説明

ヒトアンジオポイエチン−2に対する高親和性ヒト抗体

本発明は、アンジオポイエチン−2(Ang−2)に結合する抗体及びその使用方法を供する。本発明のいくつかの実施態様によると、抗体はヒトAng−2に結合する完全ヒト抗体である。本発明の抗体は、とりわけ、血管形成を含む1つ又はそれ以上のAng−2の生物学的活性に関わる疾患又は障害の処置のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンジオポイエチン−2(Ang−2)に特異的な抗体及びその抗原結合フラグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
血管形成は、生物学的過程であり、それによって新しい血管が形成される。異常な血管形成は、例えば、増殖性網膜症、関節リュウマチ及び乾癬を含むいくつかの病状(disease condition)と関係がある。また、血管形成は、腫瘍の成長及び維持のために重要であることが十分に確立されている。アンジオポイエチン−2(Ang−2)は、Tie−2受容体(Tie−2)に対するリガンドであり、血管形成に関与することが示されている。Ang−2は、業界ではAng−2リガンドとも呼ばれる(特許文献1;非特許文献1)。
【0003】
Ang−2に結合する抗体及び他のペプチド性インヒビターは、特許文献2、3、4、5及び6に記載されている。業界では、血管形成によって引き起こされる又は悪化する疾患(disease)及び病態(condition)を処置する(treat)ために使用できる、Ang−2抗体を含む新規なAng−2調節剤が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,643,755号
【特許文献2】米国特許第6,166,185号
【特許文献3】米国特許第7,521,053号
【特許文献4】米国特許第7,205,275号
【特許文献5】米国特許第2006/0018909号
【特許文献6】米国特許第2006/0246071号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yancopoulos et al., 2000, Nature 407:242-248
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ヒトAng−2に結合するヒト抗体を提供する。本発明者らは、さまざまな証拠及び研究から見て、関連する分子のAng−1に結合しない又は拮抗しないAng−2インヒビターの必要性を認識してきた。例えば、これまでの研究は、Ang−1が、止血(例えば、Li et al., 2001, Thrombosis and Haemostasis 85:191-374を参照)及び血漿漏出に対して成人血管系の防御(例えば、Thurston et al., 2000, Nature Medicine 6:460-463; Thurston et al., 1999, Science 286:2511-2514を参照)に果たす有益な役割を示し又は示唆してきた。このことから、本発明者らは、或る抗脈管形成による治療状況においては、Ang−1活性を保存することが有利である可能性を認識した。従って、本発明は、Ang−2に特異的に結合するが、Ang−1には実質的に結合しない抗体を提供する。本発明はまた、Ang−2とその受容体Tie−2の間の相互作用を阻害するが、Ang−1とTie−2の間の相互作用を実質的に阻害しない抗体を包含する。本発明の抗体は、とりわけ、Ang−2の血管形成促進活性を阻害するため及び血管形成の過程によって起こされる又はそれに関連する疾患及び障害を処置するために有用である。
【0007】
本発明の抗体は、完全(例えば、IgG1又はIgG4抗体)であってもよく又は抗原結合部分(例えば、Fab,F(ab’)2又はscFvフラグメント)だけを含んでもよく、及び機能性に影響を与えるように、例えば残存エフェクター機能を排除するように改変されてもよい。
【0008】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号2、18、22、26、42、46、50、66、70、74、90、94、98、114、118、122、138、142、146、162、166、170、186、190、194、210、214、218、234、238、242、258、262、266、282、286、290、306、310、314、330、334、338、354、358、362、378、382、386、402、406、410、426、430、434、450、454、458、474、478、482、498、502、506、514及び516から成るグループから選択されるアミノ酸配列、又はその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。1つの実施態様では、抗体又は抗体の抗原結合部分は、配列番号18、42、66、162、210、266及び434から成るグループから選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
【0009】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号10、20、24、34、44、48、58、68、72、82、92、96、106、116、120、130、140、144、154、164、168、178、188、192、202、212、216、226、236、240、250、260、264、274、284、288、298、308、312、322、332、336、346、356、360、370、380、384、394、404、408、418、428、432、442、452、456、466、476、480、490、500及び504から成るグループから選択されるアミノ酸配列、又はその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。1つの実施態様では、抗体又は抗体の抗原結合部分は、配列番号20、44、68、164、212、274、及び442から成るグループから選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0010】
特定の実施態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/20、22/24、26/34、42/44、46/48、50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、98/106、114/116、118/120、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、166/168、170/178、186/188、190/192、194/202、210/212、214/216、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、266/274、282/284、286/288、290/298、306/308、310/312、314/322、330/332、334/336、338/346、354/356、358/360、362/370、378/380、382/384、386/394、402/404、406/408、410/418、426/428、430/432、434/442、450/452、454/456、458/466、474/476、478/480、482/490、498/500及び502/504から成るグループから選択されるHCVRとLCVR(HCVR/LCVR)のアミノ酸配列対を含む。1つの実施態様では、抗体又はそのフラグメントは、配列番号18/20、42/44、66/68、162/164、210/212、266/274、及び434/442のアミノ酸配列対から選択されるHCVR及びLCVRを含む。
【0011】
次の態様では、本発明は、配列番号8、32、56、80、104、128、152、176、200、224、248、272、296、320、344、368、392、416、440、464、488及び512から成るグループから選択されるアミノ酸配列、又はその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン;又は配列番号16、40、64、88、112、136、160、184、208、232、256、280、304、328、352、376、400、424、448、472及び496から成るグループから選択されるアミノ酸配列、又はその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを提供する。
【0012】
或る実施態様では、抗体又は抗体の抗原結合部分は、配列番号8/16、32/40、56/64、80/88、104/112、128/136、152/160、176/184、200/208、224/232、248/256、272/280、296/304、320/328、344/352、368/376、392/400、416/424、440/448、464/472、及び 488/496から成るグループから選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。1つの実施態様では、抗体又は抗体の抗原結合部分は、配列番号8/16、32/40、56/64、152/160、200/208、272/280、及び440/448から成るグループから選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。これらのHCDR3/LCDR3対を有するAng−2抗体の限定されない例は、それぞれ、H1H685、H1H690、H1H691、H1H696、H1H706、H1M724、及びH2M744と命名された抗体である。
【0013】
更なる実施態様では、本発明は、配列番号4、28、52、76、100、124、148、172、196、220、244、268、292、316、340、364、388、412、436、460、484及び508から成るグループから選択されるアミノ酸配列、又はその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を有するHCDR1ドメイン;配列番号6、30、54、78、102、126、150、174、198、222、246、270、294、318、342、366、390、414、438、462、486及び510から成るグループから選択されるアミノ酸配列、又はその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン;配列番号12、36、60、84、108、132、156、180、204、228、252、276、300、324、348、372、396、420、444、468及び492から成るグループから選択されるアミノ酸配列、又はその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を有するLCDR1ドメイン;及び配列番号14、38、62、86、110、134、158、182、206、230、254、278、302、326、350、374、398、422、446、470及び 494から成るグループから選択されるアミノ酸配列、又はその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を有するLCDR2ドメインを更に含む、抗体又はそのフラグメントを含む。
【0014】
或る限定されない、例示的な本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、それぞれ、(i)配列番号4、6、8、12、14及び16(例えば、H1H685);(ii)配列番号28、30、32、36、38及び40 (例えば、H1H690);(iii)配列番号52、54、56、60、62及び64(例えば、H1H691);(iv)配列番号148、150、152、156、158及び160(例えば、H1H696);(v)配列番号196、198、200、204、206及び208(例えば、H1H706);(vi)配列番号268、270、272、276、278及び280(例えば、H1M724);及び(vii)配列番号436、438、440、444、446及び448(例えば、H2M744)から成るグループから選択される、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3ドメインを含む。
【0015】
関連する実施態様では、本発明は、Ang−2に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含み、ここで、抗体又はフラグメントは、配列番号2/10、18/20、22/24、26/34、42/44、46/48、50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、98/106、114/116、118/120、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、166/168、170/178、186/188、190/192、194/202、210/212、214/216、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、266/274、282/284、286/288、290/298、306/308、310/312、314/322、330/332、334/336、338/346、354/356、358/360、362/370、378/380、382/384、386/394、402/404、406/408、410/418、426/428、430/432、434/442、450/452、454/456、458/466、474/476、478/480、482/490、498/500、及び502/504から成るグループから選択される重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列内に含まれる、重鎖及び軽鎖CDRドメイン(即ち、CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。1つの実施態様では、抗体又はそのフラグメントは、配列番号18/20、42/44、66/68、162/164、210/212、266/274、及び434/442のアミノ酸配列対から選択されるHCVR及びLCVR内に含まれるCDR配列を含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、抗Ang−2抗体又はそのフラグメントをコードする核酸分子を提供する。本発明の核酸を運ぶ組み換え発現ベクター、及びそのようなベクターが導入された宿主細胞は、抗体産生が可能な条件下で宿主細胞を培養し、産生された抗体を回収することによる抗体の製造方法であるので、本発明に包含される。
【0017】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号1、17、21、25、41、45、49、65、69、73、89、93、97、113、117、121、137、141、145、161、165、169、185、189、193、209、213、217、233、237、241、257、261、265、281、285、289、305、309、313、329、333、337、353、357、361、377、381、385、401、405、409、425、429、433、449、453、457、473、477、481、497、501、505、513及び515から成るグループから選択される核酸配列、又はそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する実質的に同一な配列、によってコードされるHCVRを含む。1つの実施態様では、抗体又はそのフラグメントは、配列番号17、41、65、161、209、265及び433から成るグループから選択される核酸配列によってコードされるHCVRを含む。
【0018】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号9、19、23、33、43、47、57、67、71、81、91、95、105、115、119、129、139、143、153、163、167、177、187、191、201、211、215、225、235、239、249、259、263、273、283、287、297、307、311、321、331、335、345、355、359、369、379、383、393、403、407、417、427, 431, 441, 451, 455, 465, 475, 479, 489, 499及び503から成るグループから選択される核酸配列、又はそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する実質的に同一な配列、によってコードされるLCVRを含む。1つの実施態様では、抗体又はそのフラグメントは、配列番号19、43、67、163、211、273及び441から成るグループから選択される核酸配列によってコードされるLCVRを含む。
【0019】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号7、31、55、79、103、127、151、175、199、223、247、271、295、319、343、367、391、415、439、463、487及び511から成るグループから選択されるヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する実質的に同一な配列、によってコードされるHCDR3ドメイン;及び配列番号15、39、63、87、111、135、159、183、207、231、255、279、303、327、351、375、399、423、447、471及び495から成るグループから選択されるヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する実質的に同一な配列、によってコードされるLCDR3ドメインを含む抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを提供する。1つの実施態様では、抗体又はそのフラグメントは、配列番号7/15、31/39、55/63、151/159、199/207、271/279、及び439/447から成るグループから選択される核酸配列対によってコードされるHCDR3及びLCDR3配列を含む。
【0020】
更なる実施態様では、抗体又はそのフラグメントは、さらに、配列番号3、27、51、75、99、123、147、171、195、219、243、267、291、315、339、363、387、411、435、459、483及び507から成るグループから選択されるヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する実質的に同一な配列、によってコードされるHCDR1ドメイン;配列番号5、29、53、77、101、125、149、173、197、221、245、269、293、317、341、365、389、413、437、461、485及び509から成るグループから選択されるヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する実質的に同一な配列、によってコードされるHCDR2ドメイン;配列番号11、35、59、83、107、131、155、179、203、227、251、275、299、323、347、371、395、419、443、467及び491から成るグループから選択されるヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する実質的に同一な配列、によってコードされるLCDR1ドメイン;配列番号13、37、61、85、109、133、157、181、205、229、253、277、301、325、349、373、397、421、445、469及び493から成るグループから選択されるヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する実質的に同一な配列、によってコードされるLCDR2ドメインを含む。
【0021】
1つの実施態様では、抗体又はそのフラグメントは、配列番号17及び19;配列番号41及び43;配列番号65及び67;配列番号161及び163;配列番号209及び211;配列番号265及び273;又は配列番号433及び441の核酸配列によってコードされる重鎖及び軽鎖CDR配列を含む。
【0022】
本発明は、修飾された糖鎖付加パターンを有する抗Ang−2抗体を包含する。幾つかの応用において、望ましくない糖付加部位を除去する修飾は有用であってもよい。例えば、本発明は、本明細書に記載されるいかなる抗体の修飾バージョンをも包含し、ここで修飾バージョンは、オリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠失させて、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を高める(Shield et al. (2002) JBC 277:26733を参照)。他の応用では、補体依存性細胞傷害作用(CDC)を変更(modify)するために、ガラクトシル化の修飾を行うことができる。
【0023】
別の態様では、本発明は、Ang−2に特異的に結合する組み換えヒト抗体又はそのフラグメント及び薬学的に許容される担体又は希釈剤含む医薬組成物を提供する。関連する態様では、本発明は、Ang−2インヒビター及び第2の治療剤を併合した組成物を特色とする。1つの実施態様では、Ang−2インヒビターは、抗体又はそのフラグメントである。1つの実施態様では、第2の治療剤は、Ang−2インヒビターと有利に併用されるいかなる薬剤でもある。Ang−2インヒビターと有利に併用し得る例示的な薬剤としては、限定することなく、血管形成を阻害又は低減するいかなる薬剤、他のがん治療剤、抗炎症剤、サイトカインインヒビター、成長因子インヒビター、抗造血性因子、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗ウイルス剤及び抗生物質が挙げられる。
【0024】
さらに別の態様では、本発明は、抗Ang−2抗体又は本発明の抗体の抗原結合部分を用いてAng−2活性を阻害する方法を提供し、ここで治療方法は、抗体又は本発明の抗体の抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む。処置される疾患は、Ang−2活性の除去、阻害又は低減によって改善、緩和、阻害又は防止されるいかなる疾患又は病態である。好ましくは、本発明の抗Ang−2抗体又は抗体フラグメントは、血管形成の過程によって起こされる、関連する、又は永続化するいかなる疾患又は状態を処置するのに有用である。本発明の或る実施態様では、抗Ang−2抗体又はその抗原結合部分は、がんの処置に有用である。がん治療に関連して、本発明の抗Ang−2抗体又はその抗原結合部分は、単独で、又は他の抗がん治療抗体、化学療法剤及び/又は放射線治療と併用して投与することができる。本発明の他の実施態様では、抗Ang−2抗体又はその抗原結合フラグメントは、1つ又はそれ以上の目の疾患、例えば、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症など、及び/又は1つ又はそれ以上の炎症性又は感染性疾患の処置に有用である。
【0025】
他の実施態様は、次の詳細な説明の概説から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ヒトAng−2のC末端88アミノ酸(配列番号518の409〜496残基)と対応するヒトAng−1のアミノ酸配列(配列番号531)のアラインメントである。hAng−1とhAng−2の間で異なる残基は黒影に白文字で示す。星印(*)は、結晶構造解析によってヒトTie−2と相互作用することが示されたhAng−2のアミノ酸を示す。Barton et al., Nat. Struct. Mol. Biol. 13:524-532(2006) を参照されたい。三角形(▲)は、hAng−2とhAng−1の間で異なる、Tie−2相互作用アミノ酸の位置を示す。
【図2】パネルA〜Cは、Ang−2結合分子が、Ang−1誘導のTie−2リン酸化を阻害する、又は阻害しない程度を説明するウェスタンブロットの結果を示す。
【図3】実施例13のAng−2FD−mFc点突然変異体の結合実験の要約であり、試験した様々な抗体及びペプチボディについての、解離のT1/2が野生型に対して5倍を超える低下をもたらすアミノ酸変化(黒丸●で示す)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を説明する前に、本発明は、記載された特定の方法及び実験条件に限定されないと理解すべきである、なぜなら、そのような方法及び条件は変化し得る。また、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定されるので、本明細書に使われる述語は、特定の実施態様を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。
【0028】
他に定義されない限り、本明細書に使われる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する業界の当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に使われるように、用語の「約」は、特定の列挙された数値に関して使われるとき、列挙された値からわずか1%だけ変化してもよい値を意味する。例えば、本明細書に使われるように、「約100」の表現は、99及び101並びにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0029】
本明細書に記載されるものに類似した又は同等のいかなる方法及び材料も本発明の実施又は試験に使用できるが、好ましい方法及び材料は今から説明する。
【0030】
定義
本明細書に使われるように、用語の「アンジオポイエチン−2」または「Ang−2」は、ヒト以外の種(例えば、「マウスAng−2」、「サルAng−2」、など)として特定されない限り、ヒトAng−2又はその生物学的に活性なフラグメント(例えば、インビボ又はインビトロで血管形成を誘導することができるAng−2タンパク質のフラグメント)を指す。ヒトAng−2は、配列番号517で示される核酸配列によってコードされ、配列番号518のアミノ酸配列を有する。マウス及びサルAng−2タンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ受託番号NP_031452及びBAE89705.1のもとにNCBIプロテインシーケンスデータベースから入手できる。
【0031】
用語の「アンジオポイエチン−1」または「Ang−1」は、ヒト以外の種(例えば、「マウスAng−1」、「サルAng−1」、など)として特定されない限り、ヒトAng−1又はその生物学的に活性なフラグメントを指す。ヒトAng−1は、受託番号AAB50557のもとにNCBIプロテインシーケンスデータベースに記載のアミノ酸配列を有する。用語の「Tie−2」(業界では「TEK」とも呼ばれる)は、ヒト以外の種(例えば、「マウスTie−2」、「サルTie−2」、など)として特定されない限り、ヒトTie−2又はその生物学的に活性なフラグメントを指す。ヒトTie−2は、受託番号AAA61130のもとにNCBIプロテインシーケンスデータベースに記載のアミノ酸配列を有する。
【0032】
本明細書に使われるように、用語の「抗体」は、2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖がジスルフィドボンドで相互接続した4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、並びにその多量体(例えば、IgM)を指すことを意図する。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VH及びVL領域はさらに、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散りばめられた、相補性決定領域(CDRs)と呼ばれる超過変性の領域に細分することができる。それぞれのVH及びVLは、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に、次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。本発明の違う実施態様では、抗Ang−2抗体(又はその抗原結合部分)のFRsは、ヒト生殖細胞系の配列と同じであってもよく、又は天然に若しくは人工的に修飾されてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ又はそれ以上のCDRの並列解析に基づいて定義すればよい。
【0033】
本明細書に使われるように、用語の「抗体」はまた、完全な抗体分子の抗原結合フラグメントを包含する。本明細書に使われる用語の、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などは、抗原に特異的に結合して複合体を形成するいかなる天然の、酵素的に取得できる、合成の、若しくは遺伝子組み換えされた、ポリペプチド又は糖タンパク質を包含する。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、完全な抗体分子から、タンパク質分解的消化又は抗体可変ドメイン及び場合により定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む組み換え遺伝子工学技術などのいかなる好適な標準的技術を駆使して誘導してもよい。そのようなDNAは、既知である及び/又は例えば、市販品、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリー)から容易に入手できる、又は合成することができる。DNAは、配列が決定されそして化学的に、又は例えば、1つ又はそれ以上の可変及び/又は定常ドメインを好適な立体配置(configuration)に配置するため、又はコドンを導入する、システイン残基を創る、アミノ酸を修飾、付加若しくは削除するなどのために、分子生物学の技術を使用して操作されてもよい。
【0034】
抗原結合フラグメントの限定されない例として、(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)1本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、抗体の単離された相補性決定領域(CDR))を模倣したアミノ酸残基から成る最小認識ユニットが挙げられる。二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体及びミニ抗体などの、他の遺伝子組み換えされた分子も、本明細書に用いられる「抗原結合フラグメント」の表現に包含される。
【0035】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、いかなるサイズ又はアミノ酸組成であってもよく、一般に1つ又はそれ以上のフレームワーク配列に隣接した又はフレーム内にある少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインを伴うVHドメインを有する抗原結合フラグメントは、互いに対してどのような好適な配置に可変ドメインが位置してもよい。例えば、可変領域は、二量体であり、VH−VH、VH−VL又はVL−VLドメイン二量体であってもよい。或いは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVH又はVLドメインを含んでもよい。
【0036】
或る実施態様では、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインと共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含めばよい。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内に見出されてもよい、可変及び定常ドメインの、限定されない、例示的な立体配置としては、(i)VH−CH1;(ii)VH−CH2;(iii)VH−CH3;(iv)VH−CH1−CH2;(v)VH−CH1−CH2−CH3;(vi)VH−CH2−CH3;(vii)VH−CL;(viii)VL−CH1;(ix)VL−CH2;(x)VL−CH3;(xi)VL−CH1−CH2;(xii)VL−CH1−CH2−CH3;(xiii)VL−CH2−CH3;及び(xiv)VL−CLが挙げられる。可変及び定常ドメインの任意の立体配置では、上記のいかなる例示的な立体配置を含めて、可変及び定常ドメインは、互いに直接連結しても、全部の又は部分的なヒンジ若しくはリンカー領域によって連結してもよい。ヒンジ領域は、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60又はそれ以上)のアミノ酸から成り、それは1つのポリペプチド分子内の隣接する可変及び/又は定常ドメインの間にフレキシブル又はセミフレキシブルな連結を生じさせる。その上、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、上記の可変及び定常ドメイン立体配置のいずれかの、互いに及び/又は1つ又はそれ以上の単量体VH又はCLドメインが非共有で連結した(例えば、ジスルフィド架橋による)、ホモダイマー又はヘテロダイマー(又は、他の多量体)を含んでもよい。
【0037】
完全な抗体分子と同様に、抗原結合フラグメントは、単一特異性又は多重特異性(例えば、二重特異性)であってもよい。抗体の多重特異性抗体の抗原結合フラグメントは、典型的に少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、ここで、それぞれの可変ドメインは別々の抗原又は同じ抗原の異なるエピトープと特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む多重特異性抗体フォーマットは、本発明の抗体の抗原結合フラグメントの関連で用いるために、業界で利用可能な通常の技術を用いて適合させてもよい。
【0038】
抗体の定常領域は、補体を固定し細胞依存性細胞傷害を仲介する抗体の能力にとって重要である。従って、抗体のイソタイプは、抗体が細胞傷害性を仲介するために望ましいかどうかに基づいて選択すればよい。
【0039】
本明細書に使われる用語の「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒト抗体は、例えば、CDRs特にCDR3に、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダム又は部位特異的突然変異生成又はインビボの体細胞変異によって誘導される変異)を含んでもよい。しかし、本明細書に使われる用語の「ヒト抗体」は、マウス等の他の哺乳類の生殖細胞由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。
【0040】
本明細書に使われる用語の「組み換えヒト抗体」は、組み換え手段によって調製された、発現された、創出された又は単離した、宿主細胞に移入された組み換え発現ベクターを用いて発現させた抗体(以下にさらに説明する)、組み換え体、組み合わせのヒト抗体ライブラリーから単離した抗体(以下にさらに説明する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離した抗体(Taylor et al.(1992)Nucl. Acids Res. 20:6287-6295を参照)、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列に挿入することを含む、いかなる他の手段によって調製された、発現された、創出された又は単離した抗体など、全てのヒト抗体を含むことを意図する。そのような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する。しかしながら、或る実施態様では、そのような組み換えヒト抗体は、インビトロ突然変異生成(又は、ヒトIg配列用のトランスジェニック動物が用いられる場合は、インビボ体細胞突然変異生成)に供され、従って組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞のVH及びVL配列に由来し及び関連しているが、インビボのヒト抗体生殖細胞のレパートリー内に天然には存在しないかも知れない配列である。
【0041】
ヒト抗体は、ヒンジの不均質に関係した2つの形態で存在することができる。1つの形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間の重鎖ジスルフィド架橋で結合された、約150〜160kDaの安定な4本鎖構築物(construct)を含む。第2の形態では、二量体は鎖間ジスルフィド架橋によって連結されず、約75〜80kDaの分子は、共有結合した軽鎖及び重鎖で構成されて形成される(半抗体)。これらの形態は、アフィニティー精製後であっても、分離することは極めて困難である。
【0042】
様々な無傷のIgGイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域イソタイプに関連する構造的な違いによるが、これに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域での単一アミノ酸置換は、第2の形態の出現を、一般にヒトIgG1ヒンジを用いて観察されるレベルに、著しく低下させることができる(Angal et al. (1993) Molecular Immunology 30:105)。本発明は、例えば、産生において、目的の抗体形態の収率を改善するために望ましい、ヒンジ、CH2又はCH3領域に1つ又はそれ以上の突然変異を有する抗体を包含する。
【0043】
本明細書に使われる「単離した抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体(例えば、ヒトAng−2又はヒトAng−2フラグメントに特異的に結合する単離した抗体は、ヒトAng−2以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)を指すことを意図する。用語の「特異的に結合する」などは、抗体又はその抗体の抗原結合フラグメントが、生理的条件下で比較的安定な抗原と複合体を形成することを意味する。特異的な結合は、約1×10-8M又はそれ以下のKDによって特徴付けることができる。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定する方法は、業界に周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴、などが挙げられる。しかし、ヒトAng−2と特異的に結合する単離した抗体は、他の種からのAng−2分子などの他の抗原への交差反応性を有してもよい。その上、単離した抗体は、他の細胞性物質及び/又は化学物質を実質的に含まなければよい。
【0044】
本明細書に使われる「中和」又は「遮断」抗体は、そのAng−2への結合が、Ang−2とその受容体(Tie−2)との相互作用を遮断する及び/又はAng−2の少なくとも1つの生物学的機能の阻害をもたらす抗体を指すことを意図する。Ang−2中和又は遮断抗体によって起こされる阻害は、適切なアッセイを用いて検出できる限り、必ずしも完全である必要はない。Ang−2阻害を検出するための典型的なアッセイは、本明細書の他の場所で説明する。
【0045】
本明細書で説明する完全ヒト抗Ang−2抗体は、相当する生殖細胞配列と比較して、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域に、1つ又はそれ以上のアミノ酸の置換、挿入及び/又は欠失を含んでもよい。そのような突然変異は、本明細書に開示されたアミノ酸配列を、例えば公開の抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞配列と比較することによって、容易に確定することができる。本発明は、抗体、及び本明細書に開示したいずれかのアミノ酸配列から由来するその抗体の抗原結合フラグメントを含み、ここで、1つ又はそれ以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の1つ又はそれ以上のアミノ酸は、相当する1つ又は複数の生殖細胞残基に又は相当する生殖細胞残基の保存アミノ酸置換(天然又は非天然の)に復帰突然変異される(その様な配列変化は、本明細書では「生殖細胞復帰突然変異」と呼ぶ)。当業者は、本明細書に開示された重鎖及び軽鎖可変領域の配列から始めて、1つ又はそれ以上の個々の生殖細胞復帰突然変異又はそれらの組み合わせを含む多数の抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを容易に製造することができる。或る実施態様では、VH及び/又はVLドメイン内の全てのフレームワーク及び/又はCDR残基は、生殖細胞配列に復帰突然変異される。他の実施態様では、特定の残基だけが生殖細胞配列に復帰突然変異される、例えば変異残基だけがFR1の最初の8アミノ酸内に又はFR4の最後の8アミノ酸内に認められ、又は変異残基だけがCDR1、CDR2又はCDR3内に認められる。さらに、本発明の抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内に2つ又はそれ以上の生殖細胞復帰突然変異のいかなる組み合わせを含んでもよい、即ち、ここで、或る個々の残基は生殖細胞配列に復帰突然変異されるが、生殖細胞配列と異なる或る他の残基は保存される。一度得られた、1つ又はそれ以上の生殖細胞復帰突然変異を含む抗体及び抗体の抗原結合フラグメントは、改善した結合特異性、高い結合親和性、改善した又は亢進したアンタゴニスト的又はアゴニスト的な生物学的特性(場合によって)、低下した免疫原性などの1つ又はそれ以上の所望する特性を、容易に試験することができる。この一般的な方法で得られた抗体及び抗体の抗原結合フラグメントは、本発明内に包含される。
【0046】
本発明はまた、1つ又はそれ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されたHCVR、LCVR及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗Ang−2抗体を包含する。例えば、本発明は、本明細書に開示されたHCVR、LCVR及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10又はそれより少ない、8又はそれより少ない、6又はそれより少ない、4又はそれより少ないなどの保存的アミノ酸置換を持つHCVR、LCVR及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗Ang−2抗体を含む。1つの実施態様では、抗体は、8又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を持つ配列番号18のアミノ酸配列を有するHCVRを含む。別の実施態様では、抗体は、6又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を持つ配列番号18のアミノ酸配列を有するHCVRを含む。別の実施態様では、抗体は、4又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を持つ配列番号18のアミノ酸配列を有するHCVRを含む。別の実施態様では、抗体は、2又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を持つ配列番号18のアミノ酸配列を有するHCVRを含む。1つの実施態様では、抗体は、8又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を持つ配列番号20のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。別の実施態様では、抗体は、6又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を持つ配列番号20のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。別の実施態様では、抗体は、4又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を持つ配列番号20のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。別の実施態様では、抗体は、2又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を持つ配列番号20のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0047】
本明細書で使われる用語の「表面プラズモン共鳴」は、例えば、BIAcore(商標)システム(Biacore Life Sciences division of GE Healthcare, Piscataway, NJ)を用いて、バイオセンサー・マトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイムの相互作用解析を可能にする光学的現象を指す。
【0048】
本明細書で使われる用語の「KD」は、特定の抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図する。
【0049】
用語の「エピトープ」は、抗体分子の可変領域内のパラトープとして知られる特異的抗原結合部位と相互作用する、抗原決定基を指す。単一の抗原は、複数のエピトープを有してもよい。従って、異なる抗体は、抗原上の異なる区域に結合してもよく、異なる生物学的作用を有してもよい。エピトープは、立体配座でも直線状でもよい。立体配座のエピトープは、直鎖ポリペプチドの異なる部分からの空間的に並列したアミノ酸によって形成される。直線状のエピトープは、ポリペプチド鎖の隣接するアミノ酸残基によって形成されるものである。或る状況では、エピトープは、抗原上の糖、ホスホリル基、又はスルホニル基の部分を含んでもよい。
【0050】
用語の「実質的な同一性」又は「実質的に同一な」は、核酸又はそのフラグメントに言及するとき、適切なヌクレオチド挿入又は欠失を使って別の核酸(又はその相補鎖)と最適に位置合わせをしたとき、以下で検討するようにFASTA、BLAST又はGapなどのよく知られた配列同一性のアルゴリズムによって測定したとき、少なくとも約95%、そしてより好ましくは、少なくとも約96%、97%、98%又は99%のヌクレオチド塩基にヌクレオチド配列の同一性があることを示す。参照の核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、場合によっては、参照の核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じ又は実質的に類似したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしてもよい。
【0051】
ポリペプチドに適用されるように、用語の「実質的な類似性」又は「実質的に類似の」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップウェイト(default gap weight)を用いて、例えばプログラムのGAP又はBESTFITによって最適に位置合わせした場合、少なくとも95%の配列同一性を、さらに好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換が異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した化学特性(例えば、荷電又は疎水性)の側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換されることである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性は実質的に変えない。2つ又はそれ以上のアミノ酸配列が互いに保存的置換によって異なる場合、パーセント配列同一性又は類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上方に調整されてもよい。この調整を行う手段は、同業者に周知である。例えば、Pearson (1994) Methods Mol. Biol. 24: 307-331を参照されたい。類似した化学的特性の側鎖を有するアミノ酸のグループの例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸;及び(7)硫黄含有側鎖:システイン及びメチオニン、が挙げられる。好まれる保存的アミノ酸置換グループは、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、及びアスパラギン−グルタミンである。或いは、保存的置換は、Gonnet et al. (1992) Science 256: 1443-1445に公開されたPAM250対数尤度マトリックスで、正の値を有する任意の変更である。「中程度に保存的」置換は、PAM250対数尤度マトリックスで、負でない値を有する任意の変更である。
【0052】
配列同一性とも呼ばれる、ポリペプチドの配列類似性は、一般に配列解析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、さまざまな置換、欠失及び他の改変に割り当てられた類似性の尺度を用いて類似する配列を一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、Gap及びBestfitなどのプログラムを含み、それらは、種の異なる生物由来の相同のポリペプチドなどの近縁ポリペプチド間、又は野生型タンパク質とその突然変異タンパク質間の、配列相同性又は配列同一性を測定するために、デフォルトパラメータを用いて使用することができる。例えば、GCG Version6.1を参照。ポリペプチド配列はまた、デフォルト又は推奨パラメータを用いるFASTA、GCG Version6.1内のプログラム、を使用して比較することができる。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリー及びサーチ配列間の最良重複領域の位置合わせ及びパーセント配列同一性を提供する(上記Pearson (2000)参照)。別の、本発明の配列と、異なる生物由来の大多数の配列を含むデータベースを比較するときの好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメータを用いたコンピュータプログラムBLAST,特にBLASTP又はBLASTNである。例えば、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410及びAltschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-402を参照されたい。
【0053】
ヒト抗体の製造
完全ヒトモノクローナル抗体を含めたモノクローナル抗体を産生させる方法は、業界に知られている。いずれのそのような既知の方法も、本発明との関連において、ヒトAng−2に特異的に結合し、本明細書に開示されるいずれの例示的な抗Ang−2抗体の1つ又はそれ以上の抗原結合及び/又は機能的な性質を持つ、ヒト抗体を作るために使用することができる。
【0054】
VELOCIMMUNE(商標)技術又はモノクローナル抗体を生成するための任意の他の既知の方法を用いて、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有するAng−2に対する高親和性キメラ抗体を最初に単離する。下記の実験の項におけるように、抗体は、特徴付けられ、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい性質に選択される。マウス定常領域を望ましいヒト定常領域で置き換えて、本発明の全ヒト抗体、例えば、野生型又は改変されたIgG1又はIgG4を生成する。選択される定常領域は特定の使用に従って変わってもよいが、高親和性抗原結合及び標的特異性の性質は可変領域に存在する。
【0055】
生物学的等価性
本発明の抗Ang−2抗体及び抗体フラグメントは、記載された抗体のものとは異なるが、ヒトAng−2に結合する能力を保持したアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。そのような変異抗体及び抗体フラグメントは、親配列と比較したとき、1つ又はそれ以上のアミノ酸の付加、欠失、又は置換を含むが、記載された抗体のそれと本質的に等価な生物学的活性を示す。同じように、本発明の抗Ang−2抗体をコードするDNA配列は、開示された配列と比較したとき、1つ又はそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、又は置換を含むが、本発明の抗Ang−2抗体又は抗体フラグメントと本質的に生物学的等価な抗Ang−2抗体又は抗体フラグメントをコードする配列を包含する。そのような変異アミノ酸及びDNA配列の例は上記で検討した。
【0056】
2つの抗原結合タンパク質、即ち抗体は、もし、例えば、それらが薬学的な同等物又は薬学的な代替物であり、同様な実験条件下で同じモル投与量を単回投与又は複数回投与で投与したとき、それらの吸収の速度及び程度に有意な違いを示さないなら、生物学的等価と見なされる。幾つかの抗体は、もしそれらの吸収の程度は同等であるが吸収の速度は同等でないなら同等物又は薬学的代替物と考えられ、なおかつ、そのような吸収速度の違いは、意図的であり、標識に反映され、例えば連用の際の効果的な体内薬物濃度の達成に必須ではなく、試験される特定の製剤にとって医学的に重要でないと考えられるので、生物学的等価と見なしてもよい。
【0057】
1つの実施態様では、2つの抗原結合タンパク質は、もし、安全性、純度、及び力価に、臨床的に有意な違いが無ければ、生物学的等価である。
【0058】
1つの実施態様では、2つの抗原結合タンパク質は、もし患者が、参照製剤と生物学的製剤の間で1回又はそれ以上の交換が、そのような交換なしに継続した治療と比較して、臨床的に有意な免疫原性の変化の誘導、又は効果の減退を含む、副作用リスクの予想される上昇無しに可能なら、生物学的等価である。
【0059】
1つの実施態様では、2つの抗原結合タンパク質は、もしそれら両者が、使用の条件に対して共通のメカニズム又は作用メカニズムで作動するなら、そのようなメカニズムが既知である限りにおいて、生物学的等価である。
【0060】
生物学的等価性は、インビボ及びインビトロの方法で立証され得る。生物学的等価性の指標としては、例えば,(a)抗体又はその代謝物の濃度が、血液、血漿、血清、又は他の生物学的流体中で、時間の関数として測定される、ヒト又は他の哺乳類でのインビボテスト;(b)ヒトインビボ生体学的利用能データと相関する、及びそれを合理的に予測するインビトロテスト;(c)抗体(又はその対象)の適切な急性薬理効果を時間の関数として測定する、ヒト又は他の哺乳類でのインビボテスト;及び(d)抗体の安全性、有効性、又は生体学的利用能若しくは生物学的等価性を確証する、十分にコントロールされた臨床試験、が挙げられる。
【0061】
本発明の抗Ang−2抗体の生物学的等価性変異形は、例えば、残基若しくは配列に様々な置換をさせる又は生物学的活性に必要のない末端若しくは内部の残基若しくは配列を削除することによって、構築されてもよい。例えば、生物学的活性に重要でないシステイン残基は、再生する際に不必要な又は不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防ぐために、削除する又は他のアミノ酸で置き換えることができる。
【0062】
抗体の生物学的及び治療的特徴
一般に、本発明の抗体は、固相に固定化した又は液相中のいずれかの抗原への結合によって測定して、100pM未満のKDで、典型的には50pM未満のKDで、或る実施態様では40pM未満のKDで、ヒトAng−2に結合する。
【0063】
また、本発明の或る例示的な抗Ang−2抗体は、1つ又はそれ以上の以下の特徴を示す:(1)ヒトAng−2に結合するがマウスAng−2に結合しない能力;(2)ヒトAng−2及びマウスAng−2に結合する能力;(3)ヒトAng−2に結合するがヒトAng−1、−3又は−4に結合しない能力;(4)ヒトAng−2に結合するがマウスAng−1、−3又は−4に結合しない能力;(5)ヒトAng−2及びヒトAng−1、−3又は−4に結合する能力;(6)ヒトAng−2及びマウスAng−1、−3又は−4に結合する能力;(7)ヒトAng−2のヒトTie−2に対する結合を遮断する能力;(8)ヒトAng−2のマウスTie−2に対する結合を遮断する能力;(9)マウスAng−2のヒトTie−2に対する結合を遮断する能力;(10)マウスAng−2のマウスTie−2に対する結合を遮断する能力;(11)ヒトAng−1のヒトTie−2に対する結合を遮断する能力;(12)ヒトAng−1のマウスTie−2に対する結合を遮断する能力;(13)マウスAng−1のヒトTie−2に対する結合を遮断する能力;(14)マウスAng−1のマウスTie−2に対する結合を遮断する能力;(15)ヒトAng−2で誘導されるヒトTie−2のリン酸化を阻害する能力;(16)ヒトAng−2で誘導されるマウスTie−2のリン酸化を阻害する能力;(17)マウスAng−2で誘導されるヒトTie−2のリン酸化を阻害する能力;(18)マウスAng−2で誘導されるマウスTie−2のリン酸化を阻害する能力;(19)ヒトAng−1で誘導されるヒトTie−2のリン酸化を阻害する能力;(20)ヒトAng−1で誘導されるマウスTie−2のリン酸化を阻害する能力;(21)マウスAng−1で誘導されるヒトTie−2のリン酸化を阻害する能力;(22)マウスAng−1で誘導されるマウスTie−2のリン酸化を阻害する能力;(23)実験モデル(例えば、MCF−7細胞を含有するマトリゲル栓をヌードマウスの皮下に移植することによって誘導される血管形成)におけるインビボ血管形成を阻害する能力;及び/又は(24)マウス異種移植片モデルで腫瘍体積を抑制又は減少させる能力。
【0064】
本発明はまた、Ang−2フィブロネクチン様ドメインを含むが、Ang−2N末端のコイルドコイル・ドメインを欠如した構造(construct)(その様な構造は、本明細書では「Ang−2FD」と呼ぶ)に高い親和性で結合する抗体も包含する。例示的なAng−2FD構造としては、ヒトAng−2FD(配列番号519)、マウスAng−2FD(配列番号520)、及びサルAng−2FD(配列番号521)が挙げられる。ヒト、マウス及びサルのAng−2FD構造は、単量体又は二量体でもよい。Ang−2FD構造はまた、Ang−2FD分子に接続したヒト又はマウスFcドメインなどの、他の非Ang−2アミノ酸配列を含んでもよい。別の例示的なAng−2FD構造は、本明細書では「hBA2」(又はヒト「bow−Ang2」)と呼ばれ、それはヒト又はマウスFcドメインを経由して互いに結合し、蝶ネクタイ様の立体配置を形成するヒトAng−2フィブリノーゲン様ドメインの四量体である。通常、hBA2は、2つのAng−2二量体から成り、ここでそれぞれのAng−2二量体は、Fcドメインを通して互いに連結した2つのAng−2フィブロネクチン様ドメインを含む。例示的なhBA2構成要素としては、hBA2−hIgG1(配列番号522)及びhBA2−mIgG2a(配列番号523)に指定されたポリペプチドが挙げられる。予想外に、本発明の或る抗Ang−2抗体は、既知のコントロールAng−2抗体よりもかなり高い親和性でAng−2FD構造に結合することが見出された(本明細書に記載の実施例を参照)。
【0065】
ヒト又はマウス二量体Ang−2FD構造に結合する抗Ang−2抗体の関連において、高親和性結合とは、抗Ang−2抗体が、ヒト又はマウス二量体Ang−2FDと300pM未満のKDで結合することを意味する。例えば、ヒト又はマウス二量体Ang−2FDと高親和性で結合する抗体としては、25℃で、表面プラズモン共鳴で測定して、ヒト又はマウス二量体Ang−2FDと300pM未満、250pM未満、200pM未満、190pM未満、180pM未満、170pM未満、160pM未満、150pM未満、140pM未満、130pM未満、120pM未満、110pM未満、100pM未満、90pM未満、80pM未満、70pM未満、60pM未満又は50pM未満のKDで結合する抗体が挙げられる。
【0066】
サル二量体Ang−2FD構造に結合する抗Ang−2抗体の関連において、高親和性結合とは、抗Ang−2抗体がサル二量体Ang−2FDと500pM未満のKDで結合することを意味する。例えば、サル二量体Ang−2FDと高親和性で結合する抗Ang−2抗体としては、25℃で、表面プラズモン共鳴で測定して、サル二量体Ang−2FDと500pM未満、450pM未満、400pM未満、350pM未満、300pM未満、250pM未満、200pM未満、190pM未満、180pM未満、170pM未満、160pM未満、150pM未満、140pM未満、130pM未満、120pM未満、110pM未満、100pM未満、90pM未満、又は80pM未満のKDで結合する抗体が挙げられる。
【0067】
ヒト単量体Ang−2FD構造に結合する抗Ang−2抗体の関連において、高親和性結合は、抗Ang−2抗体がヒト単量体Ang−2FDと40nM未満のKDで結合することを意味する。例えば、ヒト単量体Ang−2FDと高親和性で結合する抗Ang−2抗体としては、25℃で、表面プラズモン共鳴で測定して、ヒト単量体Ang−2FDと40nM未満、30nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、10nM未満、9nM未満、8nM未満、7nM未満、6nM未満、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.9nM未満、0.8nM未満、0.7nM未満、又は0.6nM未満のKDで結合する抗体が挙げられる。
【0068】
hBA2構造に結合する抗Ang−2抗体の関連において、高親和性結合は、抗Ang−2抗体がhBA2と80pM未満のKDで結合することを意味する。例えば、hBA2と高親和性で結合する抗Ang−2抗体としては、25℃で、表面プラズモン共鳴で測定して、hBA2と80pM未満、75pM未満、70pM未満、65pM未満、60pM未満、55pM未満、50pM未満、45pM未満、40pM未満、35pM未満、30pM未満、25pM未満、20pM未満、18pM未満、16pM未満、14pM未満、又は12pM未満のKDで結合する抗体が挙げられる。
【0069】
本発明は、Ang−2に結合するがAng−1とは実質的に結合しない抗体を包含する。本明細書で使われる様に、抗体が表面に捕捉され、捕捉された抗体上に、完全野生型ヒトAng−1を約25nMの濃度で、約60μL/分の流速で、約3分間25℃で注入される、表面プラズモン共鳴アッセイで、Ang−2に対する結合を試験したとき、もしも抗体が、約1nMを超える、例えば、約5nMを超える、約10nMを超える、約50nMを超える、約100nMを超える、約150nMを超える、約200nMを超える、約250nMを超える、約300nMを超える、約350nMを超える、約400nMを超える、約450nMを超える、約500nMを超える、又はそれ以上のKDを示すなら、抗体は「実質的にAng−1に結合しない」。(例えば、実施例4を参照)。また、そのようなアッセイ又はそれと同等のもので試験したとき、抗体がAng−1との結合を示せないなら、抗体は「実質的にAng−1に結合しない」。
【0070】
本発明はまた、Ang−2のTie−2との結合を遮断するが、Ang−1のTie−2との結合を実質的に遮断しない抗体を包含する。本明細書で使用されるように、もし、抗体をAng−1抗原と約100:1(抗体:抗原)の比でプレミックスし、25℃で約60分間インキュベーションし、次に平衡化した混合物をTie−2で被覆した表面上の表面プラズモン共鳴(5μL/分、25℃)によってTie−2に対する結合を試験したとき、Tie−2に結合したAng−1の量が、関係のないコントロール分子の存在下でTie−2に結合したAng−1の量の少なくとも50%であるなら、抗体は「Ang−1のTie−2との結合を実質的に遮断しない」。(例えば、実施例6を参照)。例えば、抗体とのプレインキュベーションの後にTie−2に結合したAng−1の量が、上記の実験条件下で関係のないコントロール分子とプレインキュベーションの後にTie−2に結合したAng−1の量の少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は約100%であるなら、抗体は「Ang−1のTie−2との結合を実質的に遮断しない」と見なされる。
【0071】
さらに、本発明は、Ang−2の生物学的活性(例えば、Ang−2媒介のTie−2リン酸化;Ang−2誘導の血管形成など)を遮断又は実質的に減衰させるが、Ang−1の対応する生物学的活性(Ang−1媒介のTie−2のリン酸化;Ang−1誘導の血管形成など)を遮断又は実質的に減衰させない抗体を包含する。抗体が上記で挙げた1つ又はそれ以上の性質を満足するかどうかを測定するために有用なアッセイ及び試験は、当業者によって直ちに理解され、そして容易に実施されるだろう、及び/又は本開示から十分に確認できるだろう。例えば、下記に詳述する実験方法は、ある抗体がAng−2及び/又はAng−1に結合するか否か;Ang−2及び/又はAng−1のTie−2との結合を遮断するか否か;Ang−2及び/又はAng−1が媒介するTie−2のリン酸化を阻害するか否か;等々を測定するために使用できる。
【0072】
エピトープマッピング及び関連する技術
特定のエピトープに結合する抗体(例えば、IgEのその高親和性受容体への結合を遮断するもの)を選別するために、「抗体(Antibodies)」Harlow and Lane著、(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY)に記載されているような、通常のクロスブロッキング・アッセイを行うことができる。他の方法としては、アラニンスキャニング突然変異体、ペプチドブロット(Reineke (2004) Methods Mol Biol 248:443-63)、又はペプチド切断解析が挙げられる。また、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出、及び化学修飾などの方法が使用できる(Tomer (2000) Protein Science 9: 487-496)。
【0073】
用語の「エピトープ」は、B及び/又はT細胞が応答する抗原上の部位に言及する。B細胞エピトープは、隣接(contiguous)アミノ酸又はタンパク質の三次元折り畳みによって並列した隣接アミノ酸の両者から形成することができる。隣接アミノ酸から形成されるエピトープは、一般に変性溶媒に接触しても保持されるのに対し、三次元の折り畳みで形成されたエピトープは、一般に変性溶媒で処理すると失われる。エピトープは、一般的に少なくとも3個、より普通には少なくとも5個又は8〜10個のアミノ酸を特異な空間的構造に含む。
【0074】
抗原構造に基づく抗体プロファイリング(ASAP)としても知られる修飾支援プロファイリング(MAP)は、同じ抗原に対して指向した大多数のモノクローナル抗体(mAb)を、化学的又は酵素的に修飾した抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性に従って分類する方法である(米国特許第2004/0101920号)。各カテゴリーは別のカテゴリーによって表わされるエピトープと明らかに異なる又は部分的に重複するいずれかのユニークなエピトープを反映する。この技術により、特徴付けの焦点を遺伝学的に独特な抗体に合わせることができるなど、遺伝学的に同一な抗体の急速な分別が可能になる。ハイブリドーマのスクリーニングに適用したとき、MAPは、所望する性質を有するmAbを産生する希少なハイブリドーマクローンの同定を容易にし得る。MAPは、本発明の抗Ang−2抗体を、異なるエピトープに結合する抗体のグループに分類するために使用してもよい。
【0075】
抗Ang−2抗体は、アミノ末端コイルドコイル・ドメイン内又はカルボキシ末端フィブリノーゲン様ドメイン(「FD」)内のエピトープに結合することができる。本発明の好ましい実施態様では、抗Ang−2抗体及びその抗体の抗原結合フラグメントは、FD内のエピトープに結合する。
【0076】
Tie−2と相互作用するAng−2のFD内のアミノ酸は、結晶構造解析によって解明されている。Barton et al., Nat. Struct. Mol. Biol. 13:524-532 (May 2006) を参照。Ang−2のTie−2への結合を遮断するがAng−1のTie−2への結合を実質的に遮断しない抗体に関して(例えば、H1H685P、下記の実施例5及び6を参照)、そのような抗体が結合するエピトープは、(a)Tie−2と相互作用する及び(2)Ang−1の対応するアミノ酸に一致しないAng−2の1つ又はそれ以上のアミノ酸を含んでもよい(図1を参照)。従って、そのようなAng−2優先的抗体が結合するエピトープは、hAng―2(配列番号518)の1つ又はそれ以上の次のアミノ酸:S−417;K−432;I−434;N−467;F−469;Y−475;又はS−480を含んでもよい。例えば、本発明者らは、Ang−2(配列番号518)のアミノ酸F−469、Y−475、及びS−480と相互作用する抗体は、Ang−1よりもAng−2と優先的に相互作用すること、そしてこの優先的結合が治療的な利点を有し得ることを発見した。従って、本発明は、ヒトアンジオポイエチン2(hAng−2)に特異的に結合するがhAng−1には実質的に結合しない抗Ang−2抗体を含み、ここで抗体は、アミノ酸F−469、Y−475、及びS−480を含むhAng−2(配列番号518)上のエピトープに結合する。同様に、本発明は、hAng−2のhTie−2への結合を遮断するがhAng−1のhTie−2への結合を実質的に遮断しない抗Ang−2抗体を含み、ここで抗体は、アミノ酸F−469、Y−475、及びS−480を含むhAng−2(配列番号518)上のエピトープに結合する。
【0077】
本発明は、本明細書に記載されたいかなる特定の例示的な抗体(例えば、H1H685、H1H690、H1H691、H1H696、H1H706、H1M724及び/又はH2M744)のいずれかと同じエピトープに結合する抗Ang−2抗体を含む。同様に、本発明はまた、本明細書に記載された特定の例示的な抗体(例えば、H1H685、H1H690、H1H691、H1H696、H1H706、H1M724及び/又はH2M744)のいずれかとのAng−2への結合を競合する抗Ang−2抗体を含む。
【0078】
抗体が、参照の抗Ang−2抗体と同じエピトープに結合するか、又は結合を競合するかは、業界に周知の方法を使うことによって容易に決定することができる。例えば、試験抗体が、本発明の参照抗Ang−2抗体と同じエピトープに結合するかを測定するために、参照の抗体が、飽和する条件下で、Ang−2タンパク質又はペプチドに結合するのを可能にする。次に、試験抗体のAng−2分子に対する結合能力を評価する。もし、試験抗体が、参照の抗Ang−2抗体で飽和結合された後のAng−2に結合することができれば、試験抗体は参照の抗Ang−2抗体と異なるエピトープに結合すると、結論することができる。一方、もし、試験抗体が、参照の抗Ang−2抗体で飽和結合された後のAng−2分子に結合することができなければ、試験抗体は本発明の参照の抗Ang−2抗体によって結合したエピトープと同じエピトープに結合し得る。次に、観察された試験抗体の結合性の欠如が、実際に参照抗体と同じエピトープへの結合に起因するのか、又は立体的遮断(又は他の現象)が、観察された結合性の欠如に関与するのかを確認するために、さらなる日常的な実験(例えば、ペプチド変異及び結合解析)を行うことができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー又はその他業界で利用できる定量的又は定性的な抗体結合アッセイを用いて行うことができる。本発明の或る実施態様によると、競合結合アッセイ(例えば、Junghans et al., Cancer Res. 1990:50:1495-1502を参照)で測定して、もし、例えば、1、5、10、20又は100倍過剰の1つの抗体が、もう1つの抗体の結合を少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%又はさらに99%遮断するなら、2つの抗体は同じ(又は重複する)エピトープに結合する。或いは、もし、1つの抗体の結合性を低下させる又は除去する抗原中の基本的に全てのアミノ酸変異が、他方の結合を低下させるか又は除去するなら、2つの抗体は同じエピトープに結合するとみなされる。もし、1つの抗体の結合性を低下させる又は除去するサブセットだけのアミノ酸変異が、他方の結合性を低下させる又は除去するなら、2つの抗体は「重複したエピトープ」を有するとみなされる。
【0079】
抗体が参照の抗Ang−2抗体と結合を競合するかどうかを測定するために、上記の結合方法論を2つの方向で行った:第1の方向では、参照の抗体を飽和条件下でAng−2分子に結合させ、次にAng−2分子に対する試験抗体の結合性を評価する。第2の方向では、試験抗体を飽和条件下でAng−2分子に結合させ、次にAng−2分子に対する参照抗体の結合性を評価する。もし、両方向において、最初の(飽和する)抗体だけがAng−2分子に結合できるなら、試験抗体と参照抗体はAng−2への結合を競合すると結論される。当業者には分かるように、参照抗体と結合を競合する抗体は、必ずしも参照の抗体と同じエピトープに結合する必要はなく、重複する又は隣接するエピトープに結合することによって参照の抗体の結合を立体的に遮断してもよい。
【0080】
種特異性及び種交差反応性
本発明の或る実施態様によると、抗Ang−2抗体は、ヒトAng−2に結合するが他の種由来のAng−2に結合しない。或いは、本発明の抗Ang−2抗体は、或る実施態様では、ヒトAng−2及び1つ又はそれ以上の非ヒト種由来のAng−2に結合する。例えば、本発明のAng−2抗体は、ヒトAng−2に結合し、場合によって、1つ又はそれ以上のマウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲサル又はチンパンジーAng−2に結合しても又は結合しなくてもよい。
【0081】
免疫複合体
本発明は、細胞毒素、化学療法薬物、免疫抑制剤又はラジオアイソトープなどの治療部分に抱合した(conjugated)抗Ang−2モノクローナル抗体(「免疫複合体」)を包含する。細胞毒性薬としては、細胞にとって有害になるいかなる薬剤が挙げられる。免疫複合体を形成するために好適な細胞毒性薬及び化学療法剤の例は、業界に知られており、例えば、国際公開公報第05/103081号を参照されたい。
【0082】
多重特異性抗体
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、又は多重特異性であってもよい。多重特異性mAbは、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であっても、又は1つより多い標的ポリペプチドに対する抗原結合ドメインを包含してもよい。例えば、Tutt et al. (1991) J. Immunol. 147:60-69を参照。本発明の抗Ang−2抗体又はその部分は、別の機能分子、例えば別のペプチド又はタンパク質、と連結させる又は共発現させて多重特異性分子を形成させることができる。例えば、抗体又はそのフラグメントは、別の抗体又は抗体フラグメントなどの1つ又はそれ以上の分子的実体と機能的に連結させて、第2の結合特異性を持つ二重特異性又は多重特異性抗体を製造することができる。
【0083】
本発明との関連で使用できる例示的な二重特異性抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)のCH3ドメイン及び第2のIgのCH3ドメインの使用を含み、ここで第1及び第2のIgのCH3ドメインは、互いに少なくとも1つのアミノ酸が異なり、そしてアミノ酸相違のない二重特異性抗体と比較すると、少なくとも1つのアミノ酸の相違が、二重特異性抗体のプロテインAに対する結合性を低下させる。1つの実施態様において、第1のIgのCH3ドメインは、プロテインAに結合し、そして第2のIgのCH3ドメインは、H95R改変などのプロテインA結合性を低下若しくは無効にする変異を含む(IMGTエクソンによる付番;EU付番によるY436F)。第2のCH3は、さらにY96F改変を含んでもよい(IMGTによる;EUによるY436F)。第2のCH3内に見出されてもよいさらなる改変としては、IgG1抗体の場合、D16E, L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I);IgG2抗体の場合、N44S、K52N、及びV82I(IMGTによる;EUによるN384S、K392N、及びV422I);及びIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)が挙げられる。上記の二重特異性抗体フォーマット上の変異は、本発明の範囲内に期待(contemplate)される。
【0084】
治療用製剤及び投与
本発明は、本発明の抗Ang−2抗体又はその抗原結合フラグメントを含む治療用組成物を提供する。本発明の治療用組成物は、移送、送達、耐性などを改善するために製剤に組み込まれる、さらに1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、及び他の薬剤(本明細書では、まとめて「薬学的に許容される担体又は希釈剤」と呼ぶ)を含んでもよい。数多くの適切な製剤は、全ての薬剤師に知られる処方集:Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAに見いだすことができる。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、(カチオン性又はアニオン性)リピド含有小胞(vesicle)(LIPOFECTIN(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油及び油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(さまざまな分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及び半固体混合物含有カーボワックスが挙げられる。Powell et al. “Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA, 1998, J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0085】
抗体の投与量は、投与対象の年齢及び大きさ、標的疾患、状態、投与経路などによって変わってもよい。好ましい投与量は、一般に体重又は体表面積に従って計算される。本発明の抗体を、Ang−2活性が関与する成人患者の状態又は疾患を処置するために使うとき、本発明の抗体を通常約0.01〜約20mg/kg体重の単回投与で、より好ましくは、約0.02〜約7、約0.03〜約5、又は約0.05〜約3mg/kg体重で、静脈内に投与することが有利であり得る。状態の重篤性によって処置の頻度及び期間を調整することができる。Ang−2抗体を投与するための効果的な用量及びスケジュールは、実験的に決定してもよい;例えば、患者の進展を定期に評価モニタリングすることができ、従って投与量を調整することができる。さらに、業界によく知られる方法(例えば、Mordenti et al., 1991, Pharmaceut. Res. 8:1351)を用いて、種間の用量の拡大縮小(scaling)を行うことができる。
【0086】
種々の送達システムが知られており、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができる、例えば、リポソーム、ミクロパーティクル、又はマイクロカプセルへの封入、変異ウイルス、受容体介在エンドサイトーシスを発現することができる組み換え体細胞(例えば、Wu et al. 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)。導入の方法としては、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び口腔の経路が挙げられる。組成物は、任意の都合の良い経路で、例えば、注入(infusion)又はボーラス投与によって、上皮又は粘膜皮膚裏層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を経由する吸収によって、そして他の生物学的活性薬剤と共に投与してもよい。投与は、全身的又は局所的であればよい。
【0087】
本発明の医薬組成物は、例えば、標準の針及びシリンジを用いて皮下又は静脈内に送達させることができる。また、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、容易に本発明の医薬組成物を送達するのに適用される。そのようなペン送達デバイスは再使用可能又は使い捨てであってよい。再使用可能ペン送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。一旦、カートリッジ内の全部の医薬組成物が投与されてカートリッジが空になると、空のカートリッジは容易に廃棄することができ、そして医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。ペン送達デバイスは、その後再使用できる。使い捨てのペン送達デバイスには、交換可能なカートリッジは無い。むしろ、使い捨てペン送達デバイスは、予め医薬組成物が充填されデバイス内のリザーバに保持された状態で売られている(come)。一旦リザーバの医薬組成物が空になると、デバイス全部が破棄される。
【0088】
多数の再使用可能ペン及び自己注射器送達デバイスは、本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される。例としては、もちろん限定されないが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford, Inc., Woodstock, UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems, Burghdorf, Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co., Indianapolis, IN)、NOVOPEN(商標)I、II及びIII(Novo Nordisk, Copenhagen, Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk, Copenhagen, Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及びOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis, Frankfurt,
Germany)が挙げられる。本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てペン送達デバイスの例としては、もちろん限定されないが、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)が挙げられる。
【0089】
目の障害を処置するために、本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、例えば点眼薬、結膜下注射、結膜下埋め込み、硝子体内注射、硝子体内埋め込み、テノン嚢下注射、又はテノン嚢下埋め込みによって投与されてもよい。
【0090】
医薬組成物はまた、小胞に入れて、特にリポソームで送達することができる(Langer 1990 Science 249:1527-1533;Treat et al. (1989) in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365;Lopez-Berestein, 同書, pp. 317-327を参照)。
【0091】
特定の状況において、医薬組成物は制御放出システムで送達させることができる。1つの実施態様では、ポンプが使われてもよい(Langer, 上掲; Sefton 1987 CRC Crit. Ref.
Biomed. Eng. 14:201を参照)。別の実施態様では、ポリマー材料を使うことができる。さらに別の実施態様では、制御放出システムは組成物の標的の近傍に置くことができ、従って必要なのは全身投与量のほんの一部分だけである(例えば、Goodson, 1984, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138を参照)。
【0092】
注射可能な製剤には、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴注入などのための剤形が含まれてもよい。これらの注射製剤は、公知の方法で製造してもよい。例えば、注射製剤は、例えば上記の抗体又はその塩を、従来注射用に使われる無菌の水性溶媒又は油性溶媒に溶解、懸濁又は乳化することによって製造してもよい。注射用の水性溶媒としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張液などがあり、それらは、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤{例えば、ポリソルベート80、HCO−50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加化合物}などとの組合せで使用されてもよい。油性溶媒としては、例えばゴマ油、大豆油などが用いられ、それらはベンジルベンゾエート、ベンジルアルコールなどとの組合せで使用されてもよい。そのようにして製造された注射液は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0093】
有利には、上記の経口又は非経口用の医薬組成物は、活性成分の投与量に適合する単位投与量の製剤に製造される。そのような単位投与量の製剤としては、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射液(アンプル)、坐剤などが挙げられる。含まれる前述の抗体の量は、一般に単位投与量の製剤当たり約5〜約500mgであり;特に注射液の形態では、前述の抗体が約5〜約100mgで含まれることが好ましくそして他の剤形には約10〜約250mgで含まれることが好ましい。
【0094】
抗体の治療的使用
本発明の抗体は、とりわけ、血管形成に関係する疾患又は障害を含めて、Ang−2活性が関係するいかなる疾患又は障害の処置、予防及び/又は改善のために有用である。本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、例えば、脳及び髄膜、中咽頭、肺及び気管支樹、消化管、男女生殖器官、筋肉、骨、皮膚及び付属器、結合組織、脾臓、免疫システム、造血細胞及び骨髄、肝臓及び尿道、並びに眼などの特殊感覚器官に発生する原発性及び/又は転移性腫瘍を処置するために使用してもよい。或る実施態様では、本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、1つ又はそれ以上の次のがん:腎細胞がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、悪性神経膠腫、骨肉腫、結腸直腸がん、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、滑膜肉腫、甲状腺がん、又はメラノーマ、を処置するために使われる。
【0095】
本発明の抗体及び抗原結合フラグメントはまた、1つ又はそれ以上の眼の障害の処置に有用であり得る。本発明の抗体及び抗原結合フラグメントで処置できる例示的な眼の障害としては、例えば、加齢に関連した黄斑変性症、糖尿病性網膜症、及び他の脈絡膜血管新生、血液漏出、網膜浮腫及び炎症に関連した眼の障害が挙げられる。加えるに、本発明の抗Ang−2抗体は、緑内障手術に対して初期の血管及びリンパ管形成並びに緑内障手術後の濾過胞へのマクロファージ動員を遮断し、臨床転帰を改善するアジュバントとして投与してもよい。
【0096】
本発明の他の実施態様では、抗体又は抗原結合フラグメントは、高血圧、糖尿病(非インスリン依存性糖尿病を含む)、乾癬、関節炎(関節リュウマチを含む)、ぜんそく、敗血症、腎臓病及び傷害に関連する浮腫、脳梗塞又は腫瘍を処置するために使用される。
【0097】
Ang−2発現は、さまざまな炎症性及び/又は感染性疾患の重症度と相関することが示されている(例えば、Siner et al., 2009, Shock 31:348-353; Yeo et al., 2008, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA):105:17097-17102を参照)。従って、本発明の抗Ang−2抗体は、1つ又はそれ以上の炎症性又は感染性疾患を処置、予防又は改善するために使用することができる。本発明の抗Ang−2抗体を投与することによって処置、予防又は改善することができる例示的な感染性疾患としては、限定されないが、マラリア(Plasmodium falciparum感染)、ウイルス性出血熱(例えば、デング熱)、リケッチア感染症、毒素性ショック症候群、敗血症、C型肝炎、バルトネラ・バシリフォルミス(Bartonella bacilliformis)感染症、リーシュマニア症、マイコバクテリア感染症、エプスタイン・バー・ウイルス感染症が挙げられる。
【0098】
併用療法
併用療法には、本発明の抗Ang−2抗体と、例えば別のAng−2アンタゴニスト(例えば、抗Ang−2抗体、ペプチボディ(peptibody)、又はCVX−060(米国特許第7,521,425号参照)などのCovX−body)が挙げられる。本発明の抗Ang−2抗体はまた、例えばVEGFアンタゴニスト(例えば、VEGF−Trap、例えば、米国特許第7,087,411号参照、(また、本明細書で「VEGF阻害融合タンパク質(fusion protein)」とも呼ばれる)、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、VEGF受容体の低分子キナーゼインヒビター(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ又はパゾパニブ)、抗DLL4抗体(例えば、REGN421などの米国特許第2009/0142354号に開示の抗DLL4抗体)など)と共に、又は上皮成長因子受容体(EGFR)のアンタゴニスト(例えば、抗EGFR抗体又はEGFR活性の低分子インヒビター)と共に投与してもよい。本発明の抗Ang−2抗体と併用で有利に投与されてもよい他の薬剤としては、低分子サイトカインインヒビター及びIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12、IL−13、IL−17、IL−18などのサイトカインと又はそれらのそれぞれの受容体に結合する抗体を含む、サイトカインインヒビターが挙げられる。本発明はまた、本明細書で言及される抗Ang−2抗体のいずれかと1つ又はそれ以上のVEGF、DLL4、EGFR,又は前記サイトカインのいずれかのインヒビターとの治療的組み合わせを含み、ここでインヒビターは、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、ペプチボディ、ナノボディ又は抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント;F(ab’)2フラグメント;Fvフラグメント;scFv;dAbフラグメント;又は二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ミニ抗体及び最小認識ユニットなどの他の工学的分子)である。本発明の抗Ang−2抗体はまた、抗ウイルス剤、鎮痛剤、副腎皮質ステロイド及び/又はNSAIDとの併用で投与してもよい。本発明の抗Ang−2抗体はまた、放射線療法及び/又は従来の化学療法を含む治療計画の一部として投与してもよい。1つ又はそれ以上のさらなる薬剤と併用する場合、本発明の抗Ang−2抗体は、他の薬剤の投与の前に、同時に(例えば、同一の製剤で若しくは別々の製剤で)又は後に投与してもよい。
【0099】
抗体の診断的使用
本発明の抗Ang−2抗体はまた、例えば診断の目的で、サンプル中のAng−2を検出及び/又は測定するために使用してもよい。例えば、抗Ang−2抗体又はそのフラグメントは、Ang−2の異常発現(例えば、過剰発現、低発現、発現の欠如など)によって特徴付けられる状態又は疾患を診断するために使用してもよい。例示的なAng−2の診断的アッセイは、例えば、患者から得たサンプルを本発明の抗Ang−2抗体と接触させることを含み、ここで抗Ang−2抗体は、検出可能な標識又はレポータ分子で標識されている。或いは、標識されていない抗Ang−2抗体は、それ自身が検出可能に標識された第2の抗体と組み合わせて診断的用途に使用することができる。検出可能な標識又はレポータ分子は、3H、14C、32P、35S、又は125Iなどの放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアナート、若しくはローダミンなどの蛍光又は化学発光部分;又はアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、若しくはルシフェラーゼなどの酵素であればよい。サンプル中のAng−2を検出又は測定するために使用することができる特定の例示的なアッセイとしては、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をどのようにして作りそして使うかの完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示するもので、本発明者らが自分らの発明と見なすものの範囲を限定することを意図しない。使用した数値(例えば、量、温度など)に関して、正確性を確保する努力はされているが、幾つかの実験的なエラー及び偏差を考慮すべきである。特に断りのない限り、割合は重量による割合、分子量は平均分子量、温度は摂氏温度、そして圧力は大気圧又はその近傍である。
【0101】
〔実施例1〕:ヒトAng−2に対するヒト抗体の生成
ヒトAng−2抗原を、免疫応答を刺激するためのアジュバントと共に、ヒト免疫グロブリン重鎖及びκ軽鎖の可変領域をコードするDNAを含むVELOCIMMUNE(登録商標)マウスに直接投与した。抗体免疫応答は、Ang−2特異的免疫アッセイでモニターした。目的の免疫応答が得られたら、脾臓細胞を採取し、その生存能力を保存しハイブリドーマ細胞株を形成させるためにマウスミエローマ細胞と融合させた。ハイブリドーマ細胞株は、スクリーニングし選択してAng−2特異的抗体を産生する細胞株を特定した。この技術を用いて、数個の抗Ang−2キメラ抗体(即ち、ヒト可変ドメイン及びマウス定常ドメインを持つ抗体)を得た;この方法で生成された例示的な抗体は、次のように命名した:H1M724、H1M727、H1M728、H2M730、H1M732、H1M737、H2M742、H2M743、H2M744、H1M749、H2M750及びH1M810。
【0102】
抗Ang−2抗体はまた、米国特許第2007/0280945A1号に記載されるように、ミエローマ細胞と融合させることなく、抗原陽性B細胞から直接単離した。この方法を用いて、数個の完全ヒトAng−2抗体(即ち、ヒト可変ドメイン及びヒト定常ドメインを持つ抗体)を得た;この方法で生成された例示的な抗体は、次のように命名した:H1H685、H1H690、H1H691、H1H693、H1H694、H1H695、H1H696、H1H704、H1H706及びH1H707。
【0103】
この実施例の方法に従って生成された例示的な抗Ang−2抗体の生物学的特性は、以下に記載される実施例で詳細に説明される。
【0104】
〔実施例2〕:可変(variable)遺伝子利用解析
産生された抗体の構造を解析するために、抗体可変領域をコードする核酸をクローン化し配列を決定した。抗体の核酸配列及び予測されるアミノ酸配列から、各重鎖可変領域(HCVR)及び軽鎖可変領域(LCVR)の遺伝子使用を同定した(表1)。
【0105】
【表1】

【0106】
表2は、選択された抗Ang−2抗体の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列対並びにそれらの対応する抗体識別子を示す。N、P及びGの記号表示は、同じCDR配列を持つが、CDR配列から外れた領域(即ち、フレームワーク領域)に配列変異を持つ重鎖及び軽鎖を有する抗体を指す。従って、特定の抗体のN、P及びG変異体は、それらの重鎖及び軽鎖可変領域内に同じCDR配列を有するが、フレームワーク領域内に変更を含む。
【0107】
【表2】

【0108】
以下の実施例で使われるコントロール構造(control construct)
さまざまなコントロール構造(抗Ang−2抗体及び抗Ang−2ペプチボディ)は、比較の目的で以下の実験に含めた。コントロール構造は次のように命名した:コントロールI:米国特許第2006/0018909号に記載のように(また、Oliner et al., 2004, Cancer Cell 6:507-516を参照)、「Ab536(THW)」の対応するドメインのアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖可変ドメインを持つヒト抗Ang−2抗体;コントロ
ールII:米国特許第7,205,275号に記載のように(また、Oliner et al., 2004, Cancer Cell 6:507-516を参照)、「2XCon4(C)」のアミノ酸配列を有するヒトAng−2に結合するペプチボディ;コントロールIII:米国特許第7,138,370号に記載のように、「L1−7」のアミノ酸配列を有するヒトAng−2に結合するペプチボディ;コントロールIV:米国特許第2006/0246071号に記載のように、「3.19.3」の対応するドメインのアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖可変ドメインを持つヒト抗Ang−2抗体;及びコントロールV:国際公開公報第2009/097325号に記載のように、「MEDI1/5」の対応するドメインのアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖可変ドメインを持つヒト抗Ang−2抗体。(すべてのコントロール構造が全実施例に使われるとは限らない)。以下の表で、記号の「Ab」及び「Pb」は、それぞれ抗体及びペプチボディ・コントロールを同定するために含めた(即ち、コントロールI=Ab;コントロールII=Pb;コントロールIII=Pb;コントロールIV=Ab;及びコントロールV=Ab)。
【0109】
〔実施例3〕:抗原結合親和力測定
選択され精製されたAng−2抗体と、ヒト(配列番号519)、マウス(Mus musculus;配列番号520)及びサル(Macca fascicularis;配列番号521)のヒトIgG1(配列番号528)とコンジュゲートしたAng−2(Ang−2FD)の二量体フィブロネクチン様ドメインとの結合の平衡解離定数(KD値)は、リアルタイムバイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイを用いた表面動力学によって測定した。抗体を、BIACORE(商標)CM5センサーチップに直接アミンカップリングで作られたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体表面、ヤギ抗ヒトκポリクローナル抗体(Southern Biotech, Birmingham, AL)表面又はヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson Immuno Research Lab, West Grove, PA)表面に捕捉させ、捕捉された抗体表面を形成させた。異なる濃度(50nM〜6.25nMの範囲)のタンパク質を、捕捉された抗体表面上に100μL/分で90秒間注入した。抗原・抗体の結合及び解離は、室温で、リアルタイムにモニターした。KD及び抗原/抗体複合体解離の半減期を計算するために、動力学的解析を行った。結果は、下の表3にまとめた。
【0110】
【表3】

【0111】
上記の実験は、ヒトIgG1上にクローン化された、選択され精製された抗Ang−2抗体を用いて繰り返した。結果は、下の表4にまとめた。
【0112】
【表4】

【0113】
さらに異種間親和性を評価するために、選択された抗Ang−2抗体を用いて、異なる2つの温度でさらなる結合実験を行った。それぞれの選択された抗体又はコントロール構造を、BIACORE(商標)チップに直接化学結合で作られたヤギ抗ヒトκポリクローナル抗体表面に40μL/分で1分間捕捉させ、捕捉された抗体表面を形成させた。ヒト、サル及びマウスAng−2FD−Fcを、25nM又は0.78nMの濃度で、捕捉された抗体表面上に60μL/分の流速で3分間注入し、抗原・抗体の解離を25℃又は37℃のいずれかで、リアルタイムに20分間モニターした。
【0114】
結果は、下の表5(25℃結合)及び表6(37℃結合)にまとめた。
【0115】
【表5】

【0116】
別の実験で、ヒト「蝶ネクタイAng−2」の四量体構造(「hBA2」)に結合する選択され精製された抗体のKD値を(上記の方法を用いて)測定した。hBA2は2つの二量体から成り、それぞれの二量体は互いにヒトFcドメインによって連結した2つのAng−2フィブロネクチン様ドメインを含む。hBA2の二量体成分のアミノ酸配列は、配列番号522で示される。結果を、下の表7にまとめた。
【0117】
【表6】

【0118】
さらに別の実験において、野生型ヒトAng−2(hAng−2−WT;配列番号518)及びヒトAng−2(hAng−2FD)のフィブリノーゲン様ドメインに結合する選択され精製された抗体のKD値を(上記のように)測定した。結果は、下の表8にまとめた。
【0119】
【表7】

【0120】
【表8】

【0121】
選択された抗Ang−2抗体の単量体hAng−2FDに対する25℃及び37℃における結合特性を測定するために、さらなる実験を行った。それぞれの選択された抗体又はコントロール構造を、BIACORE(商標)チップに直接化学結合で作られたヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体表面に40μL/分の流速で1分間捕捉させ、捕捉された抗体表面を形成させた。ヒトAng−2FDを、500nM又は7.8nMの濃度で、捕捉された抗体表面上に60μL/分の流速で3分間注入し、抗原・抗体の解離を25℃又は37℃のいずれかで、リアルタイムに20分間モニターした。
【0122】
結果は、下の表9(25℃結合)及び表10(37℃結合)にまとめた。N/D=測定されない。
【0123】
【表9】

【0124】
この実施例に示すように、実施例1に従って生成された数個の抗Ang−2抗体は、コントロールと同等又はそれより高い親和性でAng−2構造に結合する。例えば、抗体H1H685、H1H690、H1H724及びH1H744は、二量体ヒトAng−2−FDとそれぞれ71.4、79、115、及び114pMのKDで結合したのに対して、コントロールIの抗体は、二量体ヒトAng−2−FDと399pMのKDで結合した(表4を参照)。同様に、抗体H1H685、H1H690、H1H724及びH1H744は、ヒトBA2(四量体Ang−2フィブリノーゲン様ドメイン構造)とそれぞれ11.9、17.9、23.3及び17.2pMのKDで結合したのに対して、コントロールIの抗体は、hBA2と83pMのKDで結合した(表7を参照)。従って、コントロール構造と比較すると、多くの本発明の抗体は、Ang−2に対して増強した結合性を示した。抗体のH1H685Pは、コントロール構造と比較すると、Ang−2に対して特に強固な結合特性を示した。
【0125】
〔実施例4〕:Ang−1を超すAng−2に対する優先的結合
選択された抗体がAng−2及びAng−1の両者に結合するかどうか、又はそれらが選択的にAng−2だけに結合するかどうかを確認するために、結合実験(プラズモン共鳴アッセイ)を行った。それぞれの選択された抗体又はコントロール構造を、BIACORE(商標)チップに直接化学結合で作られたヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体表面に40μL/分の流速で1分間捕捉させ、捕捉された抗体表面を形成させた。完全野生型ヒトAng−1又はAng−2を、25nM又は0.78nMの濃度で、捕捉された抗体表面上に60μL/分の流速で3分間注入し、抗原−抗体の解離を25℃又は37℃のいずれかで、リアルタイムに20分間モニターした。
【0126】
これらの実験結果を、下の表11〜14にまとめた。N/D=測定されない。「非結合(No binding)」は、これらの実験で用いた特定の実験条件下で、検出可能な結合は観察されないことを意味する。
【0127】
【表10】

【0128】
【表11】

【0129】
【表12】

【0130】
【表13】

【0131】
これらの結果は、H1H685Pは高い親和性でAng−2に結合するがAng−1とは結合しないという点で、本実験で試験した抗体の中でユニークであることを示す。唯一、Ang−2に結合するがAng−1に結合しない他の構造はコントロールIIIである。しかし、コントロールIIIはペプチボディでありそして本実験で試験した全ての他の抗体はAng−2及びAng−1の両者に結合することを重要視すべきである。Ang−2結合に対する選択性は、Ang−2及びAng−1の両者に結合する抗体にはない、治療的利益をH1H685Pに与える可能性がある。
【0132】
〔実施例5〕:ヒトTie−2に対するAng−2結合の阻害
Tie−2はAng−2の天然受容体である。ヒトTie−2(hTie−2)に対するAng−2の結合を遮断する抗Ang−2抗体の能力について試験した。hTie−2−mFc(マウスIgGとコンジュゲートしたヒトTie−2から成るキメラ構造;配列番号525)を、2μg/mLの濃度で96ウェルプレート上にコーティングし、一晩インキュベートした後洗浄バッファー(0.05%Tween−20含有PBS)で4回洗浄した。プレートは次に、0.5%BSA(Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)を含むPBS(Irvine Scientific, Santa Ana, CA)を用いて、室温で1時間ブロッキングした。別のプレートで、精製抗Ang−2抗体を、出発濃度50nMで、プレートを横切って連続的に3倍に希釈した。ヒトIgGとコンジュゲートしたヒト、マウス又はサルのAng−2FDタンパク質(Ang−2FD−hFc)をそれぞれ2nM、8nM、又は2nMの終濃度で添加し、室温で1時間インキュベートした。抗体/Ang−2FD−Fc混合物を、hTie−2−mFcを含むプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。hTie−2−mFcタンパク質に結合したAng−2FD−hFcの検出は、抗ヒトIgG抗体とコンジュゲートした西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)(Jackson Immuno Research Lab, West Grove, PA)によって測定し、テトラメチルベンジジン(TMB)基質(BD Biosciences, San Jose, CA)を使用した標準的な比色反応によって展開させた。吸光度はOD450で0.1秒間読み取った。16.67nMの選択された抗Ang−2抗体による、hTie−2−mFcに対するAng−2FD−hFc結合の遮断パーセントは、表15に示した。
【0133】
【表14】

【0134】
同じような実験で、選択され精製された、ヒトIgG1上にクローン化された抗Ang−2抗体の、hTie−2に対するAng−2FDの結合を遮断する能力を(上記のように)試験した。16.67nMの選択された抗Ang−2抗体による、hTie−2−mFcに対するAng−2FD−hFc結合の遮断パーセントは、表16に示した。NT:試験しない。
【0135】
【表15】

【0136】
別の実験で、選択され精製された抗Ang−2抗体の、hTie−2に対する20pMのビオチン化hBA2の結合を遮断する能力を(上記のように)試験した。この実験のために、ヒスチジン標識をコンジュゲートしたヒトTie−2(hTie−2−His;配列番号526)を上記のhTie−2−mFcと同様の方法で使用した。5nMからの抗体濃度は連続的に3倍に希釈した。IC50(阻害濃度)値は、Tie−2に対するビオチン−hBA2結合に由来するシグナルの50%遮断に必要な抗体量を計算することによって求めた。各抗体の平均IC50値は、別の2つの実験を基に算定した。結果は、表17にまとめた。NB:5nMの濃度で遮断が観察されない。
【0137】
【表16】

【0138】
同様の実験で、選択され精製された、ヒトIgG1上にクローン化された抗Ang−2抗体の、hTie−2に対するビオチン化hBA2の結合を遮断する能力を(上記のように)試験した。結果は、表18に示した。NB:5nMの濃度で遮断が観察されない。
【0139】
【表17】

【0140】
本実施例は、実施例1の方法に従って生成された幾つかの抗Ang−2抗体が、Ang−2のフィブリノーゲン様ドメインとその受容体(Tie−2)との相互作用を、コントロールの抗体と同等又はそれ以上の強さで遮断したことを示す。例えば、抗体のH1H690、H1H691、H1H695、H1H696、H1H704、H1H706、H1H707、H1H724及びH1H744のそれぞれは、コントロール構造で観察された結果と同様に(表16を参照)、Tie−2受容体に対するヒト、マウス及びサルのAng−2FD構造に95%以上の遮断を起こした。
【0141】
〔実施例6〕:ヒトTie−2に対する完全Ang−2及びAng−1の結合の阻害
Tie−2は、Ang−1並びにAng−2に対する受容体である。従って、本実施例では、いくつかの抗Ang−2抗体の、ヒトTie−2に対するAng−2又はAng−1の結合を遮断する能力を測定し比較した。
【0142】
本実施例で示されるELISA実験は、実施例5の実験と同様の方法で行った。つまり、hTie−2−mFc(マウスIgGとコンジュゲートしたヒトTie−2から成るキメラ構造;配列番号525)を、2μg/mLの濃度で96ウェルプレート上にコーティングし、一晩インキュベートした後洗浄バッファー(0.05%Tween−20含有PBS)で4回洗浄した。プレートは次に、0.5%BSA(Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)を含むPBS(Irvine Scientific, Santa Ana, CA)を用いて、室温で1時間ブロッキングした。別のプレートで、精製抗Ang−2抗体及びコントロール構造を、出発濃度300nMで、プレートを横切って連続的に3倍に希釈した。6Xヒスチジン・タグ(R&D Systems, Minneapolis, MN)とコンジュゲートした完全ヒトAng−2又はAng−1タンパク質を0.6nMの終濃度で添加し、室温で1時間インキュベートした。抗体/抗原混合物をhTie−2−mFcを含むプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。hTie−2−mFcタンパク質に結合したAng−2−His又はAng−1−Hisの検出は、抗ヒトIgG抗体とコンジュゲートした西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)(Jackson Immuno Research Lab, West Grove, PA)によって測定し、テトラメチルベンジジン(TMB)基質(BD Biosciences, San Jose, CA)を使用した標準的な比色反応によって展開させた。吸光度はOD450で0.1秒間読み取った。IC50(阻害濃度)値は、Tie−2に対するヒトAng−2又はAng−1の結合に由来するシグナルの50%遮断に必要な抗体量を計算することによって求めた。IC50の観点で表した結果を、表19のカラム(1)及び(2)に示した。抗体又はコントロール構造が、hAng−1/Tie−2相互作用を遮断する程度と比較したhAng−2/Tie−2相互作用を遮断する程度は、カラム(3)に示されるIC50の倍率差に反映される;即ち、カラム(3)の高い数字は、hAng−1/Tie−2相互作用よりもhAng−2/Tie−2相互作用を遮断する能力が大きいことを示す。
【0143】
【表18】

【0144】
Tie−2に対するAng−1の結合を遮断する選択された抗hAng−2抗体の能力をさらに評価する目的で、バイオセンサー表面プラズモン共鳴実験を行った。本実験では、ヒトTie−2完全細胞外ドメイン構造(hTie−2−mFc−ecto)を、BIACORE(商標)チップ上にアミンカップリングさせ、受容体でコーティングされた表面を作成した。選択された抗hAng−2抗体及びコントロール構造、1μM(抗原に対して100倍過剰)を、10nMのhAng−1−WTとプレミックスし、続いて25℃で60分間インキュベートして抗体−抗原結合を平衡に至らしめ、平衡溶液を形成させた。平衡溶液は、25℃で、受容体表面上に5μL/分で5分間注入した。hTie−2−mFcに対するhAng−1−WTの結合に起因する共鳴単位(RU)の変化を測定した。ゼロ%遮断のベースラインを設定するために、hAng−1に結合しない無関係のペプチボディを本実験に含め、そしてヒトTie−2−mFc構造を、遮断のポジティブ・コントロールとして使用した。抗体とプレインキュベーション後にTie−2に結合したAng−1の量は、ネガティブ・コントロールとプレインキュベーション後にTie−2に結合したAng−1の量のパーセントとして表し、表20に示した。(Tie−2に結合したAng−1の量が多いほど抗体による遮断の程度が低いことを意味する)。
【0145】
【表19】

【0146】
上述の実験を、異なる量のAng−2遮断剤及びコントロールを用いて繰り返した。特に、ヒトTie−2の完全細胞外ドメイン構造(hTie−2−mFc−ecto)を、BIACORE(商標)チップ上にアミンカップリングさせ、受容体でコーティングされた表面を作成した。選択された抗hAng−2抗体及びコントロール構造(50又は150nM)を、hAng−2−WT(25nM)と混合し、続いて25℃で60分間インキュベートして抗体−抗原結合を平衡に至らしめた。平衡溶液は、25℃で、受容体表面上に10μL/分で5分間注入した。選択された抗hAng−2抗体の、hTie−2に対するAng−1−WTの結合を遮断する能力を評価するため、抗体を3つの濃度(50、100又は1000nM)で試験し10nMのhAng−1−WTとインキュベートする以外は同じ手順に準じた。hTie−2に対するAng−2−WT又はhAng−1−WTの結合に起因する共鳴単位(RU)の変化を測定した。ゼロ%遮断のベースラインを設定するために、どちらのアンジオポイエチンとも結合しない無関係の抗体を本実験に含め、そしてヒトTie−2−mFc構造を遮断のポジティブ・コントロールとして使用した。結果は、表21(hTie−2表面に適用したhAng−1)及び22(hTie−2表面に適用したhAng−2)にまとめた。
【0147】
【表20】

【0148】
これらの実験で得られた結果は、H1H685PがAng−1よりもAng−2に優先的に結合することを示した前の結果(実施例4を参照)と一致する。具体的には、本実施例からの結果は、幾つかの抗Ang−2抗体(例えば、H1H685P及びH1H706P)はヒトTie−2に対するヒトAng−1の結合を有意には遮断しないことを示す、にもかかわらず、他の実験でこれらの抗体はAng−2とTie−2の相互作用を強く遮断することが明示された(実施例5、表16を参照)。さらに、これらの実験で、コントロールIIIペプチボディを除いて、どのコントロール構造も、H1H685Pの様な本発明の典型的な抗Ang−2抗体と同じ程度のAng−1を越えたAng−2との優先的な結合/遮断を示さなかった。
【0149】
〔実施例7〕:抗Ang−2抗体によるAng−2媒介Tie−2リン酸化の阻害
本発明の発明者らは、Ang−2の発現が、ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVECs)内で転写因子FOXO1によって誘導できることを明らかにした(Daly et al. 2006 PNAS
103:15491)。さらに、本発明者らは、FOXO1をコードするアデノウイルスによるHUVECの感染は、Ang−2の発現及び分泌、続いてTie−2リン酸化の活性化引き起こすことを示した(Daly et al. 2006 PNAS 103:15491)。
【0150】
抗Ang−2抗体の、Tie−2リン酸化を阻害する能力を試験した。つまり、7×105のHUVECs(Vec Technologies, Rensselaer, NY)を、6cm細胞培養用ディッシュ内の3.5mLのMCDB131コンプリート培地(Vec Technologies, Rensselaer, NY)に播種した。翌日、細胞をOpti−MEM(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)で洗浄し、2mLのOpti−MEMを加えた。緑色蛍光タンパク質(GFP;コントロール)又はヒトFOXO1(Daly et al. 2004 Genes Dev. 18:1060)のいずれかをコードする組み換えアデノウイルスを、10pfu/細胞の濃度で細胞に添加し、4時間インキュベートした。次に、細胞をMCDB131で洗浄し、抗Ang−2抗体を0.5μg/mLの濃度で含む2mLのMCDB131を加えた。感染後20時間に、細胞を溶解させ、Daly et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:15491-15496 (2006) に記載されたように、Tie−2免疫沈降を行った。免疫グロブリンを1時間、プロテインA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)上に集めた。ビーズは冷溶解バッファーで洗浄し、ホスホチロシン(Millipore, Billerica, MA)又はTie−2に特異的な抗体を用いるウェスタンブロットで分析するためにSDSサンプルバッファーに再懸濁させた。シグナルは、HRPをコンジュゲートした第2の抗体及びECL試薬(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を用いて検出した。X線フィルムを走査し、ホスホTie−2及びTie−2シグナルを、ImageJソフトウェアを用いて定量化した。ホスホTie−2/Tie−2比は、各抗Ang−2抗体の%阻害(即ち、%阻害=コントロールに比較したときのホスホTie−2/Tie−2の低下率)を測定するために用いた。例えば、コントロールサンプルで観測されるレベルへのTie−2リン酸化の減少は、100%阻害であると考えられる。観測された%阻害(それぞれ、25〜50%、50〜75%、75〜100%)に従って、試験した各抗Ang−2抗体の相対的な阻害(+、++、+++)は、表23に示した。
【0151】
【表21】

【0152】
本実施例で示されたように、実施例1の方法に従って生成された抗Ang−2抗体は、コントロールI抗体よりも大幅にTie−2リン酸化を阻害した。特に、抗体H1H685、H1H690、H1H691、H1H693、H1H695、H1H696、H1H704、H1H706、H1H707、H1M724、H1M744及びH1M750で、強い阻害が観察された。
【0153】
〔実施例8〕:Ang−1媒介Tie−2リン酸化の阻害
前の実施例で示したように、Ang−2は、Tie−2のリン酸化を媒介する。Ang−1もまた、Tie−2のリン酸化を促進させる。本実施例では、選択された抗Ang−
2抗体の、Ang−1が媒介するTie−2のリン酸化を遮断する能力を評価した。
【0154】
EA.hy926細胞(Edgell et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:3734-3737 (1983))を、10%FBS、HAT、L−グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有した10mLのDMEMに、10cmディッシュ当たり5×106細胞を播種した。24時間後、細胞を、10mLのDMEM+1mg/mLBSA中で1時間、血清飢餓状態にした。次に細胞を、400nMの関係のないイソ型コントロール抗体(“9E10”)若しくは抗Ang−2抗体のH1H685P、又は10〜400nMの範囲の濃度のコントロール物質(コントロールI、コントロールII、コントロールIV、又はコントロールV)のいずれかの存在下、500ng/mLの組み換えヒトAng−1(R&D Systems)で10分間刺激した。
【0155】
インキュベーションの後、細胞を溶解し、Tie−2は、Daly et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:15491-15496 (2006) に記載されている様に、免疫沈降させた。免疫複合体は、プロテインA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)と60分間インキュベーションして集めた。ビーズは冷溶解バッファーで洗浄し、結合したタンパク質は、SDSサンプルバッファー中で加熱することによって溶出させた。サンプルは次に、Tie−2又はホスホチロシンに対するモノクローナル抗体(クローン4G10、Millipore, Billerica, MA)を用いたウェスタンブロット解析に供した。結果は図2に示した。
【0156】
シグナルは、HRPをコンジュゲートした第2の抗体及びECL試薬(GE Healthcare,
Piscataway, NJ)を用いて検出した。X線フィルムを走査し、ホスホTie−2及びTie−2シグナルを、ImageJソフトウェアを用いて定量化した。ホスホTie−2/Tie−2比は、各抗体又はペプチボディの%阻害を決定するために使用した。%阻害=コントロールサンプル(400nMnoイソ型コントロール抗体)と比較したときのホスホTie−2/Tie−2の低下率。
【0157】
コントロール抗体9E10の存在下で、Ang−1はTie−2のリン酸化を強力に活性化させた(図2、パネルA:レーン2及び3をレーン1と比較する)。試験した全てのコントロール物質は、コントロールII(図2、パネルB:レーン17)は50nMで、コントロールIV(図2、パネルA:レーン11)は100nMで並びにコントロールI(図2、パネルB:レーン24)及びコントロールV(図2、パネルC:レーン9)は200nMで完全な阻害が起こり、Tie−2のリン酸化を有意に阻害した。これに反して、H1H685Pは、400nMでも有意な阻害作用を有さない(図2、パネルA:レーン4〜8)。これらの結果は、Ang−1よりもAng−2に対するH1H685Pの特異性のさらなる確証を提供する。
【0158】
〔実施例9〕:抗Ang−2抗体による腫瘍増殖の阻害
選択され精製された抗Ang−2抗体の腫瘍増殖に対する作用を、2つの腫瘍細胞株を用いて測定した。
【0159】
PC3(ヒト前立腺がん細胞株)
手短に言うと、5×106個のPC3細胞を含む100μLの成長因子削減Matrigel(BD Biosciences)を、6〜8週齢の雄性NCrヌードマウス(Taconic, Hudson,
NY)の側腹部に皮下注入した。腫瘍の体積が平均約200mm3に達した後、マウスを、処置用に無作為にグループ分けした。各処置グループのマウスには、抗Ang−2抗体、Fcタンパク質、又はコントロール構造を10mg/kgの濃度で、週2回で約3週間、腹腔内注射によって(表24)、又は2.5、12.5、若しくは25mg/kgの濃度で、週2回で約3週間、皮下注射によって(表25)投与した。腫瘍体積は実験を通して週2回測定し、腫瘍重量は実験の終わりに腫瘍切除したときに測定した。腫瘍重量及び増殖の平均値(平均+/−標準偏差)は、各処置グループについて計算した。腫瘍重量及び増殖の低下パーセントは、Fcタンパク質の測定値との対比から計算した。結果は、表24及び25にまとめた。
【0160】
【表22】

【0161】
上に示したように、抗体のH1H744N及びH1H685Pは、PC3マウス腫瘍モデルで、コントロール構造と比較して、特に著明な抗腫瘍活性を示した。
【0162】
PC3マウス腫瘍モデル及び違う実験抗体(2mg/kgで投与、週2回)を使った同様な実験の結果を、表26及び27に示した。
【0163】
【表23】

【0164】
COLO205(ヒト結腸直腸腺がん細胞株)
手短に言うと、2×106個のCOLO205細胞を含む100μLの無血清培地を、6〜8週齢の雄性NCrヌードマウス(Taconic, Hudson, NY)の側腹部に皮下注入した。腫瘍の体積が平均約150mm3に達した後、マウスを、抗体処置グループ又はFcタンパク質処置グループに無作為にグループ分けした。各処置グループのマウスは、抗Ang−2抗体又はFcタンパク質を4mg/kgの濃度で、週2回で約2週間、腹腔内注射によって投与した。腫瘍体積は実験を通して週2回測定し、腫瘍重量は実験の終わりに腫瘍切除したときに測定した。腫瘍重量及び増殖の平均値(平均+/−標準偏差)は、各処置グループについて計算した。「平均腫瘍増殖」は、処置開始時(腫瘍が約150mm3のとき)からの平均増殖を表す。腫瘍重量及び増殖の低下パーセントは、Fcタンパク質の測定値との対比から計算した。結果は、表28にまとめた。
【0165】
【表24】

【0166】
H1H685Pの効果、特にCOLO205の増殖に対する効果を評価するために、同様な実験を行った。つまり、2×106個のCOLO205細胞を含む100μLの無血清培地を、9〜11週齢の雄性SCID CB17マウスの右側後ろ側腹部の皮下に移植した。腫瘍が約125mm3に達したとき、マウスを無作為に5グループ(n=7〜8マウス/グループ)に分け、Fcタンパク質(15mg/kg)、H1H685P(5又は25mg/kg)又はコントロールII(5又は25mg/kg)で週2回、19日間処置した。腫瘍体積は実験を通して週2回測定し、腫瘍重量は実験の終わりに腫瘍切除したときに測定した。処置開始からの腫瘍重量及び増殖の平均は、各グループについて計算した。腫瘍重量及び増殖の低下パーセントは、Fcコントロールグループとの対比から計算した。結果は、表29にまとめた。
【0167】
【表25】

【0168】
PC3マウス腫瘍モデルと同様に、H1H685Pを含めて本発明の抗体のうちのいくつかは、COLO205マウスモデルで実質的な抗腫瘍活性を示し、そしてそれはコントロール分子によって示された抗腫瘍活性と少なくとも同等であった。
【0169】
〔実施例10〕:腫瘍増殖の阻害並びに抗Ang−2抗体及びVEGFインヒビターの併用による潅流
抗Ang−2抗体とVEGFインヒビターとの組み合わせがCOLO205異種移植片の増殖に及ぼす作用を測定するため、2×106細胞を6〜8週齢の雌性SCIDマウスの右側後ろ側腹部の皮下に移植した。腫瘍の平均体積が約350mm3に達したとき、マウスを無作為に4グループ(n=6マウス/グループ)に分け、ヒトFcタンパク質(7.5mg/kg)、H1H685P(5mg/kg)、VEGF Trap(米国特許第7,087,411号を参照)(2.5mg/kg)又はH1H685P+VEGF Trapの併用で処置した。マウスには、10日の処置にわたって合計3回投与した。腫瘍体積は実験を通して週2回測定した。処置開始からの腫瘍増殖の平均値(平均+/−標準偏差)は、各処置グループについて計算した。腫瘍増殖の低下パーセントは、Fcタンパク質の測定値との対比から計算した。結果は、表30に示した。
【0170】
【表26】

【0171】
本実験の結果は、H1H685P+VEGF Trapの併用が腫瘍増殖の低下を引き起こすことを示し、そしてそれは、どちらの成分単独によって引き起こされる腫瘍増殖の低下パーセントよりも大きかった。
【0172】
併用の有効性を示すさらなる証拠を提供するため、MMT腫瘍の増殖に及ぼすH1H685P+VEGF Trap併用の効果を評価した。0.5×106細胞を6〜8週齢の雌性SCIDマウスの右側後ろ側腹部の皮下に移植した。腫瘍の平均体積が約400mm3に達したとき、マウスを無作為に4グループ(n=11マウス/グループ)に分け、ヒトFcタンパク質(17.5mg/kg)、H1H685P(12.5mg/kg)、VEGF Trap(5mg/kg)又はH1H685P+VEGF Trapの併用で処置した。Fc及びH1H685Pは、9日にわたって3回投与した。VEGF Trap及び併用グループは、12日にわたって4回投与した。腫瘍体積は実験を通して週2回測定し、腫瘍重量は実験の終わりに腫瘍切除したときに測定した(それらのサイズが大きいため、Fc及びH1H685Pグループからの腫瘍は、VEGF Trap及び併用グループからの腫瘍よりも3日前に採取した)。処置開始からの腫瘍増殖及び腫瘍重量の平均値(平均+/−標準偏差)は、各処置グループについて計算した。腫瘍重量及び増殖の低下パーセントは、Fcコントロールグループとの対比から計算した。結果は、表31に示した。
【0173】
【表27】

【0174】
これらの結果は、単独の薬剤処置に比べて、H1H685P+VEGF Trapの強い腫瘍阻害効果を裏付ける。
【0175】
H1H685P+VEGF Trapの併用が、腫瘍血管機能に対して単独の薬剤よりも大きな影響を有するかどうかを測定するため、マイクロ超音波(VisualSonics' Vevo 770 imaging system)を使用し、腫瘍潅流の変化を評価した。COLO205腫瘍を約125mm3に増殖させ、次にマウスをH1H685P、VEGF Trap又は両薬剤の併用で24時間処置した。処置の後、腫瘍血管潅流を、コントラスト増強マイクロ超音波2D画像収集及び腫瘍に入る造影剤の量を表す「ウォッシュ−イン(wash-in)」曲線の解析に基づいて測定した。平均(平均+/−標準偏差)腫瘍潅流を、各グループについて計算した。低下パーセントは、Fcコントロールグループとの対比から計算した。結果は、表32に示した。
【0176】
【表28】

【0177】
併用処置が潅流に及ぼす亢進した作用と一致して、腫瘍切片の抗CD31染色は、併用が腫瘍血管密度に対してより強く作用することを示した(データの表示無し)。腫瘍血管系の機能に対してH1H685P+VEGF Trap併用が亢進した作用を持つことは、腫瘍増殖に対する併用療法の作用増強に対して、可能性がある説明を与える。
【0178】
〔実施例11〕:抗Ang−2抗体及び化学療法剤の併用による腫瘍増殖の阻害
化学療法剤と併用したH1H685Pの腫瘍増殖に及ぼす影響を試験するため、2.5×106個のCOLO205腫瘍細胞を8〜9週齢の雌性SCIDマウスの右側後ろ側腹部の皮下に移植した。腫瘍の平均体積が約150mm3に達したとき(移植後17日目)
、マウスを無作為に4グループ(n=5マウス/グループ)に分け、次のように処置した:第1のグループは、15mg/kgのFcで皮下に及び5−FUの賦形剤で腹腔内に処置し;第2のグループは、15mg/kgのH1H685Pで皮下に処置し;第3のグループは、75mg/kgの5−FUで腹腔内に処置し;第4のグループは、15mg/kgのH1H685Pで皮下に及び75mg/kgの5−FUで腹腔内に併用で処置した。マウスは、合計3回処置され、3〜4日毎に投与された。腫瘍体積は実験を通して週2回測定した。処置開始から38日目までの腫瘍増殖の平均値(平均+/−標準偏差)は、各処置グループについて計算した。腫瘍増殖の低下パーセントは、コントロールグループの測定値との対比から計算した。結果は、表33に示した。
【0179】
【表29】

【0180】
本実験の結果から、H1H685P及び5−FUの併用は、別々に投与したどちらの物質よりも腫瘍増殖に大きな低下をもたらした。
【0181】
〔実施例12〕:抗Ang−2抗体は眼血管形成を阻害する
本実施例では、選択された抗Ang−2抗体のマウスモデルの網膜血管化に及ぼす作用を評価した。
【0182】
実験の1セットには、野生型マウスを使用した。別のセットでは、野生型マウスAng−2の代わりにヒトAng−2を発現するマウス(「hu−Ang−2マウス」と命名)を使用した。2日齢のマウス(P2)に、コントロールFc又は選択された抗Ang−2抗体のいずれかを12.5mg/kgの用量で皮下注射した。3日後(P5で)、幼獣らを安楽死させて眼球を摘出し、4%PFA中で30分間固定した。網膜を切開し、バンデリア豆(Griffonia simplicifolia)レクチン−1で3時間又は4℃で1晩染色して脈管構造を可視可させ、顕微鏡スライド上に平らに載せた。画像はNikon Eclipse 80i顕微鏡カメラで撮り、Adobe Photoshop CS3、Fovea 4.0及びScion 1.63ソフトウェアを用いて解析した。
【0183】
表面の脈管構造で覆われた網膜の面積を測定し、抗体活性の読み出しとして使用した。Fc処置のコントロールと比較して、抗体で処置したマウスの脈管領域のサイズの減少は、表34に提示した。脈管領域の減少パーセントは、抗体の抗血管形成力を反映する。(N/D=測定しない)。
【0184】
【表30】

【0185】
本実施例で示すように、本発明の選択された抗Ang−2抗体は、インビボで眼血管形成を実質的に阻害しており、従って、他の治療状況におけるこれらの抗体の抗血管形成の潜在能力を反映している。
【0186】
〔実施例13〕:抗体結合に重要なAng−2のアミノ酸
hAng−2と本発明の抗hAng−2mAbの結合をさらに特徴付けるために、それぞれが単一の点突然変異を含む7つの変異hAng2−FD−mFcタンパク質を作成した。突然変異のために選択したアミノ酸は、hTie−2と相互作用する領域における、hAng−2とhAng−1の間の配列の違いを基にした(図1)。特に、結晶構造解析に基づいてTie−2と相互作用すると思われるAng−2のフィブリノーゲン様ドメイン(FD)内のアミノ酸で、Ang−1の対応するアミノ酸と異なるアミノ酸を、それぞれ対応するhAng−1の残基に変異させた。この例の結果は、Ang−2に優先的に結合する抗体が相互作用するAng−2のアミノ酸残基を示す。即ち、もし、Ang−2の特定の残基(又は複数の残基)がAng−1の対応する残基に変えられ、Ang−2に優先的に結合する抗体の結合が実質的に低下したなら、抗体はhAng−2のその特定の残基と相互作用すると結論することができる。
【0187】
この実験では、7つのhAng2−FD−mFc変異タンパク質のそれぞれは、BIACORE(商標)チップに直接化学結合で創られた抗マウスFc表面に捕捉された(約147〜283RU)。次に、100nMの各Ang−2抗体(又は、場合によってペプチボディ)を、捕捉されたmFc−標識hAng−2FDタンパク質表面に50μL/分の流速で180秒間注入し、変異hAng2−FD−mFcと抗体の解離を、25℃で20分間、リアルタイムでモニターした。結果は、表35a〜35d及び図3に示した。
【0188】
【表31】

【0189】
【表32】

【0190】
【表33】

【0191】
【表34】

【0192】
本発明のために、抗Ang−2抗体は、もし、その残基がAng−1の相当する残基に変異した場合に、本実施例で用いた実験条件下で、解離のT1/2が野生型構造で観察される解離のT1/2より少なくとも5倍少ないなら、特定のAng−2アミノ酸と相互作用すると見なされる。この定義に照らして、抗体のH1H685Pは、試験した抗体の中で、F469、Y475及びS480と相互作用するという点において、ユニークであるように見える。H1H685Pはまた、Ang−1を越えてAng−2と強く優先的な結合をする故にユニークであるので、F469、Y475及びS480は、Ang−2とAng−1の免疫学的な同定を可能にするエピトープを含むと結論することができる。この実験で試験した他の抗体/ペプチボディは、これらの残基のたかだか1個または2個と相互作用する;即ち、H1H744N及びコントロールIはY475と相互作用し;コントロールIIIはY475及びS480と相互作用し;そしてコントロールVはF469と相互作用すると思われる。興味あることに、Ang−1及びAng−2の両者とTie−2との結合を同じ効力で遮断することが示されたコントロールIIは、この実験で確認されたどのAng−2特異的アミノ酸とも相互作用しない。
【0193】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施態様によって範囲が限定されるものではない。確かに、本明細書に記載されたことに加えて本発明の様々な変更は、上述の説明から当業者には明らかになる。そのような変更は、添付の請求項の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトアンジオポイエチン−2(hAng−2)と特異的に結合するが、hAng−1と実質的に結合しない、単離したヒト抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
抗体又は抗原結合フラグメントが、F469、Y475、及びS480から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含むhAng−2(配列番号518)上のエピトープに結合する、請求項1に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項3】
抗体又は抗原結合フラグメントが、アミノ酸F469、Y475、及びS480を含むhAng−2上のエピトープに結合する、請求項2に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項4】
抗体又は抗原結合フラグメントが、表面プラズモン共鳴アッセイで測定して、約80pM未満、約40pM未満、約20pM未満、又は約10pM未満のKDでhAng−2に結合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項5】
抗体又は抗原結合フラグメントが、表面プラズモン共鳴アッセイで測定して、約1nMを越える、約10nMを越える、約50nMを越える、又は約100nMを越えるKDでhAng−1に結合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項6】
抗体又は抗原結合フラグメントが、表面プラズモン共鳴アッセイで測定して、hAng−1に対していかなる結合も示さない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項7】
抗体又は抗原結合フラグメントが、(a)アミノ酸F469、Y475、及びS480を含むAng−2上のエピトープに結合し;(b)表面プラズモン共鳴アッセイで測定して、約80pM未満のKDでhAng−2に結合し;及び(c)表面プラズモン共鳴アッセイで試験した場合、hAng−1に対していかなる結合も示さない、請求項2に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項8】
抗体又は抗原結合フラグメントが、配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDRs)、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRsを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項9】
抗体又は抗原結合フラグメントが、配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖CDR−1(HCDR−1)、配列番号6のアミノ酸配列を有するHCDR−2、配列番号8のアミノ酸配列を有するHCDR−3、配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR−1(LCDR−1)、配列番号14のアミノ酸配列を有するLCDR−2、及び配列番号16のアミノ酸配列を有するLCDR−3を含む、請求項8に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項10】
抗体又は抗原結合フラグメントが、配列番号18のアミノ酸配列を有するHCVR及び配列番号20のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項11】
抗体又は抗原結合フラグメントが、hTie−2に対するhAng−2の結合を遮断するがhTie−2に対するhAng−1の結合を実質的に遮断しない、請求項1〜10のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項13】
抗体又は抗原結合フラグメントが、配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
さらにVEGFアンタゴニストを含む、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
VEGFアンタゴニストが、抗VEGF抗体、VEGF受容体の小分子キナーゼインヒビター及びVEGF阻害融合タンパク質から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDRs)、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRsを含む抗体と同じAng−2上のエピトープに結合する、単離したヒト抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDRs)、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRsを含む抗体と、hAng−2への結合で競合する、単離したヒト抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
腫瘍を有する患者を処置するときに使用するための、請求項1〜11又は16〜17のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項19】
高血圧、糖尿病、ぜんそく、敗血症、腎臓病、浮腫又は眼疾患を有する患者を処置するときに使用するための、請求項1〜11又は16〜17のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項20】
腫瘍を有する患者を処置するときに使用するための薬剤の製造における、請求項1〜11又は16〜17のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメントの使用。
【請求項21】
高血圧、糖尿病、ぜんそく、敗血症、腎臓病、浮腫又は眼疾患を有する患者を処置するときに使用するための薬剤の製造における、請求項1〜11又は16〜17のいずれか1項に記載の単離した抗体又は抗原結合フラグメントの使用。
【請求項22】
腫瘍を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に請求項1〜11又は16〜17のいずれか1項に記載の単離した抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む、上記方法。
【請求項23】
高血圧、糖尿病、ぜんそく、敗血症、腎臓病、浮腫及び眼疾患から選択される疾患又は障害を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に請求項1〜11又は16〜17のいずれか1項に記載の単離した抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−500970(P2013−500970A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522943(P2012−522943)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/043295
【国際公開番号】WO2011/014469
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】