説明

パラボラアンテナ装置

【課題】部品点数が少なく、組立作業性が良好で、風圧などに対する剛性や耐震性に優れ、サイドローブの抑制が促進されたアンテナ特性の良好な電波反射体の接合構造を提供すること。
【解決手段】内表面の少なくとも一部に電波吸収体を有するレドームと、該レドームと連結された電波反射体とを少なくとも有することを特徴とするパラボラアンテナ装置。前記電波反射体の外側に漏れようとする電波は前記電波吸収体で吸収されてサイドローブを減少させつつ一次放射器に集束される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラボラアンテナ装置に関し、特にレドームがアンテナ特性を向上させるための電波吸収体を有するパラボラアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パラボラアンテナ装置は、微弱な電波を電波反射体の中心に効率よく集めることができるので、近年、衛星放送や衛星通信に非常に多く用いられている。特に直進性が強く、大容量の情報を伝達できるマイクロ波(SHF)などには、パラボラアンテナ装置が適しており、電話局間を結ぶ中継回線、レーダ、BS放送、CS放送、衛星通信などにパラボラアンテナ装置が用いられている。
前記パラボラアンテナ装置は、その設置場所として、ビルの屋上や山の頂上のように地上よりかなり高い位置に設置されることが多いため、風や地震等の振動にも耐えられる構造で、かつ軽量であることが望まれている。また、伝達情報量がより大きく、通信精度がより高いパラボラアンテナ装置の開発が望まれている。
【0003】
このようなパラボラアンテナ装置は、電波を効率よく集束させるための回転放物面を有する電波反射体、該電波反射体と接合しアンテナ特性を向上させるための支持体、電波を送受信する一次放射器及び取付器具などで構成されている。
前記アンテナ特性を向上させ、通信精度の高いパラボラアンテナを得るためには、サイドローブを減少させることが効果的である。即ち、パラボラアンテナのような放射指向性のあるアンテナでは、縦軸にアンテナ利得(そのアンテナから任意方向に単位立体角当たりに放射される電力と、それと同一電力を供給されている等方性アンテナから単位立体角当たりに放射される電力の比をいう。)をdBで表し、横軸に電波反射体の回転放物面の中心軸を0度とし、該中心軸からの角度を表した放射指向性のパターン図において、中央部のメインビームの両脇にサイドローブという小さな山(lobe)が生じる。該サイドローブは、他に設置されている衛星通信システムあるいは地上系通信回線に対して干渉を与えるとともに、それらからの干渉を受ける源となるので、できるだけ低減することが望ましい。
前記サイドローブを減少させるため、一般に電波吸収体を用い悪影響のおそれのある電波を吸収してサイドローブを減少させることが知られているが、前記電波反射体の反射面に電波吸収体を備えたアンテナ装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、前記アンテナ装置の場合、電波反射体における反射面の縁部全周に直接電波吸収体を貼付し、前記反射面の縁部で反射する電波を吸収して電界強度を下げることによりサイドローブを低減しようとするものである。更に縁に近づく程、吸収を大きくするため電波吸収体の炭素含有量を増やすなどして、いわゆるエッジレベルの低下を計っている。このように曲面形状をしている反射面の全周に電波吸収体をしわが生じないよう貼付しなければならず組立性に劣り、また、縁にいく程電波吸収体の炭素含有量を変化させる点で製造効率が低下するという問題がある。
【0005】
そのため、前記電波反射体を支持する支持体で前記電波反射体の外側に漏れようとする電波を抑圧し、更に前記支持体のみでは不充分な場合に補充的に前記支持体の内側に電波反射体を貼付することによりサイドローブを減少させるパラボラアンテナ装置が提案されている。
【0006】
図3に示すように、前記パラボラアンテナ装置120は、レドーム101、電波吸収体102、支持体103、電波反射体104、一次放射器105及びアンテナ保持部材115で構成されている。
図3に示すように、円筒形の支持体103は、その両端部にフランジ部103a及び103bが形成されている。フランジ部103aには、同一形状のフランジ部101aが形成されたレドーム101が、該フランジ部どおしが当接し結合部材で固定される。
他方、フランジ部103bには、同一形状のフランジ部104aが形成された電波反射体104が、該フランジ部どおしが当接し、更に同一形状のフランジ部115aが形成されたアンテナ保持部材115が、該フランジ部どおしが当接し、支持体103、電波反射体104及びアンテナ保持部材115が結合部材で固定される。
図3に示すように、支持体103の円筒の内周側面には電波反射体102及び102aが貼付されている。
【0007】
以上の構成により従来のアンテナ装置においては、受信電波はレドーム101及び支持体103を通過して電波反射体104の反射面で反射し、一次放射器105に集束されて受信することができる。一次放射器により放射された送信波は、電波反射体104で反射され相手方に対し、正確に直進発射される。電波吸収体102及び102aにより、サイドローブは補充的に抑制される。
従来のアンテナ装置においては、図4に示すアンテナ特性が得られる。図4の縦軸は、アンテナ利得(そのアンテナから任意方向に単位立体角当たりに放射される電力と、それと同一電力を供給されている等方性アンテナから単位立体角当たりに放射される電力の比をいう。)をdBiで表し、横軸は、電波反射体104の回転放物面の中心軸を0度とし、該中心軸からの角度を表している。
【0008】
しかしながら、従来のパラボラアンテナ装置の場合、図3に示すように、支持体103の形状が複雑であり、加工性や組立作業性が劣るという問題がある。また、支持体での電波抑制が不充分な場合にのみ、前記電波吸収体を組立後に貼付するという事後調整によりサイドローブを減少させるため、アンテナ組立後に支持体103の内周側面に電波吸収体102及102aを貼付する作業は製造効率を低下させるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平11−220323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、部品点数が少なく、構造が簡単で、組立作業性に優れ、サイドローブを効果的に減少させることによりアンテナ特性の良好なパラボラアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 内表面の少なくとも一部に電波吸収体を有するレドームと、該レドームと連結された電波反射体とを少なくとも有することを特徴とするパラボラアンテナ装置である。
該パラボラアンテナ装置においては、前記レドームに前記電波吸収体を備えているので、前記レドームを透過する送受信電波は、前記電波吸収体によりサイドローブを発生させる悪影響のある電波のみが吸収され、アンテナの放射指向性が向上する。
<2> 電波吸収体が、板状及びシート状の少なくともいずれかである前記<1>に記載のパラボラアンテナ装置である。
該パラボラアンテナ装置においては、前記電波吸収体が、板状、シート状であるため、前記レドームの内周側面が湾曲していても、曲面に沿って貼付することができ、作業性が向上する。そして、前記内周側面から大きく突出することはなく、透過電波の障害とはならない。
<3> 電波吸収体が、塩化ビニリデン系合成繊維により形成された前記<1>から<2>のいずれかに記載のパラボラアンテナ装置である。
該パラボラアンテナ装置においては、前記塩化ビニリデン系合成繊維により形成されていると、柔軟性があり、前記レドームの内周側面が湾曲していても、曲面に沿って確実に貼付することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパラボラアンテナ装置によると、従来における前記諸問題を解決できる。即ち、本発明では、部品点数が少なく、構造が簡単で、組立作業性に優れ、サイドローブを効果的に減少させることによりアンテナ特性の良好なパラボラアンテナ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
―パラボラアンテナ装置―
本発明に係るパラボラアンテナ装置は、レドーム、電波吸収体、電波反射体、一次放射器を有し、適宜選択されるアンテナ保持部材やその他の部品で構成されている。前記レドームの内周側面には前記電波吸収体が貼付されている。
【0014】
――レドーム――
前記レドームは、前記電波反射体や前記保持体に異物などが付着しないよう保護するとともに、外来電波との干渉を防止してアンテナ特性を向上させる機能がある。
前記レドームの構造としては、前記電波反射体を保護し、アンテナ特性が良好なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単独又は2以上の組合せによる構造でもよいが、機械的強度や加工性の点で単独構造が好ましい。
例えば、一端が開口している円筒形からなり、前記保持体の開口部に、ねじなどの結合部材で着脱可能に固定しうる固定部を有する構造などが挙げられる。
前記レドームの大きさとしては、前記電波反射体をカバーしうるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、外径は前記電波反射体よりもやや大きく、深さは、200mm以下が好ましく、10〜100mmがより好ましい。200mmを超えると、アンテナ装置の外形が大きくなり、小型化に劣り、機械的強度も低下するからである。
前記レドームの形状としては、アンテナ特性が良好であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円筒形の底部が平らでも、曲面形状でもよいが、機械的強度の点で曲面形状が好ましい。開口部は、一定の幅を有し、結合用の貫通孔を有するフランジ部を形成したものなどが挙げられる。
前記レドームの材料としては、機械的強度やアンテナ特性が良好なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスチック、セラミックなどが挙げられるが、ガラスクロスを含むエポキシ樹脂などのFRP(Fiber Reinforced Plastic)が機械的強度やアンテナ特性の点で好ましい。また、前記電波反射体を保護する使用周波数の電波を低損失で透過できるように、前記レドームの比誘電率および厚みが選択される。
前記レドームの製造方法としては、均一に形成しうるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、射出成型、成形型にシートを貼り合わせる積層方法などが挙げられる。前記レドームの表面には、耐候性を向上させるため塗装などの表面処理が施される。
【0015】
−電波吸収体−
前記電波吸収体は、前記サイドローブを生じさせる悪影響のある電波を吸収してアンテナの特性を向上させる機能を有し、広帯域に対応するものや、特定の狭い帯域に対応するものがある。
前記電波吸収体の構造としては、電波吸収作用を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層、多層、ピラミッド形、グリッド形及びタイル形などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電波吸収体の材料としては、電波吸収作用を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、誘電損失材、磁性損失材などが挙げられるが、吸収特性の点で焼結フェライト、塩化ビニリデン系合成繊維などの誘電損失材が好ましい。
前記電波吸収体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シート状、板状、立方体などが挙げられるが、取扱性の点で厚み10〜40mmのシート状又は板状が好ましい。
前記電波吸収体の大きさとしては、アンテナ装置に取付しうるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、運搬など取扱いの便宜のため一定の大きさに形成されたものでもよい。具体的には、500mm×500mm、1000mm×1000mmなどが挙げられる。これらは、使用する部位に応じて、適宜目的に応じた大きさに切断して用いられる。
前記電波吸収体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉末材料を合成する燃焼合成法、樹脂を成型する方法などが挙げられる。
【0016】
−電波吸収体のレドームへの取付−
本発明に係る電波吸収体は、前記レドームに取り付けられる。前記電波吸収体の取付位置としては、サイドローブを生じさせる悪影響のある電波を効率よく吸収してアンテナの特性を向上させる位置であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記レドームの内周側面の全周や少なくとも一箇所に取り付けられる。内周側面としたのは、送受信電波の通過に対して障害とならないようにするためであり、耐候性や外観の点で好ましいからである。前記電波吸収体が少なくとも一箇所設けることにより、前記電波反射体から外側に漏れようとする電波が効果的に前記電波吸収体により吸収され、前記サイドローブが減少する。
【0017】
−電波反射体−
前記電波反射体は、送受信電波を反射し効率よく一次放射器に集束させる機能を有する。
【0018】
前記電波反射体の構造としては、前記回転放物面部を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単独でもよく、2以上が組合わされたものでもよいが、加工性の点で単独の構造が好ましい。例えば、前記回転放物面部と取付部とで形成した単独構造でもよい。また、前記電波反射体は、板やメッシュを適宜加工したものでもよいが、効率良く電波を反射させる点で板を加工したものが好ましい。
前記回転放物面部は、送受信電波を効率よく反射するために、回転放物面は滑らかで均一であることが好ましい。前記回転放物面部は、あらゆる角度で進入した電波が一つの焦点に集まるという放物線の特性を利用し、該放物線を回転させた曲面で形成されている。前記取付部は、前記電波反射体を保護するレドームが装着できる構造であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一定の幅を有するフランジ構造などが挙げられる。
【0019】
前記電波反射体の大きさとしては、送受信電波帯の使用周波数に対応したアンテナ特性が良好なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、マイクロ波(SHF、周波数:3GHz〜30GHz、波長:1〜10cm)の場合は、直進性が強い性質を持つため、特定の方向に向けて発射するのに適しており、伝送できる情報量が非常に大きいことから、電話局間を結ぶ中継回線、レーダ、衛星通信及び衛星放送などに用いられるが、波長やアンテナの利得などを考慮して前記電波反射体の直径は、数10cm〜数mの範囲で選択することができる。前記フランジ構造の大きさは、前記レドーム接合して一体となり相互に機械的強度が高まるものであれば、特に制限はないが、ボルトなどの結合部材用の貫通孔を設けることから、幅が、15〜25mmが好ましい。15mmより小さいと結合部材が小さくなり機械的強度が低下し、25mmを超えると接合部分の面積が大きくなり面圧が低下し充分な結合が得られないからである。
【0020】
前記電波反射体の厚みとしては、軽量かつ機械的強度が保持できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記電波反射体の大きさや材料に応じて厚みが選択される。例えば、材料がアルミニウム板で前記電波反射体の直径が約1mのものであれば1〜3mmが好ましく、1.6〜2.5mmがより好ましく、加工性、重量及び機械的強度の点で2mmが最も好ましい。
【0021】
前記電波反射体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板金の場合は絞り加工、プレス加工、打ち出し加工など、鋳造の場合は、シェルモールド法などが挙げられる。前記アルミニウム板では、金型によるプレス加工が好ましい。金型を使用することにより製品にばらつきがなく高精度で均一に作製することができる。更に耐久性を確保するため、加工後は洗浄処理を施し表面に塗装することが好ましい。
【0022】
前記電波反射体は、オフセットアンテナ、カセグレンアンテナなどの各種のパラボラアンテナ装置に用いることができる。
オフセットアンテナは、パラボラ面の一部の面のみを主反射鏡として使うことにより、一次放射器を開口の外に設けるようにしたアンテナで、受信電波は主反射鏡で反射され、直接一次放射器に集束される。パラボラ面の一部のみを利用しているので、小型化が可能となる。また、主反射鏡の中心軸方向に、障害となる副反射鏡や一次放射器がないため、低サイドローブ化が図れる点に特徴がある。
他方、カセグレンアンテナは、回転対称な電波反射体を主反射鏡とし、該主反射鏡面と垂直なの中心軸方向に副反射鏡及び一次放射器が設けられているアンテナで、受信電波は、主反射鏡で反射され、該反射波は更に副反射鏡で反射され、一次放射器に集束される。受信電波は主反射鏡面全体でキャッチできるので受信効率がよい点に特徴がある。
【0023】
―一次放射器―
本発明に用いられる一次放射器は、前記電波反射体で集束した電波を受信し、送信電波を前記電波反射体に向けて送信する機能を有する。前記一次放射器としては、送受信電波帯の使用周波数を好適に送受信できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
−アンテナ保持部材−
前記アンテナ保持部材は、保持枠、支柱、保持プレート及び取付器具で構成されている。前記電波反射体を保持するとともに、適切な位置及び姿勢で装備する機能がある。
【0025】
――保持枠――
前記保持枠は、前記電波反射体を保持する機能を有する。前記保持枠の構造としては、前記電波反射体を保持しうるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単独でもよく、2以上が組合わされたものでもよいが、加工性の点で単独の構造が好ましい。例えば、前記電波反射体のフランジ部と同形状のフランジ部を一端に有する円筒形で、両端が開口している単独構造などが挙げられる。
【0026】
前記保持枠の大きさとしては、前記電波反射体のフランジ部に接合しうるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記開口部に前記電波反射体の前記回転放物面部が挿入されるので、前記開口部の内径は、前記電波反射体の前記回転放物面部の外径よりも2〜5mm大きく形成されていることが好ましい。
【0027】
前記保持枠の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属材料からなる板、パイプなどが挙げられる。前記金属材料としては、アルミニウム、ジュラルミン、鉄、ステンレス、銅、黄銅などが挙げられるが、軽量かつ機械的強度が高いアルミニウム板が好ましい。
【0028】
前記保持枠の厚みとしては、軽量かつ機械的強度が保持できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記電波反射体の大きさや材料に応じて厚みが選択される。例えば、材料がアルミニウム板で前記開口部の直径が約1mのものであれば1〜3mmが好ましく、1.6〜2.5mmがより好ましく、2mmが最も好ましい。
【0029】
前記保持枠の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、板金の場合は絞り加工、プレス加工、曲げ加工、打ち出し加工、冷間引き抜き加工などが挙げられる。前記アルミニウム板の場合では、プレス加工、へら絞り加工、曲げ加工などが好ましい。耐久性を確保するため、加工後は洗浄処理を施し表面に塗装することが好ましい。
【0030】
―支柱―
前記支柱は、前記保持プレートを介して前記保持枠とアンテナを設置するための取付器具を連結する機能を有し、前記支柱による連結構造を採ることにより前記アンテナ保持部材の軽量化を計ることができる。
前記支柱の構造としては、機械的強度があれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単独でも2以上を組合わせた構造でもよい。例えば、単独構造の前記支柱を少なくとも3個用い、前記保持枠のフランジ部の背面の3箇所に等間隔で該支柱の一端を接合し、他端を保持プレートに接合する構造が好ましい。
前記支柱の形状としては、機械的強度があれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、棒状、板状などが挙げられる。加工性の観点から丸棒、角棒などが好ましい。
前記支柱の大きさとしては、機械的強度があれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、太さは5〜30mmなどが挙げられるが、10〜20mmが好ましい。長さは、前記電波反射体の突出している裏面の高さと同じかそれよりも大きいものが好ましい。
前記支柱の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、プラスチックなどが挙げられる。これらのなかでも、機械的強度や軽量化の観点から金属のパイプ材が好ましい。
【0031】
―保持プレート―
前記保持プレートは、前記支柱の一端と結合し、前記取付器具と接合してアンテナ保持部材として一体になるよう連結材としての機能を有する。
前記保持プレートの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単独でも2以上を組合わせた構造でもよい。機械的強度や加工性の点で単独構造のものが好ましい。例えば、円盤状の板の中央部に前記電波反射体の突出部分を逃げ、軽量化を計るための貫通孔が形成されているものが挙げられる。
前記保持プレートの材料としては、機械的強度があれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、プラスチックなどが挙げられるが、機械的強度の点で金属が好ましい。金属としては、鉄、アルミニウム、銅、黄銅などが挙げられるが、機械的強度や軽量化の点でアルミニウムが好ましい。
前記保持プレートの大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記保持枠の外形の1/4から1/2の外形を有し、厚みは、2〜5mmが好ましい。
【0032】
―取付器具―
前記取付器具は、アンテナ装置を適宜目的とする場所に設置する機能を有し、設置後に姿勢の調整をするため、水平、垂直方向に自在に回転し目的の姿勢で固定しうるものが挙げられる。前記取付器具の機構や構造としては、アンテナ装置を支える機械的強度があり耐候性、耐震性があれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
―アンテナ保持部材の組立―
前記アンテナ保持部材は、前記保持枠、前記支柱、前記保持プレート及び前記取付器具がそれぞれ溶接されて結合する。まず、前記保持枠のフランジ部の背面に前記支柱の一端が溶接され、該支柱の他端が前記保持プレートに溶接される。前記支柱の数に応じて前記溶接が施される。更に該保持プレートが前記取付器具に溶接されて組立てられる。
【0034】
−レドーム、電波反射体及びアンテナ保持部材の組立−
本発明のアンテナ装置は、前記レドームのフランジ部、前記電波反射体のフランジ部及び前記保持枠のフランジ部がそれぞれ当接し、各フランジ部に形成されている貫通孔に結合部材を挿入して締結され一体構造となる。
【0035】
――その他の部品――
その他の部品としては、例えば、導波管、ケーブル、LNA(ローノイズアンプ)、LNB(ローノイズブロックダウンコンバータ)などが挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について、説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。本発明の実施例では、使用周波数が18GHz帯でアンテナ有効径がφ75cmのパラボラアンテナ装置を採用した。
【0037】
―レドーム―
図1は、本発明のパラボラアンテナ装置を示す斜視図である。図1に示すように、レドーム1は、円筒形で、高さは高い部分で約100、低い部分で約50mmの傾斜を有し、底面は曲率半径R1000mmの上下左右対象の球面形状で作製した。開口部の内径は、使用周波数に対応し、約φ800mm、フランジ部1aの外形は846mm±5mm、底面の厚みは3mmで形成されている。また、結合用の貫通孔がフランジ部1aに、φ5mmの大きさで6箇所均等に形成されている。材料は、ガラスクロスを含むエポキシからなるFRPを用い、射出成型により作製した。表面はウレタン塗装が施されている。
【0038】
−電波吸収体−
電波吸収体4は、塩化ビニリデン系の合成繊維を素材とするロック形状を採用した。前記ロック形状とは、合成繊維などをスプリング状にカール(捲縮)し、これらを結合材で被覆結合したものをいう。具体的には、三菱電線工業株式会社製のFP−1を用いた。FP−1はロック形状の厚さ方向の密度を電波入射面側を粗く、内部にいく程、密とした密度勾配型となっており、耐候性を向上させるため、導電性塗料が塗布されている。
このような構造により、広い周波数帯域にわたり優れた反射減衰量特性が得られる。
前記FP−1の大きさは、1000mm×1000mmで、厚みは、20mmとなっている。使用周波数帯域としては、6〜40GHzに対応でき、20dB以上の反射減衰量が得られる。
【0039】
−電波吸収体のレドームへの取付−
本実施例の電波吸収体2及び2aは、レドーム1の内周側面の高さが約70の傾斜している中間の位置において、開口部の端から5mmの位置に、大きさを50mm×100mmにカットし、長手方向が円周方向になるように貼付した。この貼付位置と対向する側にも同様に貼付した。
このような位置に取り付けられているので、送受信電波の通過に対して障害とならず、耐候性もよく、外観を損なうことはない。この電波吸収体2及び2aにより電波反射体4から外側に漏れようとする電波が効果的に電波吸収体2により吸収され、前記サイドローブが効果的に減少する。
【0040】
−電波反射体−
図1に示すように、電波反射体4は、回転放物面及びフランジ部4aにより形成された18GHz帯用のカセグレンアンテナ用の電波反射体である。
電波反射体4の大きさは、電波反射面として使用する有効反射面の外径をφ750mm、フランジ部4aの外径をφ846±mmとして作製した。フランジ部4aには、結合用の貫通孔が、レドーム1のフランジ部1aの貫通孔に対応してφ5mmの大きさで6箇所均等に形成されている。
電波反射体4の材料は、加工性の良い1100形系のアルミニウム板(A1100P−0)の厚さ2mmを用い、金型によるプレス加工により作製した。
【0041】
―一次放射器―
本実施例では、電波反射体2で集束した電波を受信し、送信電波を電波反射体2に向けて発射する機能を有する18GHz帯用の一次放射器を用いた。
【0042】
−アンテナ保持部材−
アンテナ保持部材15は、保持枠6、支柱7、保持プレート8及び取付器具10で構成されている。電波反射体4を保持するとともに、適切な位置及び姿勢で装備する機能がある。
【0043】
――保持枠――
図1に示すように、保持枠6は、電波反射体4のフランジ部4aと同形状のフランジ部を一端に有する円筒形で、両端が開口している単独構造で作製した。
保持枠6の開口部の内径は、φ800mm、フランジ部6aの外径をφ846±mmとして作製した。フランジ部6aには、結合用の貫通孔が、レドーム1のフランジ部1a及び電波反射体4のフランジ部4aの両方の貫通孔に対応してφ5mmの大きさで6箇所均等に形成されている。
保持枠6の材料は、加工性の良い1100形系のアルミニウム板(A1100P−0)の厚さ2mmを用い、金型によるプレス加工により作製した。
【0044】
―支柱―
図1に示すように、支柱7は、アルミニウム管(A1050−O)20×t2を用い、長さ200mmで切断し作製した。本実施例では、支柱7は4本用いられるので、4本同形状に作製した。
【0045】
―保持プレート―
図1に示すように、保持プレート8は、アルミニウム板(A5052P−34)t3を外形300mm、貫通孔の内径200mmで、タレットパンチプレスを用いて作製した。
【0046】
―取付器具―
取付器具10は、アルミニウム板(A5052P−34)の厚み3mmを用いて、箱形の筐体構造に形成し、姿勢の調整をするため、水平、垂直方向に自在に回転し目的の姿勢で固定しうるように回転機構を形成した。
【0047】
―アンテナ保持部材の組立―
アンテナ保持部材15は、保持枠6、支柱7、保持プレート8及び取付器具10をそれぞれアーク溶接して結合した。
【0048】
−レドーム、電波反射体及びアンテナ保持部材の組立−
本実施例のアンテナ装置20は、レドーム1のフランジ部1a、電波反射体4のフランジ部4a及び保持枠6のフランジ部6aをそれぞれ当接し、各フランジ部に形成されている貫通孔に5mmのボルトを挿入し、反対側を5mmの座金及びナットで締結し一体構造とした。
【0049】
―パラボラアンテナ装置―
本実施例のパラボラアンテナ装置20は、その他の部品として、例えば、導波管、ケーブル、LNA(ローノイズアンプ)、LNB(ローノイズブロックダウンコンバータ)などが設けられ、取付器具10を介してビルの屋上に設置した。使用周波数帯の送信先に向けて姿勢を調整して受信した。
図2に示すように、本実施例のパラボラアンテナ装置20の放射指向性は、図4に示す従来のパラボラアンテナ装置の放射指向性と比較して、複数生じていたサイドローブのうち、角度が60°〜120°及び角度が−60°〜−120°の各範囲で10数dBi減少したことにより、指向性及び電波干渉の点が顕著に改善されていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のパラボラアンテナ装置は、電話局間を結ぶ中継回線、レーダ、衛星通信、電波天文、宇宙研究、無線LAN及び衛星放送(CS放送、BS放送など)などの通信機器のパラボラアンテナ装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明のパラボラアンテナ装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明のパラボラアンテナ装置の指向性を示すチャート図ある。
【図3】図3は、従来のパラボラアンテナ装置を示す斜視図である。
【図4】図4は、従来のパラボラアンテナ装置の指向性を示すチャート図ある。
【符号の説明】
【0052】
1・・・・・・・・・・・レドーム
2・・・・・・・・・・・電波吸収体
4・・・・・・・・・・・電波反射体
5・・・・・・・・・・・一次放射器
6・・・・・・・・・・・保持枠
7・・・・・・・・・・・支柱
8・・・・・・・・・・・保持プレート
10・・・・・・・・・・取付器具
15・・・・・・・・・・アンテナ保持部材
20・・・・・・・・・・パラボラアンテナ装置
101・・・・・・・・・電波反射体
102・・・・・・・・・電波吸収体
103・・・・・・・・・支持部
104・・・・・・・・・電波反射体
105・・・・・・・・・一次放射器
106・・・・・・・・・保持枠
107・・・・・・・・・支柱
108・・・・・・・・・保持プレート
110・・・・・・・・・取付器具
115・・・・・・・・・アンテナ保持部材
120・・・・・・・・・パラボラアンテナ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内表面の少なくとも一部に電波吸収体を有するレドームと、該レドームと連結された電波反射体とを少なくとも有することを特徴とするパラボラアンテナ装置。
【請求項2】
電波吸収体が、板状及びシート状の少なくともいずれかである請求項1に記載のパラボラアンテナ装置。
【請求項3】
電波吸収体が、塩化ビニリデン系合成繊維により形成された請求項1から2のいずれかに記載のパラボラアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−81041(P2006−81041A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264744(P2004−264744)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】