説明

ヒアルロニダーゼ阻害剤及びそれを含有する組成物

【課題】 優れたヒアルロニダーゼ阻害作用を有した食品組成物提供し、ニキビ、肌荒れ等の課題を解決する。
【解決手段】
甘草の抽出物あるいは抽出物中の有用化合物を食品組成物として配合する。甘草はLicorice-saponinH2及び/又はその塩からなるヒアルロニダーゼ阻害剤を含有する。かかるヒアルロニダーゼ阻害剤は、抗炎症効果を有する。前記炎症は、ニキビによるものであることを特徴とする。
ヒアルロニダーゼ阻害剤の基源はGlychyrrhiza 属の植物を水を含んでも良い親水性有機溶媒で抽出したエキスであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニキビなどの炎症の予防又は改善に有用なヒアルロニダーゼ阻害剤及びそれを含有する食品などの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
昔から植物には様々な作用があり、生薬として怪我や病気の治療に利用されてきた。生薬として治療に用いられる際には、主に伝統的に有用とされる植物の種、葉、花、根などを煎じて飲用したり、患部に直接植物のエキスを塗布するなど様々な形で用いられてきた。
【0003】
生薬は医食同源の考え方に基づき、日頃から摂取することで免疫力を向上させ、病気にならないよう予防的に用いられるもの、治療に用いられるもの等様々な目的で使用されてきた。特に近年では、生薬が抗炎症作用や抗HIV活性をもつこと、癌の治療に有用であることなどが報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1を参照)。
【0004】
特に甘草はグリチルリチン酸塩を含有し、抗炎症作用があることが知られており、全身性の炎症、皮膚疾患に利用されている他、食品の甘味料やフレーバーとして食品添加物として用いられ非常に汎用されている生薬のひとつである(例えば、特許文献3及び非特許文献2を参照)。また、このものを含有するニキビ用の食品(例えば、特許文献4を参照)もすでに知られている。
【0005】
甘草はGlychyrrhiza 属の植物で、Glychyrrhiza uralensisが主に用いられている他、Glychyrrhiza glabra、Glychyrrhiza inflataなどの種類があり、これらの抽出物からキサンチンオキシダーゼ阻害やモノアミンオキダーゼ阻害活性成分として、フェノール性成分が報告されている(例えば、非特許文献3を参照)。その他の作用として、抗酸化活性についても知られている(例えば、特許文献5を参照)
【0006】
さらに、Glychyrrhiza uralensisについては、有用な成分として、Licorice-saponinsD3, E2, F3, G2, H2, J2, K2等のオレアノンタイプのトリテルペンオリゴグルコシドが知られている(例えば、非特許文献4を参照)。しかしながら、Glychyrrhiza glabra、Glychyrrhiza inflataについては、知見が少なく、有効成分や有効性に関して明らかにされていない。
【0007】
一方、ニキビといった炎症を伴う肌の悩みに対しては、亜鉛を経口摂取することで改善効果があるとの報告があるものの、亜鉛摂取により銅の体内からの排泄が促進されるため、亜鉛摂取時には銅を亜鉛摂取量の10分の1量を摂取することが亜鉛摂取には有用であることが知られている(特許文献6)。また、ニキビの改善には亜鉛の摂取に加えて、ビタミンB群を摂取することで、皮脂分泌の抑制、ホルモンバランスの調整作用が期待できるとの報告もある(特許文献6)。
【0008】
また、近年皮膚における炎症を抑制する成分の探索方法として、ヒアルロニダーゼ阻害作用を指標とするものが比較的多く報告されるようになってきた。しかしながら、甘草特にGlychyrrhiza glabra、Glychyrrhiza inflataについて、そのエキスあるいはエキス中の特定の化合物に強いヒアルロニダーゼ阻害作用を有すことは知られていなかった。さらに、甘草中のLicorice-saponinH2が非常に高いヒアルロニダーゼ阻害活性があり、従来から報告されている甘草中の抗炎症作用成分グリチルリチン酸と比べても強い活性化合物であるとの報告はなく、このようなヒアルロニダーゼ阻害活性効果を期待した、食品組成物などの経口投与組成物として用いられることはなかった。当然、肌荒れ、ニキビなどの炎症を伴う肌の悩みの予防や治療に甘草中のLicorice-saponinH2が有用であることは全く知られていなかった。
【0009】
【特許文献1】特開2007−099772号公報
【特許文献2】特開H11−318387号公報
【特許文献3】特開2006−045181号公報
【特許文献4】特開2003−306446号公報
【特許文献5】特開2003−81744号公報
【特許文献6】特開2006−333802号公報
【非特許文献1】Niwa K. et al., Jpn J Cancer Res. 1999 Jul; 90 (7): 726-32
【非特許文献2】北川 勲ら,薬学雑誌,118(11)519−528
【非特許文献3】波田野 力ら,薬学雑誌,111(6)311−321
【非特許文献4】Isao K. et al., Chem Pharm.Bull. 1993 41(8) 1337-1345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、優れたヒアルロニダーゼ阻害作用を有し、ニキビなどの予防、改善に有用な素材及びそれを含有する食品組成物提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この様な実状に鑑みて、本発明者らは、ニキビなどの炎症抑制に有用な素材を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、ヒアルロニダーゼ阻害作用に優れる成分が、このような効果に優れることを見いだした。更に検討を重ねた結果、このような成分として、甘草の抽出物中に含有されるLicorice-saponinH2を見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
(1) Licorice-saponinH2及び/又はその塩からなるヒアルロニダーゼ阻害剤。
(2) 抗炎症効果を有することを特徴とする、(1)に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
(3) 前記炎症は、ニキビによるものであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
(4) (1)〜(3)いずれか1項に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤の基源がGlychyrrhiza 属の植物を水を含んでも良い親水性有機溶媒で抽出したエキスであることを特徴とする、ヒアルロニダーゼ阻害剤
(5) 前記Glychyrrhiza 属の植物がGlychyrrhiza glabraであることを特徴とする(4)記載のヒアルロニダーゼ阻害剤
(6) (1)〜(5)いずれか1項に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤を含有する、ニキビ用の食品組成物。
(7)更に、グルコン酸亜鉛及びグルコン酸銅を含有することを特徴とする、(6)項に記載のニキビ用の食品組成物。
(8)更にビタミンB群を含有することを特徴とする、(6)又は(7)に記載のニキビ用の食品組成物。
(9)前記ビタミンB群がビタミンB2及び/又はビタミンB6であることを特徴とする、(8)のニキビ用の食品組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れたヒアルロニダーゼ阻害作用を有し、ニキビなどの予防、改善に有用な素材及びそれを含有する食品組成物提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<1>本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、Licorice-saponinH2及び/又はその塩からなることを特徴とする。Licorice-saponinH2は甘草中に0.01〜2.00質量%含有されており、これをエタノールなどの親水性有機溶媒で抽出することにより、得ることができる。このような抽出は、例えば、甘草の全草、取り分け根茎部を、所望により乾燥させた後、細切し、親水性有機溶媒単独あるいは水を含有した親水性有機溶媒を植物体の1〜20質量倍加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間から12時間程度浸漬すればよい。場合により攪拌を加えてもよい。冷却後、必要に応じて濾過などで不溶物を除去し、減圧濃縮などを行うことにより抽出物は製造される。本発明のLicorice-saponinH2は、このような抽出物を更に分画することによって濃縮し、分画濃縮物として組成物中へ含有させることもできるし、該分画濃縮物を更にカラム等を用いて精製し、Licorice-saponinH2を単離して用いることもできる。Licorice-saponinH2はそのまま用いることもできるし、アルカリを反応させて塩となし利用することもできる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、モルフォリン塩等の有機アミン塩、アルギニン塩、リシン塩などの塩基性アミノ酸塩などが好適に例示できる。かかるLicorice-saponinH2は後記に示すように優れたヒアルロニダーゼ阻害作用を有し、これに基づいて抗炎症効果を発現する。このような抗炎症効果はニキビに付随する炎症に対して特に顕著な予防、改善効果を示す。
このような本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤の基源となる、甘草、即ち、Glychyrrhiza 属の植物としては、Glychyrrhiza uralensis、Glychyrrhiza glabra、Glychyrrhiza inflataが例示でき、Glychyrrhiza glabraが好ましい。かかる甘草において、植物全体を用いてエキスを抽出することも出来るが、有効成分であるLicorice-saponinH2を多く含む部位としては根茎部が好ましく例示できる。
【0014】
甘草より、Licorice-saponinH2を抽出濃縮する過程について更に詳細に説明する。
前記有効成分を前記のGlychyrrhiza 属の植物から抽出する溶媒としては、極性溶媒を用いることが出来、水、低級脂肪族アルコール、中極性溶媒等が例示でき、中極性溶媒は水に任意の割合で混じらない中極性溶媒が例示でき、酢酸エチル、ギ酸メチルが好適に例示できる。これらの溶媒を組み合わせても良い。このうち、人での摂取を考慮すると好ましくはエタノールが例示でき、さらに好ましくは水とエタノールの混液による抽出が例示できる。この際の混液の割合としては10〜90%(v/v)のエタノール水溶液とすることが例示できるが、好ましくは30〜90%である。さらに好ましくは50〜90%の割合としエタノール含有量を増やした抽出がよい。これらの抽出溶媒に前記植物を1−30質量%好ましくは5−15%の割合で加え、10分から24時間、操作の短縮を考え、好ましくは4時間程度撹拌する。その際の抽出温度は室温から100度で行うことが出来る。溶媒と植物体を撹拌抽出後、市販の濾紙を用いて濾過し、濾液を得る濾液はそのまま皮膚に適用したり、飲用可能である。好ましくはこの濾液を濃縮乾固して、これを食品組成物等の経口組成物に含有させて、使用することが好ましい。
【0015】
本発明の組成物は、経口組成物であり、食品組成物に好適に適用される。
前記の抽出物を経口組成物として使用する場合には、前記で抽出濾液あるいは乾固物特段の限定無く適用できる。このとき、前記抽出物、抽出分画物ないしは抽出精製物は、それらにおけるLicorice-saponinH2及びその塩の含有量が、食品組成物に対して0.05質量%〜5質量%になるように含有させることが、前記ヒアルロニダーゼ阻害作用をより顕著に発現するためには、好ましい。通常の甘草の抽出物を含有させた場合、Licorice-saponinH2及びその塩の含有量は0.001質量%〜0.05質量%であり、前記ヒアルロニダーゼ阻害作用を奏しない場合が存する。このため、前述のごとくに分画、精製を行うことがより好ましい。例えば、特定保健用食品などを包含する食品組成物 、医薬組成物 などとして使用することが例示でき、食品組成物 に適用することが特に好ましい。さらに、グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛は市販のものを使用することが出来、フソウ株式会社から発売されている「グルコン酸銅」、「グルコン酸銅」が好適に例示できる。また、グルコン酸銅はグルコン酸を塩化銅を塩交換により製造できるし、グルコン酸亜鉛はグルクロノラクトンと酸化亜鉛を水性担体中で加熱し、開環させて製造することも出来る。グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛の割合は、1:100から1:10の質量比で混合して配合することが好ましいが、さらに好ましくは1:20から1:10が例示できる。これに加えてビタミンB群を経口組成物に加えることが好ましく、ビタミンB群としては、市販のビタミンB2、ビタミンB6,ビタミンB12が例示でき、好ましくはビタミンB2、ビタミンB6を配合することが例示できる。また、ビタミンB群の分解を防ぐため、油脂によりコートすることが好ましく、コートする油脂としては、菜種、パーム、ヤシ、大豆等を原料とした植物硬化油脂、カルナバロウ等の油脂が例示できるが、菜種油を油脂としてビタミンBにコートすることが更に好ましい。油脂コートはビタミンをヘンシェルミキサーに入れて90℃程度で溶解させた菜種硬化油を加え、低速で撹拌することで製造できる。また、市販のものとしてVB6-MC70R、VB2-MC70R(日本油脂株式会社製)を用いることも出来る。もちろん本発明の食品組成物には、勿論、上記成分以外の製剤上の任意成分を含有することができる。かかる任意成分としては、例えば、砂糖、でんぷん、結晶セルロース、乳糖などの賦形剤、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、POE硬化ひまし油などの乳化・分散剤、嬌味嬌臭剤、着色剤などが好適に例示できる。これらの必須成分、好ましい成分、任意成分を常法に従って処理することより、本発明の食品組成物は製造できる。食品組成物としては、例えば、スープ、麺類などの通常の食品はもとより、キャンディー、グミ、クッキーなどの菓子類、ジュース、ドリンクなどの飲料、錠剤、散剤、顆粒剤などの、機能性を訴求した食品などが好ましく例示できる。
【0016】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみに限定されないことは言うまでもない。
【0017】
<製造例1>
Glychyrrhiza uralensis、Glychyrrhiza glabra、Glychyrrhiza inflataの根茎部1Kgを細切し、70%エタノール水溶液 10Lにて24時間浸漬後、濾紙(5A ADVANTEC製)にて濾過し、濾液を得た。濾液の一部を採取しHPLC(ポンプ:
型番515、オートサンプラー:717、UV検出器:486: Waters製)にて有効成分Licorice-saponinH2、glycrrcizin, licochalconeA, glabridinの含有率を測定した。詳細なHPLC測定条件は、カラムはTSKgel ODS-80TsQA(内径4.6mm×長さ25cm東ソー製)、移動層にはアセトニトリルと水、酢酸の混液(40:55:5 または20:75:5)、流速1.2mL/min、検出UV254nmの条件である。結果を表1に示す。この結果からGlychyrrhiza glabraに他の種に比べてLicorice-saponinH2が多く含まれていることがわかる。
【0018】
【表1】

【0019】
<製造例2>
Glychyrrhiza uralensis、Glychyrrhiza glabra、Glychyrrhiza inflataの部根茎部1Kgを細切し、50%エタノール水溶液 10Lにて24時間浸漬後、濾紙(5A ADVANTEC製)にて濾過して濾液を得た。濾液をロータリーエバポレーター(B-480 ビュッヒ製)にて乾固し、乾燥物224gを得た。乾固物中のLicorice-saponinH2の含有量を測定するため、得られた乾固物20mgを水25mLに加え、30分間超音波処理装置(UT-204 シャープ製)で分散・破砕しながら溶解し、99%エタノールで50mLとなるようにメスアップし、0.45μmのフィルター(Millex-HT ミリポア製)にて濾過した。濾液を前記HPLCシステムを用い前記と同様の条件にて測定した。結果を表2に示す。この結果からGlychyrrhiza glabraに他の種に比べてLicorice-saponinH2が多く含まれていることがわかる。
【0020】
【表2】

【0021】
<試験例1>
前記で得られたLicorice-saponinH2、glabridinと市販のグリチルリチン(和光純薬社製)のヒアルロニダーゼに対する阻害作用の比較を行った。
各化合物2mg/mLとなるよう0.1M酢酸緩衝液(pH4)溶液に溶解し、サンプルを調製した。調製した各サンプルを0.2mL量り取り、ヒアロニダーゼ(和光純薬社製)の0.1M酢酸緩衝液(pH4)溶液0.1mLに加え、37℃にて20分間インキュベートした。この際、コントロールとしてサンプルの代わりに酢酸緩衝液のみのものを同様に処理した。さらにコントロールブランクとして、サンプル及びヒアロニダーゼを加えず、酢酸緩衝液のみのもの、並びにサンプルブランクとしてサンプルと緩衝液のみで酵素を加えないものを調製した。これらに0.5mg/mLに調製したCompound 48/80(シグマ社製)0.1M酢酸緩衝液(pH4)0.2mLをに加えて37℃にて20分間インキュベートした。さらに、0.5mg/mLに調製したのヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬社製)0.1M酢酸緩衝液(pH4)0.5mLを加え、37℃にて40分間インキュベートした後、氷上に置き、0.4N NaOH0.2mL次いでホウ酸溶液を加え、酵素反応を停止した。この際用いたホウ酸溶液はホウ酸4.95gに水を加え、1NのNaOHでpH9.1とし、100mLにメスアップしたものである。その後、反応停止後の各溶液は、100℃の水で3分間処理して酵素活性を失活させ、氷上で室温まで冷却し、ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液6mLを加え、37℃で20分間放置した。この際用いたジメチルアミノベンズアルデヒド溶液はパラジメチルアミノベンズアルデヒド1gに10N 塩酸1.25mLと酢酸8.75mLを混和し、使用直前に酢酸にて10倍希釈したものである。以上の操作を行った後、585nmにて吸光度を測定し、以下の式からヒアルロニダーゼ阻害率(%)を算出した。
ヒアルロニダーゼ阻害率(%)
=[(コントロールーコントロールブランク)−(サンプル−サンプルブランク)]
/(コントロールーコントロールブランク)×100
その結果を表3に示す。
【0022】
【表3】

【0023】
<試験例2>
前記で得られたGlychyrrhiza uralensis、Glychyrrhiza glabra、Glychyrrhiza inflataの70%エタノール水溶液抽出エキスのヒアルロニダーゼに対する阻害作用の比較を行った。各エキス乾燥物を10mg量り取り、2mg/mLとなるよう0.1M酢酸緩衝液(pH4)溶液に溶解し、サンプルを調製した。ヒアルロニダーゼの阻害率は上記と同様に行い測定した。
その結果を表4に示す。
【0024】
【表4】

【0025】
<試験例3>
前記の製造例と同様にしてGlychyrrhiza glabraを細切して、これに抽出溶媒としてエタノール含有量を0,30、50,70%としたエタノール水溶液をそれぞれ加え、得られた抽出エキスのヒアルロニダーゼに対する阻害作用の比較を行った。各エキス乾燥物を10mg量り取り、2mg/mLとなるよう0.1M酢酸緩衝液(pH4)溶液に溶解し、サンプルを調製した。ヒアルロニダーゼの阻害率は上記と同様に行い測定した。その結果を表3に示す。
【0026】
【表5】

【0027】
<本発明の経口投与組成物>
本発明の経口投与組成物は、前記Glychyrrhiza glabra抽出液あるいは乾固物を経口投与組成物とすることを特徴とする。本発明の経口投与組成物としては、食品や飲料などが好ましく例示でき、例えば、健康、美容のために摂取する食品や嗜好性に従って摂取される食品などの食品がより好ましく例示できる。特に好ましいものは、美容の目的、特に肌荒れ、ニキビ改善の目的で摂取される食品が例示できる。かかる食品としては、散剤、顆粒剤、錠剤などが好適に例示でき、錠剤が特に好ましい。錠剤は糖衣されていても、被覆剤で被覆されていても良い。本発明の経口投与組成物には、前記成分以外に通常経口投与組成物で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、乳糖や結晶セルロースのような賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロースやアラビアゴムのような結合剤、糖衣剤、被覆剤、ショ糖脂肪酸エステルなどの分散助剤、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤などが好適に例示できる。これらの必須成分、任意成分を常法に従って処理することにより、本発明の経口組成物は製造できる。
【0028】
以下に、実施例を挙げて、更に詳細に本発明について説明を加える。
【実施例1】
【0029】
下記処方に従って、本発明の経口投与組成物である、肌荒れ、ニキビの予防、改善する美肌用の食品(錠剤)を製造した。即ち、処方成分をV型混合機に仕込み、均一に混合させた。これを打錠機で244mg錠に打錠成形し、本発明の経口投与組成物1を得た。
【0030】
【表6】

【実施例2】
【0031】
経口投与組成物1と同様に、表7に処方を示す処方の対照例を調製した。
【0032】
【表7】

【0033】
経口投与組成物1と同様に、表8に処方を示す処方の対照例を調製した。
【0034】
【表8】

【0035】
<有効性確認試験>
前記の経口組成物の思春期後のニキビあるいは肌荒れに悩んでいる女性を対象にニキビや肌状態への影響を調査した。前記の各経口組成物を1日4錠(1錠244mg)摂取し、12週間のニキビの改善効果を調査した。その結果、表7及び表8の処方に比べて、表6の甘草エキスを入れた経口組成物がニキビ数および医師の所見ともに顕著に改善された。結果は表9に示す。
【0036】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、食品として応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Licorice-saponinH2及び/又はその塩からなるヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項2】
抗炎症効果を有することを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項3】
前記炎症は、ニキビによるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤の基源がGlychyrrhiza 属の植物を水を含んでも良い親水性有機溶媒で抽出したエキスであることを特徴とする、ヒアルロニダーゼ阻害剤
【請求項5】
前記Glychyrrhiza 属の植物がGlychyrrhiza glabraであることを特徴とする請求項4記載のヒアルロニダーゼ阻害剤
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤を含有する、ニキビ用の食品組成物。
【請求項7】
更に、グルコン酸亜鉛及びグルコン酸銅を含有することを特徴とする、請求項6項に記載のニキビ用の食品組成物。
【請求項8】
更にビタミンB群を含有することを特徴とする、請求項6又は7に記載のニキビ用の食品組成物。
【請求項9】
前記ビタミンB群がビタミンB2及び/又はビタミンB6であることを特徴とする、請求項8のニキビ用の食品組成物。

【公開番号】特開2009−203182(P2009−203182A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46404(P2008−46404)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】