説明

パーマネントヘア加工用薬剤

【課題】中性から弱酸性のpH領域においても、毛髪の変形が可能なパーマネントヘア加工用薬剤を提供する。
【解決手段】下記式(1)または下記式(2)で示されるメルカプトカルボン酸アルコキシエステルを含有するパーマネントヘア加工用薬剤を製造する。


(式中、R1は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は総炭素数3〜15のアルコキシアルキル基を表す。ただし、R2のアルキレン部分にはエーテル結合が含まれていてもよい。)


(式中、R3は総炭素数3〜15のアルコキシアルキル基を表す。ただし、R3のアルキレン部分にはエーテル結合が含まれていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性から中性領域での毛髪加工が可能なメルカプトカルボン酸誘導体を含有するパーマネントヘア加工用薬剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、毛髪のパーマネント加工には、チオグリコール酸やシステイン、アセチルシステインの塩類などの一般にケラチン還元物質ともいわれる化合物が使用されてきた。これら従来のケラチン還元物質ともいわれる化合物は、毛髪のパーマネント加工用としてはアルカリ性条件下で実用的な性能を有するため、多くのパーマ液はpH9.5程度のアルカリ性に調整されている。しかし、アルカリ性に調整されたパーマ液は毛髪や頭皮の損傷を引き起こす原因となることが知られており、これら不都合を解決するために中性から弱酸性のpH領域で使用可能なケラチン還元物質の開発が進められている。
【0003】
例えば、アルコール部分に水酸基を有するチオグリコール酸エステルのうち、チオグリコール酸メチルエステルなど低沸点エステルで問題となる臭気を改善すること、および中性のpH領域での性能を発揮させることを両立させる目的で、チオグリコール酸のモノグリセロールエステルの検討が行われている(例えば、特許文献1。)。
【0004】
しかし、チオグリコール酸モノグリセロールエステルは液状であり、取り扱い性、臭気を改善できる点では優れているが、構造中の水酸基に由来すると推定される感作性の報告もあり実用には至っていない。
【0005】
また、チオグリコール酸モノグリセロールエステルでみられる皮膚障害を解決する目的でメルカプトグリコール酸アミド誘導体及びメルカプト乳酸アミド誘導体が検討されている(例えば、特許文献2、特許文献3。)。
【0006】
しかし、メルカプトカルボン酸アミドには、皮膚刺激性があることは既に知られており、メルカプトカルボン酸アミド誘導体でも同様の感作性が懸念され、更には精製不足や保存中に遊離する原料アミンによる感作性、皮膚刺激なども懸念されるという問題がある。
【0007】
一方、メルカプトカルボン酸塩の一部で処理した後、残部にメルカプトカルボン酸エステルを加えたもので後処理するパーマネントウエーブ法が開示されている(例えば、特許文献4。)。
【0008】
しかし、該メルカプトカルボン酸エステルは補助剤としての使用であり、しかも安定性に問題があり、使用のたびに用事調整するという煩雑さがあり実用的でない。
【特許文献1】特開平08−291031号公報
【特許文献2】特表2000−507272号公報
【特許文献3】特表2003−528901号公報
【特許文献4】特開昭50−111242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、中性から弱酸性のpH領域においても、毛髪の変形が可能なパーマネントヘア加工用薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、グリコールモノアルキルエーテル類とメルカプトカルボン酸とを反応して得られるメルカプトカルボン酸アルコキシエステルをケラチン還元性物質として使用することで、これまでにエステル類で懸念されていた臭気や感作性の低減ができること、また、メルカプト基を含有するアミド類では懸念される化合物自体の感作性あるいは含有不純物による感作性などがないこと、さらには充分な浸透性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下の(I)〜(VIII)の事項を含むものである。
(I)下記式(1)および/または下記式(2)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするパーマネントヘア加工用薬剤。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は総炭素数3〜15のアルコキシアルキル基を表す。ただし、R2のアルキレン部分にはエーテル結合が含ま
れていてもよい。)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R3は総炭素数3〜15のアルコキシアルキル基を表す。ただし、R3のアルキレン部分にはエーテル結合が含まれていてもよい。)
(II)上記式(1)中のR1が水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基のいず
れかであり、R2が炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜8のアルキレン基とからな
るアルコキシアルキル基(ただし、R2を構成する上記アルキレン基にはエーテル結合が
含まれていてもよい。)である上記式(1)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする上記(I)に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
(III)上記式(2)中のR3が炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜8のアルキ
レン基とからなるアルコキシアルキル基(ただし、R3を構成する上記アルキレン基には
エーテル結合が含まれていてもよい。)である上記式(2)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする上記(I)に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
(IV)上記式(1)および/または上記式(2)で示される化合物がチオグリコール酸還元力換算で0.5〜30%となる量含有されていることを特徴とする上記(I)に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
(V)上記式(1)および/または上記式(2)で示される化合物を2種以上含むことを特徴とする上記(I)または上記(IV)に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
(VI)pHが5.5〜9.7となるように調整されていることを特徴とする上記(I)に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
(VII)メルカプトカルボン酸とアルコールとの脱水反応、あるいは
メルカプトカルボン酸メチルエステル、もしくはメルカプトカルボン酸エチルエステルとアルコールとのエステル交換反応により上記式(1)または上記式(2)で示される化合物を製造し、
該化合物を用いて、上記(I)に記載のパーマネントヘア加工用薬剤を製造する方法。
(VIII)上記式(1)および/または上記式(2)で示される少なくとも1種の化合物を使用することを特徴とする髪の毛のパーマネント加工方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルを含有するパーマネントヘア加工用薬剤は、中性から弱酸性のpH領域においても優れたパーマネント加工実用性能を有する。また、上記メルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル含有濃度が低濃度であっても優れたパーマネント加工実用性能を有する。したがって、本発明に係るパーマネント加工用薬剤は髪の毛のパーマネント加工に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るパーマネントヘア加工用薬剤は、下記式(1)および/または下記式(2)で示されるメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルが少なくとも1種含まれていることを特徴とする。
【0018】
〔化合物(1)〕
まず、化合物(1)について説明する。化合物(1)は下記式(1)で示される化合物である。
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は総炭素数3〜15のアルコキシアルキル基を表す。ただし、R2のアルキレン部分にはエーテル結合が含ま
れていてもよい。)
上記式(1)中のR1は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは
、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基のいずれかである。
【0021】
また、上記式(1)中のR2は末端のアルコキシ基とそれに結合するアルキレン基とか
らなる。このアルキレン基部分は、その炭素原子が酸素原子に置換されてエーテル結合を含んでもよい。R2の総炭素数は3〜15が好ましい。R2に含まれる上記アルコキシ基部分の炭素数は1〜4が好ましい。R2に含まれる上記アルキレン基部分の炭素数は1〜8
が好ましい。
【0022】
上記R2としては、例えば2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−プロポキシ
エチル、2−イソプロポキシエチル、2−ブトキシエチル、2−イソブトキシエチル、2−tert-ブトキシエチル、5−メトキシ−3−オキサペンチル、5−エトキシ−3−オキ
サペンチル、5−プロポキシ−3−オキサペンチル、5−イソプロポキシ−3−オキサペンチル、5−ブトキシ−3−オキサペンチル、5−イソブトキシ−3−オキサペンチル、5−tert−ブトキシ−3−オキサペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサオクチル、8−プロポキシ−3,6−ジオキサオクチル、8−イソプロポキシ−3,6−ジオキサオクチル、8−ブトキシ−3,6−ジオキサオクチル、8−イソブトキシ−3,6−ジオキサオクチル、8−tert−ブトキシ−3,6−ジオキサオクチル、2−メトキシ−1−メチルエチル、2−エトキシ−1−メチルエチル、2−プロポキシ−1−メチルエチル、2−イソプロポキシ−1−メチルエチル、2−ブ
トキシ−1−メチルエチル、2−イソブトキシ−1−メチルエチル、2−tertブトキシ−1−メチルエチル、5−メトキシ−1,4−ジメチル−3−オキサペンチル、5−エトキシ−1,4−ジメチル−3−オキサペンチル、5−プロポキシ−1,4−ジメチル−3−オキサペンチル、5−イソプロポキシ−1,4−ジメチル−3−オキサペンチル、5−ブトキシ−1,4−ジメチル−3−オキサペンチル、5−イソブトキシ−1,4−ジメチル−3−オキサペンチル、5−tert−ブトキシ−1,4−ジメチル−3−オキサペンチル、8−メトキシ−1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサオクチル、8−エトキシ−1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサオクチル、8−プロポキシ−1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサオクチル、8−イソプロポキシ−1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサオクチル、8−ブトキシ−1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサオクチル、8−イソブトキシ−1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサオクチル、8−tert−ブトキシ−1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサオクチルなどが挙げられる。これらの中でも2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−メトキシ−1−メチルエチル、2−エトキシ−1−メチルエチルが好ましい。
【0023】
上記式(1)で示される化合物の好ましい具体例としては、チオグリコール酸2−メトキシエチルエステル、チオグリコール酸2−エトキシエチルエステル、チオグリコール酸2−メトキシ−1−メチルエチルエステル、チオグリコール酸2−エトキシ−1−メチルエチルエステル、チオ乳酸2−メトキシエチルエステル、チオ乳酸2−エトキシエチルエステル、チオ乳酸2−メトキシ−1−メチルエチルエステル、チオ乳酸2−エトキシ−1−メチルエチルエステルなどが挙げられる。
【0024】
〔化合物(2)〕
つぎに、化合物(2)について説明する。化合物(2)は下記式(2)で示される化合物である。
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、R3は総炭素数3〜15のアルコキシアルキル基を表す。ただし、R3のアルキレン部分にはエーテル結合が含まれていてもよい。)
また、上記式(2)中のR3は末端のアルコキシ基とそれに結合するアルキレン基とか
らなる。このアルキレン基部分は、その炭素原子が酸素原子に置換されてエーテル結合を含んでもよい。R3の総炭素数は3〜15が好ましい。R3に含まれる上記アルコキシ基部分の炭素数は1〜4が好ましい。R3に含まれる上記アルキレン基部分の炭素数は1〜8
が好ましい。
【0027】
上記R3の具体例としては、上記化合物(1)の官能基R2と同様のものが挙げられる。これらの中でも2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−メトキシ−1−メチルエチル、2−エトキシ−1−メチルエチルが好ましい。
【0028】
上記式(2)で示される化合物の好ましい具体例としては、メルカプトプロピオン酸2−メトキシエチルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エトキシエチルエステル、メルカプトプロピオン酸2−メトキシ−1−メチルエチルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エトキシ−1−メチルエチルエステルなどが挙げられる。
【0029】
〔化合物(1)および(2)の製造方法〕
本発明に用いられる上記式(1)、(2)で示されるメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルは、好適には、メルカプトカルボン酸もしくはそのエステル(以下総称して「メルカプトカルボン酸類」ということもある。)を酸触媒存在下にアルコキシアルキルアルコールと混合加熱して脱水反応もしくはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。
【0030】
メルカプトカルボン酸エステルを使用して上記反応を行う場合は、メルカプトカルボン酸メチル、メルカプトカルボン酸エチルを使用するのが好ましい。
アルコキシアルキルアルコールの使用量は、通常、メルカプトカルボン酸類に対して等モル、もしくは、溶媒を兼ねて等モル以上、好ましくは、メルカプトカルボン酸類1モルに対して1〜10モルである。なお、アルコキシアルキルアルコールをメルカプトカルボン酸エステルに対して過剰に使用した場合には、反応後、未反応の原料を回収して再使用することが好ましい。
【0031】
用いる酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、トルエンスルホン酸、硫酸残基を有するイオン交換樹脂などが挙げられる。酸触媒の配合量としては、メルカプトカルボン酸類に対して0〜10質量%添加するのが好ましい。
【0032】
反応時には、エステル化の進行に伴い低分子アルコールや水を生成するが、これらを除去しながら反応することにより収率を向上することができる。これら生成物の除去方法としては、加熱留去、共沸留去、モレキュラーシーブスによる除去、硫酸ナトリウムによる脱水除去などが挙げられる。低沸点アルコールあるいは水、原料アルコール、メルカプトカルボン酸類を除去した後の原液には、生成したメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル以外にも、チオグリコール酸8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステルなどの副反応による高沸点物質も生成する。これら化合物も含め有効に利用するためにこの原液はそのままパーマネントヘア加工用薬剤に利用してもよいが、原液をさらに減圧下で蒸留してメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルを精製して利用することが好ましい。
【0033】
蒸留精製により得られる精製物中のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルの純度は、精製物中に含まれるメルカプト基を有する化合物全質量に対して99質量%以上であることが好ましい。また、上記精製物中には、精製物全質量に対して原料であるモノアルコキシアルキルアルコールを50質量%以下、好ましくは20質量%以下含んでいてもよい。得られた精製物は、ほとんどの場合液状物質であり、そのままパーマネント加工用薬剤として使用することができる。
【0034】
また、原料がメルカプトカルボン酸エステルの場合は、強い臭気を有するので1質量%以下まで除去するのが好ましく、更に好ましくは、0.1質量%以下である。一方、メルカプトカルボン酸を原料とする場合には、未反応のメルカプトカルボン酸が残存していてもよい。
【0035】
〔パーマネントヘア加工用薬剤〕
本発明に係るパーマネントヘア加工用薬剤は、上記式(1)で示されるメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルが少なくとも1種含まれていること、および/または上記式(2)で示されるメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルが少なくとも1種含まれていることを特徴とする。
【0036】
本発明に用いられる式(1)または式(2)で表されるメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルは、単独で使用することも可能であるが、2種類以上組み合わせて、あるいは式(1)で示される化合物と式(2)で示される化合物を組み合わせて使用する
ことができる。
【0037】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、従来から使用されているチオグリコール酸、チオ乳酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、アシルシステアミンおよびそれらの塩類、または、亜硫酸塩と混合して使用することも可能である。
【0038】
本発明に係るパーマネント加工用薬剤には、上記式(1)および/または式(2)で表されるメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルが、チオグリコール酸還元力換算で好ましくは0.5〜30%、より好ましくは1〜15%、最も好ましくは2〜10%となる量含有されている。
【0039】
チオグリコール酸還元力換算の値が上記数値範囲よりも小さい場合は、パーマとしての性能が全く出ない場合がある。一方、上記数値範囲を超えると毛髪の極端な縮毛、キューティクルの部分剥離が促進されることで毛髪ダメージが大きくなるので好ましくない場合がある。
【0040】
なお、チオグリコール酸還元力換算とは、医薬部外品に関するパーマネントウエーブ用剤品質規格で施術ごとに定められたケラチン還元性物質濃度の表記法であり、下記の方法に準じて測定された濃度である。
【0041】
試料10mLを100mLのメスフラスコに正確に取り、化粧品原料基準に適合する精製水(以下、単に「水」と記載する。)を加えて全量を100mLとし、これを試験溶液とする。
【0042】
試験溶液20mLを正確に取り、水50mLおよび30%硫酸5mLを加え、穏やかに加熱し、5分間煮沸する。冷却後、0.1Nヨウ素液で滴定し、その消費量をAmLとする(指示薬:デンプン試液 3mL)。
【0043】
得られた滴定結果を下式によりチオグリコール酸換算の含有率として算出する。
還元性物質の含有率(チオグリコール酸として)(%)=0.4606×A
また、化粧品分類のパーマネントウエーブ用剤(カーリング剤)も同様の規制値により使用量が規定されている。
【0044】
なお、本発明のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルに加えて、チオグリコール酸、チオ乳酸などのケラチン還元物質を添加する際には、調製後のパーマネントヘア加工用薬剤の総還元力の分析値が上記の範囲内となるように混合量を調整することが好ましい。
【0045】
本発明に係るパーマネントヘア加工用薬剤は、上記(1)、(2)で示されるメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルを含む限り特に形態に制限はないが、例えば、液状、泡状、ゲル状、クリーム状、ペースト状にして使用可能である。そして、その形態に応じて、液タイプ、スプレータイプ、エアゾールタイプ、クリームタイプ、ゲルタイプのいずれかのタイプの薬剤として使用できる。
【0046】
本発明に係る薬剤には、毛髪の加工性能を向上などを目的として種々の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、膨潤剤、浸透促進剤、緩衝剤、油剤、増粘剤、毛髪保護剤、湿潤剤、pH調製剤、乳化剤、香料、染料、安定化剤、臭気マスキング剤などを用いることができる。
【0047】
膨潤剤、浸透促進剤としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1,2
−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、尿素、2−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0048】
緩衝剤としては、無機緩衝剤のほか、アンモニウム塩−アルギニン、−リジンなどの塩基性アミノ酸を含む緩衝剤が挙げられる。
その他、油剤としては、パラフィン、流動パラフィン、ミツロウ、スクワラン、ホホバ油、オリーブ油、エステル油、トリグリセリド、ワセリン、ラノリンなどが挙げられる。
【0049】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸塩、ペクチン、トラガントガム、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール、カオリン、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ウンデシル酸、イソステアリン酸などの脂肪酸、ワセリンなどが挙げられる。
【0050】
毛髪保護成分としては、コラーゲンやケラチンなどの加水分解物およびその誘導体などが挙げられる。
湿潤剤あるいは乳化剤としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ソルビトール、植物抽出エキス、ビタミン類、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性の界面活性剤やポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステエアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテルなどのエーテル型非イオン界面活性剤、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコンオイル、アルコール変性シリコンオイル、フッ素変性シリコンオイル、ポリエーテル変性シリコンオイル、アルキル変性シリコンオイルなどのシリコン誘導体などが挙げられる。
【0051】
pH調整剤としては、塩酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸などの有機酸あるいは、そのナトリウム塩、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ剤が挙げられる。
【0052】
安定剤としては、例えば過剰還元防止を目的として添加される、還元化合物のジスルフィド体のほか、ジチオジグリコール酸などがあげられる。
本発明に係る薬剤のpHについては特に制限はなく、pH9程度のアルカリ性で使用してもよいが、好ましくはpH5.5〜9.7、より好ましくは、pH6〜8.5の範囲で使用することが好ましい。薬剤のpHが上記範囲内にあると皮膚刺激性も少なく、毛髪や頭皮の損傷を引き起こす原因となならないからである。また、本発明に係る薬剤はpHを上記範囲内として使用してもパーマネント加工の実用的な性能を発揮することができる。
【0053】
上記範囲内に薬剤のpHを制御するためには、例えば上記pH調整剤を薬剤に添加することによって行うことができる。
〔パーマネント加工方法〕
上記薬剤を含むパーマネントヘア加工用薬剤の使用方法にはパーマネントヘア加工に用いられる限り特に制限するものはないが、例えば、毛髪に対するパーマネントウエーブ処理に用いる場合には、下記の方法で使用できる。なお、パーマネントウエーブ処理とは、パーマネントウエーブ形成処理、パーマネントウエーブ処理によるウエーブのばし処理お
よび縮毛矯正処理を含めたものをいう。
(1)本発明に係るメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルを含む薬剤を毛髪に湿潤し、毛髪に型付けをするためのロッドで巻き込む。
なお、縮毛矯正の際には、ロッドを使用しない。また、水巻などで毛髪を固定して上記薬剤を湿潤しても良い。
(2)上記薬剤で毛髪を湿潤した後に静置する。その際、30℃から40℃程度の温度に加温することが好ましい。
(3)酸化剤を含有する組成物によって毛髪を酸化して、毛髪を固定する。
(4)固定した毛髪からロッドを取り外し、毛髪を洗浄、シャンプー処理をし、乾燥する。
なお、(3)で使用する酸化剤としては、一般的に使用される臭素酸ナトリウムの3〜8%程度の水溶液や過酸化水素、過ホウ酸ナトリウムなどの希釈液が使用できる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
〔合成例1〕
チオグリコール酸2−メトキシエチルエステル(TGE−1)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオグリコール酸メチル300g、2−メトキシエタノール320g、および95%硫酸3.6gを入れ、温度80℃下、5時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで、反応の進行により生成するメタノールを留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率42%であった。
【0055】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(0.6kPa/沸点65℃)を行い、反応液を精製してチオグリコール酸2−メトキシエチルエステル(TGE−1)123gを得た。
【0056】
なお、反応液中の成分濃度分析は以下の条件で行った。
HPLC分析:
カラム:昭和電工株式会社製
Shodex NN−G(ガードカラム)+ NN−814
検出器:RI検出器、UV検出器(210nm)
溶離液:0.1%リン酸+0.008Mリン酸二水素一カリウム水溶液
流量:1.0mL/min
インジェクション量:20μL
得られたTGE−1をガスクロマトグラフ質量(GC−MS)分析及び赤外吸光(IR)分析により同定したときの分析チャートを図1及び図2に示す.また、分析結果を以下に示す。
GC−MS:118,77,58,45,31
IR(Zn−Ce):2932,2889,1732,1408,1123,1099,1033,865
なお、同定に用いた分析機器及び条件を以下に示す。
【0057】
GC−MS分析
装置:島津株式会社製GC−17A+GCMS−QP5000
カラム:GLサイエンス TC−5(内径0.25mm、膜厚0.25μm、長さ30m)
キャリアガス:ヘリウム
流量:0.87cc/min
スプリット比:80:1
昇温プログラム:70℃(5min)→10℃/min→250℃(10min)
インジェクション量:1μL
IR分析
装置:日本分光 FT/IR−7300
分析方法:KBr法、ATR法(Zn−Ce)
〔合成例2〕
チオグリコール酸2−エトキシエチルエステル(TGE−2)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオグリコール酸メチル300g、2−エトキシエタノール374g、および95%硫酸3.6gを入れ、温度80℃下、5時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成するメタノールを留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、ガスクロマトグラフィー(GC)測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率44%であった。
【0058】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(2.1kPa/沸点99〜103℃)を行い、反応液を精製してチオグリコール酸2−エトキシエチルエステル(TGE−2)89gを得た。
【0059】
なお、反応液中の成分濃度分析は以下の条件にて実施した。
GC分析:
カラム:GLサイエンス TC−5(内径0.25mm、膜厚0.25μm、長さ30m)
キャリアガス:ヘリウム
流量:0.87cc/min
スプリット比:80:1
昇温プログラム:70℃(5min)→10℃/min→250℃(10min)
インジェクション量:1μL
TGE−2を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:91,72,59,45,31
IR(Zn−Ce):2976,2870,1733,1275,1117,1038,961,863
〔合成例3〕
チオグリコール酸2−ブトキシエチルエステル(TGE−3)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオグリコール酸メチル300g、2−n−ブトキシエタノール489g、および95%硫酸3.6gを入れ、温度80℃下、7時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成するメタノールを留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率35%であった。
【0060】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(0.5kPa/沸点84℃)を行い、反応液を精製してチオグリコール酸2−ブトキシエチルエステル(TGE−3)136gを得た。
【0061】
TGE−3を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:145,134,118,101,85,64
IR(Zn−Ce):2957,2935,2869,1736,1456,1275,1120,1031
〔合成例4〕
チオグリコール酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル(TGE−4)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオグリコール酸メチル300g、ジエチレングリコールモノメチルエーテル339g、および95%硫酸3.3gを入れ、温度80℃下、5時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成するメタノールを留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率32%であった。
【0062】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(0.6kPa/沸点101℃)を行い、反応液を精製してチオグリコール酸5−メトキシ−3−オキサペンチルエステル(TGE−4)136gを得た。
【0063】
TGE−4を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:119,75,59,45,31
IR(Zn−Ce):2879,1733,1453,1277,1105,1043,961,849
〔合成例5〕
チオグリコール酸5−エトキシ−3−オキサペンチルエステル(TGE−5)
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオグリコール酸メチル300g、ジエチレングリコールモノエチルエーテル409g、および95%硫酸3.0gを入れ、温度80℃下、5時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで、反応の進行により生成するメタノールを留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率31%であった。その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(0.6kPa/沸点98℃)を行い、反応液を精製してチオグリコール酸5−エトキシ−3−オキサペンチルエステル(TGE−5)122gを得た。
【0064】
TGE−5を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:162,135,118,86,72,59,45
IR(Zn−Ce):2869,1735,1449,1276,1108,1032
〔合成例6〕
チオグリコール酸8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステル(TGE−6)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオグリコール酸メチル300g、トリエチレングリコールモノエチルエーテル462g、および95%硫酸3.1gを入れ、温度80℃下、5時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成するメタノールを留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定によって測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率32%であった。
【0065】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留を行い、低沸点成分を留去して反応液を精製した。反応釜中に残存する精製反応液にジエチルエーテル500gを加えて溶解し、この溶解液を水500gで洗浄した。ついで、得られたエーテル溶液を水300gで再度洗浄した。この様にして得られたエーテル溶液からエーテルを減圧下で留去することにより、油状物質であるチオグリコール酸8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステル(TGE−6)184gを得た。
【0066】
TGE−6を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:119,101,89,73,59,45,31
IR(Zn−Ce):2874,1734,1277,1098,1041,958,850
〔合成例7〕
チオグリコール酸2−メトキシ−1−メチルエチルエステル(TGE−7)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオグリコール酸メチル213g、1−メトキシ−2−プロパノール195g、および95%硫酸2.2gを入れ、温度80℃下、5時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成するメタノールを留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、GC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率17%であった。
【0067】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(2.8kPa/沸点102℃)を行い、反応液を精製してチオグリコール酸2−メトキシ−1−メチルエチルエステル(TGE−7)53gを得た。
【0068】
TGE−7を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:132,116,103,86,75,59,45,31
IR(Zn−Ce):2983,1729,1453,1274,1151,1110,1097,1074,968
〔合成例8〕
チオグリコール酸2−エトキシ−1−メチルエチルエステル(TGE−8)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオグリコール酸メチル217g、1−エトキシ−2−プロパノール229g、および95%硫酸2.2gを入れ、温度80℃下、7時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成するメタノールを留去した。反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率27%であった。
【0069】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(2.8kPa/沸点102℃)を行い、反応液を精製してチオグリコール酸2−エトキシ−1−メチルエチルエステル(TGE−8)59gを得た。
【0070】
TGE−8を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:132,119,103,87,75,59,45,31
IR(Zn−Ce):2978,2872,1732,1275,1144,1112,1063,960
〔合成例9〕
チオグリコール酸 8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステル(TGE−9)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオグリコール酸メチル240g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル361g、および95%硫酸2.4gを入れ、温度80℃下、5時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成するメタノールを留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率25%であった。
【0071】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(0.5kPa/沸点91℃)を行い、反応液を精製してチオグリコール酸8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチルエステル(TGE−9)73gを得た。
【0072】
TGE−9を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:177,148,133,73,59,45
IR(Zn−Ce):2935,1732,1452,1274,1101,1061,1024,963
〔合成例10〕
チオ乳酸2−メトキシエチルエステル(TNE−1)の合成
温度計、冷却管付きの200mLの4つ口フラスコにチオ乳酸86g、2−メトキシエタノール61g、および95%硫酸1gを入れ、温度100℃下、5時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成する水を留去した。反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率54%であった。
【0073】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(6.4kPa/沸点124℃)を行い、反応液を精製してチオ乳酸2−メトキシエチルエステル(TNE−1)70gを得た。
TNE−1を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:164,132,119,103,61,45,31
IR(Zn−Ce):2933,1736,1454,1328,1175
〔合成例11〕
チオ乳酸2−エトキシエチルエステル(TNE−2)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオ乳酸202g、2−エトキシエタノール190g、および95%硫酸2.1gを入れ、温度100℃下、3時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成する水を留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率56%であった。
【0074】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(2.6kPa/沸点102℃)を行い、反応液を精製してチオ乳酸2−エトキシエチルエステル(TNE−2)245gを得た。
【0075】
TNE−2を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:132,119,100,85,61,57
IR(Zn−Ce):2976,1733,1452,1243,1169,1121,1069,1028
〔合成例12〕
チオ乳酸2−ブトキシエチルエステル(TNE−3)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオ乳酸196g、2−ブトキシエタノール253g、および95%硫酸1.9gを入れ、温度100℃下、3時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成する水を留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率77%であった。
【0076】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(2.8kPa/沸点115℃)を行い、反応液を精製してチオ乳酸2−ブトキシエチルエステル(TNE−3)313gを得た。
【0077】
TNE−3を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:146,105,86,57
IR(Zn−Ce):2959,2934,1735,1453,1326,1246,
1170,1124,1069
〔合成例13〕
チオ乳酸エステル2−エトキシ−1−メチルエチル(TNE−4)の合成
温度計、冷却管付きの1000mLの4つ口フラスコにチオ乳酸200g、1−エトキシ−2−プロパノール216g、および95%硫酸2.1gを入れ、温度100℃下、3時間撹拌を行った。上記反応中、冷却管上部からアスピレーターを使用して微減圧とすることで反応の進行により生成する水を留去した。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして、HPLC測定により収率を求めた。反応液中の目的成分濃度から換算して、収率39%であった。
【0078】
その後、反応液を直接濃縮し、さらに減圧蒸留(2.4kPa/沸点101℃)を行い、反応液を精製してチオ乳酸2−エトキシ−1−メチルエチルエステル(TNE−4)224gを得た。
【0079】
TNE−4を同定したときの分析結果を以下に示す。
GC−MS:178,147,132,117,72
IR(Zn−Ce):2978,1732,1452,1173,1112,1061,1024
〔実施例1〕
合成例1で得たメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルTGE−1を含有する下記パーマネントウエーブ用第1液、および下記パーマネントウエーブ用第2液を用いてパーマネントウェーブ処理を行い、ウェーブ効率を求めた。
【0080】
〈パーマネントウエーブ用第1液の調製〉
合成例1で得たメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルTGE−1 22mmol、プロピレングリコール10g、エデト酸二ナトリウム0.2g、およびポリオキシエチレンステアリルエーテル1gに、所望のpH(pH6.5,7.5,9)となるようにモノエタノールアミン、および精製水を加えて、全量で100gとなるように混合してパーマネントウエーブ用第1液を調製した。
【0081】
このようにして得られた薬剤中のTGE−1の含有量はチオグリコール酸還元力換算で2%に相当する。
〈パーマネントウエーブ用第2液の調製〉
臭素酸ナトリウム5g、および精製水95gを混合してパーマネントウエーブ用第2液を得た。
【0082】
〈パーマネントウエーブ処理〉
ウエーブ効率は、フレグランスジャーナル臨時増刊(1984年、No.5、442ページ)記載の方法に従い、キルビー法により評価した。比較薬剤としてはシステアミン塩酸塩を含む液を使用した。
【0083】
まず、中国人毛髪(長さ約20cm)をキルビーの器具に固定した。ついで、35℃に加温した下記パーマネントウエーブ用第1液に固定した毛髪を20分間浸した。その処理後、第1液から取り出した毛髪から液が滴らない程度に毛髪を軽く拭き取った。この毛髪を、臭素酸塩からなる下記パーマネントウエーブ用第2液を湿潤させて、25℃下、10分間静置した。第2液による上記処理が完了した後に、流水を用いて毛髪を洗浄し、キルビーの器具から毛髪を外した後、毛髪を乾燥した。このようにして得られた乾燥毛髪の採寸を行い、下記ウエーブ効率計算式によりウエーブ効率を算出した。結果を表1に示す。
【0084】
ウエーブ効率(%)=100−[100×(B−A)]÷(C−A)
A:キルビー器具の1番目と6番目の棒の間隔(棒の中心点を実測)
B:カールした毛髪の6山の長さ
C:カールした毛髪を直線に伸ばした時の6山分の長さ
〔実施例2〜13〕
実施例1で用いたTGE−1を、表1に記載のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルに変更する以外は、実施例1と同様にパーマネントウエーブ用第1液の調製を行った。なお、これらパーマネントウエーブ用第1液の表1に記載のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルの含有量はチオグリコール酸還元力換算で2%に相当する。
【0085】
このようにして得られたパーマネントウエーブ用第1液と、実施例1で用いたパーマネント用第2液を用いて、実施例1と同様にパーマネントウエーブ処理を行い、ウエーブ効率を算出した。結果を表1に示す。
【0086】
〔比較例1〕
実施例1で用いたTGE−1を、表1に記載のシステアミン塩酸塩に変更する以外は、実施例1と同様にパーマネントウエーブ用第1液の調製を行った。なお、このようにして得られたパーマネントウエーブ用第1液のシステアミン塩酸塩の含有量はチオグリコール酸還元力換算で2%に相当する。
【0087】
このようにして得られたパーマネントウエーブ用第1液と、実施例1で用いたパーマネント用第2液を用いて、実施例1と同様にパーマネントウエーブ処理を行い、ウエーブ効率を算出した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
本発明に係るメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステルを含有するパーマネントヘア加工用薬剤は、中性から酸性のpH領域においてもアルカリ性のpH領域とほぼ同程度の安定したウェーブ効率が得られる。一方、比較用に用いたシステアミン塩酸塩を含有するパーマネントヘア加工用薬剤は、中性から酸性のpH領域では、pHの低下に伴なってウェーブ効率が大きく低下する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の合成例1で得られた化合物のガスクロマトグラフ質量分析の結果を示す図である。
【図2】本発明の合成例1で得られた化合物の赤外吸光分析の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)および/または下記式(2)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするパーマネントヘア加工用薬剤。
【化1】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は総炭素数3〜15のアルコキシアルキル基を表す。ただし、R2のアルキレン部分にはエーテル結合が含ま
れていてもよい。)
【化2】

(式中、R3は総炭素数3〜15のアルコキシアルキル基を表す。ただし、R3のアルキレン部分にはエーテル結合が含まれていてもよい。)
【請求項2】
上記式(1)中のR1が水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基のいずれかで
あり、R2が炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜8のアルキレン基とからなるアル
コキシアルキル基(ただし、R2を構成する上記アルキレン基にはエーテル結合が含まれ
ていてもよい。)である上記式(1)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
【請求項3】
上記式(2)中のR3が炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜8のアルキレン基と
からなるアルコキシアルキル基(ただし、R3を構成する上記アルキレン基にはエーテル
結合が含まれていてもよい。)である上記式(2)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
【請求項4】
上記式(1)および/または上記式(2)で示される化合物がチオグリコール酸還元力換算で0.5〜30%となる量含有されていることを特徴とする請求項1に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
【請求項5】
上記式(1)および/または上記式(2)で示される化合物を2種以上含むことを特徴とする請求項1または請求項4に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
【請求項6】
pHが5.5〜9.7となるように調整されていることを特徴とする請求項1に記載のパーマネントヘア加工用薬剤。
【請求項7】
メルカプトカルボン酸とアルコールとの脱水反応、あるいは
メルカプトカルボン酸メチルエステル、もしくはメルカプトカルボン酸エチルエステルとアルコールとのエステル交換反応により上記式(1)または上記式(2)で示される化合物を製造し、
該化合物を用いて、請求項1に記載のパーマネントヘア加工用薬剤を製造する方法。
【請求項8】
上記式(1)および/または上記式(2)で示される少なくとも1種の化合物を使用することを特徴とする髪の毛のパーマネント加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−45199(P2006−45199A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188257(P2005−188257)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】