説明

パール剤組成物及びそれを含有する化粧料

【課題】 従来の有機質パール剤とは異なり、皮膚に対して極めて安全で有用なセラミド類を用い、化粧料等に用いた場合に、長期にわたり安定的にパール光沢を呈すると共に、皮膚に対して本来のバリアー機能を付与することができるパール剤組成物及びその製造方法、並びに該パール剤組成物を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】 ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステルと、セラミド類と、多価アルコールとを配合し、加温して均一に溶解させた溶液と、加温した水又は水性媒体とを混合撹拌し、室温まで冷却してセラミド類の結晶を生成させパール剤組成物を調製し、該パール剤組成物を含有する化粧料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パール剤組成物及びその製造方法、並びにパール剤組成物を含有してなる化粧料に関し、更に詳しくは、ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステルと、セラミド類と、多価アルコール等とを含有するパール剤組成物及びその製造方法、並びにパール剤組成物を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
パール剤又はパール剤組成物は、化粧料、浴用剤、毛髪用化粧料、皮膚外用剤、皮膚保護剤等に配合して、パール光沢を付与する物質として、従来から汎用されている。そして、パール剤としては、古くから魚鱗箔や雲母のような天産品や無機物の薄片状結晶が用いられていたが、これらは高価であったり、均一な組成を得ることができないものが多く、一方、有機質パール剤として、例えば、グリコール系脂肪酸エステル等をシャンプー等へ配合することによりパール光沢を付与する技術が提供されるようになった。この有機質パール剤として、エチレングリコールジ高級脂肪酸エステルと脂肪族ジエタノールアミド、オレフィンスルホン酸塩、水、無機電解質を特定比率の組成とし、有効成分パール剤の融点以上に加熱して均一な溶液とした後、冷却してパール光沢をもつ結晶を析出させる高濃度パール剤分散液の製造方法(例えば、特許文献1参照)や、特定の脂肪酸組成を有するエチレングリコールジ脂肪酸エステルと、イセチオネート型陰イオン界面活性剤と、N−アシルグルタミン酸塩又はN−アシルアスパラギン酸塩とを含有するパール光沢を有する洗顔料組成物(例えば、特許文献2参照)や、アルキル配糖体と高級アルコールと界面活性剤を配合したパール光沢を有する化粧水(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0003】
また、一般式R1−O−R2(式中、R1及びR2は同一又は異なって炭素数16〜36の炭化水素基を示す)で表されるエーテルを有効成分とするパール光沢剤(例えば、特許文献4参照)や、(A)高級脂肪酸グリコールエステル、高級脂肪酸、高級アルコールから選ばれる一種又は二種以上のパール剤0.005〜10重量%(B)塩基性物質0.001〜5重量%(C)エーテル型非イオン性界面活性剤 0.01〜10重量%を含有する角質柔軟化粧料(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0004】
さらに、カルボキシビニルポリマー及び/又はアクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10〜30)コポリマーと脂肪酸を含有するゲル状組成物であって、前記脂肪酸の少なくとも一部は微薄片であり、同微薄片によりパール感を有するゲル状組成物(例えば、特許文献6参照)や、水と混合してパール化物とする、炭素数が14〜22の少なくともいずれかの直鎖脂肪アルコールと、炭素数が8〜12の少なくともいずれかの直鎖アルキル基を有するポリグリセリン脂肪酸エステルとを、質量比(直鎖脂肪アルコール/ポリグリセリン脂肪酸エステル)で50.0/50.0〜98.0/2.0含有する皮膚外用剤用組成物(例えば、特許文献7参照)も知られている。
【0005】
ところで、ヒトの身体を覆う皮膚は、外界からの微生物、化学物質、紫外線等の生物、化学、物理的な侵襲を避けると共に水分等の生体必須成分の損失を防ぐバリアー膜として非常に重要な機能を営んでいる。このバリアー膜として機能しているのは表皮最外層に位置する厚さ約20μmの角層であり、レンガ状に積み重なった角質細胞を細胞間脂質がモルタルのように繋ぎ止める形で強固な膜を形成している。この角質細胞間脂質の主成分としてバリアー膜形成の中心的な役割を果たしているのがセラミドであり、他の脂質成分と共にラメラ構造を形成してそのバリアー機能を担っている。ヒト角質細胞間脂質に見出されるセラミドは7種類の遊離セラミド(Type1〜7)と2種類の膜タンパク質結合型セラミド(TypeA、B)に分類されている。セラミドの重要性が広く認識されるようになり、「セラミド」と名の付く製品は多種多様で、一般的には天然セラミド、合成セラミド、プソイドセラミドに大別されている(例えば、非特許文献1参照)。また、ヒトのセラミド類は7種類に分類され、例えばタイプ1セラミドは、ωヒドロキシル基の先にリノール酸がエステル結合しているため、O−アシルセラミドとも呼ばれており、角質層特異的なセラミドであるために特に大量抽出が難しく、最近では発酵法や有機合成法などと組み合わせにより、タイプ2やタイプ3ならびにタイプ4の天然セラミドが開発されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
セラミド類を化粧料等の皮膚外用品として有効に利用する様々な技術が増加している。しかしながら、セラミドは、結晶性が高く、溶解する油剤が少ないことから、化粧料中に多量に配合すると、結晶が析出して製品の安定性に支障をきたしたり、セラミド類を溶解する油剤によっては、安全性及び安定性の観点から化粧量への配合量には自ずと制約があった。セラミド類を化粧料に有効に利用するため、例えば、セラミド類とポリオキシエチレンコレステリルエーテルのような物質との混合物は、肌あれに対して優れた改善及び予防効果を発揮することができ、また、外用剤として保存安定性が良好であるもの(例えば、特許文献8参照)や、セラミド等が皮膚及び毛髪の中に良好に浸透することを可能にする、水中油型エマルジョンからなる化粧料(例えば、特許文献9参照)や、セラミド類とポリオキシアルキレングリセリルモノアルキルエステルとを含有する油剤および水からなるゲル状物が水性媒体に透明に分散しているセラミド 類含有透明分散液(例えば、特許文献10参照)や、炭素数12〜24の長鎖脂肪酸および非イオン界面活性剤を含み、必要に応じ更にステロール類および多価アルコール類からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物が配合されている脂質組成物に水を配合して、セラミド類を1.0〜5.0重量%含有する水性透明組成物(例えば、特許文献11参照)や、HLBが9〜20の範囲にある非イオン性界面活性剤、及び液状の多価アルコールを用いるセラミドの可溶化方法(例えば、特許文献12参照)や、炭素数12〜32の脂肪酸を含む油性基材を70〜95℃に加熱して溶融し、該温度の保持下に、該油性基材にセラミド類を添加して溶解させ、該セラミド類が溶解した油性基材に、界面活性剤が溶解された水性溶液を別途調製して添加してW/Oエマルジョンを形成し、次いで調製されたW/Oエマルジョンにさらに界面活性剤が溶解された水性溶液を添加して、該W/OエマルジョンをO/Wエマルジョンに変化させるセラミド類含有乳化物の製造方法(例えば、特許文献13参照)が知られている。
【0007】
一方、化粧料等に配合して、パール光沢を付与することができるパール剤組成物として、不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とポリオキシアルキレン基を有する活性剤と、セラミド類と、多価アルコールを含有する組成物は知られていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開昭57−156410号公報
【特許文献2】特開平06−157292号公報
【特許文献3】特開平08−217632号公報
【特許文献4】特開平10−298031号公報
【特許文献5】特開平11−322570号公報
【特許文献6】特開2003−231612号公報
【特許文献7】特開2003−063922号公報
【特許文献8】特開平7−33633号公報
【特許文献9】特開平8−127526号公報
【特許文献10】特開2001−139796号公報
【特許文献11】特開2001−316217号公報
【特許文献12】特開2002−338459号公報
【特許文献13】特開2004−161655号公報
【非特許文献1】「FRAGRANCE JOURNAL」 1999−10、p75−83、特にp75−76
【非特許文献2】「FRAGRANCE JOURNAL」 1999−10、p9−15、特にp14−15、図9及び図10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来の有機質パール剤とは異なり、皮膚に対して極めて安全で有用なセラミド類を用い、化粧料等に用いた場合に、長期にわたり安定的にパール光沢を呈すると共に、皮膚に対して本来のバリアー機能を付与することができるパール剤組成物及びその製造方法、並びに該パール剤組成物を含有する化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
通常、化粧料に用いられるパール剤には、結晶による優れた光学的光沢性、パール光沢の温度安定性や貯蔵安定性、皮膚に対しての安全性等が要求される。本発明者は、これらの要求の中でも、皮膚に対しての安全性を重要視し、皮膚の角質細胞間脂質の主成分としてバリアー膜形成の中心的な役割を果たしているセラミドに注目した。しかし、セラミド類を化粧料等の皮膚外用品として有効に利用する多くの技術は、セラミド類の結晶が析出しないように腐心したものであり、セラミド類の結晶に温度安定性(〜60℃)や貯蔵安定性があるのか、また、再結晶により均一な結晶が得られるのかなど知られていなかった。そこで、セラミド類の有する結晶性を有効に利用するべく鋭意研究し、セラミド類を多価アルコールに溶解し、特定の活性剤を特定の量用いることにより、化粧料等にパール光沢を付与することができるパール剤組成物となることを見い出し、この組成物が、パール光沢のみならず、皮膚に対するバリアー機能をも維持しつつ、きわめて安定なパール剤組成物であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(1)次の成分(a)〜(d):(a)ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステル、(b)セラミド類、(c)多価アルコール、(d)水を含有し、かつセラミド類の結晶が生成されていることを特徴とするパール剤組成物や、(2)成分(a)が成分(b)に対し2倍(質量)以上配合されていることを特徴とする前記(1)記載のパール剤組成物や、(3)成分(a)が、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のパール剤組成物や、(4)高級アルコール類又は/及び長鎖脂肪酸類から成る群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物がさらに配合されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のパール剤組成物や、(5)セラミド類の結晶が、その平均粒子径が1〜30μmであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のパール剤組成物に関する。
【0012】
また本発明は、(6)(a)ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステルと、(b)セラミド類と、(c)多価アルコールとを配合し、加温して均一に溶解させた溶液と、加温した水又は水性媒体とを混合撹拌し、室温まで冷却してセラミド類の結晶を生成させることを特徴とするパール剤組成物の製造方法や、(7)成分(a)が成分(b)に対し2倍(質量)以上となるように配合することを特徴とする前記(6)記載のパール剤組成物の製造方法や、(8)成分(a)が、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることを特徴とする前記(6)又は(7)記載のパール剤組成物の製造方法や、(9)高級アルコール類又は/及び長鎖脂肪酸類から成る群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物がさらに配合されていることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれかに記載のパール剤組成物の製造方法や、(10)セラミド類の結晶が、その平均粒子径が1〜30μmであることを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれかに記載のパール剤組成物の製造方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、(11)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のパール剤組成物を含有することを特徴とする化粧料や、(12)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のパール剤組成物からなることを特徴とする化粧料に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来の有機質パール剤と相違し、ヒトの角質細胞間脂質にも存在するセラミド類の結晶による光学的に優れたパール光沢、パール光沢の温度安定性や貯蔵安定性、皮膚に対しての安全性を備えたパール剤組成物や、安全かつ保存安定性に富んだパール光沢を有する化粧料等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のパール剤組成物としては、(a)ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステル、(b)セラミド類、(c)多価アルコール、(d)水とを含有し、かつセラミド類の結晶が生成されているパール剤組成物であれば特に制限されるものではなく、また、本発明のパール剤組成物の製造方法としては、(a)ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステルと、(b)セラミド類と、及び(c)多価アルコールとを配合し、加温して均一に溶解させた溶液と、加温した水又は水性媒体とを混合撹拌し、室温まで冷却してセラミド類の結晶を生成させる方法であれば特に制限されず、上記成分(c)は、セラミド類を溶解するために用いられ、上記成分(a)は、セラミド類の溶解液の水分散液から結晶を生成させるための活性剤として用いられる。
【0016】
本発明で用いられる成分(a)は、ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステルであれば特に制限されるものではなく、例えば、成分(a)として、1)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、3)ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル又は4)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを挙げることができる。また、これらは2種以上併用してもよい。なお、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油は成分(a)に該当しない。
【0017】
具体的には、前記1)として、ポリオキシエチレンソルビットモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート、ポリオキシエチレンソルビットペンタオレエート、ポリオキシエチレンソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビットモノステアレート等を例示することができ、前記2)として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油イソステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油トリイソステアリン酸エステルを例示することができ、前記3)として、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリントリイソステアレートを例示することができ、前記4)として、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを例示することができる。本発明において、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油イソステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステルを好適に例示することができる。
【0018】
本発明で用いられる成分(b)のセラミド類としては、公知のセラミド類を使用することができ、天然セラミド、合成セラミド、プソイドセラミド(合成擬似セラミド)のいずれも使用することができるが、天然セラミドは、価格面、純度面での問題は避けられず、大量に高純度品を使用することは容易ではないので、合成セラミドやプソイドセラミドを用いることが好ましい。具体的には、N−アシルスフィンゴシン、N−ヒドロキシアシルフィトスフィンゴシン、N−アシルフィトスフィンゴシンやタイプ1〜4のセラミド等を挙げることができる。本発明においては以上のようなセラミドを1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特にN−ステアロイルスフィンゴシン(セラミド2)、N−ステアロイルフィトスフィンゴシン(セラミド3)を用いることが好ましい。
【0019】
本発明で用いられる成分(c)の多価アルコールとしては、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、マルチトール、ポリエチレングリコール等を例示することができる。本発明においては以上のような多価アルコールを1種または2種以上組み合わせて用いることができるが、特にジプロピレングリコールや1,3−ブチレングリコールを用いることが好ましい。
【0020】
本発明のパール剤組成物においては、パール光沢のすぐれた結晶を析出するために、活性剤である成分(a)を成分(b)に対し1.5倍(質量)以上、好ましくは2倍(質量)以上配合することがきわめて望ましい。例えば、セラミド類としてセラミド2を、活性剤としてテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(60E.O.)を用いた場合、等量以下の配合割合では、活性剤のセラミド類に対する配合割合が少なすぎ、後工程で水又は水性媒体と混合して分散させた場合に、パール剤としての機能を果たすことができる程度に微小の結晶としてセラミド類を析出させることができない。パール剤としての機能を果たすセラミド類の結晶としては、その平均粒子径が1〜30μmである場合に、パール光沢がより優れたものとなる。ここで、結晶の平均粒子径とは、サンプルを光学顕微鏡にて観察し、個々の結晶の長径と短径を測定し、その平均値を結晶50個において算出し、更にその平均値を算出したものをいう。また、本発明のパール剤組成物には水が含まれ、水の用量は、本発明のパール剤組成物が適用される化粧料の種類・形態によって異なる。
【0021】
本発明のパール剤組成物には、高級アルコール類又は/及び長鎖脂肪酸類(高級脂肪酸類)の他、ステロール類(コレステロール、フィトステロール及びこれらの誘導体を含む)を用いること、特に高級アルコール類又は長鎖脂肪酸類を用いることが好ましい。高級アルコール類や長鎖脂肪酸類はセラミド類を溶解する溶媒効果を有し、これら高級アルコール類や長鎖脂肪酸類はセラミドの結晶析出速度を制御する作用効果があり、配合しない場合に比べて、冷却の仕方等によっては、セラミドのより大きな結晶を得ることができ、よりパール組成物を製造しやすくなることが多い。
【0022】
上記高級アルコールとしては、通常は炭素数10〜32、好ましくは炭素数14〜30の脂肪族アルコールを好適に挙げることができ、具体的には、ラウリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等を例示することができる。本発明では、特にステアリルアルコールを用いることが好ましい。このような高級アルコールを、得られる組成物全量(100質量部)に対して、通常は0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部の範囲内の量で配合することにより、セラミド類の溶解安定性が著しく向上し、セラミドの結晶析出速度を制御することができる。これらの高級アルコールは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0023】
上記長鎖脂肪酸類(高級脂肪酸類)としては、炭素数12〜32、好ましくは炭素数14〜30の脂肪酸を好適に挙げることができ、具体的には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン脂肪酸、イソステアリン酸、アラキン酸等を例示することができる。本発明では、特にイソステアリン酸を用いることが好ましい。このような長鎖脂肪酸を、全量(100質量部)に対して、通常は0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部の範囲内の量で配合することにより、セラミド類の溶解安定性が著しく向上し、セラミドの結晶析出速度を制御することができる。これらの高級脂肪酸は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0024】
上記ステロール類(コレステロール、フィトステロール及びこれらの誘導体を含む)は、セラミド類の溶剤として配合される。このステロールを使用することにより組成物中におけるセラミド 類の分散安定性が向上すると共に、肌に対して優れた保護効果を有している。このようなステロール類は、得られる組成物全量(100質量部)に対して、通常は0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の範囲内量で配合される。
【0025】
本発明のパール剤組成物は、本発明のパール剤組成物の製造方法等によって得ることができる。すなわち、(a)ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステルと、(b)セラミド類と、(c)多価アルコールとを配合し、60〜90℃、好ましくは70℃前後に加温して均一に溶解させた溶液(以下、「セラミド類溶解液」ということがある)と、60〜90℃、好ましくは70℃前後に加温した水又は水性媒体とを混合撹拌、好ましくは穏やかに混合撹拌し、室温まで冷却、好ましくは徐々に室温まで冷却して、パール光沢を有するセラミド類の薄片状結晶等の結晶を生成させる方法により得ることができる。上記混合撹拌としては、後工程の冷却によりパール光沢を有するセラミド類の結晶を生成させることができる混合撹拌であれば特に制限されず、例えば、セラミド類溶解液を水又は水性媒体に徐々に添加するか、あるいは水又は水性媒体をセラミド類溶解液に徐々に添加し、比較的低速で攪拌するなど穏やかに混合撹拌することが好ましく、また、室温までの冷却は、パール光沢を有するセラミド類の結晶を生成させることができる冷却であれば特に制限されず、例えば、室温まで放冷により冷却するなど徐々に室温まで冷却することが好ましい。具体的には、60℃から40℃に冷却するには、15〜120分間程度かかるようにする。
【0026】
上記セラミド類溶解液の調製に際し、セラミド類としてセラミド2やセラミド3を選び、ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステルとして、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油イソステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアリン酸エステル又はポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステルを選び、多価アルコールとしてジプロピレングリコール又は1,3−ブチレングリコールを選び、長鎖脂肪酸類としてイソステアリン酸又はオレイン酸を有利に選ぶことができる。
【0027】
上記セラミド類溶解液と加温した水とを混合攪拌し冷却することにより得られる本発明のパール剤組成物は、これを化粧料基材に混合することにより、パール光沢を有するセラミド類の結晶を有する本発明の化粧料を調製することができる。また、上記セラミド類溶解液と加温した水性媒体とを混合攪拌し冷却することにより得られる本発明のパール剤組成物は、水性媒体にあらかじめ化粧料基材成分が溶解又は分散されており、パール光沢を有するセラミド類の結晶を有するパール剤組成物をそのまま本発明の化粧料とすることもできるが、これに他の化粧料基材を混合することにより、パール光沢を有するセラミド類の結晶を有する本発明の化粧料とすることもできる。
【0028】
本発明の化粧料としては、スキンケア化粧料、メーキャップ化粧料、ボディケア化粧料、ヘアケア化粧料、オーラル化粧料を挙げることができ、具体的には、化粧水、アストリンゼント、美容液、乳液、洗顔クリーム・フォーム、液体洗浄料、入浴剤、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、育毛剤、ヘアトニックを例示することができる。中でも、審美性の観点から、化粧水、アストリンゼント、美容液等の液状化粧料が好ましい。なお、ここでいう液状とは30℃の粘度がブルックフィールド型回転粘度計による測定値で1〜2000mPa・sであるものを指す。また、これら化粧料に用いられる公知の化粧料基材を構成する成分としては、各種の分散剤、溶解補助剤、保湿剤、膨潤剤、増粘剤、皮膜剤、色素、香料、防腐剤、pH調節剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、皮膚栄養剤、酸化防止剤等を挙げることができ、これらは水溶性高分子、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、ビタミン類、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、エステル類、シリコーン、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等から構成される。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0030】
[材料]
実施例や比較例における各サンプルの配合成分として、例えば、セラミドについては、セラミド2としてセラミドTIC−001(高砂香料社製)やセラミド3としてセラミド3(デグッサ社製)を用いた。その他の原料は、市販の汎用原料を用いた。
【0031】
[外観試験]
100mLの透明ガラス容器にサンプルを充填し、目視によりパール感の観察を行った。評価における「沈殿」とは、目視にて粒子径が確認でき、パール感がないもの、具体的には粒子径が0.1mm〜3mmのものを指し、「微白濁」とは、結晶の平均粒子径が約0.5μm以下であって、パール感を示す1〜30μmより小さく、微白濁〜半透明を意味し、いずれにしても、これらはパール感を呈するものではない。
【0032】
[保存安定性試験]
5℃及び50℃の恒温槽に、それぞれ1ヶ月間100mLの透明ガラス容器に入れたサンプルを保存した後、両サンプルの経日にパール外観の変化を比較した。評価は、5℃保存のサンプルを基準とし、これに対して50℃保存のサンプルを比較し、下記の評価基準により評価した。
(評価基準)
◎:基準品と比べ変化がない。
○:基準品と比べわずかに変化がみられるが、問題のないレベルである。
×:基準品と比べ明らかに変化があり、問題である。
【0033】
[結晶の平均粒子径]
サンプルを光学顕微鏡にて観察し、個々の結晶の長径と短径を測定し、その平均値を結晶50個において算出した。更にその平均値を算出し、結晶の平均粒子径とした。
【0034】
[実施例1〜4及び比較例1〜5]
実施例1〜4及び比較例1〜5の各サンプルの配合成分及びこれらの配合割合(質量部をいう、以下の実施例も同様である。)を表1に示す。各サンプルは、表1に示す成分1〜13を70℃に加温して均一に溶解したものに、70℃に加温した成分14(精製水)を少しずつ添加して混合撹拌し、徐々に室温まで冷却した(60〜40℃/15〜60分の割合で一定となるまで冷却)後、外観試験(n=3)を行い、また結晶の平均粒子径(n=3)を求めた。さらに、外観試験を行ったサンプルについて保存安定性試験を行った(n=3)。結果を表1(下方)に示す。また、実施例1〜4の各サンプルの平均粒子径は1〜30μmであり、比較例1及び2の平均粒子径は表1に示すとおり、沈殿(0.1mm〜3mm)、微白濁(約0.5μm以下)であった。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示されるように、実施例1〜4では、本発明の必須の成分であるポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステルを用いており、比較例1〜5では、それ以外の活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(80E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.)、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルを用いるものであって、本発明(実施例1〜4)のサンプルでは、前記の活性剤を用いることにより、外観がパール状の光沢を呈するのに対し、比較例のサンプルでは、いずれもパール状の光沢を呈しなかった。
【0037】
[実施例5〜8及び比較例6、7]
実施例5〜8及び比較例6、7の各サンプルの配合成分及びこれらの配合割合を表2に示す。各サンプルは、表2に示す成分1〜4を70℃に加温して均一に溶解したものに、70℃に加温した成分5(精製水)を少しずつ添加して混合撹拌し、徐々に室温まで冷却した(60〜40℃/15〜60分の割合で一定となるまで冷却)後、外観試験(n=3)を行い、また結晶の平均粒子径(n=3)を求めた。さらに、外観試験を行ったサンプルについて保存安定性試験を行った(n=3)。結果を表2(下方)に示す。また、実施例5〜8の各サンプルの平均粒子径は1〜30μmであり、比較例6の平均粒子径は約0.5μm以下(微白濁)であり、比較例7の平均粒子径は0.1mm〜3mm(沈殿)であった。
【0038】
【表2】

【0039】
表2に示されるように、セラミド2の配合量を一定(0.2質量%)とし、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(60E.O.)の配合量を種々の割合で配合したところ、等量以下になると、外観はパール状とはならず、保存安定性も明らかに変化が認められ劣るものであった。
【0040】
[実施例9〜12(化粧料)]
表3に示す成分、その配合量により、実施例9(化粧水)、実施例10(アストリンゼント)、実施例11,12(美容液)の各化粧料の配合成分及びこれらの配合割合を表3に示す。各化粧料は、表3に示す成分1〜5を70℃に加温して均一に溶解したものに、70℃に加温した成分6〜8を少しずつ添加して緩やかに混合撹拌し、徐々に室温まで冷却し、まずパール剤組成物を調製し、このパール剤組成物に、成分16及び17を70℃に加熱した成分18で膨潤させたもの、及び成分9〜15の均一溶解物を添加することにより製造した。
【0041】
【表3】

【0042】
表3に示す、成分及び各成分の配合割合で、前記製造方法により得られたパール剤組成物入り化粧料は、パール光沢を有し、保存効果が良好であった。
【0043】
[実施例13(シャンプー)]
以下の配合割合の配合成分(1)〜(12)を用いて後述の製造方法により、シャンプーを製造した。
(1)セラミド2 0.2
(2)コレステロール 0.1
(3)イソステアリン酸 0.2
(4)テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(60E.O.)1.0
(5)ジプロピレングリコール 5.0
(6)精製水 30.0
(7)カチオン化グァーガム 0.2
(8)ポリオキシエチレン(3E.O.)アルキルエーテル硫酸ナトリウム
15.0
(9)エデト酸二ナトリウム 0.2
(10)防腐剤 適量
(11)香料 適量
(12)精製水 残量
【0044】
シャンプーは、上記成分1〜5を80℃に加温して均一に溶解したものに、80℃に加温した成分6を少しずつ添加して混合撹拌し、徐々に室温まで冷却し、まずパール剤組成物を調製し、このパール剤組成物に、成分7を80℃に加熱した成分12で膨潤させたもの、及び成分8〜12の均一溶解物を添加することにより製造した。得られたシャンプーは、パール光沢を有し、保存効果が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(d):
(a)ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステル
(b)セラミド類
(c)多価アルコール
(d)水
を含有し、かつセラミド類の結晶が生成されていることを特徴とするパール剤組成物。
【請求項2】
成分(a)が成分(b)に対し2倍(質量)以上配合されていることを特徴とする請求項1記載のパール剤組成物。
【請求項3】
成分(a)が、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2記載のパール剤組成物。
【請求項4】
高級アルコール類又は/及び長鎖脂肪酸類から成る群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物がさらに配合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパール剤組成物。
【請求項5】
セラミド類の結晶が、その平均粒子径が1〜30μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパール剤組成物。
【請求項6】
(a)ポリオキシアルキレン多価アルコールと不飽和又は分岐鎖を有する脂肪酸とのエステルと、(b)セラミド類と、(c)多価アルコールとを配合し、加温して均一に溶解させた溶液と、加温した水又は水性媒体とを混合撹拌し、室温まで冷却してセラミド類の結晶を生成させることを特徴とするパール剤組成物の製造方法。
【請求項7】
成分(a)が成分(b)に対し2倍(質量)以上となるように配合することを特徴とする請求項6記載のパール剤組成物の製造方法。
【請求項8】
成分(a)が、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項6又は7記載のパール剤組成物の製造方法。
【請求項9】
高級アルコール類又は/及び長鎖脂肪酸類から成る群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物がさらに配合されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のパール剤組成物の製造方法。
【請求項10】
セラミド類の結晶が、その平均粒子径が1〜30μmであることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のパール剤組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載のパール剤組成物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載のパール剤組成物からなることを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2006−248925(P2006−248925A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64450(P2005−64450)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】