説明

パネルの取付構造

【課題】パネルを胴縁の延設方向に沿って任意の位置において着脱可能に取り付けることができると共に、あらゆるサイズのボルト・ナットを用いた場合に対応して円滑な取り付けが可能とできるパネルの取付構造を提供する。
【解決手段】胴縁1に設けられ、開口縁が内方に突出された取付溝11に取付金具3の、先端が膨張された挿入部が長さ方向αに摺動自在に取り付けられる。胴縁1の取付溝11を用いて取付用ボルト41及び取付用ナットによりパネル2を直接取り付けず、取付金具3を介して取り付けを行うので、あらゆるサイズのボルト・ナットを用いた場合に対応して円滑な取り付けが可能とできる。また取付金具3の挿入部が取付溝11の内面と略全体で沿うようになされ、挿入された状態で安定するようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の下地材である胴縁に、外装パネル等のパネルを取り付けるパネルの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パネルの取付用の下地材である胴縁にパネルを着脱可能に取り付けるには従来様々な方法が用いられてきているが、胴縁とパネルとに孔を明け、その双方にボルトを挿通してボルト・ナットにより締結するなどの方法では、孔位置が不一致な場合に取り付けが困難になる等、施工現場における対応を柔軟に行うことができない場合がある。
【0003】
そこで、胴縁の延設方向に沿って任意の位置において着脱可能に取り付けることができる取付構造として、施工現場における対応を柔軟なものとするために、例えば互いに直角の外平面を有する四つの長尺の面板体と、前記各面板体の内側に形成されボルトの頭部を嵌込むための嵌込み溝部および前記各面板体に形成され前記嵌込み溝部に嵌込まれたボルトの軸部を前記外平面から突出させるための貫通溝部とを具え、前記各面板体と嵌込み溝部および貫通溝部とは一体品に形成されており、且つ前記各溝部は前記各面板体のほぼ全長に亘って設けられているとともに端末が少なくとも一方の端面に開放している建築部材取付用ブラケットと、該ブラケットの嵌込み溝部に挿入した取付用ボルトを用いた壁パネルの取付構造が開示されている(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−197540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来のパネルの取付構造では、ボルトの頭部又はナットを嵌込み溝部に挿入し、ボルト止めを行うものであることから、ボルトの頭部又はナットの大きさが異なるものとなると、嵌込み溝部への挿入自体を行うことができなかったり、また挿入されたボルトやナットがぐらつく不安定な状態となって、ボルトをパネルの取付孔に挿入させたり、ナットに螺着させるのが困難となって施工性が低下する恐れのあるものであった。
【0006】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、パネルを胴縁の延設方向に沿って任意の位置において着脱可能に取り付けることができると共に、あらゆるサイズのボルト・ナットを用いた場合に対応して円滑な取り付けが可能とできるパネルの取付構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わるパネルの取付構造は、開口縁が内方に突出された取付溝が延設方向に沿って形成された胴縁と、取付用ボルトが挿通可能な取付孔が穿設されたパネルと、該パネルと前記胴縁との間に介在する取付金具とを備え、該取付金具は前記取付溝から脱落することなく且つ取付溝内で摺動可能に挿入される挿入部と、ボルトが挿入可能なボルト孔が設けられた平板状の取付部とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係わるパネルの取付構造によれば、取付金具に備えられた挿入部が取付溝内で摺動可能となされていることで、取付金具が胴縁の延設方向に沿って摺動可能となされていることで、パネルを胴縁の延設方向に沿って任意の位置において着脱可能に取り付けることができると共に、ボルトを取付金具に設けられた取付部のボルト孔に挿通できることから、あらゆるサイズのボルト・ナットを用いた場合に対応して円滑な取り付けが可能とできる。
【0009】
また前記挿入部は、断面が前記取付溝の内面と略全体に亘って沿うようになされていれば、胴縁に対して取付金具がぐらつくことがなくなり、更に円滑な取り付けを行うことができるようになり好ましい。
【0010】
また前記胴縁は、断面矩形であって、該矩形を形成する一面に支柱や壁面等の構造物への取付用のボルトの頭部又はナットが挿入可能な構造物取付用溝が設けられ、該構造物取付用溝が形成された一面と直交する二面の、少なくとも一面に前記取付溝が設けられていれば、取付溝に挿入された取付金具の取付部がパネルに対して平行とすることが容易にでき、パネルと取付部とのボルト止めをより円滑なものとでき好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わるパネルの取付構造によれば、取付金具に備えられた挿入部が取付溝内で摺動可能となされていることで、取付金具が胴縁の延設方向に沿って摺動可能となされていることで、パネルを胴縁の延設方向に沿って任意の位置において着脱可能に取り付けることができると共に、ボルトを取付金具に設けられた取付部のボルト孔に挿通できることから、あらゆるサイズのボルト・ナットを用いた場合に対応して円滑な取り付けが可能とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0013】
図1〜図3は、本発明に係わるパネルの取付構造の、実施の一形態を示すもので、図1は胴縁を示す斜視図である。構造物への取り付けの下地材となる胴縁1は、断面矩形の中空体であって、アルミニウム合金押出形材により形成されている。胴縁1の断面矩形を形成する一面13には、支柱や壁面等の構造物への取付用のボルトの頭部又はナットが脱離することなく摺動可能に挿入される構造物取付用溝12が設けられ、構造物取付用溝12が形成された一面13と直交する二面14に、パネルの取り付けに用いられる取付溝11が設けられている。取付溝11及び構造物取付用溝12は、開口縁が内方に突出され、胴縁1の延設方向に沿って形成されたものである。
【0014】
図2は、パネルの取り付けに用いられる取付金具を示す斜視図である。取付金具3は、平板状の本体34の下面から下方に突出され、下端付近が膨出された挿入部31と、本体34と直交する方向に上面から上方に一体に形成された平板状の取付部32とが備えられ、取付部32には取付用ボルトが挿通可能な取付孔33が穿設されている。取付部32の上端からは、本体34と略平行となると共に先端351が下方に折り曲げられている鍵状部35が設けられ、鍵状部35の先端351と、本体34上面に設けられた突起部37とが相対向されて蟻溝状のナット溝36が形成されている。また本体34はナット溝36から更に外側に張り出して設けられると共に、ナット溝36の外側部分の本体34上面にビスねじ込み溝38が形成されている。また取付金具3は、長さ方向αに同一の断面形状となされていることで、アルミニウム押出形材により形成し、形材を適宜の長さに切断することで、容易に適宜の長さ方向αの長さである取付金具3とできるようになされている。
【0015】
図3は、図1及び図2に示した胴縁及び取付金具を用いてパネルを取り付ける状態を示す斜視図である。胴縁1は構造物への取り付けの下地材となるものであり、壁面や支柱等に構造物取付用溝12を用いてボルト・ナットにより取り付けられる。胴縁1の取付溝11には、取付金具3の挿入部31が長さ方向αに摺動されて挿入されており、取付金具3は胴縁1の取付溝11内で長さ方向αに任意の位置とすることができるようになされている。また取付金具3に設けられた挿入部31は、取付溝11の内面と略全体に亘って沿うようになされ、取付溝11内で挿入部31ががたつくのを防いで、胴縁1に対して取付金具3ががたつくのを防止するようになされている。
【0016】
この取付金具3を介して、パネル2が胴縁1に取り付けられる。パネル2は、防音壁の外面に設けられる外装パネルであり、亜鉛鉄板等の金属板が波板状に屈曲されて形成されたものであり、上下方向の両端に、取付用ボルトを挿通可能な取付孔21が設けられている。取付孔21には、取付用ボルト41が挿通され、取付用ボルト41とパネル2との間にはワッシャーWが介在されるようになされる。取付孔21に挿通された取付用ボルト41は、更に取付金具3の取付部32に設けられたボルト孔33に挿通され、ナット溝36内に挿入された取付用ナット(本図においては図示せず)に螺着されることで、胴縁1とパネル2との間に取付金具3が介在されて、パネル2が取り付けられる。取付金具3は、取付部32が本体34に対して直交するようになされていると共に、挿入部31が構造物取付用溝12と直交する面に設けられた取付溝11に挿入されていることで、平板状の取付部32がパネル2面と平行となるようになされており、パネル2に設けられた取付孔21とボルト孔33とが平面において重なるようになされることで、ボルト・ナットによるパネル2の取り付けが容易となるようになされている。
【0017】
図4は、図2に示した取付金具3への、取付用ナット42の取り付けの一例を示す説明図である。まず(a)に示す如く、六角ナットである取付用ナット42を取付金具3のナット溝36に挿入する。ここでナット溝36の上下方向の幅hは取付用ナット42の平行部分の幅より僅かに大きくなされることで、ナット溝36内に挿入された取付用ナット42が、取付用ボルト41が螺着された際にナット溝36内で共回りしないようになされている。取付金具3の長さ方向αの長さは、取付用ナット42の六角を形成する頂点部分間の幅より長いものとなされている。
【0018】
次に(b)において、取付用ナット42はナット溝36に挿入され、取付用ナット42のねじ孔が取付金具3のボルト孔33の位置と合致されると共に、挿入された両端より外側の鍵状部35の先端351及び突起部37が内側に折り曲げられることでナット溝36内で取付用ナット42がかしめられて、取付用ナット42が取付金具3のナット溝36から長さ方向αにも動かないようになされている。かかるナット溝36内における取付用ナット42のかしめは、施工現場でおこなってもよいが、出荷前に工場等で行っておけば、施工現場において、即座にボルト孔33に取付用ナット42のねじ孔が合致された状態で使用することができるようになり好ましい。
【0019】
図5は、図1〜図3に示した実施形態によりパネルが胴縁に取り付けられた状態を示す側面図である。胴縁1は、構造物取付用溝12に頭部が挿入された構造物への取付用のボルト51が板状の構造物Sに挿通され、構造物の取付用のナット52が螺着されることで構造物Sに取り付けられている。胴縁1の、構造物取付用溝12が設けられた一面13は構造物Sに当接されており、一面13と直交する二面に各々設けられた取付溝11の内、下方の取付溝11に取付金具3の挿入部31が挿入されている。取付溝11の断面は開口縁が内方に突出され、開口部分が奧側部分より幅狭となされていることで蟻溝状となされ、挿入部31は、先端部分の幅が拡張されると共に、断面における外面が取付溝11内面と略全体に亘って沿うようになされていることで、挿入部31が取付溝11内の長さ方向において摺動自在に挿入されると共に、取付溝11内でがたつきにくくなされ、取付用ボルト41を螺着する際に、取付金具3の位置が安定されて螺着が容易となされる。また適宜の時点でビスねじ込み溝38を用いて本体34と胴縁1とをビスBによりビス止めすることで、取付金具3の胴縁1に対する取り付け強度を更に高めるようにしてもよい。パネル2に挿通された取付ボルト41は、取付金具3のナット溝36内にかしめられた取付用ナット42に螺着され、パネル2と取付用ボルト41の頭部との間にはワッシャーWが挟み込まれている。
【0020】
図6は、本発明に係わるパネルの取付構造により、パネルを構造物に取り付けた状態の他の例を示す側面図である。まず(a)において、構造物は高架道路であり、高架道路本体S3から外側に張り出して断面H型の支柱S1が立設され、支柱S1の下端付近には、内側方向へ斜め下方に向かって断面L字型の折れ曲がり部S2が形成されている。かかる支柱S1の外側フランジS11、及び折れ曲がり部S2のフランジ部S21に胴縁1がボルト止めされ、胴縁1及び取付金具3を用いて外装パネルであるパネル2が取り付けられることで、高架道路本体S3の側面及び斜め下面を外装パネルにより覆って美観を高めるようになされている。
【0021】
(b)は折れ曲がり部S2付近の詳細を示す側面図である。胴縁1の構造物取付用溝12が支柱S1の外側フランジS11及び折れ曲がり部S2のフランジ部S21に当接して取り付けられることで、取付溝11に挿入された取付金具3の取付部32がパネル2に対して平行とすることが容易にでき、パネル2と取付部32との取付用ボルト41と取付用ナット42とによるボルト止めをより円滑なものとできるようになされている。また取付溝11が、構造物取付用溝12と直交する二面にそれぞれ設けられていることで、各々の取付溝11に取付金具3が挿入可能となり、上下いずれの挿入溝11を用いることができることで、上下方向におけるパネル2の取付位置に関する自由度が高められている。更に取付溝11が構造物取付用溝12と直交する面に設けられていることで、取付金具3が介在しても胴縁1とパネル2との間隔が開くことがなく、従来と同様の位置関係にて胴縁1とパネル2とを取り付けることが可能となり、建築限界等の制約を回避するのが容易なものとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係わるパネルの取付構造に用いられる胴縁の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係わるパネルの取付構造に用いられる取付金具の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係わるパネルの取付構造の、実施の一形態を示す斜視図である。
【図4】取付金具への取付用ナットの取り付けを示す斜視図である。
【図5】本発明に係わるパネルの取付構造の、構造物への取り付け状態の一例を示す側面図である。
【図6】本発明に係わるパネルの取付構造の、構造物への取り付け状態の他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 胴縁
11 取付溝
12 構造物取付用溝
13 構造物取付用溝が設けられた一面
14 構造物取付用溝が設けられた一面と直交する二面
2 パネル
21 取付孔
3 取付金具
31 挿入部
32 取付部
33 ボルト孔
S 構造物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口縁が内方に突出された取付溝が延設方向に沿って形成された胴縁と、取付用ボルトが挿通可能な取付孔が穿設されたパネルと、該パネルと前記胴縁との間に介在する取付金具とを備え、該取付金具は前記取付溝から脱落することなく且つ取付溝内で摺動可能に挿入される挿入部と、ボルトが挿入可能なボルト孔が設けられた平板状の取付部とを備えていることを特徴とするパネルの取付構造。
【請求項2】
前記挿入部は、断面が前記取付溝の内面と略全体に亘って沿うようになされていることを特徴とする請求項1に記載のパネルの取付構造。
【請求項3】
前記胴縁は、断面矩形であって、該矩形を形成する一面に支柱や壁面等の構造物への取付用のボルトの頭部又はナットが挿入可能な構造物取付用溝が設けられ、該構造物取付用溝が形成された一面と直交する二面の、少なくとも一面に前記取付溝が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパネルの取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−50893(P2008−50893A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230017(P2006−230017)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】