説明

パーツの偏差の自動的画像化方法

本発明の実施形態は、パーツ上に偏差の画像を表示する方法に関する。当該パーツはスキャンすることができる。当該パーツ上の偏差の位置が特定される。偏差の画像を当該パーツ上に表示することができる。他の実施形態では、一以上の表面上にパーツの偏差の画像が表示されるパーツが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
超音波、渦電流、X線、磁気共鳴、及びマイクロ派といった多岐に亘る非破壊評価方法(非破壊検査NDI)を利用して製造後のパーツの検査が行なわれており、これらパーツには、金属パーツ及び/又は複合パーツ及び/又はセラミック製パーツ、或いは他の種類のパーツが含まれる。このような評価を行うために、水性のガントリー式システムと携帯可能な機器の両方が使用されている。従来技術による方法の一部においては、製造後のパーツをスキャンし、次いで当該パーツの実寸大の図面、又は偏差領域をプリントアウトし、それをパーツ上に位置を合わせて重ねることで、当該パーツの偏差を修繕する。印刷された図の偏差を含む領域を切り出して、パーツ上に偏差をトレースすることがある。他の方法では、印刷した図を透明なマイラーシートに重ねることにより、マイラー上に全ての偏差の輪郭をトレースし、次いでそのマイラーシートをパーツ上に置いてパーツ上に偏差部分をトレースすることにより、偏差の修繕を行う。これらの方法の一又は複数は、コストが高い、長時間を要する、実行が困難である、不十分である、一貫性が無い、エラーを生じ易い、再現性が無い、及び/又は他の種類の問題を引き起こす。
従来技術による方法の一又は複数に関連する一又は複数の問題を解決できる検査工程が必要とされている。
【発明の概要】
【0002】
本発明の一態様では、パーツ上に偏差の画像を表示する方法が提供される。一ステップにおいて、パーツを偏差についてスキャンする(NDI)。別のステップでは、パーツ上の偏差の位置を特定する。また別のステップでは、偏差の画像をパーツ上に表示する。
本発明の別の態様では、パーツ上に偏差の画像を表示する別の方法が提供される。一ステップでは、パーツ上に位置する基準点の位置を決定する。別のステップでは、少なくとも一つの非破壊装置を利用して偏差についてパーツをスキャンする。また別のステップでは、パーツ内及び/又はパーツ上の偏差の位置を特定する。また別のステップでは、偏差の画像をパーツ上に表示する。
【0003】
本発明の更なる態様では、偏差のレーザ画像がその上に表示されるパーツが提供される。このパーツは非破壊的にスキャンされたもので(NDI)、偏差の位置が特定されている。偏差の座標は、パーツ上にレーザ画像を表示するレーザ投影装置に供給される。
本発明に関する上記の及びその他の特徴、態様及び利点は、添付図面、後述の説明、及び請求の範囲によって更に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】本発明の一実施形態による、パーツ上に偏差の画像を表示する方法のフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態による、パーツ上に位置する偏差と、パーツ上に表示される偏差の画像の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
後述の詳細な説明は、本発明の実施形態を実行するのに現在考慮可能なベストモードに関する。本発明はなんら限定的な意味を持たず、単に本発明の実施形態の一般的原理の説明を目的とするものであり、本実施形態の範囲は請求の範囲に最もよく規定されている。
【0006】
図1に示すように、本方法の一実施形態では、パーツ、コンポーネント、又は構造上に偏差の画像を表示する方法10が提供される。本方法は、自動化することができ、及び/又は、例えば、限定しないが、ソフトウェア及び/又は一又は複数のコンピュータのようなハードウェアを利用することができる。パーツは、限定しないが、航空機、自動車、バス、列車、船舶又は人工衛星のパーツといった輸送手段のパーツを含みうる。他の実施形態では、パーツには、金属材料及び/又は複合材料及び/又はセラミック材料からなる非航空関連パーツを含め、あらゆる種類のパーツが含まれる。本明細書を通して、適切な文脈で使用される「偏差」という用語は、試験下で(及び、限定しないが、温度による荷重、湿気、ガルバニック作用、構造による荷重、落雷、又はアーク放電を含む要因に曝されることにより影響を受けた可能性がある)測定される複合構造の一又は複数の特徴と、それら要因への露出による影響を受けていない類似の複合構造の同じ特徴に予想される値の間の差異を意味する。
【0007】
図1及び2に示すように、ステップ12では、パーツ15上に位置する基準点13の位置を決定することができる。一実施形態では、パーツ上に6つまでの基準点13を配置することができる。図は、6つの基準点13を示す。基準点13は、限定しないが、パーツ上の様々な位置に分散した反射標的及び/又は反射テープなどの反射マーカーを含むことができる。これらの位置は予め決定してもしなくてもよい。他の実施形態では、あらゆる数、種類、構造、大きさ、及び/又は位置の基準点13を使用することができる。パーツ15上における基準点13の位置の決定は、限定しないが写真測定装置等の発光装置17、及び/又は限定しないがレーザトラッカー等のレーザ放射装置19を利用して行うことができる。これらの装置は標準点13に光及び/又はレーザ光線を反射させることができる。次いで、反射された光及び/又はレーザ光線の位置、形状、及び/又は大きさを決定することにより、パーツ上の基準点の位置を決定することができる。一実施形態では、パーツ15上における基準点13の位置の決定は、限定しないがプリンタを含む、従来技術に既知のあらゆる種類の装置を利用して行うことができる。
【0008】
ステップ14では、偏差についてパーツ15をスキャンすることができる(非破壊検査NDI)。パーツ15は、従来技術に既知のあらゆる種類の非破壊スキャン装置21を利用してスキャンすることができ、これには、限定しないが、超音波スキャン装置、赤外線スキャン装置、磁気共鳴スキャン装置、又はX線スキャン装置の使用が含まれる。パーツのスキャンは、基準点が位置しうるパーツの位置を含め、パーツ全体の超音波画像の取得を含みうる。このようにして、パーツの形状及び/又は深さに関する画像、データ、及び/又は情報を取得することができる。他の実施形態では、パーツのスキャンはパーツの特定の領域、及び/又はパーツに関する他の情報のみを含むことができる。
【0009】
ステップ16では、パーツ15の偏差23を決定することができる。このステップは、パーツ15上における一又は複数の偏差23の、座標X、Y、及びZの位置のうちの一又は複数を決定することができる。いずれの偏差の位置も、パーツのスキャンに基づいて得られたデータ及び/又は情報を、既知の位置基準点の位置と比較することにより決定することができる。これは、限定しないが、一又は複数のコンピュータ及び/又はソフトウェアを利用して行うことができる。このようにして、パーツ上の偏差の正確な位置及び/又は形状を決定することができる。
【0010】
ステップ18では、偏差23の画像25をパーツ15上に表示することができる。このステップは、レーザ投影装置27を利用して、偏差の位置座標データをレーザ投影装置が読めるデータに変換することにより行うことができる。他の実施形態では、従来技術に既知のあらゆる種類の装置を利用して、パーツ上に偏差画像を表示することができ、これは例えば、限定しないが、パーツ15上に画像25を描画する及び/又は印刷することである。
レーザ投影装置27は、パーツ15上に既知の基準点13を配置することによりパーツ15上に画像25を表示し、続いて既知の標準点13に対して画像25を表示することができる。このようにして、画像25を、パーツ15上のほぼ正確な位置に表示することができる。他の実施形態では、限定しないが、プロッタ及び/又はプリンタといったパーツ上に画像25を配置する様々な方法を利用して、パーツ15上に画像25を表示又は印刷することができる。
【0011】
ステップ20では、パーツ15上に表示された偏差の画像25を利用して、偏差の性質を更によく理解することができる。パーツ上へ画像25を投影することにより、人はパーツが偏差を有する位置を視覚により確認することができ、及び/又は機械によりその位置を定量化することができる。これは、例を数個挙げると、必要な偏差のトリミングを助け、組積の位置決め及びサイジング、及び/又は新規又は追加の層のサイジングをやり直す。これにより、これまでより容易に、及び/又は人の介入を減らして、分析及びパーツ上での作業にかかる時間を短縮し、一貫性を向上させ、エラーを低減することができ、及び/又は一又は複数の従来技術による方法の一又は複数の問題を低減することができる。
【0012】
また別の実施形態では、一又は複数の表面に偏差のレーザ画像が表示されるパーツが提供される。このパーツは、超音波スキャン等の非破壊スキャンを受けていてよく、偏差の位置はこの非破壊検査に基づいて決定されたものであってよい。偏差位置の座標が、パーツ上に偏差のレーザ画像を表示するレーザ投影装置に供給されていてよい。パーツは、航空機、宇宙船、及び/又は非航空産業用のパーツ等の他の種類のパーツのための、金属材料及び/又は複合材料及び/又はセラミック材料から作製されていてもよい。パーツは、表示された偏差レーザ画像に基づいて修繕されたものでよい。
【0013】
当然ながら、上述の説明は本発明の例示的実施形態に関するものであり、請求の範囲に規定される本発明の理念及び範囲を逸脱することなく変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーツをスキャンするステップ、
前記パーツ上の偏差の位置を決定するステップ、及び
前記偏差の画像を前記パーツ上に表示するステップ
を含む、パーツ上に偏差の画像を表示する方法。
【請求項2】
前記パーツが航空機及び宇宙船のうちの少なくとも一方のためのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パーツをスキャンするステップにおいて非破壊検査装置を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パーツをスキャンするステップにおいて超音波スキャン装置を利用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パーツ上に位置する基準点の位置を決定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも6つの基準点を利用する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基準点が、反射マーカー及び反射標的のうちの少なくとも一方を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記パーツ上に位置する基準点の位置を決定するステップにおいて発光装置を利用する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記パーツ上に位置する基準点の位置を決定するステップにおいてレーザ放射装置を利用する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記パーツ上の偏差を決定するステップにおいて、前記パーツをスキャンするステップにより得られたデータを利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記パーツ上の偏差を決定するステップにおいて、少なくとも一つのコンピュータを利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記パーツ上の偏差を決定するステップが、前記パーツ上の偏差の位置を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記パーツ上の偏差の位置の決定に、前記パーツ上の不規則な形状を示すスキャンデータに基づいて前記位置を決定するソフトウェアを使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記パーツ上の偏差の位置の決定に、前記パーツ上の不規則な形状を示すスキャンデータに基づいて前記位置を決定するハードウェアを使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記偏差の位置の決定に、前記パーツ上の基準点の位置を利用する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記パーツ上に偏差を表示するステップにおいてレーザ投影装置を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記パーツ上に偏差を表示するステップにおいてプリンタ装置を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記パーツ上に偏差を表示するステップにおいて、前記偏差に関する位置の座標データの、レーザ投影装置が読めるデータへの変換を利用する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記表示された画像を利用して前記パーツを修繕するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
自動化された請求項1に記載の方法。
【請求項21】
パーツ上に位置する基準点の位置を決定するステップ、
非破壊検査装置を利用して前記パーツをスキャンするステップ、
前記パーツ上の偏差の位置を決定するステップ、及び
前記パーツ上に偏差の画像を表示するステップ
を含む、パーツ上に偏差の画像を表示する方法。
【請求項22】
前記パーツをスキャンするステップにおいて超音波装置を利用する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記パーツが航空機及び宇宙船のうちの少なくとも一方のためのものである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記基準点の位置を決定するステップにおいて発光装置を利用する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記基準点の位置を決定するステップにおいてレーザ放射装置を利用する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記パーツ上の偏差の位置を決定するステップは、前記スキャンから得られたデータを前記基準点の位置と比較することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記パーツ上に偏差の画像を表示するステップにおいてレーザ投影装置を利用する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記パーツ上に偏差の画像を表示するステップにおいてプリンタ装置を利用する、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記表示された画像を利用して前記パーツを修繕するステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
自動化された請求項21に記載の方法。
【請求項31】
偏差のレーザ画像が上に表示されるパーツであって、非破壊的にスキャンされており、前記偏差の位置は前記非破壊的スキャンに基づいて決定されており、前記パーツ上に前記レーザ画像を表示するレーザ投影装置に前記偏差の座標が供給される、パーツ。
【請求項32】
航空機及び宇宙船のうちの少なくとも一方のためのものである、請求項31に記載のパーツ。
【請求項33】
前記表示されるレーザ画像に基づいて修繕された、請求項31に記載のパーツ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513938(P2010−513938A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543120(P2009−543120)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/087809
【国際公開番号】WO2008/076989
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】