パルス幅変調信号発生装置
【課題】デジタル信号を入力とするフルデジタルのオーディオアンプにおいて、PWMによって発生する高調波歪が発生する問題を解決する。
【解決手段】PWMによって発生する高調波歪を予め予想し、高調波歪成分を予め元の信号から差し引いた後、PWMを行なうことにより、PWMによって発生する高調波歪を相殺させる。高調波歪を予想する手段としては、元の入力信号やその入力信号に対応する連続時間信号の1階および2階時間微分信号を表す信号を用いた積の一次結合を用いる。その際、3次歪によって発生する基本波成分も考慮する。
【解決手段】PWMによって発生する高調波歪を予め予想し、高調波歪成分を予め元の信号から差し引いた後、PWMを行なうことにより、PWMによって発生する高調波歪を相殺させる。高調波歪を予想する手段としては、元の入力信号やその入力信号に対応する連続時間信号の1階および2階時間微分信号を表す信号を用いた積の一次結合を用いる。その際、3次歪によって発生する基本波成分も考慮する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルデジタルのオーディオアンプのように、連続時間信号に対してデジタル信号化された信号をもとにパルス幅変調を掛けるものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
D級増幅器と呼ばれるスイッチング増幅器は、電力効率が高いことにより、スピーカを駆動するオーディオアンプとしても用いられ始めている。このスイッチング増幅器を用いてオーディオアンプを実現する方法として、アナログ信号を入力信号とするタイプのものと、デジタル信号(離散時間離散値信号)を入力信号とするフルデジタルアンプと呼ばれるタイプのものがある。フルデジタルアンプは、音源信号がCDやMDのようにデジタル信号である場合には、すべての信号処理をデジタルで行なうことができるので、低コストで高品質の音を発生できる可能性を持っている。
【0003】
フルデジタルアンプでは、音源信号に対して電子ボリュームなどの信号処理を行った後、オーバーサンプラにより信号のサンプリング周波数を16倍や32倍などの値に上昇させる。そしてΔ−Σ変調器により5ビットとか6ビットなどの低い分解能に量子化し、量子化した信号でパルス幅変調を掛けPWM信号を発生させる。このPWM信号によりスイッチングアンプを駆動し、その出力に対してローパスフィルタを通してからスピーカなどを駆動する。
【0004】
このフルデジタルアンプにおける一連の信号処理の中で、パルス幅変調を掛ける段階において、高調波歪が発生してしまう。たとえば、音源信号が1kHzの正弦波信号であった場合、PWM信号にその2倍の周波数である2kHzの信号やその3倍の周波数である3kHzの信号が含まれてしまう。このような高調波歪がフルデジタルアンプの性能を落としてしまっていた。
【0005】
この問題に対して、特願2004−026150号記載の技術においては、入力信号とその1階および2階時間微分の値を用いてパルス幅変調によって発生する高調波歪を予測して、予測される歪成分を差し引いた信号をパルス幅変調器に入力することで高調波歪を相殺させていた。この技術を用いると、入力信号が単一の正弦波である場合には高調波は発生しないが、ツートーンテストを行なうと、高調波が発生してしまっていた。
【特許文献1】特開2000−354379号公報
【特許文献2】特願2004−026150号
【特許文献3】特願2004−236698号
【非特許文献1】河西宏之:フルディジタル・アンプに必要な信号処理の概要,トランジスタ技術,2003年7月号,205−222頁
【非特許文献2】アメリカ合衆国特許第6563378号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、フルデジタルアンプにおけるパルス幅変調によって発生する高調波歪による性能劣化を防ぐことである。すなわち、ツートーンテストを行っても高調波歪が発生しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
フルデジタルアンプのパルス幅変調によって発生する信号歪を予め推定し、推定した信号歪を差し引いた信号を用いてパルス幅変調を行なうことにより、信号歪を相殺させた出力信号を得る。特願2004−026150号記載の技術においては、単一正弦波信号に対する高調波歪のみを考慮し、第2および第3高調波の相殺を行っていたが、パルス幅変調歪による基本波への影響については考慮されていなかった。その結果、ツートーンテストにより3次の相互変調成分が発生してしまっていた。そこで、パルス幅変調歪による基本波への影響をも考慮してフィードフォワード補償を行なうことにより、歪の小さいパルス幅変調信号を得る。以下、具体的な実現方法について述べる。
【0008】
入力信号に対して、その1階微分および2階微分の信号を算出しておき、パルス幅変調によって発生すると予想される信号歪を入力信号と1階微分信号と2階微分信号を用いて計算し、もとの入力信号から計算された歪予測値を差し引いた信号に対してパルス幅変調を行なう。
【0009】
また、入力信号に対して、その1階微分および2階微分の信号を算出しておき、パルス幅変調によって発生すると予想される信号歪を入力信号と1階微分信号と2階微分信号を用いて計算し、もとの入力信号から計算された歪予測値を差し引いた信号に対して、Δ−Σ変調器により粗い量子化を行なう。そして粗い量子化を行なった信号に対してパルス幅変調を行なう。
【0010】
また、離散時間信号である入力信号に対して、その1階微分および2階微分の信号を算出しておき、パルス幅変調によって発生すると予想される信号歪を入力信号と1階微分信号と2階微分信号を用いて計算し、もとの入力信号から計算された歪予測値を差し引いた信号に対してサンプリング周波数の変換を行ない、高いサンプリング周波数の信号を得る。そのサンプリング周波数を変換した信号に対してΔ−Σ変調器により粗い量子化を行なう。そして粗い量子化を行なった信号に対してパルス幅変調を行なう。
【0011】
次に、上述の手法に対して、パルス幅変調の種類別に、パルス幅変調歪の補正式を述べる。補正式は上述の三つの方法に共通している。まず、対称型パルス幅変調を用いた場合について述べる。パルス幅変調によって発生する第2高調波成分は次のようになる。
(数1)
d2[k]=ε・(x[k]・q[k]-p[k]・p[k])
ただし、上式においてx[k] は補正前の信号、p[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、εは実定数である。
【0012】
3次歪に関しては、入力信号が単一の正弦波であるとき、信号の第3高調波として現れる成分と、基本波成分として含まれるものの2種類がある。第3高調波成分は次のようになる。
(数2)
d33[k]=δ’・(3・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])
ただし、上式においてδ’は実定数である。そして3次歪の基本波成分は次のようになる。
(数3)
d30[k]=-δ’・(x[k]・p[k]・p[k]-x[k]・x[k]・q[k])/3
したがって、δ=4δ’/3と置くことにより、3次歪成分は次のように表わすことができる。
(数4)
d3=δ・(2・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])
以上より、パルス幅変調器に対する入力信号について、次のように信号歪を補正する。
(数5)
y[k]=x[k]-ε・(x[k]・q[k]-p[k]2)-δ・x[k]・(2・p[k]2+ x[k]・q[k])
次に、パルス幅変調が相補型で対称型(対称相補型)である場合について述べる。相補型のパルス幅変調では、二つのパルス幅変調器を用い、それぞれのパルス幅変調器には互いに符号の異なる入力信号が入力され、二つのパルス幅変調器の出力信号は差動信号として扱われる。そのため、パルス幅変調における偶数次の歪は相殺され出力されない。この場合において、パルス幅変調における3次歪は通常の対称型パルス幅変調のときと同じ形となるので、信号歪を補正する式は次のようになる。
(数6)
y[k]=x[k]-δ・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])
ただし、上式においてx [k]は補正前の信号、y[k] は補正後の信号、p[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、δは実定数である。
【0013】
次に、パルス幅変調が相補型で非対称型(非対称相補型)である場合についてであるが、パルス幅変調による信号歪はδの値が異なることを除いては対称相補型のパルス幅変調を用いた場合と同じであるので、対称相補型の場合と同じ式により信号補正を行なうことができる。
【0014】
次に、パルス幅変調が非対称型である場合について述べる。パルス幅変調によって発生する第2高調波成分は次のようになる。
(数7)
d2[k]=ε・x[k]・p[k]
ただし、上式においてx[k] は補正前の信号、p[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、εは実定数である。
【0015】
3次歪に関しては、入力信号に第2高調波を相殺させるための信号を重畳させると、入力信号が単一の正弦波であるとき、入力信号と第2高調波補正信号との2次歪によりものと、入力信号の3次歪とが存在する。入力信号と第2高調波補正信号との2次歪成分は次のように計算される。
(数8)
d312[k]=-ε2・(2・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])
ただし、上式においてq[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号である。また、入力信号の3次歪成分は次のようになる。
(数9)
d31[k]=ε2・(2・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])/2
したがって、3次歪成分は次のように表わすことができる。
(数10)
d3[k]=-ε2・(2・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])/2
以上より、パルス幅変調器に対する入力信号について、次のように信号歪を補正する。
(数11)
y[k]=x[k]-ε・(x[k]・q[k]-p[k]2)+ ε2・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])/2
【発明の効果】
【0016】
本発明のパルス幅変調器を用いることにより、高調波歪を相殺して抑制することができるので、歪の小さいフルデジタルアンプを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態について実施例を通して示す。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明第1の実施例であるパルス幅変調信号発生器のブロック図であり、オーディオのフルデジタルアンプの一部を成すものである。機能としては、入力信号u[i]に応じたパルス幅変調信号w(t)を生成するものであり、このパルス幅変調信号w(t)によりD級アンプを駆動し、その出力をローパスフィルタに通すことで、スピーカを駆動する信号を得ることができる。
【0019】
入力信号u[i]はサンプリング周波数44.1kHzの離散時間信号であり、x[k]は入力信号に対してサンプリング周波数を16倍の705.6kHzに変換した信号である。本発明第1の実施例においては、信号x[k]を生成するのに次の方法を用いている。まずオーバーサンプラ5により、信号u[i]からサンプリング周波数が705.6kHzである信号s[k]を作成し、その信号s[k]をデジタルフィルタ31に通して信号x[k]を生成している。デジタルフィルタ31は2次フィルタであり、信号x[k]に対する1階時間微分に対応する信号および2階時間微分に対応する信号を生成するために用いている。
【0020】
デジタルフィルタ31の設計法は種々考えられるが、本発明第1の実施例では次のように設計する。まず、適当な連続時間の2次ローパスフィルタF(s)を設定する。そしてフィルタF(s)を双一次変換により離散時間化デジタルフィルタに変換する。そのようにして得られたデジタルフィルタをc1 (zI-A)-1b+d1という形で実現する。ただし、c1は横ベクトル、bは縦ベクトル、Aは正方行列、Iは単位行列、zはパルス伝達関数の変数である。また、デジタルフィルタ31では、信号x[k]の1階時間微分に相当する信号p[k]および信号x[k]の2階時間微分に相当する信号q[k]も同時に生成する。信号p[k]の生成については、信号s[k]に対して、時間微分とローパスフィルタの機能を持ったフィルタsF(s)を作用させることにより得ることができる。双一次変換によりフィルタsF(s)を離散時間化すると、c2 (zI-A) -1b+d2という形で実現することができる。したがって、信号p[k]を算出するデジタルフィルタの状態変数は、信号x[k]を算出するデジタルフィルタの状態変数と共用させることができ、信号x[k]を算出するデジタルフィルタに新たに出力ベクトルと直達項を加えることのみで信号p[k]を算出することができる。同様に、信号q[k]の推定については、信号s[k]に対して、2階時間微分とローパスフィルタの機能を持ったフィルタs2F(s)を作用させることにより得ることができる。双一次変換によりフィルタs2F(s)を離散時間化すると、c3 (zI-A) -1b++d3という形で実現することができる。したがって、信号q[k]を算出するデジタルフィルタの状態変数は、信号x[k]を算出するデジタルフィルタの状態変数と共用させることができ、信号x[k]を算出するデジタルフィルタに新たに出力ベクトルと直達項を加えることのみで信号q[k]を算出することができる。連続時間フィルタを離散時間フィルタに変換する際に双一次変換を用いる理由は、双一次変換を用いると、高い位相精度の微分信号が得られるからである。デジタルフィルタ31のブロック線図を図2に示す。
【0021】
歪予測器11においては、パルス幅変調器2によって発生する高調波歪の推定値を算出する。そして、算出した推定値を信号x[k]から減ずることにより、高調波歪を補正した信号y[k]を得る。高調波歪補正については後述する。信号y[k]はΔ−Σ変調器により、-15から15までの31レベルに再量子化される。その際、量子化ノイズは20kHz以上の周波数領域に偏るように周波数シェーピングされる。Δ−Σ変調器の出力信号である信号v[j]はサンプリング周波数が705.6kHzであり、31レベルに量子化された信号である。信号v[j]はパルス幅変調器2に入力され、キャリア周波数705.6kHz、31レベルの対称型パルス幅変調が行われる。そのパルス幅変調信号が信号w(t)として出力される。対称型パルス幅変調の出力波形の例を図3に示す。
【0022】
パルス幅変調器において発生する高調波歪について説明する。パルス幅変調器2において発生する高調波歪は、パルス幅変調が対称型であるか非対称型であるかや、パルス幅変調器のキャリア周波数によっても変わってくる。図4はx[k]を2.76kHzの正弦波とし、高調波歪に対する対策をとらなかったときの、パルス幅変調信号w(t)の周波数スペクトルを示したものである。元の信号の2.76kHzの信号成分の他に、その2倍の5.52kHzの成分や3倍の8.28kHzの成分を持ってしまっている。これらの信号成分がパルス幅変調における高調波歪に起因するものである。そこで、特願2004−026150号記載の技術を用いると、図5に示すように、単一正弦波入力に対しては、パルス幅変調信号の高調波をきれいに除去することができる。そこで、今度は入力信号として2.76kHzおよび6.89kHzの二つの正弦波を重ね合わせたものとした(ツートーンテスト)。そのときのパルス幅変調信号のスペクトルを図6に示す。1.38kHzおよび11.02 kHzに3次歪によるスペクトルのピークが現れてしまっている。これらの3次歪成分を除去することが本発明の目的である。
【0023】
そこで、数5に示す式を用いてフィードフォワード補償を行った。そのときのツートーンテストにおけるパルス幅変調信号のスペクトルを図7に示す。フィードフォワード補償の演算式を変えることにより、問題となっていた3次歪によるスペクトルが除去されている。
【0024】
本発明第1の実施例においては、図1にブロック図を示す装置によりパルス幅変調信号を生成していたが、図8に示すように、歪補償を行なった信号y[k]を生成してからオーバーサンプラによりサンプリング周波数を変換し、その後にΔ−Σ変調器を通すなどしてからパルス幅変調を行なうようにしても良い。
【0025】
本発明第1の実施例においては、デジタルフィルタ31は連続時間フィルタを双一次変換して作成したIIRフィルタを用いていたが、FIRフィルタを用いても良い。FIRフィルタを用いても、微分信号の高い位相精度を確保することができる。
【実施例2】
【0026】
本発明第2の実施例はパルス幅変調信号発生器であり、本発明第1の実施例と類似しているが、パルス幅変調の方式が異なっていることと、それに伴い、歪補償を行なう式が異なっている点が相違点である。パルス幅変調器のブロック図は図1に示す通りである。機能としては、入力信号u[i]に応じたパルス幅変調信号w(t)を生成するものであり、このパルス幅変調信号w(t)によりD級アンプを駆動し、その出力をローパスフィルタに通すことで、スピーカを駆動する信号を得ることができる。
【0027】
本発明第2の実施例においては、パルス幅変調として対称相補型パルス幅変調を用いる。相補型のパルス幅変調とは、図9に示すように、二つのパルス幅変調器を用い、それぞれのパルス幅変調器には互いに符号の異なる入力信号が入力され、二つのパルス幅変調器の出力信号は差動信号として扱われる。そのため、パルス幅変調における偶数次の歪は相殺され出力されない。図10にパルス幅変調信号の波形例を示す。本発明第2の実施例においては、個々のパルス幅変調器におけるパルス1周期の間に、パルス幅変調制御を2回掛けている。
【0028】
入力信号u[i]はサンプリング周波数44.1kHzの離散時間信号であり、x[k]は入力信号に対してサンプリング周波数を16倍の705.6kHzに変換した信号である。本発明第2の実施例においては、信号x[k]を生成するのに次の方法を用いている。まずオーバーサンプラ5により、信号u[i]からサンプリング周波数が705.6kHzである信号s[k]を作成し、その信号s[k]をデジタルフィルタ31に通して信号x[k]を生成している。デジタルフィルタ31は2次フィルタであり、信号x[k]に対する1階時間微分に対応する信号および2階時間微分に対応する信号を生成するために用いている。デジタルフィルタ31の実現方法は、本発明第1の実施例と同じである。
【0029】
歪予測器11においては、パルス幅変調器2によって発生する高調波歪の推定値を算出する。そして、算出した推定値を信号x[k]から減ずることにより、高調波歪を補正した信号y[k]を得る。高調波歪補正については後述する。信号y[k]はΔ−Σ変調器により、-15から15までの31レベルに再量子化される。その際、量子化ノイズは20kHz以上の周波数領域に偏るように周波数シェーピングされる。Δ−Σ変調器の出力信号である信号v[j]はサンプリング周波数が705.6kHzであり、31レベルに量子化された信号である。信号v[j]はパルス幅変調器2に入力され、キャリア周波数352.8kHz、31レベルの対称相補型のパルス幅変調が行われる。そのパルス幅変調信号が信号w(t)として出力される。
【0030】
次に、パルス幅変調器において発生する高調波歪について説明する。図11はx[k]を2.76kHzの正弦波とし、高調波歪に対する対策をとらなかったときの、パルス幅変調信号w(t)の周波数スペクトルを示したものである。元の信号の2.76kHzの信号成分の他に、3倍の8.28kHzの成分を持ってしまっているが、第2高調波である5.52kHzの成分は持っていない。特願2004−026150号記載の技術を用いると、図12に示すように、単一正弦波入力に対しては、パルス幅変調信号の高調波をきれいに除去することができる。そこで、今度は入力信号として2.76kHzおよび6.89kHzの二つの正弦波を重ね合わせたものとした(ツートーンテスト)。そのときのパルス幅変調信号のスペクトルを図13に示す。1.38kHzおよび11.02 kHzに3次歪によるスペクトルのピークが現れてしまっている。これらの3次歪成分を除去することが本発明の目的である。
【0031】
そこで、数6に示す式を用いてフィードフォワード補償を行った。そのときのツートーンテストにおけるパルス幅変調信号のスペクトルを図14に示す。フィードフォワード補償の演算式を変えることにより、問題となっていた3次歪によるスペクトルが除去されている。
【0032】
本発明第1の実施例においては、対称相補パルス幅変調を用いていたが、非対称相補型パルス幅変調を用いてもよい。その場合は、パルス1周期につき1回のパルス幅制御を行なう必要がある。相補型のパルス幅変調を用いる場合、原理的に2次歪は発生しないので、非対称型パルス幅変調を用いる場合であっても、歪補償を行なう式は数6のものを用いることができ、係数は異なる場合があるが、同じ形式の補正式となる。
【0033】
本発明第2の実施例においては、図1にブロック図を示す装置によりパルス幅変調信号を生成していたが、図8に示すように、歪補償を行なった信号y[k]を生成してからオーバーサンプラによりサンプリング周波数を変換し、その後にΔ−Σ変調器を通すなどしてからパルス幅変調を行なうようにしても良い。
【実施例3】
【0034】
本発明第3の実施例はパルス幅変調信号発生器であり、本発明第1の実施例と類似しているが、パルス幅変調の方式が異なっていることと、それに伴い、歪補償を行なう式が異なっている点が相違点である。パルス幅変調器のブロック図は図1に示す通りである。機能としては、入力信号u[i]に応じたパルス幅変調信号w(t)を生成するものであり、このパルス幅変調信号w(t)によりD級アンプを駆動し、その出力をローパスフィルタに通すことで、スピーカを駆動する信号を得ることができる。
【0035】
本発明第3の実施例においては、パルス幅変調として非対称型パルス幅変調を用いる。非対称型パルス幅変調の場合は、クロック周波数が同じである場合、対称型パルス幅変調の場合と比べてパルス幅変調の分解能を2倍にすることができる。図15にパルス幅変調信号の波形例を示す。
【0036】
入力信号u[i]はサンプリング周波数44.1kHzの離散時間信号であり、x[k]は入力信号に対してサンプリング周波数を16倍の705.6kHzに変換した信号である。本発明第2の実施例においては、信号x[k]を生成するのに次の方法を用いている。まずオーバーサンプラ5により、信号u[i]からサンプリング周波数が705.6kHzである信号s[k]を作成し、その信号s[k]をデジタルフィルタ31に通して信号x[k]を生成している。デジタルフィルタ31は2次フィルタであり、信号x[k]に対する1階時間微分に対応する信号および2階時間微分に対応する信号を生成するために用いている。デジタルフィルタ31の実現方法は、本発明第1の実施例と同じである。
【0037】
歪予測器11においては、パルス幅変調器2によって発生する高調波歪の推定値を算出する。そして、算出した推定値を信号x[k]から減ずることにより、高調波歪を補正した信号y[k]を得る。高調波歪補正については後述する。信号y[k]はΔ−Σ変調器により、-31から31までの63レベルに再量子化される。その際、量子化ノイズは20kHz以上の周波数領域に偏るように周波数シェーピングされる。Δ−Σ変調器の出力信号である信号v[j]はサンプリング周波数が705.6kHzであり、31レベルに量子化された信号である。信号v[j]はパルス幅変調器2に入力され、キャリア周波数705.6kHz、63レベルの非対称型パルス幅変調が行われる。そのパルス幅変調信号が信号w(t)として出力される。
【0038】
次に、パルス幅変調器において発生する高調波歪について説明する。図16はx[k]を2.76kHzの正弦波とし、高調波歪に対する対策をとらなかったときの、パルス幅変調信号w(t)の周波数スペクトルを示したものである。元の信号の2.76kHzの信号成分の他に、その2倍である5.52kHzの成分や3倍の8.28kHzの成分を持ってしまっている。特願2004−026150号記載の技術を用いると、図17に示すように、単一正弦波入力に対しては、パルス幅変調信号の高調波をきれいに除去することができる。そこで、今度は入力信号として2.76kHzおよび6.89kHzの二つの正弦波を重ね合わせたものとした(ツートーンテスト)。そのときのパルス幅変調信号のスペクトルを図18に示す。1.38kHzに3次歪によるスペクトルのピークが現れてしまっていることが見て取れる。この3次歪成分を除去することが本発明の目的である。
【0039】
そこで、数11に示す式を用いてフィードフォワード補償を行った。そのときのツートーンテストにおけるパルス幅変調信号のスペクトルを図19に示す。フィードフォワード補償の演算式を変えることにより、問題となっていた3次歪によるスペクトルが除去されている。
【0040】
本発明第3の実施例においては、図1にブロック図を示す装置によりパルス幅変調信号を生成していたが、図8に示すように、歪補償を行なった信号y[k]を生成してからオーバーサンプラによりサンプリング周波数を変換し、その後にΔ−Σ変調器を通すなどしてからパルス幅変調を行なうようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のパルス幅変調信号発生器を用いることにより、高調波歪の少ないフルデジタルのオーディオアンプを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施例を説明するブロック図。
【図2】本発明の第1の実施例におけるデジタルフィルタ31の構成例。
【図3】対称型パルス幅変調の説明図。
【図4】対称型パルス幅変調における高調波歪を示すパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図5】対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図6】対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図7】対称型パルス幅変調において本技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図8】本発明の第1の実施例における他の実現方法を示すブロック図。
【図9】相補型パルス幅変調を説明するためのブロック図。
【図10】相補対称型パルス幅変調の出力信号波形の例。
【図11】対称型パルス幅変調における高調波歪を示すパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図12】相補対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図13】相補対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図14】相補対称型パルス幅変調において本技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図15】非対称型パルス幅変調の出力波形の例。
【図16】非対称型パルス幅変調における高調波歪を示すパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図17】非対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図18】非対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図19】非対称型パルス幅変調において本技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【符号の説明】
【0043】
1・・・歪予測装置
11・・・歪予測器
2,21,22・・・パルス幅変調器
31・・・デジタルフィルタ
4・・・Δ−Σ変調器
5・・・オーバーサンプラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルデジタルのオーディオアンプのように、連続時間信号に対してデジタル信号化された信号をもとにパルス幅変調を掛けるものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
D級増幅器と呼ばれるスイッチング増幅器は、電力効率が高いことにより、スピーカを駆動するオーディオアンプとしても用いられ始めている。このスイッチング増幅器を用いてオーディオアンプを実現する方法として、アナログ信号を入力信号とするタイプのものと、デジタル信号(離散時間離散値信号)を入力信号とするフルデジタルアンプと呼ばれるタイプのものがある。フルデジタルアンプは、音源信号がCDやMDのようにデジタル信号である場合には、すべての信号処理をデジタルで行なうことができるので、低コストで高品質の音を発生できる可能性を持っている。
【0003】
フルデジタルアンプでは、音源信号に対して電子ボリュームなどの信号処理を行った後、オーバーサンプラにより信号のサンプリング周波数を16倍や32倍などの値に上昇させる。そしてΔ−Σ変調器により5ビットとか6ビットなどの低い分解能に量子化し、量子化した信号でパルス幅変調を掛けPWM信号を発生させる。このPWM信号によりスイッチングアンプを駆動し、その出力に対してローパスフィルタを通してからスピーカなどを駆動する。
【0004】
このフルデジタルアンプにおける一連の信号処理の中で、パルス幅変調を掛ける段階において、高調波歪が発生してしまう。たとえば、音源信号が1kHzの正弦波信号であった場合、PWM信号にその2倍の周波数である2kHzの信号やその3倍の周波数である3kHzの信号が含まれてしまう。このような高調波歪がフルデジタルアンプの性能を落としてしまっていた。
【0005】
この問題に対して、特願2004−026150号記載の技術においては、入力信号とその1階および2階時間微分の値を用いてパルス幅変調によって発生する高調波歪を予測して、予測される歪成分を差し引いた信号をパルス幅変調器に入力することで高調波歪を相殺させていた。この技術を用いると、入力信号が単一の正弦波である場合には高調波は発生しないが、ツートーンテストを行なうと、高調波が発生してしまっていた。
【特許文献1】特開2000−354379号公報
【特許文献2】特願2004−026150号
【特許文献3】特願2004−236698号
【非特許文献1】河西宏之:フルディジタル・アンプに必要な信号処理の概要,トランジスタ技術,2003年7月号,205−222頁
【非特許文献2】アメリカ合衆国特許第6563378号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、フルデジタルアンプにおけるパルス幅変調によって発生する高調波歪による性能劣化を防ぐことである。すなわち、ツートーンテストを行っても高調波歪が発生しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
フルデジタルアンプのパルス幅変調によって発生する信号歪を予め推定し、推定した信号歪を差し引いた信号を用いてパルス幅変調を行なうことにより、信号歪を相殺させた出力信号を得る。特願2004−026150号記載の技術においては、単一正弦波信号に対する高調波歪のみを考慮し、第2および第3高調波の相殺を行っていたが、パルス幅変調歪による基本波への影響については考慮されていなかった。その結果、ツートーンテストにより3次の相互変調成分が発生してしまっていた。そこで、パルス幅変調歪による基本波への影響をも考慮してフィードフォワード補償を行なうことにより、歪の小さいパルス幅変調信号を得る。以下、具体的な実現方法について述べる。
【0008】
入力信号に対して、その1階微分および2階微分の信号を算出しておき、パルス幅変調によって発生すると予想される信号歪を入力信号と1階微分信号と2階微分信号を用いて計算し、もとの入力信号から計算された歪予測値を差し引いた信号に対してパルス幅変調を行なう。
【0009】
また、入力信号に対して、その1階微分および2階微分の信号を算出しておき、パルス幅変調によって発生すると予想される信号歪を入力信号と1階微分信号と2階微分信号を用いて計算し、もとの入力信号から計算された歪予測値を差し引いた信号に対して、Δ−Σ変調器により粗い量子化を行なう。そして粗い量子化を行なった信号に対してパルス幅変調を行なう。
【0010】
また、離散時間信号である入力信号に対して、その1階微分および2階微分の信号を算出しておき、パルス幅変調によって発生すると予想される信号歪を入力信号と1階微分信号と2階微分信号を用いて計算し、もとの入力信号から計算された歪予測値を差し引いた信号に対してサンプリング周波数の変換を行ない、高いサンプリング周波数の信号を得る。そのサンプリング周波数を変換した信号に対してΔ−Σ変調器により粗い量子化を行なう。そして粗い量子化を行なった信号に対してパルス幅変調を行なう。
【0011】
次に、上述の手法に対して、パルス幅変調の種類別に、パルス幅変調歪の補正式を述べる。補正式は上述の三つの方法に共通している。まず、対称型パルス幅変調を用いた場合について述べる。パルス幅変調によって発生する第2高調波成分は次のようになる。
(数1)
d2[k]=ε・(x[k]・q[k]-p[k]・p[k])
ただし、上式においてx[k] は補正前の信号、p[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、εは実定数である。
【0012】
3次歪に関しては、入力信号が単一の正弦波であるとき、信号の第3高調波として現れる成分と、基本波成分として含まれるものの2種類がある。第3高調波成分は次のようになる。
(数2)
d33[k]=δ’・(3・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])
ただし、上式においてδ’は実定数である。そして3次歪の基本波成分は次のようになる。
(数3)
d30[k]=-δ’・(x[k]・p[k]・p[k]-x[k]・x[k]・q[k])/3
したがって、δ=4δ’/3と置くことにより、3次歪成分は次のように表わすことができる。
(数4)
d3=δ・(2・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])
以上より、パルス幅変調器に対する入力信号について、次のように信号歪を補正する。
(数5)
y[k]=x[k]-ε・(x[k]・q[k]-p[k]2)-δ・x[k]・(2・p[k]2+ x[k]・q[k])
次に、パルス幅変調が相補型で対称型(対称相補型)である場合について述べる。相補型のパルス幅変調では、二つのパルス幅変調器を用い、それぞれのパルス幅変調器には互いに符号の異なる入力信号が入力され、二つのパルス幅変調器の出力信号は差動信号として扱われる。そのため、パルス幅変調における偶数次の歪は相殺され出力されない。この場合において、パルス幅変調における3次歪は通常の対称型パルス幅変調のときと同じ形となるので、信号歪を補正する式は次のようになる。
(数6)
y[k]=x[k]-δ・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])
ただし、上式においてx [k]は補正前の信号、y[k] は補正後の信号、p[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、δは実定数である。
【0013】
次に、パルス幅変調が相補型で非対称型(非対称相補型)である場合についてであるが、パルス幅変調による信号歪はδの値が異なることを除いては対称相補型のパルス幅変調を用いた場合と同じであるので、対称相補型の場合と同じ式により信号補正を行なうことができる。
【0014】
次に、パルス幅変調が非対称型である場合について述べる。パルス幅変調によって発生する第2高調波成分は次のようになる。
(数7)
d2[k]=ε・x[k]・p[k]
ただし、上式においてx[k] は補正前の信号、p[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、εは実定数である。
【0015】
3次歪に関しては、入力信号に第2高調波を相殺させるための信号を重畳させると、入力信号が単一の正弦波であるとき、入力信号と第2高調波補正信号との2次歪によりものと、入力信号の3次歪とが存在する。入力信号と第2高調波補正信号との2次歪成分は次のように計算される。
(数8)
d312[k]=-ε2・(2・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])
ただし、上式においてq[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号である。また、入力信号の3次歪成分は次のようになる。
(数9)
d31[k]=ε2・(2・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])/2
したがって、3次歪成分は次のように表わすことができる。
(数10)
d3[k]=-ε2・(2・x[k]・p[k]・p[k]+x[k]・x[k]・q[k])/2
以上より、パルス幅変調器に対する入力信号について、次のように信号歪を補正する。
(数11)
y[k]=x[k]-ε・(x[k]・q[k]-p[k]2)+ ε2・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])/2
【発明の効果】
【0016】
本発明のパルス幅変調器を用いることにより、高調波歪を相殺して抑制することができるので、歪の小さいフルデジタルアンプを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態について実施例を通して示す。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明第1の実施例であるパルス幅変調信号発生器のブロック図であり、オーディオのフルデジタルアンプの一部を成すものである。機能としては、入力信号u[i]に応じたパルス幅変調信号w(t)を生成するものであり、このパルス幅変調信号w(t)によりD級アンプを駆動し、その出力をローパスフィルタに通すことで、スピーカを駆動する信号を得ることができる。
【0019】
入力信号u[i]はサンプリング周波数44.1kHzの離散時間信号であり、x[k]は入力信号に対してサンプリング周波数を16倍の705.6kHzに変換した信号である。本発明第1の実施例においては、信号x[k]を生成するのに次の方法を用いている。まずオーバーサンプラ5により、信号u[i]からサンプリング周波数が705.6kHzである信号s[k]を作成し、その信号s[k]をデジタルフィルタ31に通して信号x[k]を生成している。デジタルフィルタ31は2次フィルタであり、信号x[k]に対する1階時間微分に対応する信号および2階時間微分に対応する信号を生成するために用いている。
【0020】
デジタルフィルタ31の設計法は種々考えられるが、本発明第1の実施例では次のように設計する。まず、適当な連続時間の2次ローパスフィルタF(s)を設定する。そしてフィルタF(s)を双一次変換により離散時間化デジタルフィルタに変換する。そのようにして得られたデジタルフィルタをc1 (zI-A)-1b+d1という形で実現する。ただし、c1は横ベクトル、bは縦ベクトル、Aは正方行列、Iは単位行列、zはパルス伝達関数の変数である。また、デジタルフィルタ31では、信号x[k]の1階時間微分に相当する信号p[k]および信号x[k]の2階時間微分に相当する信号q[k]も同時に生成する。信号p[k]の生成については、信号s[k]に対して、時間微分とローパスフィルタの機能を持ったフィルタsF(s)を作用させることにより得ることができる。双一次変換によりフィルタsF(s)を離散時間化すると、c2 (zI-A) -1b+d2という形で実現することができる。したがって、信号p[k]を算出するデジタルフィルタの状態変数は、信号x[k]を算出するデジタルフィルタの状態変数と共用させることができ、信号x[k]を算出するデジタルフィルタに新たに出力ベクトルと直達項を加えることのみで信号p[k]を算出することができる。同様に、信号q[k]の推定については、信号s[k]に対して、2階時間微分とローパスフィルタの機能を持ったフィルタs2F(s)を作用させることにより得ることができる。双一次変換によりフィルタs2F(s)を離散時間化すると、c3 (zI-A) -1b++d3という形で実現することができる。したがって、信号q[k]を算出するデジタルフィルタの状態変数は、信号x[k]を算出するデジタルフィルタの状態変数と共用させることができ、信号x[k]を算出するデジタルフィルタに新たに出力ベクトルと直達項を加えることのみで信号q[k]を算出することができる。連続時間フィルタを離散時間フィルタに変換する際に双一次変換を用いる理由は、双一次変換を用いると、高い位相精度の微分信号が得られるからである。デジタルフィルタ31のブロック線図を図2に示す。
【0021】
歪予測器11においては、パルス幅変調器2によって発生する高調波歪の推定値を算出する。そして、算出した推定値を信号x[k]から減ずることにより、高調波歪を補正した信号y[k]を得る。高調波歪補正については後述する。信号y[k]はΔ−Σ変調器により、-15から15までの31レベルに再量子化される。その際、量子化ノイズは20kHz以上の周波数領域に偏るように周波数シェーピングされる。Δ−Σ変調器の出力信号である信号v[j]はサンプリング周波数が705.6kHzであり、31レベルに量子化された信号である。信号v[j]はパルス幅変調器2に入力され、キャリア周波数705.6kHz、31レベルの対称型パルス幅変調が行われる。そのパルス幅変調信号が信号w(t)として出力される。対称型パルス幅変調の出力波形の例を図3に示す。
【0022】
パルス幅変調器において発生する高調波歪について説明する。パルス幅変調器2において発生する高調波歪は、パルス幅変調が対称型であるか非対称型であるかや、パルス幅変調器のキャリア周波数によっても変わってくる。図4はx[k]を2.76kHzの正弦波とし、高調波歪に対する対策をとらなかったときの、パルス幅変調信号w(t)の周波数スペクトルを示したものである。元の信号の2.76kHzの信号成分の他に、その2倍の5.52kHzの成分や3倍の8.28kHzの成分を持ってしまっている。これらの信号成分がパルス幅変調における高調波歪に起因するものである。そこで、特願2004−026150号記載の技術を用いると、図5に示すように、単一正弦波入力に対しては、パルス幅変調信号の高調波をきれいに除去することができる。そこで、今度は入力信号として2.76kHzおよび6.89kHzの二つの正弦波を重ね合わせたものとした(ツートーンテスト)。そのときのパルス幅変調信号のスペクトルを図6に示す。1.38kHzおよび11.02 kHzに3次歪によるスペクトルのピークが現れてしまっている。これらの3次歪成分を除去することが本発明の目的である。
【0023】
そこで、数5に示す式を用いてフィードフォワード補償を行った。そのときのツートーンテストにおけるパルス幅変調信号のスペクトルを図7に示す。フィードフォワード補償の演算式を変えることにより、問題となっていた3次歪によるスペクトルが除去されている。
【0024】
本発明第1の実施例においては、図1にブロック図を示す装置によりパルス幅変調信号を生成していたが、図8に示すように、歪補償を行なった信号y[k]を生成してからオーバーサンプラによりサンプリング周波数を変換し、その後にΔ−Σ変調器を通すなどしてからパルス幅変調を行なうようにしても良い。
【0025】
本発明第1の実施例においては、デジタルフィルタ31は連続時間フィルタを双一次変換して作成したIIRフィルタを用いていたが、FIRフィルタを用いても良い。FIRフィルタを用いても、微分信号の高い位相精度を確保することができる。
【実施例2】
【0026】
本発明第2の実施例はパルス幅変調信号発生器であり、本発明第1の実施例と類似しているが、パルス幅変調の方式が異なっていることと、それに伴い、歪補償を行なう式が異なっている点が相違点である。パルス幅変調器のブロック図は図1に示す通りである。機能としては、入力信号u[i]に応じたパルス幅変調信号w(t)を生成するものであり、このパルス幅変調信号w(t)によりD級アンプを駆動し、その出力をローパスフィルタに通すことで、スピーカを駆動する信号を得ることができる。
【0027】
本発明第2の実施例においては、パルス幅変調として対称相補型パルス幅変調を用いる。相補型のパルス幅変調とは、図9に示すように、二つのパルス幅変調器を用い、それぞれのパルス幅変調器には互いに符号の異なる入力信号が入力され、二つのパルス幅変調器の出力信号は差動信号として扱われる。そのため、パルス幅変調における偶数次の歪は相殺され出力されない。図10にパルス幅変調信号の波形例を示す。本発明第2の実施例においては、個々のパルス幅変調器におけるパルス1周期の間に、パルス幅変調制御を2回掛けている。
【0028】
入力信号u[i]はサンプリング周波数44.1kHzの離散時間信号であり、x[k]は入力信号に対してサンプリング周波数を16倍の705.6kHzに変換した信号である。本発明第2の実施例においては、信号x[k]を生成するのに次の方法を用いている。まずオーバーサンプラ5により、信号u[i]からサンプリング周波数が705.6kHzである信号s[k]を作成し、その信号s[k]をデジタルフィルタ31に通して信号x[k]を生成している。デジタルフィルタ31は2次フィルタであり、信号x[k]に対する1階時間微分に対応する信号および2階時間微分に対応する信号を生成するために用いている。デジタルフィルタ31の実現方法は、本発明第1の実施例と同じである。
【0029】
歪予測器11においては、パルス幅変調器2によって発生する高調波歪の推定値を算出する。そして、算出した推定値を信号x[k]から減ずることにより、高調波歪を補正した信号y[k]を得る。高調波歪補正については後述する。信号y[k]はΔ−Σ変調器により、-15から15までの31レベルに再量子化される。その際、量子化ノイズは20kHz以上の周波数領域に偏るように周波数シェーピングされる。Δ−Σ変調器の出力信号である信号v[j]はサンプリング周波数が705.6kHzであり、31レベルに量子化された信号である。信号v[j]はパルス幅変調器2に入力され、キャリア周波数352.8kHz、31レベルの対称相補型のパルス幅変調が行われる。そのパルス幅変調信号が信号w(t)として出力される。
【0030】
次に、パルス幅変調器において発生する高調波歪について説明する。図11はx[k]を2.76kHzの正弦波とし、高調波歪に対する対策をとらなかったときの、パルス幅変調信号w(t)の周波数スペクトルを示したものである。元の信号の2.76kHzの信号成分の他に、3倍の8.28kHzの成分を持ってしまっているが、第2高調波である5.52kHzの成分は持っていない。特願2004−026150号記載の技術を用いると、図12に示すように、単一正弦波入力に対しては、パルス幅変調信号の高調波をきれいに除去することができる。そこで、今度は入力信号として2.76kHzおよび6.89kHzの二つの正弦波を重ね合わせたものとした(ツートーンテスト)。そのときのパルス幅変調信号のスペクトルを図13に示す。1.38kHzおよび11.02 kHzに3次歪によるスペクトルのピークが現れてしまっている。これらの3次歪成分を除去することが本発明の目的である。
【0031】
そこで、数6に示す式を用いてフィードフォワード補償を行った。そのときのツートーンテストにおけるパルス幅変調信号のスペクトルを図14に示す。フィードフォワード補償の演算式を変えることにより、問題となっていた3次歪によるスペクトルが除去されている。
【0032】
本発明第1の実施例においては、対称相補パルス幅変調を用いていたが、非対称相補型パルス幅変調を用いてもよい。その場合は、パルス1周期につき1回のパルス幅制御を行なう必要がある。相補型のパルス幅変調を用いる場合、原理的に2次歪は発生しないので、非対称型パルス幅変調を用いる場合であっても、歪補償を行なう式は数6のものを用いることができ、係数は異なる場合があるが、同じ形式の補正式となる。
【0033】
本発明第2の実施例においては、図1にブロック図を示す装置によりパルス幅変調信号を生成していたが、図8に示すように、歪補償を行なった信号y[k]を生成してからオーバーサンプラによりサンプリング周波数を変換し、その後にΔ−Σ変調器を通すなどしてからパルス幅変調を行なうようにしても良い。
【実施例3】
【0034】
本発明第3の実施例はパルス幅変調信号発生器であり、本発明第1の実施例と類似しているが、パルス幅変調の方式が異なっていることと、それに伴い、歪補償を行なう式が異なっている点が相違点である。パルス幅変調器のブロック図は図1に示す通りである。機能としては、入力信号u[i]に応じたパルス幅変調信号w(t)を生成するものであり、このパルス幅変調信号w(t)によりD級アンプを駆動し、その出力をローパスフィルタに通すことで、スピーカを駆動する信号を得ることができる。
【0035】
本発明第3の実施例においては、パルス幅変調として非対称型パルス幅変調を用いる。非対称型パルス幅変調の場合は、クロック周波数が同じである場合、対称型パルス幅変調の場合と比べてパルス幅変調の分解能を2倍にすることができる。図15にパルス幅変調信号の波形例を示す。
【0036】
入力信号u[i]はサンプリング周波数44.1kHzの離散時間信号であり、x[k]は入力信号に対してサンプリング周波数を16倍の705.6kHzに変換した信号である。本発明第2の実施例においては、信号x[k]を生成するのに次の方法を用いている。まずオーバーサンプラ5により、信号u[i]からサンプリング周波数が705.6kHzである信号s[k]を作成し、その信号s[k]をデジタルフィルタ31に通して信号x[k]を生成している。デジタルフィルタ31は2次フィルタであり、信号x[k]に対する1階時間微分に対応する信号および2階時間微分に対応する信号を生成するために用いている。デジタルフィルタ31の実現方法は、本発明第1の実施例と同じである。
【0037】
歪予測器11においては、パルス幅変調器2によって発生する高調波歪の推定値を算出する。そして、算出した推定値を信号x[k]から減ずることにより、高調波歪を補正した信号y[k]を得る。高調波歪補正については後述する。信号y[k]はΔ−Σ変調器により、-31から31までの63レベルに再量子化される。その際、量子化ノイズは20kHz以上の周波数領域に偏るように周波数シェーピングされる。Δ−Σ変調器の出力信号である信号v[j]はサンプリング周波数が705.6kHzであり、31レベルに量子化された信号である。信号v[j]はパルス幅変調器2に入力され、キャリア周波数705.6kHz、63レベルの非対称型パルス幅変調が行われる。そのパルス幅変調信号が信号w(t)として出力される。
【0038】
次に、パルス幅変調器において発生する高調波歪について説明する。図16はx[k]を2.76kHzの正弦波とし、高調波歪に対する対策をとらなかったときの、パルス幅変調信号w(t)の周波数スペクトルを示したものである。元の信号の2.76kHzの信号成分の他に、その2倍である5.52kHzの成分や3倍の8.28kHzの成分を持ってしまっている。特願2004−026150号記載の技術を用いると、図17に示すように、単一正弦波入力に対しては、パルス幅変調信号の高調波をきれいに除去することができる。そこで、今度は入力信号として2.76kHzおよび6.89kHzの二つの正弦波を重ね合わせたものとした(ツートーンテスト)。そのときのパルス幅変調信号のスペクトルを図18に示す。1.38kHzに3次歪によるスペクトルのピークが現れてしまっていることが見て取れる。この3次歪成分を除去することが本発明の目的である。
【0039】
そこで、数11に示す式を用いてフィードフォワード補償を行った。そのときのツートーンテストにおけるパルス幅変調信号のスペクトルを図19に示す。フィードフォワード補償の演算式を変えることにより、問題となっていた3次歪によるスペクトルが除去されている。
【0040】
本発明第3の実施例においては、図1にブロック図を示す装置によりパルス幅変調信号を生成していたが、図8に示すように、歪補償を行なった信号y[k]を生成してからオーバーサンプラによりサンプリング周波数を変換し、その後にΔ−Σ変調器を通すなどしてからパルス幅変調を行なうようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のパルス幅変調信号発生器を用いることにより、高調波歪の少ないフルデジタルのオーディオアンプを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施例を説明するブロック図。
【図2】本発明の第1の実施例におけるデジタルフィルタ31の構成例。
【図3】対称型パルス幅変調の説明図。
【図4】対称型パルス幅変調における高調波歪を示すパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図5】対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図6】対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図7】対称型パルス幅変調において本技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図8】本発明の第1の実施例における他の実現方法を示すブロック図。
【図9】相補型パルス幅変調を説明するためのブロック図。
【図10】相補対称型パルス幅変調の出力信号波形の例。
【図11】対称型パルス幅変調における高調波歪を示すパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図12】相補対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図13】相補対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図14】相補対称型パルス幅変調において本技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図15】非対称型パルス幅変調の出力波形の例。
【図16】非対称型パルス幅変調における高調波歪を示すパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図17】非対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(シングルトーン入力)。
【図18】非対称型パルス幅変調において従来の技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【図19】非対称型パルス幅変調において本技術を用いて高調波歪対策を取ったときのパルス幅変調信号のスペクトル(ツートーン入力)。
【符号の説明】
【0043】
1・・・歪予測装置
11・・・歪予測器
2,21,22・・・パルス幅変調器
31・・・デジタルフィルタ
4・・・Δ−Σ変調器
5・・・オーバーサンプラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、前記入力信号は離散時間信号であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をサンプリング周波数変換手段により異なるサンプリング周波数の信号に変換し、前記サンプリング周波数変換手段の出力をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置のいずれかにおいて、
該パルス幅変調器におけるパルス幅変調は対称型であり、該入力信号をx[k]とし、前出の該パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を該入力信号から減じた信号をy[k]としたときに、y[k]を以下の式を用いて算出することを特徴とするパルス幅変調信号発生装置:
y[k]=x[k]-ε・(x[k]・q[k]-p[k]2)-δ・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])
ただし、上式においてp[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、εは実定数、δは実定数である。
【請求項2】
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、前記入力信号は離散時間信号であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をサンプリング周波数変換手段により異なるサンプリング周波数の信号に変換し、前記サンプリング周波数変換手段の出力をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置のいずれかにおいて、
該パルス幅変調器におけるパルス幅変調は対称相補型または非対称相補型であり、該入力信号をx[k]とし、前出の該パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を該入力信号から減じた信号をy[k]としたときに、y[k]を以下の式を用いて算出することを特徴とするパルス幅変調信号発生装置:
y[k]=x[k]-δ・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])
ただし、上式においてp[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、δは実定数である。
【請求項3】
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、前記入力信号は離散時間信号であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をサンプリング周波数変換手段により異なるサンプリング周波数の信号に変換し、前記サンプリング周波数変換手段の出力をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置のいずれかにおいて、
該パルス幅変調器におけるパルス幅変調は非対称型であり、該入力信号をx[k]とし、前出の該パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を該入力信号から減じた信号をy[k]としたときに、y[k]を以下の式を用いて算出することを特徴とするパルス幅変調信号発生装置:
y[k]=x[k]-ε・x[k]・p[k]-δ・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])
ただし、上式においてp[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、εは実定数、δは実定数である。
【請求項1】
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、前記入力信号は離散時間信号であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をサンプリング周波数変換手段により異なるサンプリング周波数の信号に変換し、前記サンプリング周波数変換手段の出力をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置のいずれかにおいて、
該パルス幅変調器におけるパルス幅変調は対称型であり、該入力信号をx[k]とし、前出の該パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を該入力信号から減じた信号をy[k]としたときに、y[k]を以下の式を用いて算出することを特徴とするパルス幅変調信号発生装置:
y[k]=x[k]-ε・(x[k]・q[k]-p[k]2)-δ・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])
ただし、上式においてp[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、εは実定数、δは実定数である。
【請求項2】
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、前記入力信号は離散時間信号であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をサンプリング周波数変換手段により異なるサンプリング周波数の信号に変換し、前記サンプリング周波数変換手段の出力をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置のいずれかにおいて、
該パルス幅変調器におけるパルス幅変調は対称相補型または非対称相補型であり、該入力信号をx[k]とし、前出の該パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を該入力信号から減じた信号をy[k]としたときに、y[k]を以下の式を用いて算出することを特徴とするパルス幅変調信号発生装置:
y[k]=x[k]-δ・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])
ただし、上式においてp[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、δは実定数である。
【請求項3】
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置、または
パルス幅変調信号を出力信号とし、前記出力信号の低周波成分を入力信号に比例させるパルス幅変調信号発生装置であり、前記入力信号は離散時間信号であり、パルス幅変調器を持ち、前記出力信号は前記パルス幅変調器により生成されるものであり、前記入力信号および前記入力信号の1階および2階の時間微分に相当する信号のうちの幾つかを用いて算出される前記パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を前記入力信号から減じた信号をサンプリング周波数変換手段により異なるサンプリング周波数の信号に変換し、前記サンプリング周波数変換手段の出力をΔ−Σ変調器に入力し、前記Δ−Σ変調器の出力信号を元にパルス幅変調を行なうことを特徴とするパルス幅変調信号発生装置のいずれかにおいて、
該パルス幅変調器におけるパルス幅変調は非対称型であり、該入力信号をx[k]とし、前出の該パルス幅変調器により発生する高調波歪の推定値を該入力信号から減じた信号をy[k]としたときに、y[k]を以下の式を用いて算出することを特徴とするパルス幅変調信号発生装置:
y[k]=x[k]-ε・x[k]・p[k]-δ・x[k]・(2・p[k]2+x[k]・q[k])
ただし、上式においてp[k]はx[k]の1階時間微分に相当する信号、q[k]はx[k]の2階時間微分に相当する信号、εは実定数、δは実定数である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−115028(P2006−115028A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298240(P2004−298240)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
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