説明

ヒトの骨盤領域の開口部の機能を測定するためのプローブシステム、プローブ、および方法

ヒトの骨盤領域の開口部(16、20)の機能を測定するために開口部(16、20)に挿入される細長いプローブ(4;54)が提供される。プローブ(4;54)は、開口部(16、20)を取り囲む組織内の受容体(23、25)を刺激するための1つ以上の電極(5a−6a、5b−6b、6a−7a、6b−7b;55a−56a、55b−56b、56a−57a、56b−57b、57a−92a、57b−92b)と、開口部(16、20)を取り囲む組織による圧力付与を引き起こす筋活動を感知するための1つ以上の筋活動センサ(8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、1ib、lie、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c、62)とを備える。プローブ(4;54)に接続された制御システム(1)は、神経刺激信号(35)を1つ以上の電極に出力し、この神経刺激信号の出力直後の期間に1つ以上の圧力センサからの1つ以上の圧力信号を記録するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの骨盤領域の開口部の機能を測定するためのプローブシステムおよびプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
便および尿の失禁は、かなりの困惑、不快感、および苦悩を伴う広範な問題である。現在の治療は、外科、運動、および薬物療法である。ただし、かなりの研究努力にも拘らず、このような治療の成功率は、特に失禁が明らかに十分な肛門管圧力および直腸充満感と同時に起こる場合は、これまで極めて低かった(ローラン・シュリプディス(Laurent Shripoudhis)ら著「正常な肛門管圧力での便失禁:落とし穴はどこに(Fecal Incontinence with Normal Anal Canal Pressures: Where is the Pitfall)」、アメリカン・ジャーナル・オブ・カストロエンテロロジー(Am J Gastroenterol)94、p.1556〜1563、1999年を参照)。
【0003】
失禁または便秘を引き起こす泌尿器または肛門の機能不全など、ヒトの骨盤領域における制御機能の疾患は一般に筋疾患に起因し、不十分な筋力または持久力をもたらす。これらの筋肉を鍛えて患者の骨盤領域の筋力を向上させるために、骨盤底領域の筋肉に機能的電気刺激をもたらす各種プローブが開発されている。このようなプローブは、機能不全と診断された開口部の領域の筋肉を刺激するために、膣内または肛門直腸内に挿入される。
【0004】
欧州特許出願公開第0366163号は、電気刺激治療装置を患者に適正に取り付けることを主目的として、さらには診断および治療監視のために、電気刺激中に圧力および筋電図 (Electromyography)(EMG)を記録するために膣内または直腸内で使用されるプローブを開示している。このプローブは、骨盤底筋の収縮を検出するための液圧式または電気式のどちらかの圧力センサを具備する。骨盤底筋を刺激するために、各電極はこれらの圧力センサのうちの1つに隣接して配置される。ビヒクルの近位端にある目盛り線は、医師が筋肉の最大収縮力をもたらすビヒクルの挿入深さを判定する際に役立つ。
【0005】
ただし、感覚も骨盤開口部の機能性に役割を果たす。例えば、糞便管については、直腸充満感と肛門サンプリング感とを識別できる。肛門サンプリング感は、気体、液体、および固形便の区別を可能にする。P.M.A.ブローエンス(Broens)の論文「肛門直腸感覚能(Anorectal sensibility)」、ルーヴァン・カトリック大学(KU Leuven)、ベルギー2003年、には、サンプリングは、直腸の充満または収縮に応じて肛門管近位部の圧力低下を伴う内括約筋の弛緩に関係することが示されている。直腸バルーンの漸次膨張によって直腸充満をシミュレートしながら、さまざまレベルの感覚を引き起こす体積および圧力が記録された。神経刺激に応じて患者が報告するような充満感がテストされたが、直腸を充満させる体積または圧力のパラメータに応じて報告された充満感との相関関係は見出されなかった。充満感レベルの感知には、特定の種類の受容体が関わっていることが示唆されている。さらに、別個の排便用受容体の存在の可能性が言及されているが、電気知覚能力テストで測定可能であることは見出されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、ヒトの骨盤領域の開口部の機能性に関連するインジケータを測定するための解を提供することである。
【0007】
本発明によると、この目的は、請求項1に記載のプローブシステムを提供することによって達成される。本発明は、請求項9に記載のプローブおよび請求項20に記載の方法においても具体化可能である。
【0008】
ヒトの骨盤領域開口部の受容体を含む組織を神経刺激信号にさらし、ヒトの開口部の組織によって加えられる圧力が受容体の刺激によって如何に影響されるかを少なくともこの刺激直後の期間に測定および記録することによって、これら受容体の刺激に応じた反射(またはこのような反射の不在)として表されるような、神経受容体、経路、および界面を巻き込んだ刺激応答関係のさまざまな側面を記録することができる。測定された反射の特性は、その後、知覚された開口部の機能不全性の原因を診断するためのインジケータとして使用可能である。本願明細書の文脈において、神経刺激信号は、この神経刺激信号の印加に用いられた電極に最も近い粘膜下受容体を介して局所的に感知される刺激信号を構成すると理解される。このような神経刺激信号が直接筋肉刺激信号と区別される点は、1つ以上の筋肉への筋肉刺激信号の直接印加によって引き起こされるような筋活動を直接引き起こすには神経刺激信号は弱すぎる、および/または小さすぎるという点である。
【0009】
本発明の具体的な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明の他の目的、特徴、効果、および詳細は、以下の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるプローブを含む本発明によるプローブシステムの一例の概略図であり、プローブが側面図で示されている。
【図2】図1の線II−IIに沿った断面図である。
【図3】図1の線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】図1の線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】図1に示されている例のプローブが内部に挿入されたヒトの骨盤領域の中心部分の冠状面に沿った概略断面図である。
【図6】本発明による別のプローブが挿入されたヒトの骨盤領域の中心部分の冠状面に沿った概略断面図である。
【図7】測定された刺激と経時変化する応答信号との間の関係の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜4には、制御システム1と、信号転送線2、3と、プローブ4とで構成されたプローブシステムの一例が示されている。本例によるプローブ4は、直径0.5cmの円筒状シャンク44を有する。シャンクの直径は、0.25cmと2cmの間であることが好ましい。プローブ4の遠位端13から5cmの距離においてストップ15がシャンク44から半径方向に突出し、一定の最大挿入深さまで挿入されたプローブ4を確実に保持するための当接部を構成する。肛門管の関連区域における測定のために十分な挿入深さを保証するために、ストップからプローブの遠位端までの距離は、少なくとも3.5cmであることが好ましく、少なくとも4cmであることがより好ましい。
【0013】
「近位」および「遠位」という用語がプローブの部分の位置を指している場合、これらの用語「遠位」および「近位」はプローブに関連して用いられていることに留意されたい。取っ手28から離れる方向に向いた、挿入時に先頭になるように意図された端部13は、プローブの遠位端を構成する。「近位」および「遠位」という用語が開口部および周囲組織の部分の位置に言及している場合、用語「遠位」および「近位」は、中心から胴体の外側に離れる方向および胴体の内側に向かう方向を意味するものとして使用されている。
【0014】
プローブ4は、刺激対象の組織に接触させる電極接点5a、5b、6a−6b、7a、7bをさらに担持する。接点5a、5b、6a−6b、7a、7bは2列に配置されてプローブ4のシャンク44の両側面に設けられる。制御システム1は、プローブの一方の側面にある個々の電極または電極サブグループから、またはプローブの両側面の複数の電極から同時に、神経刺激信号35を選択的に出力する。
【0015】
図示の電極は双極型であり、各電極は一対の電極接点5a−6a、5b−6b、6a−7a、および6b−7bによって構成される。したがって、本例においては、隣接する双極電極5a−6aおよび6a−7a、ならびに隣接する双極電極5b−6bおよび6b−7bは、共通の電極接点6aおよび6bを共有する。これらの電極は、各電極が単一の電極接点によって構成された単極型でもよいが、このような電極接点は、通常、刺激信号が効果的に印加される位置の制御精度を下げる。2つを超える数の電極または全ての電極が1つの共通の電極接点、例えば複数の非共有電極接点に沿って長手方向に延在する1つの接点、を共有するようにすることも考えられる。
【0016】
プローブ4は、シャンク44の周囲に周方向に分散された4つの軸方向列に配置された筋活動センサ8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12c(図1〜4に見える筋活動センサが全てではない)をさらに備える。
【0017】
本願明細書の各例において、筋活動センサは、検査中の開口部を取り囲む組織によってセンサに加えられた圧力を感知する圧力センサである。ただし、他の種類の筋活動センサ、例えばセンサの近傍における筋活動、より具体的には筋収縮、の目安としてEMGを測定する回路に接続された電極など、を設けることも可能である。筋活動を感知する電極は、感知回路のみに結合された個別の電極でもよく、あるいは感知および信号出力の両回路に、例えばスイッチを介して、結合可能な電極でもよい。
【0018】
大半の用途には、より少ない数の列、例えばリング状にしうる単一の圧力センサ列、または、好ましくはシャンク部分の両側面に設けられた、2つの圧力センサ列を設けてもよい。逆に、長手方向および周方向の両方における圧力分布画像をより高い解像度で得るために、より多くの数の圧力センサを設けることもできる。本例において、各圧力センサは、加えられた圧力に応じて電気信号を生成するトランスデューサを構成する。ただし、これらの圧力センサは異なる設計でもよく、例えば、液体を収容したチャンバを取り囲む複数の膜または他の変位可能な壁によって構成されたセンサの形態でもよい。この場合、チャンバの内部は、このチャンバを取り囲むトランスデューサと連通するか、または導管を介してトランスデューサと連通する。
【0019】
制御システム1は、データ処理部31と、信号発生器32と、信号処理回路33とを備える。信号発生器32はデータ処理部31に接続され、さらに、信号供給線2を介して、電極5a−6a、6a−7a、5b−6b、および6b−7bに接続される。信号処理回路33はデータ処理部31に接続され、さらに、信号取り出し線3を介して、圧力センサ8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12cに接続される。データ処理部31には、刺激信号、または少なくともその出力時刻、を表すデータを保存するために、さらには各刺激信号の印加直後好ましくは少なくとも30秒間、より好ましくは1分間、経時的に測定された圧力を保存するために、メモリ34が接続される。測定された圧力を表す信号は、周期的サンプリングによって、または信号の連続読み出しとして、得ることもできる。信号発生器32は、デジタル命令をアナログ神経刺激信号に変換するデジタル/アナログ変換器を備えうる。信号処理回路33は、圧力センサからのアナログ信号を測定された圧力を表すデジタル符号に変換するアナログ/デジタル変換器を備えうる。本例において、信号発生器31と信号処理回路32とは、データ処理部31と同じ筐体内に配置され、ケーブルを介してプローブに接続される。ただし、一方のプローブ4と他方の信号発生器31および信号処理回路32との間の無線通信のために、送信機と受信機とを設けることも考えられる。信号発生器と信号処理回路とをデータ処理部とは別個に、例えばプローブの筐体内に、配置することも考えられる。この場合、一方のデータ処理部と他方の信号発生器および信号処理回路との間の通信は、例えばBluetoothまたはWifi(IEEE802.11)規格に規定されているようなローカルエリア無線接続プロトコルを介した、有線または無線のどちらかのデジタル形態にしうる。
【0020】
本例においては、個々のワイヤがそれぞれ1つの電極接点5a、5b、7a、および7bに接続され、中心の電極接点6a、6bが同じ導体に接続されるため、各電極5a−6a、5b−6b、6a−7a、および6b−7bの個別制御が可能であり、これらの電極のうちの特定の電極のみを介して刺激信号を印加可能である。同様に、各圧力センサ8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12cは、各圧力センサからの圧力信号を個別に受信する信号処理回路32に接続される。(好ましくは電気または光)圧力信号は、その圧力信号の送信元である個々の圧力センサによってそれぞれ感知された1つ以上の圧力を表す。各電極および各圧力センサへの個別接続の代わりに、各圧力センサを多重信号転送用の共通の信号バスシステムに接続してもよい。
【0021】
出力される神経刺激信号の記録は、出力時刻の記録によって構成されうる。例えば、信号の経時的記録によって構成してもよく、あるいは信号の出力が開始されたとき、最大値に到達したとき、終了したときの時点または期間、またはこの間の何れかの時点、の単なる記録によって構成してもよい。ただし、これらの神経刺激信号が所定の順序で所定の、例えば開始時刻に関連した、タイミングで出力されるようにすることも可能である。この場合、神経刺激信号とそのタイミングとは、少なくとも開始時刻に関連して、事前に定められるため、開口部の機能性を測定するたびに記録する必要はない。特定の遅延回路がない場合は少なくとも、本願の各測定のために、制御システム1による神経刺激信号の出力時点をその信号が電極の位置に印加された時点と同じ時点であると事実上見なすことができることに留意されたい。
【0022】
制御システム1のデータ処理部31は、各圧力センサ8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12cから受信した信号を個別に記録すると共に、測定された圧力信号を取り出した期間の直前の刺激信号に各圧力信号または圧力信号群を対応付けるように構成される。好ましくは、データ処理部は、出力された各神経刺激信号とこの神経刺激信号に応じて受信された対応する応答信号との間の時間遅延、ならびに圧力信号によって表された圧力パルスのピークレベル、平均レベル、および持続時間を求めるようにさらに構成される。
【0023】
ストップ15の近位側にあるプローブ4の近位側取っ手部28には、プローブ4の長手方向軸31に平行なプローブ4の対称面32を示すマーキング30a、30bが設けられる。対称面32は、患者の矢状面に対して平行に向けられることが好ましい。
【0024】
図5には、直腸20とこれに隣接する肛門管16とが貫通延在するヒトの骨盤領域の中心部分が、肛門管16と直腸20の下位部に挿入された図1〜4のプローブ4と共に、示されている。肛門管16においては、肛門管遠位部17と、肛門縁18と、肛門管近位部19とを識別可能である。肛門管16は上皮と粘膜下組織の形態の肛門壁26によって取り囲まれており、直腸20も上皮と粘膜下組織の形態の直腸壁27によって取り囲まれている。例示のために、肛門壁26はシャンク44から離れた状態で図示されているが、実際には肛門壁26はシャンク44に接触することになる。肛門管16と直腸20とこれらの壁26、27とを取り囲む筋肉は、外括約筋21と内括約筋22とを含む。肛門管16に沿って複数の便禁制受容体23と複数の便充満感受容体24と複数の排便受容体25がある。単語「受容体」は一般には細胞活動に関して使用されるが、本願明細書の文脈においては、単語「受容体」は、記載されている肛門管内の変化を感知できる粘膜下小体を示すために使用される。直腸20から下方の筋肉と神経と受容体とから成る解剖学的構造は、中心矢状面を中心として基本的に左右対称、ひいては鏡面対称である。排便受容体25は肛門管近位部19の上皮の下にあり、腸壁内反射経路36(図6を参照)を構成する神経を介して直腸壁の収縮を引き起こす正帰還(排便反射)をもたらす。禁制型受容体23は、肛門上皮の直下、肛門縁18の上方0.5cmから3cmの位置にある。これらの受容体23は、糞便が肛門管16に入ると刺激され、脊髄34まで延在する神経33と脊髄34から延在する神経35、すなわち脊髄反射経路33、34、35、を介して(明らかに外)括約筋21の不随意性収縮の形態での便禁制反射を強める。充満感受容体24は、他の受容体より粘膜下組織内の深い位置にある。これらの受容体24の刺激は、当人に排便の必要性を気付かせる充満感信号を誘発し、便充満感反射を大脳経由で腸に誘発させる。排便が必要になっても直ちに排便できない状況であると、骨盤底筋組織は収縮し、これにより糞便の意識的制止が可能になる。
【0025】
直腸20から肛門管近位部19への糞便の通過に応じて排便受容体25は刺激され、直腸壁27のさらなる収縮を引き起こし、これにより直腸20内の圧力上昇(排便反射)を引き起こす。この結果、肛門管16は糞便で満たされ、充満感受容体24が刺激される。その後、糞便が肛門管遠位部に達すると、禁制受容体23が刺激され、外肛門括約筋21および/または内肛門括約筋22の収縮により肛門管遠位部17の圧力が上昇し、降下した糞便の排出が防止される(禁制反射)。このため、適切に機能しているときは、直腸20経由で糞便が到達すると、複数の反射が糞便を排便可能な位置に移動させると共に、体からの糞便の排出を防止する。個体が排便に適したトイレなどの位置に達すると、この個体は外肛門括約筋21を随意的に緩め、排便可能な位置に既に移動している糞便を排出する。
【0026】
失禁は、例えば、受容体、反射経路、および/または関連の筋肉の機能不全によって引き起こされうる。便秘も受容体、反射経路、および/または関連の筋肉の、ただし通常は異なる性質の、機能不全によって引き起こされうる。このような機能不全は、神経刺激信号と、筋肉収縮によってさまざまな方法で加えられる圧力の形態としての応答との間の関係を損なう。
【0027】
図7に、説明のための例として、時間がx軸に示された電流−時間(I−t)図35と、この電流時間図35と同じ時間尺度がx軸に示された圧力−時間(P−t)図36とが示されている。本例において、刺激信号35は最遠位の電極5a−6a、5b−6bを介して印加された電流を表し、圧力信号はセンサ11a〜11cのレベルおよび最近位センサ12a〜12cのレベルに位置する複数の圧力センサによって感知された総圧力、すなわち禁制反射を示す圧力、を表す。
【0028】
受容体が正常に機能しない場合、さまざまな大きさの一連の刺激信号38が印加されたとき、有意な圧力上昇39の形態での応答を誘発する神経刺激信号の閾値37は、受容体が正常に機能する個体の場合よりかなり高いか、かなり低いかのどちらかであるが、応答遅延時間40は正常値である。脊髄反射経路が妨げられているか失われている場合、有意な圧力上昇39を誘発する神経刺激信号の閾値37は正常値であるが、応答遅延時間40は正常値より長いか、または有意な圧力上昇39がない。反射が皆無であり、個体が日中は禁制できるが、夜間のみ失禁する場合は、関連する筋肉に対する随意調節のみをその個体が有することを示しうる。筋肉の機能不全は、有意な圧力上昇39を誘発する神経刺激信号の閾値37または遅延40の大幅な変化を引き起こさないが、圧力上昇39は、通常、相対的に小さいか、持続時間41が短いか、または相対的に速やかに横ばい状態になる。重症の場合は、応答が皆無である。したがって、応答が皆無であると、理論上、機能不全の原因としていくつかの選択肢が残される。ただし、排便反射機構と禁制反射機構とは識別可能であるので、多くの場合は、これらの機構の一部については反射の特性を特定可能であるため、機能不全の原因候補を絞り込むことができる。その観点から見れば、応答が皆無である原因候補の数も、多くの場合、絞り込むことができる。例えば、一般的な神経障害は、脊髄反射経路33、34、35を介した信号伝達を伴う禁制反射機構を主に損なう。
【0029】
特に、禁制受容体23と排便受容体25とは、電気神経刺激パルスによって効果的に刺激可能である。充満感受容体24は、粘膜下組織内のより深い場所に位置し、一部が禁制受容体23および排便受容体25の背後にあるため、充満感受容体24の電気神経刺激はあまり直接的ではなく、禁制受容体23と排便受容体25の同時刺激によって容易にかく乱される傾向がある。それにもかかわらず、便充満感反射による骨盤底筋組織の収縮によって引き起こされる肛門管との間の角度の変化は、圧力パターンの特定の変化、特に背側に向いた軸方向中心の圧力センサに加わる圧力の相対的上昇、を引き起こすので、この圧力の相対的上昇を測定することができる。禁制受容体23と排便受容体25の同時刺激によって引き起こされるかく乱を少なくとも大幅に排除するには、(プローブの軸方向に離隔された複数のゾーンに刺激を加えることによって)禁制受容体23および/または排便受容体25のみの刺激の変化または刺激の圧力パターンに対する影響をさらに測定し、次に禁制受容体23および/または排便受容体25のみの刺激の変化または刺激の圧力パターンに対する影響を最初に測定された充満感受容体24の(プローブの離隔された複数のゾーンに対して軸方向中心に位置するゾーンにおける)刺激の効果から引けばよい。
【0030】
便禁制反射の機能を評価するには、ストップ15が肛門縁18に当接するまで、プローブ4を肛門管16に挿入する。肛門壁26はプローブ4を取り囲み、電極5a−6a、5b−6b、6a−7a、および6b−7bに接触する。これらの電極の少なくとも一部は、肛門壁26内の禁制受容体23に向かい合わせに位置付けられる。
【0031】
神経刺激信号を電極5a−6a、5b−6b、6a−7a、および6b−7bに選択的に出力することによって、電極5a−6a、5b−6b、6a−7a、および6b−7bに最も近い対応する神経受容体に選択的に電気刺激を与えることができる。これらの神経刺激信号は、極めて弱いので、これらの神経刺激信号の印加に用いられた電極に向かい合った、または少なくとも最も近い、粘膜下受容体を介して局所的にのみ感知される。これらの神経刺激信号は、極めて弱いので、反射に関与する筋肉の直接的な収縮応答は測定されないか、または刺激信号の印可に用いられた電極からの距離が0.5〜1cmを超える受容体によっては感知されない。これらの刺激信号が直接的な収縮応答を引き起こす直接筋肉刺激信号となることを回避するため、これらの刺激信号はアンペア数15mAにおいて、より好ましくは10mAにおいて、パルス幅1ms未満であることが好ましく、アンペア数30mA以下において、より好ましくは20mA未満において、パルス幅0.1ms未満であることが好ましい。
【0032】
これらの刺激信号の大きさは、パルス幅を例えば1μsと1000μsの間で変化させることによって、および/またはアンペア数を例えば0.5mAと15mAの間で変化させることによって、変えることができる。総パルス幅またはパルス列持続時間とアンペア数の制御は、例えば、総パルス幅またはパルス列持続時間を構成する一定期間内の複数の単位パルスを合計することによって行いうる。直接的な筋肉刺激を回避しながら神経刺激を効果的に行うには、総パルス幅またはパルス列持続時間が0.01msと100msの間であることが好ましい。
【0033】
さらに、プローブ4の位置により、組織が刺激される場所が決まる。検査対象の患者の受容体23、24、25を効果的に刺激できる領域の正確な場所は、男女間で異なるばかりでなく、個体間でも異なるので、事前には分からない。それぞれの受容体23、25を最も効果的に刺激できる電極を判定するために、(パルス幅およびアンペア数または電圧に関して)好ましくは同じ大きさの神経刺激信号を最初に電極5a−6a、5b−6bのうちの第1の電極群に選択的に出力し、その後にプローブの長手方向位置が第1の電極群とは異なる電極6a−7aおよび6b−7bのうちの次の電極群に出力することができる。信号を電極に出力する順番は、例えば遠位から近位への順、近位から遠位への順にすることができる。3つ、4つ、またはそれ以上の数の電極がプローブの長手方向の異なる位置に設けられている場合は、これらの電極を介した信号の出力は、連続する信号の出力先電極間に相対的に大きい距離がもたらされる順番で行うことができる。この順番は、その前にすぐ近くで印加された刺激信号によって引き起こされた受容体の感受性の変化に起因する人為的結果を回避するために有利でありうる。肛門管遠位部17の領域において最も強い、および/または最も安定した、応答(その応答を誘発する刺激信号の印可に用いられた電極5a−6a、5b−6bまたは電極6a−7aおよび6b−7bの近位にある圧力センサ11a、11b、11c、12a、12b、12cによって感知)を誘発した電極または電極グループは、禁制受容体23と最良の電気的接触状態にあると想定できる。応答を誘発する刺激信号の印可に用いられた電極5a−6a、5b−6bまたは電極6a−7aおよび6b−7bの遠位側にある圧力センサ8a、8b、8c、9a、9b、9cによって感知された応答は、排便受容体25が刺激されたことを示す。図2に示されている例ではこのような応答が発生する可能性は低いが、複数の排便受容体25が肛門縁18により近い患者の場合はこのような応答が発生する。
【0034】
禁制受容体23は、通常、肛門縁18の上方0.2cmから3cmの領域にある。これらの受容体23を確実に刺激できるように、プローブは、ストップ15から0.2cmと3cmの間のゾーン内の複数の異なる軸方向位置に電極を有することが好ましい。禁制受容体23を刺激可能なゾーンは、一般に、括約筋収縮が最大圧力を生じさせる肛門管16のゾーンの内側にあるため、プローブは、これら電極の全ての近位側に配置された複数の圧力センサと、これら電極の各々の近位側に隣接した複数の圧力センサとを有することが好ましい。これにより、括約筋の収縮圧力が発生する領域から禁制受容体23を効果的に刺激できる領域までの距離が短いか長いかに関係なく、発生した圧力を確実に検出できる。
【0035】
次に、これらの反射が測定される。禁制反射を測定するために、制御システム1はさまざまな大きさの神経刺激信号を、それより前に神経刺激信号を連続して選択的に印加するために用いたさまざまな電極のうち、近位側の圧力センサ11a、11b、11c、12a、12b、12cによって感知された複数の応答のうち最も強い、または最も安定した、応答を誘発した電極に出力することが好ましい。刺激信号は、例えば電極5a−6a、5b−6bに、またはより近位側の電極6a−7a、6b−7bに、供給される。次に、圧力センサ11a、11b、11c、12a、12b、12cから受信した括約筋21、22の収縮を示す信号が記録され、それぞれの刺激信号に対応付けられる。
【0036】
通常、便禁制反射の圧力応答は、対応する神経刺激信号の印加に用いられた電極から近位側に少なくとも0.5cm、大半の場合は少なくとも1cm、離して配置された複数の圧力センサによって特に効果的に感知可能である。禁制反射またはそのかく乱は、対応する神経刺激信号の印加に用いられた電極から遠位側に少なくとも0.5cm、大半の場合は少なくとも1cm、離して配置された複数のセンサによって感知される圧力にも影響する。このような寄与の測定は、禁制反射によって引き起こされたプローブの長さ全体にわたる圧力パターンをより良く識別するために、および/または特徴付けるために、有利でありうる。このようなパターンを基準パターンと比較すると、機能不全性の種類を特定し易くなる。
【0037】
図7に示されている応答信号36は、単一の圧力センサによって感知された圧力、一群の圧力センサ、例えばプローブ4の同じ長手方向位置またはゾーンにある一群の圧力センサなど、によって感知された平均圧力を表しうる。最大の圧力変化39のほか、刺激時点から例えば1秒または半秒にわたる平均圧力上昇の記録または最大圧力以降の圧力低下率の記録も可能である。
【0038】
禁制受容体23を刺激した結果として、これらの受容体23が外および/または内括約筋21、22の筋肉を収縮させる信号を対応する脊髄反射経路を介して送信すると、これらの信号がこの経路を通過することによって、図7に遅延40として示されているようにトリガー信号に対する応答信号の時間遅延が引き起こされる。制御システム1のデータ処理部31は、刺激信号と1つ以上の圧力センサからの1つ以上の応答信号との間の遅延40を自動的に判定し記録するようにプログラムされる。次に、この測定結果から閾値レベル、応答信号の大きさおよび遅延が求められるように、刺激信号の生成と出力、応答信号の記録、および時間遅延の判定が繰り返される。場合によっては、または受容体によっては、応答が何も得られないこともある。このような事象も不揮発性メモリ34に記録される。
【0039】
矢状面43の左側または右側にある1つ以上の電極5a−6a、6a−7a、または5b−6b、6b−7bを個別に刺激し、矢状面43の左側および右側にある電極5a−6a、6a−7a、または5b−6b、6b−7bに印加された信号に対する反応間の差を測定することによって、矢状面の左側または右側にある受容体および/または反射経路の相対的な機能不全を測定できる。
【0040】
図6に、本発明によるプローブの第2の例54が示されている。この例によるプローブ54は、排便反射を測定するために特に適している。プローブ54は、膨張可能なバルーン63の形態の遠位端を有する。バルーン63を膨張させるために、導管がプローブ54のシャンク94を貫通し、さらに媒質をバルーン63内に送り込むと共に媒質をバルーン63から排出させるためのポンプに接続可能な管95を介して、延在する。
【0041】
バルーン54が非膨張状態のプローブ54をバルーン63が直腸20に入るまで挿入し、その後にバルーン63を膨張させ、直腸20が肛門管17に向かって狭まる直腸20の下端にバルーン63が当接するまでプローブ54を後退させることによって、バルーン63の近位側に隣接するプローブ54の部分を肛門管16の上位(近位)部分19に確実に位置付けることができる。肛門管16のこの部分19に排便受容体25がある。プローブ54は直腸20から肛門管16への移行部に対して位置付けられるため、この例によるプローブは、プローブ54のシャンク94から突出した当接部を備えていない。ただし、バルーンが直腸の下端に当接するまでプローブを後退させた後にプローブをその場に保持するために、シャンクに沿って摺動可能な、かつプローブの長手方向に解放可能に固定可能な当接部を設けることも考えられる。
【0042】
直腸20が排便反射の一環として収縮したときにバルーン54内の圧力が上昇するように、バルーン63は直腸壁27に接触するために十分な断面サイズを有することが好ましい。正確な圧力転送のために、バルーン63は好ましくは流体で満たされる。この流体は、液体または気体、あるいはこの両方を含んでもよい。さらに、バルーン63が長手方向に伸長することによって引き起こされる圧力の逃げを回避するために、バルーン壁は長手方向に剛性な材料から成ることが好ましい。バルーン63は図示のような球体形状を有することができるが、西洋なし形、ラグビーボール形、または丸みを帯びた、および/または円錐形の、両端を有する円筒形など他の形状にすることも可能である。バルーン63は、ほぼシャンク94の内部にある構成から、またはシャンク94の断面プロファイルの延長部の内部にある構成から、シャンク94の断面プロファイルの延長部を越えて半径方向に拡大する構成へと半径方向に膨張可能である。シャンクは、バルーンの遠位側の一部分を有しうる。このような実施形態では、膨張したバルーンはシャンクから半径方向外側に拡大する。
【0043】
プローブ54は、プローブ54のシャンク94の直径方向両側のマーキング80によって示されたプローブ54の中心平面93の両側に2つずつ配置された、中心電極接点56a、56bを共有する4つの電極55a−56a、55b−56b、56a−57a、および56b−57bを有する。これらの電極は、各電極(すなわち電極接点対)55a−56a、55b−56b、56a−57a、および56b−57bに信号を選択的に印加するための信号転送線52に接続される。排便受容体25を刺激するための電極は、プローブがバルーン63と共に挿入されて直腸の下流端に当接しているときに、肛門管の上位ゾーンを介して神経刺激を印加するように配置されることが好ましい。これを実現するために、これらの電極の少なくとも一部はバルーン63の近位端から1.5cm未満に配置されることが好ましく、0.5cm未満に配置されることがより好ましい。
【0044】
プローブは、シャンク94の外面に周方向に分散して配置された4つの圧力センサ58a、58b、58c、および59a、59b、59cから成る群として配置された2群の圧力センサと、直腸壁27によってバルーン63に加えられた圧力の目安となるバルーン63内の圧力を測定するための圧力センサ62とを有する。圧力センサ62はバルーン63内の位置に示されているが、バルーン63の外側ではあるがバルーン63の内部空間と連通している位置、またはバルーンまたは別の膨張可能部材の外側の複数の位置にも配置されうる。異なる圧力信号を各圧力センサ58a、58b、58c、59a、59b、59c、62から処理回路33に供給できるように、圧力センサ58a、58b、58c、59a、59b、59c、62は圧力信号転送線53に接続される。
【0045】
排便反射の測定および記録に先立って、神経刺激信号が電極55a−56aおよび55b−56bに選択的に出力され、その後にプローブ54の異なる長手方向位置にあるその他の電極56a−57aおよび56b−57bに出力される。印加した神経刺激信号が引き起こした圧力上昇がバルーン63内の圧力を測定する圧力センサ62によって測定された最も強い、および/または最も安定した、圧力上昇であった電極は、排便反射を測定するための互いに異なる神経刺激信号を出力するために引き続き用いられる。電極55a−56aおよび55b−56bまたは電極56a−57aおよび56b−57bからの神経刺激信号の出力に応じて圧力上昇を示す信号が圧力センサ58a、58b、58c、59a、59b、59cから送られてきた場合は、特に圧力上昇が相対的に大きい場合は、禁制受容体23も刺激された結果である可能性が高い。排便反射の測定が禁制反射によってかく乱されること回避するために、禁制反射を誘発する電極を介して神経刺激信号を印加しないことが好ましい。内括約筋の圧力応答(ここでは圧力センサ58a、58b、58c、59a、59b、59cによって感知)がなくなるか、または最小になるまでプローブの軸方向位置を変えることによって、および/または神経刺激信号を印加する電極として異なる電極を選択することによって、禁制受容体23の刺激を回避できる。
【0046】
排便反射を測定および記録するために、排便受容体25を刺激する。そのため、制御システム1は、さまざまな大きさの刺激信号を、例えばプローブ54の最遠位の電極55a−56a、55b−56bおよび/または最近位の電極56a−57a、56b−57bに、出力する。矢状面93の左側または右側のどちらか一方の排便受容体25の刺激によって得られる応答間の差を測定するために、神経刺激信号を矢状面93の左側または右側のどちらか一方の1つ以上の電極に出力してもよい。
【0047】
各神経刺激信号の印加後の一定期間中に、バルーン63内の圧力センサ62から受信された信号が記録される。禁制反射の測定と同様に、応答信号36(図7を参照)は、経時的に測定された圧力を表し、複数の受容体25に印加された刺激信号によって圧力上昇39が誘発される。この反射では受容体から筋組織への信号が壁内反射経路36を通過し、脊髄反射経路を通過しないため、総経路長は相対的に短く、神経刺激信号とこれに対応する応答信号との間の有意な遅延40は相対的に小さい。刺激信号とこの刺激信号の閾値37に対する応答信号との間の関係の特性、応答信号の大きさ39、41の特性、および応答の時間依存性(遅延および持続時間)を求めるための手順は、禁制反射の測定手順と同様である。
【0048】
本発明を図面および上記説明において例示し詳細に説明してきたが、このような例示および説明は説明または例示のためであり、限定のためではないと見なされるべきである。本発明は開示されている実施形態に限定されるものではない。
【0049】
例えば、禁制反射と排便反射の両方を測定するために適したプローブは、図6に示されているようなプローブに他の電極57a−92a、57b−92bと、さらにより近位側の圧力センサ60a、60b、60c、61a、61b、61cから成る複数の圧力センサ群とを設けることによって得られうる。電極57a−92a、57b−92bは、膨張可能部材63から少なくとも2.5cmの位置に配置されることが好ましい。反射の特性を測定するための電極を決定するとき、センサ62によって感知された複数の圧力応答のうち最良の圧力応答を誘発させた電極を排便受容体25を刺激する信号を印加するための電極として選択することができる。次に、膨張可能部材63からより離れた圧力センサ60a、60b、60c、61a、61b、61cによって感知された複数の圧力応答のうち最良の圧力応答を誘発させた電極を禁制受容体23を刺激する信号を印加するための電極として選択できる。
【0050】
さらに、プローブに対する刺激部位の角度方向の変動を許すために、電極をプローブ部材の軸方向に配置する列の数は増減可能である。
【0051】
適切に寸法設計されたプローブを有する本発明によるプローブシステムは、これらの開口部における反射の測定にも使用可能である。
【0052】
例えば、尿道における測定の場合、尿道に沿って膀胱と内括約筋および外括約筋との間の尿道のさまざまな長手方向位置にある複数の受容体に神経刺激信号を印加し、膀胱における圧力応答と内括約筋および外括約筋によって取り囲まれた尿道部分における圧力応答とを測定しうる(男性の場合は、刺激および/または圧力応答の感知は、前立腺内の尿道部分でも行いうる)。
【0053】
このため、プローブは、バルーン、相対的に大きな幅に座屈可能な長手方向に向いた複数の可撓性襞を有する構造、または傘構造などの膨張可能部材と、膨張可能構造の近位側2cmから3cmのゾーンにある複数の刺激電極と、膀胱内の圧力と刺激電極が配置されたゾーンの近位側2cmから3cmのゾーンにおける圧力とを感知するための複数の圧力センサとを具備していることが好ましい。したがって、所与の測定中、刺激信号がそこだけに印可された1つのゾーンから遠位側および近位側に離れた複数のゾーンにおける圧力変化の測定を可能にするために、これらの電極および圧力センサは接続される。
【0054】
膣領域における反射経路の受容体は、恥丘、大陰唇、陰核、小陰唇、および処女膜輪にある。これらの受容体は、これらの受容体の刺激に応じた反射として反射経路を介して収縮させるために刺激される筋組織より(患者から見ると)遠位側に位置する。膣領域の反射の機能を測定するためのプローブは、圧力センサが配置されるゾーンより近位側のゾーンに複数の刺激電極を有することが好ましい。これらの電極と圧力センサとは、所与の測定中、刺激信号がそこだけに印可されたゾーンから遠位側に離れたゾーンにおける圧力変化の測定を可能にするために、接続される。
【0055】
シャンクの断面は円形である必要はなく、楕円形またはクローバの葉の形状など、別の形状でもよい。
【0056】
プローブの挿入可能距離、すなわち挿入されるプローブ部分の近位端、の判定には、ストップの代わりに、他の方法、例えばマーキングを用いてもよい。プローブを異なる個体に適応させられるように、マーキングまたはストップを解放可能に固定し、解放時にプローブの長手方向に、特に遠位端の位置に対して、変位可能にしてもよい。これは、直腸から肛門管への移行部に対してプローブの長手方向の位置決めを可能にする拡張可能部材が遠位端部に設けられる場合は、特に重要である。
【0057】
さらに、プローブの容易な操縦を可能にする各種の取っ手をプローブに設けることができる。
【0058】
図面、開示、および添付の特許請求の範囲を研究されることにより、当業者は開示されている実施形態の他の変形例を理解し、特許請求されている本発明の実施時に具体化できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの骨盤領域の開口部(16、20)の機能を測定するためのプローブシステムであって、
前記開口部(16、20)に挿入される細長いプローブ(4;54)であって、
−前記開口部(16、20)を取り囲む組織内の受容体(23、25)を刺激するための少なくとも1つの電極(5a−6a、5b−6b、6a−7a、6b−7b;55a−56a、55b−56b、56a−57a、56b−57b、57a−92a、57b−92b)と、
−前記開口部(16、20)を取り囲む組織による圧力付与を引き起こす筋活動を感知するための少なくとも1つの筋活動センサ(8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c、62)と、
を備えたプローブ(4;54)と、
前記プローブ(4;54)に接続された制御システム(1)であって、
−神経刺激信号(35)を前記少なくとも1つの電極(5a−6a、5b−6b、6a−7a、6b−7b;55a−56a、55b−56b、56a−57a、56b−57b、57a−92a、57b−92b)に出力し、さらに
−前記神経刺激信号の前記出力直後の一定期間中に前記少なくとも1つの筋活動センサ(8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c、62)からの1つ以上の筋活動信号を記録する、
ように構成された制御システム(1)と、
を備えたプローブシステム。
【請求項2】
前記制御システム(1)は、前記出力された神経刺激信号(35)と前記少なくとも1つの筋活動センサ(8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c、62)から受信された前記1つ以上の筋活動信号(36)における変化(39)との間の時間遅延を求めるように、さらに構成される、請求項1に記載のプローブシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの筋活動センサは前記少なくとも1つの電極から前記プローブ(4;54)の長手方向に距離を置いて配置され、前記制御システム(1)は、前記少なくとも1つの電極のみからの前記神経刺激信号(35)の前記印可の直後の前記一定期間中に前記少なくとも1つの電極から前記プローブ(4;54)の長手方向に距離を置いて配置された前記少なくとも1つの筋活動センサからの少なくとも1つの筋活動信号(36)を記録するように構成される、請求項1に記載のプローブシステム。
【請求項4】
前記プローブ(4;54)の長手方向に分散された前記電極のうちの少なくとも2つを備え、前記制御システム(1)は前記神経刺激信号(35)を前記電極のうちの個々の電極または電極サブグループを介して個別に出力するように構成される、先行請求項の何れか1項に記載のプローブシステム。
【請求項5】
前記プローブ(4;54)の両側面に直径方向に互いに向い合せに配置された前記電極のうちの少なくとも2つを備え、前記制御システム(1)は、前記プローブの前記側面の一方にある前記電極のうちの個々の電極または電極サブグループのみを介して、または前記プローブの前記両側面にある電極を介して同時に、前記神経刺激信号(35)を選択的に出力するように構成される、先行請求項の何れか1項に記載のプローブシステム。
【請求項6】
前記プローブ(4;54)の互いに異なる長手方向位置にある前記筋活動センサのうちの少なくとも2つを備え、前記少なくとも2つの筋活動センサは、前記筋活動センサの各々からの筋活動信号(36)を個別に記録する前記制御システム(1)に接続される、先行請求項の何れかに記載のプローブシステム。
【請求項7】
少なくとも2つの筋活動センサが前記プローブ(4;54)の両側面に直径方向に互いに向い合せに配置され、前記プローブの前記各側面にある前記筋活動センサのうちの各筋活動センサまたは各筋活動センサグループからの筋活動信号(36)を個別に記録する前記制御システム(1)に接続される、先行請求項の何れかに記載のプローブシステム。
【請求項8】
前記制御システム(1)は、前記神経刺激信号(35)を30mA未満のアンペア数と0.1μs未満の持続時間とを有する1つまたは複数の電気パルスとして生成するように構成される、先行請求項の何れかに記載のプローブシステム。
【請求項9】
ヒトの骨盤領域の開口部(16、20)の機能を測定するためのプローブであって、前記プローブ(4;54)は前記開口部に挿入されるように寸法設計され、前記プローブ(4;54)は、
−前記開口部(16、20)を取り囲む組織内の受容体を刺激するための少なくとも1つの電極(5a−6a、5b−6b、6a−7a、6b−7b;55a−56a、55b−56b、56a−57a、56b−57b、57a−92a、57b−92b)と、
−前記開口部(16、20)を取り囲む組織による圧力付与を引き起こす筋活動を感知するための少なくとも1つの筋活動センサ(8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c、62)と、
を備え、
−前記少なくとも1つの筋活動センサは、筋活動を感知するために、前記少なくとも1つの電極(5a−6a、5b−6b、6a−7a、6b−7b;55a−56a、55b−56b、56a−57a、56b−57b、57a−92a、57b−92b)から前記プローブ(4;54)の長手方向に少なくとも0.5cm離れた位置に配置され、
−前記少なくとも1つの筋活動センサ(8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、lib、11c、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c、62)と前記少なくとも1つの電極(5a−6a、5b−6b、6a−7a、6b−7b;55a−56a、55b−56b、56a−57a、56b−57b、57a−92a、57b−92b)とは、刺激信号を前記少なくとも1つの電極から選択的に受信し、筋活動信号を前記少なくとも1つの筋活動センサから出力するために接続される、
プローブ(4;54)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの筋活動センサは、前記少なくとも1つの電極の遠位側に配置される、請求項9に記載のプローブ。
【請求項11】
シャンク(94)と、前記シャンク内の構成から、または前記シャンク(94)の断面プロファイルの延長部内にほぼ配置されている構成から、前記シャンクまたは前記シャンク(94)の断面プロファイルの延長部を超えて半径方向に延在する構成へと、半径方向に膨張可能な、前記1つ以上の電極の遠位側の膨張可能部材(63)とをさらに備え、前記少なくとも1つの筋活動センサ(62)は、前記膨張可能部材(63)に加わる圧力を感知するために取り付けられる圧力センサである、請求項10に記載のプローブ。
【請求項12】
前記シャンク(94)は、少なくとも1つの筋活動センサ(61a、61b、61c)を前記膨張可能部材(63)から少なくとも2.5cmの位置に担持する、請求項11に記載のプローブ。
【請求項13】
前記シャンク(94)は、少なくとも1つの電極(55a、55b)を前記膨張可能部材(63)から1.5cm未満の位置に担持する、請求項11または12に記載のプローブ。
【請求項14】
前記膨張可能部材はバルーン(63)であり、前記少なくとも1つの圧力センサ(62)は、前記バルーン(63)内の圧力を測定するために、前記バルーン(63)内に配置されるか、または前記バルーン(63)の内部空間と連通する、請求項13〜15の何れかに記載のプローブ。
【請求項15】
前記少なくとも1つの筋活動センサ(10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c)は、前記少なくとも1つの電極の近位側に配置される、請求項9〜14の何れかに記載のプローブ。
【請求項16】
前記電極を複数備え、前記電極のうちの各電極または各電極サブグループを個別に制御システム(1)に接続するために前記電極のうちの1つの電極または電極サブグループにそれぞれ接続された複数の伝送チャネル(2、52)を備える、請求項9〜15の何れかに記載のプローブ。
【請求項17】
前記筋活動センサを複数備え、前記筋活動センサのうちの各センサまたは各センササブグループを個別に制御システム(1)に接続するために前記筋活動センサのうちの1つの筋活動センサにそれぞれ接続された複数の伝送チャネル(3;53)を備える、請求項9〜16の何れかに記載のプローブ。
【請求項18】
前記電極または前記電極(7a、7b)のうちの最近位の電極は、前記挿入されるプローブ部分(44)の近位端から0.2〜3cmの間のゾーンに配置される、請求項12〜17の何れかに記載のプローブ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの筋活動センサは、前記開口部(16、20)を取り囲む組織によって加えられた圧力を感知するための圧力センサ(8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c、62)である、先行請求項の何れかに記載のプローブまたはプローブシステム。
【請求項20】
ヒトの骨盤領域の開口部(16)の機能を測定する方法であって、前記方法は、
細長いプローブ(4;54)を前記開口部(16、20)に挿入するステップであって、前記プローブ(4;54)は、
−前記開口部を取り囲む組織内の受容体を刺激するための少なくとも1つの電極(5a−6a、5b−6b、6a−7a、6b−7b;55a−56a、55b−56b、56a−57a、56b−57b、57a−92a、57b−92b)と、
−前記開口部(16、20)を取り囲む組織による圧力付与を引き起こす筋活動を感知するための少なくとも1つの筋活動センサ(8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c、62)と、を備える、
ステップと、
前記プローブ(4;54)に接続された制御システムを使用するステップであって、前記制御システムは、
−神経刺激信号(35)を前記少なくとも1つの電極(5a−6a、5b−6b、6a−7a、6b−7b;55a−56a、55b−56b、56a−57a、56b−57b、57a−92a、57b−92b)に出力し、さらに
−前記神経刺激信号(35)の前記出力の直後の一定期間中に前記少なくとも1つの筋活動センサ(8a、8b、8c、9a、9b、9c、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、12a、12b、12c;58a、58b、58c、59a、59b、59c、60a、60b、60c、60d、61a、61b、61c、62)からの筋活動信号(36)を記録する、
ために使用される、
ステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−510640(P2013−510640A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538782(P2012−538782)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050758
【国際公開番号】WO2011/059331
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512122366)
【Fターム(参考)】