ヒトの抗体の分離方法
本発明はヒトの抗体を分離する方法を提供する。この方法は:B細胞を精製すること;少数のB細胞が標的に結合する濃度を同定するために、多くの標的濃度においてB-細胞を、少なくとも一つのラベルを付した標的に接触させること;標的に結合したB細胞を収集すること;及びB細胞が標的を結合させた抗体を識別し、分離し及び同定することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人の抗体の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単クローン抗体は、単クローン抗体により達成が可能な高い親和性と選択性により重要な調合剤となった。1970年代に初めて単クローン抗体が開発されてから、関心の対象となる病気の標的に特異な単クローン抗体の使用は、これに限定されるものではないが、癌及び自己免疫疾患を含む種々の病気の治療に新しい治療法の選択肢を提供してきた。
【0003】
単クローン抗体を生産し、これを用いる方法は改良されて来たが、新しい単クローン抗体を同定するために用いられる方法は安定したものではなく、また信頼できるものでもない。例えば、ヒトのIg遺伝子導入マウスへの免疫付与は必ずしも高い抗体親和性を保証するものではない。さらに、ハイブリドーマの生成とスクリーニングは退屈な、時間の掛かる作業である。さらに、抗体ファージは遺伝子導入マウスを用いる場合よりも有利な点が多いが、そのスクリーニングに要する労力は気力を削ぐものである。これらの方法では、ライブラリーサイズでの要求と元の配置での重鎖と軽鎖遺伝子をペアにする必要があるため、時間を集中して行わねばならず、また結果は保証されるものではない。したがって、抗体の確実な分離及び同定を促進する容易な方法が求められる。
【発明の概要】
【0004】
本発明はヒトの抗体を分離する方法を提供する。この方法は:B細胞を精製すること;少数のB細胞が標的に結合する濃度を同定するために、多くの標的濃度においてB-細胞を、少なくとも一つのラベルを付した標的に接触させること;標的に結合したB細胞を収集すること;及びB細胞が標的を結合させた抗体を識別し、分離し及び同定することを含む。
【0005】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞はヒトのドナー血液又は骨髄から分離され、精製される。さらに好ましい実施の形態においては、標的は蛍光標識を付され、FACSを通して収集される。
【0006】
他の実施の形態においては、B細胞及び標的は多くの標的濃度で組み合わされ、抗体の結合親和性が決定されることもある。
【0007】
さらに他の好ましい実施の形態においては、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)が抗体を同定するために用いられる。他の好ましい実施の形態においては、単一のB細胞が培養され、それによりクローン個体群が増殖される。
【0008】
ある好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は低い濃度を持つ。ある特に好ましい実施の形態においては、低い標的濃度は約1ミクロモル(1e-6M)及び約1ピコモル (1e-12M)の間であり、一方他の特に好ましい実施の形態においては、低い標的濃度は約1e-7M及び約1e-11Mの間である。
【0009】
ある好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は癌性細胞、細胞株、細胞培養体、腫瘍抽出物(tumor extract)、又は癌性組織又は癌におかされた器官よりなる群から選択される。
【0010】
ある特に好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は抗原である。ある好ましい実施の形態においては、抗原は癌抗原Muc-1, Tag72, CEA, CD22, ED-B及びFAPよりなる群れから選択される。
【0011】
ある好ましい実施の形態においては、これらの方法には抗体を確認にすることを含む。ある特に好ましい実施の形態においては、確認はscFv-酵素融合を作り出すことにより実現される。ある好ましい実施の形態においては、scFv-酵素融合はscFv-BLA融合である。更にある好ましい実施の形態においては、確認はニトロセフィン アセイ(nitrocefin assay)により実現される。
【0012】
本発明はまたヒトの抗体を分離する方法を提供する。この方法は:少数のB細胞が標的に結合する濃度を同定するために、B-細胞を多くの標的濃度で少なくとも一つのラベルを付した標的に接触させるステップ;標的に結合したB細胞を収集するステップ;B細胞が標的を結合させた抗体を識別し、分離し及び同定するステップを含む。ある好ましい実施の形態においては、B細胞はヒトのドナー血液又は骨髄から分離され、精製される。さらに好ましい実施の形態においては、標的は蛍光でラベルを付され、FACSを通して収集される。
【0013】
他の好ましい実施の形態においては、B細胞及び標的は多くの標的の濃度で組み合わされ、抗体の結合親和性が決定される。
【0014】
他の好ましい実施の形態においては、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)が抗体を同定するために用いられる。他の好ましい実施の形態においては、単一のB細胞が培養され、それによってクローン個体群が増殖される。
【0015】
ある好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は低い濃度を持つ。ある特に好ましい実施の形態においては、低い標的濃度は約1ミクロモル(1e-6M)及び約1ピコモル (1e-12M)の間であり、一方他の特に好ましい実施の形態においては、低い標的濃度は約1e-7M及び約1e-11Mの間である。
【0016】
ある好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は癌性細胞、細胞株、細胞培養体、腫瘍抽出物、又は癌性組織又は癌におかされた器官よりなる群から選択される。
【0017】
ある特に好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は抗原である。ある好ましい実施の形態においては、抗原は癌抗原Muc-1, Tag72, CEA, CD22, ED-B及びFAPよりなる群れから選択される。
【0018】
ある好ましい実施の形態においては、これらの方法はさらに抗体を確認にすることを含む。ある特に好ましい実施の形態においては、確認することにはscFv-酵素融合を作り出すことにより実現される。ある好ましい実施の形態においては、scFv-酵素融合はscFv-BLA融合である。さらにある好ましい実施の形態においては、確認はニトロセフィン アセイ(nitrocefin assay)により実現される。
【発明の詳細な説明】
【0019】
本発明はヒトの抗体を分離する方法を提供する。
【0020】
特に断らない限り、本明細書で用いられる全ての技術及び科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって通常理解されると同じ意味を持つ。例えば、Singleton 及び Sainsbury,「Dictionary of Microbiology and Molecular Biology」, 第二版, John Wiley and Sons, NY (1994); Hale 及びMargham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991) は、当業者に本発明に用いられている多くの用語についての一般的な辞書を提供する。更に当業者に、広く知られている参考文献にはSambrook 他、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第二版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1989)、及びAusubel 他、Current Protocols in Molecular Biology, Greene- Publishing & Wiley Interscience NY (1987; 1999まで補遺)がある。
【0021】
本明細書に記載の方法及び材料に類似又は同一の、又は同等の種々の方法及び材料が、本発明を実施するために用いることができるが、好ましい方法及び材料は本明細書に記載のものである。したがって、以下に続けて規定する各用語は、本明細書全体を参照することでより明確になる。又、本出願で用いる冠詞「a」「an」及び「the」を付した単数形は、文意より判断して明確に他の意味でない限りその複数形を含む。
【0022】
一般的に用いられている学術用語、及び細胞培養、分子遺伝学、及び核酸反応、及び交配のような標準的実験手順は、その技術分野において良く知られており又普通に用いられている。標準的技術は組み換え核酸方法、ポリヌクレオチド合成、微生物培養、細胞培養、組織培養、転換(transformation)、トランスフェクション、形質導入(transduction)、分析化学、有機合成化学、化学合成及び化合分析に用いられる。一般に、酵素反応及び精製及び/又は分離工程は製造者の仕様に従い実施される。
【0023】
B細胞の標的に対する結合親和性(binding affinity)は、その解離定数(Kd)、50%効果的な結合(EC50)に必要な濃度、及び/又は標的に結合する他の化合物の結合の50%抑制に必要な濃度(IC50)によって記載されることもある。「Ko」はkoff/konで規定される。koff値は複合物が分解、又は分離する速度であり、kon値はB細胞及び標的が複合物を形成する速度である。結合親和性の用語は、ある場合には複合物の動的安定性、又は結合親和性の比率を反映する他の測定可能な量の比率を指す。選択性(selectivity)は結合親和性の比率、又はオフレートの比率として定義される(例えば、標的分子Kd/反標的分子Kd)。 状況によって、konを増大させ、又はkoffを減少させ、又は適用に応じてその双方を実施することが望ましいこともある。したがって、これらの全ての変形は本発明において用いうることが考慮されている。
【0024】
本明細書で用いる「タイプ」(type)は、他のタイプのB細胞からその結合親和性(Kd)により区別されるあるタイプのB細胞を言う。例えば、3つの異なるタイプのバインダーを含む本発明のある方法において、おおよそ3つの異なる結合親和性を持つ3つのクラスの剤(agent)が含まれる。「タイプ」は図7に示されており、そこでは3つの異なるタイプのバインダーがある;1)一秒のオフレートを持つバインダー、2)10秒のオフレートを持つバインダー、及び3)100秒のオフレートを持つバインダーである。
【0025】
本明細書で用いる「タンパク質」(protein)は、アミノ酸を含み、その分野の専門家にタンパク質として認められる組成物の全てを指す。「タンパク質」(protein)、「ペプチド」(peptide)及び「ポリペプチド」(polypeptide)は相互交換的に用いられる。ペプチドがタンパク質の一部である場合、当業者であれば文意よりその用語の用いられている意味を理解するであろう。「タンパク質」(protein)は、関連するタンパク質の代用形(pro-)、及び代用形の前段階(prepro-)の形のみならず、タンパク質の成熟した形をも含む。タンパク質の代用形の前段階の形には、タンパク質のアミノ末端に動作可能にリンクされたプロ配列を持つタンパク質の成熟形、及びプロ配列のアミノ末端に動作可能にリンクされた「前」(pre-)又は「シグナル」(signal)配列を含む。又これらの用語には抗体の配列の様な配列をも含む。
【0026】
類似の側鎖を持つアミノ酸残基のファミリーはその技術分野で知られている。これらのファミリーには、塩基側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、テレオニン、チロシン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン、グリシン)β枝分かれ側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を持つアミノ酸を含む。本明細書では、技術分野で知られている標準的な3文字、又は1文字のアミノ酸の略称を用いている。同等の置換物も本発明の範囲に含まれる(例えば、アミノ酸を同じグループのアミノ酸で置換したもの)。
【0027】
ある実施の形態においては、本発明のペプチド、ポリペプチド及び/又はタンパク質には一以上のノンクラシカル アミノ酸(non-classical amino acid) を含む。「ノンクラシカル アミノ酸」には、これに限定されるものではないが、通常のアミノ酸のD異性体(D-isomer)、αアミノ イソ酪酸(α-amino isobutyric acid(Ahx))、4アミノ酪酸 (A-aminobutyric acid (4-Abu))、2アミノ酪酸 (2-aminobutyric acid (2-Abu))、6-アミノへキサン酸(6-amino hexanoic acid (Ahx))、2-アミノイソ酪酸(2-amino isobutyric acid (2-Aib))、3-アミノ プロピオン酸(3-amino propionoic acid)、オルチニン(ornithine)、ノルロイシン(norleucine)、ノルバリン(norvaline)、ヒドロオキシプロリン(hydroxyproline)、サルコシン(sarcosine)、シトルリン(citrulline)、システイン酸(cysteic acid)、t−ブチルグリシン(t-butylglycine)、t−ブチルアラニン(t-butylalanine)、フェニルグリシン(phenylglycine)、シクロヘキシルアラニン(cyclohexylalanine)、β−アラニン(β-alanine)、フルオロアミノ酸(fluoro-amino acids)、及びβメチルアミノ酸(β-methyl amino acids)、Cαメチルアミノ酸(Cα-methyl amino acids)、Nαメチルアミノ酸(Nα-methyl amino acids) の様な「デザイナ」アミノ酸、及び一般的なアミノ酸アナログを含む。
【0028】
本明細書で用いる「抗体」(Antibody; Ab)及び免疫グロブリン(Immunoglobulin; Ig)は、その生成物を作り出した、抗原(常にではないが、通常は、ペプチドである)又は構造的に同様な抗原に高い特異性をもって結合する、B細胞及びヒト、及び他の動物の形質細胞(plasma cell)により作り出される糖タンパク質として定義される。抗体は知られているどの様な方法によって作っても良く、多クローン性、又は単クローン性である。この用語は又キメラ抗体、ヒト化抗体、免疫グロブリン、又は抗体又は抗原に結合する抗体の機能断片を含む。その様な機能を持つものの例には完全抗体分子、Fv、単鎖Fv、相補性決定領域(complementarity determining regions (CDRs))、VL (軽鎖可変領域)、 VH (重鎖可変領域)、及びこれらの何れの組み合わせ、又は標的抗原に結合可能な免疫グロブリンペプチドの他の全ての機能部分の様な抗体断片を含む。
【0029】
本明細書で用いる抗体は種々の免疫原を用いて作ることができる。多クローン抗体の生産には技術分野で知られている種々の手順を用いることができる。抗体の生産のためのある実施の形態においては、種々の宿主動物(これらに限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラット、羊、ヤギ等を含む)が本発明における関心の対象となる標的に対応するペプチドの注射により免疫化される。ある好ましい実施の形態においては、ペプチドは免疫原性キャリアーと結合される(例えば、ジフテリアトキソイド(diphtheria toxoid), ウシ血清アルブミン、(bovine serum albumin (BSA)), 又はキーホールリンペットへモシアニン (keyhole limpet hemocyanin [KLH])。免疫反応を増大させるために、宿主の種に応じて、これらに限定されるものではないが、フロイント(完全及び不完全)、(Freund's (complete and incomplete))アジュバント水酸化アルミニウムの様な鉱物ゲル;リゾレシチン (lysolecithin), プルロニック ポリオール(pluronic polyols), ポリアニオン (polyanions), ペプチド (peptides), オイル 乳液 (oil emulsions), キーホール リンペット へモシアニン(keyhole limpet hemocyanins), ジニトロフェノール(dinitrophenol) の様な界面活性物質;及びBCG (Bacille Calmette-Guerin) 及び(コリネバクテリア パルブン(Corynebacterium parvum)の様な潜在的に有用なヒトのアジュバントを含む種々の補助剤が用いられる。
【0030】
モノクローナル抗体を作るためには、細胞株を連続培養することにより抗体分子を生産するどの様な技術を用いることができる(例えば、Harlow 及び Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照願いたい)。これには、これに限定されるものではないが、トリオーマ技術、ヒトのB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozbor 他、Immunol. Today 4:72 [1983]を参照)のみならず、Kohler 及びMilstein (Kohler 及びMilstein, Nature 256:495-497 [1975]) により原型が開発されたハイブリドーマ技術、及びヒトのモノクローナル抗体を生産するEBVハイブリドーマ技術(例えば、Cole他、 Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 [1985]を参照)を含む。ある特に好ましい本発明の実施の形態においては、本発明はIgGクラスのモのクローナル抗体を提供する。
【0031】
本発明の更なる実施の形態においては、モノクローナル抗体は無菌動物で作られる(例えば、PCT/US90/02545を参照願いたい)。この発明によればヒトの抗体を用いることができ、ヒトのハイブリドーマを用いて作ることができ(例えば、Cote 他、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.80:2026-2030 [1983]を参照願いたい)、又はインビトロでヒトのB細胞をEBVウィルスにより形質転換することにより作ることができる(例えば、上記のColeを参照願いたい)。
【0032】
単鎖抗体の生産について記載する技術(米国特許4,946,778; 本文献は参照により本明細書に組み入れられる)は対象となる分子を特異的に認識する単鎖抗体を生産するのに有用である。ある実施の形態においては、Fab発現ライブラリーの構築について記載される技術(例えば、Huse 他、Science 246:1275-1281 [1989]を参照願いたい)は、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定するために用いられる。
【0033】
抗体分子のイディオタイプ(抗原結合領域)を含む抗体断片が既知の技術により生成されうる。例えば、その様な断片には、これに限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化により生成されうるF(ab')2 断片; F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成されうるFab'断片、及び抗体分子をパパイン(papain)及び還元剤により処理することにより生成されうるFab断片を含む。
【0034】
本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」(oligonucleotide)の用語は、二つ以上のジオキシリボヌクレオチド、又はリボヌクレオチドより成る分子として定義される。その厳密なサイズは多くの要素によって変わり、それは又オリゴヌクレオチドの最終的な機能又は用途による。オリゴヌクレオチドは、例えば、ホスホトリエステル法(Narang 他、Meth.Enzymol, 68:90-99 [1979]を参照); ホスホジエステル法(Brown他、Meth.Enzymol., 68:109-151 [1979]を参照); ジエチルホスホアミド法(Beaucage 他、Tetrahedron Lett. 22:1859-1862 [1981] を参照)、及び固体支持法(solid support method)(例えば、米国特許4,458,066を参照)の様な、その技術分野で知られているどの様な適当な方法によって適当な配列をクローンし、制限し、及び直接化学的に合成することを含むどの様な適当な方法によっても生成しうる。
【0035】
合成法の種々の有用な研究は当業者に知られている(例えば、Goodchild, 1990, Bioconjugate Chemistry 1(3):165-187 [1990]を参照願いたい)。上記の文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
「低濃度」(low concentration)の用語は、B細胞バインダーの標的に対する望ましい解離定数より約1000倍から約10倍低い標的の濃度を言う。 低濃度は、例えば、ライブラリーメンバーの標的に対する結合の、望ましい解離定数の約10倍又はそれ以下の濃度を指すこともある。ある実施の形態においては、好ましい濃度は約1ミクロモル(1e-6M)から約1ピコモル(1e-12M)の間であり、好ましくは約1e-7から約1e-11の間のどの濃度であっても良い。
【0037】
「正常」(normal)の用語は、観察可能な、及び/又は認識可能な異常又は欠陥がない状態にあるものを言う。したがって、正常な細胞は、それ自身のタイプが変更されていない細胞の表現型及び遺伝子型と矛盾しない、典型的な、標準的な発現パターン、発現レベルに適合し、それと矛盾しない細胞である。反対に「異常」は典型的でなく(すなわち、非典型)であり、通常又は標準的でなく、非正常であることを言う。したがって、罹病細胞は「異常」な細胞タイプである。
【0038】
「標的」の用語はB細胞により認識される物質を言う。どの様な適当な生体表面又は非生体表面は本発明において用いることができる。
【0039】
更なる実施の形態においては、生体表面はある器官の表面であり、他の実施の形態においては、生体表面は細胞又は組織の表面である。更なる実施の形態においては、生体表面は罹病した器官、組織又は細胞の表面であり、他の実施の形態においては、生体表面は正常な、又は健康な器官、組織又は細胞の表面である。
【0040】
更なる実施の形態においては、表面は組織の間質腔内の巨大分子である。更なる実施の形態においては、生体表面は、これに限定されるものではないが、細菌、真菌、ウィルス、寄生生物(蠕虫、原生動物等)を含む微生物の表面である。ある実施の形態においては、微生物は動物の病原体であり、他の実施の形態においては、微生物はヒト及び/又は他の動物に対して非病原性である。細胞及び/又は組織のソースにはヒト、ヒト以外の動物、細菌、真菌及び植物を含む。
【0041】
したがって、どの様な生体表面(例えば、細胞、組織、皮膚、つめ、内臓、外部組織、及び/又は髪)も本発明においての標的としての役割をすると考えられる。ある実施の形態においては、細胞はヒトの細胞であり、他の実施の形態においては、細胞はヒト以外の動物の細胞、細菌細胞又は真菌細胞である。この用語は、又ウィルス及び/又はウィルス粒子を含む細胞を含む。ある実施の形態においては、細胞は造血細胞、癌細胞、又はレトロ ウィルスにより形質導入された細胞である。
【0042】
他の実施の形態においては、標的は赤血球、血小板、及び白血球系の種々の未熟細胞のみならず、造血細胞(例えば、造血幹細胞)を含む血液細胞である。「血液細胞」(blood cell)は、これに限定されるものではないが、造血細胞、赤血球、好中球、単球、血小板、マスト細胞、好酸球、好塩基球、リンパ球、B細胞、T細胞、プラズマ細胞、マクロファージ及びナチュラルキラー細胞を含む。ある実施の形態においては、標的は異常血液細胞である。ある実施の形態においては、HSC標的はCD34+ Thy- 1+ 又は CD34+ Thy- 1+ Lin- の表面抗原発現の性質を持つ(「Lin-」は、少なくとも一つの系統特異マーカーの発現を欠くというベースに基づき選択される細胞集団を指す)。HSCを分離し選択する方法はその技術分野で周知である(例えば、米国特許5,061,620, 5,677,136, 及び 5,750,397を参照願いたい。これらの文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0043】
他の実施の形態においては、標的は分子である。ある実施の形態においては、分子は有機分子である。更なる実施の形態においては、分子は生体分子である。更に、他の実施の形態においては、生体分子は細胞に関連した分子である。更に他の実施の形態においては、細胞に関連した分子は細胞の外部表面に関連したものである。更なる実施の形態においては、細胞に関連した分子は細胞外マトリクスの部分である。更に他の実施の形態においては、細胞に関連した分子はタンパク質である。ある実施の形態においては、タンパク質は受容体である。他の実施の形態においては、細胞に関連した分子は特定の細胞タイプに特異である。更なる実施の形態においては、細胞は罹病した及び/又は異常細胞である。ある好ましい実施の形態においては、罹病した細胞は癌細胞である。他の実施の形態においては、罹病した細胞は感染細胞である。本発明の標的として用いられる他の分子は、これらに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、多糖、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、有害物質、代謝産物、阻害剤、薬物、染料、栄養物及び成長因子を含む。
【0044】
本発明に包含されるタンパク質及び化学的標的の例としては、これに限定されるものではないが、ケモカイン及びサイトカイン及びそれらの受容体を含む。本明細書で用いる「サイトカイン」(cytokine)の用語は、細胞に種々の効果を与える多くの因子(例えば、成長、分化及び/又は増殖を誘発する)の何れをも指す。この非限定的な例には、例えば、IL-2, IL-3, IL-4 IL-6, IL-10, IL-12, IL-13, IL-14 及びIL- 16の様なインターロイキン(IL);
可溶性IL-2 受容体、可溶性IL-6 受容体、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、白血球マクロファージコロニー刺激因子 (GM・CSF)、幹細胞因子(SCF)、白血球抑制因子(LIF)、インターフェロン(例えば、IFN-アルファ、ベータ、及びガンマ)、 オンコスチン M(OM)、免疫グロブリン超分子群、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリー、特にTNF-アルファ、 形質転換成長因子(例えば、TGF-アルファ及びTGF-ベータ)、及びIL-1アルファ、血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリー、特にVEGF(技術分野でVEGF-A とも呼ばれる)、VEGF-B, VEGF-C, VEGF-D 及び胎盤成長因子(PLGF)を含む。サイトカインはAmgen (Thousand Oaks, CA), Immunex (Seattle, WA), 及びGenentech (South San Francisco, CA)を含む幾つかの販売先より購入が可能である。
【0045】
本明細書で用いる「組織」(tissue)は、一体となってある特殊な機能を発揮する同様な特殊な細胞の群又は層を指す。ある組織では、ただ一つのタイプの細胞が存在し、他の組織では、複数の異なるタイプの細胞が存在する。この用語は、これに限定されるものではないが、以下のタイプを含む:リンパ球、リンパ節、脂肪、骨、網状連結組織(aerolar)、軟骨、連結組織、弾性体、内皮、上皮、線維、腺、内蔵に関連するリンパ球(GALT)、未分化のもの、間質性のもの、網状のもの、間葉性のもの、骨髄に関するもの、筋肉、神経、骨、骨格、皮下、及び他の組織のタイプのものである。この用語はまた修飾された組織を含む。
【0046】
「標的集団」(target population)の用語は、B細胞又はB細胞集団が露出される、関心の対象である標的の集合を指す。標的集団は、本明細書に記載の様に単一の標的又は標的の集合を含むこともある。本発明では、これに限定されるものではないが、細胞、組織、皮膚、爪、及び/又は髪を含み、如何なる生体表面の集合も標的集団としての使用価値がある。
【0047】
ある実施の形態においては、標的集団は癌細胞、細胞株、又は細胞培養体、腫瘍抽出物、又は癌組織、又は器官、癌細胞、細胞株、又は細胞培養、腫瘍抽出物、又は癌組織、又は器官に関連する分子を含む。
【0048】
ある実施の形態においては、標的集団は抗原又は、抗原の集合自身を含む。
【0049】
ある好ましい実施の形態においては、標的は「癌に関連した標的」である。この用語は、本発明の組成物が、ある器官において、癌又は癌に関連した状態であると診断又は検知された場合、その一部として結合する如何なる標的をも含む。
【0050】
例えば、この用語は、被験者又は、健常者の組織から採った生体サンプル(例えば、癌組織に関連した脈管構造)に加え、癌細胞、組織及び/又は器官;癌細胞、組織及び/又は器官に関連した分子;及び/又は癌細胞、組織及び/又は器官に関連した分子、細胞、組織又は器官(例えば、被験者に投与された腫瘍に結合した診断用分子)を含む。癌に関係した標的の例は米国特許番号6,261,535に記載されており、本文献は参照により本明細書に組み入れられる。しかし本発明は特定の癌に関係した標的に限定することを意図しているものではない。癌に関係した標的は、癌に関連した標的はあらゆる癌又は癌に関連した状態に関したものであって良い。癌のタイプの例として、これに限定されるものではないが、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫及び混合タイプの癌を含む。
【0051】
ある実施の形態においては、癌は骨肉種である。その例には、これに限定されるものではないが、Ewing肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、及び他の軟部組織の肉腫を含む。他の実施の形態においては、癌は、これに限定されるものではないが、脳腫瘍、希突起グリオーマ、上衣腫、メネンギオマス(menengiomas)、リンパ腫、神経鞘腫、及び髄芽腫を含む神経系統の癌である。更なる実施の形態においては、癌は乳癌(例えば、胸の腺管癌)である。更に他の実施の形態においては、癌は前立腺癌である。又他の実施の形態においては、癌は内分泌系癌(例えば、副腎、膵臓、副甲状腺、下垂体及び甲状腺)である。更に他の実施の形態においては、癌は消化管癌(例えば、肛門、結腸直腸、直腸、口頭、舌、食道、胃、胆のう、腺管癌、肝臓、膵臓、大腸、小腸の癌)である。更に他の実施の形態においては、癌は婦人科癌(例えば、子宮頚、子宮内膜、子宮、卵管、妊娠性絨毛性疾患、絨毛腫、卵巣、膣及び外陰の癌)である。更に他の実施の形態においては、癌は頭頚部癌(例えば、喉頭癌、口腔咽頭癌、上皮小体(parathryroid)、及び甲状腺癌)である。他の実施の形態においては、癌は白血性癌(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、及び/又は骨髄増殖症候群)である。更に他の実施の形態においては、癌は肺癌である(例えば、中皮腫、非小細胞肺癌、及び小細胞肺癌)である。他の実施の形態においては、癌はリンパ腫(例えば、AID関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、菌状息肉腫、Hodgkin病、及び非Hodgkin病)である。他の実施の形態においては、癌は骨髄腫瘍(例えば、多発性骨髄腫)である。更に他の実施の形態においては、癌は小児癌(例えば、脳腫瘍、Ewing肉腫、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、又は急性骨髄性白血病)、肝臓癌、リンパ腫(例えば、Hodgkinリンパ腫、及び非Hodgkinリンパ腫)、神経芽腫、網膜芽腫、肉腫(例えば、骨肉腫、又は横紋筋肉腫)及びWilms腫瘍である。更に他の実施の形態においては、癌は男性生殖器癌であり、これに限定されるものではないが、前立腺、睾丸、精巣上体、及び陰茎癌を含む。他の実施の形態においては、癌は皮膚癌(例えば、内皮T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、Kaposi肉腫、皮下又は黒色腫)である。更に他の実施の形態においては、癌は甲状腺癌(例えば、乳頭癌、濾胞腺癌、髄様癌、又は退形成癌、又は未分化甲状腺癌)である。他の実施の形態においては、癌は尿道系癌(例えば、膀胱癌、腎臓癌及び尿道癌)である。更なる実施の形態においては、癌又は癌に関連する状態は毛細血管拡張性失調症、発生元不明の癌、Li-Frnumeni症候群又は胸腺腫である。更なる実施の形態においては、癌は転移性癌である。
【0052】
他の実施の形態においては、癌に関連する標的は癌細胞又は組織に関係する分子である。ある実施の形態においては、分子は腫瘍又は、腫瘍血管/間質系抗原である、例えば、 CD20, CD19, CD30, CD3, GD2, Lewis-Y, 72 kd 糖タンパク質(gp72, 分解促進因子, CD55, DAF, C3/C5 転換酵素), CO17-1A (EpCAM, 17- 1A, EGP-40), TAG-72, CSAg-P (CSAp), 45kd糖タンパク質, HT-29 ag, NG2, A33 (43kd gp), 38kd gp, MUC-I, CEA, EGFR (HERl), HER2, HER3, HER4、HN-I リガンド, CA125, シンデカンー1(syndecan-1), ルイスーX(Lewis X), FAP 間質系Ag(stromal Ag) (線維芽細胞活性化タンパク質), EDG 受容体(エンドグリン受容体(endoglin receptors)), ED-B, ラミニンー5(laminin-5) (ガンマ2), コックス‐2(+LN-5)(cox-2 (+LN-5)), PgP (P-糖タンパク質), アルファVベータ3 インテグリン, アルファVベータ5インテグリン, uPAR (ウロキナーゼプラスミノゲン活性化受容体(urokinase plasminogen activator receptor), エンドグリン(CD 105), GD2, アミノペプチダーゼ、テネイシンーC(tenascin-C)、NG-2, TEMl, TEM8, アネキシン(annexin)、葉酸受容体オステオポンチン(folate receptor osteopontin (EDG 1,3)), p97 (メラノトランスフェリン(melanotransferrin)),ファルネシル トランスフェラーゼ(farnesyl transferase)又はアポトーシス経路上の分子(例えば、死受容体, fas, カスパーゼ又はbcl-2) 又はレクチン(lectin)である。
【0053】
本発明においては、又広範囲の種々の分子標的を用いることができる。適当な標的分子には、これに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸、炭化水素、脂質、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、ウイルス、病原体、毒性物質、代謝産物、抑制剤、薬剤、染料、栄養素、成長因子、細胞又は組織を含む。
【0054】
他のタンパク質及び化学的標的は、これに限定されるものではないが、ヒトの可溶性白血球抗原(HLA クラスI及び/又はクラスII及びノンクラシカル クラスIHLA(E, F 及びG))の様な免疫調整タンパク質; 可溶性T又はB細胞表面タンパク質の様な表面タンパク質;ヒトの血清アルブミン;プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、及びプロクタサイクリンの様なアラカドニック酸(arachdonic acid)代謝産物;IgE, 自己免疫又は、異質又は異種免疫に対する自己抗体又は同種異形抗体;Ig Fc 受容体又はFc受容体結合因子;受容体と結合したGタンパク質;細胞表面炭化水素;血管形成因子;接着分子;カルシウム、リン、マグネシウム、アルミニウム及び鉄等のイオン;プリオン及びチューブリンの様な線維タンパク質;プロテアーゼ、アミノペプチド、キナーゼ、フォスフォターゼ、DNAses, RNAases,リパーゼ、エステラーゼ、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドロラーゼ、スルファターゼ、シクラーゼ、トランスフェラーゼ、トランスアミナーゼ、カルボキシラーゼ、デカルボキシラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、及びその天然基質、又は同類; 卵胞刺激ホルモン(FSH)、ロイチナイジングホルモン(LH)、(leutinizing hormone LH)、チロキシン(T4及びT3)、アポリポタンパク質、低密度リポタンパク質(LDL)、極低密度リポタンパク質(VLDL)、コルチゾール、アルドステロン、エストリオール、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、(DHBA)及びそのサルフェート(DHEA-S)の様なホルモンその対応受容体;レニン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、バソプレシン、及び抗利尿薬(AD)、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH), LHRH, 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(THRH)、血管性腸管ペプチド(VIP)、ブラシキン及び対応プロホルモンの様な ペプチドホルモン; アドレナリン、及び代謝産物の様なカテコ‐ルアミン(catechcolamine);アトリオナトリウチック(atrionatriutic)因子(AdF)、ビタミンA,B,C,D,E及びK及びセロトニンを含む共同因子;プロトロンビン、トロンビン、繊維素、フィブリノゲン、因子VIII、因子IX、因子XI、及びvon Willebrand 因子の様な凝固因子;プラスミン、補体活性化因子、LDL及びそのリガンド及び尿酸の様なプラスミノゲン因子;ヒルジン(hirudin)、ヒルログ(hirulog)、ヘメンチン(hementin)、ヘパリン(heparin)及び組織プラスミノゲン活性剤(TPA)の様な凝固制御化合物(compounds regulating coagulation); 遺伝子治療のための核酸;酵素抑制因子;炎症因子及び受容体及び先に述べた分子の一以上と結合する他のタンパク質の様なリガンドと結合する化合物を含む。
【0055】
他の化学的標的には、これに限定されるものではないが、大麻、ヘロイン及び他のアヘン剤、フェンシクリジン(PCP)、バルビツール、コカイン、及びその誘導物及びベンザジアゼピンの様な薬剤、特に習慣性薬剤;水銀、及び鉛、砒素及び放射線化合物の様な重金属の様な毒物;
パラセタモール、ジコキシン、及び遊離基の様な化学療法薬;リポ多糖体(LPS)、及び他のグラム陰性毒、ブドウ状球菌毒素、毒素A、破傷風毒素、ジフテリア毒素、及び百日咳毒素の様な菌体毒素; 植物及び魚介毒;アエロバクチン(aerobactin)、毒素、タンパク質などの様な蛇及び他の分泌毒、悪性因子;肝炎、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス(例えば、HSVタイプ1,2及び6)、エプスタイン・バー・ウイルス(Epstein-Barr virus)(EBV)、水痘帯状ヘルペス(VZV)、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV-1, 2)及び他のレトロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、インフルエンザ、ライノウイルス、パルボウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、ポリオ、パラルソウイルス(pararmyxovirus)、パポバウイルス、ポックスウイルス、アルボウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、狂犬病ウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ロタウイルス及びピコルナウイルスの様な感染性ウイルス;プリオン;プラスモジア組織因子、アメーバ(例えば、赤痢アメーバ)を含む原生動物、フィラリア(例えば、ブケレリア属)、変形体(Plasmodium)、ジアルジア属、リシューマニア属、クリプトスポリジウム属、サルコシスティス属、バベシア属、トリパノソーマ属及びトキソプラズマ属;蠕虫(例えば、吸虫類、cestodes、及び線虫);敗血症、院内感染及び他の感染の元となる好気性、嫌気性及び通気性細菌を含む細菌(例えば、大腸菌、アシネトバクター属、緑濃菌、プロテウス属、クレブジエラ属、ブドウ状球菌属、連鎖球菌、ナイセリア属、マイコバクテリア属、レジオネラ菌、クロストリジウム属、マイコプラズマ属、トレポレーマ属、クラミジア属、リケッチア属、バルトネラ属)、及び真菌(例えば、カンジダ属、ニューモシスティス属、アスペルギルス属、トリコスポルム属(Trichosporum)、小胞子菌、ピチニア属(Pichnia)、コクシジオイデス属、ブラストミセス属、ヒストプラスマ属、クリプトコッカス属等)を含む。事実、本発明はこれらの特定の標的に限定されるものではない。結合することの可能なものであればどの様な標的(例えば、結合標的を形成するもの)も本発明において用いることができる。
【0056】
更なる実施の形態においては、標的は植物又は植物に由来する材料である。ある実施の形態においては、標的は木であり、他の実施の形態においては、標的は木ではない植物である。本発明においては、すべての植物及び/又は植物に由来する材料を含むと考える。
【0057】
ある実施の形態においては、標的はプロテアーゼ、アミノペプチド、キナーゼ、フォスフォターゼ、DNAses, RNAases、リパーゼ、エステラーゼ、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドラーゼ、スルファターゼ、セルラーゼ、シクラーゼ、トランスフェラーゼ、オランスアミナーゼ、カルボキシラーゼ、デカルボキシラーゼ、スパーオキシド ジスムターゼ、及びそれらの天然基質、又は類似物のような酵素である。特に好ましい酵素には、ヒドラーゼ、特にアルファ/ベータヒドラーゼ;スブチリシン、及びキモトリプシン セリン プロテアーゼの様なセリンプロテアーゼ;セルラーゼ及びリパーゼを含む。
【0058】
本明細書に記載の「分子」(molecule)は標的分子(例えば、抗原又はリガンド)を指す。適当な剤、標的分子及び反標的分子(anti-target molecules)は、これに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原,抗体、ウイルス、病原体、有毒物質、代謝産物、抑制剤、薬物、染料、栄養素、成長因子、細胞及び組織を含む。
【0059】
本発明は、B細胞を精製するステップ、少量のB細胞が標的に結合する濃度を同定するために、精製されたB細胞を少なくとも一つのラベルを付した標的に多くの異なる標的濃度で接触させるステップ、及び標的と結合したB細胞を収集し、B細胞が結合した標的を識別し、分離し、及び同定するステップを含むヒトの抗体を分離する方法を提供する。
【0060】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞はヒトのドナー血液又は骨髄から分離し、精製される。更なる好ましい実施の形態においては、標的は蛍光ラベルを付され、結合B細胞及び標的(すなわち、B細胞/標的複合体)の収集はFACS(蛍光活性化細胞選別:fluorescence-activated sorting)の様な方法を用いて実現される。
【0061】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞及び標的は抗体の結合親和性が観測される様な条件で、多くの標的濃度で組み合わされる。ある特に好ましい実施の形態においては、好ましい標的濃度は、実施例に記載され及び図面に示されている様な方法で計算される。
【0062】
ある好ましい実施の形態においては、標的の濃度は低い。これらの好ましい実施の形態の幾つかでは、低濃度は約1ミクロモル(le−6M)から約1ピコモル(1e-12)の間である。更に特に好ましい実施の形態においては、標的濃度は約le-7Mから約le-l1Mの間である。
【0063】
他の好ましいの実施の形態においては、適当な増幅方法が標的/B細胞複合体を同定するために用いられる。更に好ましいの実施の形態においては、単独(single)B細胞が、クローン集団を増殖するために培養される。
【0064】
上で述べた様に、本発明のおいてはどの様な適当な標的又は標的集団も用いることができる。更に、本発明においてはどの様な適当な生体表面又は非生体表面も用いることができる。
【0065】
ある特に好ましい実施の形態においては、これらの方法は更に同定された抗体を確認するステップを含む。ある好ましい実施の形態においては、確認はscFv-酵素融合を作り、この融合体を元の標的と結合させて融合の酵素活性をアッセイすることにより実現する。標準的アッセイは当業者に良く知られており、どの様な適当なアッセイも本発明で用いることができる。しかし、好ましい実施の形態においては、酵素はベータ−ラクタマーゼ(beta-lactamase)(BLA)であるのが良い。本明細書で用いるベータ−ラクタマーゼ(beta-lactamase)はベータラクタム環(beta lactam rings)(例えば、3つの炭素原子及び一つの窒素原子を含むへテロ原子環状構造)を分解する何れの酵素をも指す。ベータラクタム環は幾つかの抗菌剤の成分であり、これに限定されるものではないが、ペニシリン、セファロスポリン及び他の関連する化合物を含む。ある好ましい実施の形態においては、本発明のベータ−ラクタマーゼは天然の酵素であり、他の好ましい実施の形態においては、本発明のベータ−ラクタマーゼは組み換えされたものである。更に好ましい実施の形態においては、本発明のベータ−ラクタマーゼは修飾されたものである。
【0066】
本発明で用いることのできる特異のBLAの例には、これに限定されるものではないが、クラス A, B, C, 又は Dベータ−ラクタマーゼ(β-lactamase)及びβガラクトシダーゼ(例えば、Benito 他、FEM Microbiol. Lett. 123:107[1994]を参照願いたい)を含む。
【0067】
ある好ましい実施の形態においては、結合は、融合体の抗体結合後のベータ−ラクタマーゼ(β-lactamase)活性を測定することにより確認される。ある好ましい実施の形態においては、活性は技術分野で知られているニトロセフィンアッセイ(nitrocefm assay)を用いて測定される(米国特許出願番号10/022,097,を参照願いたい。本文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0068】
本発明は、少量のB細胞が標的に結合する濃度を同定するために、B細胞を、少なくとも一つのラベルを付した標的に多くの異なる標的濃度で接触させるステップ、及び標的と結合したB細胞を収集するステップ、B細胞が結合した抗体を識別し、分離し、及び同定するステップを含む、ヒトの抗体を分離する方法を提供する。
【0069】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞はヒトのドナー血液又は骨髄から分離し、精製される。更なる好ましい実施の形態においては、標的は蛍光ラベルを付され、結合B細胞及び標的(すなわち、B細胞/標的複合体)の収集はFACS(蛍光活性化細胞選別:fluorescence-activated sorting)の様な方法を用いて実現される。
【0070】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞及び標的は抗体の結合親和性が観測される様な条件で、多くの標的濃度で組み合わされる。ある特に好ましい実施の形態においては、好ましい標的濃度は、実施例に記載され及び図面に示されている様な方法で計算される。
【0071】
ある好ましい実施の形態においては、標的の濃度は低い。これらの好ましい実施の形態の幾つかにおいては、低濃度は約1ミクロモル(le−6M)から約1ピコモル(1e-12M)の間である。更に特に好ましい実施の形態においては、標的濃度は約le-7Mから約le-l1Mの間である。
【0072】
他の好ましい実施の形態においては、適当な増幅方法が標的/B細胞複合体を同定するために用いられる。更に好ましい実施の形態においては、単独(single)B細胞が、クローン集団を増殖させるために培養される。
【0073】
実験
以下の実施例は、本発明のある好ましい実施の形態及び特徴を説明するために記載されるものであり、発明の範囲を限定するためのものと解してはならない。
【0074】
以下に開示される実験では、以下に述べる略記が用いられる:sd及びSD(標準的偏差);M(モルの); mM(ミリモルの); μM(ミクロモルの); nM(ナノモルの); mol (モル); mmol(ミリモル);μmol (ミクロモル); nmol(ナノモル); gm(グラム); mg(ミリグラム); mg (ミクログラム);μg(ミクログラム); pg(ピコグラム); L (リッター); ml(ミリリッター); μl(ミクロリッター); cm(センチメータ); mm(ミリメータ); μm(ミクロメータ); nm (ナノメータ); LF(致死因子); ℃(摂氏); cDNA(コピーまたは相補的DNA); DNA(デオキシリボ核酸); ssDNA(単鎖DNA); dsDNA(二重鎖DNA); dNTP(デオキシヌクレオチド三リン酸); RNA(リボ核酸); PBS(リン酸緩衝生理食塩水); g(重力); OD(光学密度); CPM 及びcpm(数/分); rpm(回転数/分); Dulbecco's phosphate buffered solution (DPBS)(Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水);
HEPES ((N-[2-ヒドロオキシエチル]ピペラジン-N-[2-エタンスルフォン酸]) (N-[2-Hydroxyethyl]piperazine-N-[2-ethanesulfonic acid]); HBS (HEPES 緩衝生理食塩水); SDS (ドデシル硫酸ナトリウム); Tris-HCl (三[ヒドロキシメチル]アミノメタンヒドロクロライド); 2-ME (2-メルカプト エタノール); EGTA (エチレングリコール-bis(β-アミノエチル エーテル)N, N, N', N'-テトラ酢酸); EDTA (エチレンジアミンテトラ酢酸、ethylenediaminetetracetic acid); Abbott (Abbott Laboratories, Abbott Park, IL); Ambion (Ambion, Austin, TX); Bio-Synthesis (Bio-Synthesis, Lewisville, TX); ATCC (American Type Culture Collection, Rockville, MD); Gibco/BRL (Gibco/BRL, Grand Island , NY); Sigma (Sigma Chemical Co., St. Louis, MO); Pharmacia (Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ); Pierce (Pierce Biotechnology, Rockford, IL); Pharmingen (Pharmingen, San Diego, CA); Roche (Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN); SynPep (SynPep, Corp., Dublin, CA); Miltenyi Biotec (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, ドイツ); Bachem (Bachem Biosciences, King of Prussia, PA); DNA 2 (DNA 2, Menlo, Park, CA); Qiagen (Qiagen, Inc., Valencia, CA); and Stratagene (Stratagene, La Jolla, CA)。
【0075】
以下の実験においては、使用されたB細胞はヒの抹消血単玉細胞(PBMC)から、製造者指示 (human CD19 MicroBeads; Miltenyi Biotec)に従いMACS分離システムにより分離されたヒトの初代CD19+ B細胞(primary human CD19+ B cell)である。
【0076】
標的タンパク質は、製造者指示(Pierce, Rockford, IL, U.S. A)に従い、EZ-Labelフルオレセイン イソチオシアネート タンパク質 標識キット(EZ-Label Fluorescein Isothiocyanate Protein Labeling Kit)を用いてFITCによって標識を付された。
【0077】
標的特異のB細胞は、電磁的に分離されたB細胞を、種々の濃度(0.1-10 nM)において、約30分または4℃で一夜掛けて、PE接合アンチCD-19抗体(Pharmingen) 及びFITC接合標的タンパク質により染色するFACSを用いて選別した。
【0078】
CD 19-PE 及び標的-FITCの二重の陽性細胞は、FACSにより各ウエルに一細胞の密度の割合で、Cell Lysis Buffer (Ambion) を含む96ウエル細胞培養プレートに選別された。選別された細胞は、その技術分野でよく知られているRT-PCRクローン法に付されるか、または後で使用するため80℃で保存された。
【0079】
実施例1
Vh 及びVl プライマーセットのデザイン
本実施例においては、Vh 及びVl プライマーセットをデザインするために用いる方法について述べる。全てのヒトの機能的可変領域(Vh 及びVl)を増幅するための二組の縮重オリゴヌクレオチドプライマーが文献及び公的配列データベースの情報に基づいてデザインされた(表1; 及びSblattero 及びBradbury, ImmunotechnoL, 3:271-278 [1998]も参照願いたい)。フォワード(5')プライマー(BPF168-187) はV遺伝子の第一フレームワークの最初の20−23ヌクレオチドにあり、(上記Sblattero 及びBradburyを参照)、リバース(3')プライマー(BPF 154-BPF 167)は定常領域の5’末端にあり、公的データベースの配列に基づいてデザインされた。
【表1】
【0080】
実施例2
RT-PCRによる、選別された、標的特異のB細胞からのVh 及びVl cDNAのクローニング(Cloning of Vh and Vl cDNA From Sorted, Target-Specific B cells by RT-PCR)
本実施例においては、Vh 及びVl cDNAのクローニングの方法について述べる。
【0081】
まず、cDNAがランダム六量体(random hexamer)(Ambion) を用いてCells-to-cDNA IIキットを使用して、RT-PCRにより選別された抗原特異の単一B細胞から作られた。次にVh 及びVl遺伝子が、表1の配列をテンプレートとして用いて、Vh 及びVlプライマーセットにより独立に増幅された。
【0082】
実施例3
scFv-BLA融合構築体の生成
(Generation of scFv-BLA Fusion Constructs)
本実施例では、scFv-BLA融合構築体の生成方法について記述する。Vh 及びVl遺伝子のアミノ酸配列がゲル精製PCR製品の配列決定により得られる。合成scFvsは、Vh 及びVlとVh-15aa-Vlの間に標準(G4S)3 (15 aa)リンカーにより、クローンの目的で制限酵素部位を側面に配置させてデザインされる。ある実験においては、構築体は市場の供給者(例えば、DNA2.0)から調達され、これらの供給者は分子を一以上の適当なベクターに合成し、クローンすることができる(例えば、pDrive Cloning Vector (Qiagen))。構築体中のscFvs遺伝子は、制限酵素の消化により分離され、ゲル精製され、そして大腸菌発現ベクターにサブクローンされる。このベクターはscFvsをベータ−ラクタマーゼ(β-lactamase)融合タンパク質中で発現させる。
【0083】
実施例4
融合タンパク質の確認
本実施例では、融合タンパク質の確認方法を提供する。有望scFvsが、技術分野で知られている適当なELISA法及び試薬を用いて確認される。scFvs−BLA融合構築体を含むプラスミドは大腸菌に形質転換される。培養後、細菌性細胞はB-Per試薬(Pierce)によって溶解される。溶解物は事前に元の標的タンパク質に被覆された96ウエルプレートに加えられる。陽性BLA融合タンパク質が、適当なアッセイを用いてスクリーニングされる(例えば、ニトロセフィン(BLA基質)アッセイ)。
【0084】
実施例5
ライブラリー中のバインダー間の競合
(Competition Among Binders in Libraries)
本実施例においては、ライブラリー中のバインダー間の競合についての計算方法が提供される。ここでは以下の記号表示が用いられる:メンバー数nのLライブラリーにおいて、
T0=標的の総数
T=非結合標的
Pi =非結合ライブラリーメンバーI
Pi0 =ライブラリーメンバーIの総数
KiD =Tを持つPiの解離定数
TPi =PiのTとの複合体
Kion =二次結合定数
Kioff =一次解離定数
とする。
【0085】
ここで、
1) 安定的状態の結合に達し;
2) 各標的はただ唯一のメンバーにのみ結合するひとつの結合部位を持ち;
3) 各メンバーは同じ二次結合定数を持つとする、
と、以下の等式はライブラリーの各メンバー間の競合を表わす。
【0086】
オンレートは以下のように計算される:
d(TPi ) /dt = kion(T)(Pi)
オフレートは以下のように計算される:
−d(TPi)/dt=kioff(TPi)
安定した状態では次の式が適用される:
d(TPi)/dt=−d(TPi)/dt
kion(T)(Pi)=kioff(TP1)
kioff/kion=(T)(Pi)/(TPi)=KiD
標的に結合するnメンバーのライブラリーでは自由標的の濃度は:
T=T0−TP1−TP2−TP3.. −TPn
Piの各メンバーには:
KiD=(T)(Pi/(TPi)
T=(TPi/Pi)KiD
Lライブラリーでは、一つの硬く結合したメンバーがあり、このメンバーをP1と呼ぶ。結合P1の自由P1との比率はTの関数である:
T=(TP1/P1)KlD
Tは自由標的の濃度であるので、ライブラリーの他のどのP1メンバーに対しても:
T=(TPi/Pi)KiD
ライブラリーの各メンバーPiに対しては、結合Piの自由Piに対する比率(TPi/Pi)の、最も硬い結合バインダーの比率(TPi/Pi)に対する相対比率は次により与えられる:
(TPi/Pi)KiD=(TP1/P1)KlD
(TPi/Pi)=(TP1/P1)KlD/KiD
ライブラリーの何れのiメンバーに対しても、結合メンバーの自由メンバーに対する比率(TPi/Pi)のP1の比率に対する相対比率は、二つの解離定数の比率に直接比例する:
X=(TP1/P1); rli=KlD/KiDとすると:
【式1】
【0087】
結合メンバーi(TPi)の結合メンバー1(TP1)に対する比率は:
【式2】
【0088】
T0 が0に接近するにつれ; T は0に接近し、x は0に接近する。
【0089】
T0 が∞になるにつれ; T は∞になり、x は∞になる。
【0090】
TPi/TP1=(l+x)*Pi0/((l/rli)+x)*P10
T0 が0に接近するにつれ、TPi / TP1 は(l)*Pi0/((l/rli))*P10 に接近し、そして (rli)* Pi0/ P10に接近する。
【0091】
T0 が∞に接近するにつれて; TPi /TP1は(x)* Pi0/(x) * P10に接近し、そしてPi0/P10に接近する。
【0092】
したがって、標的が制限的である場合には、各バインダーの最も結合の固いバインダーに対する量は解離定数の比率に比例する。標的が高い濃度である場合には、各メンバーは同程度に結合する。この関係は図4に示す。ライブラリー中の最も結合の固いバインダーのみを同定するために、標的濃度は限定的でなければ成らない。ライブラリーの全てのバインダーを同定するためには、標的は過剰に存在する必要がある。この関係は図5に示す。結合の固いバインダーの検出比率を増やすために:1)ライブラリー濃度を上げる;2)ライブラリーの多様性を減らす(メンバー濃度を増す);3)標的濃度を減少させる;又は4)他のバインダーから識別されうる一つの弱いバインダーを過剰に加える(すなわち、検出システムに検出できないようにする)この関係は図6に示す。
【0093】
実施例6
B細胞ライブラリーの平均及び標準偏差の算出(Calculating Mean and Standard Deviations for a B-CeIl Library)
この実施例では、B細胞ライブラリーの平均及び標準偏差の算出方法が提供される。望ましい親和性を持つバインダーを得るために、FACSデータに基づきB細胞ライブラリーの予想される平均及び標準偏差が算出される。結合エネルギーの2項分布を想定すると、B細胞ライブラリー中の結合エネルギーの平均及び標準偏差は、標的濃度の関数として結合する細胞の%を測定することにより算出することができる。以下の表2は、二つの異なる標的濃度(例えば、lx10‐9M 及び5x10‐9M)で結合している細胞の%から、二つの未知数、平均及び標準偏差の計算結果を示している。信号を観察するために、もし細胞受容体の50%が占有されて(occupied)いなければならないとすると、観察される各細胞の結合エネルギーは−12.27 Kcal/M (lxl0‐9M) 及び−11.32 Kcal/M (5xl0-9M)以上か又は同等である。2項分布より、信号を持つ%細胞は結合エネルギーにより示される平均値から標準偏差の数を見積もるために用いることができる。したがって、二つの未知数を持つ二つの等式を得る;
等式1: 平均値―3.71標準偏差値=−12.27
等式2: 平均値―3.19標準偏差値=−11.32
この等式を解くことによりある特性を持つものの平均及び標準偏差の概算値を得ることが出来る(D因子バインダーの例の解を出すこと)。
【表2】
【0094】
本明細書に記載の全ての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明に記載された方法及びシステムの種々の修正及び変更は、当業者が本発明の範囲及び精神から逸脱することなく実施することが出来る。本発明は特に好ましい実施の形態について記述されているが、本発明は、理由なくこれらの特別な実施の形態に限定されるべきものでないことは理解されるべきである。事実、分子生物学、分析開発、免疫、製剤及び/又はこれらの関連分野の当業者にとって明らかである発明を実施するために記述された方法に種々の変更を加えることは本発明の範囲に属すると考えるべきである。
【0095】
その技術分野の当業者であれば、本発明に固有のものに限らず、本発明を、本明細書に記載の目的を実施するために容易に改変されうることを、直ちに理解し、本明細書に記載の目的と利益を達成するであろう。本明細書に記載の分子錯体、方法、手続き、治療、分子、特定化合物は好ましい実施の形態の代表例であり、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。事実、本発明の範囲及び精神から離れることなく種々の置換、修飾を加えることは当業者にとって容易なことである。
【0096】
本明細書に説明により記載された発明は、特にそこで記載されていない要素、限定が含まれていない場合においても適切に実施しうると考える。用いられた用語、及び表現は記載のために用いられるもので、限定の意味に解してはならない。そのようは用語及び表現は、その特徴を持つ同等物及びその部分を除外するものではない、しかし、本発明の特許請求の範囲内において種々の修飾が可能であることを認識すべきである。このように、本発明は、好ましい実施の形態及び任意選択された特徴により特に開示されたものであるが、本明細書に開示された概念の、修飾及び変形は当業者により実施が可能であり、したがって、そのような修飾及び変形は特許請求の範囲に記載された、本発明の範囲内であると解される。
【0097】
本発明は、広く又一般的な表現により記載されている。一般的な開示に含まれるより狭い範囲の種類、亜属のグループの夫々もまた本発明の部分を構成する。したがって、これは、排除された材料が特に本明細書に記載されているか否かを問わず、その属からあるものを除外するという条件又は否定的限定を持つ本発明の一般的な記載についても同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】B細胞(P1及びP2)間の競合を示すグラフである。両細胞とも1-10M濃度で存在し、標的に結合したP1及びP2の濃度(TP1及びTP2共)は標的濃度(T0)の関数として描かれている。P1及びP2の解離定数はKd1=1-10M、Kd2=1-7Mであった。x軸は標的濃度(モル)、y軸は標的に結合したB細胞の濃度(モル)を示す。この図に示す様に、結合したB細胞の量は解離定数及び標的濃度の関数である。図は本明細書に示す方法を用いて実施した計算に基づくものである。
【図2】ライブラリー(各B細胞バインダーは1-10M濃度で存在する)の各結合したB細胞、TPiの濃度を標的濃度の関数として示す。1バインダー(P1) Kd=1-12M、10バインダー(P2)Kd=1-11M、100バインダー(P3)Kd=1-10M、1000バインダー(P4)Kd=1-9M、10,000バインダー(P5)Kd=1-8Mである。
【0099】
x軸は標的濃度(モル)を示し、y軸は標的に結合したメンバーの濃度(モル)を示す。この図に示す様に、P1からP5の全メンバーを通して、結合したB細胞の量は解離定数及びライブラリーの標的濃度の関数である。この図は本明細書に示す方法を用いて行った計算に基づくものである。
【図3】ライブラリーの各結合メンバ−、TPi(各B細胞バインダーは1-10Mの濃度で存在する)の濃度を標的濃度の関数として示す。1バインダー(P1)Kd=1-12M、10バインダー(P2)Kd=1-11M、100バインダー(P3)Kd=1-10M、1000バインダー(P4)Kd=1-9M、及び10,000バインダー(P5)Kd=1-8Mである。条件は、Kd=1-8Mの一つの追加の競合バインダー(P6)が1-4Mの濃度で追加されたことを除いては、すべて図2の場合と同じである。x軸は標的濃度(モル)を示し、y軸は標的に結合したメンバーの濃度(モル)を示す。この図に示す様に結合したB細胞メンバーP1からP5の量は、解離定数及びライブラリーの標的濃度の関数である。この図は本明細書に記載の方法を用いた計算に基づくものである。
【図4】結合したB細胞と標的濃度の関係を示すグラフである。この図はライブラリーの各結合したB細胞バインダー、TPi (各メンバーは1-13Mの濃度で存在する)の濃度を示し、1バインダー(P1)Kd=1-10M、5バインダー(P2)Kd=5-10M、25バインダー(P3)Kd=2.5-9M、50バインダー(P4)Kd=5-9M、及び100バインダー(P5)Kd=1-8Mである(追加のバインダーはない)。x軸は標的濃度(モル)を示し、y軸は標的に結合したメンバーの濃度(モル)を示す。この図は結合したライブラリーメンバーの数を解離定数及びP1からP5メンバーを持つ典型的なメンバーの標的濃度の関数として示す。この図は本明細書に記載の方法を用いた計算に基づくものである。
【図5】結合B細胞濃度の標的濃度に関する関係を示す。この図はライブラリーの各結合B細胞バインダー、TPi (各メンバーは1-13Mの濃度で存在する)の濃度を示し、1バインダー(P1)Kd=1-10M、5バインダー(P2)Kd=5-10M、25バインダー(P3)Kd=2.5-9M、50バインダー(P4)Kd=5-9M、及び100バインダー(P5)Kd=1-8M(追加のバインダーはない)である。
【0100】
全てのテストの条件は、追加の競合する非結合バインダー(P6)が1-4M(1-8MKd)で存在することを除いては、図4に示すものと同じである。x軸は標的濃度(モル)を示し、y軸は標的に結合したメンバーの濃度(モル)を示す。この図は結合したライブラリーメンバーの数を、P1からP5メンバーに加えて一つの追加の競合するバインダーを持つ典型的なライブラリーについて、解離定数、及び標的濃度の関数として示す。この図は本明細書に記載の方法を用いた計算に基づくものである。
【図6A】は溶液中に懸濁したB細胞を示す。図6A-Cは溶解(elution)対保持(retention)に基づく競合的結合を示す。3つの異なったタイプのバインダーが示され、3つとも全て標的に結合するまでの時間が同じ、すなわち、約10秒である。しかし、3つのバインダーのそれぞれは異なるオフレートを持つ。オフレートが1分のバインダーは八角形で示し、それらは30バインダー示されている。オフレートが10秒のバインダーは三角形で示し、10個のその様なバインダーが示されている。100分のオフレートを持つバインダーは45度傾斜した四角形で示し、5個のその様なバインダーが示されている。標的は図の一番下に“X”として示す。図6は固定化標的に結合する3つのクラスのバインダーの結合を示す。この図は本明細書を通じて記載され、実施されている計算方法に基づいている。
【図6B】標的に結合したB細胞を示す。
【図6C】標的に結合したいくつかのB細胞を示す。
【図7A】溶液に懸濁したB細胞バインダーを示す。図7A-Cは標的濃度の減少の効果を示す。3つの異なるタイプのバインダーが示され、このすべてが標的に付着するのに同じ時間、すなわち約10秒を要するが、3つの各々は異なるオフレートを持つ。オフレートが1分のバインダーは八角形で示し、それらの30バインダー示されている。オフレートが10分のバインダーは三角形で示し、10個のその様なバインダーが示されている。100分のオフレートを持つバインダーは45度傾斜した四角形で表わされ、その様なバインダーは5個示されている。標的は図の最も下に“X”で示す。図は標的の量が制限されている場合に固定化標的に結合する3種類のバインダーの結合を示す。この図は本明細書を通じて記載され、実施されている計算方法に基づいている。
【図7B】標的に結合したB細胞バインダーを示し、オフレートの最も遅い分子(濃度の最も低い二つのタイプの分子)が結合している。
【図7C】幾つかのB細胞バインダー、すなわち、(最も低い濃度で)標的に結合したオフレートの最も遅いバインダーのみを示す。
【図8A】溶液に懸濁されたB細胞バインダーを示す。図8A, 及び8Bは競合B細胞バインダーをライブラリーに加えた効果を示す。このライブラリーに4つの異なるタイプのバインダーが存在し、4つの全ては標的に付着するのに要する時間は同じで、約10秒程度であるが、各3つの代表的なバインダーのそれぞれは異なるオフレートを持つ。1分のオフレートを持つバインダーは8角形で示され、その様なバインダーは30個示されている。10分のオフレートを持つバインダーは二等辺及び長三角形で示される。10個のバインダーが二等辺三角形で示され、50個のバインダーが長三角形で示されている。100分のオフレートを持つバインダーは45度傾斜した四角形で表わされ、その様なバインダーは5個示されている。標的は図の最も下に“X”で示す。図は競合バインダーが限定されている場合に、固定化標的に結合する3種類のバインダーの結合を示す。この図は本明細書に記載された方法を用いて、実施された計算方法に基づいている。
【図8B】競合結合を示し、高濃度及び遅いオフレートのバインダーの標的への付着を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は人の抗体の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単クローン抗体は、単クローン抗体により達成が可能な高い親和性と選択性により重要な調合剤となった。1970年代に初めて単クローン抗体が開発されてから、関心の対象となる病気の標的に特異な単クローン抗体の使用は、これに限定されるものではないが、癌及び自己免疫疾患を含む種々の病気の治療に新しい治療法の選択肢を提供してきた。
【0003】
単クローン抗体を生産し、これを用いる方法は改良されて来たが、新しい単クローン抗体を同定するために用いられる方法は安定したものではなく、また信頼できるものでもない。例えば、ヒトのIg遺伝子導入マウスへの免疫付与は必ずしも高い抗体親和性を保証するものではない。さらに、ハイブリドーマの生成とスクリーニングは退屈な、時間の掛かる作業である。さらに、抗体ファージは遺伝子導入マウスを用いる場合よりも有利な点が多いが、そのスクリーニングに要する労力は気力を削ぐものである。これらの方法では、ライブラリーサイズでの要求と元の配置での重鎖と軽鎖遺伝子をペアにする必要があるため、時間を集中して行わねばならず、また結果は保証されるものではない。したがって、抗体の確実な分離及び同定を促進する容易な方法が求められる。
【発明の概要】
【0004】
本発明はヒトの抗体を分離する方法を提供する。この方法は:B細胞を精製すること;少数のB細胞が標的に結合する濃度を同定するために、多くの標的濃度においてB-細胞を、少なくとも一つのラベルを付した標的に接触させること;標的に結合したB細胞を収集すること;及びB細胞が標的を結合させた抗体を識別し、分離し及び同定することを含む。
【0005】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞はヒトのドナー血液又は骨髄から分離され、精製される。さらに好ましい実施の形態においては、標的は蛍光標識を付され、FACSを通して収集される。
【0006】
他の実施の形態においては、B細胞及び標的は多くの標的濃度で組み合わされ、抗体の結合親和性が決定されることもある。
【0007】
さらに他の好ましい実施の形態においては、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)が抗体を同定するために用いられる。他の好ましい実施の形態においては、単一のB細胞が培養され、それによりクローン個体群が増殖される。
【0008】
ある好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は低い濃度を持つ。ある特に好ましい実施の形態においては、低い標的濃度は約1ミクロモル(1e-6M)及び約1ピコモル (1e-12M)の間であり、一方他の特に好ましい実施の形態においては、低い標的濃度は約1e-7M及び約1e-11Mの間である。
【0009】
ある好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は癌性細胞、細胞株、細胞培養体、腫瘍抽出物(tumor extract)、又は癌性組織又は癌におかされた器官よりなる群から選択される。
【0010】
ある特に好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は抗原である。ある好ましい実施の形態においては、抗原は癌抗原Muc-1, Tag72, CEA, CD22, ED-B及びFAPよりなる群れから選択される。
【0011】
ある好ましい実施の形態においては、これらの方法には抗体を確認にすることを含む。ある特に好ましい実施の形態においては、確認はscFv-酵素融合を作り出すことにより実現される。ある好ましい実施の形態においては、scFv-酵素融合はscFv-BLA融合である。更にある好ましい実施の形態においては、確認はニトロセフィン アセイ(nitrocefin assay)により実現される。
【0012】
本発明はまたヒトの抗体を分離する方法を提供する。この方法は:少数のB細胞が標的に結合する濃度を同定するために、B-細胞を多くの標的濃度で少なくとも一つのラベルを付した標的に接触させるステップ;標的に結合したB細胞を収集するステップ;B細胞が標的を結合させた抗体を識別し、分離し及び同定するステップを含む。ある好ましい実施の形態においては、B細胞はヒトのドナー血液又は骨髄から分離され、精製される。さらに好ましい実施の形態においては、標的は蛍光でラベルを付され、FACSを通して収集される。
【0013】
他の好ましい実施の形態においては、B細胞及び標的は多くの標的の濃度で組み合わされ、抗体の結合親和性が決定される。
【0014】
他の好ましい実施の形態においては、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)が抗体を同定するために用いられる。他の好ましい実施の形態においては、単一のB細胞が培養され、それによってクローン個体群が増殖される。
【0015】
ある好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は低い濃度を持つ。ある特に好ましい実施の形態においては、低い標的濃度は約1ミクロモル(1e-6M)及び約1ピコモル (1e-12M)の間であり、一方他の特に好ましい実施の形態においては、低い標的濃度は約1e-7M及び約1e-11Mの間である。
【0016】
ある好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は癌性細胞、細胞株、細胞培養体、腫瘍抽出物、又は癌性組織又は癌におかされた器官よりなる群から選択される。
【0017】
ある特に好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのラベルを付した標的は抗原である。ある好ましい実施の形態においては、抗原は癌抗原Muc-1, Tag72, CEA, CD22, ED-B及びFAPよりなる群れから選択される。
【0018】
ある好ましい実施の形態においては、これらの方法はさらに抗体を確認にすることを含む。ある特に好ましい実施の形態においては、確認することにはscFv-酵素融合を作り出すことにより実現される。ある好ましい実施の形態においては、scFv-酵素融合はscFv-BLA融合である。さらにある好ましい実施の形態においては、確認はニトロセフィン アセイ(nitrocefin assay)により実現される。
【発明の詳細な説明】
【0019】
本発明はヒトの抗体を分離する方法を提供する。
【0020】
特に断らない限り、本明細書で用いられる全ての技術及び科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって通常理解されると同じ意味を持つ。例えば、Singleton 及び Sainsbury,「Dictionary of Microbiology and Molecular Biology」, 第二版, John Wiley and Sons, NY (1994); Hale 及びMargham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991) は、当業者に本発明に用いられている多くの用語についての一般的な辞書を提供する。更に当業者に、広く知られている参考文献にはSambrook 他、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第二版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1989)、及びAusubel 他、Current Protocols in Molecular Biology, Greene- Publishing & Wiley Interscience NY (1987; 1999まで補遺)がある。
【0021】
本明細書に記載の方法及び材料に類似又は同一の、又は同等の種々の方法及び材料が、本発明を実施するために用いることができるが、好ましい方法及び材料は本明細書に記載のものである。したがって、以下に続けて規定する各用語は、本明細書全体を参照することでより明確になる。又、本出願で用いる冠詞「a」「an」及び「the」を付した単数形は、文意より判断して明確に他の意味でない限りその複数形を含む。
【0022】
一般的に用いられている学術用語、及び細胞培養、分子遺伝学、及び核酸反応、及び交配のような標準的実験手順は、その技術分野において良く知られており又普通に用いられている。標準的技術は組み換え核酸方法、ポリヌクレオチド合成、微生物培養、細胞培養、組織培養、転換(transformation)、トランスフェクション、形質導入(transduction)、分析化学、有機合成化学、化学合成及び化合分析に用いられる。一般に、酵素反応及び精製及び/又は分離工程は製造者の仕様に従い実施される。
【0023】
B細胞の標的に対する結合親和性(binding affinity)は、その解離定数(Kd)、50%効果的な結合(EC50)に必要な濃度、及び/又は標的に結合する他の化合物の結合の50%抑制に必要な濃度(IC50)によって記載されることもある。「Ko」はkoff/konで規定される。koff値は複合物が分解、又は分離する速度であり、kon値はB細胞及び標的が複合物を形成する速度である。結合親和性の用語は、ある場合には複合物の動的安定性、又は結合親和性の比率を反映する他の測定可能な量の比率を指す。選択性(selectivity)は結合親和性の比率、又はオフレートの比率として定義される(例えば、標的分子Kd/反標的分子Kd)。 状況によって、konを増大させ、又はkoffを減少させ、又は適用に応じてその双方を実施することが望ましいこともある。したがって、これらの全ての変形は本発明において用いうることが考慮されている。
【0024】
本明細書で用いる「タイプ」(type)は、他のタイプのB細胞からその結合親和性(Kd)により区別されるあるタイプのB細胞を言う。例えば、3つの異なるタイプのバインダーを含む本発明のある方法において、おおよそ3つの異なる結合親和性を持つ3つのクラスの剤(agent)が含まれる。「タイプ」は図7に示されており、そこでは3つの異なるタイプのバインダーがある;1)一秒のオフレートを持つバインダー、2)10秒のオフレートを持つバインダー、及び3)100秒のオフレートを持つバインダーである。
【0025】
本明細書で用いる「タンパク質」(protein)は、アミノ酸を含み、その分野の専門家にタンパク質として認められる組成物の全てを指す。「タンパク質」(protein)、「ペプチド」(peptide)及び「ポリペプチド」(polypeptide)は相互交換的に用いられる。ペプチドがタンパク質の一部である場合、当業者であれば文意よりその用語の用いられている意味を理解するであろう。「タンパク質」(protein)は、関連するタンパク質の代用形(pro-)、及び代用形の前段階(prepro-)の形のみならず、タンパク質の成熟した形をも含む。タンパク質の代用形の前段階の形には、タンパク質のアミノ末端に動作可能にリンクされたプロ配列を持つタンパク質の成熟形、及びプロ配列のアミノ末端に動作可能にリンクされた「前」(pre-)又は「シグナル」(signal)配列を含む。又これらの用語には抗体の配列の様な配列をも含む。
【0026】
類似の側鎖を持つアミノ酸残基のファミリーはその技術分野で知られている。これらのファミリーには、塩基側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、テレオニン、チロシン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン、グリシン)β枝分かれ側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を持つアミノ酸を含む。本明細書では、技術分野で知られている標準的な3文字、又は1文字のアミノ酸の略称を用いている。同等の置換物も本発明の範囲に含まれる(例えば、アミノ酸を同じグループのアミノ酸で置換したもの)。
【0027】
ある実施の形態においては、本発明のペプチド、ポリペプチド及び/又はタンパク質には一以上のノンクラシカル アミノ酸(non-classical amino acid) を含む。「ノンクラシカル アミノ酸」には、これに限定されるものではないが、通常のアミノ酸のD異性体(D-isomer)、αアミノ イソ酪酸(α-amino isobutyric acid(Ahx))、4アミノ酪酸 (A-aminobutyric acid (4-Abu))、2アミノ酪酸 (2-aminobutyric acid (2-Abu))、6-アミノへキサン酸(6-amino hexanoic acid (Ahx))、2-アミノイソ酪酸(2-amino isobutyric acid (2-Aib))、3-アミノ プロピオン酸(3-amino propionoic acid)、オルチニン(ornithine)、ノルロイシン(norleucine)、ノルバリン(norvaline)、ヒドロオキシプロリン(hydroxyproline)、サルコシン(sarcosine)、シトルリン(citrulline)、システイン酸(cysteic acid)、t−ブチルグリシン(t-butylglycine)、t−ブチルアラニン(t-butylalanine)、フェニルグリシン(phenylglycine)、シクロヘキシルアラニン(cyclohexylalanine)、β−アラニン(β-alanine)、フルオロアミノ酸(fluoro-amino acids)、及びβメチルアミノ酸(β-methyl amino acids)、Cαメチルアミノ酸(Cα-methyl amino acids)、Nαメチルアミノ酸(Nα-methyl amino acids) の様な「デザイナ」アミノ酸、及び一般的なアミノ酸アナログを含む。
【0028】
本明細書で用いる「抗体」(Antibody; Ab)及び免疫グロブリン(Immunoglobulin; Ig)は、その生成物を作り出した、抗原(常にではないが、通常は、ペプチドである)又は構造的に同様な抗原に高い特異性をもって結合する、B細胞及びヒト、及び他の動物の形質細胞(plasma cell)により作り出される糖タンパク質として定義される。抗体は知られているどの様な方法によって作っても良く、多クローン性、又は単クローン性である。この用語は又キメラ抗体、ヒト化抗体、免疫グロブリン、又は抗体又は抗原に結合する抗体の機能断片を含む。その様な機能を持つものの例には完全抗体分子、Fv、単鎖Fv、相補性決定領域(complementarity determining regions (CDRs))、VL (軽鎖可変領域)、 VH (重鎖可変領域)、及びこれらの何れの組み合わせ、又は標的抗原に結合可能な免疫グロブリンペプチドの他の全ての機能部分の様な抗体断片を含む。
【0029】
本明細書で用いる抗体は種々の免疫原を用いて作ることができる。多クローン抗体の生産には技術分野で知られている種々の手順を用いることができる。抗体の生産のためのある実施の形態においては、種々の宿主動物(これらに限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラット、羊、ヤギ等を含む)が本発明における関心の対象となる標的に対応するペプチドの注射により免疫化される。ある好ましい実施の形態においては、ペプチドは免疫原性キャリアーと結合される(例えば、ジフテリアトキソイド(diphtheria toxoid), ウシ血清アルブミン、(bovine serum albumin (BSA)), 又はキーホールリンペットへモシアニン (keyhole limpet hemocyanin [KLH])。免疫反応を増大させるために、宿主の種に応じて、これらに限定されるものではないが、フロイント(完全及び不完全)、(Freund's (complete and incomplete))アジュバント水酸化アルミニウムの様な鉱物ゲル;リゾレシチン (lysolecithin), プルロニック ポリオール(pluronic polyols), ポリアニオン (polyanions), ペプチド (peptides), オイル 乳液 (oil emulsions), キーホール リンペット へモシアニン(keyhole limpet hemocyanins), ジニトロフェノール(dinitrophenol) の様な界面活性物質;及びBCG (Bacille Calmette-Guerin) 及び(コリネバクテリア パルブン(Corynebacterium parvum)の様な潜在的に有用なヒトのアジュバントを含む種々の補助剤が用いられる。
【0030】
モノクローナル抗体を作るためには、細胞株を連続培養することにより抗体分子を生産するどの様な技術を用いることができる(例えば、Harlow 及び Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照願いたい)。これには、これに限定されるものではないが、トリオーマ技術、ヒトのB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozbor 他、Immunol. Today 4:72 [1983]を参照)のみならず、Kohler 及びMilstein (Kohler 及びMilstein, Nature 256:495-497 [1975]) により原型が開発されたハイブリドーマ技術、及びヒトのモノクローナル抗体を生産するEBVハイブリドーマ技術(例えば、Cole他、 Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 [1985]を参照)を含む。ある特に好ましい本発明の実施の形態においては、本発明はIgGクラスのモのクローナル抗体を提供する。
【0031】
本発明の更なる実施の形態においては、モノクローナル抗体は無菌動物で作られる(例えば、PCT/US90/02545を参照願いたい)。この発明によればヒトの抗体を用いることができ、ヒトのハイブリドーマを用いて作ることができ(例えば、Cote 他、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.80:2026-2030 [1983]を参照願いたい)、又はインビトロでヒトのB細胞をEBVウィルスにより形質転換することにより作ることができる(例えば、上記のColeを参照願いたい)。
【0032】
単鎖抗体の生産について記載する技術(米国特許4,946,778; 本文献は参照により本明細書に組み入れられる)は対象となる分子を特異的に認識する単鎖抗体を生産するのに有用である。ある実施の形態においては、Fab発現ライブラリーの構築について記載される技術(例えば、Huse 他、Science 246:1275-1281 [1989]を参照願いたい)は、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定するために用いられる。
【0033】
抗体分子のイディオタイプ(抗原結合領域)を含む抗体断片が既知の技術により生成されうる。例えば、その様な断片には、これに限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化により生成されうるF(ab')2 断片; F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成されうるFab'断片、及び抗体分子をパパイン(papain)及び還元剤により処理することにより生成されうるFab断片を含む。
【0034】
本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」(oligonucleotide)の用語は、二つ以上のジオキシリボヌクレオチド、又はリボヌクレオチドより成る分子として定義される。その厳密なサイズは多くの要素によって変わり、それは又オリゴヌクレオチドの最終的な機能又は用途による。オリゴヌクレオチドは、例えば、ホスホトリエステル法(Narang 他、Meth.Enzymol, 68:90-99 [1979]を参照); ホスホジエステル法(Brown他、Meth.Enzymol., 68:109-151 [1979]を参照); ジエチルホスホアミド法(Beaucage 他、Tetrahedron Lett. 22:1859-1862 [1981] を参照)、及び固体支持法(solid support method)(例えば、米国特許4,458,066を参照)の様な、その技術分野で知られているどの様な適当な方法によって適当な配列をクローンし、制限し、及び直接化学的に合成することを含むどの様な適当な方法によっても生成しうる。
【0035】
合成法の種々の有用な研究は当業者に知られている(例えば、Goodchild, 1990, Bioconjugate Chemistry 1(3):165-187 [1990]を参照願いたい)。上記の文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
「低濃度」(low concentration)の用語は、B細胞バインダーの標的に対する望ましい解離定数より約1000倍から約10倍低い標的の濃度を言う。 低濃度は、例えば、ライブラリーメンバーの標的に対する結合の、望ましい解離定数の約10倍又はそれ以下の濃度を指すこともある。ある実施の形態においては、好ましい濃度は約1ミクロモル(1e-6M)から約1ピコモル(1e-12M)の間であり、好ましくは約1e-7から約1e-11の間のどの濃度であっても良い。
【0037】
「正常」(normal)の用語は、観察可能な、及び/又は認識可能な異常又は欠陥がない状態にあるものを言う。したがって、正常な細胞は、それ自身のタイプが変更されていない細胞の表現型及び遺伝子型と矛盾しない、典型的な、標準的な発現パターン、発現レベルに適合し、それと矛盾しない細胞である。反対に「異常」は典型的でなく(すなわち、非典型)であり、通常又は標準的でなく、非正常であることを言う。したがって、罹病細胞は「異常」な細胞タイプである。
【0038】
「標的」の用語はB細胞により認識される物質を言う。どの様な適当な生体表面又は非生体表面は本発明において用いることができる。
【0039】
更なる実施の形態においては、生体表面はある器官の表面であり、他の実施の形態においては、生体表面は細胞又は組織の表面である。更なる実施の形態においては、生体表面は罹病した器官、組織又は細胞の表面であり、他の実施の形態においては、生体表面は正常な、又は健康な器官、組織又は細胞の表面である。
【0040】
更なる実施の形態においては、表面は組織の間質腔内の巨大分子である。更なる実施の形態においては、生体表面は、これに限定されるものではないが、細菌、真菌、ウィルス、寄生生物(蠕虫、原生動物等)を含む微生物の表面である。ある実施の形態においては、微生物は動物の病原体であり、他の実施の形態においては、微生物はヒト及び/又は他の動物に対して非病原性である。細胞及び/又は組織のソースにはヒト、ヒト以外の動物、細菌、真菌及び植物を含む。
【0041】
したがって、どの様な生体表面(例えば、細胞、組織、皮膚、つめ、内臓、外部組織、及び/又は髪)も本発明においての標的としての役割をすると考えられる。ある実施の形態においては、細胞はヒトの細胞であり、他の実施の形態においては、細胞はヒト以外の動物の細胞、細菌細胞又は真菌細胞である。この用語は、又ウィルス及び/又はウィルス粒子を含む細胞を含む。ある実施の形態においては、細胞は造血細胞、癌細胞、又はレトロ ウィルスにより形質導入された細胞である。
【0042】
他の実施の形態においては、標的は赤血球、血小板、及び白血球系の種々の未熟細胞のみならず、造血細胞(例えば、造血幹細胞)を含む血液細胞である。「血液細胞」(blood cell)は、これに限定されるものではないが、造血細胞、赤血球、好中球、単球、血小板、マスト細胞、好酸球、好塩基球、リンパ球、B細胞、T細胞、プラズマ細胞、マクロファージ及びナチュラルキラー細胞を含む。ある実施の形態においては、標的は異常血液細胞である。ある実施の形態においては、HSC標的はCD34+ Thy- 1+ 又は CD34+ Thy- 1+ Lin- の表面抗原発現の性質を持つ(「Lin-」は、少なくとも一つの系統特異マーカーの発現を欠くというベースに基づき選択される細胞集団を指す)。HSCを分離し選択する方法はその技術分野で周知である(例えば、米国特許5,061,620, 5,677,136, 及び 5,750,397を参照願いたい。これらの文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0043】
他の実施の形態においては、標的は分子である。ある実施の形態においては、分子は有機分子である。更なる実施の形態においては、分子は生体分子である。更に、他の実施の形態においては、生体分子は細胞に関連した分子である。更に他の実施の形態においては、細胞に関連した分子は細胞の外部表面に関連したものである。更なる実施の形態においては、細胞に関連した分子は細胞外マトリクスの部分である。更に他の実施の形態においては、細胞に関連した分子はタンパク質である。ある実施の形態においては、タンパク質は受容体である。他の実施の形態においては、細胞に関連した分子は特定の細胞タイプに特異である。更なる実施の形態においては、細胞は罹病した及び/又は異常細胞である。ある好ましい実施の形態においては、罹病した細胞は癌細胞である。他の実施の形態においては、罹病した細胞は感染細胞である。本発明の標的として用いられる他の分子は、これらに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、多糖、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、有害物質、代謝産物、阻害剤、薬物、染料、栄養物及び成長因子を含む。
【0044】
本発明に包含されるタンパク質及び化学的標的の例としては、これに限定されるものではないが、ケモカイン及びサイトカイン及びそれらの受容体を含む。本明細書で用いる「サイトカイン」(cytokine)の用語は、細胞に種々の効果を与える多くの因子(例えば、成長、分化及び/又は増殖を誘発する)の何れをも指す。この非限定的な例には、例えば、IL-2, IL-3, IL-4 IL-6, IL-10, IL-12, IL-13, IL-14 及びIL- 16の様なインターロイキン(IL);
可溶性IL-2 受容体、可溶性IL-6 受容体、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、白血球マクロファージコロニー刺激因子 (GM・CSF)、幹細胞因子(SCF)、白血球抑制因子(LIF)、インターフェロン(例えば、IFN-アルファ、ベータ、及びガンマ)、 オンコスチン M(OM)、免疫グロブリン超分子群、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリー、特にTNF-アルファ、 形質転換成長因子(例えば、TGF-アルファ及びTGF-ベータ)、及びIL-1アルファ、血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリー、特にVEGF(技術分野でVEGF-A とも呼ばれる)、VEGF-B, VEGF-C, VEGF-D 及び胎盤成長因子(PLGF)を含む。サイトカインはAmgen (Thousand Oaks, CA), Immunex (Seattle, WA), 及びGenentech (South San Francisco, CA)を含む幾つかの販売先より購入が可能である。
【0045】
本明細書で用いる「組織」(tissue)は、一体となってある特殊な機能を発揮する同様な特殊な細胞の群又は層を指す。ある組織では、ただ一つのタイプの細胞が存在し、他の組織では、複数の異なるタイプの細胞が存在する。この用語は、これに限定されるものではないが、以下のタイプを含む:リンパ球、リンパ節、脂肪、骨、網状連結組織(aerolar)、軟骨、連結組織、弾性体、内皮、上皮、線維、腺、内蔵に関連するリンパ球(GALT)、未分化のもの、間質性のもの、網状のもの、間葉性のもの、骨髄に関するもの、筋肉、神経、骨、骨格、皮下、及び他の組織のタイプのものである。この用語はまた修飾された組織を含む。
【0046】
「標的集団」(target population)の用語は、B細胞又はB細胞集団が露出される、関心の対象である標的の集合を指す。標的集団は、本明細書に記載の様に単一の標的又は標的の集合を含むこともある。本発明では、これに限定されるものではないが、細胞、組織、皮膚、爪、及び/又は髪を含み、如何なる生体表面の集合も標的集団としての使用価値がある。
【0047】
ある実施の形態においては、標的集団は癌細胞、細胞株、又は細胞培養体、腫瘍抽出物、又は癌組織、又は器官、癌細胞、細胞株、又は細胞培養、腫瘍抽出物、又は癌組織、又は器官に関連する分子を含む。
【0048】
ある実施の形態においては、標的集団は抗原又は、抗原の集合自身を含む。
【0049】
ある好ましい実施の形態においては、標的は「癌に関連した標的」である。この用語は、本発明の組成物が、ある器官において、癌又は癌に関連した状態であると診断又は検知された場合、その一部として結合する如何なる標的をも含む。
【0050】
例えば、この用語は、被験者又は、健常者の組織から採った生体サンプル(例えば、癌組織に関連した脈管構造)に加え、癌細胞、組織及び/又は器官;癌細胞、組織及び/又は器官に関連した分子;及び/又は癌細胞、組織及び/又は器官に関連した分子、細胞、組織又は器官(例えば、被験者に投与された腫瘍に結合した診断用分子)を含む。癌に関係した標的の例は米国特許番号6,261,535に記載されており、本文献は参照により本明細書に組み入れられる。しかし本発明は特定の癌に関係した標的に限定することを意図しているものではない。癌に関係した標的は、癌に関連した標的はあらゆる癌又は癌に関連した状態に関したものであって良い。癌のタイプの例として、これに限定されるものではないが、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫及び混合タイプの癌を含む。
【0051】
ある実施の形態においては、癌は骨肉種である。その例には、これに限定されるものではないが、Ewing肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、及び他の軟部組織の肉腫を含む。他の実施の形態においては、癌は、これに限定されるものではないが、脳腫瘍、希突起グリオーマ、上衣腫、メネンギオマス(menengiomas)、リンパ腫、神経鞘腫、及び髄芽腫を含む神経系統の癌である。更なる実施の形態においては、癌は乳癌(例えば、胸の腺管癌)である。更に他の実施の形態においては、癌は前立腺癌である。又他の実施の形態においては、癌は内分泌系癌(例えば、副腎、膵臓、副甲状腺、下垂体及び甲状腺)である。更に他の実施の形態においては、癌は消化管癌(例えば、肛門、結腸直腸、直腸、口頭、舌、食道、胃、胆のう、腺管癌、肝臓、膵臓、大腸、小腸の癌)である。更に他の実施の形態においては、癌は婦人科癌(例えば、子宮頚、子宮内膜、子宮、卵管、妊娠性絨毛性疾患、絨毛腫、卵巣、膣及び外陰の癌)である。更に他の実施の形態においては、癌は頭頚部癌(例えば、喉頭癌、口腔咽頭癌、上皮小体(parathryroid)、及び甲状腺癌)である。他の実施の形態においては、癌は白血性癌(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、及び/又は骨髄増殖症候群)である。更に他の実施の形態においては、癌は肺癌である(例えば、中皮腫、非小細胞肺癌、及び小細胞肺癌)である。他の実施の形態においては、癌はリンパ腫(例えば、AID関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、菌状息肉腫、Hodgkin病、及び非Hodgkin病)である。他の実施の形態においては、癌は骨髄腫瘍(例えば、多発性骨髄腫)である。更に他の実施の形態においては、癌は小児癌(例えば、脳腫瘍、Ewing肉腫、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、又は急性骨髄性白血病)、肝臓癌、リンパ腫(例えば、Hodgkinリンパ腫、及び非Hodgkinリンパ腫)、神経芽腫、網膜芽腫、肉腫(例えば、骨肉腫、又は横紋筋肉腫)及びWilms腫瘍である。更に他の実施の形態においては、癌は男性生殖器癌であり、これに限定されるものではないが、前立腺、睾丸、精巣上体、及び陰茎癌を含む。他の実施の形態においては、癌は皮膚癌(例えば、内皮T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、Kaposi肉腫、皮下又は黒色腫)である。更に他の実施の形態においては、癌は甲状腺癌(例えば、乳頭癌、濾胞腺癌、髄様癌、又は退形成癌、又は未分化甲状腺癌)である。他の実施の形態においては、癌は尿道系癌(例えば、膀胱癌、腎臓癌及び尿道癌)である。更なる実施の形態においては、癌又は癌に関連する状態は毛細血管拡張性失調症、発生元不明の癌、Li-Frnumeni症候群又は胸腺腫である。更なる実施の形態においては、癌は転移性癌である。
【0052】
他の実施の形態においては、癌に関連する標的は癌細胞又は組織に関係する分子である。ある実施の形態においては、分子は腫瘍又は、腫瘍血管/間質系抗原である、例えば、 CD20, CD19, CD30, CD3, GD2, Lewis-Y, 72 kd 糖タンパク質(gp72, 分解促進因子, CD55, DAF, C3/C5 転換酵素), CO17-1A (EpCAM, 17- 1A, EGP-40), TAG-72, CSAg-P (CSAp), 45kd糖タンパク質, HT-29 ag, NG2, A33 (43kd gp), 38kd gp, MUC-I, CEA, EGFR (HERl), HER2, HER3, HER4、HN-I リガンド, CA125, シンデカンー1(syndecan-1), ルイスーX(Lewis X), FAP 間質系Ag(stromal Ag) (線維芽細胞活性化タンパク質), EDG 受容体(エンドグリン受容体(endoglin receptors)), ED-B, ラミニンー5(laminin-5) (ガンマ2), コックス‐2(+LN-5)(cox-2 (+LN-5)), PgP (P-糖タンパク質), アルファVベータ3 インテグリン, アルファVベータ5インテグリン, uPAR (ウロキナーゼプラスミノゲン活性化受容体(urokinase plasminogen activator receptor), エンドグリン(CD 105), GD2, アミノペプチダーゼ、テネイシンーC(tenascin-C)、NG-2, TEMl, TEM8, アネキシン(annexin)、葉酸受容体オステオポンチン(folate receptor osteopontin (EDG 1,3)), p97 (メラノトランスフェリン(melanotransferrin)),ファルネシル トランスフェラーゼ(farnesyl transferase)又はアポトーシス経路上の分子(例えば、死受容体, fas, カスパーゼ又はbcl-2) 又はレクチン(lectin)である。
【0053】
本発明においては、又広範囲の種々の分子標的を用いることができる。適当な標的分子には、これに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸、炭化水素、脂質、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、ウイルス、病原体、毒性物質、代謝産物、抑制剤、薬剤、染料、栄養素、成長因子、細胞又は組織を含む。
【0054】
他のタンパク質及び化学的標的は、これに限定されるものではないが、ヒトの可溶性白血球抗原(HLA クラスI及び/又はクラスII及びノンクラシカル クラスIHLA(E, F 及びG))の様な免疫調整タンパク質; 可溶性T又はB細胞表面タンパク質の様な表面タンパク質;ヒトの血清アルブミン;プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、及びプロクタサイクリンの様なアラカドニック酸(arachdonic acid)代謝産物;IgE, 自己免疫又は、異質又は異種免疫に対する自己抗体又は同種異形抗体;Ig Fc 受容体又はFc受容体結合因子;受容体と結合したGタンパク質;細胞表面炭化水素;血管形成因子;接着分子;カルシウム、リン、マグネシウム、アルミニウム及び鉄等のイオン;プリオン及びチューブリンの様な線維タンパク質;プロテアーゼ、アミノペプチド、キナーゼ、フォスフォターゼ、DNAses, RNAases,リパーゼ、エステラーゼ、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドロラーゼ、スルファターゼ、シクラーゼ、トランスフェラーゼ、トランスアミナーゼ、カルボキシラーゼ、デカルボキシラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、及びその天然基質、又は同類; 卵胞刺激ホルモン(FSH)、ロイチナイジングホルモン(LH)、(leutinizing hormone LH)、チロキシン(T4及びT3)、アポリポタンパク質、低密度リポタンパク質(LDL)、極低密度リポタンパク質(VLDL)、コルチゾール、アルドステロン、エストリオール、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、(DHBA)及びそのサルフェート(DHEA-S)の様なホルモンその対応受容体;レニン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、バソプレシン、及び抗利尿薬(AD)、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH), LHRH, 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(THRH)、血管性腸管ペプチド(VIP)、ブラシキン及び対応プロホルモンの様な ペプチドホルモン; アドレナリン、及び代謝産物の様なカテコ‐ルアミン(catechcolamine);アトリオナトリウチック(atrionatriutic)因子(AdF)、ビタミンA,B,C,D,E及びK及びセロトニンを含む共同因子;プロトロンビン、トロンビン、繊維素、フィブリノゲン、因子VIII、因子IX、因子XI、及びvon Willebrand 因子の様な凝固因子;プラスミン、補体活性化因子、LDL及びそのリガンド及び尿酸の様なプラスミノゲン因子;ヒルジン(hirudin)、ヒルログ(hirulog)、ヘメンチン(hementin)、ヘパリン(heparin)及び組織プラスミノゲン活性剤(TPA)の様な凝固制御化合物(compounds regulating coagulation); 遺伝子治療のための核酸;酵素抑制因子;炎症因子及び受容体及び先に述べた分子の一以上と結合する他のタンパク質の様なリガンドと結合する化合物を含む。
【0055】
他の化学的標的には、これに限定されるものではないが、大麻、ヘロイン及び他のアヘン剤、フェンシクリジン(PCP)、バルビツール、コカイン、及びその誘導物及びベンザジアゼピンの様な薬剤、特に習慣性薬剤;水銀、及び鉛、砒素及び放射線化合物の様な重金属の様な毒物;
パラセタモール、ジコキシン、及び遊離基の様な化学療法薬;リポ多糖体(LPS)、及び他のグラム陰性毒、ブドウ状球菌毒素、毒素A、破傷風毒素、ジフテリア毒素、及び百日咳毒素の様な菌体毒素; 植物及び魚介毒;アエロバクチン(aerobactin)、毒素、タンパク質などの様な蛇及び他の分泌毒、悪性因子;肝炎、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス(例えば、HSVタイプ1,2及び6)、エプスタイン・バー・ウイルス(Epstein-Barr virus)(EBV)、水痘帯状ヘルペス(VZV)、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV-1, 2)及び他のレトロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、インフルエンザ、ライノウイルス、パルボウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、ポリオ、パラルソウイルス(pararmyxovirus)、パポバウイルス、ポックスウイルス、アルボウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、狂犬病ウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ロタウイルス及びピコルナウイルスの様な感染性ウイルス;プリオン;プラスモジア組織因子、アメーバ(例えば、赤痢アメーバ)を含む原生動物、フィラリア(例えば、ブケレリア属)、変形体(Plasmodium)、ジアルジア属、リシューマニア属、クリプトスポリジウム属、サルコシスティス属、バベシア属、トリパノソーマ属及びトキソプラズマ属;蠕虫(例えば、吸虫類、cestodes、及び線虫);敗血症、院内感染及び他の感染の元となる好気性、嫌気性及び通気性細菌を含む細菌(例えば、大腸菌、アシネトバクター属、緑濃菌、プロテウス属、クレブジエラ属、ブドウ状球菌属、連鎖球菌、ナイセリア属、マイコバクテリア属、レジオネラ菌、クロストリジウム属、マイコプラズマ属、トレポレーマ属、クラミジア属、リケッチア属、バルトネラ属)、及び真菌(例えば、カンジダ属、ニューモシスティス属、アスペルギルス属、トリコスポルム属(Trichosporum)、小胞子菌、ピチニア属(Pichnia)、コクシジオイデス属、ブラストミセス属、ヒストプラスマ属、クリプトコッカス属等)を含む。事実、本発明はこれらの特定の標的に限定されるものではない。結合することの可能なものであればどの様な標的(例えば、結合標的を形成するもの)も本発明において用いることができる。
【0056】
更なる実施の形態においては、標的は植物又は植物に由来する材料である。ある実施の形態においては、標的は木であり、他の実施の形態においては、標的は木ではない植物である。本発明においては、すべての植物及び/又は植物に由来する材料を含むと考える。
【0057】
ある実施の形態においては、標的はプロテアーゼ、アミノペプチド、キナーゼ、フォスフォターゼ、DNAses, RNAases、リパーゼ、エステラーゼ、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドラーゼ、スルファターゼ、セルラーゼ、シクラーゼ、トランスフェラーゼ、オランスアミナーゼ、カルボキシラーゼ、デカルボキシラーゼ、スパーオキシド ジスムターゼ、及びそれらの天然基質、又は類似物のような酵素である。特に好ましい酵素には、ヒドラーゼ、特にアルファ/ベータヒドラーゼ;スブチリシン、及びキモトリプシン セリン プロテアーゼの様なセリンプロテアーゼ;セルラーゼ及びリパーゼを含む。
【0058】
本明細書に記載の「分子」(molecule)は標的分子(例えば、抗原又はリガンド)を指す。適当な剤、標的分子及び反標的分子(anti-target molecules)は、これに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原,抗体、ウイルス、病原体、有毒物質、代謝産物、抑制剤、薬物、染料、栄養素、成長因子、細胞及び組織を含む。
【0059】
本発明は、B細胞を精製するステップ、少量のB細胞が標的に結合する濃度を同定するために、精製されたB細胞を少なくとも一つのラベルを付した標的に多くの異なる標的濃度で接触させるステップ、及び標的と結合したB細胞を収集し、B細胞が結合した標的を識別し、分離し、及び同定するステップを含むヒトの抗体を分離する方法を提供する。
【0060】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞はヒトのドナー血液又は骨髄から分離し、精製される。更なる好ましい実施の形態においては、標的は蛍光ラベルを付され、結合B細胞及び標的(すなわち、B細胞/標的複合体)の収集はFACS(蛍光活性化細胞選別:fluorescence-activated sorting)の様な方法を用いて実現される。
【0061】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞及び標的は抗体の結合親和性が観測される様な条件で、多くの標的濃度で組み合わされる。ある特に好ましい実施の形態においては、好ましい標的濃度は、実施例に記載され及び図面に示されている様な方法で計算される。
【0062】
ある好ましい実施の形態においては、標的の濃度は低い。これらの好ましい実施の形態の幾つかでは、低濃度は約1ミクロモル(le−6M)から約1ピコモル(1e-12)の間である。更に特に好ましい実施の形態においては、標的濃度は約le-7Mから約le-l1Mの間である。
【0063】
他の好ましいの実施の形態においては、適当な増幅方法が標的/B細胞複合体を同定するために用いられる。更に好ましいの実施の形態においては、単独(single)B細胞が、クローン集団を増殖するために培養される。
【0064】
上で述べた様に、本発明のおいてはどの様な適当な標的又は標的集団も用いることができる。更に、本発明においてはどの様な適当な生体表面又は非生体表面も用いることができる。
【0065】
ある特に好ましい実施の形態においては、これらの方法は更に同定された抗体を確認するステップを含む。ある好ましい実施の形態においては、確認はscFv-酵素融合を作り、この融合体を元の標的と結合させて融合の酵素活性をアッセイすることにより実現する。標準的アッセイは当業者に良く知られており、どの様な適当なアッセイも本発明で用いることができる。しかし、好ましい実施の形態においては、酵素はベータ−ラクタマーゼ(beta-lactamase)(BLA)であるのが良い。本明細書で用いるベータ−ラクタマーゼ(beta-lactamase)はベータラクタム環(beta lactam rings)(例えば、3つの炭素原子及び一つの窒素原子を含むへテロ原子環状構造)を分解する何れの酵素をも指す。ベータラクタム環は幾つかの抗菌剤の成分であり、これに限定されるものではないが、ペニシリン、セファロスポリン及び他の関連する化合物を含む。ある好ましい実施の形態においては、本発明のベータ−ラクタマーゼは天然の酵素であり、他の好ましい実施の形態においては、本発明のベータ−ラクタマーゼは組み換えされたものである。更に好ましい実施の形態においては、本発明のベータ−ラクタマーゼは修飾されたものである。
【0066】
本発明で用いることのできる特異のBLAの例には、これに限定されるものではないが、クラス A, B, C, 又は Dベータ−ラクタマーゼ(β-lactamase)及びβガラクトシダーゼ(例えば、Benito 他、FEM Microbiol. Lett. 123:107[1994]を参照願いたい)を含む。
【0067】
ある好ましい実施の形態においては、結合は、融合体の抗体結合後のベータ−ラクタマーゼ(β-lactamase)活性を測定することにより確認される。ある好ましい実施の形態においては、活性は技術分野で知られているニトロセフィンアッセイ(nitrocefm assay)を用いて測定される(米国特許出願番号10/022,097,を参照願いたい。本文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0068】
本発明は、少量のB細胞が標的に結合する濃度を同定するために、B細胞を、少なくとも一つのラベルを付した標的に多くの異なる標的濃度で接触させるステップ、及び標的と結合したB細胞を収集するステップ、B細胞が結合した抗体を識別し、分離し、及び同定するステップを含む、ヒトの抗体を分離する方法を提供する。
【0069】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞はヒトのドナー血液又は骨髄から分離し、精製される。更なる好ましい実施の形態においては、標的は蛍光ラベルを付され、結合B細胞及び標的(すなわち、B細胞/標的複合体)の収集はFACS(蛍光活性化細胞選別:fluorescence-activated sorting)の様な方法を用いて実現される。
【0070】
ある好ましい実施の形態においては、B細胞及び標的は抗体の結合親和性が観測される様な条件で、多くの標的濃度で組み合わされる。ある特に好ましい実施の形態においては、好ましい標的濃度は、実施例に記載され及び図面に示されている様な方法で計算される。
【0071】
ある好ましい実施の形態においては、標的の濃度は低い。これらの好ましい実施の形態の幾つかにおいては、低濃度は約1ミクロモル(le−6M)から約1ピコモル(1e-12M)の間である。更に特に好ましい実施の形態においては、標的濃度は約le-7Mから約le-l1Mの間である。
【0072】
他の好ましい実施の形態においては、適当な増幅方法が標的/B細胞複合体を同定するために用いられる。更に好ましい実施の形態においては、単独(single)B細胞が、クローン集団を増殖させるために培養される。
【0073】
実験
以下の実施例は、本発明のある好ましい実施の形態及び特徴を説明するために記載されるものであり、発明の範囲を限定するためのものと解してはならない。
【0074】
以下に開示される実験では、以下に述べる略記が用いられる:sd及びSD(標準的偏差);M(モルの); mM(ミリモルの); μM(ミクロモルの); nM(ナノモルの); mol (モル); mmol(ミリモル);μmol (ミクロモル); nmol(ナノモル); gm(グラム); mg(ミリグラム); mg (ミクログラム);μg(ミクログラム); pg(ピコグラム); L (リッター); ml(ミリリッター); μl(ミクロリッター); cm(センチメータ); mm(ミリメータ); μm(ミクロメータ); nm (ナノメータ); LF(致死因子); ℃(摂氏); cDNA(コピーまたは相補的DNA); DNA(デオキシリボ核酸); ssDNA(単鎖DNA); dsDNA(二重鎖DNA); dNTP(デオキシヌクレオチド三リン酸); RNA(リボ核酸); PBS(リン酸緩衝生理食塩水); g(重力); OD(光学密度); CPM 及びcpm(数/分); rpm(回転数/分); Dulbecco's phosphate buffered solution (DPBS)(Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水);
HEPES ((N-[2-ヒドロオキシエチル]ピペラジン-N-[2-エタンスルフォン酸]) (N-[2-Hydroxyethyl]piperazine-N-[2-ethanesulfonic acid]); HBS (HEPES 緩衝生理食塩水); SDS (ドデシル硫酸ナトリウム); Tris-HCl (三[ヒドロキシメチル]アミノメタンヒドロクロライド); 2-ME (2-メルカプト エタノール); EGTA (エチレングリコール-bis(β-アミノエチル エーテル)N, N, N', N'-テトラ酢酸); EDTA (エチレンジアミンテトラ酢酸、ethylenediaminetetracetic acid); Abbott (Abbott Laboratories, Abbott Park, IL); Ambion (Ambion, Austin, TX); Bio-Synthesis (Bio-Synthesis, Lewisville, TX); ATCC (American Type Culture Collection, Rockville, MD); Gibco/BRL (Gibco/BRL, Grand Island , NY); Sigma (Sigma Chemical Co., St. Louis, MO); Pharmacia (Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ); Pierce (Pierce Biotechnology, Rockford, IL); Pharmingen (Pharmingen, San Diego, CA); Roche (Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN); SynPep (SynPep, Corp., Dublin, CA); Miltenyi Biotec (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, ドイツ); Bachem (Bachem Biosciences, King of Prussia, PA); DNA 2 (DNA 2, Menlo, Park, CA); Qiagen (Qiagen, Inc., Valencia, CA); and Stratagene (Stratagene, La Jolla, CA)。
【0075】
以下の実験においては、使用されたB細胞はヒの抹消血単玉細胞(PBMC)から、製造者指示 (human CD19 MicroBeads; Miltenyi Biotec)に従いMACS分離システムにより分離されたヒトの初代CD19+ B細胞(primary human CD19+ B cell)である。
【0076】
標的タンパク質は、製造者指示(Pierce, Rockford, IL, U.S. A)に従い、EZ-Labelフルオレセイン イソチオシアネート タンパク質 標識キット(EZ-Label Fluorescein Isothiocyanate Protein Labeling Kit)を用いてFITCによって標識を付された。
【0077】
標的特異のB細胞は、電磁的に分離されたB細胞を、種々の濃度(0.1-10 nM)において、約30分または4℃で一夜掛けて、PE接合アンチCD-19抗体(Pharmingen) 及びFITC接合標的タンパク質により染色するFACSを用いて選別した。
【0078】
CD 19-PE 及び標的-FITCの二重の陽性細胞は、FACSにより各ウエルに一細胞の密度の割合で、Cell Lysis Buffer (Ambion) を含む96ウエル細胞培養プレートに選別された。選別された細胞は、その技術分野でよく知られているRT-PCRクローン法に付されるか、または後で使用するため80℃で保存された。
【0079】
実施例1
Vh 及びVl プライマーセットのデザイン
本実施例においては、Vh 及びVl プライマーセットをデザインするために用いる方法について述べる。全てのヒトの機能的可変領域(Vh 及びVl)を増幅するための二組の縮重オリゴヌクレオチドプライマーが文献及び公的配列データベースの情報に基づいてデザインされた(表1; 及びSblattero 及びBradbury, ImmunotechnoL, 3:271-278 [1998]も参照願いたい)。フォワード(5')プライマー(BPF168-187) はV遺伝子の第一フレームワークの最初の20−23ヌクレオチドにあり、(上記Sblattero 及びBradburyを参照)、リバース(3')プライマー(BPF 154-BPF 167)は定常領域の5’末端にあり、公的データベースの配列に基づいてデザインされた。
【表1】
【0080】
実施例2
RT-PCRによる、選別された、標的特異のB細胞からのVh 及びVl cDNAのクローニング(Cloning of Vh and Vl cDNA From Sorted, Target-Specific B cells by RT-PCR)
本実施例においては、Vh 及びVl cDNAのクローニングの方法について述べる。
【0081】
まず、cDNAがランダム六量体(random hexamer)(Ambion) を用いてCells-to-cDNA IIキットを使用して、RT-PCRにより選別された抗原特異の単一B細胞から作られた。次にVh 及びVl遺伝子が、表1の配列をテンプレートとして用いて、Vh 及びVlプライマーセットにより独立に増幅された。
【0082】
実施例3
scFv-BLA融合構築体の生成
(Generation of scFv-BLA Fusion Constructs)
本実施例では、scFv-BLA融合構築体の生成方法について記述する。Vh 及びVl遺伝子のアミノ酸配列がゲル精製PCR製品の配列決定により得られる。合成scFvsは、Vh 及びVlとVh-15aa-Vlの間に標準(G4S)3 (15 aa)リンカーにより、クローンの目的で制限酵素部位を側面に配置させてデザインされる。ある実験においては、構築体は市場の供給者(例えば、DNA2.0)から調達され、これらの供給者は分子を一以上の適当なベクターに合成し、クローンすることができる(例えば、pDrive Cloning Vector (Qiagen))。構築体中のscFvs遺伝子は、制限酵素の消化により分離され、ゲル精製され、そして大腸菌発現ベクターにサブクローンされる。このベクターはscFvsをベータ−ラクタマーゼ(β-lactamase)融合タンパク質中で発現させる。
【0083】
実施例4
融合タンパク質の確認
本実施例では、融合タンパク質の確認方法を提供する。有望scFvsが、技術分野で知られている適当なELISA法及び試薬を用いて確認される。scFvs−BLA融合構築体を含むプラスミドは大腸菌に形質転換される。培養後、細菌性細胞はB-Per試薬(Pierce)によって溶解される。溶解物は事前に元の標的タンパク質に被覆された96ウエルプレートに加えられる。陽性BLA融合タンパク質が、適当なアッセイを用いてスクリーニングされる(例えば、ニトロセフィン(BLA基質)アッセイ)。
【0084】
実施例5
ライブラリー中のバインダー間の競合
(Competition Among Binders in Libraries)
本実施例においては、ライブラリー中のバインダー間の競合についての計算方法が提供される。ここでは以下の記号表示が用いられる:メンバー数nのLライブラリーにおいて、
T0=標的の総数
T=非結合標的
Pi =非結合ライブラリーメンバーI
Pi0 =ライブラリーメンバーIの総数
KiD =Tを持つPiの解離定数
TPi =PiのTとの複合体
Kion =二次結合定数
Kioff =一次解離定数
とする。
【0085】
ここで、
1) 安定的状態の結合に達し;
2) 各標的はただ唯一のメンバーにのみ結合するひとつの結合部位を持ち;
3) 各メンバーは同じ二次結合定数を持つとする、
と、以下の等式はライブラリーの各メンバー間の競合を表わす。
【0086】
オンレートは以下のように計算される:
d(TPi ) /dt = kion(T)(Pi)
オフレートは以下のように計算される:
−d(TPi)/dt=kioff(TPi)
安定した状態では次の式が適用される:
d(TPi)/dt=−d(TPi)/dt
kion(T)(Pi)=kioff(TP1)
kioff/kion=(T)(Pi)/(TPi)=KiD
標的に結合するnメンバーのライブラリーでは自由標的の濃度は:
T=T0−TP1−TP2−TP3.. −TPn
Piの各メンバーには:
KiD=(T)(Pi/(TPi)
T=(TPi/Pi)KiD
Lライブラリーでは、一つの硬く結合したメンバーがあり、このメンバーをP1と呼ぶ。結合P1の自由P1との比率はTの関数である:
T=(TP1/P1)KlD
Tは自由標的の濃度であるので、ライブラリーの他のどのP1メンバーに対しても:
T=(TPi/Pi)KiD
ライブラリーの各メンバーPiに対しては、結合Piの自由Piに対する比率(TPi/Pi)の、最も硬い結合バインダーの比率(TPi/Pi)に対する相対比率は次により与えられる:
(TPi/Pi)KiD=(TP1/P1)KlD
(TPi/Pi)=(TP1/P1)KlD/KiD
ライブラリーの何れのiメンバーに対しても、結合メンバーの自由メンバーに対する比率(TPi/Pi)のP1の比率に対する相対比率は、二つの解離定数の比率に直接比例する:
X=(TP1/P1); rli=KlD/KiDとすると:
【式1】
【0087】
結合メンバーi(TPi)の結合メンバー1(TP1)に対する比率は:
【式2】
【0088】
T0 が0に接近するにつれ; T は0に接近し、x は0に接近する。
【0089】
T0 が∞になるにつれ; T は∞になり、x は∞になる。
【0090】
TPi/TP1=(l+x)*Pi0/((l/rli)+x)*P10
T0 が0に接近するにつれ、TPi / TP1 は(l)*Pi0/((l/rli))*P10 に接近し、そして (rli)* Pi0/ P10に接近する。
【0091】
T0 が∞に接近するにつれて; TPi /TP1は(x)* Pi0/(x) * P10に接近し、そしてPi0/P10に接近する。
【0092】
したがって、標的が制限的である場合には、各バインダーの最も結合の固いバインダーに対する量は解離定数の比率に比例する。標的が高い濃度である場合には、各メンバーは同程度に結合する。この関係は図4に示す。ライブラリー中の最も結合の固いバインダーのみを同定するために、標的濃度は限定的でなければ成らない。ライブラリーの全てのバインダーを同定するためには、標的は過剰に存在する必要がある。この関係は図5に示す。結合の固いバインダーの検出比率を増やすために:1)ライブラリー濃度を上げる;2)ライブラリーの多様性を減らす(メンバー濃度を増す);3)標的濃度を減少させる;又は4)他のバインダーから識別されうる一つの弱いバインダーを過剰に加える(すなわち、検出システムに検出できないようにする)この関係は図6に示す。
【0093】
実施例6
B細胞ライブラリーの平均及び標準偏差の算出(Calculating Mean and Standard Deviations for a B-CeIl Library)
この実施例では、B細胞ライブラリーの平均及び標準偏差の算出方法が提供される。望ましい親和性を持つバインダーを得るために、FACSデータに基づきB細胞ライブラリーの予想される平均及び標準偏差が算出される。結合エネルギーの2項分布を想定すると、B細胞ライブラリー中の結合エネルギーの平均及び標準偏差は、標的濃度の関数として結合する細胞の%を測定することにより算出することができる。以下の表2は、二つの異なる標的濃度(例えば、lx10‐9M 及び5x10‐9M)で結合している細胞の%から、二つの未知数、平均及び標準偏差の計算結果を示している。信号を観察するために、もし細胞受容体の50%が占有されて(occupied)いなければならないとすると、観察される各細胞の結合エネルギーは−12.27 Kcal/M (lxl0‐9M) 及び−11.32 Kcal/M (5xl0-9M)以上か又は同等である。2項分布より、信号を持つ%細胞は結合エネルギーにより示される平均値から標準偏差の数を見積もるために用いることができる。したがって、二つの未知数を持つ二つの等式を得る;
等式1: 平均値―3.71標準偏差値=−12.27
等式2: 平均値―3.19標準偏差値=−11.32
この等式を解くことによりある特性を持つものの平均及び標準偏差の概算値を得ることが出来る(D因子バインダーの例の解を出すこと)。
【表2】
【0094】
本明細書に記載の全ての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明に記載された方法及びシステムの種々の修正及び変更は、当業者が本発明の範囲及び精神から逸脱することなく実施することが出来る。本発明は特に好ましい実施の形態について記述されているが、本発明は、理由なくこれらの特別な実施の形態に限定されるべきものでないことは理解されるべきである。事実、分子生物学、分析開発、免疫、製剤及び/又はこれらの関連分野の当業者にとって明らかである発明を実施するために記述された方法に種々の変更を加えることは本発明の範囲に属すると考えるべきである。
【0095】
その技術分野の当業者であれば、本発明に固有のものに限らず、本発明を、本明細書に記載の目的を実施するために容易に改変されうることを、直ちに理解し、本明細書に記載の目的と利益を達成するであろう。本明細書に記載の分子錯体、方法、手続き、治療、分子、特定化合物は好ましい実施の形態の代表例であり、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。事実、本発明の範囲及び精神から離れることなく種々の置換、修飾を加えることは当業者にとって容易なことである。
【0096】
本明細書に説明により記載された発明は、特にそこで記載されていない要素、限定が含まれていない場合においても適切に実施しうると考える。用いられた用語、及び表現は記載のために用いられるもので、限定の意味に解してはならない。そのようは用語及び表現は、その特徴を持つ同等物及びその部分を除外するものではない、しかし、本発明の特許請求の範囲内において種々の修飾が可能であることを認識すべきである。このように、本発明は、好ましい実施の形態及び任意選択された特徴により特に開示されたものであるが、本明細書に開示された概念の、修飾及び変形は当業者により実施が可能であり、したがって、そのような修飾及び変形は特許請求の範囲に記載された、本発明の範囲内であると解される。
【0097】
本発明は、広く又一般的な表現により記載されている。一般的な開示に含まれるより狭い範囲の種類、亜属のグループの夫々もまた本発明の部分を構成する。したがって、これは、排除された材料が特に本明細書に記載されているか否かを問わず、その属からあるものを除外するという条件又は否定的限定を持つ本発明の一般的な記載についても同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】B細胞(P1及びP2)間の競合を示すグラフである。両細胞とも1-10M濃度で存在し、標的に結合したP1及びP2の濃度(TP1及びTP2共)は標的濃度(T0)の関数として描かれている。P1及びP2の解離定数はKd1=1-10M、Kd2=1-7Mであった。x軸は標的濃度(モル)、y軸は標的に結合したB細胞の濃度(モル)を示す。この図に示す様に、結合したB細胞の量は解離定数及び標的濃度の関数である。図は本明細書に示す方法を用いて実施した計算に基づくものである。
【図2】ライブラリー(各B細胞バインダーは1-10M濃度で存在する)の各結合したB細胞、TPiの濃度を標的濃度の関数として示す。1バインダー(P1) Kd=1-12M、10バインダー(P2)Kd=1-11M、100バインダー(P3)Kd=1-10M、1000バインダー(P4)Kd=1-9M、10,000バインダー(P5)Kd=1-8Mである。
【0099】
x軸は標的濃度(モル)を示し、y軸は標的に結合したメンバーの濃度(モル)を示す。この図に示す様に、P1からP5の全メンバーを通して、結合したB細胞の量は解離定数及びライブラリーの標的濃度の関数である。この図は本明細書に示す方法を用いて行った計算に基づくものである。
【図3】ライブラリーの各結合メンバ−、TPi(各B細胞バインダーは1-10Mの濃度で存在する)の濃度を標的濃度の関数として示す。1バインダー(P1)Kd=1-12M、10バインダー(P2)Kd=1-11M、100バインダー(P3)Kd=1-10M、1000バインダー(P4)Kd=1-9M、及び10,000バインダー(P5)Kd=1-8Mである。条件は、Kd=1-8Mの一つの追加の競合バインダー(P6)が1-4Mの濃度で追加されたことを除いては、すべて図2の場合と同じである。x軸は標的濃度(モル)を示し、y軸は標的に結合したメンバーの濃度(モル)を示す。この図に示す様に結合したB細胞メンバーP1からP5の量は、解離定数及びライブラリーの標的濃度の関数である。この図は本明細書に記載の方法を用いた計算に基づくものである。
【図4】結合したB細胞と標的濃度の関係を示すグラフである。この図はライブラリーの各結合したB細胞バインダー、TPi (各メンバーは1-13Mの濃度で存在する)の濃度を示し、1バインダー(P1)Kd=1-10M、5バインダー(P2)Kd=5-10M、25バインダー(P3)Kd=2.5-9M、50バインダー(P4)Kd=5-9M、及び100バインダー(P5)Kd=1-8Mである(追加のバインダーはない)。x軸は標的濃度(モル)を示し、y軸は標的に結合したメンバーの濃度(モル)を示す。この図は結合したライブラリーメンバーの数を解離定数及びP1からP5メンバーを持つ典型的なメンバーの標的濃度の関数として示す。この図は本明細書に記載の方法を用いた計算に基づくものである。
【図5】結合B細胞濃度の標的濃度に関する関係を示す。この図はライブラリーの各結合B細胞バインダー、TPi (各メンバーは1-13Mの濃度で存在する)の濃度を示し、1バインダー(P1)Kd=1-10M、5バインダー(P2)Kd=5-10M、25バインダー(P3)Kd=2.5-9M、50バインダー(P4)Kd=5-9M、及び100バインダー(P5)Kd=1-8M(追加のバインダーはない)である。
【0100】
全てのテストの条件は、追加の競合する非結合バインダー(P6)が1-4M(1-8MKd)で存在することを除いては、図4に示すものと同じである。x軸は標的濃度(モル)を示し、y軸は標的に結合したメンバーの濃度(モル)を示す。この図は結合したライブラリーメンバーの数を、P1からP5メンバーに加えて一つの追加の競合するバインダーを持つ典型的なライブラリーについて、解離定数、及び標的濃度の関数として示す。この図は本明細書に記載の方法を用いた計算に基づくものである。
【図6A】は溶液中に懸濁したB細胞を示す。図6A-Cは溶解(elution)対保持(retention)に基づく競合的結合を示す。3つの異なったタイプのバインダーが示され、3つとも全て標的に結合するまでの時間が同じ、すなわち、約10秒である。しかし、3つのバインダーのそれぞれは異なるオフレートを持つ。オフレートが1分のバインダーは八角形で示し、それらは30バインダー示されている。オフレートが10秒のバインダーは三角形で示し、10個のその様なバインダーが示されている。100分のオフレートを持つバインダーは45度傾斜した四角形で示し、5個のその様なバインダーが示されている。標的は図の一番下に“X”として示す。図6は固定化標的に結合する3つのクラスのバインダーの結合を示す。この図は本明細書を通じて記載され、実施されている計算方法に基づいている。
【図6B】標的に結合したB細胞を示す。
【図6C】標的に結合したいくつかのB細胞を示す。
【図7A】溶液に懸濁したB細胞バインダーを示す。図7A-Cは標的濃度の減少の効果を示す。3つの異なるタイプのバインダーが示され、このすべてが標的に付着するのに同じ時間、すなわち約10秒を要するが、3つの各々は異なるオフレートを持つ。オフレートが1分のバインダーは八角形で示し、それらの30バインダー示されている。オフレートが10分のバインダーは三角形で示し、10個のその様なバインダーが示されている。100分のオフレートを持つバインダーは45度傾斜した四角形で表わされ、その様なバインダーは5個示されている。標的は図の最も下に“X”で示す。図は標的の量が制限されている場合に固定化標的に結合する3種類のバインダーの結合を示す。この図は本明細書を通じて記載され、実施されている計算方法に基づいている。
【図7B】標的に結合したB細胞バインダーを示し、オフレートの最も遅い分子(濃度の最も低い二つのタイプの分子)が結合している。
【図7C】幾つかのB細胞バインダー、すなわち、(最も低い濃度で)標的に結合したオフレートの最も遅いバインダーのみを示す。
【図8A】溶液に懸濁されたB細胞バインダーを示す。図8A, 及び8Bは競合B細胞バインダーをライブラリーに加えた効果を示す。このライブラリーに4つの異なるタイプのバインダーが存在し、4つの全ては標的に付着するのに要する時間は同じで、約10秒程度であるが、各3つの代表的なバインダーのそれぞれは異なるオフレートを持つ。1分のオフレートを持つバインダーは8角形で示され、その様なバインダーは30個示されている。10分のオフレートを持つバインダーは二等辺及び長三角形で示される。10個のバインダーが二等辺三角形で示され、50個のバインダーが長三角形で示されている。100分のオフレートを持つバインダーは45度傾斜した四角形で表わされ、その様なバインダーは5個示されている。標的は図の最も下に“X”で示す。図は競合バインダーが限定されている場合に、固定化標的に結合する3種類のバインダーの結合を示す。この図は本明細書に記載された方法を用いて、実施された計算方法に基づいている。
【図8B】競合結合を示し、高濃度及び遅いオフレートのバインダーの標的への付着を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの抗体を分離する方法であって、
a) B細胞を得ること;
b) 精製されたB細胞を得るために前記B細胞を精製すること;
c) 少量の数の精製された前記B細胞が前記標的に結合する濃度を同定するために、前記精製されたB細胞を少なくとも一つのラベルを付した標的と、多くの標的濃度において接触させること;
d) 前記標的に結合した前記B細胞を収集すること;及び
e) 前記B細胞が前記標的を結合させた抗体を識別し、分離し及び同定することを含む前記方法。
【請求項2】
前記B細胞がヒトのドナー血液及びヒトのドナー骨髄よりなる群から選択されるソースから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的が蛍光標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記収集が、蛍光活性化細胞分類によって実現される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記B細胞及び前記標的が、多くの異なる標的濃度、及び前記抗体の結合親和性が決定される条件の下で組み合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体を同定するためにポリメラーゼ連鎖反応が用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記B細胞が、その集団がクローンにより増殖される条件下で培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的の濃度が低い濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ラベルを付した低濃度の標的の濃度が約1ミクロモル(le-6 M)から約1ピコモル(le-12M)の間である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ラベルを付した低濃度の標的の濃度が約le-7 Mから約le-11Mの間である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的が、癌性細胞、細胞株、細胞培養体、腫瘍抽出物、癌性組織及び癌におかされた器官より成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的が抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗原が癌抗原Muc‐l,Tag72, CEA, CD22, ED−B及びFAPより成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
更に前記抗体を確認するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記確認がscFv酵素融合を作り出すことを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記scFv酵素融合がscFv−BLA融合である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記確認が、ニトロセフィンアッセイを用いて実現される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ヒトの抗体を分離する方法であって、
a) B細胞を得るステップ;
b) 少量の数の前記B細胞が前記標的に結合する濃度を同定するために、前記B細胞を少なくとも一つのラベルを付した標的と、多くの標的濃度において接触させるステップ;
c) 前記標的と結合した前記B細胞を収集するステップ;及び
d) 前記B細胞が前記標的を結合させた抗体を識別し、分離し及び同定するステップ、を含む前記方法。
【請求項19】
前記B細胞がヒトのドナー血液又は骨髄より得られる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記B細胞が、ヒトのドナー血液又は骨髄より得られた後に精製される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記標的が蛍光標識される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記収集が、蛍光活性化細胞分類によって実現される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記B細胞及び前記標的が、多くの異なる標的濃度、及び前記抗体の結合親和性が決定される条件の下で組み合わされる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体の同定のためにポリメラーゼ連鎖反応が用いられる、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記B細胞が、その集団がクローンにより増殖される条件下で培養される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的の濃度が低い濃度である、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記ラベルを付した低濃度の標的の濃度が約1ミクロモル(le-6 M)から約1ピコモル(le-12M) の間である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ラベルを付した低濃度の標的の濃度が約le-7 Mから約le-11Mの間である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的が、癌性細胞、細胞株、細胞培養体、腫瘍抽出物、癌性組織及び癌におかされた器官より成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的が抗原である、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記抗原が癌抗原Muc‐l,Tag72, CEA, CD22, ED−B及びFAPより成る群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
更に前記抗体を確認するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記確認がscFv酵素融合を作り出すことを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記scFv酵素融合がscFv−BLA融合である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記確認が、ニトロセフィンアッセイを用いて実現される、請求項32に記載の方法。
【請求項1】
ヒトの抗体を分離する方法であって、
a) B細胞を得ること;
b) 精製されたB細胞を得るために前記B細胞を精製すること;
c) 少量の数の精製された前記B細胞が前記標的に結合する濃度を同定するために、前記精製されたB細胞を少なくとも一つのラベルを付した標的と、多くの標的濃度において接触させること;
d) 前記標的に結合した前記B細胞を収集すること;及び
e) 前記B細胞が前記標的を結合させた抗体を識別し、分離し及び同定することを含む前記方法。
【請求項2】
前記B細胞がヒトのドナー血液及びヒトのドナー骨髄よりなる群から選択されるソースから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的が蛍光標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記収集が、蛍光活性化細胞分類によって実現される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記B細胞及び前記標的が、多くの異なる標的濃度、及び前記抗体の結合親和性が決定される条件の下で組み合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体を同定するためにポリメラーゼ連鎖反応が用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記B細胞が、その集団がクローンにより増殖される条件下で培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的の濃度が低い濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ラベルを付した低濃度の標的の濃度が約1ミクロモル(le-6 M)から約1ピコモル(le-12M)の間である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ラベルを付した低濃度の標的の濃度が約le-7 Mから約le-11Mの間である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的が、癌性細胞、細胞株、細胞培養体、腫瘍抽出物、癌性組織及び癌におかされた器官より成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的が抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗原が癌抗原Muc‐l,Tag72, CEA, CD22, ED−B及びFAPより成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
更に前記抗体を確認するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記確認がscFv酵素融合を作り出すことを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記scFv酵素融合がscFv−BLA融合である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記確認が、ニトロセフィンアッセイを用いて実現される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ヒトの抗体を分離する方法であって、
a) B細胞を得るステップ;
b) 少量の数の前記B細胞が前記標的に結合する濃度を同定するために、前記B細胞を少なくとも一つのラベルを付した標的と、多くの標的濃度において接触させるステップ;
c) 前記標的と結合した前記B細胞を収集するステップ;及び
d) 前記B細胞が前記標的を結合させた抗体を識別し、分離し及び同定するステップ、を含む前記方法。
【請求項19】
前記B細胞がヒトのドナー血液又は骨髄より得られる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記B細胞が、ヒトのドナー血液又は骨髄より得られた後に精製される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記標的が蛍光標識される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記収集が、蛍光活性化細胞分類によって実現される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記B細胞及び前記標的が、多くの異なる標的濃度、及び前記抗体の結合親和性が決定される条件の下で組み合わされる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体の同定のためにポリメラーゼ連鎖反応が用いられる、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記B細胞が、その集団がクローンにより増殖される条件下で培養される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的の濃度が低い濃度である、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記ラベルを付した低濃度の標的の濃度が約1ミクロモル(le-6 M)から約1ピコモル(le-12M) の間である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ラベルを付した低濃度の標的の濃度が約le-7 Mから約le-11Mの間である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的が、癌性細胞、細胞株、細胞培養体、腫瘍抽出物、癌性組織及び癌におかされた器官より成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも一つのラベルを付した標的が抗原である、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記抗原が癌抗原Muc‐l,Tag72, CEA, CD22, ED−B及びFAPより成る群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
更に前記抗体を確認するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記確認がscFv酵素融合を作り出すことを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記scFv酵素融合がscFv−BLA融合である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記確認が、ニトロセフィンアッセイを用いて実現される、請求項32に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【公表番号】特表2008−517914(P2008−517914A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538015(P2007−538015)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/037641
【国際公開番号】WO2007/001420
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(500284580)ジェネンコー・インターナショナル・インク (67)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/037641
【国際公開番号】WO2007/001420
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(500284580)ジェネンコー・インターナショナル・インク (67)
【Fターム(参考)】
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