説明

パーキング装置

【課題】 パーキングロッドが屈曲形成され、かつ短縮化されているものであっても、突出部に負荷が生じないようにしたパーキング装置を提供する。
【解決手段】 パーキング装置のパーキングロッド21は、シフトレバーの操作に基づき回動されるディテント板の取付孔に貫通挿入される軸状の取付軸部21aと、屈曲形成された軸状の本体軸部21b,21cと、取付軸部21aの外周部から放射方向直線上に向けて4箇所に突出させた突出部22a,22b,22c,22dとを有しており、それら突出部22a,22b,22c,22dによってディテント板を挟持して該ディテント板に取付けられている。この突出部22a,22b,22c,22dを、パーキングロッド21の首振りに応じて生じる負荷が許容範囲内となる方向になるように、例えば直線dに対して垂直な方向d’を中心とした所定角度以内の角度で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車輌等に搭載される自動変速機やハイブリッド駆動装置等に用いられるパーキング装置に係り、詳しくはシフトレバーの操作に基づき回動されるディテント板に少なくとも1箇所が屈曲形成されたパーキングロッドを取付けるための突出部を備えたパーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車輌等に搭載される自動変速機やハイブリッド駆動装置等においては、シフトレバーによりP(パーキング)レンジを選択操作した際に、パーキングポールを車輪に連結されたパーキングギヤに噛合させるように動作するパーキング装置が備えられている。このものは、シフトポジションを維持するためのディテント機構における、シフトレバーの操作に基づき回動するディテント板と、該ディテント板に取付けられ、該ディテント板の回動に応じて略々軸方向に移動されるパーキングロッドと、パーキングロッドに摺動自在に配設されると共にバネにより付勢されているウエッジと、該ウエッジが嵌合された際にパーキングポールを押圧駆動してパーキングギヤに噛合させるパーキングポール機構とを備えて構成されており、つまりシフトレバーがPレンジに操作されるとパーキングギヤとパーキングポールとが噛合し、車輌の停車状態を維持するように構成されている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなパーキング装置において、パーキングロッドとディテント板とを取付ける場合には、パーキングロッドを本体軸部と該本体軸部に垂直に延設された取付軸部とを有するように形成し(つまりL字状に形成し)、該パーキングロッドの係合軸部をディテント板の取付孔に貫通挿入した後、取付孔の両側開口部の近傍にて取付軸部の外周部から放射方向直線上に向けて4箇所に突出させたカシメを形成して、それら4箇所のカシメによりディテント板を挟持することで取付けを行っている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−1158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に上記ディテント板は、油圧制御装置内のシフトポジションを決定するマニュアルバルブを駆動するように連結されている。また、例えば自動変速機の設計過程においては、自動変速機の歯車機構及び油圧制御装置などが当該自動変速機の要部であるため、それらの配置を先に決定してしまう。従って、上記ディテント板の配置位置は、油圧制御装置の配置に合わせて制限されることになってしまう。一方、パーキングギヤは、車輪に連結される出力軸上に配置されることになるため、そのパーキングギヤに噛合するためのパーキングポールの配置から、パーキングロッドが嵌脱される嵌合穴を有するパーキングポール機構の配置が決定されてしまう。そのため、上記ディテント板とパーキングポール機構との相対位置関係が必ずしもパーキングロッドの配置にとって良好な位置関係であるとは限らず、それらの相対位置関係のために自動変速機を設計し直すよりも、パーキングロッドを屈曲形成した方が安価で容易なものとなる。
【0006】
更に、上記ディテント板とパーキングポール機構との配置位置の間に、自動変速機として重要な部位が配置される場合もあり、その部位にパーキングロッドが干渉することを防ぐためにも、該パーキングロッドを屈曲形成する必要が生じることがある。
【0007】
また一方では、近年の自動変速機のコンパクト化に対する要望から、上記ディテント板とパーキングポール機構との距離を短縮し、即ちパーキングロッドを短縮することが望まれている。
【0008】
しかしながら、上記ウエッジがパーキングポール機構に嵌合していない場合(即ちPレンジ以外)には、パーキングロッドは何れのものにも嵌合してなく、該パーキングロッドの先端部分が上記パーキングポール機構の嵌合穴に引っ掛っているとしても、その範囲内において該パーキングロッドが首振りしてしまう。そのため、特にパーキングロッドを短縮した場合はその首振りの角度が大きくなり、上述したカシメ部分の角度によっては、該カシメ部分に負荷が生じてしまう虞があった。更に、上述のようにパーキングロッドが屈曲形成されている場合には、該パーキングロッドのディテント板に取付けられる取付軸部と、該取付軸部より延設される本体軸部の角度が、必ずしもウエッジの方向に向く角度であるとは限らず、単に本体軸部を延設した方向に垂直にカシメ部分を形成しても、首振り方向に対して垂直にならずに、それによって該カシメ部分に負荷が生じてしまう虞があった。
【0009】
そこで本発明は、パーキングロッドが屈曲形成され、かつ短縮化されているものであっても、突出部に負荷が生じないようにすることが可能なパーキング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明は、シフトレバーの操作に基づき回動されると共に、回動方向(X−Y方向)に垂直に穿設された取付孔(15)を有するディテント板(13)と、
前記ディテント板(13)の取付孔(15)に回動自在に貫通挿入される軸状の取付軸部(21a)と、前記回動方向に沿うように前記取付軸部(21a)に対して屈曲して延設され、少なくとも1箇所が屈曲形成された軸状の本体軸部(21b,21c)と、前記取付孔(15)の両側開口部の近傍にて前記取付軸部(21a)の外周部から放射方向直線(CT1,CT2)上に向けて4箇所に突出させた突出部(22a,22b,22c,22d)と、を有し、前記突出部(22a,22b,22c,22d)によって前記ディテント板(13)を挟持して該ディテント板(13)に取付けられたパーキングロッド(21)と、
前記本体軸部(21b,21c)に軸方向摺動自在に配設され、付勢部材(26)により前記取付軸部(21a)とは軸方向反対側に付勢されたウエッジ(23)と、
前記ディテント板(13)の回動及び前記付勢部材(26)の付勢力に基づいて前記ウエッジ(23)が嵌脱自在な穴部(36)と、前記ウエッジ(23)が嵌入された際に、該ウエッジ(23)により押圧駆動されてパーキングギヤ(34)に噛合するパーキングポール(22)と、を有するパーキングポール機構(30)と、を備え、
前記ウエッジ(23)が前記パーキングポール機構(30)の穴部(36)に嵌脱される毎に、前記取付軸部(21a)と前記取付孔(15)との取付部分を支点(Z)として前記パーキングロッド(21)が少なくとも前記ディテント板(13)の回動方向(X−Y方向)を含む面(S1)に対して首振りするパーキング装置(1)において、
前記取付軸部(21a)の外周部から放射方向に向けて突出させる前記突出部(22a,22b,22c,22d)の方向が、前記ウエッジ(23)の前記パーキングポール(32)に嵌合する部分の中心(P1)と前記取付軸部(21a)の軸中心(a)とを結ぶ直線方向(d)に対して垂直な方向(d’)を中心に所定角度(例えばθ6)範囲内の方向となるように、前記突出部(22a,22b,22c,22d)を形成した、
ことを特徴とするパーキング装置(1)にある。
【0011】
請求項2に係る本発明は、前記突出部(22a,22b,22c,22d)を形成する所定角度範囲内の方向は、前記ウエッジ(23)の軸方向一端の中心(P2)と前記取付軸部(21a)の軸中心(a)とを結ぶ直線方向(e)に対して垂直な方向(e’)から、前記ウエッジ(23)の軸方向他端の中心(P3)と前記取付軸部(21a)の軸中心(a)とを結ぶ直線方向(f)に対して垂直な方向(f’)まで、の角度範囲内(例えばθ5)の方向である、
ことを特徴とする請求項1記載のパーキング装置(1)にある。
【0012】
請求項3に係る本発明は、前記突出部(22a,22b,22c,22d)は、カシメにより形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のパーキング装置(1)にある。
【0013】
請求項4に係る本発明は、シフトレバーの操作に基づき回動されると共に、回動方向(X−Y方向)に垂直に穿設された取付孔(15)を有するディテント板(13)と、
前記ディテント板(13)の取付孔(15)に回動自在に貫通挿入される軸状の取付軸部(21a)と、前記回動方向に沿うように前記取付軸部(21a)に対して屈曲して延設され、少なくとも1箇所が屈曲形成された軸状の本体軸部(21b,21c)と、前記取付孔(15)の両側開口部の近傍にて前記取付軸部(21a)の外周部から放射方向直線(CT1,CT2)上に向けて4箇所に突出させた突出部(22a,22b,22c,22d)と、を有し、前記突出部(22a,22b,22c,22d)によって前記ディテント板(13)を挟持して該ディテント板(13)に取付けられたパーキングロッド(21)と、
前記本体軸部(21b,21c)に軸方向摺動自在に配設され、付勢部材(26)により前記取付軸部(21a)とは軸方向反対側に付勢されたウエッジ(23)と、
前記ディテント板(13)の回動及び前記付勢部材(26)の付勢力に基づいて前記ウエッジ(23)が嵌脱自在な穴部(36)と、前記ウエッジ(23)が嵌入された際に、該ウエッジ(23)により押圧駆動されてパーキングギヤ(34)に噛合するパーキングポール(22)と、を有するパーキングポール機構(30)と、を備え、
前記ウエッジ(23)が前記パーキングポール機構(30)の穴部(36)に嵌脱される毎に、前記取付軸部(21a)と前記取付孔(15)との取付部分を支点(Z)として前記パーキングロッド(21)が少なくとも前記ディテント板(13)の回動方向(X−Y方向)を含む面(S1)に対して首振りするパーキング装置(1)において、
前記取付軸部(21a)の外周部から放射方向に向けて突出させる前記突出部(22a,22b,22c,22d)の方向が、前記パーキングロッド(21)の首振りする方向(Q−R方向)を含む面に対して略垂直な方向(d’)となるように、前記突出部(22a,22b,22c,22d)を形成した、
ことを特徴とするパーキング装置(1)にある。
【0014】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によると、取付軸部の外周部から放射方向に向けて突出させる突出部の方向が、ウエッジのパーキングポールに嵌合する部分の中心と取付軸部の軸中心とを結ぶ直線方向に対して垂直な方向を中心に所定角度範囲内の方向となるように、突出部を形成したので、突出部に生じる負荷が許容範囲内となるようにすることができて、突出部の耐久性を向上することができ、それによってパーキング装置の耐久性向上を図ることができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によると、突出部を形成する所定角度範囲内の方向は、ウエッジの軸方向一端の中心と取付軸部の軸中心とを結ぶ直線方向に対して垂直な方向からウエッジの軸方向他端の中心と取付軸部の軸中心とを結ぶ直線方向に対して垂直な方向までの角度範囲内であるので、突出部に生じる負荷がより許容範囲内となるようにすることができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、突出部を、カシメにより形成することができるので、容易にパーキング装置を製造することができると共に、コストダウンを図ることができる。
【0018】
請求項4に係る本発明によると、取付軸部の外周部から放射方向に向けて突出させる突出部の方向が、パーキングロッドの首振りする方向を含む面に対して略垂直な方向となるように、突出部を形成したので、突出部に生じる負荷が許容範囲内となるようにすることができて、突出部の耐久性を向上することができ、それによってパーキング装置の耐久性向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を図に沿って説明する。図1はPレンジである際のパーキング装置を示す図で、(a)は上方視図、(b)は(a)のB矢視図、(c)は(b)のC矢視図、図2はDレンジである際のパーキング装置を示す図で、(a)は上方視図、(b)は(a)のB矢視図、(c)は(b)のC矢視図、図3は本発明に係るパーキングロッドを示す図で、(a)は上方視図、(b)は側方視図、図4はカシメ部分の角度範囲を説明する説明図、図5はカシメ部分に生じる負荷の許容範囲を示す図、図6はカシメ部分に負荷が生じるパーキングロッドを示す図で、(a)は上方視図、(b)は側方視図である。
【0020】
例えば車輌等に搭載される自動変速機やハイブリッド駆動装置等は、不図示の変速歯車機構、油圧制御装置(或いはモータジェネレータ)などを備えており、それらを内包するケース40を備えている。また、該ケース40内において、駆動車輪に接続された自動変速機又はハイブリッド駆動装置の出力軸上には、パーキングギヤ34が備えられている。
【0021】
本発明に係るパーキング装置1は、図1(a)乃至(c)に示すように、ディテント部10、パーキングロッド部20、パーキングポール機構30を備えて構成されており、該ディテント部10は、例えば上記油圧制御装置のシフトポジションを変更するマニュアルバルブに対応した、ケース40の所定の部位に配置されている。また、該パーキングポール機構部30は、詳しくは後述する上記パーキングギヤ34に噛合するパーキングポール32を有しており、該パーキングギヤ34に対応した、ケース40の所定の部位に配置されている。
【0022】
つづいて、本パーキング装置1を図に沿って詳細に説明する。上記ディテント部10には、例えば不図示の運転席等に備えられているシフトレバーに(機械的或いは電気的に)駆動連結され、該シフトレバーの選択位置に基づき回動されるマニュアルシャフト11が備えられており、該マニュアルシャフト11の外周側にはキー19a,19bにより回転不能に嵌合されたスリーブ12が備えられている。そして、このスリーブ12の外周側には、キー12aにより回転不能に固定されたディテント板13が配設されている。
【0023】
上記ディテント板13は、図1(a)に示すように、外周側にそれぞれシフトポジションに対応した穴部13P,13R,13N,13D,13Sを有しており、それら穴部13P,13R,13N,13D,13Sには、例えばケース40に取付けられたディテントレバー14が弾性的に付勢されて係着されている。即ち、不図示のシフトレバーの選択位置が、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ、S(セカンド)レンジにそれぞれ選択されると、上記マニュアルシャフト11が矢印X−Y方向に回動駆動され、ディテント板13が回動面S1に沿って矢印X−Y方向(回動方向)に回動駆動されて、ディテントレバー14が順に穴部13P,13R,13N,13D,13Sに係着することで、ディテント板13の回動角度が位置決めされる。
【0024】
また、上記ディテント板13の放射方向の略々中間部分には、該ディテント板13を貫通するように取付孔15が穿設されている。該取付孔15は、後述するパーキングロッド21の取付軸部21aが貫通挿入されて取付けられる形状に形成されており、即ち、製造組付け時に、詳しくは後述するカシメ部分22c,22dが通過する溝部15a,15bを有すると共に、上記取付軸部21aの外径に合わせた内径を有するように形成されている。
【0025】
上記パーキングロッド部20は、取付軸部21a、第1本体軸部21b、及び第2本体軸部21cからなるパーキングロッド21と、該パーキングロッド21に摺動自在に配設されたウエッジ23と、該ウエッジ23を付勢するバネ(付勢部材)26と、該ウエッジ23の抜け止めとなる抜け止め部材25と、該バネ26の反力を受圧する突起部27a,27bとから構成されている。
【0026】
パーキングロッド21は、図1(b)に示すように、上記ディテント板13の取付孔15に挿入される取付軸部21aが、軸中心aを中心として軸状に形成されており、該取付軸部21aに対して略直角な角度θ2で第1本体軸部21b及び第2本体軸部21cが、取付軸部21aより延設される形で軸心b及び軸心cを中心として軸状に形成されている。第1本体軸部21b及び第2本体軸部21cは、図1(a)に示すように、軸心bと軸心cとの交点部分において、角度θ1で屈曲形成されており、これによって、上記ディテント板10の取付孔15と詳しくは後述するパーキングポール部30の嵌合穴36との位置合わせが成されている。
【0027】
上記第2本体軸部21cには、先端部分に冠状の抜け止め部材25が固着されており、該抜け止め部材25に抜け止めされる形でウエッジ23が摺動自在に配設されている。また、ウエッジ23と上述の突起部27a,27bとの間には、上記バネ26が縮設されており、つまりウエッジ23は、矢印W方向に常時付勢されている。該ウエッジ23は、上記抜け止め部材25と略同じ外径を有するスリーブ部23cと、該スリーブ部23cより外径側に広がり、比較的大きな傾斜を有する第1テーパ部23bと、該第1テーパ部23bより外径側に広がり、比較的小さな傾斜を有する第2テーパ部23aとを備えて構成されている。
【0028】
上記パーキングポール機構30は、上記パーキングポール21及びウエッジ23が挿入・嵌合される嵌合穴36を形成する嵌合部31と、図1(c)に示すように、支持軸33に対して回動自在に取付けられたパーキングポール32とを備えて構成されている。
【0029】
嵌合部31は、図1(a)乃至(c)に示すように、嵌合穴36を形成する略々環状の嵌合部本体31aと、該嵌合部本体31aに一体的に固着されたフランジ部31b,31cより構成されている。嵌合部本体31aに形成されている嵌合穴36は、概ね上記ウエッジ23の形状に対応する形状に形成されており、ウエッジ23が挿入される際に中心方向に導くテーパ部36aと、ウエッジ23が挿入・嵌合された際にパーキングポール32を押圧駆動するための反力を受圧する受圧部36bとを備えて構成されている。また、嵌合部本体31には、ウエッジ23及びパーキングロッド21が該嵌合穴36に挿入・嵌合された際に、パーキングロッド21の先端部分(及び抜け止め部25、スリーブ部23c)が干渉しないように、逃し穴31eが形成されている。
【0030】
上記フランジ部31b,31cは、図1(c)に示すように、ボルト穴31d,31eを有している。一方、ケース40にも、ボルト穴40a(図2(b)参照)及び不図示のボルト穴が穿設されており、つまり嵌合部31は、ボルト41,42によりケース40に固着される。なお、ケース40にも、上述した逃し穴31eに対応する部分に逃し穴40bが形成されており、ウエッジ23及びパーキングロッド21が該嵌合穴36に挿入・嵌合された際に、パーキングロッド21の先端部分に固着された抜け止め部25が干渉しないようになっている。
【0031】
パーキングポール32は、図1(c)に示すように、ケース40に固定されている支持軸33が挿入される支持穴32bを有しており、矢印K−L方向へ回動自在に取付けられている。該パーキングポール32のパーキングギヤ34側の先端には、パーキングギヤ34の歯34a間に形成される歯溝34bに噛合する歯先32aが形成されている。また、該パーキングポール32の他端側には、上記ウエッジ23が当接する当接面32cが形成されている。なお、該パーキングポール32は、図1(c)中の矢印K方向に向けて、不図示のバネなどによって、常時付勢されている。
【0032】
以上のように構成されているパーキング装置1において、パーキングロッド21の取付軸部21cには、ディテント板13の取付穴15の両側開口付近に位置する部分に、該取付軸部21cの軸心(中心)aより放射方向に向けて外周側に突出するように肉厚部分をカシメて形成された4箇所のカシメ部分22a,22b,22c,22dが備えられており、それら4箇所のカシメ部分(突出部)22a,22b,22c,22dによりディテント板13を挟持することで、パーキングロッド21がディテント板13に取付けられている。
【0033】
つづいて、本パーキング装置1の動作について説明する。上述のシフトレバーがPレンジに選択操作されると、図1(a)乃至(c)に示すように、マニュアルシャフト11の回動駆動によりディテント板13が矢印X−Y方向に回動制御され、ディテントレバー14がディテント板13の穴部13Pに係着することで、該ディテント板13が位置決めされる。
【0034】
すると、ディテント板13の取付穴15に取付けられているパーキングロッド21は、矢印V−W方向に対して位置決めされ、ケース40に固定されている嵌合部30に向けてパーキングロッド21が挿入される。この際、図1(c)に示すパーキングギヤ34の歯34aとパーキングポール32の歯先32aとの位置が重なり、当接した状態であると、パーキングポール34が回動し得ないので、パーキングポール34が図1(b)に示す矢印S方向に動くことはなく、ウエッジ23がバネ26の付勢に反してパーキングロッド21上を矢印V方向に摺動して退避した状態となる。
【0035】
また、例えば駆動車輪が僅かに回転し、図1(c)に示すパーキングギヤ34の歯溝34bとパーキングポール32の歯先32aとの位置が重なって、パーキングポール32がパーキングギヤ34に噛合すると、図1(b)に示すように、パーキングポール34が矢印S方向に動き、ウエッジ23がバネ26の付勢によってパーキングロッド21上を矢印W方向に摺動して、これによってウエッジ23が嵌合穴36に嵌合される。この状態になると、パーキングロッド21が矢印V方向に引き抜かれる以外、ウエッジ23が嵌合穴36より抜脱することはなく、つまりシフトレバーがPレンジ以外に選択操作されるまで、パーキングギヤ34とパーキングポール32とが噛合した状態に維持される。
【0036】
一方、上述のシフトレバーがPレンジからPレンジ以外、例えばDレンジに選択操作されると、図2(a)乃至(c)に示すように、マニュアルシャフト11の回動駆動によりディテント板13が矢印X方向に回動制御され、ディテントレバー14がディテント板13の穴部13Dに係着することで、該ディテント板13が位置決めされる。
【0037】
すると、ディテント板13の取付穴15に取付けられているパーキングロッド21は、矢印V方向に移動したDレンジの位置で位置決めされ、ケース40に固定されている嵌合部30よりパーキングロッド21が引き離される形でウエッジ23が嵌合穴36から抜脱される。すると、パーキングポール34は、不図示のバネなどによって、図2(b)に示す矢印T方向、即ち図2(c)に示す矢印K方向に回動し、パーキングギヤ34とパーキングポール32との噛合が解除された状態となる。
【0038】
この際、パーキングロッド21の先端部分が完全に嵌合穴36より抜脱することはなく、つまり径の小さいスリーブ部23c、抜け止め部25、或いはパーキングロッド21の第2本体軸部21cの先端部分が係合穴36に対して引っかかっている状態となる。しかしながら、パーキングロッド21は、該パーキングロッド21の先端部分が係合穴36に対して引っかかっている範囲内において、図2(a)に示す矢印M−N方向に、また特にディテント板13の回動面S1に対して上下する方向である図2(b)に示す矢印Q−R方向に支点Zを中心に首振りし得る状態となる。
【0039】
ここで、上述した4箇所のカシメ部分22a,22b,22c,22dを形成する方向(角度)、即ちカシメ方向について詳細に説明する。例えば図6(a)に示すように、パーキングロッド21の係合軸部21aの軸中心aと付勢されて最も先端側にあるウエッジ23の中心P1とを結ぶ直線、つまりパーキングロッド21が支点Zを中心に首振りする際の中心線dに対し、カシメ部分22a,22b,22c,22dの中心線CT1’、CT2’の角度θ4が、適宜な角度でないと(図中は例えば約60°)、図6(b)に示すように、パーキングロッド21が矢印Q−R方向に首振りした際に、カシメ部分22a,22b,22c,22dがディテント板13に対して押し付けられ、負荷の応力が生じてしまうため、カシメ部分22a,22b,22c,22dの耐久性に悪影響を与えてしまう虞がある。
【0040】
また特に、図4に示すように、カシメ部分22a,22b,22c,22dを形成する方向を、第1本体軸部21bに対して垂直な方向、即ち軸心bに対して垂直な方向b’としても、パーキングロッド21が首振りする際の中心線dに対して垂直でないため、パーキングロッド21が首振りした際に、カシメ部分22a,22b,22c,22dに負荷の応力が生じて、耐久性に悪影響を与えてしまう虞がある。
【0041】
そこで本発明に係るパーキング装置1においては、図3(a)に示すように、パーキングロッド21が首振りする際の中心線dに対し、カシメ部分22a,22b,22c,22dの中心線CT1、CT2の角度θ4が、図4に示す垂直な方向d’を中心に所定角度範囲内となる方向に、好ましくは略垂直となる方向(即ち、パーキングロッド21が首振りするQ−R方向を含む面に対して略垂直な方向)となるように、カシメ部分22a,22b,22c,22dを形成する。これにより、図3(b)に示すように、パーキングロッド21が矢印Q−R方向に首振りしたとしても、カシメ部分22a,22b,22c,22dが中心線CT1,CT2に対して平行な方向に首振りするため、負荷の応力があまり生じずに、カシメ部分22a,22b,22c,22dの耐久性を向上することができる。
【0042】
ところで、上記パーキングロッド21の首振りする角度は、該パーキングロッド21の長さl(図4参照)によって変化することになる。即ち、嵌合穴36に引っかかっている範囲内で首振りするため、コンパクト化が要求されてパーキングロッド21が短縮化されるほど、その首振り角度が大きくなることになる。これらの関係は、図5に示すように、従来のパーキングロッドの長さ(例えば200mm)に比して本発明のようにコンパクト化が要求されて短縮化されたパーキングロッドの長さ(例えば120mm〜50mm)となると、上記パーキングロッド21が首振りする際の中心線dに対して垂直な角度を中心に、図中θ6で示す角度範囲内(例えば80°〜100°)となる。つまり上述の垂直な方向d’を中心に所定角度範囲内が、パーキングロッド21の長さlによって決まる角度範囲θ6以内であれば、負荷として許容範囲内となり、カシメ部分22a,22b,22c,22dの耐久性に悪影響を与えてしまうことを防ぐことができる。
【0043】
また、上述したようにカシメ部分22a,22b,22c,22dの角度が角度範囲θ6以内であれば耐久性として足りるが、実際のパーキングロッド21の取付軸部21aをカシメてカシメ部分22a,22b,22c,22dを形成する際には、パーキングロッド21の部位に対して(つまり目標として)角度を決めることが好ましい。そこで、図4に示すように、ウエッジ23の一端の中心P2とウエッジ23の他端の中心P3とに対し、垂直な角度範囲θ5以内であればよい。即ち、カシメ部分22a,22b,22c,22dを形成する方向を、ウエッジ23の一端の中心P2と取付軸部21aの軸中心aとを結ぶ直線eに対して垂直な方向e’から、ウエッジ23の他端の中心P3と取付軸部21aの軸中心aとを結ぶ直線fに対して垂直な方向f’までの間の方向(概ね2°)にすることで、必ずパーキングロッド21が首振りする際の中心線dに対して垂直な方向d’を含む角度範囲内で、かつ図5に示すように上記耐久性として足りる角度範囲θ6以内に、カシメ部分22a,22b,22c,22dを形成することができる。
【0044】
以上のように本発明に係るパーキング装置1によると、取付軸部21aの外周部から放射方向に向けて突出させるカシメ部分22a,22b,22c,22dの方向が、ウエッジ23のパーキングポール32に嵌合する部分の中心P1と取付軸部21aの軸中心aとを結ぶ直線方向dに対して垂直な方向d’を中心に所定角度θ6の範囲内の方向となるように、カシメ部分22a,22b,22c,22dを形成したので、カシメ部分22a,22b,22c,22dに生じる負荷が許容範囲内となるようにすることができて、カシメ部分22a,22b,22c,22dの耐久性を向上することができ、それによってパーキング装置1の耐久性向上を図ることができる。
【0045】
更に、カシメ部分22a,22b,22c,22dの負荷が許容範囲内となる方向は、ウエッジ23の軸方向一端の中心P2と取付軸部21aの軸中心aとを結ぶ直線方向eに対して垂直な方向e’からウエッジ23の軸方向他端の中心P3と取付軸部21aの軸中心aとを結ぶ直線方向fに対して垂直な方向f’までの角度範囲θ5内であるので、カシメ部分22a,22b,22c,22dに生じる負荷が許容範囲内となるようにすることができる。
【0046】
また、カシメ部分22a,22b,22c,22dは、カシメにより簡単に形成することができるので、容易にパーキング装置1を製造することができると共に、コストダウンを図ることができる。
【0047】
また、取付軸部21aの外周部から放射方向に向けて突出させるカシメ部分22a,22b,22c,22dの方向が、パーキングロッド21の首振りする方向であるQ−R方向を含む面に対して略垂直な方向d’となるように、カシメ部分22a,22b,22c,22dを形成したので、カシメ部分22a,22b,22c,22dに生じる負荷が許容範囲内となるようにすることができて、カシメ部分22a,22b,22c,22dの耐久性を向上することができ、それによってパーキング装置1の耐久性向上を図ることができる。
【0048】
なお、以上説明した本発明に係る実施の形態において、パーキング装置1は、ディテント板13の回動位置によって、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ、Sレンジを切り換えるものを一例に説明したが、これに限らず、走行レンジの数はどのような数であってもよく(例えばSレンジがないものや、反対にLレンジがあるものなど)、更に、走行レンジがなく、単にPレンジとNレンジとを切り換えるだけのものであっても、本発明を適用することができる。
【0049】
また、本実施の形態においては、パーキングロッド21の本体軸部が1箇所だけ屈曲形成されているものを一例に説明したが、これに限らず、パーキングロッド21が複数箇所で屈曲形成されたもの、つまり複雑な形状となっているものであってもよい。
【0050】
更に、本実施の形態においては、パーキングロッド21の取付軸部21aの外周部の肉厚部分をカシメてカシメ部分22a,22b,22c,22dを形成するものについて説明したが、これに限らず、取付軸部21aの外周部分より放射方向に突出して形成され、ディテント板13を挟持するものであれば、どのように形成されたものであってもよい。
【0051】
また、本実施の形態において、本発明に係るパーキング装置1は、自動変速機やハイブリッド駆動装置等に搭載されるものとして説明したが、これら自動変速機やハイブリッド駆動装置は、例えば有段変速式の自動変速機、無段変速式の自動変速機(いわゆるCVT)、スプリット式のハイブリッド駆動装置、パラレル式のハイブリッド駆動装置、シリーズ式のハイブリッド駆動装置など、どのようなものであっても本発明のパーキング装置1を適用可能である。更に、これらに限らず、例えば電気自動車などのように、変速機の有無に拘らずパーキング装置を備えているものであれば、どのようなものであっても本発明のパーキング装置1を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】Pレンジである際のパーキング装置を示す図で、(a)は上方視図、(b)は(a)のB矢視図、(c)は(b)のC矢視図。
【図2】Dレンジである際のパーキング装置を示す図で、(a)は上方視図、(b)は(a)のB矢視図、(c)は(b)のC矢視図。
【図3】本発明に係るパーキングロッドを示す図で、(a)は上方視図、(b)は側方視図。
【図4】カシメ部分の角度範囲を説明する説明図。
【図5】カシメ部分に生じる負荷の許容範囲を示す図。
【図6】カシメ部分に負荷が生じるパーキングロッドを示す図で、(a)は上方視図、(b)は側方視図。
【符号の説明】
【0053】
1 パーキング装置
13 ディテント板
15 取付孔
21 パーキングロッド
21a 取付軸部
21b 本体軸部(第1本体軸部)
21c 本体軸部(第2本体軸部)
22 パーキングポール
22a 突出部(カシメ部分)
22b 突出部(カシメ部分)
22c 突出部(カシメ部分)
22d 突出部(カシメ部分)
23 ウエッジ
26 付勢部材(バネ)
30 パーキングポール機構
34 パーキングギヤ
36 穴部(嵌合穴)
P1 ウエッジの中心
P2 ウエッジの軸方向一端の中心
P3 ウエッジの軸方向他端の中心
S1 回動方向(回動面)
Z 支点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーの操作に基づき回動されると共に、回動方向に垂直に穿設された取付孔を有するディテント板と、
前記ディテント板の取付孔に回動自在に貫通挿入される軸状の取付軸部と、前記回動方向に沿うように前記取付軸部に対して屈曲して延設され、少なくとも1箇所が屈曲形成された軸状の本体軸部と、前記取付孔の両側開口部の近傍にて前記取付軸部の外周部から放射方向直線上に向けて4箇所に突出させた突出部と、を有し、前記突出部によって前記ディテント板を挟持して該ディテント板に取付けられたパーキングロッドと、
前記本体軸部に軸方向摺動自在に配設され、付勢部材により前記取付軸部とは軸方向反対側に付勢されたウエッジと、
前記ディテント板の回動及び前記付勢部材の付勢力に基づいて前記ウエッジが嵌脱自在な穴部と、前記ウエッジが嵌入された際に、該ウエッジにより押圧駆動されてパーキングギヤに噛合するパーキングポールと、を有するパーキングポール機構と、を備え、
前記ウエッジが前記パーキングポール機構の穴部に嵌脱される毎に、前記取付軸部と前記取付孔との取付部分を支点として前記パーキングロッドが少なくとも前記ディテント板の回動方向を含む面に対して首振りするパーキング装置において、
前記取付軸部の外周部から放射方向に向けて突出させる前記突出部の方向が、前記ウエッジの前記パーキングポールに嵌合する部分の中心と前記取付軸部の軸中心とを結ぶ直線方向に対して垂直な方向を中心に所定角度範囲内の方向となるように、前記突出部を形成した、
ことを特徴とするパーキング装置。
【請求項2】
前記突出部を形成する所定角度範囲内の方向は、前記ウエッジの軸方向一端の中心と前記取付軸部の軸中心とを結ぶ直線方向に対して垂直な方向から、前記ウエッジの軸方向他端の中心と前記取付軸部の軸中心とを結ぶ直線方向に対して垂直な方向まで、の角度範囲内の方向である、
ことを特徴とする請求項1記載のパーキング装置。
【請求項3】
前記突出部は、カシメにより形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のパーキング装置。
【請求項4】
シフトレバーの操作に基づき回動されると共に、回動方向に垂直に穿設された取付孔を有するディテント板と、
前記ディテント板の取付孔に回動自在に貫通挿入される軸状の取付軸部と、前記回動方向に沿うように前記取付軸部に対して屈曲して延設され、少なくとも1箇所が屈曲形成された軸状の本体軸部と、前記取付孔の両側開口部の近傍にて前記取付軸部の外周部から放射方向直線上に向けて4箇所に突出させた突出部と、を有し、前記突出部によって前記ディテント板を挟持して該ディテント板に取付けられたパーキングロッドと、
前記本体軸部に軸方向摺動自在に配設され、付勢部材により前記取付軸部とは軸方向反対側に付勢されたウエッジと、
前記ディテント板の回動及び前記付勢部材の付勢力に基づいて前記ウエッジが嵌脱自在な穴部と、前記ウエッジが嵌入された際に、該ウエッジにより押圧駆動されてパーキングギヤに噛合するパーキングポールと、を有するパーキングポール機構と、を備え、
前記ウエッジが前記パーキングポール機構の穴部に嵌脱される毎に、前記取付軸部と前記取付孔との取付部分を支点として前記パーキングロッドが少なくとも前記ディテント板の回動方向を含む面に対して首振りするパーキング装置において、
前記取付軸部の外周部から放射方向に向けて突出させる前記突出部の方向が、前記パーキングロッドの首振りする方向を含む面に対して略垂直な方向となるように、前記突出部を形成した、
ことを特徴とするパーキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−168586(P2006−168586A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365103(P2004−365103)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】