説明

パワーMOSFET、IGBTなどの縦型半導体装置とその製造方法

【課題】パワーMOS-FETやIGBT素子などの縦型半導体装置における、耐圧を向上させる為の構造と製造方法。
【解決手段】
ドレイン領域の主面に対向電極として選択的にソース電極と絶縁層を介したゲート配線が形成された構造のMOS-FETやIGBT素子などの縦型半導体装置において、ゲート配線直下のドリフト層に,ソース領域形成のマスクを修正して、アイランド状に耐圧維持用拡散層を、ソース形成と同一工程で拡散して形成し、ドリフト層のソース電極方向への空乏層の伸びを抑制し、電界集中により耐圧低下するのを改良し、耐圧を向上させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐圧を向上させたパワーMOSFET又はIGBTなどの半導体装置の構造とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術としては特許文献1に耐圧向上に関する技術が開示されている。
段落(0008)に、「図1(本書面の図5)は、本発明に係わる高耐圧MOSトランジスタの構成断面図である。この例においては、N形の横型MOSトランジスタを例示する。図において、11はP形基板、26はこの基板上に設けたドレイン・ドリフト領域層で、N形のエピタキシャル層を積み上げて形成してある。12はドレイン・ドリフト領域層26上に設けた素子間分離のための酸化膜で、例えば1μm程度の厚さのLOCOS(Local Oxidation of Silicon)で形成される。18は層間膜(絶縁膜)で、酸化膜12上に形成してある。なお、ドレイン・ドリフト領域層26は、エピタキシャル層を積み上げて形成する場合の外に、拡散層により形成してもよい」の記述がある。
段落(0009)に、「14は基板上11に形成したソース電極、16はドレイン電極、17はソース電極14とドレイン電極16との間に配置されたゲート電極である。高耐圧MOSトランジスタの特徴として、ドレイン電極16が、ソース電極14,ゲート電極17から離れて配置されている。ここで、ゲート電極17とドレイン電極16との間をドレイン・ドリフト領域と呼んでいる。高耐圧MOSトランジスタが、高い電圧を吸収できるのは、このドレイン・ドリフト領域層に伸びる空乏層によるものである」。
段落(0011)に、「27a,27b,27cは、本発明で特徴としているドレイン・ドリフト領域層26の表面に設けた島状の浅いP層(基板11がN形であればN層)で、少なくとも2以上に分割(この例では3分割)して配置してある。ここで、島状の浅いP層27は、例えば、濃度1×1016(/cm3)深さ1μmとしてある。なお、ドレイン・ドリフト領域層26の濃度2×1015(/cm3)厚さ4μm、ドレイン電極とソース電極との間の長さ(ドレイン・ドリフト領域)は50μm程度としてある」。
段落(0012)に、「図2(本書面の図7)のドレイン電極16とソース電極14との間に高電圧を印加した時の電界分布を示す図で、P層を構成した場合を対比して示している。」
段落(0013)に、「(b)図では、ゲート電極17の直下、ドレイン電極16の直下の2カ所において電界が集中している。これに対して、(a)図に示す本発明の構造の場合は、分割した各浅いP層27a,27b,27cの間において、電位が入り込むために4カ所において電界が集中し、4つのピークが表れている。これにより、電界集中が分散されることとなり、ドレイン電圧がより高い電圧まで耐えうるようになって、耐圧を向上させることができる」。
段落(0014)に、「ドレイン・ドリフト領域層26の表面に浅いP層を設けることによる効果を説明する。高耐圧MOSトランジスタのオン抵抗は、ドレイン・ドリフト領域層の抵抗で決まる」。段落(0015)に、「MOSトランジスタのオン抵抗を下げるためには、エピタキシャル濃度Nエピを濃く(大きく)すればよいが、これを濃くするとドレイン・ドリフト領域層内の空乏層の伸びが悪くなり、耐圧が落ちてしまう。ドレイン・ドリフト領域層の表面に浅いP層を設けると、ドレイン・ドリフト領域層内の空乏層は伸びやすくなり、エピタキシャル濃度Nエピを濃くしても、高耐圧を吸収することができるのである」と記載されている。
【0003】
段落(0020)に、「図5(本書面には示さず)は、本発明に係わる高耐圧MOSトランジスタの製造方法の一例を示す図である。ここでは、本発明において特徴としている、ドレイン・ドリフト領域層の表面に島状のP層を形成する工程より後の工程を示している。(a)は、酸化膜(LOCOS)12にゲート電極17を形成した状態を示している。この状態において、酸化膜(LOCOS)12およびゲート電極17上にマスクとなるフォト・レジスト膜31を施し、(b)に示すように、島状の浅いP層を形成する位置に対応するフォト・レジスト膜部分を除去する。フォト・レジスト膜31の厚さは、高エネルギーのイオン注入に耐え得る程度厚く、例えば、通常より3倍程度の厚さとしてある」
段落(0021)に、「(c)に示すように、フォト・レジスト膜の上部よりボロン・イオンをドレイン・ドリフト領域層26に注入する。ここでのイオン注入は、酸化膜12を介して行われるので高エネルギー注入となる。続いて、フォト・レジスト膜31を除去すると共に、アニールにより、ドレイン・ドリフト領域層26の表面に形成される島状のP層27が所定の深さ(例えば、1μm)に入るように調整する」と記載されている。
【0004】
【特許文献1】「特開平9−82960号」公報、名称「高耐圧MOSトランジスタおよびその製造方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
段落(0021)に、「(c)に示すように、フォト・レジスト膜の上部よりボロン・イオンをドレイン・ドリフト領域層26に注入する。ここでのイオン注入は、酸化膜12を介して行われるので高エネルギー注入となる。」と記述されているように、イオン注入をするための高エネルギー注入設備を導入することが前提とされている。安価に製品を完成させる為に、新しく高エネルギー注入設備を導入する事なく、耐圧を改善する技術を確立する製造方法と半導体装置の構造創出が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
イオン注入の設備導入しなければ出来ないような生産工程を不要とし、マスク形状のみ修正することで、他は従来の製作工程でよい半導体装置の実現を以下に述べる構造で可能とした。請求項1に関しては、pnpn基本構成のIGBTに適応される場合の技術として、アノード電極、高濃度第1導電型(p+型)半導体のアノード層、第2導電型(n-型)半導体のドリフト層、高濃度第1導電型(p+型)半導体のカソード領域の順で積層され、該カソード領域を除く前記ドリフト層にゲート酸化膜を介してストライプ構造またはメッシュ構造にゲート配線が選択的に形成される縦型半導体装置において、ゲート配線直下の第2導電型(n-型)半導体の前記ドリフト層内に第1導電型(p-型)半導体または高濃度第1導電型(p+型)半導体の耐圧維持用拡散層をアイランド状に配置し、耐圧を向上させたことを特徴とする縦型半導体装置とした。
【0007】
請求項2に関しては、MOSFETに適応される場合であり、
ドレイン電極、高濃度第1導電型(p+型)半導体のドレイン層、第2導電型(n-型)半導体のドリフト層、高濃度第1導電型(p+型)半導体のソース領域の順で積層され、該ソース領域を除く前記ドリフト層に、ゲート酸化膜を介してストライプ構造またはメッシュ構造にゲート配線が選択的に形成される縦型半導体装置において、ゲート配線直下の第2導電型(n-型)半導体の前記ドリフト層内に第1導電型(p-型)半導体または高濃度第1導電型(p+型)半導体の耐圧維持用拡散層をアイランド状に配置し、耐圧を向上させたことを特徴とする縦型半導体装置とした。
【0008】
請求項3に関しては、アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層が、セル間の間隔寸法以下の寸法間隔で配置されたアイランド状拡散層である、請求項1乃至2記載の縦型半導体装置とした。
【0009】
請求項4の場合では、前記アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層は、アイランド同士が接近し一体化して一平面として配置された、第1導電型半導体の耐圧維持用拡散層である、請求項1乃至3記載の縦型半導体装置とした。
【0010】
請求項5の場合では、
アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層の形成には、ソース領域を拡散工程で同時に拡散される様に修正したマスクを用いる他は、新たな工程を追加する必要がない、耐圧維持用拡散層の形成方法である請求項1乃至4記載の構造の縦型半導体装置の製造方法とした。
【発明の効果】
【0011】
ソース領域形成のマスクを修正して、アイランド状に耐圧維持用拡散層を、ソース形成と同一工程で拡散して形成し、ドリフト層のソース電極方向へ向かう空乏層の伸びを抑制し、電界集中により耐圧低下するのを抑制し、耐圧を向上させた。その為、耐圧向上の為のマスク修正以外は、製作工程が従来のままでよいから、製造上コントロールを厳密にするため高価についていた高エネルギーイオン注入工程を追加すること無く、目的としていた600V級の耐圧が達成できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1と図3に於いて本発明の一実施形態における装置の構造を説明するとドレイン電極1、高濃度第1導電型半導体のドレイン層2、第2導電型半導体のドリフト層3、高濃度第1導電型半導体のソース領域5の順で積層され、ソース領域形成と同時工程で第1導電型半導体または高濃度第1導電型半導体の耐圧維持用拡散層8をドリフト層にアイランド状に設けた。該ソース領域5を除く前記ドリフト層3にゲート酸化膜7を介してストライプ構造またはメッシュ構造にゲート配線6が選択的に形成され、その結果、ゲート配線6の直下に前記耐圧維持用拡散層8がアイランド状に配置されることを特徴とする半導体装置とした。9はゲート電極(図3)であり、10はソース電極、13は層間絶縁層である。この半導体装置がOFF動作するのは、p+型ドレイン層2とn-型ドリフト層の接合面に空乏層11が出来るからである。ドレイン層2の他方の主面にドレイン電極1を形成して半導体装置を完成する。
【0013】
空乏層11を平坦にするために、第2導電型半導体のドリフト層3の内部に第1導電型半導体または高濃度第1導電型半導体の耐圧維持用拡散層8を、間隔Gをセル間隔以下に保ちながらアイランド状に設けて耐圧向上が実測された。その一例はセル間隔寸法が30μmの場合に、耐圧維持用拡散層のアイランド間寸法を15μmとした場合においては、図4に示すように耐圧600Vとなった。これは耐圧維持用拡散層8を形成しない場合の図6に示した耐圧250Vの約2.4倍である。
図3(a)の点線で描いた空乏層の伸びが、図3(b)の場合に比べて大きい場合を示した、耐圧維持用拡散層8が結果的に広い間隔で配置される従来の半導体装置では、空乏層11が平坦に分布せずに図3(a)の点線のようにソース方向に伸びてくるので等電位面が独立峰の形状になる、この為、矢印のように局部的に電界が集中し、耐圧が低下する要因であるとの知見を得た。図3(b)に点線で描いた空乏層の伸びが前記より小さい場合を示した、耐圧維持用拡散層8が前記より狭い間隔で配置されるこの場合では、点線で描いた空乏層11が平坦に近づくので、耐圧が低下する要因が抑制されて耐圧改善に寄与している。
【0014】
電界集中による絶縁破壊に関しては「耐圧設計は、電界を局部的に集中させないように、一様な電界分布するように設計すること」が基本である。
【0015】
図2に於いて本発明の第二の実施形態における装置の構造を説明すると、ドレイン電極1、高濃度第1導電型(p+型)半導体のドレイン層2、第2導電型(n-型)半導体のドリフト層3、高濃度第1導電型(p+型)半導体のソース領域5の順で積層され、該ソース領域を除く前記ドリフト層3にゲート酸化膜7を介してストライプ構造またはメッシュ構造にゲート配線6が選択的に形成され、ゲート配線6の直下の第2導電型(n-型)半導体のドリフト層3の内部に、結果的に、第1導電型(p-型)半導体または高濃度第1導電型(p+型)半導体の耐圧維持用拡散層8をアイランド状に配置する半導体装置とした。10はソース電極、11は空乏層で、13は層間絶縁膜である。ドレイン層2の他方の主面にドレイン電極1を形成して半導体装置を完成する。
【0016】
アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層8は、セル間の間隔寸法以下の寸法間隔で配置されたアイランド状拡散層である縦型半導体装置とした。
【0017】
前記アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層8は、例えば、ポリシリコンウインドウの(穴あけ寸法最小ルール5ミクロン)とし(拡散マスクの穴間隔4ミクロン)として拡散層を形成した結果、アイランド同士が接近し一体化し一平面として配置された、第1導電型(p-型)半導体の耐圧維持用拡散層である縦型半導体装置とした。
【0018】
アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層8は、その厚さ寸法が1〜3μmの寸法に形成された拡散層である縦型半導体装置とした。図4は、本発明による実施の形態による電圧・電流特性図である。図4のグラフから分かるように耐圧600Vであることが分かる。
【0019】
アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層8は、ソース領域5を拡散で形成する工程と同時に拡散される様に修正したマスクを用い、新工程を追加する必要がない、縦型半導体装置の製造方法とした。
【産業上の利用可能性】
【0020】
特許文献1で開示された従来のような工程の複雑さを排除し、マスクの修正のみで他は従来と同じ工程で製作できるので安価に提供できるので産業上に貢献度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による第1の実施の形態を示す構造図である。
【図2】本発明による第2の実施形態を示す構造図である。
【図3】本発明による第1の実施の形態による要部詳細図である。
【図4】本発明による実施の形態による電圧・電流特性図である。
【図5】特許文献1に開示されている技術による半導体装置の構造図である。
【図6】従来の半導体装置による電圧・電流特性図である。
【図7】従来の半導体装置の説明図(特許文献1の図2)である。
【符号の説明】
【0022】
1 ドレイン電極
2 ドレイン層
3 ドリフト層
4 空乏層
5 ソース領域
6 ゲート配線(導体)
7 ゲート酸化膜
8 耐圧維持用拡散層
9 ゲート電極
10 ソース電極
11 P型基板
12 酸化膜
13 層間絶縁膜
14 ソース電極
16 ドレイン電極
17 ゲート電極
18 層間膜
26 ドレイン・ドリフト領域層
27a 島状の浅いP層
27b 島状の浅いP層
27c 島状の浅いP層
G 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pnpn基本構成のIGBTに適応され、アノード電極、高濃度第1導電型(p+型)半導体のアノード層、第2導電型(n-型)半導体のドリフト層、高濃度第1導電型(p+型)半導体のカソード領域の順で積層され、該カソード領域を除く前記ドリフト層にゲート酸化膜を介してストライプ構造またはメッシュ構造にゲート配線が選択的に形成される縦型半導体装置において、ゲート配線直下の第2導電型(n-型)半導体の前記ドリフト層内に第1導電型(p-型)半導体または高濃度第1導電型(p+型)半導体の耐圧維持用拡散層をアイランド状に配置し、耐圧を向上させたことを特徴とする縦型半導体装置。
【請求項2】
MOSFETに適応され、ドレイン電極、高濃度第1導電型(p+型)半導体のドレイン層、第2導電型(n-型)半導体のドリフト層、高濃度第1導電型(p+型)半導体のソース領域の順で積層され、該ソース領域を除く前記ドリフト層に、ゲート酸化膜を介してストライプ構造またはメッシュ構造にゲート配線が選択的に形成される縦型半導体装置において、ゲート配線直下の第2導電型(n-型)半導体の前記ドリフト層内に第1導電型(p-型)半導体または高濃度第1導電型(p+型)半導体の耐圧維持用拡散層をアイランド状に配置し、耐圧を向上させたことを特徴とする縦型半導体装置。
【請求項3】
アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層は、セル間の間隔以下の寸法間隔で配置されたアイランド状拡散層である、請求項1乃至2記載の縦型半導体装置。
【請求項4】
前記アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層は、アイランド同士が接近して一体となって一平面化して配置された、p-型半導体の耐圧維持用拡散層である、請求項1乃至3記載の縦型半導体装置。
【請求項5】
アイランド状に配置された耐圧維持用拡散層の形成工程は、ソース領域を拡散で形成するときに同時に拡散されるよう修正したマスクを用い、新工程を追加する必要がない、ソース領域形成と同時の工程で拡散して形成する工程である請求項1乃至5記載の縦型半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−134421(P2007−134421A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324319(P2005−324319)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)