説明

パール光沢組成物

【課題】パール光沢剤が高濃度でありながら低粘度で流動性があり、安定性、分散性の良好なパール光沢組成物の提供。
【解決手段】(A)脂肪酸グリコールエステル 15〜30重量%、(B)脂肪酸モノアルキロールアミド 3〜15重量%、(C)アルキル硫酸エステル塩 5〜15重量%、(D)HLB9〜12のポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤 0.5〜10重量%、及び(E)水を含有する濃厚パール光沢組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パール光沢剤が高濃度でありながら低粘度で流動性があり、安定性、分散性の良好な、濃厚パール光沢組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パール光沢組成物として、特許文献1には、真珠光沢性濃縮物、該濃縮物の製法が開示され、真珠光沢剤として脂肪酸グリコールエステル、増粘剤として脂肪酸アルキロールアミド、さらに陰イオン性洗剤としてナトリウムラウリルエーテルサルフェート2EOを含有する組成物が記載されている。
しかし、このパール光沢組成物は、十分なパール感を得ようと脂肪酸グリコールエステルの配合量を増やすと、室温下での粘度が高く、流動性がなくなってしまう。
【0003】
【特許文献1】特開昭58-38798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、パール光沢剤が高濃度でありながら低粘度で流動性があり、安定性、分散性の良好なパール光沢組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、脂肪酸グリコールエステル、脂肪酸モノアルキロールアミド及びアルキル硫酸エステル塩とともに、特定の非イオン界面活性剤を用いれば、パール光沢剤が高濃度でありながら低粘度で流動性があり、安定性及び分散性が良好な濃厚パール光沢組成物が得られることを見出した。
又、特定のHLBの非イオン界面活性剤のみがこのような系の粘度を低くできることは全く知られていなかった。
【0006】
本発明は、次の成分(A)〜(E):
(A)脂肪酸グリコールエステル 15〜30重量%、
(B)脂肪酸モノアルキロールアミド 3〜15重量%、
(C)アルキル硫酸エステル塩 5〜15重量%、
(D)HLB9〜12のポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤
0.5〜10重量%、
(E)水
を含有する濃厚パール光沢組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパール光沢組成物は、高濃度でありながら低粘度で流動性があり、またパール光沢が美しく、しかもその安定性に優れる。さらに、界面活性剤を含有する液状又はペースト状組成物に添加してパール外観を付与することができ、特にアニオン界面活性剤を主活性剤として用いている、シャンプー、ボディシャンプー等への分散性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)の脂肪酸グリコールエステルとしては、例えば次の一般式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1 は炭素数13〜21の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Yは水素原子又は基−COR1 (R1 は前記と同じ意味を有する)を示し、mは1〜3の数で、平均付加モル数を意味する)
で表わされるものが挙げられる。
【0011】
式中、R1 としては、炭素数13〜21のアルキル基、アルケニル基が好ましく、具体的には、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘンイコシル基等が挙げられる。また、脂肪酸グリコールエステルとしては、一般式(1)のように、モノカルボン酸エステル、ジカルボン酸エステルのいずれでも良い。
【0012】
脂肪酸グリコールエステルとしては、融点が50℃以上の結晶性のものが好ましく、具体的には、モノステアリン酸エチレングリコール、モノパルミチン酸エチレングリコール、モノイソステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジベヘン酸エチレングリコール等のモノエチレングリコール体;これらのジエチレングリコール体;並びにこれらのトリエチレングリコール体等が挙げられる。特に、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ジベヘン酸エチレングリコールが好ましく、さらにジステアリン酸エチレングリコールが好ましい。
【0013】
成分(A)の脂肪酸グリコールエステルは、1種以上を用いることができ、全組成中に15〜30重量%、好ましくは15〜25重量%、特に好ましくは18〜25重量%配合される。15重量%未満では十分なパール光沢が得られず、30重量%を超えると粘度が高くなり、流動性がなくなってしまう。
【0014】
本発明で用いる成分(B)の脂肪酸モノアルキロールアミドとしては、例えば次の一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R2 は炭素数7〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R3 はエチレン基又はプロピレン基を示す)
で表わされるものが挙げられる。
【0017】
式中、R2 としては、炭素数7〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、具体的には、ウンデシル基、トリデシル基、ヘプタデシル基等が挙げられる。
また、R3 としては、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられる。
【0018】
脂肪酸モノアルキロールアミドとしては、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノプロパノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ科植物油脂肪酸モノエタノールアミド等が好ましく、特にヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミドが好ましい。
【0019】
成分(B)の脂肪酸モノアルキロールアミドは、1種以上を用いることができ、全組成中に3〜15重量%、好ましくは3〜10重量%、特に好ましくは5〜10重量%配合される。3重量%未満では優れたパール感が得られず、15重量%を超えると粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0020】
本発明で用いる成分(C)のアルキル硫酸塩としては、例えば次の一般式(3)
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R4 は炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R5 はエチレン基又はプロピレン基を示し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムイオン又は炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル置換アンモニウムを示す。nは0〜8の数で、平均付加モル数を意味する)
で表わされるポリオキシアルキレン基を有していてもよいアルキル硫酸エステル塩などが挙げられる。
【0023】
式中、R4 としては、炭素数8〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、具体的には、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。R5 としては、前記R3 と同様のものが挙げられる。nは0〜4が好ましい。
【0024】
成分(C)としては、特にラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンが好ましい。
【0025】
成分(C)のアルキル硫酸塩は、1種以上を用いることができ、全組成中に5〜15重量%、好ましくは8〜15重量%、特に好ましくは8〜13重量%配合される。5重量%未満では、各成分を均一に混合することができず、15重量%を超えると、粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0026】
本発明で用いる成分(D)のノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するもので、HLB15未満、好ましくはHLB9〜12のものである。HLBが15以上のものでは、組成物が乳化してしまい、パールが得られず、粘度を低くすることができない。
なお、HLBとは親水性−親油性のバランス(Hydrophilic-Lypophilic Balance)を示す指標であり、本発明においては小田・寺村らによる次式を用いて算出した値を用いている。
【0027】
【数1】

【0028】
具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸モノアルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸ジアルカノールアミド等が挙げられる。
これらのうち、一般式(4)
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、R6 は炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基、R7 はエチレン基又はプロピレン基、Lは1〜10の数で、平均付加モル数を意味する)
で表わされるポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、特にポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましい。
【0031】
成分(D)のノニオン界面活性剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、特に好ましくは1〜5重量%配合される。0.5重量%未満では、組成物の粘度を低くすることができず、10重量%を超えると、優れたパール感が得られない場合がある。
【0032】
成分(E)の水は、全組成中に25〜75重量%、特に40〜75重量%、さらに50〜75重量%配合するのが、組成物の低粘度維持の観点から好ましい。
【0033】
本発明のパール光沢組成物には、前記必須成分のほか、例えばpH調整剤、防腐剤、塩類、アルコール類、ポリオール類等を適宜配合できる。
【0034】
本発明のパール光沢組成物は、通常の方法に従って製造でき、例えば前記成分(A)〜(E)を、(i):パール光沢成分である成分(A)の融点以上の温度下で夫々の原料を均一に混合して乳化する工程、(ii):(i)で得られる乳化物を冷却し、パール光沢成分を晶析させる工程、(iii):(ii)で得られる組成物をさらに冷却し、晶析物を安定化させる工程により、製造され、必要に応じてこれら(i)〜(iii)の何れかの工程で、任意成分を添加・均一混合できる。夫々の工程の温度は、原料の種類や、攪拌等の操作条件で異なるが、概ね(i):60〜85℃、(ii):40〜60℃、(iii)15〜40℃である。
【0035】
本発明のパール光沢組成物は、各配合成分を選択等することにより、30℃における粘度が1,000〜10,000mPa・s、特に1,000〜8,000mPa・sであるのが好ましい。
また、パール光沢成分である成分(A)の脂肪酸グリコールエステルの結晶は、平均粒子径が2〜20μm、特に5〜15μmであるのが、より美しい光沢が得られ、安定性にも優れるので好ましい。
【実施例】
【0036】
実施例1
表1に示す組成のパール光沢組成物を常法により製造し、その外観、30℃における粘度、安定性及び分散性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0037】
(評価方法)
(1)外観:
100mL容の透明ガラス容器にパール光沢組成物80gを入れ、肉眼にてパール光沢の外観を観察し、以下の基準で評価した。尚、気泡の混入しているものは遠心分離に掛け、脱泡を行った。
◎;非常に強い光沢が認められる。
○;強い光沢が認められる。
×;わずかな光沢が認められる(エマルジョン様である)。
【0038】
(2)粘度:
(1)の試験に用いた試料を30℃の恒温槽に入れ、24時間以上経過した後、試料の温度を30℃に保ち、B型粘度計(東京計器株式会社製)で粘度(mPa・s)を測定した。粘度計の測定条件は、回転数を12rpm とし、測定の上限を10,000mPa・s となるようにローターを選定した。粘度が高く、この方法で測定出来なかった試料は、>10,000mPa・s と表記した。
【0039】
(3)安定性:
透明ガラス容器に、得られたパール光沢組成物を入れ、密栓し、高温(50℃)及び低温(−5℃)の恒温槽中に1ヵ月保存した後、試料の温度を室温に戻してパール光沢組成物の分離の有無、固結の有無、凝集の有無を肉眼にて観察し、以下の基準で評価した。
○;いずれも分離、固結等なく流動性ある。
×;分離、固結等の異常がある。
【0040】
(4)分散性:
得られたパール光沢組成物の濃度が10重量%となるように、ポリオキシエチレン(2E.O.)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの25重量%水溶液で希釈した。すなわち、これを、室温において200ccビーカー(直径5.5cm)で、3cmの2枚羽根タービン翼の攪拌装置がついた簡易分散評価機を用い、200rpm で攪拌し、その時の分散性を観察し、以下の基準で評価した。
○;10秒以内にすべて均一に分散する。
△;30秒以内にすべて均一に分散する。
×;1分以上経っても、均一に分散しない。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果から、本発明のパール光沢組成物はいずれも、高濃度でありながら低粘度であり、パール光沢に優れ、安定性及び分散性が良好であることが分かる。
これに対し、HLB15未満のノニオン界面活性剤を含有しないか(比較品1、2)、又はHLB15以上のノニオン界面活性剤を含有する比較品(比較品3)では、粘度が高く、安定性、分散性に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E):
(A)脂肪酸グリコールエステル 15〜30重量%、
(B)脂肪酸モノアルキロールアミド 3〜15重量%、
(C)アルキル硫酸エステル塩 5〜15重量%、
(D)HLB9〜12のポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤
0.5〜10重量%、
(E)水
を含有する濃厚パール光沢組成物。
【請求項2】
30℃における粘度が1,000〜10,000mPa・s である請求項1記載の濃厚パール光沢組成物。

【公開番号】特開2008−13581(P2008−13581A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259582(P2007−259582)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【分割の表示】特願平11−17718の分割
【原出願日】平成11年1月26日(1999.1.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】