説明

ヒトの皮膚用の「ボリューム増加」および/または「膨化」剤としてのイソロイシンN−ヘキサデカノイルの使用

本発明は、ヒトの皮膚用のボリューム増加剤および/または膨化剤としての、式(I):CH−(CH14−C(=O)−NH−CH(COOH)−CH(CH)−CH−CH(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの化粧使用に関する。本発明はまた、乳房、顔、頬、臀部および眼瞼から選択される人体の部分の皮膚のボリューム増加および/または膨化効果を得るための化粧処置方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、化粧用および薬学的に活性な成分の分野、またこれらを含有する局所組成物に関する。
【0002】
先進国では平均余命が延びたことに伴い、常に「若返り」が望まれるようになり、これは過去30年ほどにわたって顕著になってきた。この願いを反映しているのは、年老いてきた人の皮膚がたるむ現象を遅らせる試みであり、特に顔においては、個人の容貌や表情を変えることである。健康を目に見える形で反映している「若い」活動的な外見および均整のとれた容姿を保存するという同じ状況において、一部の女性は胸部を引き締め、さらにはその容量を増やすための溶液も求めている。この行動の変化に伴い、皮膚を対象とする科学研究が進展し、さらには10年ほど、「老化防止」化粧品または皮膚の一般的な状態を改善するための化粧品の市場が急速に拡大している。
【0003】
本発明は、皮膚に適用されると、それ自体の活性により皮膚に「膨化」効果および/または皮膚に「高密度化」効果および/または皮膚に「ボリューム増加」効果および/または手、臀部、顔、胸部、眼瞼などの人体の多様な部分の皮膚の弾力性を改善する効果を生じる新たな分子または組成物を探求するという同じ状況に含まれる。
【0004】
哺乳動物において、脂肪組織は、体を包み込む貯蔵脂肪の層を構成するが、その厚さは、体の領域、年齢および性別に応じて異なる。女性では脂肪組織は全体重の20〜25%に相当するが、男性では全体重の15〜20%の範囲にある。男性と女性では、脂肪組織の配置部位が異なり、これは、性別に応じて人体により合成される多様なホルモン因子に主に起因する。この重要性のために、脂肪組織は、人の容姿および顔の一般的な外観に寄与する。脂肪組織は、顔、肢、腹、手および臀部において一般に見出される。女性では、脂肪組織は、胸部、とりわけ乳房にも存在する。女性の乳房は、乳腺、結合組織および脂肪組織からなる。脂肪組織は、乳房の容量の大部分に相当し、したがって、その割合および分布は、乳房の大きさおよび形状を決定する。人生の段階(妊娠、母乳育児、青春期、顕著な体重減少、疾患)に応じて、乳房における脂肪組織の割合および分布は変動し、乳房の容量および形状に変化をもたらし、したがって、乳房のたるみまたは引き締まりをもたらし得る。顔に関しては、脂肪組織はそれぞれ個人の容貌および表情の形成を可能にする。体重減少または皮膚老化が大きすぎることは、顔における脂肪組織の割合を減少させ、個人の容貌および表情の変化をもたらし得る。
【0005】
皮膚の老化機構は、以下のように説明することができる。
【0006】
皮膚は、外側から表皮、真皮および皮下組織の順番にある3つの主な組織から形成される。
【0007】
− 表皮は、ケラチノサイトから実質的に構成される。これらの細胞は基底層において繁殖し、次に徐々に分化して、表皮の多様な層を与え、同時に底部から表面に移動し、そこで落屑する。
【0008】
− 真皮は、密集した線維性弾性結合組織であり、その生成および任意の再造形は、線維芽細胞により実質的に実施され、皮膚の審美性に関与する線維性(コラーゲンおよび弾性)分子から構成される細胞外マトリックス(ECM)、さらに基質からなる。コラーゲンは、真皮の乾燥重量の98%に相当する。基質は、細胞と線維の間の空間を埋める巨大分子と、ECMへの細胞の結合を可能にし、表皮−上皮接合部の下に実質的に位置する構造糖タンパク質と、タンパク質に結合(共有結合)しているグリコサミノグリカン(GAG)からなるプロテオグリカンから構成される。
【0009】
− 皮下組織は、皮膚の深層を構成する。脂肪組織と結合組織から構成され、豊富に血管化および神経支配されている。真皮とその下の移動構造(筋肉、腱、臓器)との界面では、皮下組織は、緩衝器の役割を果たし、これらの下にある移動構造を外部の機械的圧力に対して保護する。脂肪組織の性質のため、皮下組織は、重要なエネルギー的、代謝的および熱的な役割も有する。特に過剰食物エネルギー摂取をトリグリセリド(TG)の形態で貯蔵し(脂肪生成として知られる現象である)、それによって後にそれらを人体が必要とするときに再分配することができる(脂肪分解として知られる現象である)。この脂肪組織における主な役割は、脂肪細胞およびそれらの前駆体である脂肪前駆細胞である。脂肪細胞は、伸長性の円形細胞の形態であり、細胞質空間全体を占領して核を細胞周辺に押しやる大型の脂質胞を有する。脂肪前駆細胞は、線維芽細胞形態型の小細胞であり、エネルギー貯蔵に関して代謝活性をなんら有さない。適切な細胞外シグナルの存在下にあるとき、成熟脂肪細胞表現型を得るために、分化のプロセスを開始する。このプロセスは、インビトロにおいて広く記載されており、数週間かかり、脂質代謝に特異的な遺伝子を標的にする多様な転写因子の協調的発現により可能になる(Feveら、Gregoireら、1998年)。したがって、このプロセスは、脂肪生成または脂肪細胞分化、そうでなければ脂肪細胞変換と一般的に記載される。脂肪前駆細胞は、ヒトが存在している間ずっと脂肪組織に存在し、成人においてこの組織の細胞の15〜50%に相当することが、最近実証されている(Yuら、2004年;Guoら、2006年)。したがって、人生の任意の時点において、脂肪前駆細胞は脂肪細胞に分化することができ、したがって、脂肪組織の細胞の更新または前記組織の拡大をもたらす。しかし、脂肪細胞の数を増加するため、したがって体脂肪量を形成するために、ヒトが発育する特定の時期が極めて重要であると思われる。人生の最初の1年間および思春期は、2つの特に重要な期間であり、その間に脂肪組織は、その構造に相当な変化を受けやすくなると思われる(Smithら、2006年)。
【0010】
多くの個人が心を奪われている皮膚老化、より詳細には顔面老化は、2つの組織現象、下垂および萎縮により特徴付けられる。
【0011】
− 下垂は、皮膚の全成分(組織、靱帯、筋肉)の張りの損失に関連している。皮膚組織は、その弾性を失い、その下にある脂肪の下垂を発生する(Dumontら、2007年)。この現象の視覚的特徴は、ほかならぬ、法令線の目に見える悪化、下顎のたれなどである。
【0012】
− 萎縮は、第2段階において生じ、老化に伴い顔に生じる容積的変化において主要な役割を果たす。明らかに脂肪組織を伴うが、他の全ての構造層(真皮、上皮、筋肉など)も伴う。この脂肪組織萎縮現象は、「内容物−容器」不均衡を作り出すことによって下垂も悪化させる(Dumontら、2007年)。この現象の目に見える結果は、痩せこけた顔、皮膚の容量および/または膨満の損失の観察である。脂肪組織は、事実、多くの生理学的および代謝的変化を老化の際に受ける。観察される脂肪組織萎縮は、脂肪細胞と脂肪前駆細胞の両方に生じ、影響を与える多様な現象により説明することができる。脂肪細胞に関しては、その大きさの減少が観察され、一方、それらの数は一定のままである(I.Karagiannidesら、2001年、2006年)。これは、脂質を蓄積するこれらの能力と、脂肪分解を実施するこれらの能力の両方の減少の観察によって説明することができる。脂肪前駆細胞も老化プロセスにより影響を受ける。事実、分化して脂肪細胞になるこれらの能力、したがってそれらからもたらされる脂肪細胞の脂質を蓄積する能力が減少する(I.Karagiannidesら、2001年、2006年)。更に、細胞毒性遊離脂肪酸の高い濃度を有し、多数のマクロファージと炎症促進性サイトカインに結合している脂肪組織は、静止脂肪前駆細胞に損傷を負わせる可能性があり、不完全な脂肪細胞への分化をもたらす可能性がある(Guoら、2006年;I.Karagiannidesら、2006年)。このように作り出された非機能化細胞は、Kirklandにより記載されており(Kirklandら、2002年)、MAD:Mesenchymal Adipocyte−like Default(間葉系脂肪細胞様欠如)細胞と呼ばれている。これらのMAD細胞は、機能性脂肪細胞より小さく、インスリンに対して反応が乏しい細胞である。これらは、脂肪酸代謝能力の低減と大量のTNFαサイトカインの産生によっても特徴付けられる。この大量のTNFαサイトカインの産生は、隣接する脂肪前駆細胞の分化を防止し、次にこれらをMAD細胞に変換することができる。ヒトの皮膚の弾性の損失、より詳細には、乳房、顔、頬、臀部および眼瞼などの人体の特定部分の弾性の損失は、真皮が、ヒトの皮膚の粘弾性特性を主に決定する弾性線維とコラーゲン線維を含有すること、およびヒトの皮膚の最深層である皮下組織もこれらの特性に対して作用する、という事実によって説明することができる。事実、皮下組織は、その厚さに応じて多様な方法で真皮を圧縮し、したがって、皮下組織の厚さの増加は、皮膚の生体力学特性の変更、特にその弾性の改善をもたらすことができる。容姿または胸部または手または顔の外観の改善を願う個人の期待に応えるために、外科的な性質の解決策が存在する。これらの技術のうちの1つは、脂肪充填術として知られており、個人の人体の一部から脂肪組織を取り出して、容量増加により修正することを望む同じ個人の体の別の部位の皮膚の下に移植することからなる。しかし、これらの外科技術は、侵襲的で高価である、長期間目に見える瘢痕を体に残す、という欠点を有する。多くの「老化防止」または「抗皴」活性成分も存在し、多様な方法でヒトに投与することができる。これらの「活性」成分の幾つかは、正常なヒト線維芽細胞の表現型および/または特性を調節することができる。例えば、多くの化粧用活性成分は、真皮に存在するコラーゲンの線維芽細胞産生を刺激する。したがって、化粧用途に使用されるアミノ酸のN−アシル誘導体のうち、ジパルミトイルヒドロキシプロリン(Sepilift(商標)DPHP)などの幾つかは、老化防止の生物学的特性を示す。他の活性成分は、フリーラジカルスカベンジング効果または分化および/もしくは免疫機構による表皮の機能の維持および/もしくは改善に対する効果によって表皮を保護することにより焦点を合わせている。一方では、皮膚に再び容量を与えるおよび/または皮膚を「膨化」するおよび/または皮膚に再び弾性を与えるために、皮下組織に存在する脂肪組織に対して、前記皮下組織を作っている細胞の代謝を促進することにより作用する能力が知られている老化防止活性成分は殆どない。これらのうち、記述できるものは、植物ステロールのサポゲニントリテルペノイド(特許出願WO2008/015639A2に記載されている)または老化により変わらない細胞に作用するコンミフォラムクル(Commiphora mukul)に基づいた抽出物である。国際公報WO90/14429A1は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンを記載し、洗剤組成物の調製におけるこれらの使用を教示する。公報JP2003−096039は、N−アシルアミノ酸塩の調製方法、またこれらの表面特性およびこれらの静真菌作用を記載する。この公報は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンのナトリウム、カリウム、トリエチルアミンおよびアルギニン塩を特に記載する。国際公報W098/09611は、皮膚生理機能の調節剤として、より詳細には細胞代謝を刺激し、皮膚保護膜を再構築する作用物質としてのN−アシルアミノ酸の使用を記載する。J.Morelleによる「Lipoaminoacides et cosmetologie」[「リポアミノ酸および美容術」](Parfumes cosmetiques savons de Frans、Paris、第3巻、第2号、1973年2月1日)は、それらの抗脂漏性、抗真菌性および抗細菌性のために細胞発生プロセスの刺激剤としてのN−アシルアミノ酸の使用を記載する。公報FR2873575A1は、皮膚に対して老化防止効果を提供するために使用されるN−アシルアミノ酸を含む化粧用組成物を記載し、結合組織を改善することにより皮膚弾性回復効果を表すことができる。
【0013】
本発明者たちの知るところでは、脂肪細胞分化を改善することおよび/または脂肪細胞の全体的な表面積の増加を誘導することおよび/または脂肪細胞表現型を回復することによって、皮下組織の脂肪組織に存在する細胞の活性を調節することができると記載されたN−アシルアミノ酸はない。人体の任意の領域の皮下組織における脂肪組織の容量の増加を引き起こすことができ、したがって前記領域の容量に測定可能な増加を反映させる、または人体の任意の領域の皮下組織における脂肪組織の密度および厚さの増加を引き起こすことができ、したがって前記領域の容量に目に見える増加を反映させると記載されたN−アシルアミノ酸も全くない。
【0014】
したがって、第1態様によると、本発明の主題は、式(I):
CH−(CH14−C(=O)−NH−CH(COOH)−CH(CH)−CH−CH (I)
で示された、ヒトの皮膚用の「ボリューム増加」剤および/または「膨化」剤としてのN−ヘキサデカノイルイソロイシンの化粧使用である。
【0015】
表現「式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの化粧使用」は、人体の外観を美化および/または改善することが意図される使用を特に表す。
【0016】
表現「ヒトの皮膚用の「ボリューム増加」剤としての式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシン」は、人体の任意の領域の皮下組織における脂肪組織の容量の増加をもたらし、したがって、前記領域の容量における測定可能な増加が反映される、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの任意の効果を意味することが意図される。「ボリューム増加」効果は、超音波によりまたはこの効果を実証することが望ましい人体の領域に適した技術を用いて分析、測定および定量化することができる。例えば、女性の乳房に対して「ボリューム増加」効果を実証するために、胸囲測定における変化を測定することが可能である。
【0017】
表現「ヒトの皮膚用の「膨化」剤としての式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシン」は、人体の任意の領域の皮下組織における脂肪組織の密度および厚さの増加をもたらし、したがって、前記領域の容量における目に見える増加が反映される、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの任意の効果を意味することが意図される。脂肪組織に対する「膨化」または「再高密度化」効果は、縞投影技術または超音波により分析することができる。
【0018】
式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの「ボリューム増加」効果および「膨化」効果を実証する文脈において、出願者は、ヒトの皮膚の皮下組織における脂肪組織に存在する細胞の活性を調節する式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの作用を実証している。表現「ヒトの皮膚の皮下組織における脂肪組織に存在する細胞の活性を調節する」では、より詳細には、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンが以下の特性のうちのどれか、幾つかまたは全てを有することを表す:
− ヒトの皮膚の皮下組織の脂肪組織に存在する脂肪細胞の分化を改善する;
− ヒトの皮膚の皮下組織の脂肪組織に存在する脂肪細胞の全体的な表面積を増加する;
− ヒトの皮膚の皮下組織の脂肪組織の脂肪細胞表現型を回復し、したがって、ヒトの皮膚の皮下組織の脂肪組織において変化した細胞の生成を防止する。
【0019】
式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンは、遊離酸形態または部分的もしくは完全に塩化された形態であることができる。N−ヘキサデカノイルイソロイシンが塩化形態である場合、これは、ナトリウム、カリウムまたはリチウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムまたはストロンチウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩またはアミノアルコール塩、例えば(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム塩を特に含む。亜鉛もしくはマンガン二価塩または鉄、ランタン、セリウムもしくはアルミニウム三価塩を含むこともできる。一般に、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの塩化の程度は、とりわけ、そのpKAおよびそれが組み込まれる組成物における塩濃度によって左右される。以下の記載において、用語「式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシン」は、遊離または部分的もしくは完全に塩化された形態の式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンを意味することが意図される。
【0020】
式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンは、下記式:
CH−(CH14−C(=O)−OH
で示されるヘキサデカン酸の活性化誘導体、例えばこの酸の対称無水物、この酸のメチルエステルまたは酸塩化物もしくは酸臭化物などの酸ハロゲン化物をアシル化剤として使用する、イソロイシンまたはその塩のN−アシル化により一般に得られる。アシル化反応は、当業者に知られている。例えば、WO98/09611の番号で公開されている特許出願に記載されている。
【0021】
より詳細な態様によると、本発明の主題は、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンがヒトの皮膚の皮下組織の脂肪組織の拡大も促進することを特徴とする、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの化粧使用である。
【0022】
表現「ヒトの皮膚の皮下組織の脂肪組織の拡大を促進すること」は、ヒトの皮膚の皮下組織の脂肪組織の質量および/または容量および/または厚さにおける任意の増加を表すことが意図される。
【0023】
より詳細な態様によると、本発明の主題は、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンがヒトの皮膚の弾性の増加ならびに/またはヒトの皮膚に対する「ボリューム増加」効果および/もしくは「膨化」効果も刺激することを特徴とする、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの化粧使用である。
【0024】
ヒトの皮膚は、2つのパラメーターにより評価されるレオロジー特性を有する:
− 弾性パラメーター、
− 人体の多様な領域において異なる張力パラメーター。
【0025】
本発明の文脈において、表現「式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンは」ヒトの皮膚の「弾性の増加を刺激する」は、ヒトの皮膚の弾性測定(ballistometry)による弾性パラメーターの減少をもたらし、したがってヒトの皮膚の弾性の増加に対応する式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの任意の効果を意味することが意図される。
【0026】
生体力学的特性を、これらのパラメーターにおける変化の研究に基づいた技術、例えば、「Cutometer(商標)」または「Dermal Torque Meter(商標)」または「Ballistometer(商標)」の使用を伴う技術により分析、測定および定量化することができる。
【0027】
第2態様によると、本発明の主題は、乳房、顔、頬、臀部および眼瞼から選択される人体の部分の皮膚に対する「ボリューム増加」および/または「膨化」効果を得るための人体の化粧処置方法であって、前記部分に、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの有効量を含む化粧用組成物を適用することからなることを特徴とする方法である。
【0028】
表現「乳房、顔、頬、臀部および眼瞼から選択される人体の部分の皮膚に適用される、前記部分の皮膚に「ボリューム増加」および/または「膨化」効果を得るための式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの有効量」は、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの0.000001重量%〜0.5重量%、より詳細には0.00001重量%〜0.05重量%、さらにより詳細には0.0001重量%〜0.005重量%の量を意味することが意図される。
【0029】
より詳細な態様によると、本発明の主題は、上記に定義された人体の化粧処置方法であって、ヒトの皮膚の皮下組織の脂肪組織の拡大の促進も可能にすることを特徴とする方法である。
【0030】
さらにより詳細な態様によると、本発明の主題は、上記に定義された人体のための化粧処置方法であって、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの有効量の適用が、皮膚の弾性の増加および/またはボリューム増加効果および/または膨化効果を得るために、乳房および/または顔および/または頬および/または臀部および/または眼瞼に実施されることを特徴とする方法である。
【0031】
本発明の主題である人体の化粧処置方法において、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンは、化粧的に許容される成分を含む組成物に一般に含まれる。
【0032】
本発明の主題である人体の化粧処置方法において使用される組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせた成分の定義に使用される表現「化粧的に許容される」は、1976年7月27日付け欧州経済共同体理事会ディレクティブ76/768/EEC(1993年6月14日付けディレクティブ93/35/EECにより改訂)によると、前記組成物が、限定的および原則的にこれらを清浄する、香りを与える、その外観を変更する、および/またはその体臭を修正する、および/またはこれらを保護する、または良好な状態に維持する目的で人体の多様な部分(表皮、体毛および頭髪系、爪、唇および生殖器)と、または歯および口腔粘膜と接触することが意図される任意の物質または調製物を含むことを意味する。
【0033】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に使用される式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む組成物は、一般に、希釈水溶液または水性アルコール溶液の形態、油が植物性もしくは鉱物性である、油中水(W/O)、水中油(O/W)もしくは水中油中水(W/O/W)などの単純または多重エマルジョンの形態、あるいは粉末の形態である。これらは、ワイプ、ペーパータオルまたは衣類のいずれかであっても、繊維材料または不織布材料に分散または含浸されていることもできる。
【0034】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に使用される式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む組成物は、より詳細には、上記に記載された繊維支持体または不織布材料により直接的または間接的な局所経路を介して投与される。
【0035】
上記に定義された本発明の主題である人体の化粧処置方法に使用される式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む組成物において、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンは、前記組成物の重量100%当たり0.01重量%〜10重量%、より詳細には0.1重量%〜5重量%、とりわけ1重量%〜5重量%の量で一般に使用される。
【0036】
一般に、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンは、本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物において使用される多くの種類の佐剤または活性成分と、これらが脂肪物質、有機溶媒、増粘剤、ゲル化剤、軟化剤、洗剤用界面活性剤、過脂化剤(overfatting agent)、増粘および/またはゲル化界面活性剤、酸化防止剤、乳白剤、安定剤、発泡剤、香料、乳化界面活性剤、懸濁剤、可塑剤、過脂化剤、きめ調整剤(texturing agent)、顔料、金属イオン封鎖剤、キレート剤、防腐剤、化学薬品スクリーンニング剤または鉱物スクリーンニング剤、精油、色素、顔料、親水性または疎水性活性剤、保湿剤、例えばグリセロール、防腐剤、染料、香料、化粧料活性剤、無機または有機日焼け止め、酸化鉄、酸化チタンおよびタルクなどの鉱物充填剤、ナイロンおよび架橋または非架橋ポリ(メチルメタクリレート)などの合成充填剤、シリコーンエラストマー、セリサイトまたは植物抽出物、そうでなければ脂質小胞、または化粧品産業において通常使用される任意の他の成分であるかに関わらず組み合わされる。
【0037】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができる油の例として、記述できるものは、流動パラフィン、流動石油ゼリー(liquid petroleum jelly)、イソパラフィンまたは白色鉱油などの鉱油、スクアレンまたはスクアランなどの動物由来の油、甘扁桃油、ヤシ油、ヒマシ油、ホホバ油、オリーブ油、ナタネ油、落花生油、ヒマワリ油、バクガ油、トウモロコシハイガ油、ダイズ油、綿実油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、マツヨイグサ油、キビ油、オオムギ油、ライムギ油、ベニバナ油、ククイ油、トケイソウ油、ヘーゼルナッツ油、パーム油、シアバター、キョウニン油、ビューティリーフ油(beauty leaf oil)、キバナハタザオ油(sysymbrium oil)、アボカド油、キンセンカ油などの植物油;エトキシル化植物油;合成油、例えば、ブチルミリステート、プロピルミリステート、セチルミリステート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、ヘキサデシルステアレート、イソプロピルステアレート、オクチルステアレート、イソオクチルステアレート、ドデシルオレエート、ヘキシルラウレート、プロピレングリコールジカプリレート、イソプロピルラノレートまたはイソセチルラノレートなどのラノリン酸から誘導されるエステル、などの脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、例えばグリセリルトリヘプタノエート、アルキルベンゾエート、ポリ−アルファ−オレフィン、ポリイソブテンなどのポリオレフィン、合成イソアルカン、例えばイソヘキサデカンまたはイソドデカン、ペルフルオロ油およびシリコーン油である。後者のうち、記述できるものは、より詳細にはジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミンで改質したシリコーン、脂肪酸で改質したシリコーン、アルコールで改質したシリコーン、アルコールと脂肪酸で改質したシリコーン、ポリエーテル基で改質したシリコーン、エポキシ改質シリコーン、フルオロ基で改質したシリコーン、環状シリコーンおよびアルキル基で改質したシリコーンである。
【0038】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができる他の脂質として、記述できるものは、脂肪アルコールまたは脂肪酸である。
【0039】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができるロウの例として、記述できるものは、例えば、ミツロウ;カルナウバロウ;カンデリラロウ;オークローロウ;木ロウ;コルク繊維ロウまたはサトウキビロウ;パラフィンロウ;亜炭ロウ;微晶ロウ;ラノリンロウ;オゾケライト;ポリエチレンロウ;硬化油;シリコーンロウ;植物ロウ;周囲温度で固体である脂肪アルコールと脂肪酸;および周囲温度で固体であるグリセリドである。
【0040】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができる増粘および/または乳化ポリマーの例として、記述できるものは、例えば、アクリル酸とまたはアクリル酸誘導体とのホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミドホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミド誘導体のホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸とビニルモノマーとトリメチルアミノエチルアクリレートクロリドとのホモポリマーまたはコポリマー、植物由来または生合性由来のヒドロコロイド、例えばキサンタンガム、カラヤゴム、カラギーナン、アルギン酸塩;ケイ酸塩;セルロースおよびその誘導体;デンプンおよびその親水性誘導体;ポリウレタンである。
【0041】
式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができる高分子電解質型のポリマーのうちでは、例えば、アクリル酸と2−メチル−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(AMPS)のコポリマー、アクリルアミドと2−メチル−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸のコポリマー、2−メチル−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸と(2−ヒドロキシエチル)アクリレートのコポリマー、2−メチル−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸ホモポリマー、アクリル酸ホモポリマー、アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドのコポリマー、AMPSとビニルピロリドンのコポリマー、アクリル酸と、炭素に基づいた鎖が10個〜30個の炭素原子を含むアルキルアクリレートとのコポリマーおよびAMPSと、炭素に基づいた鎖が10個〜30個の炭素原子を含むアルキルアクリレートとのコポリマーである。そのようなポリマーは、Simulgel(商標)EG、Sepigel(商標)305、Simulgel(商標)NS、Simulgel(商標)800およびSimulgel(商標)Aの名称でそれぞれ出願者により販売されている。
【0042】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができる乳化剤の例として、記述できるものは、例えば、脂肪酸、エトキシル化脂肪酸、ソルビトールの脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリグリセロールエステル、エトキシル化脂肪アルコール、スクロースエステル、アルキルポリグリコシド、硫酸化およびリン酸化脂肪アルコールまたはフランス国特許出願第2,668,080号、同第2,734,496号、同第2,756,195号、同第2,762,317号、同第2,784,680号、同第2,784,904号、同第2,791,565号、同第2,790,977号、同第2,807,435号および同第2,804,432号に記載されている、アルキルポリグリコシドと脂肪アルコールの混合物である。
【0043】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わすことができる活性成分の例として、記述できるものは、色を薄くするまたは色素を除く作用を有する化合物、例えば、アルブチン、コウジ酸、ヒドロキノン、エラグ酸、ビタミンC、マグネシウムアスコルビルホスフェート、ポリフェノール抽出物、ロスマリニルグルコシドなどのグリコシル化ポリフェノール誘導体、ブドウ抽出物、マツ抽出物、ワイン抽出物、オリーブ抽出物、ポンド抽出物、N−アシル化タンパク質、N−アシル化ペプチド、N−アシル化アミノ酸、N−アシル化タンパク質の部分水解物、アミノ酸、ペプチド、全タンパク質水解物、部分タンパク質水解物、ポリオール(例えば、グリセロールまたはブチレングリコール)、尿素、ピロリドンカルボン酸またはこの酸の誘導体、グリシルレチン酸、アルファ−ビサボロール、糖または糖誘導体、多糖類またはその誘導体、ヒドロキシ酸、例えば乳酸、ビタミン、ビタミン誘導体、例えばレチノール、ビタミンEおよびその誘導体、ミネラル、酵素、補酵素、例えば補酵素Q10、ホルモンまたはホルモン様物質、ダイズ抽出物、例えばRaffermine(商標)、コムギ抽出物、例えばTensine(商標)またはGliadine(商標)、タンニンが豊富な抽出物、イソフラボンが豊富な抽出物またはテルペンが豊富な抽出物などの植物抽出物、淡水または海水藻抽出物、精ロウ(essential wax)、細菌抽出物、鉱物、一般的な脂質、セラミドまたはリン脂質などの脂質、減量作用を有する活性剤、例えばカフェインまたはその誘導体、例えばAdipoless(商標)の名称で販売されているキノア抽出物、例えばSereniks(商標)207の名称で販売されているカナダツガ抽出物、例えばAdiposlim(商標)の名称で販売されているラウロイルプロリンを含む組成物、抗菌活性を有する作用物質またはLipacide(商標)PVBなどの油性肌に関して浄化作用を有する作用物質、活発化(energizing)または刺激特性を有する活性剤、例えばSepitonic(商標)M3またはPhysiogenyl(商標)、パンテノールおよびその誘導体、例えばSepicap(商標)MP、老化防止活性剤、例えばSepilift(商標)DPHP、Lipacide(商標)PVB、Sepivinol(商標)またはSepivital(商標)、湿潤活性剤、例えばSepicalm(商標)S、Sepicalm(商標)VGおよびSepilift(商標)DPHP、「光老化防止」老化防止活性剤;真皮−表皮結合部の整合性を保護する活性剤、細胞外マトリックス成分の合成を増加する活性剤、減量、引き締めまたは排出活性を有する活性剤、例えばカフェイン、テオフィリン、cAMP、緑茶、セージ、イチョウ、ツタ、トチノキ、タケ、ナギイカダ属(ruscus)、ナギイカダ(butcher's broom)、ツボクサ、ヘザー、シモツケ、ヒバマタ、ローズマリーまたはヤナギ、皮膚に「加熱」感を作り出す作用物質、例えば毛細血管微小循環のアクチベーター(例えば、ニコチネート)または皮膚に「清涼」感を作り出す生成物(例えばメントールおよび誘導体)である。
【0044】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができるきめ調整剤の例として、記述できるものは、アミノ酸のN−アシル化誘導体、例えばAjinomoto社によりAminohope(商標)LLの名称で販売されているラウロイルリシン、National Starch社によりDryflo(商標)名称で販売されているオクテニルデンプンスクシネート、Montanov(商標)14の名称でSEPPICにより販売されているミリスチルポリグルコシド、セルロース繊維、綿繊維、キトサン繊維、タルク、セリサイトおよび雲母である。
【0045】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができる乳白剤および/または真珠光沢剤の例として、記述できるものは、ナトリウムパルミテート、ナトリウムステアレート、ナトリウムヒドロキシステアレート、マグネシウムパルミテート、マグネシウムステアレート、マグネシウムヒドロキシステアレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレートおよび脂肪アルコールである。
【0046】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができる増粘および/またはゲル化界面活性剤の例として、記述できるものは、
− 場合によりアルコキシル化されているアルキルポリグリコシド脂肪エステル、とりわけ、Glucamate(商標)LTおよびGlumata(商標)DOE120の名称でそれぞれ販売されているPEG120メチルグルコーストリオレエートおよびPEG120メチルグルコースジオレエートなどのエトキシル化メチルポリグルコシドエステル;
− Crothix(商標)DS53の名称で販売されているPEG150ペンタエリトリチルテトラステアレートまたはAntil(商標)141の名称で販売されているPEG55プロピレングリコールオレエートなどのアルコキシル化脂肪エステル;
− Elfacos(商標)T211の名称で販売されているPPG14ラウレトイソホリルジカルバメートまたはElfacos(商標)GT2125の名称で販売されているPPG14パルメト60ヘキシルジカルバメートなどの脂肪鎖ポリアルキレングリコールカルバメート
である。
【0047】
本発明の主題である人体の化粧処置方法に用いられる化粧用組成物における式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンと組み合わせることができる日焼け止めの例として、記述できるものは、化粧品ディレクティブ76/768/EEC改訂版、付録VIIに現れるものである。
【0048】
以下の実験研究は、本発明を説明するが、本発明を制限することはない。
【0049】
1−インビトロ研究
インビトロ研究は、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンが、脂肪生成刺激不足の状態を再現するモデルにおいて正常ヒト脂肪前駆細胞の分化を刺激するのを可能にすること、脂肪細胞の表面積の増加を刺激するのを可能にすること、および老化条件を再現するモデルにおいて「若い」正常ヒト脂肪前駆細胞の脂肪細胞表現型を回復するのを可能にすることによって、皮下組織脂肪組織細胞の活性を調節することを実証する。
【0050】
1.1−脂肪生成刺激不足の状態を再現するインビトロモデルにおける正常ヒト脂肪前駆細胞の分化に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの刺激効果および脂肪細胞の表面積の増加に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの刺激効果の実証
プロトコール
38歳の女性提供者の腹部手術廃棄物から得られた正常ヒト脂肪前駆細胞を、Lonza社により供給されたPBM−2(脂肪前駆細胞基礎培地−2)と、培地の容量100%当たり10容量%の量のFBS(ウシ胎児血清)と、L−グルタミンと、ゲンタマイシンとを含む培地の存在下でコンフルエンスに達するまで単層で培養した。
【0051】
この脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化は、インスリンと、デキサメタゾンと、IBMX(イソブチルメチルキサンチン)と、インドメタシンとの混合物を含み、「基準」分化培地に対して10倍の希釈率で使用される「枯渇」分化培地を添加することによって誘導した。「枯渇」分化培地を添加することによって生じるこの分化相は、本発明の実証の状況において試験される生成物、すなわちN−ヘキサデカノイルイソロイシン、ヘキサデカン酸、イソロイシンおよびヘキサデカン酸/イソロイシン重量比65/35のヘキサデカン酸とイソロイシンの混合物の存在下でも、「枯渇培地で分化した対照」を得るように生成物なしでも実施する。
【0052】
分化相は、上記に記載されたようにヒト脂肪前駆細胞において実施し、上記に記載されたように単層で培養するが、「基準培地で分化した対照」を得るように「基準」分化培地、すなわち、インスリンと、デキサメタゾンと、IBMX(イソブチルメチルキサンチン)と、インドメタシンとの非希釈混合物の存在下で培養する。
【0053】
脂肪前駆細胞が成熟に達すると、すなわち上記に記載された誘導の15日後、培養物をPBS(リン酸緩衝食塩水)緩衝液ですすぎ、細胞質内脂質小胞を、特異的な生存蛍光プローブのBodipy(500μg/ml)を使用して標識した。分化した脂肪前駆細胞の核も、Sigma社から販売されている、蛍光性があるHoechst試薬(ビスベンズイミド)を使用して2μg/mlの濃度で標識した。
【0054】
1つのウエル当たり3枚の写真を、×20倍対物レンズを備えたZeiss Axiovert(商標)25倒立落射蛍光顕微鏡を使用して撮った。
【0055】
結果
対照を含む試験した生成物のそれぞれの試験では、倒立落射蛍光顕微鏡で得た画像を、
− 脂質滴表面積(Sd)の測定、
− 分化細胞の数(Nc)の測定および
− 全細胞核の数(Nnc)の測定
を実施するために、ボディパイ蛍光標識の定量化を可能にするLuciaソフトウエアを使用して分析する。
【0056】
それぞれの試験において、次に脂肪細胞分化のレベル(D)を式:(D)=(脂質滴表面積)/(全細胞核の数)に従って、脂質滴表面積を全核の数と関連付けることにより計算する。
【0057】
このようにして以下が計算される:
− 枯渇培地において分化した対照の脂肪細胞分化のレベル(以降、Ddmと表す);
− 基準または完全培地において分化した対照の脂肪細胞分化のレベル(以降、Dcmと表す);
− 試験した生成物(N−ヘキサデカノイルイソロイシン、ヘキサデカン酸、イソロイシン、重量比が65/35のヘキサデカン酸/イソロイシン混合物)の脂肪細胞分化のレベル(以降、Dptと表す)。
【0058】
次に、試験したそれぞれの生成物では以下が計算される:
a)以下の式による脂肪細胞分化の回復率(以降、RADと表す):
RAD=[(Dpt−Ddm)/(Dcm−Ddm)]×100
b)以下の式による脂肪酸表面積(AS):
(AS)=[(脂質滴表面積Sd)/(分化細胞の数Nc)]×100
c)以下の式による、枯渇培地で処理された対照に対する脂肪細胞表面積の増加の率(以降、IASと表す);
IAS=[生成物の脂肪細胞表面積(ASpt)/枯渇培地で処理された対照の脂肪細胞表面積(ASdm)]×100。
【0059】
次に統計分析を、不等分散を想定する両側スチューデント検定を使用してデータ(D)および(AS)により実施する。したがって、パラメーター(D)および(AS)の試験した実験条件それぞれの個体群を、枯渇分化培地の存在下での分化条件の個体群と比較する。誤差限界値(p)を5%に設定する。p≦0.05である場合、研究した2つの個体群は有意に異なると考慮され、研究した実験条件は、枯渇培地における分化の条件と比較して効果を有する。p>0.05である場合、2つの個体群は、差を全く示さないと考慮され、したがって、研究した実験条件は、枯渇培地における分化の条件と比較して効果を有さない。
【0060】
得られた結果を下記の表1に報告する。
【表1】

【0061】
上記に記載され、表1に含まれたプロトコールに従って実施した試験は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンが、乾燥抽出物に基づいて5μg/mlの用量のN−ヘキサデカノイルイソロイシンで63%のRADを可能し、乾燥抽出物に基づいて10μg/mlの用量で85%のRADを可能にすることを示す。
【0062】
ヘキサデカン酸が乾燥抽出物に基づいて3.3μg/mlおよび乾燥抽出物に基づいて6.5μg/mlの用量で使用される場合、イソロイシンが乾燥抽出物に基づいて1.7μg/mlおよび乾燥抽出物に基づいて3.3μg/mlの用量で使用される場合、RADは10%未満であり、有意ではないと考慮される。同じことは、乾燥抽出物に基づいて5μg/mlおよび乾燥抽出物に基づいて10μg/mlの用量の、ヘキサデカン酸/イソロイシンの重量比が65/35のヘキサデカン酸とイソロイシンの混合物による試験において当てはまる。
【0063】
したがって、これらの結果は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンのN−アシル化構造が効果的なRADを可能にすることを示す。
【0064】
試験は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンが、基準培地で分化した対照の194%と比較して、乾燥抽出物に基づいて5μg/mlの用量で215%および乾燥抽出物に基づいて10μg/mlの用量で214%の脂肪細胞表面積の増加レベルを得ることを可能にすることも示す。更に、ヘキサデカン酸が乾燥抽出物に基づいて3.3μg/mlおよび乾燥抽出物に基づいて6.6μg/mlの用量で使用される場合、イソロイシンが乾燥抽出物に基づいて1.7μg/mlおよび乾燥抽出物に基づいて3.3μg/mlの用量で使用される場合、上記に記載されたプロトコールに従って実施される試験において、得られるIASレベルは、基準培地で分化した対照で得られるものよりもはるかに低く、大部分の場合において、枯渇培地で分化した対照で得られるIASレベルよりも少ない。同様の観察が、乾燥抽出物に基づいて5μg/mlおよび乾燥抽出物に基づいて10μg/mlの用量のヘキサデカン酸/イソロイシンの重量比が65/35のヘキサデカン酸とイソロイシンの混合物により実施された試験においてなされる。
【0065】
したがって、これらの結果は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンのN−アシル化構造が効果的なIASを可能にすることを示す。
【0066】
1.2−老化条件を再現するインビトロモデルにおける正常ヒト脂肪前駆細胞を使用するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの脂肪細胞表現型回復効果の実証
使用したインビトロモデルは、分化の後に表現型を示し、MAD細胞の性質を示す細胞を生成するための、連続「継代」による正常ヒト脂肪前駆細胞の加速老化からなる。用語「継代」または「継代培養」または「増幅」は、培養周期により該当細胞を連続的に増幅することからなる、当業者に既知の操作を本明細書において表す。したがって、用語「継代R0の脂肪前駆細胞」は、上記に定義された継代操作を受けない脂肪前駆細胞を表す。用語「継代R1の脂肪前駆細胞」は、上記に定義された単回の継代操作を受けた脂肪前駆細胞を表す。用語「継代R7の脂肪前駆細胞」は、同一の操作条件下で7回の連続継代操作を受けた脂肪前駆細胞を表す。したがって、継代R1の脂肪前駆細胞は、連続継代工程による形態学的および表現型変化を全く示さないので、「若い」個人の脂肪前駆細胞の代表であると考慮される。更に、継代R7の脂肪前駆細胞は、連続継代工程による形態学的および表現型変化を示すので、人工的に老化した個人の代表であると考慮される。3つの異なるプロトコールを、分化したおよび人工的に老化した脂肪前駆細胞の表現型の回復におけるN−ヘキサデカノイルイソロイシンの有効性を実証するために実施した。
【0067】
プロトコール1
a)−「若い」対照の調製
i)継代R1のヒト脂肪前駆細胞を、コンフルエンスになるまで5日間単層で培養した。この脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化は、インスリンと、デキサメタゾンと、IBMX(イソブチルメチルキサンチン)とインドメタシンとの混合物を含む基準分化混合物の添加により誘導した。
【0068】
ii)上記に記載された誘導工程の15日後、調製した培養物をPBS(リン酸緩衝食塩水)緩衝液ですすぎ、次に、溶液の重量100%当たり4重量%のホルムアルデヒドと、0.1重量%の、生物学において一般的に使用される合成洗剤であるトリトンX−100とを含む溶液を使用して固定する。
【0069】
iii)次に、前に調製した細胞培養物の細胞質内脂質小胞の標識を、Sigma社により販売されているOil−Red−O標識の0.2質量%の量を使用して実施する。
【0070】
iv)前に記載し、上記に示したように標識された細胞培養物の脂質小胞を含有する細胞単層を、次に、ジメチルスルホキシド(またはDMSO)で溶解する。
【0071】
v)本発明のプロトコールの工程iv)の最後に調製した、標識され溶解された細胞培養物の脂質小胞の標識量を、次に、540nmの波長で分光光度計を使用してこれらの溶解産物の光学濃度(OD)を読み取ることによって測定する。
【0072】
若い対照においてこのように測定した光学濃度を、「ODR1」と表す。
【0073】
b)−「老化」対照の調製
セクションa)に記載したプロトコール工程i)〜v)を、「老化」対照の光学濃度を得るように、継代R7のヒト脂肪前駆細胞に適用し、「ODR7」と表す。
【0074】
c)−継代R7のヒト脂肪前駆細胞に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの効果の評価
継代R7のヒト脂肪前駆細胞を、コンフルエンスになるまで5日間単層で培養した。この脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンの存在下、インスリンと、デキサメタゾンと、IBMX(イソブチルメチルキサンチン)と、インドメタシンとの混合物を含む基準分化混合物の添加により誘導した。次に、セクションa)に記載した工程ii)〜v)を、N−ヘキサデカノイルイソロイシンの光学濃度を得るように実施し、「ODHIL」と表す。
【0075】
d)−表現型回復の程度の計算
多様な光学濃度の測定は、以下の式に従ってN−ヘキサデカノイルイソロイシンの表現型回復率(本明細書以降、PRRと表す)を計算することを可能にする:
PRR(%)=[(ODHIL−ODR7)/(ODR1−ODR7)]×100。
【0076】
次に統計分析を、不等分散を想定する両側スチューデント検定を使用して光学濃度データにより実施する。したがって、試験した実験条件それぞれの個体群を、R7脂肪前駆細胞の分化条件の個体群と比較する。誤差限界値(p)を5%に設定する。pが0.05以下である場合、研究した2つの個体群は有意に異なると考慮され、したがって、研究した実験条件は、R7脂肪前駆細胞の分化条件と比較して効果を有すると考慮される。pが0.05よりも厳密に大きい場合、2つの個体群は差を全く示さないと考慮され、したがって、研究した実験条件は、R7脂肪前駆細胞の分化条件と比較して効果を全く有さないと考慮される。
【0077】
多様な濃度のN−ヘキサデカノイルイソロイシンで得られたRRRを、下記の表2に報告する。
【表2】

【0078】
プロトコール2
プロトコール1のセクションa)およびb)の工程を、「若い」対照、「老化」対照および関連する光学濃度ODR1とODR7を得るように、継代R1のヒト脂肪前駆細胞および継代R7のヒト脂肪前駆細胞を使用して実施する。継代R7のヒト脂肪前駆細胞に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの効果を、最初の工程がN−ヘキサデカノイルイソロイシンの存在下で継代R7のヒト脂肪前駆細胞をコンフルエンスになるまで単層で5日間培養することからなる、プロトコール1の手順の変法に従って評価する。これらの脂肪細胞への分化は、インスリンと、デキサメタゾンと、IBMX(イソブチルメチルキサンチン)と、インドメタシンとの混合物を含む基準分化混合物の添加により誘導する。次に、プロトコール1のセクションa)に記載した工程ii)〜v)を、N−ヘキサデカノイルイソロイシンの光学濃度を得るように実施し、「ODHIL」と表す。
【0079】
多様な光学濃度の測定は、以下の式に従い、プロトコール2の実施により、N−ヘキサデカノイルイソロイシンの表現型回復率(PRR)を計算することを可能にする:
PRR(%)=[(ODHIL−ODR7)/(ODR1−ODR7)]×100。
【0080】
プロトコール2に従ってN−ヘキサデカノイルイソロイシンの多様な濃度から得たPRRを、以下の表3に報告する。
【表3】

【0081】
プロトコール3
プロトコール1のセクションa)およびb)の工程を、「若い」対照、「老化」対照および関連する光学濃度ODR1とODR7を得るように、継代R1のヒト脂肪前駆細胞および継代R7のヒト脂肪前駆細胞を使用して実施する。
【0082】
継代R7のヒト脂肪前駆細胞に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの効果を、最初の工程がN−ヘキサデカノイルイソロイシンの存在下で継代R7のヒト脂肪前駆細胞をコンフルエンスになるまで単層で5日間培養することからなる、プロトコール2の手順の変法に従って評価する。
【0083】
これらの脂肪細胞への分化は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンの存在下、インスリンと、デキサメタゾンと、IBMX(イソブチルメチルキサンチン)と、インドメタシンとの混合物を含む基準分化混合物の添加により誘導する。次に、プロトコール1のセクションa)に記載した工程ii)〜v)を、N−ヘキサデカノイルイソロイシンの光学濃度を得るように実施し、「ODHIL」と表す。
【0084】
多様な光学濃度の測定は、以下の式に従い、プロトコール3の実施により、N−ヘキサデカノイルイソロイシンのPRRを計算することを可能にする:
PRR(%)=[(ODHIL−ODR7)/(ODR1−ODR7)]×100。
【0085】
プロトコール2に従ってN−ヘキサデカノイルイソロイシンの多様な濃度から得たPRRを、以下の表4に報告する。
【表4】

【0086】
結論
実施したプロトコールに関わりなく、実験試験は、人工老化条件下で脂肪細胞表現型の回復に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの有益な効果を示した。したがって、乾燥抽出物に基づいて5μg/mlの用量のN−ヘキサデカノイルイソロイシンでは、この効果は、プロトコール1による13%の表現型回復率、プロトコール2による27%の表現型回復率、プロトコール3による36%の表現型回復率から推測された。
【0087】
2−インビボ研究
以下の実験研究は、本発明を説明するが、本発明を制限することはない。
【0088】
インビボ研究は、式(I)のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの化粧使用および人体の化粧処置方法の実施が、ヒトに皮膚に「ボリューム増加」および/もしくは「膨化」効果を生じることを可能にすること、ならびに/または皮膚の弾性の増加を可能にすることを実証する。
【0089】
2.1−N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む化粧用組成物の乳房に対する「ボリューム増加」効果および「膨化」効果の実証
a)−N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む水中油(O/W)エマルジョン(E1)と「プラセボ」水中油エマルジョン(E2)の調製
エマルジョン(E1)および(E2)を以下の方法で調製する:
工程1):油相の成分および乳化系を80℃の温度でビーカーに連続的に導入し、均質混合物を形成するように、「アンカー」型スピンドルを有する撹拌機を80rpmの速度、80℃の温度で使用する機械的撹拌に15分間供する。
【0090】
工程2):増粘ポリマーを、工程1)の最後に得た混合物に80℃の温度で加え、水相は、この成分を周囲温度で混合することにより前もって調製する。次に、得られた混合物をSilverson社から販売されている回転子固定子乳化装置による3000rpmの速度、80℃の温度で4分間の撹拌に供する。
【0091】
工程3):工程2)の最後に得た混合物を、10分間かけて30℃の温度に冷却し、「アンカー」型スピンドルを有する機械式撹拌機により80rpmの速度で、冷却している間ずっと撹拌を保持する。
【0092】
工程4):次に、Neolone MxP防腐剤および「プレジール」(“plaisir”)香料を、工程3)からもたらされた混合物に30℃の温度で加える。次にpHを、50%トリエタノールアミンの添加により6.5の値に調整する。
【0093】
水中油エマルジョン(E1)および(E2)は以下の組成(重量に基づく)を有する。
【表5】

【0094】
(1):Stearieneries Dubois社により販売されているネオペンチルグリコールジエチルヘキサノエート。
【0095】
(2):SEPPIC社により販売されている増粘インバースラテックス(inverse latex)(INCI名称:ヒドロキシエチルアクリレート/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレートコポリマーとイソヘキサデカンとポリソルベート60)。
【0096】
(3):SEPPIC社により販売されている、アラキジルアルコールに基づいた、ベヘニルアルコールに基づいた、アラキジルグルコシドに基づいたEP0977626に記載されているものなどの自己乳化生組成物。
【0097】
(4):Rohm&Haas社により販売されている、フェノキシエタノールと、メチルパラベンと、プロピルパラベンと、メチルイソチアゾリノンとを含む防腐剤混合物。
【0098】
b)−水中油エマルジョン(E1)および(E2)の乳房に対する「ボリューム増加」効果および「膨化」効果の評価
これらの評価は、以下の基準を測定することにより実施する:
−胸囲測定(Mb)のセンチメートルにおける変化の測定、
−深部超音波による乳房の皮下組織の厚さにおける変化の測定、
−縞投影技術(Primos Body(商標))を使用する乳房の容量における変化の測定。
【0099】
これらの評価は、カップサイズA(すなわち、2つ乳房の乳首の高さで取った胸囲測定の値と2つの乳房の底部で取った胸囲測定の値の差が2.5cm)の胸部を有する、志願者22人の2つの等しい群(群Iおよび群II)に分けた、平均年齢26歳の女性志願者44人の集団において実施した。群(I)のそれぞれのメンバーには、エマルジョン(E1)を両方の乳房に1日2回、28日間適用し、群(II)のそれぞれのメンバーには、エマルジョン(E2)を両方の乳房に1日2回、28日間適用した。
【0100】
b1)−胸囲測定における変化を測定することによるN−ヘキサデカノイルイソロイシンの「ボリューム増加」効果の評価
プロトコール
エマルジョン(E1)および(E2)の適用を開始する前と28日間の実験の終了時に、胸囲測定値(Mb)およびアンダーバスト(under-bust)測定値(Mub)を、センチメートルで目盛り付けした巻尺を用いて取る。
【0101】
並行して、各群のそれぞれの個人(i)の体重曲線を、解釈の際に、大き過ぎる体重減少または体重増加(研究の開始前に測定した体重に対して個人の体重における±3kgの変化)を経験した個人に関する測定データを除くために管理する。体重変化が実験の開始前に測定した初期体重よりも±3kg越える個人の数を(j)と表す。次に、測定値が解釈される集団である各群における個人の集団Nを、式:N=20−jに従って計算する。
【0102】
センチメートルの胸囲測定値を、それぞれの個人の2つの乳房の乳首に基づいて取ることにより、群(I)および(II)のそれぞれのメンバー(i)から取る。したがって、各群のそれぞれのメンバー(i)において、実験の開始前の胸囲測定値(Mb0i)と28日間の実験期間の終了時の胸囲測定値を取る。次に、各群のそれぞれのメンバーの胸囲測定値における変化ΔMbiを以下の式に従って計算する:
ΔMbi=Mb28i−Mb0i
次に、胸囲測定値における変化の算術平均(ΔMbm)を各群において以下の式に従って計算する:
ΔMbm=[Σ(ΔMbi)]/N
センチメートルでのアンダーバスト測定値も、それぞれの個人の2つの乳房の下の線を基礎として取ることにより、群(I)および(II)のそれぞれのメンバー(i)から取る。したがって、各群のそれぞれのメンバー(i)において、実験の開始前のアンダーバスト測定値(Mub0i)と28日間の実験期間の終了時のアンダーバスト測定値(Mub28i)を取る。次に、各群のそれぞれのメンバーの胸囲測定値における変化ΔMubiを以下の式に従って計算する:
ΔMubi=Mub28i−Mub0i。
【0103】
次に、アンダーバスト測定値における変化の算術平均(ΔMubm)を各群において以下の式に従って計算する:
ΔMubm=[Σ(ΔMubi)]/N。
【0104】
得られた結果
算術平均ΔMbmおよびΔMubmの結果を、群(I)および(II)について下記の表6に報告する。
【表6】

【0105】
N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む水中油エマルジョン(E1)を乳房に適用した群(I)のメンバーの胸囲測定値における変化(ΔMbm)の算術平均は、+0.6センチメートルで測定され、アンダーバスト測定値の変化(ΔMubm)は−0.1センチメートルであった。
【0106】
N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含まない水中油エマルジョン(E2)を乳房に適用した群(II)のメンバーの胸囲測定値における変化(ΔMbm)の算術平均は、0センチメートルで測定され、アンダーバスト測定値の変化(ΔMubm)は0センチメートルであった。
【0107】
解釈
一連の値(Mb28i)が値(Mb0i)と統計的に異なる胸囲測定値における増加は、有意であると考慮される。
【0108】
一連の値(Mub28i)が値(Mub0i)と統計的に異なるアンダーバスト測定値における増加は、有意であると考慮される。
【0109】
胸囲測定値における増加およびアンダーバスト測定値における増加の有意性を評価するのに使用される統計分析は、不等分散を想定する両側スチューデント検定を使用して実施する。したがって、一連の値(Mb28i)および一連の値(Mub28i)を、一連の値(Mb0i)および一連の値(Mub0i)とそれぞれ比較する。誤差限界値(p)を5%に設定する。pが0.05以下である場合、一連の値(Mb28i)および一連の値(Mub28i)は、一連の値(Mb0i)および一連の値(Mub0i)とそれぞれ有意に異なると考慮される。したがって、胸囲測定値およびアンダーバスト測定値に有意な増加があると結論付けることが可能である。pが0.05よりも厳密に大きい場合、一連の値(Mb28i)および一連の値(Mub28i)は、一連の値(Mb0i)および一連の値(Mub0i)とそれぞれ有意に異なるとは考慮されない。したがって、胸囲測定値およびアンダーバスト測定値に有意な増加があると結論付けることが可能ではない。
【0110】
更に、胸囲測定値における増加は、アンダーバスト測定値の算術平均(ΔMubm)が±0.2cmを越えない限り、算術平均(ΔMbm)が0.2cm以上である場合に有意であると考慮される。
【0111】
結論
したがって、水中油エマルジョン(E1)におけるN−ヘキサデカノイルイソロイシンの存在が、群(I)のメンバーの平均胸囲測定値を有意な方法で増加することを可能にすること、したがって乳房に対する「ボリューム増加」効果をこれらの個人に与えることを可能にすることを、結果から導き出すことが可能である。
【0112】
b2−乳房皮下組織の厚さに対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの効果の評価
プロトコール
深部超音波による乳房皮下組織の厚さの測定を、長さ6cm、厚さ1cmのプローブを備えたSiemens社により販売されているSonoline Antares(商標)超音波システムにより各群のそれぞれのメンバーにおいて実施した。それぞれの測定の前に、Aquasonic100(商標)ブランドの接触ゲルを乳房に適用する。測定は、乳房の皮膚へのプローブの直接適用により、13MHzの周波数で実施する。プローブを、測定されたデータを処理するソフトウエアとFuji DryPix 7000(商標)プリンターに接続する。
【0113】
各群のそれぞれのメンバー(i)において、この評価は、乳房の3つの異なる場所において以下の3つの測定を実施することによって実施される:
− 皮下組織の厚さの測定を乳房の側面(MLi)において実施する、
− 皮下組織の厚さの測定を乳房の上前面(MSAi)において実施する、
− 皮下組織の厚さの測定を乳房の下前面(MIAi)において実施する。
【0114】
並行して、各群のそれぞれの個人(i)の体重曲線を、解釈の際に、大きすぎる体重減少または体重増加(研究の開始前に測定した体重に対して個人の体重における±3kgの変化)を受けた個人に関する測定データを除くために管理する。体重変化が実験の開始前に測定した初期体重よりも±3kg越える個人の数を(j)と表す。次に、測定値が解釈される集団である各群における個人の集団Nを、式:N=20−jに従って計算する。
【0115】
したがって、各群のそれぞれのメンバー(i)において以下を測定する:
− 実験の開始前の乳房の側面の皮下組織の厚さ(ML0i);
− 28日間の実験の終了時の乳房の側面の皮下組織の厚さ(ML28i);
− 実験の開始前の乳房の上前面の皮下組織の厚さ(MSA0i);
− 28日間の実験の終了時の乳房の上前面の皮下組織の厚さ(MSA28i);
− 実験の開始前の乳房の下前面の皮下組織の厚さ(MIA0i);
− 28日間の実験の終了時の乳房の下前面の皮下組織の厚さ(MIA28i)。
【0116】
次に、各群のそれぞれのメンバーにおいて以下を計算する:
− 式による乳房の側面の皮下組織の厚さの変化(ΔMLi):ΔMLi=ML28i−ML0i;
− 式による乳房の上前面の皮下組織の厚さの変化(ΔMSAi):ΔMSAi=MSA28i−MSA0i;
− 式による乳房の下前面の皮下組織の厚さの変化(ΔMIAi):ΔMIAi=MIA28i−MIA0i。
【0117】
結果の表示
次に、上記に示した、取られた測定値に基づいて、以下を各群において計算する:
− 式による乳房の側面の皮下組織の厚さの平均変化(ΔMLm):
ΔMLm=[Σ(ΔMLi)]/N;
− 式による乳房の上前面の皮下組織の厚さの平均変化(ΔMSAm):
ΔMSAm=[Σ(ΔMSAi)]/N;
− 式による乳房の下前面の皮下組織の厚さの平均変化(ΔMIAm):
ΔMIAm=[Σ(ΔMIAi)]/N;
− 式による実験を開始する前の乳房の側面の皮下組織の平均厚さ[平均(ML0)]:
[平均(ML0)]=[Σ(ΔML0i)]/N;
− 式による実験を開始する前の乳房の上前面の皮下組織の平均厚さ[平均(MSA0)]:
[平均(MSA0)]=[Σ(MSA0i)]/N;
− 式による実験を開始する前の乳房の下前面の皮下組織の平均厚さ[平均(MIA0)]
[平均(MIA0)]=[Σ(MIA0i)]/p;
− 式による乳房の側面の皮下組織の厚さにおける増加のレベル(IML):
(IML)=[ΔMLm/平均(ML0)]×100;
− 式による乳房の上前面の皮下組織の厚さにおける増加のレベル(IMSA):
(IMSA)=[ΔMSAm/平均(MSA0)]×100
− 式による乳房の下前面の皮下組織の厚さにおける増加のレベル(IMIA):
(IMIA)=[ΔMIAm/平均(MIA0)]×100。
【0118】
得られた結果
群(I)および(II)において実施された測定の結果、すなわち、ΔMLm、ΔMSAm、ΔMIAm、IML、IMSAおよびIMIAを、下記の表7に報告する。
【表7】

【0119】
N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む水中油エマルジョン(E1)を乳房に適用した群(I)の個人の乳房の上前面の皮下組織の厚さの増加レベル(IMSA)は、5%になり、一方、乳房の上前面の皮下組織の厚さの同じレベルの増加では(IMSA)、2%の値が、N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含まない水中油エマルジョン(E2)を乳房に適用した群(II)の個人において計算された。
【0120】
群(I)の個人では1.14mmの乳房の上前面の皮下組織の厚さにおける平均増加(ΔMSAm)も、群(II)の個人の0.35mmの値と比較して観察される。
【0121】
群(I)の個人での乳房の上前面の皮下組織の厚さにおけるこの有意な増加は、乳房の下前面の皮下組織の厚さの安定性(ΔMIAm=+0.42mm)および乳房の側面の皮下組織の厚さの安定性(ΔMLm=+0.13mm)を伴う。
【0122】
結果の解釈
乳房の側面の皮下組織の厚さの平均増加は、一連の値(ML28i)が値(ML0i)と統計的に異なる場合に有意であると考慮される。
【0123】
乳房の上前面の皮下組織の厚さの平均増加は、一連の値(MSA28i)が値(MSA0i)と統計的に異なる場合に有意であると考慮される。
【0124】
乳房の下前面の皮下組織の厚さの平均増加は、一連の値(MIA28i)が値(MIA0i)と統計的に異なる場合に有意であると考慮される。
【0125】
これらの3つのパラメーターの有意性を評価するのに使用された統計分析は、不等分散を想定する両側スチューデント検定である。したがって、一連の値(ML28i)、(MSA28i)および(MIA28i)を、一連の値(ML0i)、(MSA0i)および(MIA0i)とそれぞれ比較する。誤差限界値(p)を5%に設定する。
【0126】
pが0.05以下である場合、一連の値(ML28i)、(MSA28i)および(MIA28i)は、一連の値(ML0i)、(MSA0i)および(MIA0i)とそれぞれ有意に異なると考慮される。したがって、乳房の側面および/または乳房の上前面および/または乳房の下前面の皮下組織の厚さに有意な増加があると結論付けることが可能である。
【0127】
pが0.05よりも厳密に大きい場合、一連の値(ML28i)、(MSA28i)および(MIA28i)は、一連の値(ML0i)、(MSA0i)および(MIA0i)とそれぞれ有意に異なると考慮されない。したがって、乳房の側面および/または乳房の上前面および/または乳房の下前面の皮下組織の厚さに有意な増加があると結論付けることが可能ではない。
【0128】
結論
したがって、水中油エマルジョン(E1)におけるN−ヘキサデカノイルイソロイシンの存在は、乳房の上前面の皮下組織の厚さを有意な方法で増加することを可能にし、この増加が乳房の下前面の皮下組織の厚さおよび/または乳房の側面の皮下組織の厚さに害を生じないことを、これらの結果から導き出すことができる。したがって、N−ヘキサデカノイルイソロイシンの使用は、乳房に対する「膨化」効果をこれらの個人に与えることを可能にする。
【0129】
b3−縞投影技術を使用する乳房容量の増加に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの効果の評価
プロトコール
これらの評価を、志願者6人の2つの等しい群(群IIIおよび群IV)に分けた、セクションb1)およびb2)に記載した前の評価に使用した集団のうち志願者12人の無作為分集団で実施した。群(III)のそれぞれのメンバーは、エマルジョン(E1)を両方の乳房に1日2回、28日間適用し、群(IV)のそれぞれのメンバーは、エマルジョン(E2)を両方の乳房に1日2回、28日間適用した。
【0130】
これらの評価は、実験の開始前およびエマルジョン(E1)と(E2)の適用後の28日間の終わりにおいて、各群のそれぞれのメンバー(i)の乳房の容量を測定することからなった。
【0131】
実験は、3D Primos Body(商標)の名称で販売されている干渉縞投影プロフィロメーターを使用して、エマルジョン(E1)または(E2)の28日間の適用前後に、各群のそれぞれのメンバー(i)の乳房の三次元画像を記録することからなった。この装置は、測定領域300mm×200mm、方位分解500マイクロメーター、方位分解30マイクロメーター以上、データ取得時間140ミリセカンド以上により特徴付けられ、2つの光線を分析される表面に投射することを可能にし、得られた画像を2台のカメラにより角度20°で記録する。次に、「3D Primos Body(商標)」に組み込まれた計算ソフトウエアは、前に記録された三次元画像に存在するそれぞれの領域の容量を計算することを可能にする。
【0132】
次に、上記に定義された群(III)および(IV)のそれぞれのメンバー(i)において以下を計算する:
− 実験の開始前に記録した三次元画像の該当乳房の容量(V0i);
− 28日間の実験の終了時に記録した三次元画像の該当乳房の容量(V28i)。
【0133】
次に、上記に定義された群(III)および(IV)のそれぞれのメンバー(i)において、該当乳房の容量の変化ΔViを式に従って計算する:
ΔVi=(V28i)−(V0i)。
【0134】
結果の標示
上記に示した、実施した測定に基づいて、次に、以下をそれぞれの群において計算する:
− 式による乳房の容量の平均変化(ΔVm):
(ΔVm)=[Σ(ΔVi)]/6;
− 式による実験の開始前の乳房の容量の平均[平均(V0)]
[平均(V0)]=[Σ(MV0i)]/6;
− 式による乳房の容量の増加レベル(IV):
(IV)=[(ΔVm)/[平均(V0)]]×100。
【0135】
得られた結果
群(III)および(IV)で得られた結果、すなわちΔVmおよびIVを、下記の表8に報告する。
【表8】

【0136】
N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む水中油エマルジョン(E1)を乳房に適用した群(III)の個人の乳房の容量の平均増加(ΔVm)は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含まない水中油エマルジョン(E2)を乳房に適用した群(IV)の個人において非有意であると判断される−0.5cmの変化と比較して、2.6cmになる。同様に、乳房の容量の増加レベル(IV)は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含まない水中油エマルジョン(E2)を乳房に適用した群(IV)の個人の0%の値と比較して、N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む水中油エマルジョン(E1)を乳房に適用した群(III)の個人では+1.0%と計算された。
【0137】
結果の解釈
一連の値(V28i)が値(V0i)と統計的に異なる乳房の容量の平均増加は、有意であると考慮される。有意性を評価するのに使用した統計分析は、スチューデント検定である。
【0138】
乳房容量における増加の有意性を評価するのに使用した統計分析は、不等分散を想定する両側スチューデント検定である。したがって、一連の値(V28i)を一連の値(V0i)と比較する。誤差限界値(p)を5%に設定する。
【0139】
pが0.05以下である場合、一連の値(V28i)は一連の値(V0i)と有意に異なると考慮される。したがって、乳房容量に有意な増加があると結論付けることができる。pが0.05よりも厳密も大きい場合、一連の値(V28i)は一連の値(V0i)と有意に異なると考慮されない。したがって、乳房容量に有意な増加があると結論付けることが可能ではない。
【0140】
結論
したがって、水中油エマルジョン(E1)におけるN−ヘキサデカノイルイソロイシンの存在が、群(III)のメンバーの乳房の容量を有意な方法で増加することを可能にすると、これらの結果から導き出すことができる。
【0141】
b4− 一般的結論
実験セクションb1)、b2)およびb3)において実証された実験結果は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む化粧用組成物の乳房への適用が、該当の個人において、胸囲測定値と、乳房の上面の皮下組織の厚さと、乳房容量において有意な増加を得ることを可能にすることを実証する。事実、N−ヘキサデカノイルイソロイシンの使用およびN−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む化粧用組成物の乳房への適用は、該当の個人の乳房に「ボリューム増加」効果および「膨化」効果を生じることを可能にした。
【0142】
2.2− 成熟した皮膚を有する個人の顔に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む化粧用組成物の皮膚の弾性における改善および「膨化」効果の実証
a)− N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む水中油エマルジョン(E3)および「プラセボ」水中油エマルジョン(E4)の調製
エマルジョン(E3)および(E4)を以下のように調製する:
− 工程1):油相の成分および乳化系を80℃の温度でビーカーに連続的に導入し、均質混合物を形成するように、「アンカー」型スピンドルを取り付けた撹拌機を80rpmの速度、80℃の温度で使用する機械的撹拌に15分間付す。
【0143】
− 工程2):増粘ポリマーを、工程1)の最後に得た混合物に80℃の温度で加え、水相は、この成分を周囲温度で混合することにより前もって調製する。次に、得られた混合物をSilverson社から販売されている回転子固定子乳化装置による3000rpmの速度、80℃の温度で4分間の撹拌に付す。
【0144】
− 工程3):工程2)の最後に得た混合物を、10分間かけて30℃の温度に冷却し、「アンカー」型スピンドルを取り付けた機械式撹拌機により80rpmの速度で、冷却している間ずっと撹拌を保持する。
【0145】
− 工程4):次に、Sepicide(商標)LD防腐剤、クロルフェネシン防腐剤および「プチフルール」(“Petite Flueur”)香料を、工程3)からもたらされた混合物に30℃の温度で加える。次にpHを、50%トリエタノールアミンの添加により6.0の値に調整する。
【0146】
水中油エマルジョン(E3)および(E4)は以下の組成(重量に基づく)を有する。
【表9】

【0147】
b)−成熟した皮膚を有する個人の顔に対する水中油エマルジョン(E3)および(E4)の「膨化」効果および皮膚の弾性における改善の評価
成熟した皮膚を有する個人の顔に対する水中油エマルジョンの「膨化」効果および皮膚の弾性における改善の評価は、以下の基準を測定することにより実施する:
− Primos Body(商標)を使用した頬骨の高さでの顔の容量の変化;
− Ballistometer(商標)を使用した顔の皮膚の生体力学的特性。
【0148】
頬骨の高さでの顔の容量の変化と顔の皮膚の生体力学的特性についての評価を、志願者7人の2つの等しい群(群Vおよび群VI)に分けた、平均年齢が58歳であり、顔にたるんだまたはくぼんだ皮膚を有する14人の女性志願者の集団において実施した。群(V)のそれぞれのメンバーは、エマルジョン(E3)を顔に1日2回、56日間適用し、群(VI)のそれぞれのメンバーは、エマルジョン(E4)を顔に1日2回、56日間適用した。
【0149】
b1−縞投影技術(Primos Body(商標))を使用する頬骨の高さでの顔におけるN−ヘキサデカノイルイソロイシンの「膨化」効果の評価
プロトコール
この評価は、実験の開始前およびエマルジョン(E3)と(E4)の適用後の56日間の終わりにおいて、各群のそれぞれのメンバー(i)の顔の容量を測定することからなった。
【0150】
実験は、3D Primos Body(商標)の名称で販売されている干渉縞投影プロフィロメーターを使用して、エマルジョン(E3)または(E4)の56日間の適用前後に、各群のそれぞれのメンバー(i)の顔の三次元画像を記録することからなった。この装置は、測定領域300mm×200mm、方位分解500マイクロメーター、方位分解30マイクロメーター以上、データ取得時間140ミリセカンド以上により特徴付けられ、2つの光線を分析される表面に投射することを可能にし、得られた画像を2台のカメラにより角度20°で記録する。次に、「3D Primos Body(商標)」に組み込まれた計算ソフトウエアは、前に記録された三次元画像に存在するそれぞれの領域の容量を計算することを可能にする。
【0151】
次に、上記に定義された群(V)および(VI)のそれぞれのメンバー(i)において以下を計算する:
− 実験の開始前に記録した三次元画像の頬骨の高さでの頬の容量(W0i);
− 56日間の実験の終了時に記録した三次元画像の頬骨の高さでの頬の容量(W56i)。
【0152】
結果の表示
次に、上記に定義された群(V)および(VI)のそれぞれのメンバー(i)において以下を計算する:
− 式による該当乳房の容量の変化、ΔWi:
ΔWi=(W56i)−(W0i)
− 式による頬骨の高さでの頬の容量の平均変化(ΔWm)
(ΔWm)=[Σ(ΔWi)]/7
結果
群(V)および(VI)から得た結果、すなわち(ΔWm)を、下記の表10に報告する。
【表10】

【0153】
N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む水中油エマルジョン(E3)を頬に適用した群(V)の個人の頬骨の高さの頬での容積の平均増加(ΔWm)は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含まない水中油エマルジョン(E4)を頬に適用した群(VI)の個人における統計的に有意であると考慮されない+0.276mlの増加に対して、0.784mlになる。
【0154】
結果の解釈
一連の値(W56i)が値(W0i)と統計的に異なる頬骨の高さでの頬の容量の平均増加は、有意であり、膨化効果の特徴であると考慮される。
【0155】
有意性を評価するのに使用された統計分析は、不等分散を想定するスチューデント検定である。pが0.05以下である場合、一連の値(W56i)は、一連の値(W0i)と有意に異なると考慮される。したがって、頬骨の高さの頬での容量に有意な増加があると結論付けることが可能である。pが0.05よりも厳密に大きい場合、一連の値(W56i)は一連の値(W0i)と有意に異なると考慮されない。したがって、頬骨の高さでの頬の容量に有意な増加があると結論付けることは可能ではない。
【0156】
結論
したがって、水中油エマルジョン(E3)におけるN−ヘキサデカノイルイソロイシンの存在は、群(V)のメンバーの頬骨の高さでの頬の容量を有意な方法で増加することを可能にし、したがって群(V)のこれらの個人の顔に有意な「膨化」効果を誘導すると、これらの結論から導き出すことができる。
【0157】
b2−Ballistometer(商標)を使用する頬骨の高さでの顔の皮膚に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの皮膚の弾性に対する肯定的な効果の評価
プロトコール
皮膚の生体力学的特性の研究は、皮膚に適用された後の組成物の軟化および/または緊張効果を決定することを可能にする。
【0158】
現行の技術は、皮膚の吸引(Cutometer(商標)の使用)、ねじれ(Dermal Torque Meter(商標))もしくは伸張(伸張計)の作用または皮膚への小型球(Ballistometer(商標))の跳ね返りの後の生体力学的特性における変化を研究することに基づく。これらの技術は、正確で素早い信頼性のある結果と、個人の皮膚に外傷を与えない使用プロトコールを得ることを可能にする。
【0159】
皮膚は、2つのレオロジー特性を有する:
− 弾性特性;
− 人体の多様な領域において異なる張力特性。
【0160】
皮膚のレオロジー特性は、コラーゲンとエラスチンの線維の三次元網状組織から実質的になるその構造に基づいている。
【0161】
頬骨の高さでの顔の皮膚の生体力学的特性の変化に対するN−ヘキサデカノイルイソロイシンの効果を評価するために、Ballistometer(商標)を使用する測定を実施することを選択した。Ballistomer(商標)は、皮膚の弾性成分における変化を説明することを可能にする。
【0162】
本発明の研究の文脈において実施される評価は、Dia−Stron社により販売されているBLS 780 Ballistometer(商標)により実施した。
【0163】
BLS 780 Ballistometer(商標)は、データ収集ソフトウエアを備えた制御ユニットに接続している手動プローブからなる。手動プローブは、ねじれシャフトに取り付けられたアルミニウム合金製の剛性アームを含有し、前記剛性アームの末端部は、直径2mmの振動球体である。
【0164】
プローブの振動球体が、試験される皮膚の表面と接触するとき、試験される皮膚の表面は、抵抗力を発し、ねじれシャフトのバネに振動運動を誘導する。次にこの振動運動は、制御ユニットにより記録され、関連するソフトウエアにより処理される。したがってこの装置は、試験される皮膚の表面に振動球体が適用された後に得られる跳ね返りおよびその制動、また関連するエネルギーを記録することを可能にする。
【0165】
次に中央ユニットに関連するソフトウエアは、機械的エネルギーの減衰率を説明する「アルファパラメーター」を含む多様なパラメーターを計算することを可能にする。この「アルファパラメーター」の高い値は、試験される皮膚の表面の強い弾性を特徴付ける。「アルファパラメーター」の経時的な増加は、皮膚の引き締まりを立証する。
【0166】
本発明の研究の主題である実験において、皮膚の生体力学的特性は、エマルジョン(E3)または(E4)を56日間適用する前後に、頬の頬骨の前記領域にBallistometer(商標)のプローブを適用することにより、頬の頬骨の高さで評価する。この適用の後、次に、上記に定義された群(V)および(VI)のそれぞれのメンバー(i)において以下を測定する:
− 実験の開始前の頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」(α0i)、
− 56日間の実験の終了日の頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」(α56i)。
【0167】
結果の表示
次に、上記に定義された群(V)および(VI)のそれぞれのメンバー(i)において以下を計算する:
− 式による頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」の変化(Δαi):
(Δαi)=(α56i)−(α0i)
および各群において以下の計算する:
− 式による頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」の平均変化(Δαm):
(Δαm)=[Σ(Δαi)]/7
− 式による実験の開始前の頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」の平均[平均(α0)]:
[平均(α0)]=[Σ(Mα0i)]/7
− 式による頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」の変化の程度(Cα):
(Cα)=(Δαm)/[平均(α0)]×100。
【0168】
得られた結果
群(V)および(VI)で得られた結果、すなわち、頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」の平均変化(Δαm)および頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」の変化の程度(Cα)を、以下の表11に報告する。
【表11】

【0169】
N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む水中油エマルジョン(E3)を頬に適用した群(V)の個人の頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」の平均変化(Δαm)は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含まない水中油エマルジョン(E4)を頬に適用した群(VI)の個人における変化なし((Δαm)=0)と比較して、−0.005である。
【0170】
同様に、頬骨の高さでの頬の皮膚の「アルファパラメーター」の変化の程度(Cα)は、群(VI)の個人における+1.0%に対して、群(V)の個人では−10%と評価された。
【0171】
結果の解釈
一連の値(α56i)が値(α0i)と統計的に異なる「アルファパラメーター」の平均増加は、有意であると考慮され、頬骨の高さでの頬の皮膚の弾性における改善の特徴である。有意性を評価するのに使用された統計分析は、不等分散を想定するスチューデント検定である。pが0.05以下である場合、一連の値(α56i)は、一連の値(α0i)と有意に異なると考慮される。したがって、頬骨の高さでの頬の皮膚の弾性に有意な増加があると結論付けることができる。pが0.05よりも厳密に大きい場合、一連の値(α56i)は一連の値(α0i)と有意に異なると考慮されない。したがって、頬骨の高さでの頬の皮膚の弾性に有意な増加があると結論付けることができない。
【0172】
結論
したがって、水中油エマルジョン(E3)におけるN−ヘキサデカノイルイソロイシンの存在は、群(V)のメンバーの頬骨の高さでの頬の皮膚の弾性の改善を有意に誘導することを可能にしたと、これらの結果から導き出すことができる。
【0173】
b3− 一般的結論
本発明の章2.2の実験セクションb1)およびb2)に実証された実験結果は、N−ヘキサデカノイルイソロイシンを含む化粧料組成物の顔への適用が、該当の個人において、頬骨の高さでの頬の皮膚の弾性に「膨化」効果と改善を有意に誘導するのを可能にすることを示す。
【0174】
記載に引用された参考文献:
− Dumontら:Analysis of the implications of the adipose tissue in facial morphology,from a revue of the literature and dissections of 10 half−faces.Annales de chirurgie plastique esthetique[Annals of cosmetic plastic surgery].2007年;52:169〜205頁。
【0175】
− Feveら:La differenciation adipocytaire:tout un programme...M/S[Adipocyte diffrentiation:an entire program...M/S].1998年;14:848〜57頁。
【0176】
− Gregoireら:Understanding adipocyte differentiation.Physiological reviews.1998年7月;78(3):783〜809頁。
【0177】
− Guoら:Aging results in paradoxical susceptibility of fat cell progenitors to lipotoxicity.Am J Physiol.Endocrinol.Metab.2006年12月:1〜54頁。
【0178】
− Karagiannidesら:Altered expression of C/EBP family members results in decreased adipogenesis with aging.Am J Physiol Regulatory Integrative Comp Physiol.2001年1月;280:R1772〜80頁。
【0179】
− karagiannidesら:Increased CUG triplet repeat−binding protien−1 predisposes to impaired adipogenesis with aging.J Biol Chem.2006年8月;281(32):23025〜33頁。
【0180】
− Kirklandら:Adipogenesis and aging:does aging make fat go MAD?Exp Gerontol.2002年6月;37(6):757〜67頁。
【0181】
− Smithら:The adipocyte life cycle hypothesis.Clinical Science.2006年;110:1〜9頁。
【0182】
− Yuら:Chronological changes in metabolism and functions of cultured adipocytes:a hypothesis for cell aging in mature adipocytes.Am J Physiol Endocrinol Metab.2004年3月;286:402〜410頁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの皮膚用の「ボリューム増加」剤および/または「膨化」剤としての、式(I):
CH−(CH14−C(=O)−NH−CH(COOH)−CH(CH)−CH−CH (I)
のN−ヘキサデカノイルイソロイシンの化粧使用。
【請求項2】
乳房、顔、頬、臀部および眼瞼から選択される人体の部分の皮膚において「ボリューム増加」および/または「膨化」効果を得るための化粧処置方法であって、前記部分に、N−ヘキサデカノイルイソロイシンの有効量を含む化粧用組成物を適用することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2013−500317(P2013−500317A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522217(P2012−522217)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051550
【国際公開番号】WO2011/015758
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(398057293)ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピック (27)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’EXPLOITATION DE PRODUITS POUR LES INDUSTRIES CHIMIQUES SEPPIC
【Fターム(参考)】