説明

パルスジェネレータおよびそのパルスジェネレータを用いたインパルス無線送信機

【課題】インパルス放射を用いた無線通信装置において、デジタル信号を直接的に超広帯域(例えば、3GHz〜10GHz)な周波数成分のインパルスに変換することができるパルスジェネレータ及びそのパルスジェネレータを用いた無線送信機を提供する。
【解決手段】本発明のパルスジェネレータは、エミッタが接地され、コレクタに電流制限回路を介して駆動電流が入力され、ベースに送信パルスが入力されるトランジスタと、一端が前記コレクタに接続されたコンデンサと、一端が接地され、他端がコンデンサの他端と接続されたインダクタとを有し、駆動電流によりコンデンサに電荷が蓄積された後、送信パルスにより蓄積された電荷が放電され、この放電に対応してインダクタに極誘導起電力が発生することにより、インパルスがインダクタの他端から出力される備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパルス無線システムに用いられるパルスジェネレータおよびそのパルスジェネレータを用いたインパルス無線信号を送信するインパルス無線送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、無線を用いたデータ通信において、ほとんど全ての周波数空間が利用され、データ通信を行うための媒介の機能を拡張する方法の必要性が非常に高まっている。
このため、無線データ通信のリンクに関して、不連続の振動チャネルではなく、より広い振動変調を用いる新しい無線通信方法およびシステムとして、インパルス無線通信により広帯域または超広帯域(UWB)を用いる無線通信技術の利用が行われている。
【0003】
既存の無線通信においては、周波数帯を分けるために「搬送波(キャリア)」を使い、搬送波の周波数や出力を一定の範囲で変えながら、搬送波の状態の変化を使って情報を伝えている。
一方、上述したUWBは搬送波を使わず、インパルスという信号を使って情報を伝えている。このインパルスとは、立ち上がりと立ち下がりの時間が極めて短い電流の信号形態を示している。UWBの場合,その時間は数100ピコ秒から数ナノ秒以下しかなく、インパルス信号がいかに短いかがわかる。
【0004】
そのインパルス信号を周波数成分で見てみると、様々な周波数の波(正弦波)の組み合わせに分解することができる。インパルス信号の幅を短くしていくことにより、時間に反比例して周波数帯域幅は広がる。このため、インパルス信号を使って信号を送るということは、パルス幅が短ければ短いほど、単位時間当たりにより多くの信号を伝えられることができる。すなわち、帯域幅が広けれ、より多くのインパルスを送信でき、また、速度だけでなく、電圧をかける時間が極めて短いため、平均電力が少なくなり、消費電力が低減されることとなる(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】Kazimierz Siwiak, Debra McKeown、"Ultra-wideband radio technology"、Wiley、2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1に示す従来のインパルス無線機にあっては、図11に示すように、周波数が安定な水晶発振器などの基準発振器により基準クロックを生成し、周波数シンセサイザが基準発振器の発振する基準クロックの周波数を合成し、精度の高い周波数のキャリアとなるインパルスを得るようにしている。
そして、上記インパルス無線機は、パルスシャープナーが送信データを上記基準クロックに同期させ、信号のエッジを急峻となるよう加工し、この加工させた送信データにより上記インパルス列をミキサーにより変調して、アンテナから変調されたインパルスを放射する。
【0006】
しかしながら、従来のインパルス無線機は、上述したように、基準発振器,周波数シンセサイザ,パルスシャープナー,ミキサーなどが必要であり、回路構成が複雑であり、発振器が常に発振動作を行っているため、消費電力が高い欠点を有している。
また、パルスジェネレータは、ステップリカバリダイオードが現在の半導体プロセスでは集積化が困難であり、ディスクリートで構成する必要があり、小型化が図れず、かつ負電源を必要とするため、負電源が設けられていない携帯機器に搭載することができない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、インパルス放射を用いた無線通信装置において、デジタル信号を直接的に超広帯域(例えば、3GHz〜10GHz)な周波数成分のインパルスに変換することができるパルスジェネレータ及びそのパルスジェネレータを用いた無線送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパルスジェネレータは、エミッタが接地され、コレクタに電流制限回路を介して駆動電流が入力され、ベースに送信パルスが入力されるトランジスタと、一端が前記コレクタに接続されたコンデンサと、一端が接地され、他端が前記コンデンサの他端と接続されたインダクタとを有し、前記駆動電流により前記コンデンサに電荷が蓄積された後、前記送信パルスにより蓄積された電荷が放電され、この放電に対応して前記インダクタに極誘導起電力が発生することにより、インパルスがインダクタの他端から出力されることを特徴とする。
【0009】
本発明のパルスジェネレータは、前記駆動電流が電流パルスとして供給され、電流パルスが入力された後に前記送信パルスを供給することにより、インパルスが前記コンデンサの他端から出力されることを特徴とする。
【0010】
本発明のパルスジェネレータは、送信パルスが入力される入力端子と前記トランジスタのベースとの間に、前記送信パルスの立ち下がりエッジのみを鈍らせる積分回路を介挿したことを特徴とする。
【0011】
本発明のパルスジェネレータは、前記電流駆動回路が前記送信パルスが入力されている間のみ駆動電流を供給し、かつ前記積分回路の前段に送信パルスを遅延させる遅延回路が挿入されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のインパルス無線送信機は、送信データから送信パルスを生成する送信パルス生成部と、前記送信パルスから送信データの情報を含んだインパルス信号を生成する請求項1から請求項4のいずれかに記載のパルスジェネレータと、前記インパルス信号を空間に放射するアンテナとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、送信するデジタル信号である送信パルスのエッジをトリガにしてインパルスを発生させるため、従来のように、基準クロックを発振する発振器,周波数シンセサイザ,パルスシャープナーやミキサーなどを設ける必要がなく、送信するインパルスを発生させるパルスジェネレータの回路を簡素化,小型化及び低消費電力化を達成することができ、携帯端末に搭載するインパルス無線送信機を容易に実現することができる。
また、本発明によれば、送信信号の送信処理を行う期間のみ、インパルス発生における電力が供給されるため、従来例に比較してより低消費電力化を達成することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態によるパルスジェネレータを図面を参照して説明する。図1は同実施形態によるパルスジェネレータの構成例を示すブロック図である。
この図1において、トランジスタQ1は、例えば、化合物半導体で形成されたft(電流利得遮断周波数)の高い(例えば、60GHz以上に対応)、npn型のバイポーラトランジスタであり、エミッタが接地されている。
【0015】
また、上記トランジスタQ1は、コレクタに対し、電流制限回路10を介して、送信制御回路11から出力される駆動パルスが入力される。ここで、電流制限回路10は、ダイオードまたは抵抗により構成されている。ダイオードの場合、アノードが送信制御回路11の出力側に、一方、カソードがトランジスタQ1のコレクタに接続される。また、トランジスタQ1は、ベースに対し、電流制限抵抗R1及びスピードアップコンデンサC1との並列接続された入力回路を介して、送信制御回路11から出力される送信パルスが入力される。
【0016】
コンデンサC2は、一方の端子C2aがトランジスタQ1のコレクタに接続され、他方の端子C2bがインダクタ(コイル)L1の一方の端子L1aに接続されている。
インダクタL1は、他方の端子L1bが接地され、一方の端子L1aが出力端子Toutに接続されている。
【0017】
送信制御回路11は、図2のタイミングチャートに示すように、時刻t1にΔTp1のパルス幅の「H」レベルの駆動パルスを出力し、時刻t2に駆動パルスを立ち下がった後、時刻t3にΔTp2のパルス幅の「H」レベルの送信パルスを出力する。
すなわち、送信制御回路11は、送信データが入力されると、この送信データを所定の形式(例えば、ON/OFF-Keying,Pulse-Position-Modulation等の変調方式に対応した形式)のデジタル信号である送信パルスに変換して出力するが、この送信パルスを出力する前に、その送信パルスをインパルスとするための駆動パルスを出力し、駆動パルスが出力された後に、入力された送信パルスを出力することになる。このため、送信周期ΔTは、ΔTp1とΔTp2とを加算した値により制限されることとなる。
【0018】
次に、図1及び図2を参照して、第1の実施形態によるパルスジェネレータの動作を説明する。
時刻t1において、送信制御回路11は、送信データが入力されることにより、駆動パルスVinを電流制限回路10に対して出力する。
これにより、コンデンサC2は、上記駆動パルスVin1により、電流制限回路10から供給される駆動電流により、電荷が蓄積(Charge)される。
そして、時刻t2において、送信制御回路11は、駆動パルスVin1を立ち下げる。
【0019】
次に、時刻t3において、送信制御回路11は、送信パルスVin2を上記入力回路を介して、トランジスタQ1のベースに対して出力する。
これにより、送信パルスVin2の立ち上がりにおいて、トランジスタQ1がオン状態となると、コンデンサC1に蓄積された電荷が急激に放電(Discharge)され、インダクタL1→コンデンサC2→トランジスタQ1、及び負荷→コンデンサC2→トランジスタQ1の方向(図1における実線矢印方向)に電流が流れ、出力電圧Voutが接地電位から負電位Vout-へ急峻に低下する(インパルスの立ち下がり部)。
【0020】
そして、インダクタL1には、上述した実線矢印方向に電流が流れることにより、逆誘導起電力が、上記実線矢印方向の電流の変化を抑圧する正電位Vout+が急峻に発生し(インパルスの立ち上がり部)、インダクタL1→負荷の方向(図1における破線矢印方向)に対し、急速に電流が流れる。
ここで、図1に示すパルスジェネレータにおいて発生可能なインパルスの周波数帯域特性は以下のように定義することができる。インダクタL1のインダクタンスをl1、コンデンサC2の容量をc2、負荷のインピーダンスをRoutとする。
最小周波数Fmin = 1/(2π・(l1・c2)1/2
最小周波数Fmax ≒ Rout/(2π・l1)
【0021】
次に、時刻t4において、送信制御回路11は、送信パルスVin2を立ち下げ、送信パルスVin2によるインパルスの生成を終了する。
上記時刻t1〜t4の処理が繰り返して行われることにより、インパルス無線におけるインパルスの生成処理が行われる。
この送信パルスVin2の立ち下がり時において、すでにコンデンサC2は蓄積した電荷が放電された後であるため、電圧の変化が無く、インダクタL1が逆誘導起電力を発生させることがなく、インパルスは発生されない。
【0022】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態によるパルスジェネレータを説明する。上述した第1の実施形態のパルスジェネレータは、送信パルスによりインパルスを発生させる際、駆動パルスが必要となるため、インパルスを発信する周期(速度)が駆動パルスにより制限され、インパルスの発信が高速化されるほど、駆動パルスと送信パルスとのタイミング制御が困難となっていく。
【0023】
そこで、パルスジェネレータを図3に示すように、駆動パルスにより駆動電流を供給するのではなく、トランジスタQ1のコレクタを電流制限回路10を介して電源に接続する回路構成が考えられる。他の構成については、第1の実施形態と同様であり、各構成には第1の実施形態と同様の符号が付与されている。
しかしながら、図3に示す回路構成によると、図4の波形図に示すように、常に、トランジスタQ2のコレクタに対して、電流制限回路10を介して駆動電流が供給されているため、送信パルスVin2の変化点である立ち上がり(時刻t1)と立ち下がり(時刻t2)との時点において、インパルスが発生されてしまう。この時刻t2の立ち下がり時点で発生されるインパルスは通信には不要な波形であり、除去する必要がある。
【0024】
そこで、図3に示すパルスジェネレータに対し、送信パルスの立ち下がりのみを鈍らせる(なまらせる)回路ブロック1、及び回路ブロック1にて反転された送信パルスをさらに反転させ、もとの位相に戻し、かつ立ち上がりエッジを急峻とする回路ブロック2を設けた第2の実施形態によるパルスジェネレータを図5に示す。
回路ブロック2及び3各々に初段における、抵抗R2及びコンデンサC3の並列接続と、抵抗R4とコンデンサとの並列接続は、図1における入力回路と同様の構成である。
【0025】
トランジスタQ2は、例えば、化合物半導体で形成されたft(電流利得遮断周波数)の高い(例えば、60GHz以上に対応)、npn型のバイポーラトランジスタであり、エミッタが接地されている。
また、上記トランジスタQ2は、コレクタに対し、電流制限抵抗R3を介して、電源回路から電圧Vccが接続されている。また、トランジスタQ2は、ベースに対し、電流制限抵抗R2及びスピードアップコンデンサC3との並列接続された入力回路を介して、送信制御回路11から出力される送信パルスが入力される。
さらに、トランジスタQ2は、コレクタが積分回路12を介して、回路ブロック2の入力回路に反転し、立ち上がりがなまった送信パルスを出力する。
【0026】
トランジスタQ3は、トランジスタQ1及びQ2と同様に、例えば、化合物半導体で形成されたft(電流利得遮断周波数)の高い(例えば、60GHz以上に対応)、npn型のバイポーラトランジスタであり、エミッタが接地されている。
また、上記トランジスタQ3は、コレクタに対し、電流制限抵抗R5を介して、電源回路から電圧Vccが接続されている。また、トランジスタQ3は、ベースに対し、電流制限抵抗R4及びスピードアップコンデンサC4との並列接続された入力回路を介して、積分回路12から出力される反転された送信パルスが入力される。
さらに、トランジスタQ2は、反転された送信パルスを、トランジスタQ1に入力された時点の元の極性に戻し、トランジスタQ1のベースに、入力回路を介して送信パルスを出力する。
トランジスタQ1からなるパルスジェネレータは、第1の実施形態と構成も動作も同様のため、説明を省略する。
【0027】
上述した構成により、第2の実施形態によるパルスジェネレータは、コンデンサC2に電流制限回路10を介して、常に電源が接続され、トランジスタQ1がオフ状態の場合、コンデンサC2に電荷が供給されて蓄積されるため、第1の実施形態における駆動パルスが必要なくなり、時間ΔTp1が不要となり、高速なデータ通信が可能となる。
また、回路ブロック1を挿入することにより、トランジスタQ1に入力される送信パルスの立ち下がりが徐々に行われるため(送信パルスが滑らかに立ち下がるため)、すなわち送信パルスの立ち下がりにおいて急峻な変化がインダクタに与えられないため、逆誘導起電力の発生がなく、図3に示す不良なインパルスが発生されない。
【0028】
次に、図5及び図6を参照して、第2の実施形態によるパルスジェネレータの動作を説明する。 図6は図4のパルスジェネレータの動作を示す波形図である。
初期状態において、トランジスタQ2がオフ状態であり、トランジスタQ3オン状態であり、トランジスタQ1がオフ状態であり、コンデンサC2には、電源から電流制限回路10を介して供給される駆動電流により、電荷が蓄積(Charge)されている。
時刻t1において、送信制御回路11は、送信データが入力されることにより、送信パルスVinを入力回路を介して、トランジスタQ2のベースに対して出力する。
【0029】
そして、トランジスタQ2のコレクタ電圧Vp1は、急速に立ち下がり、トランジスタQ3のベースに供給される電流が急峻に減少して、トランジスタQ3はオフ状態となる。
これにより、トランジスタQ3のコレクタ電圧Vp2が急峻に立ち上がり、トランジスタQ1のベースにベース電流が流れ、トランジスタQ1は急速にオン状態となる。
そして、トランジスタQ1が急速にオン状態となると、コレクタ電圧Vp2、すなわちコンデンサC1に蓄積された電荷が急激に放電(Discharge)され、インダクタL1→コンデンサC2→トランジスタQ1、及び負荷→コンデンサC2→トランジスタQ1の方向(図1における実線矢印方向)に電流が流れ、出力電圧Voutが接地電位から負電位Vout-へ急峻に低下する(インパルスの立ち下がり部)。
【0030】
そして、インダクタL1には、上述した実線矢印方向に電流が流れることにより、逆誘導起電力が、上記実線矢印方向の電流の変化を抑圧する正電位Vout+が急峻に発生し(インパルスの立ち上がり部)、インダクタL1→負荷の方向(図1における破線矢印方向)に対し、急速に電流が流れる。この図5に示すパルスジェネレータにおいて発生可能なインパルスの周波数帯域特性は第1の実施形態において記載した定義と同様のため、説明を省略する。
【0031】
次に、時刻t2において、送信制御回路11は、送信パルスVinを立ち下げ、送信パルスVinによるインパルスの生成を終了する。
そして、トランジスタQ2は、送信パルスVinが立ち下がるため、すなわちベース電流が減少するため、オフ状態となる。
これにより、トランジスタQ2のコレクタ電圧Vp2は、電流制限抵抗R3を介して供給される電流により電荷が蓄積されて上昇するが、電流制限抵抗R3の抵抗値と積分回路12の容量値とにより決定される時定数により、電圧の上昇がなまらせられ、図6に示すように徐々に上昇することとなる。
【0032】
そして、コレクタ電圧Vp2の上昇に対応して、ベース電流が徐々に増加することにより、トランジスタQ3は徐々にコレクタ電流が増加し、電流制限抵抗R5の電流値とこのコレクタ電流との比により、コレクタ電圧Vp3が徐々に、滑らかに低下してゆく。
このため、トランジスタQ1のベースに入力される送信パルスの立ち下がりが徐々に行われ、すなわち送信パルスの立ち下がりにおいて急峻な変化がインダクタL1に与えられないため、逆誘導起電力の発生がなく、図3に示す不良なインパルスが発生されない。
上記時刻t1〜t2の処理が繰り返して行われることにより、インパルス無線におけるインパルスの生成処理が行われる。
【0033】
<第3の実施形態>
上述した第2の実施形態においては、トランジスタQ2がインパルスの生成処理を行わない期間、すなわちスタンバイ時にオン状態となっているため、無駄な電流が消費され、消費電力を、従来例に比較して十分に下げることができない。
そのため、図7に示すように、本発明の第3の実施形態においては、第2の実施形態に対して、さらに消費電力を従来例に比較して削減させるため、回路ブロック1において、入力回路の代わりに積分回路13を、送信制御回路11とトランジスタQ3との間に介挿させ、電源とトランジスタQ3のコレクタとの間に電圧制御回路14を介挿している。
【0034】
上記積分回路13は、図中に示すように抵抗(ベース抵抗;電流制限抵抗)とコンデンサから形成されており、抵抗及びコンデンサから決定される時定数ΔTdだけ、入力される送信パルスの波形を遅延させ、トランジスタQ2のベースへ送信パルスを出力する。
また、電圧制御回路14は、送信パルスVinが入力されている間のみ、トランジスタQ3のコレクタに対して駆動電流を供給する回路であり、例えば、図8に示す構成をしている。
【0035】
電圧制御回路14は、図8に示すように、トランジスタQ4と、抵抗R10,R11,R12,R,R13から構成されている。
トランジスタQ4は、npn型のバイポーラトランジスタであり、エミッタが抵抗R13を介して接地されており、ベースに電流制限抵抗としてのベース抵抗10が接続され、電源と抵抗R11を介して接続され、エミッタが抵抗R12を介して電源に接続されている。また、トランジスタQ4は、ベースが抵抗R10を介して送信制御回路11の出力に接続され、エミッタがトランジスタQ3のコレクタと接続されている。ここで、抵抗R12及びR13の抵抗値は、抵抗R11より大きく設定されている(抵抗R12及びR13の抵抗値≫抵抗R11の抵抗値)。
【0036】
ここで、電圧制御回路14は、送信制御回路11が送信パルスを出力していないスタンバイ時において、トランジスタQ4のベースにベース電流が流れず、抵抗R12を介してのみ駆動電流が流れている。抵抗R12の抵抗値は、トランジスタQ3のコレクタに供給される駆動電流(低電流IL)が、トランジスタQ3のコレクタがハイインピーダンス状態となるのを防止し、トランジスタQ1のベース電圧が変動しない程度の電流未満となるように設定されている。
【0037】
一方、電圧制御回路14は、送信制御回路11が送信パルスを出力している稼働時において、トランジスタQ4のベースに電流が流れ、トランジスタQ4がオン状態となり、抵抗R12だけでなく、抵抗R11を介しても駆動電流(低電流IH)がトランジスタQ2に供給されることとなる。この抵抗R11及び抵抗R12の抵抗値は、上記駆動電流が、トランジスタQ1をオン状態とするベース電流を超えるように設定されている。
【0038】
次に、図7及び図9を参照して、第3の実施形態によるパルスジェネレータの動作を説明する。 図9は図7のパルスジェネレータの動作を示す波形図である。
初期状態において、トランジスタQ2がオフ状態であり、トランジスタQ3がオン状態であるが、電圧制御回路14により微少な電流値が供給される状態となっており、トランジスタQ1がオフ状態であり、コンデンサC2には、電源から電流制限回路10を介して供給される駆動電流により、電荷が蓄積(Charge)されている。
時刻t1において、送信制御回路11は、送信データが入力されることにより、「H」レベルの送信パルスVinを積分回路13に出力するとともに、電圧制御回路14へ出力する。
これにより、電圧制御回路14は、高抵抗(電流値IL)状態から低抵抗(電流値IH)状態に切り替わり、電流IがトランジスタQ2のコレクタ電流として流れる(上述したように、トランジスタQ1をオン状態とする駆動電流として供給する)。
【0039】
次に、時刻t2において、積分回路13は、設定された時定数ΔTd経過後に、トランジスタQ2に対して、「H」レベルの送信パルスを出力する。
これにより、トランジスタQ2は、送信パルスによりベース電流が入力され、オン状態となり、トランジスタQ3のコレクタ電圧Vp2を急速に低下させ、トランジスタQ3をオフ状態とする。これにより、電圧制御回路14を流れる電流Iは、トランジスタQ1をオン状態とするベース電流のみとなり減少する。
【0040】
そして、トランジスタQ3のコレクタ電圧Vp3が急峻に立ち上がることにより、トランジスタQ1のベースにベース電流が流れ、トランジスタQ1は急速にオン状態となる。
また、トランジスタQ1が急速にオン状態となると、コレクタ電圧Vp2、すなわちコンデンサC1に蓄積された電荷が急激に放電(Discharge)され、インダクタL1→コンデンサC2→トランジスタQ1、及び負荷→コンデンサC2→トランジスタQ1の方向(図1における実線矢印方向)に電流が流れ、出力電圧Voutが接地電位から負電位Vout-へ急峻に低下する(インパルスの立ち下がり部)。
【0041】
そして、インダクタL1には、上述した実線矢印方向に電流が流れることにより、逆誘導起電力が、上記実線矢印方向の電流の変化を抑圧する正電位Vout+が急峻に発生し(インパルスの立ち上がり部)、インダクタL1→負荷の方向(図1における破線矢印方向)に対し、急速に電流が流れる。この図5に示すパルスジェネレータにおいて発生可能なインパルスの周波数帯域特性は第1の実施形態において記載した定義と同様のため、説明を省略する。
【0042】
次に、時刻t3において、送信制御回路11は、送信パルスVinを立ち下げ、送信パルスVinによるインパルスの生成を終了する。
そして、トランジスタQ2は、送信パルスVinが立ち下がるため、すなわちベース電流が減少するため、オフ状態となる。
これにより、トランジスタQ2のコレクタ電圧Vp2は、電流制限抵抗R3を介して供給される電流により電荷が蓄積されて上昇するが、電流制限抵抗R3の抵抗値と積分回路12の容量値とにより決定される時定数により、電圧の上昇がなまらせられ、図6に示した第2に実施形態と同様に徐々に上昇することとなる。
また、電圧制御回路14も、送信パルスVinが立ち下がるため、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移し、スタンバイ状態に戻る。
【0043】
そして、コレクタ電圧Vp2の上昇に対応して、ベース電流が徐々に増加することにより、トランジスタQ3は徐々にコレクタ電流が増加し、電流制限抵抗R5の電流値とこのコレクタ電流との比により、コレクタ電圧Vp3が徐々に、滑らかに低下してゆく。
このため、トランジスタQ1のベースに入力される送信パルスの立ち下がりが徐々に行われ、すなわち送信パルスの立ち下がりにおいて急峻な変化がインダクタL1に与えられないため、逆誘導起電力の発生がなく、図3に示す不良なインパルスが発生されない。
上記時刻t1〜t3の処理が繰り返して行われることにより、インパルス無線におけるインパルスの生成処理が行われる。
【0044】
上述した第3の実施形態のパルスジェネレータにより、送信する送信パルスの立ち上がりエッジをトリガにして、インパルスを発生させるため、従来例に比較して高速なデータ送信が可能であり、かつ送信パルスが「H」レベルにて入力されている期間のみ、駆動電力が消費されるため、従来例に比較して低消費電力化を実現させることができる。
【0045】
<インパルス無線送信機>
次に、図10に第1〜第3の実施形態によるパルスジェネレータを用いるインパルス無線送信機(インパルスを用いたUWB送信機)の構成例を示す。
図示しない送信パルス生成部は、デジタル信号の送信データを、ONN/OFF−Keying及びPilse-Position-Modulationに変換してパルスジェネレータ100へ出力する。この送信パルス生成部は送信制御回路11が兼ねても良い。
このパルスモジュレータ100は、すでに述べた第1から第3の実施形態によるパルスジェネレータであり、送信パルスから送信データの情報を含んだインパルスを生成して出力する。
【0046】
そして、増幅器101は、パルスジェネレータ100から出力されるインパルスを発信可能な電圧レベルに変換し、フィルタ102へ出力する。
次に、フィルタ102は、例えば櫛形フィルタであり、インパルスに含まれる発信する信号として不要な高調波及び低周波成分を除去する。
アンテナ103は、フィルタリングされたインパルスを、空間に放射する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態によるインパルスを生成するパルスジェネレータの構成例を示す概念図である。
【図2】図1のパルスジェネレータの動作を説明する波形図である。
【図3】図1のパルスジェネレータの変形例を示す概念図である。
【図4】図3のパルスジェネレータの動作を説明する波形図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるインパルスを生成するパルスジェネレータの構成例を示す概念図である。
【図6】図5のパルスジェネレータの動作を説明する波形図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるインパルスを生成するパルスジェネレータの構成例を示す概念図である。
【図8】図7における電圧制御回路13の構成例を示す概念図である。
【図9】図7のパルスジェネレータの動作を説明する波形図である。
【図10】本発明の第1から第3のパルスジェネレータを用いるインパルス無線送信機の構成例を示す概念図である。
【図11】従来のインパルス無線機の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
10…電流制限回路
11…送信制御回路
12,13…積分回路
14…電圧制御回路
100…パルスジェネレータ
101…増幅器
102…フィルタ
103…アンテナ
C1,C2,C3,C4…コンデンサ
L1…インダクタ
Q1,Q2,Q3,Q4…トランジスタ
R1,R2,R4…電流制限抵抗
R3,R5,R10,R11,R12,R13…抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタが接地され、コレクタに電流制限回路を介して駆動電流が入力され、ベースに送信パルスが入力されるトランジスタと、
一端が前記コレクタに接続されたコンデンサと、
一端が接地され、他端が前記コンデンサの他端と接続されたインダクタと
を有し、
前記駆動電流により前記コンデンサに電荷が蓄積された後、前記送信パルスにより蓄積された電荷が放電され、この放電に対応して前記インダクタに極誘導起電力が発生することにより、インパルスがインダクタの他端から出力されることを特徴とするパルスジェネレータ。
【請求項2】
前記駆動電流が電流パルスとして供給され、電流パルスが入力された後に前記送信パルスを供給することにより、インパルスが前記コンデンサの他端から出力されることを特徴とする請求項1記載のパルスジェネレータ。
【請求項3】
送信パルスが入力される入力端子と前記トランジスタのベースとの間に、前記送信パルスの立ち下がりエッジのみを鈍らせる積分回路を介挿したことを特徴とする請求項1に記載のパルスジェネレータ。
【請求項4】
前記電流駆動回路が前記送信パルスが入力されている間のみ駆動電流を供給し、かつ前記積分回路の前段に送信パルスを遅延させる遅延回路が挿入されていることを特徴とする請求項3に記載のパルスジェネレータ。
【請求項5】
送信データから送信パルスを生成する送信パルス生成部と、
前記送信パルスから送信データの情報を含んだインパルス信号を生成する請求項1から請求項4のいずれかに記載のパルスジェネレータと、
前記インパルス信号を空間に放射するアンテナと
を有することを特徴とするインパルス無線送信機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−174028(P2007−174028A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365912(P2005−365912)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】