説明

パネル製造方法

【課題】樹脂板の外周端面を金属製枠体で囲んであるパネルを簡便に製造できるようにする。
【解決手段】樹脂板1の外周端面を金属製枠体3で囲んであるパネルPを製造するためのパネル製造方法であって、少なくとも内周側に向けて開口し、かつ、樹脂板の板面に沿う方向に凹入する凹入部9が形成されている枠体3を使用して、その枠体を樹脂板成形用金型13の内側に装着し、枠体の内周側に樹脂を射出して、凹入部に入り込む樹脂製突部10を一体に備えた樹脂板を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂板の外周端面を金属製枠体で囲んであるパネルを製造するためのパネル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂板の外周端面を金属製枠体で囲んであるパネルは、樹脂板の外周端面の破損を防止できる利点がある。
上記パネル製造方法では、従来、樹脂板の外周縁部に嵌め込む溝が形成されている枠体を使用して、樹脂板の外周縁部にその枠体の溝を嵌め込むことにより製造している(周知慣用技術であり、先行技術文献情報を開示できない)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、枠体を周方向で複数個に分割しておいて、各分割枠体の溝を樹脂板の外周縁部に各別に嵌め込んだ後、分割枠体どうしを連結する必要があり、パネルの製造に手間が掛かる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、樹脂板の外周端面を金属製枠体で囲んであるパネルを簡便に製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1特徴構成は、樹脂板の外周端面を金属製枠体で囲んであるパネルを製造するためのパネル製造方法であって、
少なくとも内周側に向けて開口し、かつ、前記樹脂板の板面に沿う方向に凹入する凹入部が形成されている枠体を使用して、その枠体を樹脂板成形用金型の内側に装着し、前記枠体の内周側に樹脂を射出して、前記凹入部に入り込む樹脂製突部を一体に備えた樹脂板を成形する点にある。
【0005】
〔作用及び効果〕
樹脂板成形用金型に装着してある枠体の内周側に樹脂を射出することにより、枠体の内周側に樹脂板を成形できるとともに、その樹脂を枠体に形成してある凹入部にも入り込ませて、樹脂板と枠体とを樹脂板の板面に対して交差する方向に互いに係合させる突部を、樹脂板と一体に成形することができる。
従って、金型に装着してある枠体の内周側に樹脂を射出することにより、樹脂板と枠体とが一体に組み付けられ、樹脂板の外周端面を金属製枠体で囲んであるパネルを簡便に製造できる。
【0006】
本発明の第2特徴構成は、前記凹入部が、周方向に間隔を隔てて形成してある複数の貫通孔で構成されており、前記貫通孔を通して外方に突出するように前記突部を成形する点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
樹脂板と枠体とを互いに外れにくい状態で確実に組み付けることができる。
【0008】
本発明の第3特徴構成は、前記枠体が、前記突部の前記貫通孔からの突出部分を前記樹脂板の一側面側から覆う覆い部材を備えている点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
パネルの一側面側において、突出部分を覆い部材で隠しておくことができ、外観上の制約が少ないパネルを製造できる。
【0010】
本発明の第4特徴構成は、前記突部を、樹脂成形時において、前記枠体に対する枠体内側に向かう方向への移動が許容される形状に成形する点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
樹脂成形時において成形樹脂の収縮が起こった際に、突部の枠体に対する枠体内側に向かう方向への移動が許容され、枠体の変形を防止できる。
【0012】
本発明の第5特徴構成は、前記枠体が、前記樹脂板の一側面を覆う板材を備えている点にある。
【0013】
〔作用及び効果〕
樹脂板の一側面を板材で覆って、樹脂板の破損を防止できるパネルを製造できる。
【0014】
本発明の第6特徴構成は、基体シートに加飾層が剥離可能に積層された加飾シートを、前記基体シート側が前記金型の成形面に対向するように当該金型の内側に配置して、前記枠体の内周側に樹脂を射出する点にある。
【0015】
〔作用及び効果〕
加飾層が転写された樹脂板の外周端面を金属製枠体で囲んであるパネルを簡便に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、本発明によるパネル製造方法で製造したパネルPを示し、略矩形の樹脂板1を金属製部材2に一体に組み付けてある。
【0017】
金属製部材2は、金属製平板材の絞り加工により、図3に示すように、樹脂板1の外周端面を全周に亘って一連の環状に囲む枠体3と、樹脂板1をその一側面側から覆う板材としての略矩形の扁平な底板部4とを一体に形成してある。
【0018】
枠体3は、横断面形状が樹脂板1の厚さ方向における一方側に向けて開口する略コの字状に形成されている。
つまり、板面が樹脂板1の板面に沿う、平面視で略矩形の中間枠板部5と、中間枠板部5の内周縁に沿って略直角に折り曲げられた内側枠板部6と、中間枠板部5の外周縁に沿って内側枠板部6と同じ方向に略直角に折り曲げられた外側枠板部7とを備えている。
【0019】
内側枠板部6は、底板部4の外周縁に沿って、その底板部4に対して略直角に折り曲げられている。
よって、枠体3の内周側には、底板部4の外周側を内側枠板部6で囲んである略矩形の凹面部8が形成され、樹脂板1は、この凹面部8の深さと略同じ厚さで、凹面部8に入り込む状態で組み付けられている。
【0020】
内側枠板部6には、枠体3の内周側に向けて開口し、かつ、樹脂板1の板面に沿う方向に凹入する凹入部9が形成され、樹脂板1は、凹入部9に入り込む板状の樹脂製突部10を一体に備えている。
【0021】
凹入部9は、枠体3の周方向に間隔を隔てて内側枠板部6に形成してある複数の貫通孔9a,9b、つまり、底板部4の各辺に沿う長手方向中央位置に形成してある中央貫通孔9aと、内側枠板部6の屈曲角部に形成してある角部貫通孔9bとで構成されている。
【0022】
貫通孔9a,9bは、樹脂板1の厚さよりも幅が狭く、かつ、枠体3の周方向に沿って長い略矩形の長孔で、その一側縁11を中間枠板部5の裏面位置に略沿わせて打ち抜き形成され、角部貫通孔9bは、屈曲角部を挟む両側に亘って一連に形成されている。
【0023】
突部10は、各貫通孔9a,9b毎に対応させて、その貫通孔9a,9bを通して横外方に突出するように成形してある。
突部10の貫通孔9a,9bからの突出部分12は、樹脂成形時において、貫通孔9a,9bを通して枠体内側に向かう方向への移動が許容される形状に成形されている。
【0024】
樹脂板1及び突部10と金属製部材2は互いに固着されておらず、互いに密着する状態で組み付けられている。
【0025】
枠体3は、突出部分12を樹脂板1の一側面側から覆う覆い部材を一体に備えている。
この覆い部材は、中間枠板部5で構成されている。
【0026】
図4,図5は、本発明によるパネル製造方法に使用する射出成形用金型(以下、単に金型という)13を模式的に示し、第1金型14と第2金型15とを備えている。
【0027】
第1金型14は、図5にも示すように、金属製部材2が凹面部8を第2金型側に向く姿勢で位置決め状態で装着される装着凹部16と、突部10の貫通孔9a,9bからの突出部分12を、樹脂成形時において、貫通孔9a,9bを通して底板部4の中心部に向かう方向への移動が許容される形状に成形するための突出部分成形面17とを備えている。
【0028】
装着凹部16は、中間枠板部5と内側枠板部6と外側枠板部7とで形成される矩形環状溝部分22の内面に、全面に亘って密着状態で嵌入する矩形環状の突条部18を備えている。
【0029】
突出部分成形面17は、内側枠板部6に形成されている貫通孔9a,9b毎に対応して突条部18に形成されており、貫通孔9a,9bの周縁のうちの、中間枠板部5の裏面に沿わない周縁部分に沿って開口する凹面状に形成して、貫通孔9a,9bを通して底板部4の中心部に向かう方向への移動が許容される形状の突出部分12を中間枠板部5の裏面との共同で成形できるように設けてある。
【0030】
具体的には、図8に示すように、中央貫通孔9aに対応して設けられている第1突出部分成形面17aは、図8(a)に示すように突条部18の上面18aにおいて、互いに平行な左右両側辺部分19が突条部18の側面18bに直交する、平面視で略コの字形に開口し、図8(b)に示すように側面18bにおいて、中央貫通孔9aの中間枠板部5の裏面に沿わない周縁部分に沿った、側面視で略コの字形に開口し、図8(c)に示すように全面に亘って一定深さで凹入する凹面状に形成してある。
【0031】
図9に示すように、角部貫通孔9bに対応して設けられている第2突出部分成形面17bは、図9(a)に示すように突条部18の上面18aにおいて、頂部28と角部29とを結ぶ線分Lが装着凹部16の略中心に向かう、平面視で略放物線状に開口し、図9(b)に示すように側面18bにおいて、角部貫通孔9bの中間枠板部5の裏面に沿わない周縁部分に沿った略コの字形に開口し、図9(c)に示すように全面に亘って一定深さで凹入する凹面状に形成してある。
【0032】
第2金型15は、樹脂板1の扁平な外向き面1aを形成する樹脂板成形面20と、枠体3の内周側である凹面部8に溶融樹脂を射出するためのホットランナー21とを備えている。
【0033】
上記金型13を使用してパネルPを製造する本発明によるパネル製造方法を説明する。
図6に示すように、枠体3の環状溝部分22に突条部18を嵌入させて、金属製部材2を第1金型14の装着凹部16に凹面部8が第2金型側に向く姿勢で装着する。
【0034】
次に、図7に示すように、第1金型14と第2金型15とを密着させて、凹面部8に溶融樹脂を射出することにより、金属製部材2の凹面部8との共同で樹脂板1を成形するとともに、各貫通孔9a,9bを通して外方、つまり、枠体3の内側に突出する突部10を成形する。
【0035】
この樹脂成形時において、各突部10は、枠体3に対する枠体内側に向かう方向への移動が許容される形状に成形されるので、樹脂板1の収縮に伴う突部10の移動により枠体3が変形するおそれが少ない。
また、樹脂板1及び突部10は、金属製部材2に対して固着されないように成形される。
【0036】
〔第2実施形態〕
図10は、本発明によるパネル製造方法で製造したパネルPの別実施形態を示し、図11は、そのパネルPを製造するために使用する金型13を示し、図12〜図14は、パネルPの製造方法の別実施形態を示す。
【0037】
パネルPは、図10に示すように、略矩形の透明樹脂板1の外周部に金属製部材2を一体に組み付けてあり、樹脂板1の一側面には加飾層23を転写してある。
【0038】
金属製部材2は、第1実施形態で示した枠体3だけで構成してあり、第1実施形態で示した底板部4は備えていない。
【0039】
枠体3は、第1実施形態で示したものと同様に構成され、樹脂板1は、第1実施形態で示したものと同様に、枠体3の凹入部9である貫通孔9a,9bに入り込む板状の樹脂製突部10を一体に備えている。
【0040】
金型13は、図11に示すように、第1実施形態と同様に、第1金型14と第2金型15とを備えている。
【0041】
第1金型14の第2金型15に対する対向面は全面に亘って扁平な成形面30に形成されていて、樹脂板1の加飾層23が転写された一方の扁平な板面1bを成形できるように構成されている。
【0042】
第2金型15の第1金型14に対する対向面には、枠体3が位置決め状態で装着される第1実施形態で示したものと同様の突条部18と、樹脂板1の他方の扁平な板面1cを成形する成形面24を備えた凹面部25とが形成され、凹面部25に溶融樹脂を射出するためのホットランナー21を形成してある。
【0043】
上記金型13を使用してパネルPを製造する本発明によるパネル製造方法を説明する。
図12に示すように、枠体3の環状溝部分22に突条部18を嵌入させて金属製部材2を第2金型15に装着し、成形面24に対向する第1金型14の成形面30に加飾シート26を配置する。
【0044】
加飾シート26は、基体シート27に加飾層23を剥離可能に積層して構成され、加飾層23は絵柄層や接着層等を積層して構成され、基体シート27側が第1金型14の成形面30に対向し、加飾層23側が第2金型15の成形面24に対向するように当該金型14の内側に配置する。
【0045】
次に、図13に示すように、第1金型14と第2金型15とを密着させて、凹面部25に溶融樹脂を射出し、枠体3の内側に樹脂板1を成形するとともに、各貫通孔9a,9bを通して枠体3の内側に突出する突部10を成形する。
【0046】
次に、図14に示すように、第1金型14と第2金型15とを離間させると、加飾層23が基体シート27から剥離し、加飾層23が樹脂板1の一側面に転写されたパネルPが製造される。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0047】
〔第3実施形態〕
図15は、第2実施形態の変形例を示し、金属製部材2は第1実施形態で示した枠体3と底板部4とを備えたものであり、この金属製部材2を、枠体3の環状溝部分22に突条部18を嵌入させて第2金型15に装着し、成形面24に対向する第1金型14の成形面30に加飾シート26を配置する。
【0048】
第2金型15には、突出部分成形面17に開口するホットランナー21を設けてあり、溶融樹脂を突出部分成形面17から凹入部9を通して枠体3の内周側である凹面部8に射出する。
その他の構成は第1又は第2実施形態と同様である。
【0049】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるパネル製造方法は、角棒や丸棒などの中実の金属部材で構成された枠体を使用してもよい。
2.本発明によるパネル製造方法は、枠体を貫通しない有底の凹入部を備えた枠体を使用してもよい。
3.本発明によるパネル製造方法は、枠体を貫通しない有底の凹入部を一連の環状に備えた枠体を使用して、突部をその凹入部に一連に入り込む環状に成形してもよい。
4.本発明によるパネル製造方法で製造されたパネルは、樹脂製突部或いは樹脂板と枠体とが一体に固着されていても、一体に固着されていなくてもよい。
5.本発明によるパネル製造方法で製造されたパネルは、樹脂板とその一側面を覆う板材とが一体に固着されていても、一体に固着されていなくてもよい。
6.本発明によるパネル製造方法で製造されたパネルは、平面視で矩形のパネルに限定されず、平面視で矩形以外の多角形や円形,楕円形のパネルであっても良い。
7.本発明によるパネル製造方法で製造されたパネルは、成形された樹脂板の形状が平面視で矩形に限定されず、平面視で矩形以外の多角形や円形,楕円形であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】パネルの斜視図
【図2】(a)パネルの平面図、(b)パネルの断面図、(c)(a)におけるc−c線断面図
【図3】(a)金属製部材の斜視図、(c)(a)におけるb−b線断面図
【図4】金型の断面図
【図5】第1金型の平面図
【図6】パネル製造方法の説明図
【図7】パネル製造方法の説明図
【図8】(a)要部の平面図、(b)要部の側面図、(c)要部の断面図
【図9】(a)要部の平面図、(b)要部の側面図、(c)要部の断面図
【図10】第2実施形態を示すパネルの断面図
【図11】第2実施形態を示す金型の断面図
【図12】第2実施形態を示すパネル製造方法の説明図
【図13】第2実施形態を示すパネル製造方法の説明図
【図14】第2実施形態を示すパネル製造方法の説明図
【図15】第3実施形態を示すパネル製造方法の説明図
【符号の説明】
【0051】
1 樹脂板
3 枠体
4 板材(底板部)
5 覆い部材(中間枠板部)
9 凹入部
9a 貫通孔
9b 貫通孔
10 突部
12 突出部分
13 金型
23 加飾層
26 加飾シート
27 基体シート
30 金型の成形面
P パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂板の外周端面を金属製枠体で囲んであるパネルを製造するためのパネル製造方法であって、
少なくとも内周側に向けて開口し、かつ、前記樹脂板の板面に沿う方向に凹入する凹入部が形成されている枠体を使用して、その枠体を樹脂板成形用金型の内側に装着し、
前記枠体の内周側に樹脂を射出して、前記凹入部に入り込む樹脂製突部を一体に備えた樹脂板を成形するパネル製造方法。
【請求項2】
前記凹入部が、周方向に間隔を隔てて形成してある複数の貫通孔で構成されており、
前記貫通孔を通して外方に突出するように前記突部を成形する請求項1記載のパネル製造方法。
【請求項3】
前記枠体が、前記突部の前記貫通孔からの突出部分を前記樹脂板の一側面側から覆う覆い部材を備えている請求項2記載のパネル製造方法。
【請求項4】
前記突部を、樹脂成形時において、前記枠体に対する枠体内側に向かう方向への移動が許容される形状に成形する請求項1〜3のいずれか1項記載のパネル製造方法。
【請求項5】
前記枠体が、前記樹脂板の一側面を覆う板材を備えている請求項1〜4のいずれか1項記載のパネル製造方法。
【請求項6】
基体シートに加飾層が剥離可能に積層された加飾シートを、前記基体シート側が前記金型の成形面に対向するように当該金型の内側に配置して、前記枠体の内周側に樹脂を射出する請求項1〜5のいずれか1項記載のパネル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−111097(P2010−111097A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287866(P2008−287866)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】