説明

パーマネントウェーブ処理方法およびパーマネントウェーブ用中間処理剤

【課題】毛髪の損傷の低減、手触り感を向上させつつパーマネントウェーブを効果的に形成することのできるパーマネントウェーブ処理方法、およびこうした処理方法に用いるパーマネントウェーブ用中間処理剤を提供する。
【解決手段】本発明のパーマネントウェーブ処理方法は、パーマネントウェーブ第1剤で毛髪を処理した後、中間酸リンス剤で処理するに先立ち、下記の(a)および(b)を配合したパーマネントウェーブ用中間処理剤を毛髪に塗布して処理する。
(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチン、
(b)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪にパーマネントウェーブを形成する処理方法、およびこうした処理方法を実施するに際して用いる中間処理剤に関するものであり、特に毛髪の損傷の低減、手触り感を向上させつつパーマネントウェーブを効果的に形成することのできるパーマネントウェーブ処理方法、およびこうした処理方法に用いるパーマネントウェーブ用中間処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪の理・美容処理としては、パーマネントウェーブ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理(脱色処理)等、化学反応を伴う様々な処理が行われている。このうちパーマネントウェーブ処理は、(1)還元剤を主成分として含むアルカリ性溶液をパーマネントウェーブ第1剤として毛髪に塗布し、所望のウェーブを得るためにロッド等に巻きつけて一定時間放置するか、或は(2)毛髪に水等を塗布してロッド等に巻きつけた後、パーマネントウェーブ第1剤を塗布して一定時間放置し、毛髪中のケラチンのジスルフィド結合を開裂させる。その後、臭素酸ナトリウム、過酸化水素等の酸化剤を主成分とするパーマネントウェーブ第2剤により、新たな位置でジスルフィド結合を再結合させ、ウェーブを固定化させるものである。この処理は、処理前の毛髪とは異なる半永久的なウェーブ状の変形を得る方法である(例えば、非特許文献1、2)。
【0003】
近年、ヘアカラーブームもあり、ブリーチ処理またはブリーチを伴うカラー処理の頻度が増加してきている。このブリーチ処理は、過酸化水素によって毛髪中のメラニン色素を分解することによって、毛髪の脱色を行うものであり、還元および酸化過程を経るパーマネントウェーブ処理とは毛髪に与える損傷の性質が異なるものである。
【0004】
上記のようなパーマネントウェーブ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理等の化学反応を伴う様々な処理は、繰り返して行われることになるが、それにつれて毛髪の損傷が激しくなり、パーマネントウェーブ処理によるウェーブ形成が困難になってくるのが実状である。実際のところ、理・美容室では明るく脱色された毛髪へ更にヘアカラー処理をする習慣が広がっており、パーマネントウェーブ処理においては目的とするウェーブが得られないうえ、パーマネントウェーブ第1剤のアルカリ剤と還元剤の作用により毛髪の損傷だけが進行してしまうという問題がある。
【0005】
最近では、パーマネントウェーブ処理によるウェーブ形成力を向上させ、且つ持続力をも高めるために、通電により加熱可能なロッドを用いたパーマネントウェーブ処理方法として、パーマネントウェーブ第1剤で処理した後、水洗した毛髪の水分を軽く拭き取り、上記ロッドに毛髪を巻き付け、ロッドを加熱して80〜140℃程度で30分間ほど放置し、その後パーマネントウェーブ第2剤によって処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
上記のような方法に対応した機器として、内部に発熱装置を備えたロッドを用いたパーマネントウェーブ処理方法も各種提案されている。その一つとして、前処理した毛髪を上記ロッドに巻き付けた後、パーマネントウェーブ第1剤を塗布し、続いてロッドを発熱させて毛髪を加熱し、加熱終了後にパーマネントウェーブ第2剤による処理を行う処理方法である(例えば、特許文献2)。他の方法として、毛髪を非巻回の状態で、パーマネントウェーブ第1剤で処理を行い、軟化した毛髪を水洗した後、上記ロッドに巻き付け、ロッドを発熱させて毛髪を加熱し、加熱終了後、毛髪をロッドから外すと共に、パーマネントウェーブ第2剤による処理を行うものである(例えば、特許文献3)。
【0007】
更に他の方法としては、パーマネントウェーブ第1剤によって処理して軟化した毛髪を水洗し、吸引手段側に毛髪を巻き付けた後、頭部全体を加温雰囲気下にすると共に、吸引手段によって毛髪を介して吸引し、毛髪を乾燥させる工程を含んで毛髪を処理する方法も提案されている(例えば、特許文献4)。また、毛髪をロッドで変形させ、パーマネントウェーブ第1剤を塗布して毛髪を膨潤化し、60℃以下で毛髪内部の分子を相対的に移動再配置させた状態で、脱膨潤操作(乾燥操作)により分子が動かない状態としてから、パーマネントウェーブ第2剤で処理することによって、毛髪の変形状態を固定して記憶させるパーマネントウェーブ処理方法も提案されている(例えば、特許文献5)。
【非特許文献1】「SCIENCE OF WAVE」日本パーマネントウェーブ液工業組合編著、新美容出版株式会社、2002年4月10日発行、第20〜64頁
【非特許文献2】「TOMOTOMO 8月号」、『しっかりかけたつもりなのに、すぐにパーマがダレた…なぜ?』鷲家真吾著、新美容出版株式会社、2005年発行、第77〜79頁
【特許文献1】特開2004−262798号公報
【特許文献2】特開2005−296351号公報
【特許文献3】特開2006−230538号公報
【特許文献4】特開2006−212417号公報
【特許文献5】特開2007−44175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、通電により加熱可能なロッドや内部に発熱装置を備えたロッドを利用したパーマネントウェーブ処理方法が各種提案されているのであるが、これらの方法によって繰り返し施術を行うと、毛髪の損傷が著しくなり、パーマネントウェーブが形成されない状態にまで陥るという問題が生じている。こうしたことから、上記パーマネントウェーブ処理の繰り返し施術においても、毛髪の損傷が低減されると共に、手触り感も良好であるようなパーマネントウェーブの形成を可能とする毛髪処理方法が必要とされている。
【0009】
これまで提案されているパーマネントウェーブ処理方法は、毛髪にパーマネントウェーブ第1剤が塗布された状態での加熱処理や、毛髪を軟化させるために比較的多量の還元剤やアルカリ剤を含むパーマネントウェーブ第1剤で処理する工程を含むものであるので、毛髪の著しい損傷をもたらすものであった。また、80〜140℃程度という高温での処理も、毛髪の著しい損傷をもたらす原因ともなっている。
【0010】
更に、パーマネントウェーブ第1剤で処理した後の軟化した毛髪を水洗し、吸引手段側に毛髪を巻き付けた後、頭部全体を加温・加湿雰囲気にすると共に、吸引手段によって毛髪を介して吸引し、毛髪を乾燥させる工程を含むようなパーマネントウェーブ処理方法も提案されている。こうした方法においては、処理温度は60℃以下と比較的低めの温度であるが、加熱処理時間が長くなって、やはり熱による損傷が大きくなるという問題がある。
【0011】
一方、パーマネントウェーブ第1剤によって処理した後の毛髪では、毛髪中のケラチンのジスルフィド結合を開裂させた状態であり、その後のパーマネントウェーブ第2剤の作用が不十分であると、ジスルフィド結合を開裂させた状態のままで残り、パーマネントウェーブ第1剤が作用したままの不安定な状態で残ることがある。こうした状態は、パーマネントウェーブの酸化不足の状態である。酸化不足の状態を回避するためには、パーマネントウェーブ第1第で毛髪を処理し、パーマネントウェーブ第2剤で作用させるに先立ち、酸性溶液(中間酸リンス)によって処理し、パーマネントウェーブ第1剤に含まれるアルカリを十分に中和させることが有効であることも知られているが(例えば、前記非特許文献2)、こうした処理を付加しただけでは、毛髪の損傷を解消してパーマネントウェーブを効果的に形成することが困難な場合もある。
【0012】
本発明はこうした状況の下でなされたものであり、その目的は、毛髪の損傷の低減、手触り感を向上させつつ、パーマネントウェーブを効果的に形成することのできるパーマネントウェーブ処理方法、およびこうした処理方法に用いるパーマネントウェーブ用中間処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成することができた本発明のパーマネントウェーブ処理方法とは、パーマネントウェーブ第1剤で毛髪を処理した後、中間酸リンス剤で処理するに先立ち、下記の(a)および(b)を少なくとも配合したパーマネントウェーブ用中間処理剤を毛髪に塗布して処理する点に要旨を有するものである。
(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチン、
(b)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物。
【0014】
一方、上記目的を達成することのできたパーマネントウェーブ用中間処理剤とは、パーマネントウェーブ第1剤で毛髪を処理した後、中間酸リンス剤で処理するに先立ち毛髪に塗布して処理するためのパーマネントウェーブ用中間処理剤であって、この中間処理剤は、下記の(a)および(b)を少なくとも配合したものである点に要旨を有するものである。尚、本発明における平均分子量とは、「質量平均分子量」の意味である。
(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチン、
(b)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物。
【0015】
本発明のパーマネントウェーブ用中間処理剤においては、(1)加水分解ケラチンと蛋白質組成物の配合比(加水分解ケラチン:蛋白質組成物)が、2:1〜1:2(質量割合)であることや、(2)加水分解ケラチンと蛋白質組成物の合計が、パーマネントウェーブ用中間処理剤全体に占める割合で0.1〜2質量%であること、等の要件を満足することが好ましい。
【0016】
また本発明のパーマネントウェーブ用中間処理剤には、必要によって、更に加水分解スサビノリを配合することも好ましく、これによって毛髪にツヤ感(艶感)を付与すると共に、パーマネントウェーブ処理の際に発生する独特の臭い(パーマ臭およびパーマ残臭)を抑制する上で有効である。こうした加水分解スサビノリを配合するときには、その配合量は、パーマネントウェーブ用中間処理剤全体に対して0.003〜0.3質量%程度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチン、および(b)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物を少なくとも配合したパーマネントウェーブ用中間処理剤を用い、パーマネントウェーブ第1剤で毛髪を処理した後、中間酸リンス剤で処理するに先立ってこのパーマネントウェーブ用中間処理剤によって処理することによって、毛髪の損傷の低減、手触り感を向上させつつ、パーマネントウェーブを効果的に形成することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは、毛髪の損傷の低減、手触り感を向上させつつパーマネントウェーブを効果的に形成することのできるパーマネントウェーブ処理方法について、様々な角度から検討した。その結果、パーマネントウェーブ第1剤で毛髪を処理した後、中間酸リンス剤で処理するに先立って、所定の成分を配合したパーマネントウェーブ用中間処理剤(以下、単に「中間処理剤」と呼ぶことがある)で処理してやれば、上記目的に適う処理方法が実現できることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
本発明で用いる中間処理剤は、(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチン、および(b)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物を必須成分として配合したものであるが、これらの成分による作用効果は次の通りである。
【0020】
上記加水分解ケラチンは、毛髪にパーマネントウェーブを付与するとともにパーマネントウェーブを形成した毛髪の強度を低下させないという効果を発揮するものである。またこうした効果を発揮させるためには、使用する加水分解ケラチンの平均分子量も特定の範囲のものとすることが重要である。この平均分子量が25000未満では、所望のウェーブ形成効果を発揮させることができない。また、平均分子量が35000を超えると、天然のケラチン蛋白質に近いものとなり、「加水分解ケラチン」を使用するという効果が発揮されない。
【0021】
使用する加水分解ケラチンの種類は、平均分子量の特定を除いて特に特定するものではない。例えば、厚生労働省の化粧品種別配合成分規格に収載されている「加水分解ケラチン末」や「加水分解ケラチン液」を用いても良いし、或いは、市販の精製高分子α−ケラトース(結晶性ケラチン)やγ―ケラトース(非結晶性ケラチン)を用いても良い。
【0022】
一方、上記蛋白質組成物は、毛髪に作用してパーマネントウェーブ保持力を向上させるという効果を発揮するものであり、本発明者らが有用な毛髪処理剤の成分として見出したものである。本発明者らは、パーマネントウェーブ形成能を修復・改善する毛髪処理剤の開発を目指してかねてより研究を進めており、その研究の一環として、ヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質(特定蛋白質)がこうした効果を発揮できる成分として有用であることを見出し、その技術的意義が見出されたので先に出願している(特開2004−286738号)。そして、上記特定蛋白質だけでなく、平均分子量が9700の蛋白質も含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物(夾雑物を含む毛髪分画蛋白質)の状態で毛髪から分離したものも上記の効果が発揮できることを見出している。本発明は、こうした蛋白質組成物を応用するものである。
【0023】
尚、上記蛋白質組成物の調製および電気泳動による蛋白質の確認、各蛋白質の精製、分子量測定等は、下記の夫々の方法によるものである。また、こうした蛋白質組成物は、ヒト毛髪ばかりでなく、羊毛を原料としたときでも同様に得られることを確認している。
【0024】
(特定蛋白質を含む毛髪蛋白質溶液の調製方法)
本発明における蛋白質組成物は、毛髪から製造、調製することができる。毛髪からの構成蛋白質の抽出(分画)は、従来の2−メルカプトエタノールによる還元処理を利用した方法(例えば、「Journal of Cosmetic Science」1998年、49巻、第13〜22頁)が適切である。本発明に応用した抽出方法を下記に示す。
【0025】
ブリーチ処理やパーマネントウェーブ処理を受けた経験のない毛髪0.2g(長さ16cm)を脱脂用剤(クロロホルム/メタノール=2/1:容積比)に24時間浸漬させることにより、毛髪表面を脱脂処理した。処理後の毛髪をドライヤにより十分乾燥させ、約1cmの長さに切断した。切断後の毛髪をビーカに入れ、毛髪蛋白質分画抽出液[2.5mol/L(リットル)の2−メルカプトエタノールと1質量%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む0.025mol/Lのトリス塩酸バッファ、pH8.3]20mLとよく混合させ、50℃、72時間の条件下で浸漬させた。
【0026】
浸漬処理後の溶液を透析チューブ(分子量8000用、ナカライテスク製)に入れ、イオン交換水を外液とし16時間以上(外液交換4回)の透析を行った。透析後のチューブ内液(分子量8000以上)を攪拌式セル(分子量3000以上用、ミリポア製)による限外濾過処理で濃縮した。濃縮により蛋白質濃度が0.1〜1.5mg/mLに調整された試料を本発明の毛髪蛋白質溶液(特定蛋白質を含む)として得た。
【0027】
(毛髪蛋白質溶液のTricine−SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法
による蛋白質のバンド確認方法)
毛髪蛋白質溶液と試料バッファ(0.5mol/Lのトリス塩酸バッファを2mL、10質量%のSDS溶液を4mL、2−メルカプトエタノールを1.2mL、グリセロールを2mL、イオン交換水を0.8mL、1質量%BPB(ブロモフェノールブルー)を数滴加え、全量10mLにする)を1:1の割合で混合し、3分間、95℃という条件で熱変性させ、電気泳動用試料とした。
【0028】
下記の組成で予め作製しておいたゲルに試料をアプライし、50mAの定電流で電気泳動を行った。尚、泳動バッファの組成は、陽極のバッファとして0.2mol/LのTris(pH8.9)を、陰極のバッファとして0.1mol/LのTrisと0.1mol/LのTricine、0.1質量%のSDS溶液の混合溶液(pH8.25)を使用した。泳動終了後、ゲルをCBB(クマシーブリリアントブルー)染色液にて蛋白質バンドを染色し、エタノール/酢酸/イオン交換水を組成[エタノール/酢酸/イオン交換水=3/1/6:容積比]とする脱色液で蛋白質以外のゲル部位を脱色した。そして、Tricine−SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法によって、分子量が11000の位置にバンドがあることを確認した(例えば、「Analytical Biochemistry」1987年、166巻、第368〜379頁)。
【0029】
(分離ゲル)
アクリルアミド溶液(48質量%のアクリルアミドと1.5質量%のビスアクリルアミド)を6mL、ゲルバッファ(3.0mol/LのTrisと0.3質量%のSDS溶液の混合液、pH8.45)を10mL、グリセロールを4mL、10質量%過硫酸アンモニウムを0.15mL、TEMED(N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン)を0.15mL、残部イオン交換水からなる分離ゲルを作製した(全量30mL)。
【0030】
(濃縮ゲル)
アクリルアミド溶液(48質量%のアクリルアミドと1.5質量%のビスアクリルアミド)を1mL、ゲルバッファ(3.0mol/LのTrisと0.3質量%のSDS溶液の混合液、pH8.45)を3.1mL、10質量%過硫酸アンモニウムを0.075mL、TEMED(N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン)を0.005mL、残部イオン交換水からなる濃縮ゲルを作製した(全量12.5mL)。
【0031】
(蛋白質の精製)
カラム内部の樹脂には、DEAE(ジエチルアミノエチル)−セルロース(ナカライテスク製)を用いた。精製方法について下記に述べる。上記樹脂をカラム内に充填し、酸およびアルカリによる洗浄を行った後、イオン交換水によりカラム内を平衡化する。平衡化されたカラム内に上記毛髪蛋白質溶液を徐々にアプライする。アプライ後、0.1〜0.5mol/Lの塩でイオン勾配処理を行うことにより、目的の蛋白質を溶離させるという一般的な蛋白質精製方法により、毛髪蛋白質溶液の蛋白質を分離した。
【0032】
(分子量測定)
ゲル濾過カラムクロマトグラフィによる分子量測定を下記に述べる。高速液体カラムクロマトグラフとして「Shimadzu Liquid chromatograph LC−6A」(島津製作所製)を用い、検出器として「Shimadzu UV−VIS Spectrophotometric detector SPD−6AV」(島津製作所製)を用い、レコーダーとして「Shimadzu Chromatopac C−R6A」(島津製作所製)を用い、ガードカラムとして「TSK−GEL Guard Column SW 7.5×7.5(mm)」(東ソー製)を用い、カラムとして「TSK−GEL G3000SW 7.5×600(mm)」(東ソー製)を用いた。
【0033】
分析方法は、上記の機器および試料を用いて、流速0.5mL/min、測定波長280nmの条件下で、溶出バッファ(0.1mol/LのNaHPO/NaHPO(pH7.0)+0.1mol/LのNaSO)を使用し分析を行った。尚、この分子量測定は、分子量が既知の標準マーカとして、グルタミン酸脱水素酵素(分子量290000)、乳酸脱水素酵素(分子量142000)、エノラーゼ(分子量67000)、アデニル酸キナーゼ(分子量32000)、チトクロームc(分子量12400)を用いて測定したものである。
【0034】
本発明の中間処理剤に含有される蛋白質組成物は、ヒト毛髪を過酸化水素によってブリーチ処理することによって流出・欠損する毛髪蛋白質を含むゲル濾過クロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000のものであって、下記表1に示されるアミノ酸組成によって特定されるものである。尚、この蛋白質は、パーマネントウェーブの繰り返し処理によっては、欠損しないものである。
【0035】
【表1】

【0036】
本発明者らは、毛髪中に含まれる蛋白質として、複数回のブリーチ処理によっても毛髪から流出・欠損しない蛋白質が存在することを確認している。この蛋白質は、ゲル濾過クロマトグラフィによる平均分子量測定値が9700のものであって、下記表2に示されるアミノ酸組成によって特定されるものである。
【0037】
【表2】

【0038】
尚、これらの蛋白質のアミノ酸組成は、下記の分析方法によって、特定されたものである。
【0039】
(アミノ酸組成の分析)
測定機器として、アミノ酸素分析計「Hitachi L−8500 Amino acid analyzer」(日立製作所製)を用い、実験試料として、複数回のブリーチ処理によって欠損蛋白質(平均分子量が11000の蛋白質)と残存する蛋白質(平均分子量が9700の蛋白質)を用いて、分析をおこなった。このとき、測定試料:0.5mL(ミリリットル)と12規定の濃塩酸0.5mLをガラス管内で混合した後、120℃で12時間加熱し、ガラス管が常温になるまで自然放置した。処理液を脱塩素処理した後、高温引圧乾燥機によって乾燥処理し粉末状とした。それを、イオン交換水:0.2mLでよく溶解させ、分析試料とした。
【0040】
本発明の中間処理剤は、上記の様な加水分解ケラチンおよび蛋白質組成物を必須成分として配合したものであるが、これらの配合(加水分解ケラチン:蛋白質組成物)は、2:1〜1:2(質量割合)であることが好ましい。この範囲を外れると、毛髪のきしみ感が大きくなり、すべり感が不十分なものとなる。
【0041】
また、本発明の中間処理剤は、上記成分の他にも中間処理剤として、他の成分も含み得るものであるが(後述する)、上記加水分解ケラチンと蛋白質組成物の合計は、中間処理剤全体に占める割合で0.1〜2質量%であることが好ましい。この割合が、0.1質量%未満になるとこれらの成分を配合した効果が発揮されず、2質量%を超えると却って摩擦が高くなってすべり感が低下する。
【0042】
ところで、パーマネントウェーブ第1剤に配合される還元剤は、一般にチオール基を含んでおり、このチオール基は硫黄元素を含むものであり、その揮発性に起因して、腐卵臭や温泉の原水のような臭い(以下、「特異臭」と呼ぶことがある)を発生するものが多く、こうした特異臭の発生をできるだけ抑制することが望まれている。こうした観点から、本発明の中間処理剤には、加水分解スサビノリ(海苔ペプチドの一種)を含有させることも好ましい。この加水分解スサビノリは、パーマネントウェーブ第1剤で処理した後に、中間処理剤で毛髪を処理することによって、毛髪に残る特異臭の発生を抑制することができる。こうした効果を発揮させるためには、加水分解スサビノリを含有させるときの含有量は中間処理剤全体に対して0.003質量%以上とすることが好ましい。但し、加水分解スサビノリの含有量が過剰になると、原料臭の発生と共に、パーマ臭やパーマ残臭抑制効果が却って低減されるばかりか、毛髪のツヤ感が自然のものでなくなるので、0.3質量%以下とすることが好ましい。
【0043】
本発明において、パーマネントウェーブ第1剤で毛髪を処理した後、中間酸リンス剤で処理するに先立って、上記のような中間処理剤で処理することによって、上記のような優れた効果が得られた理由については、次のように考えることができた。即ち、パーマネントウェーブ第1剤で処理した後の毛髪は、アルカリで膨潤してキューティクルが開いている状態になっているのであるが、こうした状態の段階で、中間酸リンス剤で処理する前に上記のような中間処理剤で処理することによって、効果的に毛髪改善成分や有効成分を毛髪内部に定着させることができるものと考えることができる。
【0044】
本発明の中間処理剤は、少なくとも(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチン、(b)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物を含有するものであるが、必要によって、その他各種の添加剤を含むものであっても良い。
【0045】
本発明の中間処理剤に含有されることのある添加剤としては、保湿剤類、油脂類、ラノリン類、高級アルコール類、フッ素化合物、シリコーン類、カチオン化ポリマー類、界面活性剤類(陽イオン界面活性剤類・陰イオン界面活性剤類・非イオン界面活性剤類・両性界面活性剤類)、増粘・ゲル化剤類、防腐剤類、キレート剤類、pH調整剤・酸・アルカリ類、溶剤類、抗炎症剤類、香料、色素等を挙げることができ、これらを適宜配合することができる。
【0046】
これらの添加剤を例示すると、保湿剤類としては、1,3−ブチレングリコ−ル、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン分解ペプチド、エラスチン分解ペプチド、ケラチン分解ペプチド、シルク蛋白分解ペプチド、大豆蛋白分解ペプチド、小麦蛋白分解ペプチド、カゼイン分解ペプチド等の蛋白質・ペプチド類およびその誘導体、アルギニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、トリメチルグリシン等のアミノ酸類、アロエ抽出物、ハマメリス水、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス等の植物抽出成分類、ヒアルロン酸ナトリウム、クエン酸塩、コンドロイチン硫酸、乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
油脂類としては、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、パーム殻油、サフラワー油、オリーブ油、アボカド油、ゴマ油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、ティーツリー油、ハッカ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、大豆油、落花生油、コメヌカ油、液状シア脂、ホホバ油等の植物油脂類、流動パラフィン、スクワラン、軽質流動パラフィン、セレシン、パラフィンロウ、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の炭化水素等、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル類、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナバロウ、ライスワックス、鯨ロウ、セラック、綿ロウ、モクロウ、水添ホホバ油等のロウ類が挙げられる。
【0048】
ラノリン類としては、液状ラノリン、還元ラノリン、吸着精製ラノリン等のラノリン類が挙げられる。高級アルコール類としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール類、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0049】
フッ素系化合物としては、パーフルオロポリエーテル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロヒドロキシエチル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロメチルジステアリルアミド、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルポリエチレングリコールリン酸等のフッ素系化合物誘導体類が挙げられる。
【0050】
シリコーン類としては、低粘度ジメチルポリシロキサン、高粘度ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、カチオン変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0051】
カチオン化ポリマー類としては、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化デンプン、カチオン化グアーガム、ジアシル4級アンモニウムの重合体または共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
【0052】
陽イオン界面活性剤類としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0053】
陰イオン界面活性剤類としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
【0054】
非イオン界面活性剤類としては、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリグリコシド、アルキルグリコシド等が挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤類としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等を挙げることができる。
【0056】
増粘・ゲル化剤としては、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸、トラガントガム、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂アルカノールアミン液等を挙げることができる。
【0057】
防腐剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、安息香酸塩類、フェノキシエタノール、4級アンモニウム塩類等を挙げることができる。
【0058】
キレート剤としては、エデト酸塩、ホスホン酸類、ポリアミノ酸類等を挙げることができる。pH調整剤・酸・アルカリ類としては、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、炭酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、塩酸、硫酸、硝酸若しくはそれらの塩類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルギニン、アンモニア水、アミノメチルプロパノール若しくはそれらの塩類等を挙げることができる。
【0059】
溶剤類としては、水、エタノールやデカメチルシクロペンタシロキサンの他にも、2−プロパノール等の低級アルコール類等を例示することができる。抗炎症剤類としては、グリチルリチン酸、カルベノキソロン二ナトリウムをはじめとする甘草誘導体、アラントイン、グアイアズレン、アロエ、α−ビサボロール等が挙げられる。
【0060】
本発明の中間処理剤の剤型は、液状、ミスト状、クリーム状、ゲル状、泡状、エアゾール状など種々のタイプが可能で、特に限定されるものではない。また、本発明の中間処理剤を用いて毛髪にパーマネントウェーブを形成するには、毛髪にパーマネントウェーブ第1剤を塗布して処理した後、十分水洗し、引き続き本発明の中間処理剤を塗布し、その後中間酸リンス剤で処理し、アイロンやホットカーラ、ワインディングロッド等の加熱手段でパーマネントウェーブスタイルをセットし、その後パーマネントウェーブ第2剤で処理すれば良い。尚、上記加熱手段は、上記の他、ドライヤによるブローセットであっても良い。
【0061】
本発明の中間処理剤を用いることによって、毛髪へのウェーブ形成保持力を向上させることができると共に、ヘアカラー、ブリーチ、パーマネントウェーブのような美容施術および日常のドライヤによる乾燥、ブラッシングによる損傷を受けた毛髪を修復・回復させる効果を発揮することになる。
【0062】
本発明ではパーマネントウェーブ第1剤で処理した後に、上記のような中間処理剤で処理するものであるが、本発明で用いるパーマネントウェーブ第1剤としては、第1剤として還元剤やアルカリ剤を含んでいるものであれば、通常のものを使用することができる。また、本発明で、中間処理剤で処理した後に用いる中間酸リンス剤についても、通常用いられているものを用いれば良く、例えばリンゴ酸、クエン酸、乳酸、リン酸等の酸性物質を含む溶液が挙げられる。
【0063】
上記のような処理(パーマネントウェーブ第1剤処理→中間処理剤による処理→中間酸リンス剤による処理→熱処理)をした後は、最終的にパーマネントウェーブ第2剤によって処理されることになるが、本発明で用いるパーマネントウェーブ第2剤は、パーマネントウェーブ第2剤としての必須成分である臭素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤が含まれる他、上記した各種の添加剤を含むものであっても良い。
【実施例】
【0064】
次に、実施例によって本発明をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0065】
[実施例1]
(ブリーチ処理毛の作製)
化学的処理を全く受けていない毛髪に下記のブリーチ処理を行い、以下の評価に用いた。
【0066】
(ブリーチ処理)
トーナーブリーチパウダ(粉末ブリーチ剤:中野製薬株式会社製)とキャラデコオキサイドEX06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:3(質量比)となるように混合したブリーチ剤を、毛髪に質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間の条件で処理した後、10質量%のSDS溶液(ドデシル硫酸ナトリウム溶液)によって洗浄し、その後、乾燥した。
【0067】
上記のようにしてブリーチ処理した毛髪について、下記表3に示す各種中間処理剤(処方例1〜7)を毛髪に対して質量比1:1の割合で塗布し、ドライヤーによりブローしながら乾燥し、その際の毛髪表面のすべり感について下記の摩擦係数測定と官能試験によって評価した。
【0068】
(摩擦係数測定方法)
(A)対象毛髪
上記のようにして処理した毛髪を用いて、摩擦感測定用固定ヘアピース(以下、「測定用毛束」と呼ぶ)を作製した。
(B)初期値測定(初期値の測定は同特性の毛束を選択するために行った)
(1)毛髪の調湿:測定用毛束を20℃、湿度60%で24時間以上調湿した。
(2)測定機器と条件:測定には、摩擦感テスター「KES−SE」(カトーテック株式会社製)を用いた。
(3)測定は、測定感度:H、摩擦静荷重:50gf、センサー:シリコンタイプの条件にて行った。走査は、順方向(根元からの毛束)にて行った。MIU値(算出数値)に係数0.1を掛け、摩擦係数(μ)を求めた。また、このときの評価基準は下記の通りである。
【0069】
[すべり感の評価基準]
◎:摩擦係数(μ)が0.50未満とする。
○:摩擦係数(μ)が0.50以上、0.60未満とする。
△:摩擦係数(μ)が0.60以上、0.70未満とする。
×:摩擦係数(μ)が0.70以上とする。
【0070】
(毛髪のすべり感付与効果の官能評価方法)
上記のように処理した毛髪表面のすべり感を専門のパネラー10名で下記の評価基準で評価した。
【0071】
[毛髪のすべり感の評価基準]
◎:処理前と比較し、明らかにすべり感が出た。
○:処理前と比較し、すべり感が出た。
△:処理前と比較し、少しすべり感が出た。
×:処理前と比較し、すべり感が出なかった。
【0072】
これらの結果を、中間処理剤の処方例(処方例1〜7)と共に、下記表3に示す。尚、表3において、試料A、試料Bは下記のものであり、表3の処方例1〜7は試料A:試料Bの割合(純分割合)を4:1〜1:4で変化させたものである。
試料A:平均分子量が25000〜35000の加水分解ケラチンを10質量%含有する試料。
試料B:羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過クロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物を20質量%含有する試料。
【0073】
【表3】

【0074】
この結果から明らかなように、試料Aと試料Bの配合割合が2:1〜1:2の範囲において、毛髪表面のすべり感が良好になっていることが分かる。
【0075】
[実施例2]
実施例1と同様にしてブリーチ処理した毛髪について、下記表4に示す各種中間処理剤(処方例4,8〜13)を毛髪に対して質量比1:1の割合で塗布し、ドライヤーによりブローしながら乾燥し、その際の毛髪表面のすべり感について、実施例1と同様にして評価した。
【0076】
その結果を、中間処理剤の処方例(処方例4、8〜13)と共に、下記表4に示すが、試料Aと試料Bの合計配合量が0.1〜2質量%の範囲において、毛髪表面のすべり感が良好になっていることが分かる。
【0077】
【表4】

【0078】
[実施例3]
(パーマネントウェーブ処理毛の作製)
上記でブリーチ処理した毛髪(0.2g)を直径:12mmのロッドに巻き付けて、輪ゴムで固定した。下記表5の処方例14に示すパーマネントウェーブ第1剤に30秒間浸漬し、その溶液から取り出した後、30℃で15分間放置した。その後、十分に水洗した後、下記表6に示す各種中間処理剤(処方例15〜18)を毛髪に対して質量比1:1の割合で塗布し、続いて下記表7の処方例19に示す中間酸リンス剤を毛髪に対して質量比1:1の割合で塗布した。次に、「内部に発熱装置を備えたロッドを利用したパーマネントウェーブ処理」(以下、「熱処理A」と呼ぶ)、または「頭部全体を加熱雰囲気にすると共に、吸引手段によって毛髪を介して吸引し、毛髪を乾燥させるパーマネントウェーブ処理」(以下、熱処理Bと呼ぶ)を行い、その後下記表8の処方例20に示すパーマネントウェーブ第2剤に30秒間浸漬し、溶液から取り出した後、30℃で10分間放置し、水洗した。
【0079】
表6に示した処方例は中間処理剤として、前記表3に示した処方例4(試料A:試料Bの配合割合が1:1のもの)を基本とし、これに加水分解スサビノリ、加水分解コメタンパク、加水分解コラーゲンまたは加水分解大豆蛋白等を配合したものである。これらを用いて、上記のようにしてパーマネントウェーブを形成し、パーマネントウェーブを形成した毛髪表面のツヤ感(艶感)付与効果、およびパーマ臭やパーマ残臭抑制効果(いずれも官能試験)について下記の方法によって評価した。
【0080】
(ツヤ感付与効果の官能評価方法)
上記パーマネント処理したウェーブ処理毛の表面のツヤ感を専門のパネラー10名で下記の評価基準で評価した。
【0081】
[ツヤ感の評価基準]
◎:処理前と比較し、明らかにツヤ感が出た。
○:処理前と比較し、ツヤ感が出た。
△:処理前と比較し、少しツヤ感が出た。
×:処理前と比較し、ツヤ感が出なかった。
【0082】
(パーマ臭、パーマ残臭抑制効果の官能評価方法)
上記パーマネント処理したウェーブ処理毛のパーマ臭やパーマ残臭抑制効果を専門のパネラー10名で下記の評価基準で評価した。
【0083】
[パーマ臭、パーマ残臭抑制効果の評価基準]
◎:パーマ臭、パーマ残臭が非常に抑えられている。
○:パーマ臭、パーマ残臭が抑えられている。
△:パーマ臭、パーマ残臭が少し抑えられている。
×:パーマ臭、パーマ残臭が抑えられていない。
【0084】
その結果を、中間処理剤の処方例(処方例15〜18)と共に、下記表6に示す。この結果から明らかな様に、加水分解スサビノリを配合した場合に(処方例15)に最もツヤ感が高くなっていることが分かる。また、パーマ臭やパーマ残臭抑制効果についても、加水分解スサビノリを配合した場合(処方例15)にその改善効果が認められることが分かる。
【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

【0088】
【表8】

【0089】
[実施例4]
中間処理剤として、下記表9に示すように、加水分解スサビノリの配合量を変えたもの(処方例15、21〜25)を用いる以外は、実施例3と同様にして(パーマネントウェーブ第1剤、第2剤および中間酸リンス剤も上記と同様)、パーマネントウェーブを形成し、パーマネントウェーブを形成した毛髪表面のツヤ感(艶感)付与効果およびパーマ臭、パーマ残臭抑制効果(いずれも官能試験)について実施例3と同様にして評価した。
【0090】
これらの結果を、中間処理剤の処方例(処方例15、21〜25)と共に、下記表9に示す。この結果から明らかな様に、中間処理剤中に加水分解スサビノリを0.003〜0.3質量%含有させた場合(処方例21〜24)に、パーマネントウェーブ処理した毛髪表面に良好なツヤ感(自然なツヤ感)が得られ、また高いパーマ臭やパーマ残臭抑制効果が得られていることが分かる。これに対して、中間処理剤として加水分解スサビノリの含有量が少ないもの(処方例15)では、パーマ臭やパーマ残臭抑制効果が低く、また十分なツヤ感付与効果が得られない。また加水分解スサビノリを過剰に含有させたもの(処方例25)では,自然なツヤ感でなくなり、求めているツヤ感とは異なるものとなり、パーマ臭やパーマ残臭抑制効果についても、原料自体の臭いが目立ち、気になる状況であった。
【0091】
【表9】

【0092】
[実施例5]
上記実施例3、4では、パーマネントウェーブ第1剤処理→水洗→中間処理剤処理→中間酸リンス剤処理→熱処理(熱処理Aまたは熱処理B)→パーマネントウェーブ第2剤処理の一連の工程によって行ったものであるが、その工程の一部を除いた処理方法でパーマネントウェーブを形成することによって、各工程の効果について確認した。このとき、パーマネントウェーブ第1剤処理として、前記表5に示した処方例14、中間処理剤として前記表9に示した処方例21、中間酸リンス剤として、前記表7に示した処方例19のもの、パーマネントウェーブ第2剤として、前記表8に示した処方例20のものを夫々使用した。
【0093】
これらの処理剤を用いて処理したときの各工程を、下記表10に示す(実験No.1〜7)。尚、表10において、熱処理Aは、「内部に発熱装置を備えたロッドを利用したパーマネントウェーブ処理」であり、熱処理Bは、「頭部全体を加熱雰囲気にすると共に、吸引手段によって毛髪を介して吸引し、毛髪を乾燥させるパーマネントウェーブ処理」であることは前述した通りである。また、パーマネントウェーブ処理に関する他の条件は、前記実施例3、4と基本的に同一である。
【0094】
各工程によってパーマネントウェーブを形成した毛髪について、「パーマネントウェーブの保持力」(ウェーブ保持力)、「破断強度」、および「柔らかさ」について下記の基準で評価した。
【0095】
(ウェーブ保持力の評価)
上記各工程によってパーマネントウェーブ処理をした毛髪(但し、3回処理した毛髪)を用い、まずパーマネントウェーブ処理直後の毛髪を吊るし、5分放置後のウェーブ形状を撮影した。その写真をもとに、毛束の流れに補助線を引き、夫々のウェーブ形成角度を求め、その平均値(θ0:5回の平均値)を算出した。続いて、夫々の毛髪に負荷を加えて真っ直ぐに引き伸ばした状態で固定し、70℃の温水中で15分間放置した。その後、上記と同様にして毛髪を吊るし、ウェーブ形成角度の平均値(θ:5回の平均値)を算出した。これら求められた値θ0、θに基づき、下記の(1)式からウェーブ保持力を算出した。尚、上記ウェーブ形成角度はパソコン[画像計測ソフト:「Makijaku」]によって求められるものである。このときの評価基準は下記の通りである。
ウェーブ保持力(%)=[1−(θ0−θ)]/(180−θ0)]×100…(1)
【0096】
[ウェーブ保持力の評価基準]
◎:ウェーブ保持力が85%以上とする。
○:ウェーブ保持力が70%以上、85%未満とする。
△:ウェーブ保持力が55%以上、70%未満とする。
×:ウェーブ保持力が55%未満とする。
【0097】
(破断強度測定方法)
上記各工程によってパーマネントウェーブ処理をした毛髪(但し、3回処理した毛髪)を用い、毛髪10本を任意に選び、「毛髪直径計測システム」(カトーテック株式会社製)により毛髪の直径[長径(mm)および短径(mm)]を計測し、毛髪の横断面(mm2)を下記(2)式より求めた。次に、卓上型材料試験機「テンシロン STA−1150」(株式会社オリエンテックス製)を用い、上記試料の水中における引張り破断値(cN)の測定を行った。その後、横断面(mm2)当りの引張り破断値(cN)を算出することによって、破断強度(cN/mm2)を求めた。このときの評価基準は下記の通りである。
横断面(mm2)=(π/4)×長径(mm)×短径(mm)…(2)
【0098】
[毛髪の破断強度の評価基準]
◎:破断強度が1.35×104cN/mm2以上とする。
○:破断強度が1.30×104cN/mm2以上、1.35×104cN/mm2未満とする。
△:破断強度が1.25×104cN/mm2以上、1.30×104cN/mm2未満とする。
×:破断強度が1.25×104cN/mm2未満とする。
【0099】
(柔らかさの評価)
(A)対象毛髪
上記各工程によってパーマネントウェーブ処理をした毛髪(但し、3回処理した毛髪)を用い、「毛髪直径計測システム」(カトーテック株式会社製)により、上記と同様にして、毛髪の横断面(mm2)を求め、同程度の横断面積の毛髪を8本選抜した。それらの毛髪を幅12mmの塩化ビニル板上に貼り付け、曲げ硬さ測定用毛束(測定用毛束)を作製した。
(B)初期値測定(初期値の測定は同特性の毛束を選択するために行った)
(1)毛髪の調湿:測定用毛束を(20℃、湿度60%)で24時間以上調湿した。
(2)測定機器と条件:測定には、シングルヘアーベンディングテスター「KES−SH」(カトーテック株式会社製)を用いた。
(3)測定は、最大曲率2cm-1、トルク感度1.0(1.00gf・cm)、最大変位速度レンジ5(0.42cm-1/sec)の条件にて行った。このときの評価基準は下記の通りである。
【0100】
[毛髪の柔らかさの評価基準]
◎:曲げ硬さが150未満とする。
○:曲げ硬さが150以上、170未満とする。
△:曲げ硬さが170以上、190未満とする。
×:曲げ硬さが190以上とする。
【0101】
その結果を、各工程と共に、下記表10に示すが、この結果から、次のように考察できる。まず、「ウェーブ保持力」に関しては、全ての工程を含む実験No.1の場合に最も良好な結果がえられていることが分かる。また中間処理剤塗布工程を含む場合(実験No.1、3、5)と、中間処理剤塗布工程を含まない場合(実験No.2、4、6)とでは、中間処理剤塗布工程を含む場合のほうが良好な結果が得られていることが分かる。更に、中間酸リンス剤塗布や熱処理AまたはBを含むことによって、その少なくともどちらかを含まない場合よりも良好な結果が得られていることが分かる。
【0102】
「破断強度」に関しては、実験No.1、3の場合に最も良好な結果が得られていることが分かる。即ち、中間処理剤塗布と熱処理AまたはBとの組合せによって、毛髪の損傷の低減効果が有効に発揮されている。
【0103】
一方、「柔らかさ」に関しては、実験No.1、5の場合に最も良好な結果が得られていることが分かる。即ち、毛髪を柔らかい仕上げにするためには、中間処理剤と中間酸リンス剤を併用することが有効であることが分かる。
【0104】
以上の結果から、「ウェーブ保持力」、「破断強度」および「柔らかさ」の全ての点で良好な結果を得るためには、中間処理剤塗布を用いて全ての工程を行うこと(実験No.1)が重要であることが分かる。
【0105】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーマネントウェーブ第1剤で毛髪を処理した後、中間酸リンス剤で処理するに先立ち、下記の(a)および(b)を少なくとも配合したパーマネントウェーブ用中間処理剤を毛髪に塗布して処理することを特徴とするパーマネントウェーブ処理方法。
(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチン、
(b)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物。
【請求項2】
パーマネントウェーブ第1剤で毛髪を処理した後、中間酸リンス剤で処理するに先立ち毛髪に塗布して処理するためのパーマネントウェーブ用中間処理剤であって、この中間処理剤は、下記の(a)および(b)を少なくとも配合したものであることを特徴とするパーマネントウェーブ用中間処理剤。
(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチン、
(b)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物。
【請求項3】
加水分解ケラチンと蛋白質組成物の配合比(加水分解ケラチン:蛋白質組成物)が、2:1〜1:2(質量割合)である請求項2に記載のパーマネントウェーブ用中間処理剤。
【請求項4】
前記加水分解ケラチンと蛋白質組成物の合計が、パーマネントウェーブ用中間処理剤全体に占める割合が0.1〜2質量%である請求項2または3に記載のパーマネントウェーブ用中間処理剤。
【請求項5】
更に加水分解スサビノリを配合したものである請求項2〜4のいずれかに記載のパーマネントウェーブ用中間処理剤。
【請求項6】
前記加水分解スサビノリの配合量が、パーマネントウェーブ用中間処理剤全体に対して0.003〜0.3質量%である請求項5に記載のパーマネントウェーブ用中間処理剤。


【公開番号】特開2009−57334(P2009−57334A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227029(P2007−227029)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】