説明

パルプモウルド製自動車用内装材

【課題】 パルプモウルド成型体を用いながら、表面の装飾を容易に行うことができ、耐久性に優れたパルプモウルド製自動車用内装材を提供すること。
【解決手段】 熱プレスを加えられた、ポリオレフィン樹脂を10wt%〜20wt%含有するパルプモウルド成型体の表面をプラスチックフィルムで被覆することによりパルプモウルド製自動車用内装材を構成する。また、上記熱プレスによりパルプモウルド成型体の密度を0.4[g/cm]〜0.8[g/cm]となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン合成パルプ等を添加して抄製し、さらに熱プレスを行うことにより製造したパルプモウルドの表面を、プラスチックフィルムで被覆した、自動車用の内装材として適した特性を有するパルプモウルド製自動車用内装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内の内張り等の自動車用内装材にはポリプロピレンやポリウレタン等が多く用いられている。しかし、これらは何れも石油化学製品であり、化石原料を用いているので資源に限りがありまた、廃棄焼却時には大気中に二酸化炭素を排出するため、地球温暖化防止の観点からも好ましくない。従って、カーボンニュートラルなバイオマスを用いた材料が望まれている。また、自動車の燃費を良くして二酸化炭素の排出量を削減する為に自動車の軽量化も進められており、軽量な素材の開発も望まれている。
【0003】
一方、パルプモウルド成型品はバイオマス資源である木材パルプの再生利用を積極的に進める環境保全型の「古紙利用のリサイクル製品」で、複雑な形状の成型が可能であり、また密度も0.25〜0.35[g/cm]と軽い材料である。また、強度を上げるために熱プレスを施した後もやはり密度が0.40〜0.80[g/cm]と自動車用に用いられている樹脂の中で最も軽いポリプロピレンの密度0.90〜0.91[g/cm]より低くなっている。
【0004】
したがってこのようなパルプモウルドを自動車用材料として用いることができれば地球温暖化防止に寄与することができ、また自動車全体の重量を軽くすることができるため燃費の節約にもなりやはり地球温暖化防止に寄与することができる。
【0005】
このような観点もあり、パルプモウルド成型品を自動車用エアコンのダクトに用いることが提案されている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−100048号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、パルプモウルドは一般に表面強度、硬度に欠け、また大気中の水分を吸収することにより強度の低下が起こり、また変形も起こるため自動車の内装材としては使用が困難であった。
【0008】
また、特許文献1のパルプモウルド成型品も、サイズ剤や撥水剤の添加量を増加して大気中の水分を吸収する事による強度低下や変形を防ぐ様にしているが十分ではなく、さらにパルプであるため表面の美粧性が低く自動車用内装材として使用するには適しないという問題があった。
【0009】
自動車用内装材としての用途を考慮すると、軽量であることに加え、内装材としての耐久性、美粧性のあるものであること等が望まれる。
【0010】
本発明は、上記自動車用内装材の課題に鑑みてなされたものであり、パルプモウルドを用いながら表面の装飾を容易に行うことができ、密度が低く、耐久性等に優れた低コストで製造可能なパルプモウルド製自動車用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、熱プレスを加えられた、ポリオレフィン樹脂を10wt%〜20wt%含有するパルプモウルド成型体の表面をプラスチックフィルムで被覆したものであることを特徴とするパルプモウルド製自動車用内装材により構成される。
【0012】
即ち、本発明に係るパルプモウルド製自動車用内装材は、ポリオレフィン樹脂を10wt%〜20wt%含有し、熱プレスを加えられたパルプモウルド成型体の表面を、プラスチックフィルムで被覆したものである。このように構成すると、熱プレスにより、疎水性のポリオレフィン樹脂がパルプモウルド成型体内で溶融し、パルプに含浸するため、パルプモウルド成型体が疎水性を帯び十分な耐湿性及び強度を発揮し、自動車内に設置されても吸湿による強度低下や変形を防ぐことが出来る。また熱プレスを行うことによりパルプモウルド成型体の形の矯正ができると共に表面を平滑にしたり微細なエンボス模様を施すことができる。このように、表面を平滑にしたりエンボス加工を施したパルプモウルド成型体はプラスチックフィルムを被覆した後には風合いや手触りに優れた自動車用内装材を実現し得るし、従来用いられてきたプラスチックのフィルムで覆えば従来のプラスチック成型体と同等の表面性、手触りが得られる。また、プラスチックフィルムには印刷を施すことができ、これにより美粧性にも優れた自動車用内装材を形成することもできる。パルプモウルド成型体はプラスチック成型体に比較して密度が低いので、この自動車用内装材を用いることにより自動車の軽量化をも実現し得る。
【0013】
第2に、上記熱プレスにより上記パルプモウルド成型体の密度を0.4[g/cm]〜0.8[g/cm]としたものであることを特徴とする上記第1記載のパルプモウルド製自動車用内装材により構成される。
【0014】
このように構成することにより、耐湿性を確保したままプラスチック成型体と同等の強度をも発現させることができる。
【0015】
第3に、上記パルプモウルド成型体を上記プラスチックフィルムで被覆する際の同フィルムの重量割合が、全体に対して10wt%〜0.2wt%である上記第1又は2記載のパルプモウルド製自動車用内装材により構成される。
【0016】
このようにプラスチックをフィルム化して用いることにより内装材中のプラスチックの使用割合を大幅に下げることができ、内装材の見掛けの密度を下げることにより内装材の軽量化が図れる。
【0017】
第4に、上記プラスチックフィルムは上記パルプモウルド成型体の片面にのみ被覆されているものであることを特徴とする上記第1〜3の何れかに記載のパルプモウルド製自動車用内装材により構成される。
【0018】
このように構成すると、例えば自動車用内装材として外側の面のみにプラスチックフィルムを被覆すれば良いため、例えばパルプモウルド成型体全体を被覆する場合に比べてプラスチックフィルムの使用量を大幅に減少することができる。よって安価なバイオマス製品であるパルプモウルドを主体として、化石原料を用いた石油化学製品であるプラスチックフィルムの使用量を少なく抑えることができ、バイオマス材料を用いつつ軽量の自動車用内装材を実現し得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように構成したので、パルプモウルド成型体によりプラスチック成型体と同等の材料強度を発現させながら耐久性があり、表面をプラスチックフィルムでカバーすることにより環境負荷の低い美粧性に優れた軽量のパルプモウルド製自動車用内装材を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るパルプモウルド製自動車内装材の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1(a)乃至(c)に示すものは、パルプモウルド−プラスチックフィルム複合の自動車用内装材1を自動車のセンターピラーに用いた場合を示す模式図である。
【0022】
同図において、1は、パルプモウルド−プラスチックフィルム複合自動車用内装材(パルプモウルド製自動車内装材)であり、基本構成要素であるパルプモウルド本体(成型体)2の表面である、外側面2bのみがプラスチックフィルム3で覆われている(図1(c)参照)。この内装材1は、全体として略長方形状のトレー状をなし、同図(c)に示すようにその横断面は略U字状であり、内側面2a側を自動車のセンターピラーに被覆することにより該ピラーの装飾材として使用するものである。
【0023】
(1)パルプモウルド本体2について
上記パルプモウルド本体2は、パルプモウルド−プラスチックフィルム複合自動車用内装材1に強度を付与するものであり、作成に当たっては先ず通常の湿式法により必要な形状に抄製、成型する。
【0024】
この抄製時に、パルプスラリーとして主原料の天然パルプにポリオレフィン樹脂を添加したものを用いる。パルプモウルド本体2に用いる主原料の天然パルプについては特に限定されず、古紙パルプでも、所謂バージンパルプでもよく、また、これらを適宜混合したパルプを用いてもよい。この天然パルプに添加される上記ポリオレフィン樹脂とはエチレン、プロピレンを主原料として生産されるポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂で、その形態に特に限定はないが天然パルプ内に十分に分散し、熱プレスの効果が良く現れるようにするためには繊維形状の樹脂ファイバーまたはパルプ形状の合成パルプとして用いることが好ましい。パルプ形状になったものとしては現在SWP(登録商標)として販売されているポリオレフィン合成パルプがある。尚、SWP等のポリオレフィン樹脂はパルプモウルド本体中に10〜20wt%含まれるように添加することが好ましい。またパルプモウルド本体2を製造する際には、強度を上げるため等で紙力増強剤等の添加薬剤を用いてもかまわない。紙力増強剤は特に限定はされないが、例えばポリアクリルアマイド系のものが好ましい。
【0025】
この、通常の湿式法により抄製、成型したものを次に乾燥させ、更に150℃〜250℃に加熱した雌・雄の両金型4、4’(図2(a)参照)を用いて熱プレスし、密度を上げると共に表面(内側面2a及び外側面2b)を平滑やエンボス模様になるように仕上げて作成する。
【0026】
このように表面を加工した後フィルムで覆うことにより風合いや手触りに優れた内装材を得ることができる。尚、図2中4aは加熱用ヒータである。
【0027】
また通常の湿式法により必要な形状に成型し、これを150℃〜250℃に加熱した雌・雄の両金型4、4’を用いてプレスしながら加熱し乾燥させたものは、更に表面性が優れ、パルプモウルド本体2の密度も上げることができる。例えば、本発明に用いるパルプモウルド本体2は上記の方法で製造したものであるが、上記プレス等を施すことにより密度を通常のプレスが無い場合の0.25[g/cm]〜0.35[g/cm]から0.4[g/cm]〜0.8[g/cm]まで上げ、これにより強度、耐湿性を通常のパルプモウルドより向上させることが出来る。
【0028】
このようにポリオレフィン樹脂を添加した上で抄製し、熱プレスを行うことによりポリオレフィン樹脂がパルプ中に十分に含浸し、これによって自動車用内装材として必要な強度及び耐湿性を発揮することができる。よって、かかるパルプモウルド成型体によると、プラスチックフィルムを成型体両面に被覆しても良いが、パルプモウルド成型体の片面(例えば外側面2b)にのみ被覆するだけでも自動車用内装材として十分な耐湿性を発揮することができる。
【0029】
このように作製したパルプモウルドをプラスチックフィルムで被覆することにより、樹脂成型体と同等の材料強度、耐久性、美粧性を持たせることができ、バイオマス材料による環境負荷の低い自動車用内装材を実現できる。特に、上記のように密度を上げることにより、強度のある自動車用内装材を実現できる。
【0030】
ところで、パルプモウルドの強度は一般的に密度を上げたほうが強くなるが、必要以上に密度を上げることは製造コストが増すので好ましくない。従って、必要な強度に応じて密度を上げれば良い。尚、パルプモウルドの密度は直接測定することは困難であるので密度を算出するに当たっては、
【0031】
イ.先ず試料を約5cm角程度で切り出した後、面積を正確に測定する。
ロ.次に試料各部の厚みをマイクロメーターで測定し平均厚みを算出することにより試料の体積を算出する。
ハ.最後にその重量を正確に測定した後、試料の体積で割る。
という方法により算出した。
【0032】
このパルプモウルド−プラスチックフィルム複合自動車用内装材1の形状は、図1に示すものの他特に制限はなく、自動車用内装材の用いられる部位によって適した形状に成型すれば良い。
【0033】
つぎに、本発明のパルプモウルド−プラスチックフィルム複合自動車内装材1において使用するプラスチックフィルムについて説明する。
【0034】
(2)プラスチックフィルムについて
本発明において用いられるプラスチックフィルムには特に指定はなく、ポリプロピレン、ポリウレタン等通常の自動車内装材に用いられているプラスチックを用いればよい。そうすることにより従来の内装材料と同等の質感、感触、硬度が得られる。またポリ乳酸系のバイオマスプラスチックを用いればより地球環境に優しい材料となる。
【0035】
これらのプラスチックには、フィルム加工性、フィルム物性を調整する目的で、可塑剤、滑剤、シリカなど安定な無機フィラー、紫外線吸収剤及び光安定剤などの添加剤、改質剤を添加することも可能である。これらの材料は、必要に応じて用いることができる。
【0036】
原料となるプラスチックをフィルム化するに当たっては、成膜方法に特に限定はなく公知のTダイ法やインフレーション法が用いられる。
【0037】
フィルムの厚さは、成型する部材の大きさや必要とされる強さなどにより、十数μm〜1000μmの間で適宜決定することができる。ただし、自動車用内装材として成型した場合の強度は、主にパルプモウルド本体2で付与されるため、プラスチック単独で製造するよりも大幅にフィルムの厚さを薄くすることができる。ここで、内装材の重量を軽くする、製造コストを下げるという観点からはプラスチックの比率を少なくすることが好ましく、パルプモウルド本体2の表面を被覆するプラスチックフィルム3の厚さは、必要最小限とすることが必要である。本発明ではプラスチックをフィルム化することにより全体に対するプラスチックフィルムの比率が10重量%以下(10wt%〜0.2wt%)となるように構成する。かかる構成により、軽量で安価なパルプモウルドを主体として、パルプモウルドと比較して密度、コストの高いプラスチックフィルムの使用量を最小限に抑えることができ、バイオマス材料を主に用いつつ軽量、低コストの自動車用内装材を実現し得る。
【0038】
また成膜したフィルムはパルプモウルド本体2を覆う前に印刷を施すことが好ましい。シートと調和した色彩や木目柄を印刷したフィルムで表面を飾ることにより、自動車の内部を上質で心地よい雰囲気にすることが出来る。更にこのことは、単なるパルプモウルドでは実現できない、自動車内装材としては必須の要件である。また、プラスチック成型体に後から印刷を施すよりも容易に印刷できる。このようにプラスチックフィルムに印刷を施すことにより、美粧性に優れた自動車用内装材1を実現することができる。尚、印刷方法はオフセット印刷やグラビア印刷等の公知の印刷方式を使用することができる。
【0039】
(3)プラスチックフィルムの被覆について
パルプモウルド本体2を成膜、印刷したプラスチックフィルム3で覆うことにより本発明のパルプモウルド−プラスチックフィルム複合自動車用内装材1を製造する。
【0040】
パルプモウルド本体2の片面にフィルムを被覆する方法としては公知の熱プレス法や、公知の真空成型法、または真空圧空成型法を利用することができるが、いずれの方法を用いても良い。
【0041】
熱プレス法とはパルプモウルド本体2を成型する場合の熱プレスの最後においてプレス型にフィルム3を挟みパルプモウルド本体2の成型とフィルムコートを同時に行う方法である(図2(b)参照)。この方法はパルプモウルド本体2が平板に近い場合では設備費も安く容易にコートすることができる。尚、パルプモウルド本体2の両面にフィルムを被覆する場合は、図3(b)に示すようにパルプモウルド本体2の両面にフィルム3を位置させ、パルプモウルド本体2の片面にのみフィルムを被覆する場合は、被覆する側にのみフィルム3を位置させれば良い。
【0042】
また真空成型法、または真空圧空成型法は、パルプモウルド本体2が3次元的に起伏の大きい場合に適した方法であり、凹面側に被覆する場合は図3(a)に示すように、パルプモウルド本体2の凹面と同形状の雌型(金型)5を設け、これを真空成型機(または真空圧空成型機)6の金型装着部6a上に装着し、上記雌型5にパルプモウルド本体2を嵌合する。そして、上記パルプモウルド本体2上から、クランプ7により両縁部を挟持して加熱軟化させたプラスチックフィルム3を、図3(b)に示すように、真空、または真空/圧空により、パルプモウルド本体2の凹面(内側面2a)に吸引、密着させ、積層、一体化させる方法である。プラスチックフィルム3の被覆が終了した後、図示しない打ち抜き装置でパルプモウルド本体2の周囲を全周に亘りトリミングすることにより、内側面2aにプラスチックフィルム3を被覆したパルプモウルド本体2を製造する。
【0043】
また、別の方法として、雌型(金型)5を用いずに、パルプモウルド本体2が通気性、剛性を有することから、これを雌型代わりに用いて、その凹面にプラスチックフィルム3を吸引、密着させ、被覆する方法もある。
【0044】
また、パルプモウルド本体2の凹面(内側面2a)をプラスチックフィルム3で被覆した際、そのプラスチックフィルム3とパルプモウルド本体1の内側面2aとの接着強度が不充分な場合がある。このような場合には、例えば、プラスチックフィルム3の上記内側面2aとの接着面に、予めヒートシール層を共押出法で形成させておく方法やホットメルト材などの熱接着性樹脂を塗布したり、あるいは、上記フィルムの上記接着面に熱接着性樹脂を押し出しコートして接着層を設けておくことができる。また、接着層を塗布により設ける場合は、接着層をパルプモウルド本体2側(内側面2a側)に設けてもよく、その場合、積層前に、スプレーコートや、ノズル、あるいはゴム版等を用いる塗布方式で上記パルプモウルド本体2の内側面2aの全面、または必要部分に部分的に塗布しておいても良い。
【0045】
また、パルプモウルド本体2の凸面側にプラスチックフィルム3を被覆する場合は、基本部分においては、公知のスキンパック包装による方法や公知の3次元加飾法を利用することができる。このうちスキンパック包装は、不定型の商品、たとえば、魚や食肉の塊、また商品を密着包装して、質感に訴える必要のある場合等に利用される方法である。
【0046】
スキンパック包装機8の一般的な構造は、図4に示すように、上、下のチャンバー9、10から構成されており、前記両チャンバー間に、プラスチックフィルム3をクランプでき、上チャンバー9にはプラスチックフィルム3を加熱するヒータ11が内蔵され、下チャンバー10には、パルプモウルド本体2の載置台12が、機種によっては上下に駆動できるような構造にて内蔵されている。さらに下チャンバー10は、プラスチックフィルム3をクランプし、かつ加熱後に真空密着が出来るよう真空ポンプ13に連結されている。プラスチックフィルム3は、通常巻き取りでスキンパック包装機8の側面あるいは背面にセットされる。使用に当たってはヒータ11で加熱されたプラスチックフィルム3は真空に引かれることにより載置台12に置かれたパルプモウルド本体2の外側面2bに密着する。
【0047】
また、このパルプモウルド本体2の凸面(外側面2b)にプラスチックフィルム3を被覆する方法としては、真空圧空成型による方法によっても行うことができる。図5にパルプモウルド本体2の凸面(外側面2b)にプラスチックフィルム3を被覆する真空圧空成型装置を示す。
【0048】
この装置では、パルプモウルド本体2を予め下成型室14内にその外側面2bを上向きにして設置する。プラスチックフィルム3を、上成型室15と下成型室14との間に導入する。そして前記上下成型室間を閉塞し、上成型室15と下成型室14内を真空ポンプVPにより同時に真空状態にする(図5矢印A参照)。次いでヒータ16で加熱してプラスチックフィルム3を加熱軟化させた後、コンプレッサーCPから上成型室15内にのみ空気を圧入し(同図矢印B参照)、その圧力でプラスチックフィルム3をパルプモウルド本体2の外側面2bに圧着して凸部の被覆を行う。
【0049】
以上に示したような方法により、パルプモウルド本体2の凸面(外側面2b)にプラスチックフィルム層を被覆した際、パルプモウルド本体2との接着強度が不充分な場合には上記凹面(内側面2a)の場合と同様にプラスチックフィルムに、予めヒートシール材やホットメルト材などの熱接着性樹脂を塗布したり、あるいは、熱接着性樹脂を押し出しコートして接着層を設けておくことや、パルプモウルド本体2側に予めヒートシール材やホットメルト材などの熱接着性樹脂を塗布して接着層を設けてもよい。また、このようにプラスチックフィルム層を設けることにより耐スクラッチ性をも向上させることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例)
本実施例では図1(a)で示した自動車に用いられるセンターピラーと同様の形状のものを製作した。本実施例で作成したパルプモウルド−プラスチックフィルム複合自動車用内装材1は、本体の形状がパルプモウルド本体2で形成され、その凸部(外側面2b)がプラスチックフィルムで被覆され一体化されている。
【0052】
(1)パルプモウルド本体の作製
パルプモウルド本体2は、原料パルプとして、上白古紙を再溶解したパルプにSWP(登録商標、三井化学製ポリオレフィン合成パルプ)銘柄E400を13wt%添加したものを用いて、常法(湿式法)により、深さ30mm、全長210mm、横幅70mm、平均肉厚2mmのパルプモウルドを作製した。
【0053】
これを220℃に加熱した雌型(金型)4と雄型(金型)4’とを用いて12MPaの圧力で10秒間加熱圧縮し(図2(a)参照)、平均肉厚1mmのパルプモウルド本体2とした。このパルプモウルドの密度は0.589[g/cm]であった。また、含水率は1.8%であった。
【0054】
(2)ポリ乳酸フィルムの作製
次に上記パルプモウルド本体2を包むためのポリ乳酸フィルムを作製した。
フィルムの原料となるポリ乳酸は三井化学株式会社が販売しているトウモロコシを原料として製造したポリ乳酸レイシア(登録商標)H−440である。このポリ乳酸樹脂を用い、所謂T−ダイ法により25μmの厚みを持ったポリ乳酸フィルムを得た。また、ポリ乳酸100%品のほかに昭和高分子株式会社のPBS系生分解性プラスチック「ビオノーレ」(登録商標)#3001を20%添加した厚さ25μmのフィルムも製造した。
【0055】
実施例1 パルプモウルドのポリ乳酸フィルムによる被覆
上記のパルプモウルド本体2の凸部(外側面2b)を、ポリ乳酸フィルムで被覆して一体化するため、加熱プレス機に図2に示すようなパルプモウルド本体2と同形状の金型を取り付け140℃に加熱した。加熱後雄型の上にパルプモウルドを乗せその上にポリ乳酸100%厚み25μmのフィルムを被せた。その後12MPaの圧力で5秒間プレスした。プレス後のパルプモウルドの表面にはフィルムが綺麗にコートされていた。
【0056】
実施例2 パルプモウルドのPBS20%添加ポリ乳酸フィルムによる被覆
被覆に用いたフィルムにPBS20%添加ポリ乳酸フィルムを用いプレス型の温度を120℃にした以外は実施例1と同様にしてパルプモウルドの凸面にフィルムをコートした。この場合もフィルムはパルプモウルドの表面に綺麗にコートされていた。
【0057】
このようにして製作したパルプモウルド−プラスチックフィルム複合自動車用内装材1の重量に対して、プラスチックの重量割合は0.5%であった。また、全体の密度は0.61[g/cm]で、汎用プラスチックでは最も小さいポリプロピレンの密度0.90〜0.91[g/cm]より軽い素材となった。
【0058】
本試験から分かるようにパルプモウルドをプラスチックフィルムで覆った本発明に係る自動車用内装材は、自動車の室内等の内装材料として十分な美粧性を持ち、更に自動車の軽量化により燃料消費率も下げることができる優れた材料といえる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るパルプモウルド製自動車用内装材は、プラスチック成型体と同等の機械特性、美粧性等を持つと同時に、バイオマス材料としての特性を有しているので、石油資源が枯渇していく将来に亘って自動車用内装材として広く利用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は本発明に係る自動車用内装材の平面図、(b)は(a)のY−Y線断面図、(c)は(a)のX−X線断面図である。
【図2】(a)は同上内装材を製造するための熱プレス用雌雄型を示す図、(b)は同上内装材に係るパルプモウルド本体の熱プレスとフィルムのコートを同時に行う方法を示す図である。
【図3】(a)は真空成型法により同上内装材に係るパルプモウルド本体にフィルムをコートする真空成型機の概略断面図、(b)は、同上真空成型機においてフィルムをコートした状態を示す同上成型機の概略断面図である。
【図4】同上内装材に係るパルプモウルド本体にフィルムをコートするためのスキンパック包装機の概略断面図である。
【図5】同上内装材に係るパルプモウルド本体にフィルムのコートするための真空圧空成型機の概略断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 パルプモウルド−プラスチックフィルム複合自動車用内装材
2 パルプモウルド本体
2a 内側面
2b 外側面
3 プラスチックフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱プレスを加えられた、ポリオレフィン樹脂を10wt%〜20wt%含有するパルプモウルド成型体の表面をプラスチックフィルムで被覆したものであることを特徴とするパルプモウルド製自動車用内装材。
【請求項2】
上記熱プレスにより上記パルプモウルド成型体の密度を0.4[g/cm]〜0.8[g/cm]としたものであることを特徴とする請求項1記載のパルプモウルド製自動車用内装材。
【請求項3】
上記パルプモウルド成型体を上記プラスチックフィルムで被覆する際の同フィルムの重量割合が、全体に対して10wt%〜0.2wt%である請求項1又は2記載のパルプモウルド製自動車用内装材。
【請求項4】
上記プラスチックフィルムは上記パルプモウルド成型体の片面にのみ被覆されているものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のパルプモウルド製自動車用内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−280005(P2008−280005A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128264(P2007−128264)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000206392)大石産業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】