説明

パワーモジュール用基板の製造方法および製造装置

【課題】セラミックス基板と金属層との組立作業性を向上させることができ、強固な接合を得ることができるパワーモジュール用基板の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】耐熱シート20上にセラミックス基板2及び金属板6,7を面方向に進退可能なガイド枠13により面方向に位置決めしながら積層する積層体積み重ね工程と、セラミックス基板2及び金属板6,7の積層体30の上に新たな耐熱シート20を載置する耐熱シート載置工程とを繰り返すことにより、積層体30を耐熱シート20を介して複数積み重ね状態とするとともに、積層体積み重ね工程から耐熱シート載置工程までの間は積層体30が載置される耐熱シート20の側縁部を上方から押圧し、耐熱シート載置工程後から次の積層体積み重ね工程までの間は最上段の耐熱シート20を上方から押圧状態とした後、耐熱シート20の側縁部の押圧を解除してガイド枠13を退避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流、大電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパワーモジュールとして、セラミックス基板の一方の面に、導体パターン層を形成する金属層が積層され、この導体パターン層の上に半導体チップ等の電子部品がはんだ付けされるとともに、セラミックス基板の他方の面に放熱層となる金属層が形成され、この放熱層にヒートシンクが接合された構成のものや、放熱層となる金属層を設けず、セラミックス基板に直接アルミニウム製のヒートシンクが接合された構成のパワーモジュールが知られている。この種のパワーモジュールに用いられるパワーモジュール用基板においては、セラミックス基板の表面に金属層をはんだ付け又はろう付けにより接合している。
【0003】
例えば、特許文献1では、セラミックス基板の表面に、揮発性有機媒体の表面張力によってろう材箔を仮固定するとともに、このろう材箔の表面にも揮発性有機媒体の表面張力によって金属層を仮固定して積層体を形成した後に、この積層体を積層方向に加圧して加熱し、パワーモジュール用基板を形成する方法が提案されている。
また、特許文献2には、加圧装置を用いて、セラミックス基板と金属層とをろう材を介して積層した積層体を保持し、組み立てる製造方法が提案されている。この加圧装置においては、十分な接合力のパワーモジュール用基板を製造するために耐熱シートを用いており、耐熱シートの間に積層体を積層して加圧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4311303号公報
【特許文献2】特開2008−192823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、揮発性有機媒体を用いた表面張力による仮固定では、セラミックス基板とろう材箔との間、ろう材箔と金属層との間にそれぞれ揮発性有機媒体を介在させて保持しているので、これらの突発的な位置ズレが生じることがある。また、加熱時に揮発した揮発性有機媒体により、加熱炉内が汚染されるなどの問題もある。
また、特許文献2の加圧装置においては、先に載置された他の積層体を仮固定する手段がないため、積層体を積み重ねる際に、セラミックス基板、ろう材、金属層との位置ズレが発生し易い。
このように、セラミックス基板、ろう材、金属層との間に位置ズレが生じた場合には、セラミックス基板と金属層との間のろう材が局所的に不足し、強固な接合性が得られないことがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、セラミックス基板と金属層との組立作業性を向上させることができ、強固な接合を得ることができるパワーモジュール用基板の製造方法および製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、セラミックス基板及び金属板の積層体の両面に耐熱シートを配置した状態で前記積層体を複数積み重ね、これらを加圧した状態で加熱することにより前記セラミックス基板に前記金属板を接合してパワーモジュール用基板を製造する方法であって、ステージ上に載置された耐熱シートの上に前記セラミックス基板及び前記金属板を面方向に進退可能なガイド枠により面方向に位置決めしながら積層する積層体積み重ね工程と、これらセラミックス基板及び金属板の積層体の上に新たな耐熱シートを載置する耐熱シート載置工程とを繰り返すことにより、前記積層体を前記耐熱シートを介して複数積み重ね状態とするとともに、前記積層体積み重ね工程から前記耐熱シート載置工程までの間は前記積層体が載置される前記耐熱シートの側縁部を上方から押圧し、前記耐熱シート載置工程後から次の積層体積み重ね工程までの間は最上段の耐熱シートを上方から押圧状態とした後、前記側縁部の押圧を解除して前記ガイド枠を退避させることを特徴とする。
【0008】
耐熱シートを押圧して積層体に荷重をかける構成とされ、耐熱シートの上にセラミックス基板及び金属板を積層しているときには、耐熱シートの側縁部を押圧しておき、次に続く、耐熱シート載置工程後から次の積層体積み重ね工程までの間は最上段の耐熱シートを押圧状態とすることにより、積み重ねられた耐熱シート及び積層体を常に加圧した状態に維持しながら、新たな耐熱シート及び積層体を積み重ねていくことができる。これにより、セラミックス基板と金属板との位置ズレを防止することができ、組立作業性を向上させることができるとともに、強固に接合されたパワーモジュール用基板を製造することができる。
【0009】
また、本発明のパワーモジュール用基板の製造方法において、前記ガイド枠により、前記耐熱シートの側縁部を上方から押圧するとよい。
積層体を面方向に位置決めするガイド枠により耐熱シートの側縁部を押圧して保持するので、効率的にセラミックス基板と金属層とを積層することができ、組立作業性を向上させることができる。
【0010】
本発明のパワーモジュール用基板の製造装置は、セラミックス基板及び金属板の積層体の両面に耐熱シートを配置した状態で前記積層体を複数積み重ね、これらを加圧した状態で加熱することにより前記セラミックス基板に前記金属板を接合してパワーモジュール用基板を製造する装置であって、前記耐熱シート及び前記積層体が載置されるステージを昇降するリフタと、前記ステージ上で面方向に進退可能に配置され前記積層体を面方向に位置決めするガイド枠と、前記積層体の上面に配置される耐熱シートを上方から押圧可能な荷重手段とを備え、前記ガイド枠は、前記ステージに載置した耐熱シートを前記リフタにより上昇させたときに前記耐熱シートを押圧する押圧面が下面に形成されているとともに、前記金属板の側面に当接する金属板位置決め部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のパワーモジュール用基板の製造装置は、セラミックス基板及び金属板の積層体の両面に耐熱シートを配置した状態で前記積層体を複数積み重ね、これらを加圧した状態で加熱することにより前記セラミックス基板に前記金属板を接合してパワーモジュール用基板を製造する装置であって、前記耐熱シート及び前記積層体が載置されるステージを昇降するリフタと、前記ステージ上で面方向に進退可能に配置され前記積層体を面方向に位置決めするガイド枠と、前記ステージ上で面方向に進退可能に配置され前記耐熱シートの側縁部を上方から押圧可能な押圧手段と、前記積層体の上面に配置される耐熱シートを上方から押圧可能な荷重手段とを備え、前記ガイド枠は、前記金属板の側面に当接する金属板位置決め部が形成されており、前記押圧手段は、前記ステージに載置した耐熱シートを前記リフタにより上昇させたときに、前記セラミックス基板よりも外方の側方位置で前記耐熱シートを押圧する押圧面が下面に形成されているとともに、前記積層体の両面に配置される前記耐熱シート間に移動空間をあけて配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のパワーモジュール用基板の製造装置は、セラミックス基板の両面にそれぞれ金属板が積層された積層体と、前記積層体と積層体との間に耐熱シートとを配置した状態で積み重ね、これらを加圧した状態で加熱することにより前記セラミックス基板に前記金属板を接合してパワーモジュール用基板を製造する装置であって、前記耐熱シート及び前記積層体が載置されるステージを昇降するリフタと、前記ステージ上で面方向に進退可能に配置され前記積層体を面方向に位置決めするガイド枠と、前記積層体の上面に配置される耐熱シートを上方から押圧可能な荷重手段とを備え、前記ガイド枠は、上下に配置された上側ガイド枠と下側ガイド枠とからなり、前記上側ガイド枠には、前記セラミックス基板の上側に配置される金属板の側面に当接する上側金属板位置決め部が形成され、前記下側ガイド枠には、前記ステージに載置した耐熱シートを前記リフタにより上昇させたときに、該耐熱シートを押圧する押圧面が下面に形成されているとともに、前記セラミックス基板の下側に配置される金属板の側面に当接する下側金属板位置決め部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のパワーモジュール用基板の製造装置において、前記上側ガイド枠若しくは前記下側ガイド枠の少なくともいずれか一方に前記セラミックス基板を面方向に位置決めするセラミックス基板位置決め部が形成されているとよい。
さらに、本発明のパワーモジュール用基板の製造装置において、前記上側金属板位置決め部及び前記下側金属板位置決め部は、当接する各金属板の板厚より薄肉に形成されているとよい。
これにより、耐熱シート載置工程後に、次の積層体積み重ね工程に入るために前記ガイド枠をスムーズに後方に後退することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セラミックス基板と導体パターン層との強固な接合性を得ることができ、パワーモジュール用基板の組立作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】パワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールを示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態であるパワーモジュール用基板の製造装置を示す側面図である。
【図3】第1実施形態のガイド枠を説明する図であり、(a)が上面図、(b)が断面図を示す。
【図4】図2に示す製造装置の要部拡大図である。
【図5】固定手段を説明する図である。
【図6】本発明の第1実施形態のパワーモジュール用基板の製造方法を説明する図である。
【図7】積層積み重ね工程を説明する図である。
【図8】耐熱シート載置工程を説明する図である。
【図9】積層装置における最上段の積層工程を説明する図である。
【図10】固定手段の組み立て方法を説明する図である。
【図11】本発明の第2実施形態のパワーモジュール用基板の製造装置を示す側面図である。
【図12】第2実施形態のガイド枠及び押圧手段を説明する図であり、(a)が上面図、(b)が側面図、(c)が図12(a)に示すX−X断面図である。
【図13】図11に示す製造装置の要部拡大図であり、(a)が図12(a)に示すY−Y断面に対応する図、(b)が図12(a)に示すX−X断面に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明により製造されるパワーモジュール用基板3を適用したパワーモジュール1を示している。この図1のパワーモジュール1は、セラミックス基板2を有するパワーモジュール用基板3と、パワーモジュール用基板3の表面に搭載された半導体チップ等の電子部品4と、パワーモジュール用基板3の裏面に接合されたヒートシンク5とから構成される。
【0017】
パワーモジュール用基板3は、セラミックス基板2の両面に金属板6,7が積層されており、その一方の金属板6が回路層となり、その表面に電子部品4が接合される。また、他方の金属板7は放熱層とされ、その表面にヒートシンク5が取り付けられる。
【0018】
セラミックス基板2は、例えば、AlN(窒化アルミニウム)、Si(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl(アルミナ)等の酸化物系セラミックスにより形成され、金属板6,7は、例えば純度99.90質量%以上のアルミニウムが用いられ、JIS規格では、1N90(純度99.90質量%以上:いわゆる3Nアルミニウム)又は1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができる。このパワーモジュール用基板3は、放熱層となる金属板7に緩衝機能を持たせたるため、回路層となる金属板6よりも肉厚に形成されたものを用いることができる。
また、セラミックス基板2と回路層及び放熱層となる金属板6,7とは、Al−Si系、Al−Ge系、Al−Cu系、Al−Mg系またはAl−Mn系等のろう材によりろう付けされている。
【0019】
なお、金属板6と電子部品4との接合には、Sn−Ag−Cu系,Zn−Al系もしくはPb−Sn系等のはんだ材が用いられる。図中符号8がそのはんだ接合層を示す。また、電子部品4と金属板6の端子部との間は、例えばアルミニウム等からなるボンディングワイヤ(図示略)により接続される。
一方、ヒートシンク5は、その形状等は特に限定されないが、アルミニウム合金の押し出し成形によって形成され、その長さ方向に沿って冷却水を流通させるための多数の流路51が形成されている。
【0020】
放熱層となる金属板7とヒートシンク5との間の接合法としては、Al−Si系、Al−Ge系、Al−Cu系、Al−Mg系またはAl−Mn系等の合金のろう材によるろう付け法や、Al−Si系のろう材にフラックスを用いたノコロックろう付け法、金属板およびヒートシンクにNiめっきを施し、Sn−Ag−Cu系、Zn−AlもしくはPb−Sn系等のはんだ材によりはんだ付けする方法が用いられ、あるいは、シリコングリースによって密着させた状態でねじによって機械的に固定される。図1では、ろう付けした例を示している。
【0021】
このパワーモジュール1に用いられているパワーモジュール用基板3の第1実施形態の製造装置について、説明する。
第1実施形態のパワーモジュール用基板の製造装置は、図2に示すように、セラミックス基板2及び金属板6,7の積層体30の両面に耐熱シート20を配置した状態で積層体30を複数積み重ねる積載装置100と、積み重ね状態の積層体30を接合する接合装置(図示略)とを備えている。なお、本実施形態では、セラミックス基板2の両面に金属板6,7を積層したものを積層体30としたが、セラミックス基板2の片面に金属板6または7のいずれか一方のみを積層したもので積層体30を構成することもできる。
積載装置100においては、耐熱シート20及び積層体30が載置されるステージ11を昇降するリフタ12と、ステージ11上で積層体30を面方向に位置決めするガイド手段13と、積層体30の上面に配置される耐熱シート20を上方から押圧可能な荷重手段14とにより、積層された積層体30及び耐熱シート20を加圧した状態に保持しながら、それらの上に新たな積層体30及び耐熱シート20を順次積み重ねていく構成とされる。
【0022】
リフタ12は、水平に設けられたステージ11を上下移動する。リフタ12の左右には、支柱15が立設されており、各支柱15の上端部にガイド手段13が支持されている。ガイド手段13は、ステージ11の上方で水平方向に対向する二段のガイド枠13a,13bを有しており、各ガイド枠13a,13bの対向する先端部には、金属板6,7及びセラミックス基板2、耐熱シート20を面方向に位置決めする位置決め部が形成されている。また、これらガイド枠13a,13bは、個別に水平駆動機構(図示略)が備えられており、各ガイド枠13a,13b同士は対向する水平方向に沿って離間接近する方向に移動可能に設けられている。
【0023】
下側に位置する下側ガイド枠13aの先端部は積層体30の位置決め部16aとされ、図3及び図4に示すように、厚さ方向の中央部を残して、その上部及び下部がそれぞれ矩形に切欠されており、下部切欠部により形成される垂直面63が耐熱シート20に対する耐熱シート位置決め部16a1、中央部先端面61が金属板6に対する下側金属板位置決め部16a2、上部切欠部により形成される垂直面62がセラミックス基板2に対するセラミックス基板位置決め部16a3とされている。また、下側ガイド枠13aの下側金属板位置決め部16a2の厚みt11は、金属板6の厚みよりも小さく設定されており、その上方に配置されるセラミックス基板2との間に微小間隙G11をあけて設けられている。そして、対向する下側ガイド枠13aが互いに接近したときに、これら位置決め部が設けられた先端部16aの間に耐熱シート20及び金属板6、セラミックス基板2を嵌め込むことで面方向に位置決めする構成とされている。なお、本実施形態では、下側ガイド枠13aにセラミックス基板位置決め部16a3を設けたが、後述する上側ガイド枠13bに設けることも可能である。さらに、上側ガイド枠13b及び下側ガイド枠13aの両方に設けることも可能である。
【0024】
上側に位置する上側ガイド枠13bの先端部も、積層体30の位置決め部16bとされており、下側ガイド枠13aと同様に、厚さ方向の中央部を残して、その上部及び下部が切欠かれているが、下部切欠部はセラミックス基板2に対する逃がし部64とされており、中央部先端面65が金属板7に対する上側金属板位置決め部16b1、上部切欠部により形成される垂直面66が、各積層体30の間に介在させられる耐熱シート20に対する耐熱シート位置決め部16b2とされている。上側ガイド枠13bの上側金属板位置決め部16bの厚みt12は、金属板7の厚みよりも小さく設定されており、上下方向に配置されるセラミックス基板2と耐熱シート20との間に、微小間隙G12,G13をあけて設けられている。
また、図4に示すように、下側ガイド枠13aの下部切欠部の上面から上側ガイド枠13bの上部切欠部の下面までの厚みt13は、積層体30の両面に配置される耐熱シート20相互の間隔t14よりも小さい寸法に設定されている。
【0025】
なお、耐熱シート20は、積層体30を複数積層した場合に、隣接する金属板6と金属板7とが接合しないように積層体30間に積層される。耐熱シート20は、金属板6及び金属板7を加圧した状態で加熱されても接合しない材質であればよく、本発明では、カーボン板が用いられる。
また、耐熱シート20は、特に積層体30への加圧力を均一にするため、グラファイト層の両面にカーボン層を積層し、クッション性を持たせたシートが望ましい。この場合、グラファイト層は、鱗片状のグラファイト薄膜が複数枚雲母のように貼りついて構成されたものであり、カーボン層は、薄膜のカーボン板によって構成されたものである。
また、荷重手段14は、例えば重りによって構成されるが、特にこれに限定されることなく、バネ、液圧、エア圧方式による手段など、その他適宜の手段を用いることができる。
【0026】
また、積載装置100で積み重ねられた積層体30及び耐熱シート20は、図5に示すように固定手段101によって加圧された状態に保持され、接合装置に運ばれる。
なお、本実施形態においては、固定手段101は、耐熱シート20を載置する凹部11aを有するステージ11と、ステージ11の上面の四隅に着脱可能に上下方向に沿って取り付けたガイドポスト102と、これらガイドポストの上端部に上下移動自在に支持された押圧板103と、ガイドポスト102の上端部に設けられた雄ねじ部102aに螺合して押圧板103の上方への移動を規制するストッパであるナット104により構成されている。
押圧板103は、ステージ11に対して平行に配置される。積層体30及び耐熱シート20は、ステージ11と押圧板103との間に交互に積層され、ナット104によって加圧された状態に保持される。この場合、ステージ11、押圧板103及びガイドポスト102は、熱膨張係数が極めて小さいカーボンファイバーを含んだ複合材によって形成されている。
【0027】
次に、上述した製造装置を用いてパワーモジュール用基板を製造する方法について説明する。
まず、図6に示すように、リフタ12上に取り付けられたステージ11の凹部11aに、耐熱シート20を載置した後、両下側ガイド枠13aを接近方向に移動させステージ11の上方に配置した状態で、リフタ12によりステージ11を上昇させて、下側ガイド枠13aの押圧面17と耐熱シート20の外縁部の上面とを当接させ耐熱シート20を、ステージ11と下側ガイド枠13aとで挟んで押圧状態に保持する。
次いで、この耐熱シート20の上に金属板6及びセラミックス基板2を順に配置する(図7参照)。なお、回路層となる金属板6には、セラミックス基板2との接合面(図7では上側の面)にろう材箔が溶接等により仮固定されている。このとき、下側ガイド枠13aの位置決め部16aによって形成された空間部に、金属板6及びセラミックス基板2を順に挿入することで、金属板6とセラミックス基板2とを容易に位置決めして積層することができる。そして、金属板6とセラミックス基板2を積層した後、上側ガイド枠13bを接近方向に移動させる。上側ガイド枠13bによって形成された空間部に放熱層となる金属板7を挿入することで、セラミックス基板2に対して金属板7が位置決めされる。この金属板7にも、セラミックス基板2との接合面(図6では下側の面)にろう材箔が仮固定されており、このようにして、セラミックス基板2の両面にろう材箔を介して金属板6,7が積層された積層体30が構成される(積層体積み重ね工程)。
【0028】
次に、図8に示すように、これらセラミックス基板2及び金属板6,7の積層体30の上に新たな耐熱シート20を載置し(耐熱シート載置工程)、その最上段の耐熱シート20を荷重手段14により上方から押圧状態とする。そして、この荷重手段14による押圧状態で、先ず、上側ガイド枠13bを離間する方向に退避させる。次に、リフタ12を、微小間隙G11よりも小さい範囲で降下させて、耐熱シート20との接触を回避し、下側ガイド枠13aにかかる負荷を解除するとともに、ステージ11上に積み重ねられた積層体30及び耐熱シート20を、ステージ11と荷重手段14との間で押圧状態に保持する。このとき、下側ガイド枠13aの押圧面17と耐熱シート20の上面との間に若干の隙間が生じ、下側ガイド枠13aは無負荷状態となるので、下側ガイド枠13aを離間する方向に退避させることができる。
【0029】
図9に示すように、リフタ12を積層体30及び耐熱シート20の積層高さ分より若干大きく降下させ、再び、下側ガイド枠13aを接近する方向に移動させて最上段の耐熱シート20の上方に配置する。その後、リフタ12を上昇させて、下側ガイド枠13aの押圧面17と最上段の耐熱シート20の上面とを当接させ、積層体30及び耐熱シート20を、ステージ11と下側ガイド枠13aとの間に挟んで押圧状態に保持する。この下側ガイド枠13aによる押圧状態にしてから、荷重手段14による押圧状態を解き、新たな金属板6、セラミックス基板2及び金属板7を順次積み重ねる。
このように、積層体積み重ね工程と、耐熱シート載置工程とをステージ11を下降させながら繰り返すことにより、積層体30を耐熱シート20を介して複数積み重ね状態とする。積層体積み重ね工程から耐熱シート載置工程までの間は、積層体30が載置される耐熱シート20を下側ガイド枠13aの押圧面17により押圧し、耐熱シート載置工程後から次の積層体積み重ね工程までの間は、下側ガイド枠13aによる押圧に代えて、最上段の耐熱シート20を荷重手段14により押圧状態とする。
【0030】
耐熱シート20と積層体30とを所定数積層した後、図10に示すように、最上段の耐熱シート20の上に固定手段101の押圧板103を配置して、その押圧板103ごと荷重手段14により押圧状態としてガイド枠13a,13bを退避させる。荷重手段14により押圧状態としたまま、ガイドポスト102をステージ11に立設し、押圧板103の上に突出するガイドポスト102の雄ねじ部102aにナット104を螺合して固定する。
積層された耐熱シート20及び積層体30をその厚さ方向に保持する固定手段101ごと接合装置に入れ、各積層体30を加圧した状態で所定のろう付け温度で加熱する。各積層体30のセラミックス基板2と金属板6,7とがろう付けされ、パワーモジュール用基板3が製造される。
【0031】
このように、本実施形態によれば、積み重ねられた積層体を常に加圧した状態に維持しながら、新たな耐熱シート及び積層体を積み重ねていくことができるので、セラミックス基板と金属板との位置ズレを防止することができ、強固な接合性を有するパワーモジュール用基板を製造することができる。また、積層体を面方向に位置決めするガイド枠の下面が、耐熱シートに対する押圧面となっており、セラミックス基板及び金属板を位置決めするとともに、積み重ねられた積層体を押圧して保持することができ、効率的にセラミックス基板と金属層とを積層することができ、組立作業性を向上させることができる。
【0032】
図11は第2実施形態のパワーモジュール用基板の製造装置を示している。
第1実施形態においては、下側ガイド枠13aにより、セラミックス基板2及び金属板6を位置決めするとともに、耐熱シート20をステージ11との間で押圧状態にしていたが、第2実施形態においては、セラミックス基板2及び金属板6を位置決めする下側ガイド枠13cとは別に、耐熱シート20の側縁部の上面を押圧して押圧状態とする押圧手段18を備えており、押圧手段18の押圧面19と耐熱シート20の側縁部の上面とを当接させて、耐熱シート20をステージ11と押圧手段18とで挟んで押圧状態に保持する構成とされている。
【0033】
本実施形態のパワーモジュール用基板の製造装置においても、第1実施形態と同様にステージ11の上方で水平方向に対向する二段のガイド枠13b,13cを有しており、各ガイド枠13b,13cの対向する先端部には、金属板6,7及びセラミックス基板2,耐熱シート20を面方向に位置決めする位置決め部が形成されている。
本実施形態においては、下側ガイド枠13cの先端部は積層体30の位置決め部16cとされ、図12及び図13に示すように、その上部が矩形に切欠されており、先端面61が金属板6に対する下側金属板位置決め部16c1、上部切欠部により形成される垂直面62がセラミックス基板2に対するセラミックス基板位置決め部16c2とされている。また、下側ガイド枠13cの下側金属板位置決め部16c1の厚みt21は、金属層6の厚みよりも小さく設定されており、その上下方向に配置されるセラミックス基板2及び耐熱シート20との間に微小間隙G21,G22をあけて設けられている。
【0034】
また、上側ガイド枠13bの先端部は積層体30の位置決め部16bとされ、第1実施形態と同様に、厚さ方向の中央部を残して、その上部及び下部が切欠かれて形成されており、下部切欠部はセラミックス基板2に対する逃がし部64、中央部先端面65が金属板7に対する上側金属板位置決め部16b1、上部切欠部により形成される垂直面66が各積層体30の間に介在させられる耐熱シート20に対する耐熱シート位置決め部16b2とされている。上側ガイド枠13bの上側金属板位置決め部16b1の厚みt22は、金属板7の厚みよりも小さく設定されており、上下方向に配置されるセラミックス基板2と耐熱シート20との間に、微小間隙G23,G24をあけて設けられている。
また、図13に示すように、下側ガイド枠13cの下部切欠部の上面から上側ガイド枠13bの上部切欠部の下面までの厚みt23は、積層体30の両面に配置される耐熱シート20相互の間隔t24よりも小さい寸法に設定されており、両ガイド枠13b,13cは、両耐熱シート20との間に微小間隙G21,G24を有し、両ガイド枠13b,13cと両耐熱シート20とは接触せずに設けられている。
【0035】
押圧手段18は、ステージ11上で面方向に進退可能に配置されており、ステージ11上に載置された耐熱シート20に対する押圧面19が下面に形成されている。また、押圧手段18の上面には、図12に示すように、下側ガイド枠13cと重なる位置に溝部が形成されており、下側ガイド枠13cを、押圧手段18の上方で、押圧手段18と接触させることなく進退移動させることができる。
押圧面19は、図12に示すように、押圧手段18の下部が切欠かれて形成されており、セラミックス基板2よりも外方の側方位置で、耐熱シート20の側縁部の上面を押圧するように設けられている。また、図13に示すように、押圧手段18の上面と耐熱シート20との間に、微小間隙G21〜G24よりも大きく設定された移動空間G25が設けられている。なお、その下部が切欠かれて形成された垂直面69が、各積層体30の間に介在させられる耐熱シート20に対する位置決め部18aとされている。
【0036】
このように、セラミックス基板2及び金属板6,7の位置決め部は、第1実施形態と同様に下側ガイド枠13c及び上側ガイド枠13bに形成されており、押圧手段18は、先に積み重ねられた耐熱シート20のみを面方向に位置決めし、その耐熱シート20を押圧状態とする構成とされていることから、その耐熱シート20の押圧状態において、両耐熱シート20の間隔t24よりも厚みt25を大幅に薄くして設けることができ、両耐熱シート20との移動空間G25を十分に確保することができる。
【0037】
このような製造装置を用いてパワーモジュール用基板3を製造する場合、耐熱シート20の側縁部の上面を、押圧手段18により押圧することにより、金属板6、セラミックス基板2及び金属板7を順次積み重ねる積層体積み重ね工程中、先に積み重ねられた積層体30及び耐熱シート20を押圧状態に保持することができる。そして、耐熱シート載置工程後から次の積層体積み重ね工程までの間は、最上段の耐熱シート20を荷重手段14により押圧状態とし、ガイド枠13c,13b及び押圧手段18を離間する方向に退避させることができる。この際、ガイド枠13c,13bは、隣接する両耐熱シート20に接触せずに設けられていることから、そのまま離間する方向に退避させることができる。また、押圧手段18と上側の耐熱シート20との移動空間G25は十分に確保されているので、ステージ11を下降させて押圧手段18の押圧状態を解除することで、押圧手段18を退避させることができる。
このように、積み重ねられた積層体を常に加圧した状態に維持しながら、新たな耐熱シート及び積層体を積み重ねていくことができるので、セラミックス基板と金属板との位置ズレを防止することができ、強固な接合性を有するパワーモジュール用基板を製造することができる。
その他の構成は、第1実施形態のものと同じであり、共通部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、金属板に純度99.90%以上のアルミニウムを用いたが、純度99%以上のアルミニウム又はアルミニウム合金を用いてもよい。また、回路層及び放熱層となる金属板に同じ材質のものを用いたが、両金属板はこれに限定されるものではなく、回路層及び放熱層を別々の材質としてもよい。例えば、放熱層にアルミニウムを用い、回路層に銅を用いる構成とすることができる。
また、上記の実施形態においては、セラミックス基板の両面に回路層及び放熱層となる金属板を積層してパワーモジュール用基板を構成していたが、放熱層を設けずにセラミックス基板と回路層となる金属板を積層してパワーモジュール用基板を構成してもよい。
【0039】
また、セラミックス基板と金属板とは、拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合してもよい。その接合方法について簡単に説明すると、金属板にスパッタリングによってAgを含有する固着層を形成した後、その固着層をセラミックス基板に接触させた状態で積層し、この積層体を加圧、加熱することにより、Agが金属板に拡散して金属板の固着層近傍の融点を低下させ、セラミックス基板と金属板との界面に溶融金属層を形成する。さらに、拡散が進むと、溶融金属層のAg濃度が低下して融点が上昇することにより凝固して、セラミックス基板と金属板とが接合される。
【符号の説明】
【0040】
1 パワーモジュール
2 セラミックス基板
3 パワーモジュール用基板
4 電子部品
5 ヒートシンク
6,7 金属板
8 はんだ接合層
11 ステージ
11a 凹部
12 リフタ
13 ガイド手段
13a,13c 下側ガイド枠
13b 上側ガイド枠
14 荷重手段
15 支柱
16a,16b 位置決め部
17,19 押圧面
18 押圧手段
20 耐熱シート
30 積層体
51 流路
61,65 中央部先端面
62,63,66,69 垂直面
64 逃がし部
100,200 積載装置
101 固定手段
102 ガイドポスト
102a 雄ねじ部
103 押圧板
104 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板及び金属板の積層体の両面に耐熱シートを配置した状態で前記積層体を複数積み重ね、これらを加圧した状態で加熱することにより前記セラミックス基板に前記金属板を接合してパワーモジュール用基板を製造する方法であって、ステージ上に載置された耐熱シートの上に前記セラミックス基板及び前記金属板を面方向に進退可能なガイド枠により面方向に位置決めしながら積層する積層体積み重ね工程と、これらセラミックス基板及び金属板の積層体の上に新たな耐熱シートを載置する耐熱シート載置工程とを繰り返すことにより、前記積層体を前記耐熱シートを介して複数積み重ね状態とするとともに、前記積層体積み重ね工程から前記耐熱シート載置工程までの間は前記積層体が載置される前記耐熱シートの側縁部を上方から押圧し、前記耐熱シート載置工程後から次の積層体積み重ね工程までの間は最上段の耐熱シートを上方から押圧状態とした後、前記側縁部の押圧を解除して前記ガイド枠を退避させることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項2】
前記ガイド枠により、前記耐熱シートの側縁部を上方から押圧することを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項3】
セラミックス基板及び金属板の積層体の両面に耐熱シートを配置した状態で前記積層体を複数積み重ね、これらを加圧した状態で加熱することにより前記セラミックス基板に前記金属板を接合してパワーモジュール用基板を製造する装置であって、前記耐熱シート及び前記積層体が載置されるステージを昇降するリフタと、前記ステージ上で面方向に進退可能に配置され前記積層体を面方向に位置決めするガイド枠と、前記積層体の上面に配置される耐熱シートを上方から押圧可能な荷重手段とを備え、前記ガイド枠は、前記ステージに載置した耐熱シートを前記リフタにより上昇させたときに前記耐熱シートに対する押圧面が下面に形成されているとともに、前記金属板の側面に当接する金属板位置決め部が形成されていることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造装置。
【請求項4】
セラミックス基板及び金属板の積層体の両面に耐熱シートを配置した状態で前記積層体を複数積み重ね、これらを加圧した状態で加熱することにより前記セラミックス基板に前記金属板を接合してパワーモジュール用基板を製造する装置であって、前記耐熱シート及び前記積層体が載置されるステージを昇降するリフタと、前記ステージ上で面方向に進退可能に配置され前記積層体を面方向に位置決めするガイド枠と、前記ステージ上で面方向に進退可能に配置され前記耐熱シートの側縁部を上方から押圧可能な押圧手段と、前記積層体の上面に配置される耐熱シートを上方から押圧可能な荷重手段とを備え、前記ガイド枠は、前記金属板の側面に当接する金属板位置決め部が形成されており、前記押圧手段は、前記ステージに載置した耐熱シートを前記リフタにより上昇させたときに、前記セラミックス基板よりも外方の側方位置で前記耐熱シートを押圧する押圧面が下面に形成されているとともに、前記積層体の両面に配置される前記耐熱シート間に移動空間をあけて配置されていることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造装置。
【請求項5】
セラミックス基板の両面にそれぞれ金属板が積層された積層体と、前記積層体と積層体との間に耐熱シートとを配置した状態で積み重ね、これらを加圧した状態で加熱することにより前記セラミックス基板に前記金属板を接合してパワーモジュール用基板を製造する装置であって、前記耐熱シート及び前記積層体が載置されるステージを昇降するリフタと、前記ステージ上で面方向に進退可能に配置され前記積層体を面方向に位置決めするガイド枠と、前記積層体の上面に配置される耐熱シートを上方から押圧可能な荷重手段とを備え、前記ガイド枠は、上下に配置された上側ガイド枠と下側ガイド枠とからなり、前記上側ガイド枠には、前記セラミックス基板の上側に配置される金属板の側面に当接する上側金属板位置決め部が形成され、前記下側ガイド枠には、前記ステージに載置した耐熱シートを前記リフタにより上昇させたときに、該耐熱シートを押圧する押圧面が下面に形成されているとともに、前記セラミックス基板の下側に配置される金属板の側面に当接する下側金属板位置決め部が形成されていることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造装置。
【請求項6】
前記上側ガイド枠若しくは前記下側ガイド枠の少なくともいずれか一方に前記セラミックス基板を面方向に位置決めするセラミックス基板位置決め部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュール用基板の製造装置。
【請求項7】
前記上側金属板位置決め部及び前記下側金属板位置決め部は、当接する各金属板の板厚より薄肉に形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のパワーモジュール用基板の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−204741(P2012−204741A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69817(P2011−69817)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】