説明

パーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法

【課題】医薬・農薬の中間体、含フッ素基導入試薬、有機溶媒として有用なパーフルオロアルカンスルホン酸エステルを、従来よりも安価に、穏和な条件で簡便に製造する手段を提供する。
【解決手段】パーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物を環式ヒドロキシル化合物と、塩基の存在下、反応させ、パーフルオロアルカンスルホン酸エステルを製造するにあたって、有機溶媒を使用せず、水を溶媒として共存させる。反応温度は−5℃以上、40℃以下、水の量が、環式ヒドロキシル化合物1gあたり、1g以上、5g以下であることが特に好ましい。本発明の方法によればパーフルオロアルカンスルホン酸エステルが従来よりも高い収率で、穏和な条件で簡便に製造でき、有害な廃棄物を殆ど排出しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬・農薬の中間体、含フッ素基導入試薬、有機溶媒として有用なパーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環式ヒドロキシル化合物をパーフルオロアルカンスルホニル化して得られるパーフルオロアルカンスルホン酸エステルは、医薬・農薬の中間体、含フッ素基導入試薬、有機溶媒として有用である。特に、アリールトリフラートや環状ビニルトリフラートは、非特許文献1などに記載されている通り、種々の変換反応の前駆体として広く用いられており、重要な医薬品を構成する要素ともなっている。
【0003】
これらの化合物を製造する方法に関しては、これまで数多くの文献が報告されている。例えば特許文献1では2−ヒドロキシピリジン類を、非特許文献2ではフェノール類などを、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を用いてトリフルオロメタンスルホニル化(トリフラート化)する例が報告されている。このように、環式ヒドロキシル化合物のパーフルオロアルカンスルホネート化に関して、これまで知られている例の殆どは、トリフラート化である。そしてトリフラート化剤としては主としてトリフルオロメタンスルホン酸無水物が使用されている。
【0004】
トリフルオロメタンスルホン酸無水物以外のトリフラート化剤を使用する例としては、N−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)を用いる例が非特許文献3などに報告されているし、4−ニトロフェニルトリフラートを用いる例が非特許文献4に報告されている。また、イミダゾールトリフラートを使用する例(非特許文献5)、高分子に担持したN−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)誘導体を使用する例(非特許文献6)などが知られている。さらにトリフルオロメタンスルホニルフルオリドを使用して2,2’−ビナフトールをトリフラート化する例を当出願人は特許文献2に報告している。
【0005】
トリフラート化以外のパーフルオロアルカンスルホネート化としては、ノナフルオロブタンスルホニルフルオリドを用いたノナフルオロブタンスルホネート化(ノナフラート化)の例が非特許文献7などに報告されている。
【0006】
ところで、上述したこれらの文献に記載された方法においては、選択率を向上させるため、溶媒として塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒を用いている。非特許文献8には、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を使用し、水とトルエンを溶媒として二層系でトリフラート化を行う例が報告されている。
【特許文献1】国際公開04/078727号公報
【特許文献2】特開2001−122844号公報
【非特許文献1】Synthesis,735頁〜762頁,1993年(ドイツ国)
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society,109巻,5478頁〜5486頁,1987年(米国)
【非特許文献3】Journal of Organic Chemistry,65巻,2368頁〜2378頁,2000年(米国)
【非特許文献4】Tetrahedron Letters,38巻,1181頁〜1182頁,1997年(オランダ国)
【非特許文献5】Tetrahedron Letters,11巻,3947頁〜3948頁,1970年(オランダ国)
【非特許文献6】Organic Letters,2巻,477頁〜480頁,2000年(米国)
【非特許文献7】Synthesis,481頁〜485頁,1984年(ドイツ国)
【非特許文献8】Organic Letters,4巻,4717頁〜4718頁,2002年(米国)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した環式ヒドロキシル化合物をパーフルオロアルカンスルホニル化してパーフルオロアルカンスルホン酸エステルを製造する種々の方法は、実験室などの小規模での製造においては優れた方法であるが、工業的に大量に製造する場合においてはいくつかの問題がある。
【0008】
まず、経済性の問題が挙げられる。一般にパーフルオロアルカンスルホニル化剤として用いられているトリフルオロメタンスルホン酸無水物(特許文献1や非特許文献2)は非常に高価である。また、トリフルオロメタンスルホン酸無水物には二個のトリフルオロメタンスルホニル基があるにもかかわらず、反応に関与するのは一個のみであり、経済的に無駄であるばかりでなく、廃棄物が増加することなり、大量合成に採用するには問題が多い。また、N−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(非特許文献3)、 4−ニトロフェニルトリフラート(非特許文献4)、イミダゾールトリフラート(非特許文献5)、高分子に担持したN−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)誘導体(非特許文献6)などのトリフラート化剤の殆どは、高価なトリフルオロメタンスルホン酸無水物を使用して製造されるものであることから、トリフルオロメタンスルホン酸無水物よりはるかに高価であり、経済的な面での問題は大きい。
【0009】
一般に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物は下記のスキーム1に示すような方法で製造される。
【0010】
【化6】

【0011】
このように、トリフルオロメタンスルホン酸無水物がトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)2分子から製造されるのに対し、トリフルオロメタンスルホニルクロリド(CF3SO2Cl)は1分子から製造されるため安価である。さらにトリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)はトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)の原料であることから、より安価である。従って、経済的な観点からは、トリフルオロメタンスルホン酸無水物よりもトリフルオロメタンスルホニルクロリド(CF3SO2Cl)もしくはトリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)を使用することが好ましい。このような観点から、特許文献2の方法は有用である。しかし、トリフルオロアルカンスルホニルハライドをパーフルオロアルカンスルホニル化剤として用い、良好な反応性が得られた例は、比較的少数しか知られていない。
【0012】
一方で、廃棄物問題に代表される環境の問題も挙げられる。これまで知られているパーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法においては、殆どの場合、好適な溶媒として塩化メチレン、ベンゼン、DMF等が大量に使用されており、これらの有機溶媒(特に塩化メチレンが好まれる)を用いるとき、あるいは、−50℃程度の強い冷却条件下で、副生物の生成が抑制され、高い選択率で目的物を製造できると報告されている。しかし、これらの有機溶媒は環境に与える負荷が大きい。特に、塩化メチレン等のハロゲン系炭化水素は、有害物質として種々の法律で規制されている化合物であり、閉鎖系内で使用する必要があるため、工業的な利用には負担がかかる。また、−50℃もの低温条件で反応することは、大規模での実施には負荷がかかる。
【0013】
特許文献2や非特許文献7の方法は安価なトリフルオロメタンスルホニルフルオリドやノナフルオロブタンスルホニルフルオリドを使用しているものの、DMFや塩化メチレン、エーテルやDME(ジメトキシエタン)中で反応を行っていることに懸念がある。また、非特許文献8の方法は水を溶媒に使用してはいるものの、トルエンを共存させている上に高価なトリフルオロメタンスルホン酸無水物を使用している点に懸念があった。
【0014】
このように、環式ヒドロキシル化合物をパーフルオロアルカンスルホニル化してパーフルオロアルカンスルホン酸エステルを工業的に製造するために、安価で取り扱いの容易なパーフルオロアルカンスルホニル化剤を使用し、かつ環境に負荷のかからない溶媒を使用し、穏和な条件で、副生成物を伴わずにより効率的に実施できる方法の確立が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らはかかる問題点を解決するために、環式ヒドロキシル化合物をパーフルオロアルカンスルホニル化してパーフルオロアルカンスルホン酸エステルを工業的に容易に製造する方法につき、鋭意検討を行った。その結果、式[1]で表されるパーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物に、酸解離定数(pKa)が4〜13の範囲である、式[2]で表される環式ヒドロキシル化合物
【0016】
【化7】

【0017】
(ここで、[A]は1価の脂環基、芳香族環基、もしくは環中に窒素、酸素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を有する複素環基もしくは芳香族複素環基を表す)を、塩基の存在下、反応させ、式[3]で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸エステル
【0018】
【化8】

【0019】
を製造するに際し、該反応を、水を溶媒として共存させ、かつ有機溶媒を共存させないで行うことより、穏和な条件において、短時間で、かつ高い選択率で当該目的物が得られ、しかも副生成物の生成が効果的に抑えられることを見出した。
【0020】
一般に、パーフルオロアルカンスルホニルハライドは、水と塩基の存在下、急速に加水分解する性質を有する。例えばフッ素化スルホニルフルオリドと第三アミンの混合物に水を滴下すると、直ちに対応するスルホン酸が生成することが知られている(特開平8−245546号公報)。さらにCF3CH2SO2Clが水中で加水分解しCF3CH2SO3Hに変換することも知られている(J.Org.Chem.,1981,46、P.3335−3336)。このようなことから、本発明者らは当初、溶媒として水を用いた場合、原料である式[1]で表されるパーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物が、環式アルコールとではなく水と反応し、当該目的物を得ることが困難であることを予測していた。
【0021】
しかしながら、本発明者らは、式[1]で表されるパーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物に対して、塩基の存在下、上記、式[2]で表される環式ヒドロキシル化合物反応させる場合には、加水分解は起こらずに、該パーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物が環式ヒドロキシル化合物と優先的に反応するという、特異な知見を得た。
【0022】
系内に水を共存させ、有機溶媒を使用しない条件では、各試薬が良好に溶解するのみならず、有機溶媒を用いた反応よりも高い選択率で、目的とするパーフルオロアルカンスルホン酸エステルが得られることが判明した。すなわち、本発明で対象とする反応には、副反応として、「環式ハロゲン化物(出発原料である環式ヒドロキシル化合物のヒドロキシル基がClもしくはFで置換された化合物:[A]−X)」の生成が競合する。従来技術の有機溶媒を用いた方法および無溶媒法では、この副反応を制御することが困難であり、収率の低下、後の精製工程の負担増大を招いていた。
【0023】
それに比べ、本発明は、溶媒として水を用い、他に有機溶媒を使用しないことを特徴とする。この条件を採用することにより、該副反応が劇的に減少し、「環式ハロゲン化物の生成を最小限に抑制できることがわかった。
【0024】
さらに、使用する環式ヒドロキシル化合物の種類によっては、生成するパーフルオロアルカンスルホン酸エステルが水に不溶であるため、環式ヒドロキシル化合物をあらかじめ水に溶解させておき、パーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物を逐次添加して目的とするパーフルオロアルカンスルホン酸エステル(非水溶性)を水中で析出させ、反応後濾過のみで簡便に目的物を精製できることも見出した。
【0025】
これらの知見の結果、安価なパーフルオロアルカンスルホニル化剤を使用し、工業的に実施の容易な穏和な条件において、従来技術よりも高い収率で目的物を合成でき、しかも有機溶媒を用いないため、環境に負荷がかからず、廃液処理も容易になり、処理費用も軽減することも可能となった。本発明により、目的とするパーフルオロアルカンスルホン酸エステルが従来よりも格段に安価で、しかも高い生産性で製造できることとなった。
【0026】
本発明者らはさらに、上記、水を共存させるパーフルオロアルカンスルホン酸エステル生成反応が、特定条件下(水の量、温度、界面活性化剤存在下)、特に有利に進行することを見出し、本発明を完成した。
【0027】
すなわち本発明は、次の[発明1]〜[発明8]を骨子とする、4,4,4−トリフルオロブテン酸類の製造方法である。
[発明1]
式[1]で表されるパーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物
n(2n+1)SO2X [1]
(式中、XはFまたはClを表す。nは1〜4の整数を表す。)
と、酸解離定数(pKa)が4〜13の範囲である式[2]で表される環式ヒドロキシル化合物
【0028】
【化9】

【0029】
(ここで、[A]は1価の脂環基、芳香族環基、もしくは環中に窒素、酸素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を有する複素環基もしくは芳香族複素環基を表す。)を、塩基の存在下、反応させ、式[3]で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸エステル
【0030】
【化10】

【0031】
(式中、nと[A]の意味は前記と同じ。)
を製造する方法であって、該反応を、水を溶媒として共存させ、かつ有機溶媒を共存させないで行うことを特徴とする、パーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法。
[発明2]
パーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物が、式[1a]で表されるトリフルオロメタンスルホニルハロゲン化物
CF3SO2X [1a]
(式中、XはFまたはClを意味する。)
であることを特徴とする、発明1に記載の方法。
[発明3]
相間移動触媒を共存させることを特徴とする、発明1または発明2に記載の方法。
[発明4]
相間移動触媒が4級アンモニウム塩であることを特徴とする、発明3に記載の方法。
[発明5]
反応を行う際の温度が−5℃以上、40℃以下であることを特徴とする、発明1乃至発明4の何れかに記載の方法。
[発明6]
水の量が、環式ヒドロキシル化合物1gあたり、1g以上、10g以下であることを特徴とする、発明1乃至発明5の何れかに記載の方法。
[発明7]
環式ヒドロキシル化合物が、式[4]で示されるフェノール類
【0032】
【化11】

【0033】
(式[4]中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。)
であることを特徴とする、発明1乃至発明6の何れかに記載のパーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法。
[発明8]
式[1a]で表されるトリフルオロメタンスルホニルハロゲン化物
CF3SO2X [1a]
(式中、XはFまたはClを意味する。)
と、酸解離定数(pKa)が4〜13である、式[4]で示されるフェノール類
【0034】
【化12】

【0035】
(式[4]中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。)
を塩基の存在下、反応させ、式[3a]で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸エステル
【0036】
【化13】

【0037】
(式[3a]中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。)
を製造する方法であって、該反応を、−5℃以上、40℃以下の温度において、該フェノール類1gあたり1〜10gの水を共存させ、かつ有機溶媒を共存させないで行うことを特徴とする、パーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、医薬・農薬の中間体、含フッ素基導入試薬、有機溶媒として有用なパーフルオロアルカンスルホン酸エステルを簡便に効率良く製造する手段を提供する。本発明の方法によれば、安価なパーフルオロアルカンスルホニル化剤を使用し、副生成物であるハロゲン化炭化水素が生じにくく、有機溶媒を使用しないため生産性がよく、有害物質である塩化メチレン等のハロゲン系炭化水素等の廃棄物も削減できることから、目的物を製造する上で特に有用な方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の出発原料である式[1]で表されるパーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化類は、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、スルホニル基を有し、末端にF原子またはCl原子が結合した酸ハライド化合物である。式[1]で表されるパーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物は具体的にはトリフルオロメタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、ペンタフルオロエタンスルホニルクロリド、ペンタフルオロエタンスルホニルフルオリド、ヘプタフルオロプロパンスルホニルクロリド、ヘプタフルオロプロパンスルホニルフルオリド、ノナフルオロブタンスルホニルクロリド、ノナフルオロブタンスルホニルフルオリドが挙げられる。
【0040】
これらのうち、経済性の観点と、生成物の有用性、水を共存させることでの生産性向上の効果が特に顕著であることからトリフルオロメタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリドが好ましく、トリフルオロメタンスルホニルフルオリドが特に好ましい。
【0041】
本発明の出発原料である環式ヒドロキシル化合物は、ヒドロキシル基の示す酸解離定数(pKa)が4〜13の範囲であれば、特にその構造に制限は無い。ヒドロキシル基を有した脂環式化合物でも良いし、ヒドロキシル基を有した芳香族化合物でも良いし、ヒドロキシル基を有した複素環式化合物もしくは芳香族複素環式化合物でも良い。これらは単環式であっても良いし、縮合多環式であっても、橋かけ環式、スピロ環式であっても良い。また、一般にケトン型で表記される化合物でも、エノール型を経由してパーフルオロアルカンスルホニル化されうるものは本発明の対象に含まれる。これらの中でも、pKaが6〜11の範囲の環状ヒドロキシル化合物は、本発明の対象とする反応の反応性が高いため、特に好ましい。
【0042】
これらの環式ヒドロキシル化合物としては、具体的に下記の化合物が例示される。まず、脂環式化合物としてはジメドン、2−メチルジメドン、2−アセチルジメドン等が挙げられる。芳香族化合物としては、2−アセチルフェノール、3−アセチルフェノール、4−アセチルフェノール、2−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、4−ブロモフェノール、カテコール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−クレゾール、3−クレゾール、4−クレゾール、2−シアノフェノール、3−シアノフェノール、4−シアノフェノール、2,5−ジクロロヒドロキノン、2,3−ジクロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,3−ジフルオロフェノール、2,4−ジフルオロフェノール、2,5−ジフルオロフェノール、2,6−ジフルオロフェノール、3,4−ジフルオロフェノール、3,5−ジフルオロフェノール、2,6−ジメチル−4−シアノフェノール、3,5−ジメチル−4−シアノフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、エウゲノール、2−フルオロフェノール、3−フルオロフェノール、4−フルオロフェノール、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキノン、2’−ヒドロキシアセトフェノン、3’−ヒドロキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノン、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、4−インダノール、5−インダノール、2−ヨードフェノール、3−ヨードフェノール、4−ヨードフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール、4−ニトロフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、フェノール、ピロガロール、レゾルシノール、サリチルアミド、メチルヒドロキノン、2,4,6−トリメチルフェノール、2−(トリフルオロメチル)フェノール、3−(トリフルオロメチル)フェノール、4−(トリフルオロメチル)フェノール、2,3−ビス(トリフルオロメチル)フェノール、2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェノール、2,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノール、2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノール、3,4−ビス(トリフルオロメチル)フェノール、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノール、2−(トリフルオロメトキシ)フェノール、3−(トリフルオロメトキシ)フェノール、4−(トリフルオロメトキシ)フェノール、2,3−ビス(トリフルオロメトキシ)フェノール、2,4−ビス(トリフルオロメトキシ)フェノール、2,5−ビス(トリフルオロメトキシ)フェノール、2,6−ビス(トリフルオロメトキシ)フェノール、3,4−ビス(トリフルオロメトキシ)フェノール、3,5−ビス(トリフルオロメトキシ)フェノール等が挙げられる。複素環式化合物もしくは芳香族複素環式化合物としては、5,5−ジメチルヒダントイン、3,6−ジヒドロキシピリダジン、1,2−ジヒドロ−1−メチル−3,6−ピリダジンジオン、1,2−ジヒドロ−1−(1−メチルエチル)−3,6−ピリダジンジオン、5−ヒドロキシウラシル、1−メチルウラシル、マレイミド、1−メチルキサンチン、3−メチルキサンチン、7−メチルキサンチン、9−メチルキサンチン、1−(1−メチルエチル)キサンチン、3−(1−メチルエチル)キサンチン、7−(1−メチルエチル)キサンチン、9−(1−メチルエチル)キサンチン、フタルイミド、サッカリン、スクシミド、バルビタール、キサンチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
式[1]で表されるパーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物と環式ヒドロキシル化合物の混合比に特別の制限はないが、1:1のモル比での反応であるため、両者を等モル比率(1:1)前後で混合することが好ましい。ただし、一方が他方よりも著しく高価である場合は、高価な試薬を完全に反応に消費させるために、安価な化合物をやや過剰に用いることも差し支えなく、経済的にかえって好ましい場合がある。具体的には、環式ヒドロキシル化合物1モルに対して、パーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物は通常0.5〜5モルであり、0.9〜3モルが好ましく、1〜2モルが特に好ましい。
【0044】
本発明の反応において、水の量は、環式ヒドロキシル化合物1gに対し、通常0.1gから100gの範囲である。ただし、0℃以下(特に−10℃よりも低い温度)にする場合、多量の水を用いると水の固化が起こることがあり、また、生産性が低下するので、通常0.2g〜50gの範囲で用いるのが好ましい。この中でも、環式ヒドロキシル化合物1gあたり水の量が0.5〜20gの範囲であるのが好ましく、1〜10gの範囲が特に好ましい。
【0045】
以上のことから、本発明は、−5℃〜40℃の温度で、かつ、環式ヒドロキシル化合物1gに対し1〜10gの水を添加することは、特に好ましい態様として挙げられる。
【0046】
本発明は、反応を行うにあたって、有機溶媒を共存させないことが1つの特徴である。ここで「有機溶媒」とは、本発明の反応(エステル化反応)に直接関与しない不活性な有機化合物を意味する。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、エチルベンゼン、メシチレン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ナフタレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフランなど、有機溶媒として入手可能なものをいう。なお「有機溶媒を共存させない」とは、実質的にこれらの有機溶媒を系内に存在させないことを意味し、具体的には、環式ヒドロキシル化合物に対して、5重量%以下、好ましくは1重量%以下(さらに好ましくは0.1重量以下)の量をいう。これらの物質を積極的に系内に加えずに反応を実施する限り、「有機溶媒を共存させない」という条件を達成することは容易である。上記「有機溶媒」を存在させずに、「水」を溶媒とすることで、後述の実施例に示すように、高い選択率、収率をもって目的物が合成できる。
【0047】
用いる塩基としては水に1mol・dm-3の濃度で溶解したときのpHが8以上となる強度を有する塩基が好ましい。塩基としてはアンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の第2級アミン、プロピルアミン、ブチルアミン等の第1級アミン等の有機塩基が挙げられる。
【0048】
塩基としては、無機塩基及び有機塩基のいずれも使用できる。塩基として有機塩基を用いる場合、具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の第2級アミン、プロピルアミン、ブチルアミン等の第1級アミン等が挙げられるが、トリエチルアミンのような第3級アミンを用いると、反応が特に円滑に進行する。
【0049】
塩基として無機塩基を用いる場合、具体的にはアンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが使用できる。これらのうち、反応が円滑に進行することから、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムが特に好ましい。本発明の特徴の1つは環境への負荷が少ないということであるので、廃棄物という観点では有機塩基よりもむしろ無機塩基を使用するのが好ましい。
【0050】
塩基の量に特別の制限はないが、パーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物1モルに対して、通常0.9〜10モルであり、1〜5モルであることが好ましく、1〜2モルであることがさらに好ましい。塩基が0.9モルより少ないことは、選択率の上では大きな影響はないが、反応変換率が低く、収率の低下につながり、逆に塩基が10モルよりも多いと、経済的に不利になるので、いずれも好ましくない。
【0051】
反応温度(内部の液体の温度)は−20℃〜+90℃の範囲で可能であるが、−10℃〜+50℃が冷却の負荷がかからず、温度制御も容易であるから、好ましい。中でも、−5℃〜40℃の範囲で反応を行うことは、本発明の特に好ましい態様である。−20℃未満であると、反応系中に水を多量に加えると固化することがある上に、温和な条件で反応が進行するという本発明の長所を生かしにくいから、好ましくない。一方、90℃を超えると反応混合物が着色しやすく、副生物も生じやすいから好ましくない。
【0052】
本発明の反応は相間移動触媒の非存在下でも好適に進行するが、相間移動触媒の存在下、反応が促進されることがある。使用可能な相間移動触媒の種類に特別な制限はないが、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジアザ−15−クラウン、ジアザ−18−クラウン等のクラウンエーテル類、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリカプリリルメチルアンモニウムクロリド、トリオクタメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩類、テトラフェニルホスホニウムクロリド、ヨウ化トリフェニルメチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウムクロリド等の4級ホスホニウム塩が好ましく、これらは単独で用いても複数のものを併用しても良い。これらの中でも、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド等のハロゲン化4級アンモニウム塩は、安価であるので特に好ましい。
【0053】
相間移動触媒を使用する場合は、環式ヒドロキシル化合物1モルに対し0.001〜1モル用いることが出来るが、経済性の観点から、0.01〜0.5モル用いることが好ましい。
【0054】
反応は、水溶媒の存在下で、上記環式ヒドロキシル化合物、塩基、相間移動触媒を混合後パーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物を連続的、あるいは逐次的に添加する方が反応温度が制御しやすく好ましい。
【0055】
反応時間には特別な制限はなく、条件によって最適の反応時間は異なるので、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの方法で反応混合物の組成を測定しながら反応を行い、原料の環式ヒドロキシル化合物が十分に減少したことを確認後、終了するのが望ましい。反応圧力には特別な制限はなく常圧下でも加圧下でも反応できる。
【0056】
なお、本反応は空気中でも、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性気体中でも行うことができる。これらの気体の共存によって、反応性、着色などの挙動にほとんど差異が見られないので、通常、空気中で行えばよい。また、反応は攪拌無しでも進行するが、攪拌するのが好ましい。
【0057】
目的とするパーフルオロアルカンスルホン酸エステルが固体の場合、反応の進行に伴って目的物は水溶媒中に析出してくる。液体の場合、反応終了後は目的物の層と水溶媒の層が二層に分離する。従って、パーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物を過剰に用いたり、反応を長時間行ったりするなどして原料である環式ヒドロキシル化合物をほぼ完全に消費した場合(反応変換率にして概ね95%以上)、目的物が固体である場合には濾過によって容易に回収され、液体である場合には分液操作によって容易に回収される。塩基として無機塩基を用いた場合には濾液もしくは水層として分離される水中には殆ど有機物が含まれず、容易に廃棄が出来る。このように、目的物が容易に回収でき、有害で処理困難な廃棄物を産出しないというのが本発明の大きな特徴の1つである。
【0058】
このようにして回収したパーフルオロアルカンスルホン酸エステルは通常そのまま使用が可能であるが、必要に応じて蒸留、再結晶等の精製操作を行うことによりさらに高純度にすることが可能である。
[実施例]
以下に、本発明を実施例を以て説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例1】
【0059】
フェニルトリフルオロメタンスルホネートの製造
攪拌器、圧力計、熱電対、ディップ管を備えたオートクレーブにフェノール5.0g(0.053mol)、炭酸ナトリウム11.3g(0.106mol)および水40.0gを投入し、撹拌しながら冷却した。混合物の内部温度が6℃になってから、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド 10.7g(0.070mol)を2.5時間かけて添加した(その間、反応液の内温は6〜30℃に維持した)。その後、反応液の内温30℃にて2時間、撹拌を継続し、反応を終了した。反応終了後、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、反応液の組成は原料のフェノールが11%であり、フェニルトリフルオロメタンスルホネートが89%であって、環式ハロゲン化物は全く検出されなかった。次いで、水層と粗フェニルトリフルオロメタンスルホネートの相を分離した。有機層を水(10g)で2回洗浄し、目的物を6.2g得た(収率52%)。
【実施例2】
【0060】
フェニルトリフルオロメタンスルホネートの製造
攪拌器、圧力計、熱電対、ディップ管を備えたオートクレーブにフェノール5.0g(0.053mol)、炭酸ナトリウム11.3g(0.106mol)および水40.0gを投入し、撹拌しながら冷却した。混合物の内部温度が6℃になってから、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド 10.9g(0.072mol)を2.5時間かけて添加した(その間、反応液の内温は6〜30℃に維持した)。その後、反応液の内温30℃にて3時間、撹拌を継続し、反応を終了した。反応終了後、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、反応液の組成は原料のフェノールが3%であり、フェニルトリフルオロメタンスルホネートが97%であって、環式ハロゲン化物は全く検出されなかった。次いで、水層と粗フェニルトリフルオロメタンスルホネートの相を分離した。有機層を水(10g)で2回洗浄し、目的物を9.8g得た(収率82%)。
【実施例3】
【0061】
3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルトリフルオロメタンスルホネートの製造
攪拌器、圧力計、熱電対、ディップ管を備えたオートクレーブに3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノール10.1g(0.044mol)、炭酸ナトリウム9.41g(0.088mol)および水80.0gを投入し、撹拌しながら冷却した。混合物の内部温度が6℃になってから、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド 13.4g(0.088mol)を10分間かけて添加した(その間、反応液の内温は6〜20℃に維持した)。その後、反応液の内温28℃にて3.5時間、撹拌を継続し、反応を終了した。反応終了後、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、反応液の組成は原料の3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノールが15%であり、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルトリフルオロメタンスルホネートが85%であって、環式ハロゲン化物は全く検出されなかった。次いで、水層と粗3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルトリフルオロメタンスルホネートの相を分離した。有機層を水(20g)で2回洗浄し、目的物を11.7g得た(収率73%)。
【実施例4】
【0062】
4−(トリフルオロメトキシ)フェニルトリフルオロメタンスルホネートの製造
攪拌器、圧力計、熱電対、ディップ管を備えたオートクレーブに4−(トリフルオロメトキシ)フェノール10.1g(0.056mol)、炭酸ナトリウム11.9g(0.112mol)および水80.0gを投入し、撹拌しながら冷却した。混合物の内部温度が6℃になってから、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド 17.0g(0.112mol)を10分間かけて添加した(その間、反応液の内温は6〜25℃に維持した)。その後、反応液の内温30℃にて3.5時間、撹拌を継続し、反応を終了した。反応終了後、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、反応液の組成は原料の4−(トリフルオロメトキシ)フェノールが11%であり、4−(トリフルオロメトキシ)フェニルトリフルオロメタンスルホネートが89%であって、環式ハロゲン化物は全く検出されなかった。次いで、水層と粗4−(トリフルオロメトキシ)フェニルトリフルオロメタンスルホネートの相を分離した。有機層を水(20g)で2回洗浄し、目的物を12.4g得た(収率71%)。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の方法によれば、パーフルオロアルカンスルホン酸エステルを従来よりも高い収率で製造でき、なおかつ有害な廃棄物を殆ど排出しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]で表されるパーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物
n(2n+1)SO2X [1]
(式中、XはFまたはClを表す。nは1〜4の整数を表す。)
と、酸解離定数(pKa)が4〜13の範囲である式[2]で表される環式ヒドロキシル化合物
【化1】

(ここで、[A]は1価の脂環基、芳香族環基、もしくは環中に窒素、酸素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を有する複素環基もしくは芳香族複素環基を表す。)を、塩基の存在下、反応させ、式[3]で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸エステル
【化2】

(式中、nと[A]の意味は前記と同じ。)
を製造する方法であって、該反応を、水を溶媒として共存させ、かつ有機溶媒を共存させないで行うことを特徴とする、パーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
パーフルオロアルカンスルホニルハロゲン化物が、式[1a]で表されるトリフルオロメタンスルホニルハロゲン化物
CF3SO2X [1a]
(式中、XはFまたはClを意味する。)
であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
相間移動触媒を共存させることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
相間移動触媒が4級アンモニウム塩であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
反応を行う際の温度が−5℃以上、40℃以下であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
水の量が、環式ヒドロキシル化合物1gあたり、1g以上、10g以下であることを特徴とする、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
環式ヒドロキシル化合物が、式[4]で示されるフェノール類
【化3】

(式[4]中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。)
であることを特徴とする、請求項1乃至請求項6の何れかに記載のパーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法。
【請求項8】
式[1a]で表されるトリフルオロメタンスルホニルハロゲン化物
CF3SO2X [1a]
(式中、XはFまたはClを意味する。)
と、酸解離定数(pKa)が4〜13である、式[4]で示されるフェノール類
【化4】

(式[4]中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。)
を塩基の存在下、反応させ、式[3a]で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸エステル
【化5】

(式[3a]中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。)
を製造する方法であって、該反応を、−5℃以上、40℃以下の温度において、該フェノール類1gあたり1〜10gの水を共存させ、かつ有機溶媒を共存させないで行うことを特徴とする、パーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法。

【公開番号】特開2007−119355(P2007−119355A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309634(P2005−309634)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】