パワーユニット並びに作業車両
【課題】 安価に作業車両を電源により動作できるようにすることができるパワーユニット並びに安価な電動の作業車両を提供することを目的とする。
【解決手段】パワーユニットPは、電源100からの電力供給を受けて駆動する電動モータ92と、電動モータ92により駆動することで作動油を吐出する油圧ポンプ(第2油圧ポンプ83)と、作業車両Vのオイルタンク50と接続するための第1入力ポート80と、第2入力ポート86と、作業車両Vのバルブブロック52と接続する出力ポート85と、第2油圧ポンプ83の吐出ポート83bと第2入力ポート86と出力ポート85と接続する合流部84とを備える。
【解決手段】パワーユニットPは、電源100からの電力供給を受けて駆動する電動モータ92と、電動モータ92により駆動することで作動油を吐出する油圧ポンプ(第2油圧ポンプ83)と、作業車両Vのオイルタンク50と接続するための第1入力ポート80と、第2入力ポート86と、作業車両Vのバルブブロック52と接続する出力ポート85と、第2油圧ポンプ83の吐出ポート83bと第2入力ポート86と出力ポート85と接続する合流部84とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源によりアクチュエータを動かすための作動油を吐出するパワーユニットと、該パワーユニットを搭載した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ポンプと油圧アクチュエータとを備え、油圧ポンプから吐出された作動油によりアクチュエータを稼動することで架装物を稼働する作業車両がある。そして、前記油圧ポンプは車両のエンジンにより駆動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−89537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業時に架装物を稼働すると、エンジンを動作し続ける必要があり、エンジンの運転騒音で、作業環境が悪いばかりでなくエンジンの継続運転により排出する排ガスにより環境衛生を害するという問題がある。そのため、作業時にエンジンを停止できるように、電動でも動作できるようにする場合があるのだが、電動モータを搭載するための作業が煩雑であり高価になってしまう。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、安価に作業車両を電源により動作できるようにすることができるパワーユニット並びに安価な電動の作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明のパワーユニットは、電源からの電力供給を受けて駆動する電動モータと、電動モータにより駆動することで作動油を吐出する油圧ポンプと、オイルタンクと接続するための第1入力ポートと、第2入力ポートと、バルブブロックと接続する出力ポートと、油圧ポンプの吐出ポートと第2入力ポートと出力ポートと接続する合流部とを備えたことを特徴としている。これによると、作業車両を電動化するにあたり、第1入力ポートをオイルタンクと接続し、出力ポートをバルブブロックと接続するだけでよいため、安価に作業車両の架装物を電動化することができる。
【0007】
前記合流部は、第1入力ポートから出力ポート方向に作動油が流れることを許容するチェック弁と、油圧ポンプから出力ポート方向に作動油が流れることを許容するチェック弁とを内蔵するようにしてもよい。これによると、パワーユニットには予め油圧ポンプに作動油が逆流するのを防ぐチェック弁を内蔵しているため、チェック弁を別途取り付ける作業を行う必要がない。
【0008】
前記第一入力ポートは、分岐部を有してもよく、これによれば、作業車両のオイルタンク周りの改造が不要になるため、さらに安価に電動化することができる。
【0009】
前記目的を達成するための本発明の作業車両は、アクチュエータにより稼働する架装物と、前記アクチュエータを動作させる前記記載のパワーユニットを搭載したことを特徴とする。これにより、架装物を電源で動作させるための電動油圧源を、第1入力ポートをオイルタンクと接続し、出力ポートをバルブブロックと接続するだけで製造できるため、架装物を電動化した作業車両を安価に提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
このような構成のパワーユニットによれば、作業車両を電動化するにあたり、第1入力ポートをオイルタンクと接続し、出力ポートをバルブブロックと接続するだけでよいため、安価に作業車両の架装物を電動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のパワーユニットを搭載した車両運搬車の側面図である。
【図2】荷台部後方スライドした状態を示した図である。
【図3】荷台部を所定角まで傾斜した状態を示した図である。
【図4】荷台部をチルトフレーム後端までスライドした状態を示した図である。
【図5】荷台部を接地した状態を示した図である。
【図6】図1のVI部拡大図である。
【図7】図6に相当する箇所の平面図である。
【図8】パワーユニットの側面図である。
【図9】パワーユニットの平面図である。
【図10】パワーユニットの前面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】パワーユニットの分解状態を示した斜視図である。
【図13】作業車両の油圧回路図である。
【図14】作業車両のブロック図である。
【図15】第1入力ポートの挿入を示した模式図である。
【図16】ベースの他実施例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1から図5は、作業車両としての車両運搬車Vとその積み降ろし動作を示している側面図である。なお、以下において、「前後」の関係は、特に説明が無いかぎり車両の前後を基準とする。即ち運転席側が前側であり、その逆が後ろ側である。
【0013】
この車両運搬車V(以下、車両ともいう)は、アクチュエータAにより稼働する架装物Bを備えている。具体的には、サブフレームSを上部に固定したシャシフレームFと、サブフレームSに搭載された積降装置1と、積降装置1によりシャシフレームF上と地面との間を移動可能に支持された荷台部2とを備えている。
【0014】
積降装置1は、チルトフレーム10と傾斜機構11とスライド機構14とを有している。
【0015】
前記チルトフレーム10は、車両前後方向に延びているフレームであり、サブフレームS上に設けられている。また、図1と図2に示しているように、チルトフレーム10は、荷台部2を前後方向に移動可能として取り付けている。チルトフレーム10の後部は、サブフレームSの後端部に設けられたローラR上に載せられている。このローラRは車幅方向を軸線方向として設けられている。
チルトフレーム10はその後部下面に接地用ローラ10aを有している。この接地用ローラ10aは、図5のようにチルトフレーム10が後方に下傾した際に、地面に接触させるためのものである。
【0016】
前記傾斜機構11は、例えば図3において、伸縮動作するシリンダ(油圧シリンダ)12及びアーム13を有しており、チルトフレーム10を傾斜させることができる。アーム13の基部13aはサブフレームSに回動自在として取り付けられており、先部13bはチルトフレーム10の中間部10bに回動自在として取り付けられている。そして、シリンダ12が伸長動作をするとアーム13を起立させ、チルトフレーム10を後方に下傾させる。なお、チルトフレーム10はその後部において前記ローラR上に載せられていることから、アーム13の起立により、チルトフレーム10は、このローラRを支点として後方へ下傾するように回動するとともに、このローラRに載った状態で後方へ移動する。つまり、図3から図5に示しているように、傾斜機構11は、チルトフレーム10をサブフレームSに対して後方に下傾させながら後退させることができる。そして、図5の状態からシリンダ12が短縮動作をすると、アーム13は倒れ、チルトフレーム10を前進させながら水平姿勢に戻すことができる。
【0017】
また、前記傾斜機構11は、荷台部2をチルトフレーム10に沿って前後方向に移動させるスライド機構14を備えている。このスライド機構14は、チルトフレーム10の前部に固定した油圧モータ15と、油圧モータ15の駆動により回転するスプロケット16aとチルトフレーム後端に回転可能に支持されたアイドラ16bと、スプロケット16aとアイドラ16bとの間に巻回されたチェーン17とを備えている。また、スライド機構14はチルトフレーム10の前後方向に移動可能なスライダ18を備えており、該スライダ18はピン(図示せず)を介して荷台部2の前部が取り付けられている。
そうして、スライド機構14がチェーン17を引くことにより、荷台部2をチルトフレーム10に沿って前後方向に直線移動させることができる。このスライド機構14より、チルトフレーム10が水平にある状態(図1と図2)又は傾斜した状態(図3から図5)において、荷台部2をチルトフレーム10のフレーム前後方向に沿って移動させることができる。なお、フレーム前後方向とはチルトフレーム10の前部から後部へと向かう方向であり、チルトフレーム10が後方へ所定の角度で傾斜した状態では、フレーム前後方向も当該角度で傾斜した方向となる。
なお、スライダを駆動するために油圧モータ15とスプロケット及びアイドラ16a,16b、チェーン17を用いているが、油圧シリンダ等の他のアクチュエータを採用してもよい。
【0018】
荷台部2は荷物を載せる荷台21を備え、荷台21の上面に例えば乗用車や土木機械等を載せることができる。荷台21の前端にはアーチ状の鳥居22が設けられ、荷台部2の後端にはテールゲート(踏板)23が設けられている。テールゲート23は、ヒンジ23aを介して荷台部2の後端に取り付けられており、荷台部2の本体部分に対してヒンジ23aまわりに回動することができる。
また、荷台21の後端下部には接地用のローラ24を備え、荷台21の前部上面に取り付けられるとともに自走できなくなった事故車両を荷台21に牽引するための油圧ウインチ25を備えている。油圧ウインチ25は、油圧モータ25aによりドラム(図示せず)を回転し、ワイヤを巻き取ることで事故車両を牽引する。
【0019】
サブフレームSの後部には、別の車両等が後方から衝突した際の安全を確保するためのバンパ3を備えている。バンパ3は、車幅方向に長い部材のバンパ本体31と、バンパ本体31をサブフレームSに取り付けるバンパ支持部材32とを有している。
バンパ支持部材32は、サブフレームSに回動可能に支持された第1アーム33と第1アーム33の先端に揺動可能に支持された第2アーム34とを備え、第2アーム34の先端に前記バンパ本体31が固定されている。そして、バンパ支持部材32の第1アーム33はバンパ動作部35を介してチルトフレーム10と連結している。
図1の車両Vの走行状態において、バンパ本体31はサブフレームSから後方へ突き出た位置にあり、チルトフレーム10の起伏に連動しバンパ本体31は地面に近い格納位置まで移動する(図5参照)。
【0020】
なお、本実施例においてアクチュエータAは、シリンダ12と油圧モータ15及び25aが相当する。
【0021】
図6は図1のVI部拡大図であり、図7は図6に相当する箇所の平面図である。図6,図7においては積降装置1及び荷台部2を省略している。
車両Vは、前記シリンダ12と油圧モータ15とを駆動する油圧源5を備えている。油圧源5は、シャシフレームFの側面に固定したオイルタンク50、フィルタ50a、第1油圧ポンプ51、バルブブロック52を有している。
【0022】
第1油圧ポンプ51は、車両VのエンジンEとPTO(パワーテイクオフ,図示せず)とドライブシャフト51aを介して連結しており、第1油圧ポンプ51が駆動されると吸入ホース53aを介してオイルタンク50に貯蔵された作動油を吸引し、吐出ホース53bを介してバルブブロック52に作動油を送る。バルブブロック52は複数の3基のソレノイドバルブ52a〜52cを備え、シリンダ12や油圧モータ15に作動油を供給し、油圧ホース53cを介してオイルタンク50に作動油を戻す。
また、シャシフレームFの側面であって、オイルタンク50とフィルタ50aとバルブブロック52との上方には、前述の油圧ウインチ25の油圧モータ25aに作動油を送るための油圧ホースを保護するケーブルガイド26が配置されており、ケーブルガイド26を支持するためのレール26aがサブフレームSの側面に固定されている。
【0023】
そして、車両Vは架装物制御部6を備えている。架装物制御部6は、架装物側制御装置60(以下PLCとも呼ぶ)と、PLC60に電源を供給するバッテリ61と、積降装置1の動作位置を検知する近接センサ62(62a〜62eの5個)と、作業者が積降装置1の動作を指示する各種スイッチ63(63a〜63eの5個)と、前記ソレノイドバルブ52a〜52cを切り換えるソレノイド64(64a〜64fの6個)と、エンジンの回転を制御するガバナ65と、報知器66としてのブザー66a及びランプ66bを有している。ランプ66bは適宜の箇所に複数取り付けられているが、本実施例では代表例として荷台部2の鳥居22に取付けたものを図示している。そして、鳥居22に取付けたランプ66bとPLC60との間の配線は、前述のケーブルガイド26を通している。
【0024】
作業者が車両Vのキースイッチ63a及びメインスイッチ63bを共にONに操作することでPLC60が稼働できる状態になる。そして、PLC60は、近接センサ62a〜62eの検知結果と各種スイッチ63c〜63eの指示とから、ソレノイド64a〜64fやガバナ65に制御信号を出力し、積降装置1を駆動する。なお、エンジンスイッチ63eは増速又は減速を指示することができるスイッチであり、PLC60は、作業者の増速操作に基づきガバナ65に増速指示を出力することでエンジンEの回転数を上昇させる。一方、作業者がエンジンスイッチ63eに対して減速指示をおこなった場合には、PLC60は、ガバナ65に減速指示を出力してエンジンEの回転数を減少させる。
【0025】
また、本発明の車両Vは電源により積降装置1を駆動するためのパワーユニットPを備えている。図1〜図5においては図1に限り図示した。図1及び図6に示すようにパワーユニットPは左舷のホイルベース間(前輪と後輪との間)に配置している。なお、パワーユニットPは、同じくホイルベース間に配置したオイルタンク50とバルブブロック52等よりも車両前方に配置している。図8〜図12はパワーユニットPを示した図であり、図13は従来の車両VにパワーユニットPを取付けた状態を示した油圧回路図、図14は同ブロック図である。
【0026】
パワーユニットPはケース7と、電動油圧源8と、電動油圧源8を制御する電動制御部9とを有している。
ケース7はシャシフレームF側面に固定した前後1対のステー70と、ステー70に支持されたケース71とケース71に内蔵されたベース72とを備えている。ステー70は断面C型のチャンネル材をL字状に溶接固定することで形成され、鉛直部70aをサブフレーム側面に固定し、水平部70bの上面にケース71を搭載する。ケース71は断面L字状のアングル材により組み立てられた枠体71aと複数の板材71b〜71gとにより形成された略直方体形状の箱であって、その底面71bは前述のステー70の水平面70bに搭載される。そして、左側面71cと上面71dとは屈曲した一枚の鋼板により構成され、複数のボルト71hにより着脱することができ、ケース7の左側面から上面にかけてメンテナンス用の開口部71iを解放することができる。なお、開口部71iはすくなくとも側面にあればよい場合には、左側面71cと上面71dとを2枚の鋼板で別々に構成してもよく、その際には上面71dを固定したままで、側面(図示例であれば左側面71c)を着脱することができるようにすればよい。
【0027】
ベース72は複数の断面C型のチャンネル材72a〜72dを枠状に溶接固定することで構成している。また、ベース72には支持部72eを備えている。そして、ベース72は4個のクッションゴム73を介して支持されている。クッションゴム73はゴム製の緩衝部73aの一端に雄ネジ部73bと他端に雌ネジ部73cを備えている。クッションゴム73は雄ネジ部73bによりケースの底面71bに固定している。なお、雄ネジ部73bは底面71bの孔を貫通するとともにステーの水平部70bとに設けた孔を貫通し、ナット73cを螺入することで、ケース71をステー70に固定する部材を兼用している。
【0028】
ベース72は、2本の横桁72a,72bと2本の縦桁72c,72dを井桁状に溶接固定している。2本の横桁72a及び72bは、断面C型チャンネル材を側面の開口部71iからケース71の内側に向かって(車幅方向)に長手方向を向くようにするとともにフランジ部Dを下方に向けて配置することで、フランジ部Dがベース72の補強部となる。また、フランジ部Dにより形成された空間部Cも開口部71iからケース71の内側に向かってに長手方向かつ下方に向けて配置されてある。そして、前記2本の横桁72aと72bとを連結するように2本の断面C型のチャンネル材よりなる縦桁72c及び72dを溶接固定している。横桁72aの側面には板材により形成された支持部72eを溶接固定している。そして、2本の横桁72a,72bは2ヶ所に貫通穴を備えており、該貫通穴にボルト74を通すことによりクッションゴム73の雌ネジ部73dに固定している。これによりベース72はクッションゴム73を介してケース71(底面71b)に支持している。なお、2本の横桁72a,72bの空間部Cにはクッションゴム73が位置している。
【0029】
次に、電動油圧源8について説明する。
パワーユニットPには、前述のオイルタンク50と接続するための第1入力ポート80を備え、第1入力ポート80から油圧ホース81aを介して第2油圧ポンプ83の吸入口83aに接続している。第2油圧ポンプ83の吐出口83bは油圧ホース81bを介して合流部84と接続している。
第1入力ポート80はT型の油圧継手であり、オイルタンク50より吸入した作動油を2方向に分岐する分岐部としての機能を備えている。そして、T型の継手は雄型の接続部80aと雌型の接続部80bとを解放している。雄型の接続部80aはオイルタンク50(フィルタ50a)に接続し、雌型の接続部80bは吸入ホース83aを接続することで、第1油圧ポンプ51及び第2油圧ポンプ83が作動油を吸入できるようにしている。
【0030】
合流部84はブロック状の鋼材に孔をあけることで作動油の流路を形成内蔵しており、2つの入力側継手84a,84bと1つの出力ポート85とを備えている。そして、前記流路は2つの入力側継手84a,84bから導入した作動油を出力ポート85から吐出することができるように連通している。合流部84ケース後面71fの内面に固定されるとともに、出力ポート85を後面71fの外側まで突出させている。なお、出力ポート85は合流部84に一体的に備えられており、出力ポート85は油圧ホース53dを介してバルブブロック52と連結している。
また、合流部84は2基のチェック弁84c,84dを内蔵している、2基のチェック弁84c,84dは、流路の合流箇所84eよりも2つの入力側継手84a,84bに近い流路内に配置されており、2つの入力ポート84a,84bのうちいずれか一方から導入された作動油が他方の入力ポートから吐出されないようにしている。なお、2基のチェック弁84c,84dは、合流部84に内蔵されなくてもよく、2基の油圧ポンプの吐出口と合流箇所84eとの間であれば、どの位置にあってもよい。2基のチェック弁84c,84dは、不要であれば省略してもよい。
そしてケース右側面71gには、PTO駆動の第1油圧ポンプ51と接続するための第2入力ポート86を備え、第2入力ポート86は油圧ホース81cを介して合流部84と接続している。第2入力ポート86には吐出ホース53bの一端を接続している。
【0031】
続いて、電動制御部9について説明する。
ケースの前面71eには、電源と接続するための第1端子90a(コネクタ)が設けられており、本実施例において電源100は商用電源である100a(電圧200Vの3相3線式の交流電源)のコンセントと電源ケーブル101を介して接続される。電源ケーブル101のプラグ101aと第1端子90aと接続するためのコネクタ101bとの間にはブレーカ101cが備えられており、過電流が流れた場合にはプラグ101aとコネクタ101bとの間を電気的に切断することができるようになっている。
なお、電源100は図示のようにバッテリ102であってもよく、バッテリ102の出力コネクタ102aをパワーユニットPのコネクタ90aに接続するようにしてもよい。この例ではコネクタ90aを電源によらず兼用できるようにしているが、電源の種類に合わせてコネクタ90aの種類も変更するようにしてもよい。
【0032】
コネクタ90aのケース71内側はモータ制御装置91(以下はインバータとも呼ぶ)と接続されている。パワーユニットPはPLC60と接続するための第2端子90bを備えている。具体的に第2端子90bは、インバータ91の開口71i側の側面に備えられた端子台であり、PLC60の出力端子60aと配線103aにより接続している。PLC60は、エンジンスイッチ63eの増減速指示入力に基づき出力端子60aから速度指示信号を出力し、その速度指示信号を配線103aと第2端子90bとを経由してパワーユニットP(インバータ91)が受信すると、インバータ91は電動モータ92に電気を供給又は遮断する。これにより電動モータ92を始動ないし停止することができる。また、インバータ91から電動モータ92に供給する電力を変化することで、電動モータ92の速度を変化することもできる。
【0033】
コネクタ90aからインバータ91まで接続された電源配線は途中で分岐し、変電器93(以下コンバータとも呼ぶ)と接続している。本実施例においてコンバータ93は、AC−DCコンバータであり、電圧200Vの3相交流を車両Vの電源と同じ電圧24Vの直流に変換する。そして、コンバータ93は第3端子90cを備えており、第3端子90cとPLC60の電源線と電気的に接続することで、パワーユニットPの電源100は、PLC60をはじめとする架装物の電装品(近接センサ62a〜62e,ソレノイド64a〜94f)を稼働するための電圧24Vの直流電源として活用することができる。具体的には第3端子90cに配線103bを接続し、配線103bの先端に設けられたコネクタ103cを車両Vのキースイッチ63aと積降装置1の電源スイッチ63bとの間に接続する。コネクタ103cにはダイオードを内蔵しており、コンバータ93からの電流がキースイッチ63a(バッテリ61)側に、バッテリ61の電流が、パワーユニットP側に流れない。
【0034】
また、コンバータ93にはランプ93aが接続されており、コネクタ90aが電源と接続されている場合にはランプ93aが点灯し、電気エネルギーにより積降装置1を動作させることができることを作業者に示している。
なお、電源100がハイブリッド車やEVのバッテリ102である場合は変電器93をDC−DCコンバータとし、バッテリ102の電圧をPLC60等が稼働する電圧24Vに変圧すればよい
【0035】
電動モータ92はベース72の縦桁72c,72dにボルト留めすることで固定し、第2油圧ポンプ83は電動モータ92に直結している。インバータ91及びコンバータ93はベース72の支持部72eに固定している。これにより電動モータ92,第2油圧ポンプ83,インバータ91,コンバータ93はクッションゴム73を介してケース71に支持されるため、車両Vの走行振動が緩衝され、走行振動による破損を抑制することができる。また、電動モータ92,第2油圧ポンプ83,インバータ91,コンバータ93はベース72により一体化されており、メンテナンスや交換時において、一体で脱着することができる。
【0036】
以下は車両Vの動作について説明する。
車両Vの走行時、図1のようにチルトフレーム10は水平姿勢にあり、このチルトフレーム10上に荷台部2は引き上げられており、荷台部2は前方の積み込み完了位置にある。そして、前記テールゲート23は立てられた状態となっている。
この状態から荷台部2を地面に降ろす場合、荷台部2を車両後方側の所定位置まで先ずスライド移動させる。図2に示す位置まで後方スライドが完了すると、スライド位置検知の近接センサ62bがドグ(図示せず)を検知し、後方スライドを一旦停止し、その後、油圧シリンダ12を伸長し、図3に示す所定角までチルトフレーム10を傾斜させる。なお、このように荷台部2を後方の所定位置まで先ず移動させるのは、荷台部2の重心位置を後方へ移動させるためであり、これによりチルトフレーム10を後方へ下傾させやすくなる。
そして、所定角までチルトフレーム10を傾斜するとチルト中間検知近接センサ62cの検知に伴い油圧シリンダ12を停止し、再び荷台部2をチルトフレーム10に沿って車両後方側へ移動させ、チルトフレーム10の後端までスライド移動させる(図4)。チルトフレーム10の後端までスライド移動が完了すると(スライド位置検知近接センサ62dの検知)、再び油圧シリンダ12を伸長し、チルトフレーム10の傾斜角度を大きくさせ、図5のように荷台部2を地面に着地させる。荷台部2の前部を着地させると図外の前記テールゲート23(図1参照)を水平姿勢とし、荷台部2に対して車両等を搬入又は搬出する。
【0037】
また、この荷台部2をサブフレームS上に積み込むためには、図1から図5までの前記降ろし動作と反対の動作を行なう。つまり、傾斜しているチルトフレーム10上に荷台6を戻しながら、チルトフレーム10は、サブフレームSに対する傾斜角度を小さくしながら前進する。そして、チルトフレーム10は水平姿勢となり、荷台6はサブフレームS上に搭載された状態となる。
【0038】
以上のように、本発明のパワーユニットP並びにパワーユニットPを搭載した車両Vによると、車両VのアクチュエータAは、第1油圧ポンプ51と第2油圧ポンプ83との両方またはいずれか一方が吐出する作動油により駆動する。ここで、第2油圧ポンプ83は電動モータ92の回転により稼働するため、車両VのエンジンEを停止した状態であってもアクチュエータAを稼働することができる。電源100によりパワーユニットP(第2油圧ポンプ83)を用いてアクチュエータAを駆動すれば、エンジンEの動作を小さくし、騒音や排気ガスの排出を抑制することができる。また、エンジンEを動かすことなく架装物Bを動作させて、作業(乗用車や土木機械等の積み降ろし)をおこなうこともできる。
【0039】
このような理由から作業車両Vを電動化することがあるが、そのためには電動モータ92や電動モータ92によって駆動する第2油圧ポンプ83を作業車両Vに搭載しなければならない。
【0040】
本発明のパワーユニットPによれば、従来の作業車両Vを製造し、エンジンEで駆動する作業車両Vのオイルタンク50に第1入力ポート80を接続し、出力ポート85をバルブブロック52に接続すると電動モータ92によって作動油を送る第2油圧ポンプ83を作業車両Vに搭載することができる。そして、第1入力ポート80は分岐部を備えているため、エンジンEで駆動する第1油圧ポンプ51の吸入ホース53aの継手54bをフィルタ50aのポート54aから取外し(図15(a)参照)、ポート54aと継手54bとの間に第1入力ポート80を挿入し、接続部80aをポート54bに、接続部80bに継手54bを、それぞれ接続すれば吸入側の配管接続作業が完了する。次に、第1油圧ポンプ51とバルブブロック52とを接続していた吐出ホース53bをバルブブロック52から取外してパワーユニットPの第2入力ポート86に接続し、パワーユニットPの出力ポート85とバルブブロック52とをホース53dで接続すれば吐出側の配管接続作業が完了する。
なお、第1入力ポート80の2つの接続部は、雄型80aと雌型80bとを対にしているため、フィルタ50aの継手54aとは雄型の接続部80aと雌型の接続部80bのいずれか一方が合致し、吸入ホース53aの継手54bとは残った接続部が合致する。よって、フィルタ50aと吸入ホース53aとの接続箇所に挿入することができる。
【0041】
一方、電気配線作業においては、パワーユニットPの第2端子90bとPLC60の出力端子60aとを配線103aにて接続し、第3端子90cとPLC60とを配線103bにて接続する。これにより、作業車両Vを稼動したいときに第1端子90aと商用電源100とを電源ケーブル101により接続すれば電源100により架装物Bを動かすことができる。
作業車両Vは架装物Bを動作させるために種々の電装品(近接センサ類,スイッチ類,ソレノイド)を備えているが、本発明のパワーユニットPであれば、PLC60をそのまま活用するため電装品とパワーユニットPとを電気配線で接続する作業を行う必要がない。これにより電気配線作業が容易におこなうことができる。
なお、PLC60を電源100から電力供給を受けさせる必要がない場合は第3端子90cとPLC60とを配線103bにより接続しなければよい。また、電源を例えば車載のバッテリ102にした場合には、第1端子90aとバッテリ102とをパワーユニットP搭載時に接続しておけばよい。
【0042】
上述のように、本発明のパワーユニットPでは油圧配管の接続や電気配線の接続を容易におこなうことができるため、電源100駆動式の作業車両Vを容易に製造することができるだけでなく、従来からあるエンジンE駆動式の作業車両Vを電源100駆動式に容易に改造することもできる。
【0043】
パワーユニットPの稼働に伴い故障やメンテナンスが必要になってくる。本発明のパワーユニットPでは、横桁72a,72bはC型断面のチャンネル材であって、下方に空間部Cを向けるとともにその空間部Cにクッションゴム73が配置されている。すなわち、横桁72a,72bのフランジ部Dは開口部71iからケース71の内側に向かって(車幅方向)に長手方向を向くようにするとともに下方に向けて設けられ、長手方向を開口部71iからケース内側に向けて設けられた空間部C内にクッションゴム73が配置されている。これにより、クッションゴム73とベース72との間を締結するボルト74を取り外せば、ベース72の補強部Dは、ケースの底面71bに固定されたクッションゴム73の緩衝部73aに当接し、ベース72は前後方向(前壁71e又は後壁71f側)の移動を規制される。したがって、ケースの底面71bに固定されたままのクッションゴム73に補強部(フランジ部D)がガイドされ、ベース72を車幅方向に引き出す為のレールとして兼用することができる。車両運搬車では図6及び図7に示すようにケーブルガイド26用のレール26aがパワーユニットPの上方に配置されており、メンテナンスしにくくなることがあるが、ベース72を車幅方向に引き出してレール26aから遠ざけることができる。これにより、ベース72に固定された電動モータ92,第2油圧ポンプ83,インバータ91,コンバータ93をレール26bが邪魔することなくメンテナンスすることができる。そして、ベース72専用の引き出し機構を持たないため部品点数が少なくなり、簡単かつ安価に引き出し機能を有するパワーユニットPを製造することができる。
【0044】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
前記実施例においてはパワーユニットPの第2端子90bとPLC60とを接続する際に、専用の出力端子60aを用いたが、作業時に必ず出力する報知器(ブザー66a及びランプ66b)の出力配線を分岐し、第2端子90bと接続するようにしてもよい。コレによると、PLC60に専用の出力端子60aを設けておく必要がないため、PLC60の構造を簡素化することができる。また、配線103aの一端をガバナ65と接続するためのコネクタ65aに合致するコネクタ(図示せず)にし、ガバナ65に出力する信号を基にパワーユニットPを動作するようにしてもよい。この場合、従来からあるガバナ出力を用いてPLCの構造を簡素化することができるだけでなく、ガバナ65に対する速度指示信号を活用することができるため、パワーユニットPは電動モータ92の速度を柔軟に変更して第2油圧ポンプ83からの作動油量を変化させることができる。
【0045】
前記実施例においては本発明のパワーユニットPの他にエンジン駆動式の第1油圧ポンプ51を搭載しているが、エンジンEでの駆動が必要ない場合には第1油圧ポンプ51を搭載せず、空いた第1入力ポート80のうち余った接続部80bに盲目プラグを取り付け、第2入力ポート86にはキャップを取り付ければ電動式に作業車両Vを製造することができる。なお、接続部80bは盲目プラグだけの封止であるが、吸入ルートであるため内側が高圧になることはなく、第2入力ポート86についてはキャップで覆うだけであるが合流部84にチェック弁84dを備えているため、作動油が漏れ出す恐れは少ない。
また、第1入力ポート80はT型の油圧継手を用いて第1油圧ポンプ51の吸入ルートを分岐するようにしたが、第1入力ポート80にT型以外の油圧継手を用いて第1油圧ポンプ51の吸入ルートが接続しているポートと別のポートを用いてオイルタンク50と接続してもよい。
【0046】
前記実施例において架装物Bとして車両運搬車を例にしたが、塵芥収集車など他の特装車に本発明のパワーユニットPを搭載することも可能である。特に油圧のアクチュエータAにより架装物Bを稼働する特装車に有効である。その場合、上述の車両運搬車のように、少なくとも、オイルタンク50とバルブブロック52との間にパワーユニットPの入力ポート80と出力ポート85を接続し、架装物側制御装置(PLC60)からの動作指示を伝達するための配線103aを第2端子90bとPLCとの間に接続すればよい。
【0047】
図16は、ベース72の他実施例を示した模式図である。前記実施例において、2本の横桁71a,71bをともに空間部Cを下方に向けてその空間部C内にクッションゴム73が配置するようにしたが、図16(a)に示すように横桁71a,71bの少なくともひとつ(図示例では横桁71a)の補強部Dを下方に向けて、空間部C内(補強部Dの側面に近接する位置)にクッションゴム73を配置すればよい。
また、横桁71a,71bとして断面C型のチャンネル材を用いたが、その他の部材を用いてもよい。例えば横桁71a,71bとして、断面L型のアングル材を用いてフランジ部Dを下方に向けることでクッションゴム73の側面と当接するようにしてもよい。その場合、図16(b)に示すように隣り合う2つのクッションゴム73の間にフランジ部Dを配置するか、図16(c)に示すように隣り合う2つのクッションゴム73の外側にフランジ部Dを配置することで、ベース72がケース71の前後方向に移動した際に、横桁71aのフランジ部Dまたは、横桁71bのフランジ部Dのいずれか一方がクッションゴム73の側面に当接し、その前後移動を規制することができる。
【符号の説明】
【0048】
V 車両運搬車(作業車両)
F シャシフレーム
S サブフレーム
B 架装物
1 積降装置
11 傾斜機構
12 シリンダ(アクチュエータA)
14 スライド機構
15 油圧モータ(アクチュエータA)
2 荷台部
21 荷台
25 油圧ウインチ
25a 油圧モータ(アクチュエータA)
3 バンパ
5 油圧源
50 オイルタンク
51 第1油圧ポンプ
52 バルブブロック
6 架装物制御部
60 架装物制御装置(PLC)
62 近接センサ
63 スイッチ
64 ソレノイド
66 報知器
P パワーユニット
71 ケース
72 ベース
72a 横桁
D 補強部
C 空間部
72b 縦桁
73 クッションゴム
8 電動油圧源
80 第1入力ポート
80a 雄型の接続部
80b 雌型の接続部
83 第2油圧ポンプ
84 合流部
84c チェック弁
84d チェック弁
85 出力ポート
86 第2入力ポート
9 電動制御部
90a 第1端子
90b 第2端子
90c 第3端子
91 モータ制御装置(インバータ)
92 電動モータ
93 変電器(コンバータ)
100 電源
101 電源ケーブル
102 バッテリ
103 配線
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源によりアクチュエータを動かすための作動油を吐出するパワーユニットと、該パワーユニットを搭載した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ポンプと油圧アクチュエータとを備え、油圧ポンプから吐出された作動油によりアクチュエータを稼動することで架装物を稼働する作業車両がある。そして、前記油圧ポンプは車両のエンジンにより駆動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−89537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業時に架装物を稼働すると、エンジンを動作し続ける必要があり、エンジンの運転騒音で、作業環境が悪いばかりでなくエンジンの継続運転により排出する排ガスにより環境衛生を害するという問題がある。そのため、作業時にエンジンを停止できるように、電動でも動作できるようにする場合があるのだが、電動モータを搭載するための作業が煩雑であり高価になってしまう。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、安価に作業車両を電源により動作できるようにすることができるパワーユニット並びに安価な電動の作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明のパワーユニットは、電源からの電力供給を受けて駆動する電動モータと、電動モータにより駆動することで作動油を吐出する油圧ポンプと、オイルタンクと接続するための第1入力ポートと、第2入力ポートと、バルブブロックと接続する出力ポートと、油圧ポンプの吐出ポートと第2入力ポートと出力ポートと接続する合流部とを備えたことを特徴としている。これによると、作業車両を電動化するにあたり、第1入力ポートをオイルタンクと接続し、出力ポートをバルブブロックと接続するだけでよいため、安価に作業車両の架装物を電動化することができる。
【0007】
前記合流部は、第1入力ポートから出力ポート方向に作動油が流れることを許容するチェック弁と、油圧ポンプから出力ポート方向に作動油が流れることを許容するチェック弁とを内蔵するようにしてもよい。これによると、パワーユニットには予め油圧ポンプに作動油が逆流するのを防ぐチェック弁を内蔵しているため、チェック弁を別途取り付ける作業を行う必要がない。
【0008】
前記第一入力ポートは、分岐部を有してもよく、これによれば、作業車両のオイルタンク周りの改造が不要になるため、さらに安価に電動化することができる。
【0009】
前記目的を達成するための本発明の作業車両は、アクチュエータにより稼働する架装物と、前記アクチュエータを動作させる前記記載のパワーユニットを搭載したことを特徴とする。これにより、架装物を電源で動作させるための電動油圧源を、第1入力ポートをオイルタンクと接続し、出力ポートをバルブブロックと接続するだけで製造できるため、架装物を電動化した作業車両を安価に提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
このような構成のパワーユニットによれば、作業車両を電動化するにあたり、第1入力ポートをオイルタンクと接続し、出力ポートをバルブブロックと接続するだけでよいため、安価に作業車両の架装物を電動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のパワーユニットを搭載した車両運搬車の側面図である。
【図2】荷台部後方スライドした状態を示した図である。
【図3】荷台部を所定角まで傾斜した状態を示した図である。
【図4】荷台部をチルトフレーム後端までスライドした状態を示した図である。
【図5】荷台部を接地した状態を示した図である。
【図6】図1のVI部拡大図である。
【図7】図6に相当する箇所の平面図である。
【図8】パワーユニットの側面図である。
【図9】パワーユニットの平面図である。
【図10】パワーユニットの前面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】パワーユニットの分解状態を示した斜視図である。
【図13】作業車両の油圧回路図である。
【図14】作業車両のブロック図である。
【図15】第1入力ポートの挿入を示した模式図である。
【図16】ベースの他実施例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1から図5は、作業車両としての車両運搬車Vとその積み降ろし動作を示している側面図である。なお、以下において、「前後」の関係は、特に説明が無いかぎり車両の前後を基準とする。即ち運転席側が前側であり、その逆が後ろ側である。
【0013】
この車両運搬車V(以下、車両ともいう)は、アクチュエータAにより稼働する架装物Bを備えている。具体的には、サブフレームSを上部に固定したシャシフレームFと、サブフレームSに搭載された積降装置1と、積降装置1によりシャシフレームF上と地面との間を移動可能に支持された荷台部2とを備えている。
【0014】
積降装置1は、チルトフレーム10と傾斜機構11とスライド機構14とを有している。
【0015】
前記チルトフレーム10は、車両前後方向に延びているフレームであり、サブフレームS上に設けられている。また、図1と図2に示しているように、チルトフレーム10は、荷台部2を前後方向に移動可能として取り付けている。チルトフレーム10の後部は、サブフレームSの後端部に設けられたローラR上に載せられている。このローラRは車幅方向を軸線方向として設けられている。
チルトフレーム10はその後部下面に接地用ローラ10aを有している。この接地用ローラ10aは、図5のようにチルトフレーム10が後方に下傾した際に、地面に接触させるためのものである。
【0016】
前記傾斜機構11は、例えば図3において、伸縮動作するシリンダ(油圧シリンダ)12及びアーム13を有しており、チルトフレーム10を傾斜させることができる。アーム13の基部13aはサブフレームSに回動自在として取り付けられており、先部13bはチルトフレーム10の中間部10bに回動自在として取り付けられている。そして、シリンダ12が伸長動作をするとアーム13を起立させ、チルトフレーム10を後方に下傾させる。なお、チルトフレーム10はその後部において前記ローラR上に載せられていることから、アーム13の起立により、チルトフレーム10は、このローラRを支点として後方へ下傾するように回動するとともに、このローラRに載った状態で後方へ移動する。つまり、図3から図5に示しているように、傾斜機構11は、チルトフレーム10をサブフレームSに対して後方に下傾させながら後退させることができる。そして、図5の状態からシリンダ12が短縮動作をすると、アーム13は倒れ、チルトフレーム10を前進させながら水平姿勢に戻すことができる。
【0017】
また、前記傾斜機構11は、荷台部2をチルトフレーム10に沿って前後方向に移動させるスライド機構14を備えている。このスライド機構14は、チルトフレーム10の前部に固定した油圧モータ15と、油圧モータ15の駆動により回転するスプロケット16aとチルトフレーム後端に回転可能に支持されたアイドラ16bと、スプロケット16aとアイドラ16bとの間に巻回されたチェーン17とを備えている。また、スライド機構14はチルトフレーム10の前後方向に移動可能なスライダ18を備えており、該スライダ18はピン(図示せず)を介して荷台部2の前部が取り付けられている。
そうして、スライド機構14がチェーン17を引くことにより、荷台部2をチルトフレーム10に沿って前後方向に直線移動させることができる。このスライド機構14より、チルトフレーム10が水平にある状態(図1と図2)又は傾斜した状態(図3から図5)において、荷台部2をチルトフレーム10のフレーム前後方向に沿って移動させることができる。なお、フレーム前後方向とはチルトフレーム10の前部から後部へと向かう方向であり、チルトフレーム10が後方へ所定の角度で傾斜した状態では、フレーム前後方向も当該角度で傾斜した方向となる。
なお、スライダを駆動するために油圧モータ15とスプロケット及びアイドラ16a,16b、チェーン17を用いているが、油圧シリンダ等の他のアクチュエータを採用してもよい。
【0018】
荷台部2は荷物を載せる荷台21を備え、荷台21の上面に例えば乗用車や土木機械等を載せることができる。荷台21の前端にはアーチ状の鳥居22が設けられ、荷台部2の後端にはテールゲート(踏板)23が設けられている。テールゲート23は、ヒンジ23aを介して荷台部2の後端に取り付けられており、荷台部2の本体部分に対してヒンジ23aまわりに回動することができる。
また、荷台21の後端下部には接地用のローラ24を備え、荷台21の前部上面に取り付けられるとともに自走できなくなった事故車両を荷台21に牽引するための油圧ウインチ25を備えている。油圧ウインチ25は、油圧モータ25aによりドラム(図示せず)を回転し、ワイヤを巻き取ることで事故車両を牽引する。
【0019】
サブフレームSの後部には、別の車両等が後方から衝突した際の安全を確保するためのバンパ3を備えている。バンパ3は、車幅方向に長い部材のバンパ本体31と、バンパ本体31をサブフレームSに取り付けるバンパ支持部材32とを有している。
バンパ支持部材32は、サブフレームSに回動可能に支持された第1アーム33と第1アーム33の先端に揺動可能に支持された第2アーム34とを備え、第2アーム34の先端に前記バンパ本体31が固定されている。そして、バンパ支持部材32の第1アーム33はバンパ動作部35を介してチルトフレーム10と連結している。
図1の車両Vの走行状態において、バンパ本体31はサブフレームSから後方へ突き出た位置にあり、チルトフレーム10の起伏に連動しバンパ本体31は地面に近い格納位置まで移動する(図5参照)。
【0020】
なお、本実施例においてアクチュエータAは、シリンダ12と油圧モータ15及び25aが相当する。
【0021】
図6は図1のVI部拡大図であり、図7は図6に相当する箇所の平面図である。図6,図7においては積降装置1及び荷台部2を省略している。
車両Vは、前記シリンダ12と油圧モータ15とを駆動する油圧源5を備えている。油圧源5は、シャシフレームFの側面に固定したオイルタンク50、フィルタ50a、第1油圧ポンプ51、バルブブロック52を有している。
【0022】
第1油圧ポンプ51は、車両VのエンジンEとPTO(パワーテイクオフ,図示せず)とドライブシャフト51aを介して連結しており、第1油圧ポンプ51が駆動されると吸入ホース53aを介してオイルタンク50に貯蔵された作動油を吸引し、吐出ホース53bを介してバルブブロック52に作動油を送る。バルブブロック52は複数の3基のソレノイドバルブ52a〜52cを備え、シリンダ12や油圧モータ15に作動油を供給し、油圧ホース53cを介してオイルタンク50に作動油を戻す。
また、シャシフレームFの側面であって、オイルタンク50とフィルタ50aとバルブブロック52との上方には、前述の油圧ウインチ25の油圧モータ25aに作動油を送るための油圧ホースを保護するケーブルガイド26が配置されており、ケーブルガイド26を支持するためのレール26aがサブフレームSの側面に固定されている。
【0023】
そして、車両Vは架装物制御部6を備えている。架装物制御部6は、架装物側制御装置60(以下PLCとも呼ぶ)と、PLC60に電源を供給するバッテリ61と、積降装置1の動作位置を検知する近接センサ62(62a〜62eの5個)と、作業者が積降装置1の動作を指示する各種スイッチ63(63a〜63eの5個)と、前記ソレノイドバルブ52a〜52cを切り換えるソレノイド64(64a〜64fの6個)と、エンジンの回転を制御するガバナ65と、報知器66としてのブザー66a及びランプ66bを有している。ランプ66bは適宜の箇所に複数取り付けられているが、本実施例では代表例として荷台部2の鳥居22に取付けたものを図示している。そして、鳥居22に取付けたランプ66bとPLC60との間の配線は、前述のケーブルガイド26を通している。
【0024】
作業者が車両Vのキースイッチ63a及びメインスイッチ63bを共にONに操作することでPLC60が稼働できる状態になる。そして、PLC60は、近接センサ62a〜62eの検知結果と各種スイッチ63c〜63eの指示とから、ソレノイド64a〜64fやガバナ65に制御信号を出力し、積降装置1を駆動する。なお、エンジンスイッチ63eは増速又は減速を指示することができるスイッチであり、PLC60は、作業者の増速操作に基づきガバナ65に増速指示を出力することでエンジンEの回転数を上昇させる。一方、作業者がエンジンスイッチ63eに対して減速指示をおこなった場合には、PLC60は、ガバナ65に減速指示を出力してエンジンEの回転数を減少させる。
【0025】
また、本発明の車両Vは電源により積降装置1を駆動するためのパワーユニットPを備えている。図1〜図5においては図1に限り図示した。図1及び図6に示すようにパワーユニットPは左舷のホイルベース間(前輪と後輪との間)に配置している。なお、パワーユニットPは、同じくホイルベース間に配置したオイルタンク50とバルブブロック52等よりも車両前方に配置している。図8〜図12はパワーユニットPを示した図であり、図13は従来の車両VにパワーユニットPを取付けた状態を示した油圧回路図、図14は同ブロック図である。
【0026】
パワーユニットPはケース7と、電動油圧源8と、電動油圧源8を制御する電動制御部9とを有している。
ケース7はシャシフレームF側面に固定した前後1対のステー70と、ステー70に支持されたケース71とケース71に内蔵されたベース72とを備えている。ステー70は断面C型のチャンネル材をL字状に溶接固定することで形成され、鉛直部70aをサブフレーム側面に固定し、水平部70bの上面にケース71を搭載する。ケース71は断面L字状のアングル材により組み立てられた枠体71aと複数の板材71b〜71gとにより形成された略直方体形状の箱であって、その底面71bは前述のステー70の水平面70bに搭載される。そして、左側面71cと上面71dとは屈曲した一枚の鋼板により構成され、複数のボルト71hにより着脱することができ、ケース7の左側面から上面にかけてメンテナンス用の開口部71iを解放することができる。なお、開口部71iはすくなくとも側面にあればよい場合には、左側面71cと上面71dとを2枚の鋼板で別々に構成してもよく、その際には上面71dを固定したままで、側面(図示例であれば左側面71c)を着脱することができるようにすればよい。
【0027】
ベース72は複数の断面C型のチャンネル材72a〜72dを枠状に溶接固定することで構成している。また、ベース72には支持部72eを備えている。そして、ベース72は4個のクッションゴム73を介して支持されている。クッションゴム73はゴム製の緩衝部73aの一端に雄ネジ部73bと他端に雌ネジ部73cを備えている。クッションゴム73は雄ネジ部73bによりケースの底面71bに固定している。なお、雄ネジ部73bは底面71bの孔を貫通するとともにステーの水平部70bとに設けた孔を貫通し、ナット73cを螺入することで、ケース71をステー70に固定する部材を兼用している。
【0028】
ベース72は、2本の横桁72a,72bと2本の縦桁72c,72dを井桁状に溶接固定している。2本の横桁72a及び72bは、断面C型チャンネル材を側面の開口部71iからケース71の内側に向かって(車幅方向)に長手方向を向くようにするとともにフランジ部Dを下方に向けて配置することで、フランジ部Dがベース72の補強部となる。また、フランジ部Dにより形成された空間部Cも開口部71iからケース71の内側に向かってに長手方向かつ下方に向けて配置されてある。そして、前記2本の横桁72aと72bとを連結するように2本の断面C型のチャンネル材よりなる縦桁72c及び72dを溶接固定している。横桁72aの側面には板材により形成された支持部72eを溶接固定している。そして、2本の横桁72a,72bは2ヶ所に貫通穴を備えており、該貫通穴にボルト74を通すことによりクッションゴム73の雌ネジ部73dに固定している。これによりベース72はクッションゴム73を介してケース71(底面71b)に支持している。なお、2本の横桁72a,72bの空間部Cにはクッションゴム73が位置している。
【0029】
次に、電動油圧源8について説明する。
パワーユニットPには、前述のオイルタンク50と接続するための第1入力ポート80を備え、第1入力ポート80から油圧ホース81aを介して第2油圧ポンプ83の吸入口83aに接続している。第2油圧ポンプ83の吐出口83bは油圧ホース81bを介して合流部84と接続している。
第1入力ポート80はT型の油圧継手であり、オイルタンク50より吸入した作動油を2方向に分岐する分岐部としての機能を備えている。そして、T型の継手は雄型の接続部80aと雌型の接続部80bとを解放している。雄型の接続部80aはオイルタンク50(フィルタ50a)に接続し、雌型の接続部80bは吸入ホース83aを接続することで、第1油圧ポンプ51及び第2油圧ポンプ83が作動油を吸入できるようにしている。
【0030】
合流部84はブロック状の鋼材に孔をあけることで作動油の流路を形成内蔵しており、2つの入力側継手84a,84bと1つの出力ポート85とを備えている。そして、前記流路は2つの入力側継手84a,84bから導入した作動油を出力ポート85から吐出することができるように連通している。合流部84ケース後面71fの内面に固定されるとともに、出力ポート85を後面71fの外側まで突出させている。なお、出力ポート85は合流部84に一体的に備えられており、出力ポート85は油圧ホース53dを介してバルブブロック52と連結している。
また、合流部84は2基のチェック弁84c,84dを内蔵している、2基のチェック弁84c,84dは、流路の合流箇所84eよりも2つの入力側継手84a,84bに近い流路内に配置されており、2つの入力ポート84a,84bのうちいずれか一方から導入された作動油が他方の入力ポートから吐出されないようにしている。なお、2基のチェック弁84c,84dは、合流部84に内蔵されなくてもよく、2基の油圧ポンプの吐出口と合流箇所84eとの間であれば、どの位置にあってもよい。2基のチェック弁84c,84dは、不要であれば省略してもよい。
そしてケース右側面71gには、PTO駆動の第1油圧ポンプ51と接続するための第2入力ポート86を備え、第2入力ポート86は油圧ホース81cを介して合流部84と接続している。第2入力ポート86には吐出ホース53bの一端を接続している。
【0031】
続いて、電動制御部9について説明する。
ケースの前面71eには、電源と接続するための第1端子90a(コネクタ)が設けられており、本実施例において電源100は商用電源である100a(電圧200Vの3相3線式の交流電源)のコンセントと電源ケーブル101を介して接続される。電源ケーブル101のプラグ101aと第1端子90aと接続するためのコネクタ101bとの間にはブレーカ101cが備えられており、過電流が流れた場合にはプラグ101aとコネクタ101bとの間を電気的に切断することができるようになっている。
なお、電源100は図示のようにバッテリ102であってもよく、バッテリ102の出力コネクタ102aをパワーユニットPのコネクタ90aに接続するようにしてもよい。この例ではコネクタ90aを電源によらず兼用できるようにしているが、電源の種類に合わせてコネクタ90aの種類も変更するようにしてもよい。
【0032】
コネクタ90aのケース71内側はモータ制御装置91(以下はインバータとも呼ぶ)と接続されている。パワーユニットPはPLC60と接続するための第2端子90bを備えている。具体的に第2端子90bは、インバータ91の開口71i側の側面に備えられた端子台であり、PLC60の出力端子60aと配線103aにより接続している。PLC60は、エンジンスイッチ63eの増減速指示入力に基づき出力端子60aから速度指示信号を出力し、その速度指示信号を配線103aと第2端子90bとを経由してパワーユニットP(インバータ91)が受信すると、インバータ91は電動モータ92に電気を供給又は遮断する。これにより電動モータ92を始動ないし停止することができる。また、インバータ91から電動モータ92に供給する電力を変化することで、電動モータ92の速度を変化することもできる。
【0033】
コネクタ90aからインバータ91まで接続された電源配線は途中で分岐し、変電器93(以下コンバータとも呼ぶ)と接続している。本実施例においてコンバータ93は、AC−DCコンバータであり、電圧200Vの3相交流を車両Vの電源と同じ電圧24Vの直流に変換する。そして、コンバータ93は第3端子90cを備えており、第3端子90cとPLC60の電源線と電気的に接続することで、パワーユニットPの電源100は、PLC60をはじめとする架装物の電装品(近接センサ62a〜62e,ソレノイド64a〜94f)を稼働するための電圧24Vの直流電源として活用することができる。具体的には第3端子90cに配線103bを接続し、配線103bの先端に設けられたコネクタ103cを車両Vのキースイッチ63aと積降装置1の電源スイッチ63bとの間に接続する。コネクタ103cにはダイオードを内蔵しており、コンバータ93からの電流がキースイッチ63a(バッテリ61)側に、バッテリ61の電流が、パワーユニットP側に流れない。
【0034】
また、コンバータ93にはランプ93aが接続されており、コネクタ90aが電源と接続されている場合にはランプ93aが点灯し、電気エネルギーにより積降装置1を動作させることができることを作業者に示している。
なお、電源100がハイブリッド車やEVのバッテリ102である場合は変電器93をDC−DCコンバータとし、バッテリ102の電圧をPLC60等が稼働する電圧24Vに変圧すればよい
【0035】
電動モータ92はベース72の縦桁72c,72dにボルト留めすることで固定し、第2油圧ポンプ83は電動モータ92に直結している。インバータ91及びコンバータ93はベース72の支持部72eに固定している。これにより電動モータ92,第2油圧ポンプ83,インバータ91,コンバータ93はクッションゴム73を介してケース71に支持されるため、車両Vの走行振動が緩衝され、走行振動による破損を抑制することができる。また、電動モータ92,第2油圧ポンプ83,インバータ91,コンバータ93はベース72により一体化されており、メンテナンスや交換時において、一体で脱着することができる。
【0036】
以下は車両Vの動作について説明する。
車両Vの走行時、図1のようにチルトフレーム10は水平姿勢にあり、このチルトフレーム10上に荷台部2は引き上げられており、荷台部2は前方の積み込み完了位置にある。そして、前記テールゲート23は立てられた状態となっている。
この状態から荷台部2を地面に降ろす場合、荷台部2を車両後方側の所定位置まで先ずスライド移動させる。図2に示す位置まで後方スライドが完了すると、スライド位置検知の近接センサ62bがドグ(図示せず)を検知し、後方スライドを一旦停止し、その後、油圧シリンダ12を伸長し、図3に示す所定角までチルトフレーム10を傾斜させる。なお、このように荷台部2を後方の所定位置まで先ず移動させるのは、荷台部2の重心位置を後方へ移動させるためであり、これによりチルトフレーム10を後方へ下傾させやすくなる。
そして、所定角までチルトフレーム10を傾斜するとチルト中間検知近接センサ62cの検知に伴い油圧シリンダ12を停止し、再び荷台部2をチルトフレーム10に沿って車両後方側へ移動させ、チルトフレーム10の後端までスライド移動させる(図4)。チルトフレーム10の後端までスライド移動が完了すると(スライド位置検知近接センサ62dの検知)、再び油圧シリンダ12を伸長し、チルトフレーム10の傾斜角度を大きくさせ、図5のように荷台部2を地面に着地させる。荷台部2の前部を着地させると図外の前記テールゲート23(図1参照)を水平姿勢とし、荷台部2に対して車両等を搬入又は搬出する。
【0037】
また、この荷台部2をサブフレームS上に積み込むためには、図1から図5までの前記降ろし動作と反対の動作を行なう。つまり、傾斜しているチルトフレーム10上に荷台6を戻しながら、チルトフレーム10は、サブフレームSに対する傾斜角度を小さくしながら前進する。そして、チルトフレーム10は水平姿勢となり、荷台6はサブフレームS上に搭載された状態となる。
【0038】
以上のように、本発明のパワーユニットP並びにパワーユニットPを搭載した車両Vによると、車両VのアクチュエータAは、第1油圧ポンプ51と第2油圧ポンプ83との両方またはいずれか一方が吐出する作動油により駆動する。ここで、第2油圧ポンプ83は電動モータ92の回転により稼働するため、車両VのエンジンEを停止した状態であってもアクチュエータAを稼働することができる。電源100によりパワーユニットP(第2油圧ポンプ83)を用いてアクチュエータAを駆動すれば、エンジンEの動作を小さくし、騒音や排気ガスの排出を抑制することができる。また、エンジンEを動かすことなく架装物Bを動作させて、作業(乗用車や土木機械等の積み降ろし)をおこなうこともできる。
【0039】
このような理由から作業車両Vを電動化することがあるが、そのためには電動モータ92や電動モータ92によって駆動する第2油圧ポンプ83を作業車両Vに搭載しなければならない。
【0040】
本発明のパワーユニットPによれば、従来の作業車両Vを製造し、エンジンEで駆動する作業車両Vのオイルタンク50に第1入力ポート80を接続し、出力ポート85をバルブブロック52に接続すると電動モータ92によって作動油を送る第2油圧ポンプ83を作業車両Vに搭載することができる。そして、第1入力ポート80は分岐部を備えているため、エンジンEで駆動する第1油圧ポンプ51の吸入ホース53aの継手54bをフィルタ50aのポート54aから取外し(図15(a)参照)、ポート54aと継手54bとの間に第1入力ポート80を挿入し、接続部80aをポート54bに、接続部80bに継手54bを、それぞれ接続すれば吸入側の配管接続作業が完了する。次に、第1油圧ポンプ51とバルブブロック52とを接続していた吐出ホース53bをバルブブロック52から取外してパワーユニットPの第2入力ポート86に接続し、パワーユニットPの出力ポート85とバルブブロック52とをホース53dで接続すれば吐出側の配管接続作業が完了する。
なお、第1入力ポート80の2つの接続部は、雄型80aと雌型80bとを対にしているため、フィルタ50aの継手54aとは雄型の接続部80aと雌型の接続部80bのいずれか一方が合致し、吸入ホース53aの継手54bとは残った接続部が合致する。よって、フィルタ50aと吸入ホース53aとの接続箇所に挿入することができる。
【0041】
一方、電気配線作業においては、パワーユニットPの第2端子90bとPLC60の出力端子60aとを配線103aにて接続し、第3端子90cとPLC60とを配線103bにて接続する。これにより、作業車両Vを稼動したいときに第1端子90aと商用電源100とを電源ケーブル101により接続すれば電源100により架装物Bを動かすことができる。
作業車両Vは架装物Bを動作させるために種々の電装品(近接センサ類,スイッチ類,ソレノイド)を備えているが、本発明のパワーユニットPであれば、PLC60をそのまま活用するため電装品とパワーユニットPとを電気配線で接続する作業を行う必要がない。これにより電気配線作業が容易におこなうことができる。
なお、PLC60を電源100から電力供給を受けさせる必要がない場合は第3端子90cとPLC60とを配線103bにより接続しなければよい。また、電源を例えば車載のバッテリ102にした場合には、第1端子90aとバッテリ102とをパワーユニットP搭載時に接続しておけばよい。
【0042】
上述のように、本発明のパワーユニットPでは油圧配管の接続や電気配線の接続を容易におこなうことができるため、電源100駆動式の作業車両Vを容易に製造することができるだけでなく、従来からあるエンジンE駆動式の作業車両Vを電源100駆動式に容易に改造することもできる。
【0043】
パワーユニットPの稼働に伴い故障やメンテナンスが必要になってくる。本発明のパワーユニットPでは、横桁72a,72bはC型断面のチャンネル材であって、下方に空間部Cを向けるとともにその空間部Cにクッションゴム73が配置されている。すなわち、横桁72a,72bのフランジ部Dは開口部71iからケース71の内側に向かって(車幅方向)に長手方向を向くようにするとともに下方に向けて設けられ、長手方向を開口部71iからケース内側に向けて設けられた空間部C内にクッションゴム73が配置されている。これにより、クッションゴム73とベース72との間を締結するボルト74を取り外せば、ベース72の補強部Dは、ケースの底面71bに固定されたクッションゴム73の緩衝部73aに当接し、ベース72は前後方向(前壁71e又は後壁71f側)の移動を規制される。したがって、ケースの底面71bに固定されたままのクッションゴム73に補強部(フランジ部D)がガイドされ、ベース72を車幅方向に引き出す為のレールとして兼用することができる。車両運搬車では図6及び図7に示すようにケーブルガイド26用のレール26aがパワーユニットPの上方に配置されており、メンテナンスしにくくなることがあるが、ベース72を車幅方向に引き出してレール26aから遠ざけることができる。これにより、ベース72に固定された電動モータ92,第2油圧ポンプ83,インバータ91,コンバータ93をレール26bが邪魔することなくメンテナンスすることができる。そして、ベース72専用の引き出し機構を持たないため部品点数が少なくなり、簡単かつ安価に引き出し機能を有するパワーユニットPを製造することができる。
【0044】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
前記実施例においてはパワーユニットPの第2端子90bとPLC60とを接続する際に、専用の出力端子60aを用いたが、作業時に必ず出力する報知器(ブザー66a及びランプ66b)の出力配線を分岐し、第2端子90bと接続するようにしてもよい。コレによると、PLC60に専用の出力端子60aを設けておく必要がないため、PLC60の構造を簡素化することができる。また、配線103aの一端をガバナ65と接続するためのコネクタ65aに合致するコネクタ(図示せず)にし、ガバナ65に出力する信号を基にパワーユニットPを動作するようにしてもよい。この場合、従来からあるガバナ出力を用いてPLCの構造を簡素化することができるだけでなく、ガバナ65に対する速度指示信号を活用することができるため、パワーユニットPは電動モータ92の速度を柔軟に変更して第2油圧ポンプ83からの作動油量を変化させることができる。
【0045】
前記実施例においては本発明のパワーユニットPの他にエンジン駆動式の第1油圧ポンプ51を搭載しているが、エンジンEでの駆動が必要ない場合には第1油圧ポンプ51を搭載せず、空いた第1入力ポート80のうち余った接続部80bに盲目プラグを取り付け、第2入力ポート86にはキャップを取り付ければ電動式に作業車両Vを製造することができる。なお、接続部80bは盲目プラグだけの封止であるが、吸入ルートであるため内側が高圧になることはなく、第2入力ポート86についてはキャップで覆うだけであるが合流部84にチェック弁84dを備えているため、作動油が漏れ出す恐れは少ない。
また、第1入力ポート80はT型の油圧継手を用いて第1油圧ポンプ51の吸入ルートを分岐するようにしたが、第1入力ポート80にT型以外の油圧継手を用いて第1油圧ポンプ51の吸入ルートが接続しているポートと別のポートを用いてオイルタンク50と接続してもよい。
【0046】
前記実施例において架装物Bとして車両運搬車を例にしたが、塵芥収集車など他の特装車に本発明のパワーユニットPを搭載することも可能である。特に油圧のアクチュエータAにより架装物Bを稼働する特装車に有効である。その場合、上述の車両運搬車のように、少なくとも、オイルタンク50とバルブブロック52との間にパワーユニットPの入力ポート80と出力ポート85を接続し、架装物側制御装置(PLC60)からの動作指示を伝達するための配線103aを第2端子90bとPLCとの間に接続すればよい。
【0047】
図16は、ベース72の他実施例を示した模式図である。前記実施例において、2本の横桁71a,71bをともに空間部Cを下方に向けてその空間部C内にクッションゴム73が配置するようにしたが、図16(a)に示すように横桁71a,71bの少なくともひとつ(図示例では横桁71a)の補強部Dを下方に向けて、空間部C内(補強部Dの側面に近接する位置)にクッションゴム73を配置すればよい。
また、横桁71a,71bとして断面C型のチャンネル材を用いたが、その他の部材を用いてもよい。例えば横桁71a,71bとして、断面L型のアングル材を用いてフランジ部Dを下方に向けることでクッションゴム73の側面と当接するようにしてもよい。その場合、図16(b)に示すように隣り合う2つのクッションゴム73の間にフランジ部Dを配置するか、図16(c)に示すように隣り合う2つのクッションゴム73の外側にフランジ部Dを配置することで、ベース72がケース71の前後方向に移動した際に、横桁71aのフランジ部Dまたは、横桁71bのフランジ部Dのいずれか一方がクッションゴム73の側面に当接し、その前後移動を規制することができる。
【符号の説明】
【0048】
V 車両運搬車(作業車両)
F シャシフレーム
S サブフレーム
B 架装物
1 積降装置
11 傾斜機構
12 シリンダ(アクチュエータA)
14 スライド機構
15 油圧モータ(アクチュエータA)
2 荷台部
21 荷台
25 油圧ウインチ
25a 油圧モータ(アクチュエータA)
3 バンパ
5 油圧源
50 オイルタンク
51 第1油圧ポンプ
52 バルブブロック
6 架装物制御部
60 架装物制御装置(PLC)
62 近接センサ
63 スイッチ
64 ソレノイド
66 報知器
P パワーユニット
71 ケース
72 ベース
72a 横桁
D 補強部
C 空間部
72b 縦桁
73 クッションゴム
8 電動油圧源
80 第1入力ポート
80a 雄型の接続部
80b 雌型の接続部
83 第2油圧ポンプ
84 合流部
84c チェック弁
84d チェック弁
85 出力ポート
86 第2入力ポート
9 電動制御部
90a 第1端子
90b 第2端子
90c 第3端子
91 モータ制御装置(インバータ)
92 電動モータ
93 変電器(コンバータ)
100 電源
101 電源ケーブル
102 バッテリ
103 配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力供給を受けて駆動する電動モータと、
電動モータにより駆動することで作動油を吐出する油圧ポンプと、
オイルタンクと接続するための第1入力ポートと、
第2入力ポートと、
バルブブロックと接続する出力ポートと、
油圧ポンプの吐出ポートと第2入力ポートと出力ポートと接続する合流部とを備えたことを特徴とするパワーユニット。
【請求項2】
前記合流部は、第1入力ポートから出力ポート方向に作動油が流れることを許容するチェック弁と、
油圧ポンプから出力ポート方向に作動油が流れることを許容するチェック弁とを内蔵したことを特徴とする請求項1記載のパワーユニット。
【請求項3】
前記第一入力ポートは、分岐部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のパワーユニット。
【請求項4】
アクチュエータにより稼働する架装物と、前記アクチュエータを動作させる前記請求項1〜3のいずれかに記載のパワーユニットを搭載した作業車両。
【請求項1】
電源からの電力供給を受けて駆動する電動モータと、
電動モータにより駆動することで作動油を吐出する油圧ポンプと、
オイルタンクと接続するための第1入力ポートと、
第2入力ポートと、
バルブブロックと接続する出力ポートと、
油圧ポンプの吐出ポートと第2入力ポートと出力ポートと接続する合流部とを備えたことを特徴とするパワーユニット。
【請求項2】
前記合流部は、第1入力ポートから出力ポート方向に作動油が流れることを許容するチェック弁と、
油圧ポンプから出力ポート方向に作動油が流れることを許容するチェック弁とを内蔵したことを特徴とする請求項1記載のパワーユニット。
【請求項3】
前記第一入力ポートは、分岐部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のパワーユニット。
【請求項4】
アクチュエータにより稼働する架装物と、前記アクチュエータを動作させる前記請求項1〜3のいずれかに記載のパワーユニットを搭載した作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−104521(P2013−104521A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250472(P2011−250472)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)
【Fターム(参考)】
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