説明

パルス監視装置およびパルス監視方法

【課題】 正確なパルス監視を実現するパルス監視装置およびパルス監視方法を提供する。
【解決手段】 送信パルス信号NSを放出するとともに受信パルス信号を受信する送受信手段10と、送受信手段10へ送信パルス信号NSを出力するとともに、送信パルス信号NSを監視する期間を示すゲートパルスGPを出力するパルス発生器20と、送信パルス信号NSおよびゲートパルスGPを受信して、ゲートパルスGPが無効を示す期間における送信パルス信号NSのピーク値を測定し、送信パルス信号NSを平均してノイズ平均値AV1を算出し、ゲートパルスGPが有効を示す期間におけるピーク値よりも大きい送信パルス信号NSの値を平均してパルス平均値AV2を算出し、ノイズ平均値AV1とパルス平均値AV2とに基づいて閾値THを算出し、閾値THにおける送信パルス信号NSのパルス幅およびパルス間隔を監視するように構成されたパルス監視部30と、を備えたパルス監視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パルス監視装置およびパルス監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFパルスで出力される信号は、電波法で規定されたパルス幅やパルス間隔で出力しているかを随時監視する必要がある。従来のパルス監視装置およびパルス監視方法では、監視される信号のパルス幅やパルス間隔を判定するレベルのポイント(以下閾値と称す)は、一定に固定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−85630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
閾値が一定に固定されていると、レベルが変化するキャリア信号劣化要因を外部から受けた等の場合には、閾値にノイズが重なってしまい、パルス幅やパルス間隔を正確に測定することが困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであって、正確なパルス監視を実現するパルス監視装置およびパルス監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によるパルス監視装置は、送信パルス信号を放出するとともに受信パルス信号を受信する送受信手段と、前記送受信手段へ送信パルス信号を出力するとともに、前記送信パルス信号を監視する期間を示すゲートパルスを出力するパルス発生器と、前記送信パルス信号および前記ゲートパルスを受信して、前記ゲートパルスが無効を示す期間における前記送信パルス信号のピーク値を測定し、前記送信パルス信号を平均してノイズ平均値を算出し、前記ゲートパルスが有効を示す期間における前記ピーク値よりも大きい前記送信パルス信号の値を平均してパルス平均値を算出し、前記ノイズ平均値と前記パルス平均値とに基づいて閾値を算出し、前記閾値における前記送信パルス信号のパルス幅およびパルス間隔を監視するように構成されたパルス監視部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係るパルス監視装置の一構成例を概略的に示す図である。
【図2】実施形態に係るパルス監視方法について説明するためのフローチャートである。
【図3】本実施形態に係るパルス監視方法において、監視するパルスとゲートパルスとの波形の一例を示す図である。
【図4】実施形態に係るパルス監視方法の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係るパルス監視装置およびパルス監視方法について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1に、本発明の一実施形態に係るパルス監視装置の一構成例を概略的に示す。本実施形態に係るパルス監視装置は、例えば二次監視レーダ装置(SSR:Secondary Surveillance Radar)に搭載されている。
【0010】
本実施形態に係るパルス監視装置は、送受信手段としてのアンテナ10と、質問パルス発生器20と、パルス監視部30と、質問パルス発生器20からアンテナ10への送信パルス信号出力経路に設けられた断路スイッチSWと、を備えている。
【0011】
アンテナ10は、送信パルス信号を電波に乗せて放出するとともに、航空機等から送り返された受信パルス信号を受信する。アンテナ10は、質問パルス発生器20から供給された送信パルス信号を送信するとともに、航空機等からの符号パルスを受信して質問パルス発生器20へ出力する。
【0012】
質問パルス発生器20は、パルス信号の受信と送信とを切り替える切替手段(図示せず)と、信号処理手段(図示せず)とを備え、パルスPSを発生するとともに、送信パルス信号NSを監視する期間を示すゲートパルスGPをパルス監視部30へ出力するように構成されている。
【0013】
質問パルス発生器20は、送信パルス信号NSを監視すべき期間(出力信号にパルスPSが含まれる期間)においてゲートパルスGPをハイレベル(有効)とし、送信パルス信号NSを監視しない期間(出力信号にパルスが含まれない期間)においてゲートパルスGPをローレベル(無効)とするように構成されている。
【0014】
パルス監視部30は、質問パルス発生器20から出力アンテナ10へ出力された送信パルス信号NSを取得し、ゲートパルスGPが有効を示すタイミングにおいて送信パルス信号NSに含まれるパルスPSのパルス幅およびパルス間隔を検出するとともに、パルス幅およびパルス間隔の検出に先立って閾値THを演算するように構成されている。
【0015】
パルス監視部30は、パルスレベルの平均値AV2と、ノイズレベルの平均値AV1とを算出し、これらの値に基づいて閾値THを算出するように構成されている。本実施形態では、パルス監視部30は、閾値=(パルスレベルの平均値+ノイズレベルの平均値)/2となるように以下の演算を行なう。
【0016】
パルス監視部30は、閾値THレベルにおいて送信パルス信号NSのパルス幅およびパルス間隔を監視し、送信パルス信号NSに異常があると判断した場合には、断路スイッチSWを開いて、送信パルス信号NSの送信を停止させるように構成されている。
【0017】
図2に、パルス監視部30が閾値THを演算する動作の一例を説明するためのフローチャートを示す。また、図3に、質問パルス発生器20からアンテナ10へ出力される送信パルス信号NSと、ゲートパルスGPとの波形の一例を示す。信号パルス発生器20からアンテナ10へ出力される送信パルス信号NSには、パルスPSとノイズ信号とが含まれている。
【0018】
最初に、パルス監視部30は、ゲートパルスGPが無効を示すタイミング内において、信号パルス発生器20からアンテナ10へ出力される信号NSの値から、そのピーク値を測定する(ステップST1)。
【0019】
続いて、パルス監視部30は、ゲートパルスGPが無効を示すタイミング内において、信号パルス発生器20からアンテナ10へ出力される送信パルス信号NSの値から、ノイズレベルの平均値(ノイズ平均値)AV1を算出する(ステップST2)。ゲートパルスGPが無効であるタイミング内には、信号パルス発生器20からアンテナ10へ出力される送信パルス信号NSにパルスPSが含まれていないため、送信パルス信号NSの平均値を算出することにより、ノイズレベルの平均値AV1を算出することができる。
【0020】
続いて、パルス監視部30は、ゲートパルスGPが有効を示すタイミング内(監視期間内)において、信号パルス発生器20からアンテナ10へ出力される送信パルス信号NS値のうち、ステップST1で測定したノイズのピーク値より高いレベルの値の平均値(パルス平均値)AV2を算出する(ステップST3)。
【0021】
最後に、パルス監視部30は、パルスレベルの平均値AV2とノイズレベルの平均値AV1との和を2で除算して、閾値THを演算する(ステップST4)。パルス監視部30は、演算した閾値THのレベルにおいて、受信した送信パルス信号NSのパルス幅およびパルス間隔を監視する。なお、図3に示すように、判定するパルスが正論理とした場合、パルス幅はパルスPSが立ち上がってからたち下がるまでの期間であって、パルス間隔はパルスPSが立ち上がってから次に立ち上がるまでの期間である。
【0022】
パルス監視部30は、パルス幅およびパルス間隔の少なくとも一方の異常を検出することにより、質問パルス発生器20から出力された送信パルス信号NSの異常を検出した場合には、質問パルス発生器20からアンテナ10への出力経路に設けられた断路スイッチSWを開いて、アンテナ10への送信パルス信号NSの供給を遮断するように構成されている。
【0023】
図4に、パルス監視部30が監視する送信パルス信号NSと、ゲートパルスGPとの波形の一例を示す。図4に示す場合では、一定の閾値THAレベルとノイズレベルとが重複している。このとき、パルス監視部30が閾値THAレベルにおいてパルス幅およびパルス間隔を監視すると、正確なパルス幅およびパルス間隔を監視することが困難である。この場合には、パルス幅およびパルス間隔が規定を満たすものであった場合でも、パルス監視部30が送信パルス信号NSに異常があると誤って判断する可能性があった。
【0024】
これに対し、パルス幅とパルス間隔とを監視するための閾値THを、パルスレベルの平均値AV2とノイズレベルの平均値AV1との和を2で除算した値に設定すると、閾値THレベルとノイズレベルとが重複することがなくなる。上記のように送信パルス信号NSを監視する期間を示すゲートパルスGPをパルス監視部30に供給して閾値THを演算することによって、パルス監視部30が閾値THレベルにおいてパルス幅とパルス間隔とを監視して、正確なパルス幅およびパルス間隔とを監視することが可能となる。
【0025】
すなわち、本実施形態に係るパルス監視装置およびパルス監視方法によれば、正確なパルス監視を実現するパルス監視装置およびパルス監視方法を提供することができる。
【0026】
なお、上記実施形態では、閾値THを、パルスレベルの平均値AV2とノイズレベルの平均値AV1との和を2で除算した値に設定しているが、閾値THの演算は上記の演算方法に限られるものではない。
【0027】
パルス監視部30は、ノイズレベルの平均値AV1とパルスレベルの平均値AV2とに基づいて、少なくとも、ゲートパルスGPが無効を示す期間におけるノイズレベルのピーク値と、ゲートパルスGPが有効を示す期間におけるノイズのピーク値より高いレベルの値の中の最低値と、の間のレベルとなるように閾値THを設定するように構成されることが望ましい。
【0028】
また、パルス監視部30は、ノイズ信号の特性に応じて、ゲートパルスGPが無効である複数の期間に渡って、ノイズレベルのピーク値を測定するように構成されてもよい。ゲートパルスGPに対してノイズ信号が緩やかに変化する場合には、ゲートパルスGPが無効である複数の期間に渡ってピーク値を測定することにより、閾値THをノイズと重複することのないレベルに設定することが可能となる。
【0029】
また、パルス監視部30は、定期的に閾値THを演算して値を更新するように構成されていてもよく、さらにユーザが閾値THを演算するタイミングを設定することが可能に構成されてもよい。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
SW…断路スイッチ、TH…閾値、AV1…ノイズ平均値、AV2…パルス平均値、NS…送信パルス信号、PS…パルス、10…アンテナ(送受信手段)、20…質問パルス発生器(パルス発生器)、30…パルス監視部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信パルス信号を放出するとともに受信パルス信号を受信する送受信手段と、
前記送受信手段へ送信パルス信号を出力するとともに、前記送信パルス信号を監視する期間を示すゲートパルスを出力するパルス発生器と、
前記送信パルス信号および前記ゲートパルスを受信して、前記ゲートパルスが無効を示す期間における前記送信パルス信号のピーク値を測定し、前記送信パルス信号を平均してノイズ平均値を算出し、前記ゲートパルスが有効を示す期間における前記ピーク値よりも大きい前記送信パルス信号の値を平均してパルス平均値を算出し、前記ノイズ平均値と前記パルス平均値とに基づいて閾値を算出し、前記閾値における前記送信パルス信号のパルス幅およびパルス間隔を監視するように構成されたパルス監視部と、を備えたパルス監視装置。
【請求項2】
前記パルス監視部は、前記パルス平均値と前記ノイズ平均値との和を2で除算して前記閾値を算出するように構成されている請求項1記載のパルス監視装置。
【請求項3】
前記パルス発生器から前記送受信手段へのパルス信号出力経路に設けられた断路スイッチをさらに備え、
前記パルス監視部は、前記パルス信号のパルス幅およびパルス間隔の少なくとも一方が異常である場合に、前記断路スイッチを開くように構成されている請求項1記載のパルス監視装置。
【請求項4】
送信パルス信号を放出するとともに受信パルス信号を受信する送受信手段と、
前記送受信手段へ前記送信パルス信号を出力するとともに、前記送信パルス信号を監視する期間を示すゲートパルスを出力するパルス発生器と、
前記送信パルス信号および前記ゲートパルスを受信するパルス監視部と、を備えたパルス監視装置におけるパルス監視方法であって、
前記パルス監視部は、前記ゲートパルスが無効を示す期間における前記送信パルス信号のピーク値を測定し、
前記ゲートパルスが無効を示す期間における前記送信パルス信号を平均してノイズ平均値を算出し、
前記ゲートパルスが有効を示す期間における前記ピーク値よりも大きい前記送信パルス信号の値を平均してパルス平均値を算出し、
前記ノイズ平均値と前記パルス平均値とに基づいて閾値を算出し、
前記ゲートパルスが有効を示す期間において前記閾値における前記送信パルス信号のパルス幅およびパルス間隔を監視するパルス監視方法。
【請求項5】
前記閾値の算出は、前記パルス平均値と前記ノイズ平均値との和を2で除算して閾値を算出する請求項4記載のパルス監視方法。
【請求項6】
前記パルス発生器から前記送受信手段へのパルス信号出力経路に設けられた断路スイッチをさらに備えたパルス監視装置におけるパルス監視方法であって、
前記パルス監視部は、前記パルス信号のパルス幅およびパルス間隔の少なくとも一方が異常である場合に、前記断路スイッチを開く請求項4記載のパルス監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−42284(P2012−42284A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182484(P2010−182484)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】