第2壁とを有するように形成されている複合構造体を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の複合構造体における力の伝達方法であって、
パネルの表面に形成された第1壁とストリンガの端面との間の法線反力によって、パネルからストリンガへ圧縮力を伝達する段階と、
パネルの表面に形成された第2壁とストリンガの他の表面との間の法線反力によって、パネルからストリンガへ引張力を伝達する段階と、を含む力の伝達方法を提供する。
【0008】
ストリンガとパネルとの間の結合が、それらの部品の間に接着剤の層を塗布することによって、又はそれらの部品を共に硬化させることによって、又は他の任意の方法で前記部品を共に結合することによって形成される。
【0009】
前記パネルは、単一部片から形成されるか、又は材料の二以上の層から形成されてよい。この場合、各層は、エポキシ樹脂基材で含浸された炭素繊維のような複合材料から典型的に形成される。
【0010】
一実施例では、ストリンガは、第1端面の反対側のストリンガの端部に第2端面を有しており、パネルに形成された第2壁がストリンガの第2端面に係合する。
【0011】
他の実施例では、ストリンガは、パネルの表面に結合された基部と、前記基部から突出してパネルの凹部に埋め込まれるパッドとを具備している。パッドは、凹部の第1端壁に係合する第1端面と、凹部の第2端壁に係合する第2端面とを有している。この場合、凹部は、パネル全体の幅を横切って延びてよい(及び従って側壁を有さない)が、より好適には、パッドは、凹部の第1側壁に係合する第1側面と、凹部の第2側壁に係合する第2側面とを有している。パッドは、凹部に結合されてよいが、より好適には、ストリンガの基部とパネルの表面との間の結合はパッドにおいて終端をなしている。この場合、パッドを凹部内に固定するために(ファスナーのような)他の手段が採用されてよい。
【0012】
前記壁は、ストリンガの幅を鋭角に横切って延びてよい、又は凹状若しくは凸状に形成されてよい。しかしながらより好適には、パネルの表面に形成された第1及び第2壁は、ほぼ反対向きに配向されて、ストリンガの長さにほぼ垂直にストリンガの幅を横切って延びる。この構成は、法線反力がパネルとストリンガとの間で効率的に伝達されることを可能にする。
【0013】
本発明の実施例が、添付図面を参照してここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の従来型のストリンガのラン・アウト(run-out)の縦断面図である。
【図2】図1のストリンガのラン・アウトの部分拡大図であって、予張力荷重の効果を図解する図である。
【図3】第2の従来型のストリンガのラン・アウトの縦断面図である。
【図4】本発明の第1実施例による複合構造体の斜視図である。
【図5】図4に示されるストリンガの一つのラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図6】図4に示されるストリンガの一つのラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図7】図4に示されるストリンガの一つのラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図8】ストリンガの様々な代替実施例のラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図9】ストリンガの様々な代替実施例のラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図10】ストリンガの様々な代替実施例のラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図11】ストリンガの様々な代替実施例のラン・アウト部を通る縦断面図である。
【図12】本発明のさらに別の実施例による複合構造体の縦断面図である。
【図13】本発明のさらに別の実施例による複合構造体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図4は、例えば航空機の翼又は胴体の外板を形成する複合構造体の一部分を示している。前記構造体は、パネル20と、前記パネル20の表面に結合された一連のストリンガ21〜23とを具備している。各ストリンガは一対の端部(各端部は「ストリンガのラン・アウト(run-out)」として従来知られている)及びストリンガのラン・アウト(run-out)の間に縦方向に延びる一対の側面を有している。航空機の翼の場合には、ストリンガは翼の根元からその先端へ向けて翼幅方向に走っている。
【0016】
図4は、複合構造体の小部分だけを示している。図4に示される部分はストリンガ22のラン・アウト、及びストリンガ21及び23の中間区域(即ちストリンガ21及び23のラン・アウトは示されない)が示されている。各ストリンガは、パネル20に対して垂直に延びるウェブ24と、一対のフランジ25及び26とを具備しており、前記フランジ25及び26はパネルと共平面にある。
【0017】
ウェブ24は、横の曲げ剛性及び軸方向剛性を次第に増加させること、並びに局部的応力集中を軽減することによって、外板からストリンガへの荷重の伝達を促進するためにラン・アウトにおいてテーパー付けされている。
【0018】
パッド27が、ストリンガ22の基部から下方に突出してウェブ24及びフランジ25及び26の端を越えて延びている。パッド27は、パネルの凹部に埋め込まれていて、前記凹部は図5において縦断面で示されている。凹部は右側の端壁30と左側の端壁31とを有している。端壁30及び31は、ほぼ反対向きに方向付けられていて、ストリンガの長さに対してほぼ垂直に、ストリンガの幅を横切って延びている。端壁30は、パッド27の右側端面32に係合し、端壁31はパッド27の左側端面33に係合している。前記凹部は、ストリンガの長さに平行に走る側壁も有しており、前記側壁は図4で示される界面37及び38においてパッド27のそれぞれの側壁に係合する。
【0019】
パネル20は、“プリプレグ”(エポキシ樹脂基材で含浸された一軸炭素繊維の層)のスタックを積層し、次いでオートクレーブ内でスタックを硬化させることによって製造される。前記凹部は、パネルの表面に(例えば酸を所望の領域のパネルに塗布することによって)切り込まれることが可能である。代わりに、凹部が積層工程の間に形成されてもよい。つまり、プリプレグの各層が自動テープ敷設(ATL)機によって敷かれて、ATL機が一連の層を凹部の基部まで敷き、次いで凹部の領域で連続する層を終端させる。
【0020】
ストリンガ22は、二つのL形プリフォームを積層し、次にL形プリフォームをオートクレーブ内で背中合わせに配置して共に硬化させることによって製造される。各L形プリフォームはプリプレグのスタックをそれぞれのマンドレルに敷くことによって形成されたものである。
【0021】
ストリンガ22の基部は、次に接着剤層34によって被覆される。接着剤層34はパッド27の左側の端面33で終端している。ストリンガは、次に所定の場所に取り付けられて、接着剤34が硬化されて、ファスナ35が取り付けられてそれに予張力が発生させられる。
【0022】
図6に示されるように、圧縮荷重40が加えられたとき、この荷重は、表面30と32との間の右側の界面における法線反力σx右によってパネルからストリンガへ伝達される。図7に示されるように、引張荷重41が加えられたとき、この荷重は、表面31と33との間の左側の界面における法線反力σx左によってパネルからストリンガに伝達される。これらの界面における結合の欠如は、引張法線応力は前記界面を越えて伝達され得ないことを意味している。パッド27の基部と凹部の基部との間の界面36には、剪断反力は発生しない、というのもこの界面36も接着剤を有さないからである。
【0023】
応力集中及び端縁効果のどちらも、図4及び5で示される埋め込み構造形では誘発されず、従って継手の全体的強度は高いであろう。
【0024】
図5を見ると、表面30〜33と凹部の基部との間の角度は全て約90度である。代替実施例(不図示)では、これらの角度は90度より大又は90度未満であってよく、又は表面30〜33は平面ではなくてもよい。
【0025】
さらに別の実施例(不図示)では、接着剤層34が、凹部の基部と端壁と側壁とを被覆してもよい。この場合には、局部的な平面内全荷重の半分だけが、引張荷重を加えられた壁によって伝達される。他の半分は、圧縮荷重を加えられた壁によって負担されて、破損モードを誘発することはない。クラック伝播に対する損傷許容性及びフェイルセーフの観点では、クラックが壁の一つで発生したなら、クラックは接着剤から隣接する層へ飛び上がっておそらく組立体を通して伝播するだろう、というのも前記層はその中を通してクラックを伝播させるエネルギー量を少量しか必要としないからである。
【0026】
代わりに、パッドと凹部との間に共硬化結合を形成するために、ストリンガがパネルと共に硬化されてよい。共硬化結合は接着剤による結合よりも良好に機能する。クラックが、埋め込まれたパッド27と引張荷重を加えられた壁のパネルとの間の樹脂層で発生したなら、隣接する層が樹脂それ自身よりも強靭なので、クラックは同じ樹脂層を通して伝播するだろう。さらに、圧縮荷重を加えられた残りの壁は、他の壁の破損を償う、つまり破損された壁によって先に反作用を及ぼされた荷重のほとんど全量を支える。従って、埋め込まれたパッドは、フェイルセーフ要求の観点で冗長性を達成する。
【0027】
接着剤が界面36に沿って含まれるなら(又はストリンガとパネルとがこの界面に沿って共に硬化されることによって結合されるなら)、剪断応力が発生する。しかしながら、パッド27が、パネルの軸方向剛性に近似した軸方向剛性を有するように設計されているなら、この応力の成分は小さくまた無視され得る。
【0028】
代替の埋め込まれたパッドの外形が図8〜11に示される。
【0029】
図8の実施例では、ストリンガのパッドと凹部との間の左側界面50が、ウェブの先端53よりも右側に配置されている。滑らかな荷重の伝達を保証するため及び結合の分離に必要な強度を高めるために、フランジ51が、ストリンガのラン・アウトにおいてテーパ付けされた上表面52を有していることも注目される。
【0030】
図9の実施例では、ストリンガのパッドと凹部との間の左側界面60が、ウェブの先端よりも左側に位置決めされている。フランジ61が、ストリンガのラン・アウトにおいてテーパー付けされた上表面62を有していることも注目される。
【0031】
図10の実施例では、ストリンガのパッドと凹部との間の左側界面70がウェブの先端よりも左側に位置決めされている。フランジ71がストリンガのラン・アウトにおいてテーパー付けされた上表面72を有していること、及びストリンガの端面73がウェブの先端と同一線上にあることも注目される。
【0032】
図11の実施例では、ストリンガのパッドと凹部との間の左側界面80がウェブの先端よりも左側に位置決めされている。フランジ81がストリンガのラン・アウトにおいてテーパー付けされた上表面82を有していることも注目される。
【0033】
図12は、本発明のさらに別の実施例による複合構造体を示しており、前記複合構造体は、パネル84と、パネルの表面に結合されたストリンガ83とを具備している。ストリンガとパネルは図8〜11に示された外形に同様であるが、この場合にはストリンガはリブにボルト固定されており、前記リブは翼弦方向においてパネルの幅を横切って走っている(つまり図12の平面から出たり入ったりする)。リブはウェブ85及びフランジ86を具備している。ストリンガのパッド88及びリブのフランジ86は、ボルト87によってパネルにボルト固定されている。
【0034】
図13は、本発明のさらに別の実施例による複合構造体を示しており、前記複合構造体は、パネル90と、パネルの表面に結合されたストリンガ91とを具備している。図13は、ストリンガの一端のみを示す図4〜12とは対照的にストリンガの両端を示している。
【0035】
パネルの表面は、ストリンガの右側端93に係合する右側端壁92と、ストリンガの左側端に係合する左側端壁94とを備えて形成されている。図13の実施例ではストリンガの基部が完全に平坦であることが注目される。換言すると、ストリンガの両端において基部から突出するパッドはないということである。壁92及び93は、前述したように凹部を形成することによって、又は突出する部材をストリンガの両端におけるパネルに固定することによってパネルの表面に備えられる。
【0036】
圧縮荷重が加えられたとき、この荷重は、右側界面92及び93における法線反力によってパネルからストリンガに伝達され、また引張荷重が加えられたとき、この荷重は左側界面94及び95における法線反力によってパネルからストリンガに伝達される。
【0037】
本発明は、一つ以上の好適な実施例を参照して上で説明されたが、様々な変更又は修正が特許請求の範囲で規定された本発明の範囲から逸脱することなく為されることが理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルと、
前記パネルの表面に結合されたストリンガにして、端面と、該ストリンガの縦方向に沿って前記端面から遠ざかるように延びる一対の側面とを有するストリンガと、を具備する複合構造体であって、
前記パネルの表面が、前記ストリンガの前記端面に係合する第1壁と、前記ストリンガの他の部分に係合する第2壁とを有するように形成されている、複合構造体。
【請求項2】
前記ストリンガが、前記パネルの前記表面に結合された基部と、前記基部から突出して前記パネルの凹部に埋め込まれるパッドとを具備し、
前記パッドが、前記凹部の第1端壁に係合する第1端面と、前記凹部の第2端壁に係合する第2端面とを有する、請求項1に記載の複合構造体。
【請求項3】
前記パッドが、前記凹部の第1側壁に係合する第1側面と、前記凹部の第2側壁に係合する第2側面とを有する、請求項2に記載の複合構造体。
【請求項4】
前記ストリンガの前記基部と前記パネルの前記表面との間の結合が前記パッドにおいて終端をなしている、請求項2又は3に記載の複合構造体。
【請求項5】
前記ストリンガが、前記第1端面の反対側の該ストリンガの端部に第2端面を有しており、前記パネルに形成された前記第2壁が前記ストリンガの前記第2端面に係合する、請求項1に記載の複合構造体。
【請求項6】
前記パネルの前記表面に形成された前記第1壁及び前記第2壁が、ほぼ反対向きに配向されている、先行請求項のいずれか一項に記載の複合構造体。
【請求項7】
前記パネルの前記表面に形成された前記第1壁及び前記第2壁が、前記ストリンガの長さに対してほぼ垂直に、前記ストリンガの幅を横切って延びている、先行請求項のいずれか一項に記載の複合構造体。
【請求項8】
先行請求項のいずれか一項に記載の複合構造体を具備する航空機の外板。
【請求項9】
先行請求項のいずれか一項に記載の複合構造体における力の伝達方法であって、
前記パネルの前記表面に形成された前記第1壁と前記ストリンガの前記端面との間の法線反力によって、前記パネルから前記ストリンガへ圧縮力を伝達する段階と、
前記パネルの前記表面に形成された前記第2壁と前記ストリンガの他の表面との間の法線反力によって、前記パネルから前記ストリンガへ引張力を伝達する段階と、を含む力の伝達方法。
【請求項10】
前記パネルの前記表面に形成された前記第1壁と前記ストリンガの前記端面との間で前記パネルから前記ストリンガへ引張力がほとんど伝達されず、前記パネルの前記表面に形成された前記第2壁と前記ストリンガの前記他の表面との間で前記パネルから前記ストリンガへ圧縮力がほとんど伝達されない、請求項9に記載の力の伝達方法。
【請求項1】
パネルと、
前記パネルの表面に結合されたストリンガにして、端面と、該ストリンガの縦方向に沿って前記端面から遠ざかるように延びる一対の側面とを有するストリンガと、を具備する複合構造体であって、
前記パネルの表面が、前記ストリンガの前記端面に係合する第1壁と、前記ストリンガの他の部分に係合する第2壁とを有するように形成されている、複合構造体。
【請求項2】
前記ストリンガが、前記パネルの前記表面に結合された基部と、前記基部から突出して前記パネルの凹部に埋め込まれるパッドとを具備し、
前記パッドが、前記凹部の第1端壁に係合する第1端面と、前記凹部の第2端壁に係合する第2端面とを有する、請求項1に記載の複合構造体。
【請求項3】
前記パッドが、前記凹部の第1側壁に係合する第1側面と、前記凹部の第2側壁に係合する第2側面とを有する、請求項2に記載の複合構造体。
【請求項4】
前記ストリンガの前記基部と前記パネルの前記表面との間の結合が前記パッドにおいて終端をなしている、請求項2又は3に記載の複合構造体。
【請求項5】
前記ストリンガが、前記第1端面の反対側の該ストリンガの端部に第2端面を有しており、前記パネルに形成された前記第2壁が前記ストリンガの前記第2端面に係合する、請求項1に記載の複合構造体。
【請求項6】
前記パネルの前記表面に形成された前記第1壁及び前記第2壁が、ほぼ反対向きに配向されている、先行請求項のいずれか一項に記載の複合構造体。
【請求項7】
前記パネルの前記表面に形成された前記第1壁及び前記第2壁が、前記ストリンガの長さに対してほぼ垂直に、前記ストリンガの幅を横切って延びている、先行請求項のいずれか一項に記載の複合構造体。
【請求項8】
先行請求項のいずれか一項に記載の複合構造体を具備する航空機の外板。
【請求項9】
先行請求項のいずれか一項に記載の複合構造体における力の伝達方法であって、
前記パネルの前記表面に形成された前記第1壁と前記ストリンガの前記端面との間の法線反力によって、前記パネルから前記ストリンガへ圧縮力を伝達する段階と、
前記パネルの前記表面に形成された前記第2壁と前記ストリンガの他の表面との間の法線反力によって、前記パネルから前記ストリンガへ引張力を伝達する段階と、を含む力の伝達方法。
【請求項10】
前記パネルの前記表面に形成された前記第1壁と前記ストリンガの前記端面との間で前記パネルから前記ストリンガへ引張力がほとんど伝達されず、前記パネルの前記表面に形成された前記第2壁と前記ストリンガの前記他の表面との間で前記パネルから前記ストリンガへ圧縮力がほとんど伝達されない、請求項9に記載の力の伝達方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−525979(P2010−525979A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504859(P2010−504859)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050260
【国際公開番号】WO2008/132498
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(508305926)エアバス ユーケー リミティド (38)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050260
【国際公開番号】WO2008/132498
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(508305926)エアバス ユーケー リミティド (38)
【Fターム(参考)】
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