説明

パネルの成形方法

【課題】パネル本体の後面に枠状部を一体に設けた合成樹脂製パネルであって、前面側に向って凸となるように湾曲したパネルにおいて、凸の湾曲の程度が許容範囲内である、形状精度の良好なパネルを提供する。
【解決手段】固定型2と、該固定型に型閉めされる第1の可動型11とを用いて前記パネル本体を射出成形するパネル本体21の成形工程と、該第1の可動型11を型開きし、枠状部成形用キャビティ13を有した第2の可動型12を該固定型に対し型閉めし、枠状部22を射出成形する枠状部成形工程とを有するパネルの成形方法。第1の可動型11を型開きしたときに、パネル本体21の前記一方の面の周縁部が該固定型2のキャビティ面3aから離反する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル本体の一方の面の周縁に枠状部を一体に設けたパネルを成形する方法に係り、特に自動車等の車両のルーフや窓の透明パネル状部材として用いるのに好適なパネルの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の樹脂製窓プレートとして、透明な樹脂パネルの周縁に不透明な樹脂で縁取りを形成した二色成形品よりなるものを成形する方法が、特開2008−51184に記載されている。
【0003】
この特開2008−51184では、固定型と第1の可動型とを用いてパネル状の第1の成形体(パネル本体)を射出成形し、次いで、第1の可動型を型開きして第2の可動型に交換し、第2の可動型を固定型に型締めし、枠状の第2の成形体(枠状部)を射出成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−51184
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、固定型と第1の可動型とによってパネル本体を射出成形した後、第1の可動型を型開きしたときに、パネル本体の全体が固定型のキャビティ面に付着したままであると、第1の可動型を第2の可動型に交換している間におけるパネル本体の収縮が固定型によって拘束され、大きな残留応力がパネル本体に生じる。そして、この残留応力に起因して製品パネルに反りや外観上の歪みが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、パネル本体と枠状部とが一体とされたパネルを、その反りが防止(抑制を含む。)するように射出成形する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のパネルの成形方法は、一方の面側が凸となるように湾曲した合成樹脂材料製パネル本体と、該パネル本体の他方の面の周縁に該パネル本体と一体に設けられた合成樹脂材料製枠状部とを有したパネルを射出成形する方法であって、固定型と、該固定型に型閉めされる第1の可動型とを用いて前記パネル本体を射出成形するパネル本体成形工程と、該第1の可動型を型開きし、枠状部成形用キャビティを有した第2の可動型を該固定型に対し型閉めし、前記枠状部を射出成形する枠状部成形工程とを有するパネルの成形方法において、該第1の可動型を型開きしたときに、パネル本体の前記一方の面の周縁部が該固定型のキャビティ面から離反することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のパネルの成形方法は、請求項1において、前記第1の可動型を型開きしたときに、パネル本体の一方の面の15%以上の面積にわたって周縁部が固定型のキャビティ面から離反することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のパネルの成形方法は、請求項1又は2において、前記第1の可動型を型開きした状態にあるときに、キャビティ内においてパネル本体が収縮し、パネル本体の端面が該固定型のキャビティ面の側面から離反することを特徴とするものである。
【0010】
請求項4のパネルの成形方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、第2の可動型を型閉めするときに第2の可動型でパネル本体の周縁部を押すことによりパネル本体を固定型のキャビティ面に押し付けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパネルの成形方法にあっては、固定型と第1の可動型とによってパネル本体を射出成形した後、第1の可動型を型開きする。本発明では、このように第1の可動型を型開きした状態にあるときに、成形されたパネル本体の周縁が固定型のキャビティ面から離反する。このため、この型開きしている間にパネル本体が、固定型からそれ程拘束されることなく収縮するようになり、パネル本体の残留応力が小さなものとなる。この際、パネル本体の面の15%以上の面積にわたってパネル本体の周縁が固定型キャビティ面から離反することにより、パネル本体の残留応力が極めて小さなものとなる。その後、このパネル本体を保持した固定型に対し、第2の可動型を型閉めし、パネル本体の他面側に一体に連なるように枠状部を射出成形する。
【0012】
なお、上記のように第1の可動型を型開きした状態にあるときにパネル本体が収縮した場合、パネル本体の端面が固定型のキャビティ面の側面から離反することが好ましい。このように端面がキャビティ面の側面から離反した状態のパネル本体に対し、第2の可動型を型閉めして枠状部を射出成形した場合、枠状部成形後に第2の可動型を型開きしてパネルをキャビティから脱型するときに、パネルの端面が固定型キャビティ面の側面から拘束されていないので、パネルをスムーズに脱型することができる。
【0013】
本発明では、第2の可動型の型閉めするときに、パネル本体の周縁を第2の可動型で押して固定型のキャビティ面に当接させるようにしてもよい。このようにすることにより、パネル本体の反りを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係るパネルの断面図である。
【図2】実施の形態に係るパネルの正面図である。
【図3】本発明方法を説明する断面図である。
【図4】本発明方法を説明する断面図である。
【図5】本発明方法を説明する断面図である。
【図6】本発明方法を説明する断面図である。
【図7】本発明方法を説明する断面図である。
【図8】本発明方法を説明する断面図である。
【図9】本発明方法を説明する断面図である。
【図10】本発明方法を説明する断面図である。
【図11】本発明方法を説明する断面図である。
【図12】本発明方法を説明する断面図である。
【図13】本発明方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る成形方法によって成形されたパネルの厚み方向の断面図、第3図〜第13図はこのパネルの成形方法を示す金型の断面図である。
【0016】
このパネル20は、車両の樹脂製窓ガラスであり、板状のパネル本体21と、該パネル本体21の後面の全周縁部を周回するように設けられた枠状部22とを備えている。このパネル20は、前面側に向って凸となるように湾曲している。この湾曲の曲率半径は1000〜50000mm、特に5000〜20000mm程度が好ましい。また、長辺側と短辺側で異なる曲率半径を持った3次元R形状としても良い。この場合、長辺側の曲率半径が短辺側より大きいことが好ましく、その値としては、長辺側の曲率半径が5000〜20000mm、特に10000〜20000mm程度が、短辺側の曲率半径が1000〜10000mm、特に5000〜10000mm程度が好ましい。
【0017】
パネル本体21は、厚みが2〜10mm程度の透明のものであり、枠状部は、厚みが0.5〜5mm程度の不透明のものである。
【0018】
枠状部22は、台形断面形状であり、パネル板央側すなわちパネル本体21の板面の中央側に面する側面は斜面となっている。斜面の形状は、直線状、階段状、R形状、それぞれが組み合わされた形状など、板央方向に向かって厚みが徐減する形状であればその他の製品仕様や意匠性、外観に合わせて任意の形状を取ることが出来る。ただし、後述の第8図〜第13図の実施の形態のように、枠状部のパネル板央側の側面はパネル本体21の板面と略垂直であってもよい。
【0019】
枠状部22は、パネル本体21の外縁部から所定距離だけ離隔している。この所定距離は、好ましくは0.1〜10mm、特に0.5〜7mm、とりわけ1〜5mmである。 この距離が長過ぎると、枠状部22外縁のパネル本体21に負荷がかかった際、パネル本体21が破断したりクラックが生ずる等の不具合を生じ易くなる傾向がある。そしてパネル20を車両本体等へ組み付ける際に慎重を期す必要が生じ、車両等の生産性が低下することがある。
また、この距離が短か過ぎると、後述するパネル20の射出成形において第2の可動型12によるパネル本体21のキャビティ面3aへの当接が不充分となり、枠状部材料を射出成形する際に当該材料がパネル本体21の外縁部に流れ込み、不良品が発生する場合がある。
【0020】
次に、第3図〜第7図を参照してこのパネルの成形方法について詳細に説明する。
【0021】
まず、第3、4図に示すように、金型1の固定型2と第1の可動型11との間に形成されるキャビティ3に、透明樹脂材料を射出し、パネル本体21を成形する。次いで、第1の可動型11を型開きする。本発明方法では、パネル本体21がその前面側が凸となるように湾曲しており、可動型11を型開きし後面側を冷却することにより、後面側が前面側よりも大きく収縮する。そうすると、パネル本体21は凸反りするようになり、第5図の通り、パネル本体21の周縁は、固定型2のキャビティ面3aから離反する。この際、パネル本体21の前面(第5図では上面)の面積のうち15%以上、例えば15〜50%特に15〜40%の範囲にわたってパネル本体21の周縁がキャビティ面3aから離反することが好ましい。この離反面積が大き過ぎると、パネル本体21が固定型2のキャビティ面3a内で動いてしまい、ずれが生じたり、脱落する場合がある。反対に離反面積が小さ過ぎると、パネル本体21が固定型2に拘束されてしまい、本発明の目的である残留応力の低減効果が不充分となり、パネル本体21の反りの抑制や形状安定性の確保が困難となる。
【0022】
本発明において、パネル本体21を固定型2のキャビティ面3aから離反させるには、具体的には例えば、第1の可動型11を型開きした後に生ずる空間、即ちパネル本体21の後面側が接する空間の雰囲気温度を、少なくとも固定型2の温度以下にして、温度差を生ずるようにして冷却することが好ましい。
具体的には例えば、第1の可動型11を型開きした後、第2の可動型12を型閉めするまでの時間をあまり短くせず、一定時間経過後に可動型12を型閉めする方法が挙げられる。具体的には例えば、この時間は、5〜180秒、中でも10〜120秒、特に10〜60秒とすることで冷却を行うことが好ましい。
【0023】
更には、エアブローなどによってパネル本体21の後面側を積極的に冷却したり、パネル本体21の側面部や、パネル本体21の前面側表面の周縁部と固定型2とに挟まれた狭い空間に冷却用エアを注入してもよい。
この様に、パネル本体21の後面側表面を積極的に冷却する場合のブロー時間は、具体的には例えば60秒以下、中でも30秒以下、特に10秒以下であることが好ましい。このブロー時間が長すぎると、パネル本体21の冷却が進みすぎてしまい、周縁部のみならず中央部付近にまで離反が進み、パネル本体21が固定型2のキャビティ面3a内で動いてしまい、ずれが生じたり、脱落する場合がある。
【0024】
また、本発明においては、上述した様な空冷を、金型を含む射出成形領域を囲い密閉系とし、この系の内外で圧力差を生じさせて当該密閉系内に気流を発生させることで、パネル本体21の後面側を冷却してもよい。
特に本発明においては、第1の可動型11を型開きし、第2の可動型12を型閉めするまでの時間を短くして、上述したエアブロー等により積極的に空冷を行うことが、パネル本体21の望ましい離反が生じ且つ生産効率も向上するので好ましい。
【0025】
なお、この実施の形態では、パネル本体21の収縮に伴ってパネル本体21の側端面がキャビティ3の側面3b(キャビティ面3aから立ち上がる面)から離反する。
【0026】
その後、第6図の如く第2の可動型12を型合わせし、この可動型12によってパネル本体21をキャビティ面3aに当接させる。第2の可動型12のキャビティ13よりも外縁側の辺縁部12cは、パネル本体21を押してキャビティ面3aに押し付ける。
【0027】
第2の可動型12の前面の板央部は、凹陥した凹所12dとなっており、第2の可動型を型締めした際にこの凹所12dの部分はパネル本体21に当接しないようになっている。なお、凹所12dは設けなくてもよい。
【0028】
また、第2の可動型12において、凹所12dとキャビティ13の間の、パネル本体21と当接する箇所について、固定型2と第2の可動12とを型合わせした際、パネル本体21と第2の可動型12との間に間隙(クリアランス)が生ずる様に設計しても良い。このクリアランスを設けることによって、固定型2と第2の可動型12とを型合わせした際に生ずる、パネル本体21への過度な押圧を避けられるので好ましい。
このクリアランスは、キャビティ13に樹脂材料を充填し、枠状部22を射出成形する際、充填された樹脂材料がパネル本体21の板央側にはみ出さない様にする必要があるので、クリアランス、即ちパネル本体21と第2の可動型12との距離は通常0.01〜0.1mmであり、中でも0.01〜0.08mm、特に0.03〜0.08mmとすることが好ましい。このクリアランスが大き過ぎるとパネル本体21の板央側に射出成形樹脂がはみ出し易くなり、逆に小さ過ぎてもクリアランスを設けた効果が得られない。
【0029】
次いで、第6、7図の通り、第2の可動型12によって形成されたキャビティ13に樹脂材料を射出し、枠状部22を形成する。その後、第2の可動型12を型開きし、成形されたパネルを脱型する。
【0030】
この金型1を用いたパネル20の成形方法によると、第5図の通り、第1の可動型12を型開きしたときにパネル本体21の周縁がキャビティ面3aから離反し、パネル本体21の収縮が固定型2から拘束されることなく収縮する。これにより、パネル本体21の残留応力が小さくなり、反りが防止される。また、パネル本体21の周縁が比較的自由に大きく収縮するので、パネル本体21の端面とキャビティ側面3bとの間に隙間が生じる。これにより、成形されたパネル20を固定型2から脱型するときにパネル本体21の端面がキャビティ側面3bと干渉しないようになり、パネル20をスムーズに脱型することができる。
【0031】
また、この実施の形態では、第2の可動型12は、その辺縁部12cがパネル本体21をキャビティ面3aに押し付けるため、成形途中において、パネル本体21が反り変形することが防止される。また、枠状部22を成形するための樹脂材料がキャビティ13からパネル本体21の外縁側へ広がり、さらにキャビティ3a側にまで進入すること(いわゆる裏回り)も防止される。
【0032】
さらに、この実施の形態では、第2の可動型12に凹所12dが設けられており、パネル本体21の板央部は第2の可動型12に当接しない。そのため、第2の可動型12との接触によるパネル本体21の傷付きも防止される。
【0033】
次に、第8図〜第13図を参照して本発明の別の実施の形態に係るパネルの成形方法について説明する。
【0034】
まず、第8、9図に示すように、金型1Nの固定型2と対向型4及び第1の可動型11Nとの間に形成されるキャビティ3に、透明樹脂材料を射出し、パネル本体21Nを成形する。この第1の可動型11Nは、固定型2のキャビティ面の周縁部に対峙する方形枠形であり、対向型4を取り巻いている。対向型4は、この第1の可動型11Nに内嵌する形状及び大きさのものである。第1の可動型11Nと対向型4とは、第8図の上下方向に摺動自在に接している。第8図の通り、対向型4と第1の可動型11Nとは、それらのキャビティ面が面一となるようにして固定型2に対し型閉めされる。
【0035】
パネル本体21Nの成形後、第10図の如く第1の可動型11Nを型開きする。対向型4は、型開きせず、パネル本体21Nに接したままとする。第1の可動型11Nを型開きすると、第10図の通り、パネル本体21Nの後面側が放冷されて前面側よりも大きく収縮し、パネル本体21の周縁部がキャビティ面3aから離反する。また、この収縮により、パネル本体21Nの端面がキャビティ側面3bから離反する。
【0036】
次いで第11、12図の如く第2の可動型12Nを型閉めする。この第2の可動型12Nには、パネル本体21Nの全周縁部を押圧するように進退可能な進退部14が設けられている。進退部14はキャビティ13Nの外縁側に隣接している。この進退部14は、第2の可動型12Nに凹設された収容部15に摺動自在に内嵌している。進退部14にはロッド16を介して油圧シリンダ(図示略)が接続されている。これにより、進退部14は、第2の可動型12Nの前面から突出してキャビティ13を形成した状態(第12、13図)と、それよりも後退した状態(第11図)とをとりうるようになっている。
【0037】
第2の可動型12Nは、第1の可動型11Nと同じく方形枠状のものであり、対向型4に対し第8〜13図の上下方向に摺動自在に嵌合している。この第2の可動型12Nの前面すなわちパネル本体21Nに対峙する面には、固定型2及び対向型4と型合わせした際に、キャビティ13Nが形成される形状となっている。
【0038】
キャビティ13Nは、この方形枠状の第2の可動型12Nの内周縁部に臨んでいる。キャビティ13Nは、第2の可動型12Nの外周縁部からは前記進退部14の幅分だけ離隔している。
【0039】
第11図の通り、進退部14を後退させた状態で第2の可動型12Nを型閉めし、次いで進退部14を前進させて進退部14でパネル本体21Nを押圧し、キャビティ面3aに押し付ける。また、進退部14を前進させると、キャビティ13Nが形成される。そこで、第13図の通り、このキャビティ13Nに樹脂材料を射出し、枠状部22Nを形成する。このキャビティ13Nは枠状部22Nに合致した形状のものである。その後、対向型4及び第2の可動型12Nを型開きして脱型することにより、パネル20Nが得られる。
【0040】
この金型1Nを用いたパネル20Nの成形方法によっても、第1の可動型11Nを型開きするとパネル本体21Nの固定型がキャビティ面3aから離反するので、パネル本体21Nの残留応力が小さくなり、反りが防止されたパネルが得られる。また、パネル本体21Nの端面がキャビティ側面3bから離反するので、パネルを固定型2からスムーズに脱型することができる。
【0041】
特に、この実施の形態では、進退部14によってパネル本体21Nをキャビティ面3aに押し付けることができ、成形途中において、パネル本体21Nが反り変形することが防止される。また、枠状部22Nを成形するための樹脂材料がキャビティ13Nからパネル本体21Nの外縁側へ広がり、さらにキャビティ3a側にまで進入すること(いわゆる裏回り)も防止される。
【0042】
さらに、図示はしないが、図3〜5に示す様に、固定型2と第1の可動型11の組合せによりパネル本体21を成形し、型を開いた後、図11に示される様に、対向型4と可動型12Nの2ブロックで構成された可動型を用い、図11〜13に示す工程により枠状部22Nを成形してもよい。この場合、パネル本体21をキャビティ3aに押し付ける力を調整するために、対向型4に油圧シリンダやエアシリンダ、ダンパー、バネなどを付帯し、利用してもよい。さらに、対向型4とパネル本体21の間には、キャビティ13Nへ樹脂材料を充填して枠状部22を形成する際にクリアランスを設けてもよく、このクリアランスは上述した第2の可動型12におけるそれと同様とすることが好ましい。
【0043】
本発明では、このようにして成形した成形品であるパネル20を、好ましくは80〜130℃、特に好ましくは100〜120℃の条件下、0.5〜3Hr、特に1〜2Hr保持するアニール処理を施し、除歪することが好ましい。
【0044】
なお、このパネル本体の前面及び後面にハードコート原液を塗布した後、UV照射又は加熱により硬化処理し、硬質皮膜(ハードコート層)を形成してもよい。
【0045】
この硬質皮膜を形成する場合には、熱硬化性樹脂を用いた硬質皮膜形成時の熱硬化処理や、UV硬化性樹脂を用いた場合の溶剤気散のための熱処理とアニール処理とを兼用させてもよい。
【0046】
次に、本発明により得られるパネルを自動車用窓ガラス等に適用する場合に好適な材料について説明する。
【0047】
パネル本体の構成材料は、透明樹脂であれば、従来公知の任意のものから適宜選択することが出来る。ここで、透明とは、JIS K7105に準拠して測定された表面の平滑な厚み3mmの板状成形品における全光線透過率として、通常10%以上、好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であり、Haze値が通常10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下であることを意味する。染料または顔料を含有する透明な樹脂においては、斯かる染料または顔料の使用割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常0.001〜2重量部、好ましくは0.005〜1.2重量部、更に好ましくは0.005〜0.5重量部である。
【0048】
上記の様な透明樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙られる。これらの中では、耐衝撃性や耐熱性の面から、ポリカーボネート樹脂(PC)、中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂を主構成樹脂とするものが好ましい。なお、主構成樹脂とするとは、全樹脂成分中、芳香族ポリカーボネート樹脂の割合が通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上であることを意味する。
【0049】
PCを主構成樹脂とする場合に併用する樹脂は、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、その形態は、透明性を維持する形態であればアロイでも共重合体でもよい。
【0050】
本発明で使用するPCは、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを、または、これらに併せて少量のポリヒドロキシ化合物などを反応させて得られる、直鎖または分岐の熱可塑性の重合体または共重合体である。PCは公知の方法によって製造することが出来、製造方法としては、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマ−の固相エステル交換法などが挙げられる。
【0051】
原料として使用される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリ−ル)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリ−ル)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリ−ルエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリ−ルスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリ−ルスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリ−ルスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
【0052】
上記の中では、好ましくはビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、耐衝撃性の点から特に好ましくは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメ−ト等が使用され、具体的には、ホスゲン;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリ−ルカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;二価フェノールのジハロホルメ−ト等が挙げられる。これらのカーボネート前駆体は2種類以上を併用してもよい。
【0054】
また、本発明において、PCは、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物類の他、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリ−ル)オキシインド−ル(別名:イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられ、これらの中では、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。多官能性芳香族化合物は、前記の芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用され、その使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対し、通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0055】
本発明に使用するPCの分子量は、任意であるが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]として、通常10,000〜35,000である。粘度平均分子量を10,000以上とすることにより、機械的強度が向上して機械的強度の要求の高い用途に好適なものとなる。一方、粘度平均分子量を35,000以下とすることにより、流動性が低下して成形加工が容易なものとなる。なお、粘度平均分子量は、好ましくは18,000〜35,000であり、更に好ましくは20,000〜30,000である。粘度平均分子量を18,000以上とすることにより表面に硬化皮膜を形成した際の衝撃強度の低下を抑制することが可能となる。また、粘度平均分子量の異なる2種類以上のPCを混合してもよい。
【0056】
ここで、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計で温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式(η=1.23×10−40.83)から算出される値を意味する。
【0057】
本発明で使用するPCの末端水酸基濃度は、通常2,000ppm以下、好ましくは1,500ppm以下、更に好ましくは1,000ppm以下である。また、その下限は、特にエステル交換法で製造するPCでは、通常10ppm、好ましくは30ppm、更に好ましくは40ppmである。
【0058】
末端水酸基濃度を10ppm以上とすることにより、分子量の低下が抑制でき、樹脂組成物の機械的特性がより向上する傾向にある。また、末端基水酸基濃度を2,000ppm以下にすることにより、樹脂組成物の滞留熱安定性や色調がより向上する傾向にある。ハードコートなどの硬化皮膜を形成する場合には、末端水酸基濃度が比較的高いものとする。具体的には末端水酸基濃度を100〜2,000ppm、好ましくは200〜1,000ppm、更に好ましくは300〜1,000ppmとすることで、その密着性や耐久性が向上する。なお、末端水酸基濃度の単位は、PC重量に対する、末端水酸基の重量をppmで表示したものであり、測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
【0059】
また、成形品外観の向上や流動性の向上を図るため、本発明で使用するPCは、芳香族ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。この芳香族ポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500〜9,500、好ましくは2,000〜9,000である。芳香族ポリカーボネートオリゴマーの使用量は、PCに対し、通常30重量%以下である。
【0060】
更に、本発明で使用するPCは、バージンPCだけでなく、使用済みの製品から再生されたPC、所謂マテリアルリサイクルされたPCを含有してもよい。使用済みの製品としては、光学ディスク等の光記録媒体、導光板、自動車窓ガラス・自動車ヘッドランプレンズ・風防などの車両透明部材、水ボトル等の容器、メガネレンズ、防音壁・ガラス窓・波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。再生されたPCの使用割合は、バージンPCに対し、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0061】
パネル本体の構成材料には、前述の染料または顔料以外に、従来公知の任意の助剤を添加することが出来、その例としては、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候性改良剤、アルカリ石鹸、金属石鹸、可塑剤、流動性改良剤、造核剤、難燃剤、ドリッピング防止剤などが挙げられる。これらの助剤の使用量は公知の範囲から適宜選択される。
【0062】
枠状部の構成材料としては、特に制限されず、各種公知の任意の熱可塑性樹脂が使用できる。具体的には、例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテル樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、熱安定性、剛性、パネル本体との密着性の点から、PCや熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましく、中でも、PCを主材としたもの、特に熱可塑性ポリエステル樹脂との併用が好ましい。
【0063】
パネル本体と枠状部の構成樹脂材料のうち、10重量%以上配合される主成分は、両者の結合性を高めるために同一であることが望ましい。
【0064】
枠状部の構成材料として、PCと熱可塑性ポリエステル樹脂とから成るポリマーアロイを使用する場合、両成分の合計量に対するPCの割合は通常10〜90重量%である。
【0065】
上記の熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸類またはその反応性誘導体から成るジカルボン酸成分と、ジオール類またはそのエステル誘導体から成るジオール成分とを縮合反応して得られる重合体または共重合体を示す。
【0066】
上記の熱可塑性ポリエステル樹脂の製造は、一般的には、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下、ジカルボン酸成分とジオール成分とを反応させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。なお、縮合反応は、バッチ式または連続式の何れの形式でもよく、固相重合により重合度を上げてもよい。
【0067】
ジカルボン酸類としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の何れでもよいが、耐熱性、寸法安定性などの点から、芳香族ジカルボン酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−タ−フェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸などが挙げられる。また、5−メチルイソフタル酸などのアルキル基置換体;テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル等のアルキルエステル誘導体などの反応性誘導体も使用することが出来る。
【0068】
上記の中では、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびそれらのアルキルエステル誘導体が好ましく、テレフタル酸およびそのアルキルエステル誘導体が更に好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を併用してもよく、また、芳香族ジカルボン酸と共に、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸を併用することも可能である。
【0069】
また、ジオール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トランス−またはシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環族ジオール類;p−キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ジオール類が挙げられる。また、これらの置換体も使用することが出来る。
【0070】
上記の中では、熱安定性、耐衝撃性、剛性等の点から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが更に好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。また、ジオール成分として、分子量400〜6,000の長鎖ジオール類、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の1種以上を上記のジオール類と併用して共重合させてもよい。
【0071】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂は、少量の分岐剤を導入することにより分岐させることも出来る。分岐剤としては、トリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリト−ル等が挙げられる。
【0072】
枠状部22で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂の好適な具体例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT),ポリへキシレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)樹脂(PCT)、ポリシクロヘキシルシクロヘキシレート(PCC)等が挙げられる。これらの中では、流動性と耐衝撃性の点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)が好ましい。
【0073】
上記のポリエチレンテレフタレート樹脂は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とし、且つ、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分とし、これらの縮合反応によって得られる飽和ポリエステル重合体または共重合体である。繰り返し単位としてのエチレンテレフタレート単位の割合は、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上である。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂中には、重合時の副反応生成物であるジエチレングリコールが共重合成分として含まれることがあるが、このジエチレングリコールの量は、重合反応に使用するジオール成分の全量に対し、通常0.5〜6モル%、好ましくは0.5〜5モル%である。
【0074】
他の熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、ラクトンの開環重合によるポリピバロラクトン樹脂、ポリ(ε−カプロラクトン)樹脂、溶融状態で液晶を形成する液晶ポリマ−(Thermotropic
Liquid Crystal Polymer;TLCP)等が挙げられる。具体的には、市販の液晶ポリエステル樹脂としては、イ−ストマンコダック社製「X7G」、ダ−トコ社製「Xyday(ザイダ−)」、住友化学社製「エコノール」、セラニ−ズ社製「ベクトラ」等が挙げられる。
【0075】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、通常0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/gである。ここで、固有粘度は、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の溶媒中30℃で測定した値を意味する。固有粘度が0.4未満の場合は耐衝撃性が低下し易く、1.5を超える場合は流動性が低下し易い。また、熱可塑性ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、通常5〜50μeq/g、好ましくは10〜30μeq/gである。末端カルボキシル基量が5μeq/g未満の場合は耐衝撃性が低下し易く、50μeq/gを超える場合は、耐湿熱性、熱安定性が不十分となり易い。
【0076】
更に、本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂としては、バ−ジン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された熱可塑性ポリエステル樹脂、所謂マテリアルリサイクルされた熱可塑性ポリエステル樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては、容器、フィルム、シ−ト、繊維などが主として挙げられ、好ましくはPETボトル等の容器である。また、再生熱可塑性ポリエステル樹脂としては、製品の不適合品、スプル−、ランナ−等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
【0077】
また、枠状部22の構成材料には、剛性、寸法安定性、耐熱性を向上させる目的でフィラーを配合することが好ましい。斯かるフィラーとしては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム、酸化鉄、アルミナ、チタン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、珪酸マグネシウム(タルク)、珪酸アルミニウム(マイカ)、珪酸カルシウム(ウォラストナイト)、クレー、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、生分解繊維、けい砂、けい石、石英粉、しらす、けいそう土、ホワイトカーボン、鉄粉、アルミニウム粉などが挙げられる。これらの中では、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、生分解繊維、珪酸マグネシウム(タルク)、珪酸アルミニウム(マイカ)、珪酸カルシウム(ウォラストナイト)が好ましい。フィラーは2種類以上を併用することも出来る。
【0078】
上記のフィラーの形状は、球状、立方形状、粒状、針状、板状、繊維状などの何れの形状であってもよいが、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の寸法安定性を向上させ、剛性を高く、外観を良好にすると言う観点から、板状または針状が好ましく、レーザー回折粒度(D50)が10μm以下のフィラーが好ましい。
【0079】
フィラーの使用量は、枠状部の構成材料100重量部に対し、通常2〜50重量部、好ましくは5〜40重量部である。フィラーの配合量が2重量部未満の場合は、剛性、寸法安定性、耐熱性の改良効果が小さく、50重量部を超える場合は耐衝撃性が低下する。
【0080】
上記のフィラーは、無処理のままであってもよいが、樹脂成分との親和性または界面結合力を高める目的で、表面処理剤、高級脂肪酸またはそのエステル、塩などの誘導体、カップリング剤などで処理するのが好ましい。表面処理の際は、非イオン、陽イオン、陰イオン型などの各種の界面活性剤、各種の樹脂などの分散剤による処理を併せて行うならば、機械的強度および混練性が向上して好ましい。
【0081】
枠状部の構成材料には、帯電防止性や静電塗装が可能な導電性を付与する目的で導電性カーボンブラック及び/又は中空ナノカーボン繊維を配合することが出来る。導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッテェンブラック等が挙げられる。中空ナノカーボン繊維は、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層から成る外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルである。更に、上記の外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状である。上記の中空領域の直径は通常2〜20nmである。この様な中空ナノカーボン繊維は、ハイペリオン・カタルシス社により、「グラファイト・フィブリル」と言う商品名で販売しており、容易に入手できる。
【0082】
パネル本体は非強化合成樹脂で構成されるのに対し、枠状部は複合強化合成樹脂で構成されるのが好ましい。すなわち、枠状部の樹脂材料には強化用繊維を配合するのが好ましい。強化用繊維としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、生分解繊維、タルク、マイカ、ウォラストナイトの群から選ばれる1種以上のものを使用できる。樹脂材料に配合する繊維の重量平均繊維長は、強度および分散性観点から、通常0.05〜10mm、好ましくは0.2〜5mmである。また、機械的強度、寸法精度、耐熱性を向上させるため、出来上がり成形品における繊維の重量平均繊維長を比較的長く、具体的には0.1〜5mm、中でも0.2〜5mm、特に1〜5mmとすることが好ましい。この様に、出来上がり成形品における繊維の重量平均繊維長を長くするためには、具体的には例えば、射出成形機の射出シリンダーの構成において、スクリューの圧縮比を緩圧縮とし、スクリューとシリンダーとのクリアランスやチェックリングのクリアランスを広く取ることが効果的である。また、射出成形時の条件としては、樹脂温度の設定を高くしたり、計量時の背圧を低く、射出速度を遅くして成形することが効果的である。特には背圧の効果は大きく、具体的には例えば1〜20MPa、中でも1〜15MPa、特に5〜10MPaとすることが好ましい。
【0083】
また、図示しないが、本発明においては、パネル本体の傷つきや劣化を主に防止するため、保護膜としてのハードコート(硬質被膜)が設けられてもよい。斯かる硬質被膜は、パネル本体21の枠状部22形成側と反対側の前面にのみ設けられてもよい。硬質皮膜の厚さはパネル本体21の厚さの1/100以下が好ましく、通常は1〜50μm、特に5〜20μmが好ましい。
【0084】
上記の硬質被膜は、単層でもよいが、保護機能を高めるため、また、耐候性を高めるために少なくとも2層以上の多層構造としてもよい。当該多層構造においては、最外層の硬度を最大に設定するのが好ましい。多層構造を有する硬質被膜としては、例えば、熱線遮蔽、紫外線吸収、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミックの各機能性層やプライマー層、着色加飾層などのうち、少なくとも一つ以上の機能を備えているのが好ましい。
【0085】
硬質被膜の構成材料は透明樹脂が好適である。斯かる透明樹脂としては、ハードコート剤として知られている公知の材料を適宜使用することが出来、例えば、シリコーン系、アクリル系、シラザン系、ウレタン系などの種々のハードコート剤を使用することが出来る。これらの中では、接着性や耐候性を向上させるために、ハードコート剤を塗布する前にプライマー層を設ける2コートタイプのハードコートが好ましい。ハードコート剤のコーティング方法としては、スプレーコート、ディップコート、フローコート、スピンコート、バーコート等が挙げられる。また、フィルムインサートによる方法、転写フィルムに好適な薬剤を塗布して転写する方法なども採用し得る。
【0086】
上記の硬質被膜の最外層に、各種機能(熱線遮蔽、紫外線吸収、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミックの各機能)の薄膜が形成されてもよい。
【0087】
パネル本体21の表面と上記の硬質被膜との間に透明樹脂層が設けられてもよい。
【0088】
本発明の方法で成形されるパネルは、車両、特に自動車の窓ガラスに適用するのに好適であり、とりわけサンルーフに適用するのに好適であるが、クォータ窓、リアウィンドなどにも適用可能である。
【0089】
本発明では、パネル本体の後面と枠状部との境界部に凹凸部を形成し、パネル本体と枠状部との結合強度を大きくしてもよい。本発明では、枠状部に、他部品を取り付けるための取付片を突設してもよい。
【0090】
<パネル本体及び枠状部の物性値の説明>
本発明においては、該パネル本体の容積をV、枠状部の容積をV、該パネル本体を構成する材料で成形された3mm厚みの100mm×100mm平板を130℃に2時間保持したときの収縮率(%)をS、該枠状部を構成する材料で成形された3mm厚みの100mm×100mm平板を130℃に2時間保持したときの収縮率(%)をSとしたときに、0.01<V/V<1.0であることが好ましく、中でも0.05≦V/V≦1.0、更には0.1≦V/V≦0.75、特に0.1≦V/V≦0.5であることが好ましい。また1.0<S/S<3.0であることが好ましく、中でも1.1≦S/S≦3.0、更には1.1≦S/S≦2.5、特に1.5≦S/S≦2.3であることが好ましい。
【0091】
また、好ましくは0.35<(S・V)/(S・V)<1.1であり、更には0.5≦(S・V)/(S・V)<1.0、特に0.6≦(S・V)/(S・V)<0.8であることが好ましい。
【0092】
パネル本体を構成する材料で成形された3mm厚みの100mm×100mm平板の曲げ弾性率をFとし、枠状部を構成する材料で成形された3mm厚みの100mm×100mm平板の曲げ弾性率をFとした場合、好ましくは0.35<(S・V・F)/(S・V・F)<1.5であり、特に好ましくは0.7≦(S・V・F)/(S・V・F)≦1.2である。
【0093】
枠状部の射出成形時の成形収縮率(%)をIとし、パネル本体の線膨張係数をα(/℃)とした場合、好ましくは0.8×10−2<α/I<2.3×10−2であり、更には0.8×10−2<α/I≦2.0×10−2、特に0.8×10−2<α/I≦1.5×10−2であることが好ましい。
【0094】
パネル本体及び枠状部の物性値が上記範囲にある場合、アニール処理時におけるパネル本体の周縁部の収縮挙動が枠状部の収縮挙動によって拘束されたり逆に助勢されたりすることが防止され、製品パネルの形状精度が良好となる。即ち、0.01<V/V<1.0で表わされる通り、枠状部の容積がパネル本体の容積よりも小さい場合において、枠状部とパネル本体の収縮率S、Sが1.0<S/S<3.0であると、凸湾曲したパネル本体の収縮程度と枠状部の収縮の程度が略々同等となり、パネルの凸湾曲の曲率半径がアニール処理前後で略々同等となり、製品パネルの形状精度が良好となる。
【0095】
この場合、S/Sが1以下であると、パネル本体の収縮が枠状部によって拘束される。即ち、収縮しようとするパネル本体の変形挙動が枠状部によって阻害される。この結果、パネルの凸湾曲の曲率半径が許容範囲よりも大きくなり、パネルがフラット(平板状)に近いものから、凹湾曲となる。逆に、S/Sが3以上であると、パネル本体の収縮変形を上回って枠状部が収縮変形しようとし、パネル本体の凸反りが強くなる。即ち、パネルの曲率半径が許容範囲よりも小さいものとなる。
【0096】
なお、アニール処理時のパネルの変形挙動はパネル本体及び枠状部の容積とアニール処理時収縮率との積の比(S・V)/(S・V)や、曲げ弾性率F、Fにも影響を受ける。また、パネル本体を先に射出成形し、パネル本体がある程度降温して許容硬度となった後に枠状部をパネル本体の後面に射出成形するので、枠状部の射出成形時の成形収縮率I、パネル本体の線膨張係数αもパネルの変形挙動に影響する。そのため、(S・V)/(S・V)、(S・V・F)/(S・V・F)、α/Iの各値を上記範囲とすることにより製品パネルの形状精度を高めることができる。
【0097】
収縮率S、Sは射出成形時の流れ方向の収縮率と、流れ方向と直交方向の収縮率との平均値である。また、線膨張係数も流れ方向及びそれと直交方向の平均値である。
【0098】
なお、本発明では、第1の可動型を型開きしたときに、パネル本体の周縁を押え部材で押えてパネル本体の脱落を防止するようにしてもよい。このようにすれば、パネルの生産効率を向上させることができる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0100】
[実施例1〜4、比較例1]
枠状部22の内周縁がパネル本体21の後面と垂直となっていること以外は第1図に示す断面形状を有した長方形状の積層パネルを第3図〜第7図の方法に従って成形した。なお、比較例1では二次材を射出成形する前のパネル本体21の形状は凸湾曲せず、フラットな平板状となる金型を使用した。但し、このパネル本体21に二次材を射出成形してなるパネルの湾曲高さCの設計値は、二次材を射出成形した後の熱収縮による変形を考慮した値とした。成形方法は、まずパネル本体21を射出成形(射出時の樹脂温度300℃)した。
【0101】
実施例1〜4と比較例1では、固定型2、第1の可動型11ともに金型温度は90℃、射出速度は50mm/secの単一速度で充填を行い、射出時間は12秒、射出保圧切り替え位置は2mm、成形はバルブゲート型のホットランナーで行い、保圧はなく、射出圧縮成形を行い、射出前に金型を2mm開き、射出保圧切り替え位置で700tonの再型締め15秒、冷却時間60秒とした。
【0102】
なお、何れの実施例、比較例に於いても、冷却時間中も型締め力700tonはパネル成形体に付加されている。
【0103】
次いで第1の可動型11を第2の可動型12に交換し、表1に示した材料を用いて枠状部22を射出成形(射出時の樹脂温度270℃)した。この第1の可動型11を型開きしてから第2可動型12を型閉めし、枠状部22を射出成形するまでの時間は、実施例1と2では30秒、実施例3では60秒とした。また実施例4では第1の可動型11を型開きした後、圧力0.5MPaの計装エア(室温)を用い、パネル本体21の後面側にエアブローを10秒間実施した。この際、第1の可動型11を型開きしてから第2可動型12を型閉めし、枠状部22を射出成形するまでの時間は40秒であった。
固定型2、第2の可動型12ともに金型温度は90℃、射出速度を40mm/secの単一速度で充填し、射出時間は4秒、保圧は25MPaで5秒冷却時間は60秒である。
【0104】
パネルの寸法は次の通りである。以下において、各部の寸法は第1図及び第2図に示す部位の寸法である。
【0105】
長辺 a:750mm
短辺 b:465mm
湾曲高さ C:表1の通り
枠状部2の幅(長辺に沿う箇所 断面H−H):90mm
枠状部2の幅(短辺に沿う箇所 断面I−I):97mm
パネル本体厚さ:5mm
枠状部厚さ:3.5mm
【0106】
従って、パネル本体21及び枠状部22の容積V,V及びV/V比は次の通りである。
【0107】
:1312.5cm
:459.4cm
/V:0.35
【0108】
パネル本体の成形材料としてはポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアプラスチックス社製;商品名「ユーピロン(登録商標) S2000UR」)を使用した。その粘度平均分子量(Mv)は24,500、線膨張係数は6.5×10−5[/℃]であった。3mm厚みの100mm×100mm平板の130℃×2Hr収縮率Sは0.08%、曲げ弾性率Fは2300MPaである。
【0109】
枠状部22の成形材料としては表1の通りの配合とした。表1においてPCは上記ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製:ユーピロン(登録商標)S−3000FN、粘度平均分子量Mv=21,000)、PETはポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱化学株式会社製:ノバペックス(登録商標)GG500)である。GFはガラス繊維(日本電気ガラス社製:ECS03T−571、平均繊維径13μm、平均繊維長3mm)である。
【0110】
これらを表1に示す配合割合にて、ポリカーボネート樹脂と第2成分であるPETをタンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30XCT、L/D=42、バレル数12)を使用し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数250rpmにて、バレル1(最上流のバレル)より押出機にフィードして溶融混練し、更に、バレル7(上流側から7番目のバレル)よりガラス繊維を表1に示す割合にて押出機に途中フィードして溶融混練することにより、樹脂組成物のペレットを作製し成形材料とした。なお、表1には、その配合の射出成形品の物性を併せて示す。湾曲高さCは、パネル本体21の最凸部のパネル本体21の最周縁部からの高さである。フラットな比較例1では第1の可動型11を型開きしたときにパネル本体21はキャビティ面3aに全面的に密着したままであり、C=0である。
【0111】
[比較例2〜5]
比較例2はパネル本体21成形時に射出圧縮成形をやめ、20MPaの保圧力を120秒付加した以外は実施例1と同様に積層パネルを得た。この際、第1の可動型11を型開きしたときにパネル本体21はキャビティ面3aに全面的に密着したままであり、キャビティ面3aから離反しなかった(離反面積割合は0%)。また、パネル本体21の側面部はキャビティ面側面部3bから離反していた。
【0112】
比較例3はパネル本体21成形時の射出圧縮再型締め時間を90秒とした以外は実施例1と同じく積層パネルを成形した。この際、第1の可動型11を型開きしたときにパネル本体21はキャビティ面3a及び側面部3bに全面的に密着したままであった。
【0113】
比較例4はパネル本体21の後面側に60秒間エアブローを行った以外は実施例4と同様にパネルを成形した。この際、エアブロー中にパネル本体21のキャビティ面3aからの離反が進みすぎキャビティ面から大きくズレ、第2の可動金型12を閉めた際に当該可動金型12と固定金型2との間に挟まり、枠状部22を成形することが出来なかった。
【0114】
比較例5は第1の可動型11を型開きしてから枠状部22を射出成形するまでの時間を300秒とした以外は実施例1と同じく積層パネルを成形した。この際、型開き中にパネル本体21のキャビティ面3aからの離反が進みすぎキャビティ面から大きくズレ、第2の可動金型12を閉めた際に、当該可動金型12と固定型2との間に挟まり、窓枠部を成形することが出来なかった。
【0115】
【表1】

【0116】
各パネルの、V/V、S/S、(S・V)/(S・V)、(S・V・F)/(S・V・F)等の数、そして反りや、反りのバラツキ(形状安定性)の測定結果を、表2,3に示す。ここで「反り」は、湾曲高さの測定値Cと設計値Cとの差(C−C)をCで除した百分比(C−C)/C×100(%)であり、10個のサンプルの平均値である。また、パネル湾曲高さは、窓枠部を射出成形する材料によって変わるため、パネル本体21の金型形状に対し、実施例、比較例で用いた枠状部を成形した際の熱収縮解析を実施し、その解析結果を設計値とした。
「反りのバラツキ」は、各10個のサンプルの反り値(%)のうち、最大値と最小値との差(Bmax−Bmin)を10個のサンプルの平均値Baveで除した百分比(Bmax−Bmin)/Bave×100%である。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
表3の通り、本発明によると、設計値からの形状のズレが小さい、外観精度のよいパネルを成形することができる。
【符号の説明】
【0120】
2 固定型
3 キャビティ
3a キャビティ面
3b キャビティ側面
4 対向型
11,11N 第1の可動型
12,12N 第2の可動型
13,13N キャビティ
21 パネル本体
22 枠状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面側が凸となるように湾曲した合成樹脂材料製パネル本体と、該パネル本体の他方の面の周縁に該パネル本体と一体に設けられた合成樹脂材料製枠状部とを有したパネルを射出成形する方法であって、
固定型と、該固定型に型閉めされる第1の可動型とを用いて前記パネル本体を射出成形するパネル本体成形工程と、
該第1の可動型を型開きし、枠状部成形用キャビティを有した第2の可動型を該固定型に対し型閉めし、前記枠状部を射出成形する枠状部成形工程と
を有するパネルの成形方法において、
該第1の可動型を型開きしたときに、パネル本体の前記一方の面の周縁部が該固定型のキャビティ面から離反することを特徴とするパネルの成形方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の可動型を型開きしたときに、パネル本体の一方の面の15%以上の面積にわたって周縁部が固定型のキャビティ面から離反することを特徴とするパネルの成形方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記第1の可動型を型開きした状態にあるときに、キャビティ内においてパネル本体が収縮し、パネル本体の端面が該固定型のキャビティ面の側面から離反することを特徴とするパネルの成形方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、第2の可動型を型閉めするときに第2の可動型でパネル本体の周縁部を押すことによりパネル本体を固定型のキャビティ面に押し付けることを特徴とするパネルの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−943(P2012−943A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140608(P2010−140608)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】