ヒトサイトメガロウィルス(HMCV)に対する抗体
本発明は、ヒトサイトメガロウィルス(hCMV)と結合し、そしてhCMV感染を中和する新規抗体配列を提供する。当該新規配列は、hCMV感染の内科的治療のために、特にhCMV感染の予防または治療法において使用される医薬組成物を製造するために使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ヒト細胞に感染するウィルスに特異的な生物学的活性を有する、ヒトB細胞から単離された新規抗体配列に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトサイトメガロウィルス(hCMV)は、広く蔓延し、高度に種特異的なヘルペスウィルスであり、免疫抑制された、または免疫的に未成熟な個人において著しい罹患および致死を引き起こす。
【0003】
近年の幾つかの総説が、hHCMVの生物学および臨床症状を分析している(Landolfo S et al,2003;Gandhi M and Khanna R,2004;Soderberg−Naucler C,2006a)。このウィルス性病原菌は、上部消化器系または呼吸器系の内皮細胞および上皮細胞を通じて、あるいは泌尿生殖器系を通じて入ってくるので、世界全体の人口の大部分で感染しており、そして体液接触の後に小児期で獲得される。hCMVに対する血清反応陽性は、発展途上国または低所得地域において、より蔓延している。
【0004】
初期感染の後、hCMVは骨髄細胞系列の特定の宿主細胞で、潜伏状態で残存し、複製され、および多くの異なる細胞種(造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、または線維芽細胞)に転移し、ならびに宿主の免疫系から逃れている。完全にhCMVを除去することはほとんどできないが、hCMVの感染および転移は、免疫系による調整下において防御されているので、CMVの感染は通常、健常人においては無症状である。実際hCMVは、ウィルスゲノムが、選択された部位で潜伏状態のまま残存できるような有効な機構を発達させた。
【0005】
ストレス条件または特定の治療のような、免疫機能を弱める幾つかの状況は、hCMVの再活性化へと導き得る。hCMVの臨床症状(網膜炎、腸炎、胃炎、または肝炎)は、ウィルスの一次感染、再感染または再活性化の後に起こり得る。胎盤を通じた母親から感染、分娩中、または授乳を通じて、約10%の幼児は6ヶ月齢までに感染する。
【0006】
hCMVビリオンは、直線状の、鎖長230kbである二本鎖DNAゲノムを含む20面体のヌクレオカプシドからなる。hCMVゲノムの発現は、ウィルスの感染、潜伏、および複製に関わる多くの生物学的活性に関与する200以上のタンパク質の合成へと導く転写現象の複雑なカスケードによって制御される。(Britt W and Mach M,1996)。
【0007】
構造タンパク質は、非常に複雑で、いまだ完全に明らかにされていないビリオンエンベロープを形成する。それは、他のヘルペスウィルス科で確認された構造タンパク質の相同体であって、ビリオン中で、ジスルフィドで連結されたタンパク質複合体を形成し得る糖タンパク質:gCI(gBのみを含む)、gCII(gMおよびgNを含む)、gCIII (gH、gLおよびgOを含む)を含む。gB、gHおよびgN遺伝子はまた、hCMV株の遺伝子解析のために使用された(Coaquette A et al.,2004;Dar L,2007)。
【0008】
糖タンパク質gNおよびgMは、最も豊富に存在し、そしてgHおよびgBと共に、hCMVエンベロープと宿主細胞表面との間の初期相互作用に必須であり、そして結果的に感染性hCMVの産生のために必須であることが示された。この理由のため、gB、gH、gNおよび/またはgMを標的とする化合物は、hCMV感染、再感染または再活性化の後に起こる、細胞内への循環性hCMVビリオンの進入を防ぐことによって、効果的にhCMVの完成を阻害することができる。
【0009】
利用可能な治療法の選択肢がほとんどないため、hCMVの治療は困難である。ウィルスの複製を阻害する、現在利用できる薬剤化合物(ガンシクロビル、シドフォビル、フォスカルネット、マリバビル、および開発中の他の薬剤)は、著しい臨床改善を実現するが、乏しい経口バイオアベイラビリティ、低い活性、(ウィルス標的の変異による)hCMV耐性の出現、および用量を制限する毒性に悩まされるかもしれない(De Clercq E,2003;Baldanti F and Gerna G,2003;Gilbert C and Boivin G,2005)。
【0010】
hCMV感染を予防および治療する新規手段が、特に免疫不全の患者のために、移植手術の準備において、および出産前の予防において必要とされている。実際、hCMVは、HIVの患者において、および臓器移植者において臨床的に重大な日和見病原性菌であり、そしてそれは移植片拒絶とは独立して移植片喪失に寄与し、最終的に罹患および死亡へとつながる(Puius Y and Snydman D,2007)。骨髄および固体組織移植の増加は、hHCMV性網膜炎のようなhCMVの臨床症状の可能性を上昇させる(Wiegand T and Young L, 2006)。さらに、hCMVは、hCMVに感染している母親によって先天的に、または周産期において感染させられることによる(難聴、発育遅延または知能発育不全のような)出生異常の主要な感染性の原因である(Griffiths P and Walter S,2005)。
【0011】
したがって、万能であって、早期予防的hCMV特異的治療のための、例えば移植患者における(Hebart H and Einsele H,2004;KaKl A et al.,2005;Snydman D,2006)、hCMV関連性神経性病態を発症している患者における(Griffiths P,2004)、または垂直感染および胎児ならびに新生児の生命を危険にさらすhCMV感染を予防するために、リスクのある妊娠における(Schleiss M,2003)hCMV疾患予防のための薬剤を提供することは重要である。
【0012】
さらに、hCMVに対する医薬組成物は、(心血管系疾患および自己免疫疾患または幾つかの種類の癌のような)他のより広範囲にわたる疾患の治療のために有用であるかもしれず、この場合、hCMVは補助因子の可能性があり、そして/または免疫抑制治療中において再活性化され得る。例えば、hCMVは、細胞のアポトーシス、分化および転移における腫瘍調節効果を有するかもしれないため、hCMVは現在、腫瘍侵襲による、および免疫回避による長期合併症のような疾患において重要性の増しているヒト病原菌である。自己免疫疾患または血管疾患において、hCMV感染は免疫性および炎症性反応を変化させるしれない(Cinatl J et al.,2004;Soderberg−Naucler C,2006b)。
【0013】
多くの高リスクにある患者群に対して予防を提供する目的において、hCMV感染を予防する別の方法はワクチン接種である。しかし、ワクチン接種と、結果的に生ずる免疫応答との間の相関性が完全に理解されておらず、そして(特定の候補抗原または生弱毒化ワクチンを用いた)最適なワクチン接種法は、予防の標的とされている患者群に依存するようである。したがって、予防ワクチン接種法はいまだに評価段階にある(McLean G et al.,2006;Schleiss M,2005)。
【0014】
hCMV感染に対する薬理学的手法の現時点における制限という観点において、宿主−hCMVの関係についての知識、および特にhCMV−特異的な免疫応答の知識の増加によって、免疫を基盤とした治療法は、hCMV関連の合併症の良好な治療法として、既存の治療法と置き換わる、または補完する優れた代替手段となっている(Gandhi M and Khanna R,2004)。近年、免疫不全のマウスにおいて、致死へと向かうCMV感染からの長期の予防が、ウィルス特異的メモリーB細胞を移植することで達成され、そしてこのことは、そのような細胞が治療的有用性を有するかもしれないことを示唆している(Klenovsek K et al.,2007)。
【0015】
細胞を基盤とした治療のより簡便な別の方法は、ヒトまたはウィルス性抗原(例えば、hCMV)に対して、明確な中和活性を有する治療抗体を含む医薬組成物を患者へ投与することからなる、受動免疫療法であり得る。
【0016】
この治療方法は、抗原結合に基づいて、ならびにウィルスの治療標的に向かっていく抗体および抗体断片の生物学的特性に基づいて考案された(Dunman P and Nesin M,2003;Keller M and Stiehm E,2000)。受動免疫療法は、臨床診療に導入され、速やかに(感染症、免疫介在疾患および癌を含む)広範囲にわたる疾患の治療機会を拡張した。この方法は、免疫系が標的分子を阻害および/または除去するために必要とされる量の、および/または特異性のある抗体を産生することのできない患者において特に有効であり得る(Chatenoud L,2005;Laffly E and Sodoyer R,2005)。
【0017】
hCMV治療の分野において、この手法は、高力価の抗hCMV抗体を有するヒト血漿を貯留することで得られ、そして臨床用途のために(サイトテクト(Cytotect)またはサイトガムという名前で)市販されている、ヒト免疫グロブリン調製物を静脈内投与することによって行われる。しかし、これらの製品は、hCMV感染を阻害するための、部分的にのみ満足できる解決策である。実際に、この治療法は、免疫不全の患者に対して大部分が予防療法として、および抗ウィルス剤が通常同時投与される予防法として使用される(Marasco W and Sui J,2007;Nigro G et al.,2005;Bonaros N et al.,2004;Kocher A et al.,2003;Kruger R et al.,2003)。さらに、文献で報告されている通り、安全上の問題およびそのような調製物の不足についての関心が高まっている(Bayry J et al,2007;Hamrock D,2006)。
【0018】
hCMVエンベロープ上に発現している抗原に対して高い親和性を有し、そして感染を中和することができるヒト組み換え抗体は、受動免疫法のためのより好適な薬剤となるだろう。エンベロープタンパク質の化学量論量は可変であり、そして宿主の免疫応答を避けるように変化するかもしれないが、実際、幾つかのhCMV糖タンパク質は、ウィルスを中和する抗体の産生を含む強い宿主免疫応答を誘発する。この応答は、宿主免疫の重要な構成要素であると考えられ、そして抗体およびワクチンの両方の発展における目標を示している。
【0019】
ヒトモノクローナル抗体は、マウスモノクローナル抗体の本質的な制限のために、臨床適用のための最も好ましい抗体である。しかし、以前に同定されたhCMV治療用ヒト抗体の発展は(Matsumoto Y et al.,1986)、例えば造血幹細胞における(Boeckh M et al.,2001)、または網膜炎における(Gilpin A et al.,2003)そのような抗体の有効性を評価した研究において、臨床的有益性が観察されなかったために中断されている。これらの失敗した試験により、最も広範囲のhCMV株を、より効果的に中和できるヒトモノクローナル抗体を選択することを目指したさらなる研究が必要とされている。CMV感染の治療は、培養中で培養されたヒトB細胞から精製されるヒトモノクローナル抗体か、または哺乳類細胞株中に導入されたヒト配列によって発現された、組み換えタンパク質として産生されるヒトモノクローナル抗体を含む、より活性のある医薬組成物を有することによって利益を受けるだろう。
【発明の概要】
【0020】
発明の開示
本発明は、hCMVと結合し、および中和し、ならびにhCMV感染またはhCMV関連疾患を検出、治療、阻害、予防および/または改善するために使用され得る新規抗体配列を提供する。
【0021】
ヒトB細胞は、hCMV血清反応陽性患者から得られ、そして不死化された。この不死化されたヒトB細胞のポリクローナル群は、インビトロにおいてhCMVの感染力を中和する、細胞培養上清中の抗体(免疫グロブリンG、IgG)の存在について検査された継代培養を製造するために分けられた。特に、活性を中和する形態、アイソタイプおよびクローン性は、26A1と名づけられた継代培養によって分泌された抗体から決定された。当該抗体は、初代細胞培養上清および組み換えヒトモノクローナル抗体の両方からアフィニティ精製され、これは、hCMV感染のインビトロにおけるモデルを使用することによる、hCMV特異的中和活性を確認する。この抗体は、hCMVエンベロープ上にある抗原に対する中和の性質決定に使用され得る。
【0022】
26A1継代培養によって分泌される抗体の可変領域をコードするDNA配列は、増幅され、クローン化され、そして配列決定された。対応するタンパク質配列は、hCMV特異的生物活性の原因となる相補鎖決定領域(CDR)を同定するために分析された。これらの配列は、組み換えタンパク質を産生するための好適な技術を使用して、hCMV特異的結合特性および中和特性を有する、完全抗体、抗体断片または他の形態にある構造タンパク質(例えば生理活性ペプチド、融合タンパク質)の形態となっているタンパク質を産生するために使用され得る。
【0023】
hCMV感染症およびhCMV関連疾患の取扱いにおける、治療的、予防的および/または診断的有用性を有する組成物は、本発明のタンパク質を使用して、組み換えタンパク質か、または26A1継代培養由来の細胞培養から精製される天然型抗体として産生され得る。そのような組成物は、抗ウィルス化合物および/または静脈注射用免疫グロブリン(IVIg)調製物に基づく現在のhCMV治療を補完する、または置き換えるために使用されるかもしれない。
【0024】
本発明のさらなる実施形態は、以下の詳細な説明において提供されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(A)は、文献(Rothe M et al,2001)に記載されている通りの、gB特異的ELISA中に取り付けられ、そして使用されたCG3抗原の模式図である。組み換え株間融合CG3は、hCMV株AD169(SwissProt Acc. No.P06473;アミノ酸27−84)およびタウン(Towne)(スイスプロット Acc. No.P13201;アミノ酸27−84)由来のgB抗原領域2(AD2、配列番号1および2)の組み合わせに相当する。AD領域は、異なるウィルス株中で保存されている、および中和抗体によって認識されることが示されている部位(アミノ酸70〜81、下線部)を含む(Qadri I et al.,1992;Kropff B et al.,1993)。図1(B)は、gH特異的ELISAアッセイに使用されるgH(Ag)−GST融合タンパク質を含む、gH抗原の模式図である。組み換え抗原gH(Ag)−GSTは、hCMV株VR1814(Revello M et al.,2001)からのgHアミノ末端領域(アミノ酸16〜144;配列番号3)と、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との間の読み枠内融合に相当する。gHのアミノ末端は、中和抗体によって認識されるリニアー抗体結合部位(アミノ酸34〜43;下線部)を含む(Urban M et al.,1992)。
【図2】図2は、hCMVと結合し、および中和するIgG抗体を含む継代培養(ウェル)を同定し、およびその特性を明らかにする選択過程の概要である。継代培養は、PCT/EP2005/056871に開示されている、EBV型の不死化方法を用いて、hCMV患者(CMV7)由来のB細胞を不死化することによって得られた。著しい細胞増殖を示す継代培養(ウェル)からの上清は、マイクロ中和試験アッセイにおいて直接スクリーニングされた。中和活性を示す上清はその後、gBおよびgH特異的ELISAを用いてスクリーニングされた。それぞれのスクリーニングアッセイにおける陽性ウェルの数は、灰色の楕円で示される。
【図3】図3は、無血清培地中で培養された、26A1継代培養由来細胞培養の上清由来であるプロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって精製された、天然型26A1抗体のhCMV中和活性を示す。用量反応曲線は、hCMV株AD169(1000PFU/反応;IC50 0.82μg/ml)と共にヒト胚線維芽細胞(HELF)を含む、またはhCMV株VR1814(1000PFU/反応;IC50 0.67μg/ml)と共にヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を含む、いずれかの場合におけるhCMV中和アッセイについて描かれた。
【図4】図4は、不死化ヒトB細胞継代培養由来のIgGを含む上清における、gH(Ag)特異的(A)、およびCG3抗原特異的(B)結合活性を示す。ELISAは、細胞培地のみ(培地、陰性対照)または26A1、1F7(欧州特許出願第07111741号明細書に記載されている通り、CMV5提供者から得られた不死化細胞において同定された)および8C10(本特許出願および欧州特許出願第07115410号において記載されている通り、CMV7提供者から得られた不死化細胞において同定された)継代培養由来の上清を使用して行われた。点線は、継代培養が陽性であるとみなすための閾値(O.D.=0.1)を表す。
【図5】図5(A)は、26A1 IgG(VH 26A1;配列番号4および5)の重鎖可変領域における、DNA(下側のもの、393個の塩基対)およびタンパク質(上側のもの、131個のアミノ酸)コンセンサス配列のアラインメントである。図5(B)は、予想されるCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3、下線部、配列番号6、7および8)を示した、VH26A1のタンパク質コンセンサス配列である。単離されたE.コリ(E.coli)形質転換体由来のプラスミド中においてクローン化されたDNA配列によってコードされた別のアミノ酸が、コンセンサスタンパク質配列の下側に示されている。
【図6】図6(A)は、26A1 IgG(VL 26A1;配列番号9および10)の軽鎖可変領域における、DNA(下側のもの、330個の塩基対)およびタンパク質(上側のもの、110個のアミノ酸)コンセンサス配列のアラインメントである。図6(B)は、VL26A1の予想されるCDR(LCDRl、LCDR2およびLCDR3、下線部、配列番号11、12、13)を示した、VL26A1のタンパク質コンセンサス配列である。
【図7】図7は、組み換えヒト26A1モノクローナル抗体(配列番号15)の重鎖のDNA(下側のもの、1449個の塩基対、配列番号14)およびタンパク質(上側のもの、482個のアミノ酸)コンセンサス配列のアラインメントである。SignalP 3.0オンライン予想プログラム(Bendtsen J et al,2004)を使用して決定されるように、シグナルペプチドとして最も起こり得る切断部位は、19番目と20番目との間(VLS−QV)である。26A1継代培養における細胞から作製されたcDNAにおいて最初に同定された配列は、下線が引かれている(図5を参照)。アミノ酸153〜482番目は、ヒトIgG1重鎖定常領域に相当する(SwissProt Acc.No.P01857)。
【図8】図8は、組み換えヒト26A1 IgG(配列番号17)の重鎖のDNA(下側のもの、705個の塩基対、配列番号16)およびタンパク質(上側のもの、234個のアミノ酸)コンセンサス配列のアラインメントである。SignalP 3.0オンライン予想プログラム(Bendtsen J et al,2004)を使用して決定されるように、シグナルペプチドとして最も起こり得る切断部位は、16番目と17番目との間(CTG−SV)である。26A1継代培養における細胞から作製されたcDNAにおいて最初に同定された配列は、下線が引かれている(図5を参照)。アミノ酸1〜19番目および131〜234番目は、ヒトIgラムダ鎖に相当する(SwissProt Acc.No.Q8N355)。
【図9】図9は、プロテインA精製された天然型26A1抗体と比較した、組み換えヒト26A1抗体のhCMV中和活性を示す。活性は、マイクロ中和試験アッセイ(A;1000PFU/反応、感染後72時間)またはプラーク減少アッセイ(B)において、HELF細胞およびAD169hCMV株を用いて試験された。
【図10】図10は、プロテインAから精製された天然型26A1抗体と比較した、組み換えヒト26A1モノクローナル抗体のhCMV中和活性を示す。活性は、マイクロ中和試験アッセイ(A;1000PFU/反応)においてUVECヒト細胞およびVR1814hCMV株を用いて、またはプラーク減少アッセイ(B;1000PFU/反応)においてHELFヒト細胞およびAL−1 hCMV株を用いて試験された。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
PCT/EP2005/056871に記載された方法によって、生物学的活性(例えば、ヒトまたはウィルス標的との結合および/または中和)を有する抗体を血液中に含む患者から得られる、アイソタイプ特異的ヒトB細胞の効率的不死化を、そのような生理活性を有する抗体を分泌する細胞のポリクローナル群を得るという観点から行うことができる。低細胞密度(例えば1ウェルあたり50、20細胞またはそれよりも少ない量)での一段階のクローニングの後に、広範囲のスクリーニングアッセイが、これらの方法によって獲得された継代培養の上清を使用して行われ得る。この方法によって、多くのレパートリーのIgG分泌継代培養が特徴付けられ、そして結果的に、抗原に対する所望の結合特異性および/または生物学的活性を有する多くのヒトモノクローナルIgGが同定され得る、不死化B細胞のポリクローナル群を得ることが可能である。
【0027】
本発明において、IgGを分泌する、不死化ヒトB細胞のポリクローナル群は、その血清が生物学的活性として強いhCMV中和活性を示す、hCMV患者の血液から得られた。当該ポリクローナル群は、1ウェルあたり20細胞である一段階の継代培養において、そして所望の培養条件において、不死化ヒトB細胞を含む何千もの継代培養を作製するために使用された。より強い活性を示すものを選択する目的において、特定の生物学的活性が、何百もの効率的に増殖された細胞培養の上清を用いて試験され、そしてその後、分泌された抗体のアイソタイプ、および可能であればエピトープを決定した。
【0028】
26A1と名付けられた、最も期待のできる継代培養の一つは、大規模培養から天然型ヒト抗体を精製すること、および不死化B細胞からそのような抗体をコードするDNAを単離することの両方のために使用された。前記DNA配列は、組み換えヒト抗体と同様、天然型ヒト抗体を産生するために使用された。天然型、および組み換えヒト26A1モノクローナル抗体は、より広範囲な生物学的アッセイを行うために、およびhCMV関連の臨床適用における潜在的有益性を評価するために使用された。
【0029】
実施例は、同様の生物学的活性を有する細胞培養上清、天然型ヒト抗体および組み換えヒト抗体が、どのようにして、最初の血清およびヒトEBV−不死化B細胞のポリクローナル群において決定されたのかを示している。これらの証拠は、PCT/EP2005/056871に記載されている方法によって、生物学的に活性を有する、アイソタイプ特異的な、天然型および組み換えヒトモノクローナル抗体の同定、性質決定および産生をすることができることを裏付けている。実際、細胞の不死化および細胞培養条件における増殖の完全な方法は、ヒト抗体のレパートリーを速やかに、効率的におよび直接的に利用できるようにする。さらに、前記方法により得られた細胞は凍結され、そして異なる生物学的活性および/または抗原のために、異なる時期に、または同時にスクリーニングされ得る。
【0030】
一の実施形態において、本発明は、26A1抗体(配列番号8)のHCDR3(重鎖可変領域のCDR3)の配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むタンパク質を提供する。HCDR1およびHCDR2(配列番号6および7)と共に、このHCDR3は、26A1抗体の重鎖の可変領域(VH 26A1;図5;配列番号5)中に含まれている。この配列は、26A1抗体を分泌する、最初の継代培養から得られた細胞を使用して増幅およびクローン化されたDNA配列(図5A;配列番号4)によってコードされている。したがって、本発明のタンパク質は、26A1抗体のHCDR3(配列番号8)と共に、26A1抗体のHCDR1(配列番号6)および/またはHCDR2(配列番号7)の配列を含んでもよい(図5B)。そのようなタンパク質は、26A1抗体の重鎖可変領域の全配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含んでもよい。
【0031】
26A1抗体はまた、前記と同様の方法を用いて、特定のLCDR(配列番号11、12、および13)と共に、DNA(配列番号9)およびタンパク質(配列番号10)の配列が決定された軽鎖可変領域を含んでもよい(図6)。したがって、本発明のタンパク質は、26A1抗体の単一のLCDRからなる群(配列番号11、12、および13)から選択される、一またはそれ以上の配列をさらに含むことができ、そしてそれは、VL 26A1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むタンパク質として供給され得る(図6B;配列番号10)。これは、天然型VL 26A1およびVH 26A1配列の両方を、(二つの軽鎖および二つの重鎖を含む四量体複合体の天然高次構造において、または天然型抗体の組み換え変形体としての単一のタンパク質において)軽鎖および重鎖として含む、ヒト組み換え抗体が望ましいときに特に適用される。
【0032】
同一性のレベルがどこで示されたとしても、この同一性のレベルは、本発明に関連のある配列の完全長に基づいて決定されるべきである。
【0033】
26A1抗体のHCDR3は、実施例で示されるように、hCMVと結合し、および中和することができる特異的ヒト抗体の抗原結合部位を特徴づけるものだと考えられる。抗体の幾つかの、または全てのCDRは通常、抗原結合表面に達するために必要とされているが、HCDR3は配列の観点のみならず、長さの観点からも抗体間で最も大きな違いを示すCDRである。そのような多様性は、体液性免疫機構によって基本的にいかなる抗原をも認識することができる、結合領域の根本的な要素である(Xu and Davis,2000;Barrios Y et al.2004;Bond C et al.,2003)。あるいは、CDRの組み合わせは、近年概説されたように(Ladner R,2007)、元来の結合特性を保持している非常に短いタンパク質で互いに接続され得る。
【0034】
したがってhCMV中和タンパク質は、hCMV結合部位である、26A1抗体のHCDR3を使用して、26A1抗体由来の他のCDRと組み合わせて、または組み合わせずに産生され、そしてそれは、抗体タンパク質フレームワーク中で(Knappik A et al.,2000)、または抗体と関連のないタンパク質フレームワーク中で(Kiss C et al.,2006)発現され得る。
【0035】
26A1抗体(または単離されたHCDRおよびLCDRのような、選択された部位)を形成する重鎖および軽鎖の可変領域は、Scfv(一本鎖可変断片)、Fab(可変性重/軽鎖ヘテロ二量体)、二重特異性抗体(diabody)、ペプタボディ(peptabody)、VHH(重鎖抗体の可変領域)単離された重鎖または軽鎖、二重特異性抗体(bispecific antibodies)および他の非臨床/臨床適用のための改変抗体変形体のような、異なる名前で文献に記載されている通りの、機能的抗体断片としての他の全てのタンパク質形態中に含まれ得る(Jain M et al.,2007;Laffly E and Sodoyer R,2005)。
【0036】
別の抗体は、軽鎖可変領域(VL)シャッフリング法を通じて、26A1抗体の配列を用いて作製され得る。実際、親和性、安定性および/または組み換え体産生の観点において、改善された特性を有するVH/VLの組み合わせを決定する目的において、VL領域ライブラリーと結合された、(26A1の一つのような)一本鎖重鎖可変領域VHを用いて、幾つかの異なる抗体が作製され、そしてhCMV特異的活性を試験され得る(Ohlin M et al.,1996;Rojas G et al.,2004;Watkins N et al.,2004)。
【0037】
新規生理活性ペプチドを開発するための新しい手法はまた、元の活性を維持し、そしてより好適な薬理学的プロファイルを有するかもしれない、L−アミノ酸および/またはD−アミノ酸を含む、CDR由来ペプチドを合成する可能性を示す(Smith J et al.,1995; Levi M et al.,2000;Wijkhuisen A et al.,2003)。
【0038】
したがって、26A1抗体のHCDR3のみならず、26A1抗体のHCDR3と高い類似性を有する配列、それを含む融合タンパク質、および(例えば、正常な、またはレトロ−インバーソ(retro−inverso)型の高次構造において、L−アミノ酸、D−アミノ酸を含む)それら由来の合成ペプチドが試験され、そしてhCMV結合タンパク質および中和タンパク質として使用され得る。
【0039】
さらに、改善された特性のある抗体を有するために、特に、(より良い薬物動態特性、または抗原に対するより高い親和性のような)臨床適用のために、抗体は特定の位置において修飾されていてもよいことが知られている。これらの変更は、26A1抗体のCDRおよび/またはフレームワーク中でなされ、そして当該配列は、親和性成熟法および他の方法を使用する、抗体の合理的設計のための任意の専用技術を適用することによって選択され得る(Kim S et al.,2005;Jain M et al,2007)。
【0040】
本発明のタンパク質は、通常、特定のアイソタイプを有する完全ヒトモノクローナル抗体のような抗体として提供されてもよい。例えば、IgGアイソタイプは、ほとんど全ての承認された治療抗体の抗体形態である(Laffly E and Sodoyer R,2005)。しかし、HIV中和IgG1から単離された抗原結合部位がヒトIgA配列上に導入され、そして得られた抗体は、同様にHIV感染を阻害することができる(Mantis N et al.,2007)。
【0041】
本発明のタンパク質はまた、抗体断片、生理活性ペプチドまたは融合タンパク質として提供されるかもしれない。これらの全て代替的な分子は、26A1抗体で決定された元のhCMV結合および中和特性を、高めるとまではいかなくても、維持するはずである。融合タンパク質の場合において、異種タンパク質配列は、hCMV特異的部位(例えば抗体断片)の正確な発現および生物学的活性に影響を与えることなく、26A1由来の配列のN末端またはC末端に位置され得る。
【0042】
用語「異種タンパク質配列」とは、hCMV特異的部位(例えば抗体断片)のN末端またはC末端の、天然に存在しないタンパク質配列を示す。このタンパク質配列をコードするDNA配列は通常、組み換えDNA技術によって融合され、そして少なくとも5アミノ酸をコードする配列を含む。
【0043】
そのような異種タンパク質配列は通常、特定の診断的および/または治療的使用のために、hCMV特異的抗体断片に追加の特性を提供するために選択される。そのような追加の特性の例は:検出もしくは精製手段、追加の結合部位もしくは生物学的リガンド、または融合タンパク質の翻訳後修飾(例えばリン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、SUMO化またはタンパク質内部分解性切断)を含む。
【0044】
あるいは(または異種タンパク質配列との融合に加えて)、本発明のタンパク質の活性は、治療剤、安定化剤または診断剤のような、異なる化合物との結合によって改善されるかもしれない。これらの薬剤の例は、化学的リンカーまたは重合体を使用して結合され得る、検出可能な標識(例えば放射標識、蛍光化合物、毒素、金属原子、化学発光物質、生物発光物質または酵素)である。hCMV特異的な生物学的活性は、代謝および/または診断的もしくは治療的適用における安定性を変化させるタンパク質または重合体のような、別の治療用タンパク質との融合によって改善されるかもしれない。
【0045】
タンパク質部位、リガンドおよび好適なリンカーを選択ならびに設計する方法だけでなく、融合タンパク質の構築、精製、検出および使用のための手法も、文献中で提供されており(Nilsson J et al,1997;「キメラ遺伝子およびハイブリッドタンパク質の適用」Methods Enzymol.Vol.326〜328,Academic Press,2000;国際公開第01/77137号)、そして臨床において、および研究室おいて一般に利用可能である。例えば、融合タンパク質は、融合タンパク質のインビボおよび/またはインビトロにおける同定またはその精製を容易にすることができる、(ポリヒスチジン、FLAG、c−MycまたはHAタグのようなタグを含む)市販の抗体によって認識される配列を含んでもよい。
【0046】
他のタンパク質配列は、(緑色蛍光タンパク質の場合のような)直接的蛍光分析によって、または特定の基質もしくは酵素によって(例えばタンパク質分解部位を使用して)、同定され得る。hCMV特異的抗体、抗体断片、生理活性ペプチドおよび融合タンパク質の安定性は、ファージコートタンパク質(cp3またはcp8)、マルトース結合タンパク質(MBP)、ウシ血清アルブミン(BSA)またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)のような担体タンパク質との融合によって改善されるかもしれない。
【0047】
26A1抗体は、本発明の主要な目的であり、そしてそれは、特定の継代培養の上清中において、hCMVを中和する能力によって選択された、ヒトIgG1モノクローナル抗体として特徴付けられた。この性質は、細胞培養上清(表1)、およびその後の、プロテインA精製(図3)、ならびに組み換えヒトモノクローナル抗体(図9および10、配列番号15および17)を使用したインビトロ中和アッセイによって決定された。
【0048】
26A1抗体によって認識される特定のhCMV抗原は、ウィルス抗原中の既知のhCMV中和エピトープの一群を使用して決定された(図1、2および4参照)。結果的に、このIgG抗体は、hCMV中和エピトープ、およびそのようなエピトープを認識することによってhCMV感染を中和することができる、(例えば抗体、抗体断片、生理活性ペプチド、融合タンパク質または任意の天然型/組み換えタンパク質の形態である)抗原と結合するタンパク質を明らかにするために使用され得る。
【0049】
従来、hCMV特異的短縮タンパク質または合成ペプチドを用いる、ELISAまたはウェスタンブロットが同様に使用され(Greijer A et al.,1999; hlin M et al.,1993)、この方法において、hCMVに向かう抗体は、それらの抗原である糖タンパク質H(国際公開第94/16730号、国際公開第94/09136号、国際公開第92/11018号)、糖タンパク質B(欧州特許第248909号明細書、国際公開第93/21952号)または糖タンパク質M/糖タンパク質N(Shimamura M et al.,2006)に従って明らかにされた。さらに、hCMVビリオンの他の構成要素は、pUL130およびpUL128の場合のように、ウィルス親和性に影響を及ぼすのみならず、hCMV中和抗体の標的となり得る(Wang D and Shenk T,2005)。したがって、26A1抗体によって認識されるCMV抗原/エピトープは、上記の文献に基づく異なるインビトロアッセイによって同定され得る。
【0050】
本発明のさらなる実施形態は、26A1継代培養によって分泌されたヒトIgG1抗体であり、そしてそれは、hCMVと結合しおよび中和する、プロテインA精製された天然型抗体として提供され得る。このIgG1抗体は、同様にhCMVと結合および中和し得る競合タンパク質を同定するために使用され得る。同様のタンパク質が、上記中においておよび実施例中において、特に組み換えヒト抗体および抗体断片として提供される。
【0051】
hCMV中和の機構は、そしてそれは26A1抗体および上記の他のタンパク質によって認識されるウィルスエピトープと関わりがあるのだが、ヒト血清(Navarro Det al,1997;Klein M et al.,1999;Weber B et al.,1993;Rasmussen L et al,1991;Marshall G et al.,2000)またはモノクローナル抗体(Schoppel K et al.,1996;Simpson J et al.,1993;Gicklhorn D et al.,2003)を使用した、文献に記載されているような、特定の構造hCMVタンパク質および/または株のために利用可能なアッセイを使用して、性質決定され得る。
【0052】
本発明のさらなる目的は、任意の抗体、抗体断片、融合タンパク質、生理活性ペプチド、または単離された上記のHCDRおよびLCDRをコードする核酸である。実施例は、特に、26A1の重鎖(配列番号4)および軽鎖(配列番号9)の完全な可変領域をコードする配列を提供する(図5Aおよび6A)。これらのDNA配列(または特定のHCDRおよびLCDRをコードするもののような、選択された部分;図5および6)は、抗体の別の形態の一つ(例えば、完全な、親和性の成熟した、またはCDRが移植された抗体、もしくは抗体断片)または融合タンパク質にそれらを発現させるために、ベクター中に導入され得る。これらの核酸は、配列番号4と少なくとも90%の同一性を有する配列であって、配列番号9と少なくとも90%の同一性を有するものをさらに含む配列を有するかまたは有さない前記配列を含むことができ、そしてそれは、26A1の重鎖のみに由来する配列が必要とされるのか、または重鎖および軽鎖の両方が必要とされるのかに依存する。
【0053】
完全ヒト抗体が望ましい時、抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgAおよびIgE定常領域からなる群から選択される重鎖定常領域をさらに含むべきである。好ましくは、重鎖定常領域は、ヒトIgA、(26A1継代培養から性質決定された、天然型26A1抗体に見られる)IgG1、IgG2またはIgG4である。26A1重鎖および軽鎖の完全可変領域をコードする核酸配列は、クローン化され、そしてPCR反応、および得られたPCR産物を含む、Eコリ細胞を形質転換するために使用されたベクターを用いて、その性質が明らかとされた。そのような配列は、別のベクター中に、特に、ベクターの、または好適な制御配列(例えばプロモーター、転写ターミネーター)と作動可能に連結されている別個のベクターの発現カセット中に、(一部、または完全な形で)導入され得る。
【0054】
ヒト26A1モノクローナル抗体、またはそのような抗体由来の他のタンパク質配列は、好適な宿主細胞を形質転換するためのベクターを使用して、組み換えタンパク質として発現され得る。本発明の核酸を含む宿主細胞は、原核または真核宿主細胞であることができ、そして所望の組み換えタンパク質を分泌することができるはずである。そのようなタンパク質を産生する方法は、タンパク質発現および宿主細胞培養からのタンパク質の回収に好適な条件下で、それらをコードした配列を含む発現ベクターを用いて形質転換された宿主細胞を培養することを含む。当該ベクターは、プロモーター、(必要に応じて)リボソーム結合部位、開始/終始コドン、およびリーダー/分泌配列を含むべきであり、そしてそれは、所望のタンパク質のモノまたはバイシストロニック転写物の発現を促進し得る。当該ベクターによって、原核または真核宿主細胞中における組み換えタンパク質の発現ができる。そのような細胞を十分に含む細胞株は、その後単離され、安定な細胞株を提供する。
【0055】
核酸および宿主細胞は、一般的な組み換えDNA技術を適用することによって、本発明のタンパク質を産生するために使用され得る。つまり、所望のDNA配列は、制限酵素を用いた初代クローニングベクターの消化によって抽出されるか、またはそのようなベクターをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の鋳型として、ならびに重鎖および軽鎖の完全な可変領域またはそれらの一部のみ(例えばHCDR3配列)を特異的に増幅するためのPCRプライマーとして使用することで増幅され得る。これらのDNA断片はその後、オックスフォード大学出版より出版された「実用的手法」というシリーズ名のもの(「DNAクローニング 2:発現系」,1995;「DNAクローニング 4:哺乳類系」,1996;「タンパク質の発現」,1999;「タンパク質精製技術」,2001)を含めて、クローン化および組み換えタンパク質を産生する方法についての本および総説中に記載されている通りの方法で、原核または真核宿主細胞中で発現させるための、より好適なベクターへ導入され得る。
【0056】
真核宿主細胞(例えばイースト、虫または哺乳類の細胞)において、異なる転写および翻訳調節配列は、宿主の性質に依存して使用されてもよい。それらは、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス、シミアンウィルスなどのようなウィルス源由来であり、そしてそこで、調節シグナルは、高レベルに発現している特定の遺伝子と関わりがある。具体例は、ヘルペスウィルスのTKプロモーター、SV40早期プロモーター、イーストgal4遺伝子プロモーターなどである。転写開始調節シグナルは、一過性の(または恒常的)抑制および活性化ならびに遺伝性発現を調節することができるように選択されるかもしれない。
【0057】
組み換えタンパク質をコードしている配列は、例えば、コドンの利用および制限部位が、クローン化に、ならびに特定のベクターおよび宿主細胞中において組み換えタンパク質を発現させるために最も好適であるDNA配列を選択するためのソフトウェアを使用して決定され得る、DNAレベルのみでの修飾を行うために、順応され、そして再クローン化され得る(Grote A et al,2005;Carton J et al.,2007)。
【0058】
さらなるクローニング化段階中において、タンパク質配列は、所望の抗体形態(Scfv,Fab、抗体フラグメント、完全ヒト抗体など)と関連して、または一またはそれ以上の内部アミノ酸の導入、置換または除去と関連して付加され得る。これらの技術はまた、構造上、および機能上のさらなる性質決定、ならびに一般的にはタンパク質の、および特に抗体の(Kim S et al.,2005)治療上の特性のさらなる最適化のために、あるいは安定なインビボ送達をすることができるベクターを製造するために(Fang J et al.,2005)使用され得る。例えば、組み換え抗体はまた、可変領域と融合している特定のFc領域を選択することにより(Furebring C et al.,2002;Logtenberg T,2007)、一本鎖抗体断片を作製することにより(Gilliland L et al.,1996)、および安定なペプチド配列(国際公開第01/49713号)、ポリマーまたは化学的に修飾された残基を有する放射化学物質(Chapman A et al.,1999)を付加することにより、構造および/または活性のレベルで修飾され得る。
【0059】
組み換えタンパク質をコードしているDNA配列は、好適なエピソーム中へ、または非相同的もしくは相同的な組み込みベクター中へ挿入されると、形質転換するための幾つかの好適な手段(形質転換、接合、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、直接的マイクロインジェクションなど)によって適切な宿主細胞に導入され得る。特定のベクターを選択する時、考えられ得る重要な要素は:ベクターを含む宿主細胞が認識および選択される容易さ;所望のベクターのコピー数;および、ベクターが異なる種の宿主細胞間で「シャトル」できるかどうか、を含む。
【0060】
導入されたDNAによって安定に形質転換された細胞は、発現ベクターを含む宿主細胞の選択をすることができる、一またはそれ以上のマーカーを同様に導入することによって選択され得る。当該マーカーはまた、栄養要求性の宿主への光合成栄養、殺生物剤、例えば抗生剤、または銅のような重金属、に対する抵抗性などを提供してもよく、そして必要であれば、切断可能または抑制されてもよい。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるべきDNA遺伝子配列と直接に結合されているか、または同時形質移入によって同じ細胞中へ導入され得る。さらなる転写制御因子はまた、最適な発現のために必要とされてもよい。
【0061】
宿主細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれかであってよい。原核宿主細胞の中で好ましいものは、B.サブチリス(B.subtilis)またはE.コリである。真核宿主細胞の中で好ましいものは、イースト、昆虫または哺乳類細胞である。特に、ヒト、サル、マウス、(バキュロウィルスを基盤とした発現系を用いた)昆虫および(実施例中に示されるような)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、正確な折り畳み、または正確な部位への特定の形式のグリコシル化を含む、タンパク質分子への翻訳後修飾を提供する。同様に、イースト細胞は、グリコシル化を含む、翻訳後ペプチド修飾を行うことができる。強力なプロモーター配列、およびイースト中で所望のタンパク質の産生のために利用される高コピー数のプラスミドを利用する、多くの組み換えDNA手法が存在する。イーストは、クローン化哺乳類遺伝子産物中のリーダー配列を認識し、そしてリーダー配列を有するペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。
【0062】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類培養細胞株は、当該分野において既知であり、そしてアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から利用可能な、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、サル腎臓(COS)、C127、3T3、BHK,HEK293、Per.C6、ボウズ(Bowes)メラノーマ、およびヒト肝細胞(例えばHep G2)ならびにその他の培養細胞株を含むが、それらに限定されない、多くの不死化培養細胞株を含む。バキュロウィルス系において、バキュロウィルス/昆虫発現系のための原料は、キット形態で市販されている(例えば、インビトロジェンによって商品化されている)。
【0063】
組み換えポリペプチドの長期間、高収率の産生において、安定な発現が好ましい。例えば、興味のあるポリペプチドを安定に発現する培養細胞株は、ウィルス性の複製および/または内因性発現要素、ならびに同じまたは別のベクター上に存在する選択可能なマーカー遺伝子を含んでもよい発現ベクターを使用して形質転換されてもよい。ベクターの導入の後に、細胞は、それらが選択培地に切り替えられる前に、強化培地中で一日またはそれ以上の日数の間培養されてもよい。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する抵抗性を付与することであり、そしてその存在によって、導入された配列を首尾よく発現することができる細胞の増殖および回収をすることができる。安定に形質転換された細胞の抵抗性クローンは、細胞の種類に対して好適である組織培養技術を使用して増殖されてもよい。そのような細胞の十分に豊富な培養細胞株はその後、安定な培養細胞株を提供するために単離され得る。
【0064】
完全組み換えヒト免疫グロブリンの場合において、重要な段階は、特定のアイソタイプおよび定常領域の選択である。所望のアイソタイプおよびサブタイプ(例えば、ヒトIgA、IgG1、IgG2、またはIgG4)を有する抗体を発現するために特に設計されたベクターは、広く文献に記載されている。その結果、完全抗体または融合タンパク質は、原核細胞生命体(例えばエスケリキア コリ(Escherichia coli);Sorensen H and Mortensen K,2005;Venturi M et al,2002)、植物(Ma J et al,2005)、または真核細胞中において組み換えタンパク質として発現されることができ、そしてそれは、一過性の、または安定な形質転換細胞として高レベルの発現をすることができる(Dinnis D and James D,2005)。これは、抗体の性質決定が、インビボアッセイを含めて、より洗練されたアッセイを用いておこなわれなければならないときに、そしてそこで、抗体の半減期が決定され得るときに特に必要とされる。宿主細胞は、組み換えタンパク質の発現レベルに基づいて、さらに選択され得る。
【0065】
さらに、タンパク質が、特に抗体として真核宿主細胞(特に哺乳類培養細胞株)中で発現されるとき、異なるベクターおよび発現系が、形質移入された培養細胞株の安定なプールを生じさせるために設計された(Aldrich T et al.,2003;Bianchi A and McGrew J,2003)。組み換え抗体の高レベルの、最適化された、安定な発現はまた、細胞培養条件の最適化によって(Grunberg J et al.,2003;Yoon S et al.,2004)、およびより高レベルの抗体産生ならびに分泌を行うクローンを選択または設計することによって(Bohm E et al.,2004;Butler M,2005;)達成された(Schlatter S et al.,2005)。
【0066】
抗体、抗体断片、生理活性ペプチド、融合タンパク質、およびhCMVと結合ならびに中和できる、上に定義した他のタンパク質は、細胞培養または合成精製品のいずれかからの非組み換え/組み換えタンパク質の単離をすることができる、確立した技術によって精製され得る。これらの技術は、hCMVに関連のある予防的、診断的および治療的使用のための、より広範囲な性質決定および検証を行うために十分なタンパク質を(マイクログラムからミリグラムの範囲で)提供するはずである。この目的のために、組み換え、または天然型タンパク質の調製物は、インビトロまたはインビボアッセイ(生化学的、組織または細胞を基盤としたアッセイ、げっ歯類または霊長類で確立された疾患モデル、親和性を測定するための生物物理学的手法、エピトープマッピングなど)において、特に実施例またはhCMV病理学および免疫生物学の研究に関する、開示されてある任意のものを使用して試験され得る。
【0067】
ヒトB細胞上清由来の調製物から精製された、または組み換えタンパク質として発現された抗体は、文献既知の、組織または細胞を基盤としたインビトロアッセイを用いてさらに評価され得る(Eggers M et al.1998;Lam V et al,2006;Reinhardt B et al.,2003;Forthal D et al.,2001;Goodrum F et al.,2002)。さらに、関連のある前臨床試験が、hCMV感染動物において、特にヒト宿主細胞が移植されたモデルにおいてなされ得る(Barry P et al.,2006;Gosselin J et al.,2005;Thomsen M et al.,2005)。
【0068】
本発明の組み換えタンパク質の精製は、この目的のために知られた任意の従来法、すなわち、抽出、沈殿法、クロマトグラフィーなどに関する任意の方法によって行われ得る。特に、抗体精製の方法は、プロテインA、プロテインGまたは合成基質に対する(Verdoliva A et al.,2002;Roque A et al.,2004)、あるいは特定の抗原またはエピトープに対する(Murray A et al.,2002;Jensen L et al.,2004)、抗体の強い親和性を利用した、カラム中に含まれる固定化されたゲルマトリクスを使用して行われ得る(Nisnevitch M and Firer M,2001;Huse K et al.,2002;Horenstein A et al.,2003)。洗浄後、タンパク質はpHまたはイオン強度を変化させることによって、当該ゲルから溶出される。または、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)が使用され得る。溶出は通常、タンパク質の精製において用いられる水−アセトニトリルを基盤とした溶媒を使用して行われ得る。
【0069】
抗体、抗体断片、生理活性ペプチド、融合タンパク質、および26A1抗体の配列を使用する、上に定義した他のタンパク質は、hCMV感染の検出、治療、阻害、予防および/または寛解のために使用され得る。この目的のために、そのような化合物は、hCMV感染に対応するための診断用、治療用または予防用の組成物を調製するために使用され得る。
【0070】
特に、そのような化合物は、幾つかの薬学的に許容され得るビヒクルまたは担体とともに、医薬組成物を調製するために使用され得る。これらの組成物は、ワクチン、hCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン調製物、免疫調整性化合物および/または抗ウィルス化合物のような、幾つかの追加の治療薬または予防薬をさらに含んでもよい。文献は、hCMV複製に作用する化合物(フォスカルネット、バンガンシクロビル(Vanganciclovir)、ホミビルセンまたはガンシクロビル)、およびヒトにおいて単剤でまたは静注用免疫グロブリン調製物との併用で既に試験された化合物の幾つかの例を提供する(De Clercq E,2003;Nigra G et al,2005)。
【0071】
さらに、最近の文献は、ヒトモノクローナル抗体が、静注用免疫グロブリン調製物および/または抗ウィルス化合物のような現在の治療を補完する(および可能ならば置き換わる)ために使用されることができ、そしてそれが、医薬組成物の投薬回数および/または用量を減らす機会を与えることを示唆している(Bayry J et al.,2007)。
【0072】
これらの組成物は、抗体、抗体断片、生理活性ペプチド、融合タンパク質およびヒト26A1モノクローナル抗体の配列および活性に基づく、上に定義した他のタンパク質を含んでもよい。当該組成物は、異なるhCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン(IVIg)調製物および/または抗ウィルス化合物をさらに含んでもよい。異なるhCMV中和抗体は、既に文献に記載されている、または欧州特許出願第07114782号明細書、第07115410号明細書、および第07111741号明細書(それぞれ10B7、8C10、1F7)に記載されているものであって、gH、gB,または他のhCMV抗原と関わりのあるもののような、異なるエピトープによって性質決定されるべきである。実際、文献は、ウィルスまたはヒト標的に向かう二またはそれ以上の抗体が医薬組成物と結合している時、得られる組成物が単なる相加効果ではなく、特定の相乗効果による、改善された治療有効性を有するかもしれない多くの例を示している(Logtenberg T,2007)。
【0073】
任意のタンパク質(例えば抗体、抗体断片、融合タンパク質、生理活性ペプチド)および上に定義した核酸を含む組成物は、hCMV関連の診断、治療または予防目的で、患者に使用および投与され得る。これらの組成物は、hCMVビリオンを標的とすることによって、治療患者におけるウィルスの増殖を阻害し、そして集団におけるウィルス感染の発生を潜在的に阻害することができる治療用化合物(特に治療用抗体または治療用抗体断片)を提供する、hCMV特異的受動免疫のための手段として投与され得る。
【0074】
特定の使用に応じて、当該組成物は、より長い期間またはより短い期間における、被験者(特に妊婦、またはhCMVもしくはhCMV感染者と接触をしたためにhCMVに対するリスクがあると考えられるその他の患者)に対する化合物を提供するはずである。この目的のために、当該組成物は、単回投与でまたは複数回投与で、および/または好適な装置を用いて、異なる経路:すなわち筋肉内、静脈内、皮下、局所、粘膜を通じて、噴霧器もしくは吸入器により、点眼剤として、生物分解性のないマトリクス物質中において、または微粒子の薬物送達系を使用して、投与され得る。特に、当該組成物を局所的投与または眼球投与してもよく、そしてそれは、粘膜および眼にhCMVが存在する場合において有用な方法を示している。さらに、抗体および抗体断片は、創傷(Streit M et al,2006)、角膜(Brereton H et al.,2005)または膣(Castle P et al.,2002)に、局所的に投与されたとき、有効であり得る。
【0075】
本発明の医薬組成物は、十分な期間、その活性を発現するために化合物を投与できる被験者に対して、治療用にまたは予防用に有効な量の化合物を提供するはずである。所望の効果は、hCMVの感染、再活性化、および/または再感染を調節することによって、ならびに網膜炎または肺炎のような、hCMV感染の少なくとも幾つかの臨床症状を減らすことによって、hCMV患者の状態を改善することである(Landolfo S et al.,2003)。例えば、当該組成物は、投与経路、投与回数、および患者の状態に依存するが、約0.005から約50mg/kg/体重の有効量で投与されるべきである。
【0076】
診断的用途を有する組成物の場合において、当該化合物は、生体サンプル中のウィルスを検出するための、臨床および研究室において一般的に確立された技術(例えばELISAまたは他の血清学的アッセイ)を使用して、あるいはインビボで、被験者において投与後少なくとも1、2、5、10、24時間またはそれ以上経過したときに検出されるべきである。hCMVの検出は、本発明のタンパク質を使用して、インビトロで得られたデータと臨床状態との間に相関がある場合において、免疫応答性の、および免疫不全の宿主の両方のリスクのある集団において、慢性のまたは急性のhCMV感染を観察するための確立された既知の手法および手順と置き換えて、または組み合わせて行なわれ得る(Gilbert G,2002;Gerna G and Lilleri D,2006;Lazzarotto T et al,2007)。
【0077】
hCMVもしくはhCMV関連疾患の治療、予防または診断法は、上で定義したタンパク質または核酸の投与を含み得る。当該方法は、異なるhCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン(IVIg)調製物および/または抗ウィルス化合物の投与をさらに含んでもよい。
【0078】
臨床開発および臨床的使用は、抗体の薬物動態および薬物力学に(Lobo E et al., 2004;Arizono H et al.,1994)、前臨床および臨床の安全性試験のデータに(Tabrizi M and Riskos L,2007)、ならびにヒトに対する治療およびインビボ診断のために使用されるべきモノクローナル抗体の産生および品質調整のための国際的基準の遵守(Harris R et al.2004)に基づいて行なわれるべきである。
【0079】
本発明のタンパク質はまた、hCMV関連性またはhCMV付随性疾患として定義され得る、他のより蔓延している(心血管系および自己免疫疾患または幾つかの種類の癌のような)疾患を検出、治療、阻害、予防および/または寛解するための組成物の調製のために使用され得る。このウィルスは、(Fc受容体、細胞接着分子、ケモカインおよびサイトカインの発現を刺激することによる)細胞性/免疫性炎症疾患過程、(例えばアテローム性動脈硬化、再狭窄における)自己免疫活性、および(MHCクラスIおよびIIの発現を阻害することによる)例えば血管中および活発に増殖している細胞中における、細胞のアポトーシス、分化、および遊走につながる抗原提示経路の変化、と関わりがあることがよく知られているため、これらの条件において、hCMVは、可能性のある補助因子と考えられる(Cinatl J et al,2004;Soderberg−Naucler C,2006b)。
【0080】
さらに、hCMV感染はまた、細胞代謝の変化(Munger J et al.,2007)、抑制(Phillips A et al.,2007)または血栓事象に対する危険因子(Fridlender Z et al.,2007)と関わりがあることが判明した。hCMVの再活性化および関連のある合併症はまた、癌患者において(Sandherr M et al.,2006;Han X,2007)、または炎症性結合組織疾患を患っている患者において(Yoda Y et al., 2006)、および通常、副腎皮質ステロイドのような免疫抑制治療(Yamashita M et al.,2006)下にある、または化学療法および他の抗体を基盤とした免疫抑制療法(O‘Brien S et al.,2006;Scheinberg P et al.,2007)下にある患者において見られた。
【0081】
本発明は、以下の実施例によってこれから記載されるが、それはいかなる場合においても本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0082】
実施例1:hCMVの感染力を中和するヒトモノクローナル抗体を分泌する細胞培養の製造
材料および方法
血清中にhCMVを中和するIgG抗体を有する、ヒト提供者の選択
これらのhCMV特異的アッセイを、PCT/EP2005/056871に記載されている通りに、または下記に要約された、文献記載の通りに行なった。
【0083】
hCMV中和抗体を、ヒト胎児肺線維芽細胞(HELF細胞)およびhCMV AD169株(ATCC,cod.VR−538由来のhCMV実験室株)を基盤にしたhCMVマイクロ中和アッセイに従って検出した。
【0084】
hCMVマイクロ中和アッセイを、同様に、内皮親和性hCMV VR1814株、妊婦の頸部スワブから回収された臨床分離株の誘導体(Revello M et al.,2001)、およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて行なった。これらの細胞を、臍帯血の酵素処理によって、および2%ウシ胎児血清(FBS)、ヒト組み換え血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ヒト上皮細胞増殖因子(hEGF)、インスリン増殖因子(IGF−1)、ヒドロコルチゾン、アスコルビン酸、ヘパリン、ゲンタマイシンおよびアムホテリシンB(それぞれ1μg/ml)を加えた内皮細胞増殖培地(EGM−2、ケンブレックス(Cambrex)バイオサイエンス)中で培養した。実験を、第2〜6継代の細胞を用いて行なった。
【0085】
臨床および実験室株を使用した、hCMV感染および複製を研究するためのHELFおよびHUVEC細胞の利用は、多くの論文に記載されている(Gerna G et al.,2002)。本発明の場合において、当該細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)、1mMピルビン酸ナトリウム(NaP)、およびGPS(2mM グルタミン、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン)を有するミニマムエッセンシャル培地(MEM;Gibco−BRL)を含む、100μlの増殖培地入りの、96ウェルプレートの平底のウェル上に蒔いた(2.0〜2.5x104/ウェル)。細胞を、37℃で24時間培養した。
【0086】
50μlの抗体を含む(ヒト血清、細胞培養上清、またはプロテインAで精製された、指示濃度の天然型もしくは組み換えIgGの)サンプルを、実験室株hCMV AD169(5%FCSを有する50μlのMEM中、500プラーク形成単位(pfu);混合物の合計量は100μl)で、37℃で1時間、インキュベートした。抗体調製物およびウィルスの混合物にその後、HELF細胞単層(hCMV AD169およびAL−1株に対して)またはHUVEC細胞単層(hCMV VR1814に対して)を添加し、そして1時間インキュベートした。増殖培地を細胞単層から除去し、そして抗体−ウィルス混合物と交換した。プレートをその後、2,000gで30分間遠心分離し、そして5%CO2存在中、37℃で90分間インキュベートした。増殖培地(100μl)を添加し、そして当該培養を恒温器中でさらに72時間保存した。
【0087】
hCMVの感染力におけるB細胞上清の効果を、間接的免疫ペルオキシダーゼ染色によって、hCMV中間体早期抗原(IE1+IE2)を染色することによって測定した。細胞単層を、(−20℃で保管された)アセトン/メタノール溶液で1分間固定化し、その後、PBSで洗浄した。当該細胞を、1%H2O2を含んだ0.1%トリトンX−100のPBS溶液中で、氷上で5分間透過処理し、その後PBSを用いて洗浄した。内因性ペルオキダーゼを、50%メタノールおよび0.6%H2O2入りのPBSを用いて、暗所中において室温で30分間阻害し、その後PBSで洗浄した。50μlのタンパク質遮断薬(ウルトラ テック(Ultra Tech)HRP500〜600テスト;ストレプトアビジン−ビオチン万能検出系;PN IM2391)を室温で10分間付加し、それからPBSを用いて洗い流した。マウス抗HCMV IEA(クローンE13;アルジーン バイオソフト(Argene Biosoft);11−003参照)をウェルへ室温で60分間付加した。洗浄後、細胞を50μlのビオチン結合性二次抗ヒトIgG(ウルトラ テックHRP500〜600テスト;ストレプトアビジン−ビオチン万能検出系;PN IM2391)、またはペルオキシダーゼ結合性ヤギ抗マウスIgG(ウルトラテックHRP)と共に10分間インキュベートした。DAB基質(Merck;no.1.02924.0001)の0.1%H2O2溶液を、暗所にて20℃で30〜45分間添加し、そして反応を、PBSを用いて希釈することにより停止した。IEA−陽性の核を顕微鏡で数えた。
【0088】
培地のみ、または無関係のIgG抗体を含む細胞上清を、陰性対照として使用した。hCMV血清陽性の患者の血清から精製された、ヒトIgGの市販の調製物(サイトテクト;バイオテスト(Biotest))を、125μg/mlから始めて希釈させながら、陽性対照として使用した。陽性を、陰性対照ウェルと比較して、IEA陽性細胞を≧40%阻害するものとして定義した。
【0089】
Reed−Munch法を使用して計算された50%阻害の終点は、中和力価(NT)と考えられるだろう:
NT=抗体希釈の逆数[>50%阻害]x[(50%超の%阻害−50%)/(50%超の%阻害−50%未満の%阻害)]
【0090】
hCMVエンベロープ糖タンパク質gBまたはgHの領域と結合するIgG血清の存在に基づいたヒト提供者の選択
hCMV特異的結合アッセイを、PCT/EP2005/056871に記載されている通りか、または製造業者によって指示された通りに行い、そしてCMV特異的IgG抗体の市販混合物(サイトテクト、バイオテスト)を用いて検証した。血清を、市販である、hCMVビリオンタンパク質と結合するヒトIgG特異的ELISA(BEIA−CMV IgG Quant;Bouty,cod.21465)、および同様に市販である、gB(AD2)hCMV IgG ELISA(CG3抗原バイオテストAG,cod.807035;図1A)を用いて試験した。
【0091】
すなわち、失活した(実験室株AD169由来の)hCMVタンパク質混合物で覆われた壊れやすい条片を、マイクロプレート中に置き、そして(800μlのBEIA系のサンプル希釈液に10μlの上清を加えて)1:81に希釈されたB細胞上清とインキュベートし、そして当該プレートを30分間、室温でインキュベートした。洗浄サイクルの後、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合した、希釈前のモノクローナル抗ヒトIgG抗体(100μl)を加え、そしてプレートをさらに30分間、室温でインキュベートした。第二の洗浄サイクルの後、希釈前の基質−TMB溶液(100μl)を加え、そしてプレートを15分間室温でインキュベートした。反応を、停止溶液(100μl/ウェル)を用いて停止し、そして吸光度を450/620nmにおける2つの色収差(bi−chromatism)を用いて測定した。
【0092】
不死化B細胞培養の製造
血清中にhCMV中和抗体が存在しているため、急性hCMV感染(CMV7)から回復した患者から、末梢血単核球(PBMC)を得た。CMV7患者由来のPBMCがその後にさらされるEBV不死化過程を、PCT/EP2005/056871の技術に従って行なった。短時間で、従来法のフィコール/ハイパックを用いた密度勾配遠心法によって、PBMCを末梢血から精製した。CD22陽性細胞を、製造業者によって記載された通りのバリオマックス(VarioMACS)技術(ミルテニー(Miltenyi)バイオテック社)を使用することによる、抗ヒトCD22被覆ビーズを用いて、新鮮なPBMC(>90%中純度)から単離した。精製された細胞を、CpG2006(コーリー(Coley)、1μg/ml)およびIL−2(ロシュ、200U/ml)の併用で刺激した。4日間の刺激の後、細胞を新鮮な細胞培地(RPMI−1640)で洗浄し、そしてB細胞を、製造業者の指示に従って、バリオマックス(VarioMACS)技術(ミルテニー(Miltenyi)バイオテック社)を使用することによる、抗ヒトIgG被覆ビーズを用いてIgG陽性細胞中で高度に濃縮した。
【0093】
選択され、および刺激された細胞を、5%CO2下、37℃で、24ウェルプレート中で、10%(v/v)の熱失活したFCS(ウシ胎児血清)、1mMピルビン酸ナトリウム、100μg/mlストレプトマイシンおよび100U/mlペニシリンを追加したRPMI−1640細胞培養培地中で懸濁し、そして保存した。B95.8細胞上清を使用して(1:1 v/v、16時間)、EBV不死化を行なった。
【0094】
当該過程の最後に、不死化細胞を新鮮な培養培地(10%ウシ胎児血清を付加したRPMI1640)で洗浄し、そして支持細胞層(5x105細胞/ウェルで蒔かれた、放射線を照射した同種PBMC)を用いて、CpG2006無しで(そしてCMV5ドナーから得られたPBMCから開始した過程において、PCT/EP2006/069780に記載されているCPG2006を用いること無く)、24ウェルプレート中で1.5x106細胞/mlの濃度で3週間培養した。
【0095】
hCMV中和抗体を分泌する不死化ヒトB細胞の継代培養の選択
EBVにさらされてから15日後、hCMV中和活性を、上記のAD169/HELFを基盤としたマイクロ中和アッセイを用いて、増殖したポリクローナル細胞培養中で確認した。その後細胞を、CpG2006およびIL−2の非存在下、10%FCSおよび非必須アミノ酸(NEAA、100Xの原液から1Xに希釈された;ユーロクローン(EuroClone))を添加した100μlIMDL中の、放射線を照射した(30Gy)同種PBMC(50,000/ウェル)上に、20細胞/ウェルで蒔いた。全体で4224個の継代培養を製造し、そして2週間後、50μlの同じ培地を加えた。さらに1〜2週間の培養の後、増殖および凝集した細胞を有する細胞培養上清を、HELF細胞およびhCMV株AD169型hCMV中和アッセイを使用して同時に試験した。
【0096】
hCMV中和活性を示す細胞培養上清を、gB hCMVエンベロープ糖タンパク質または上記の全体hCMVタンパク質領域への、ヒトIgGの結合を検出するELISAを使用して試験した。
【0097】
あるいは、gBまたはgH型の抗原をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として製造した。gB(Ag)−GST抗原の場合においては、hCMV株C194由来のgB免疫優性領域をGST(バイオデザイン(BioDesign)、Cat.No.R18102;GS−4Bセファロース親和性精製、1mg/ml)と融合した。gH(Ag)−GST抗原の場合においては、HCMV株VR1814のgH糖タンパク質断片を、PCRでクローン化し、GST遺伝子と融合し、E.コリ中で産生し、そしてGST親和性に基づいて、細菌細胞溶解物から精製した。組み換えgH(Ag)−GST抗原は、hCMV株VR1814由来のgHアミノ末端領域(アミノ酸16〜144;図1B)とGSTとの間におけるインフレーム融合に相当する。GST単体を陰性対照として使用した。
【0098】
これらのELISAを、96ウェル形式で、一般的なELISAの手順に軽微な変更を加えて適用することによって行なった。簡潔に言えば、抗原をPBS中2μg/mlで希釈し、そして50μlの(細菌を使用して発現された融合タンパク質を100ng含む)このタンパク質溶液を、EIAポリスチレンプレート(Nunc;Cat No.469949)を被覆するために使用した。ELISAプレートの被覆を4℃で一晩行い、そしてタンパク質溶液を除去した後、当該プレートを150μlの洗浄緩衝液(0.05%のTween20を含むPBS)を用いて4度洗浄した。非特異的結合を阻害する処置を、1%のミルクを含む100μlのPBSをそれぞれのウェルへ、37℃で一時間分注することによって行なった。150μlの洗浄緩衝液を用いた4度の洗浄サイクルの後、細胞培養由来の50μlの上清をそれぞれのウェル中で、37℃で2時間インキュベートし、そして50μl/ウェルの細胞培養培地を陰性対照として使用した。4度の洗浄サイクルの後、50μlの二次抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼと結合したヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)抗体;洗浄緩衝液中1:30,000希釈;Sigma,No.A0170)をそれぞれのウェル中に分注し、そしてプレートを室温で1時間インキュベートした。さらに4度の洗浄サイクルの後、酵素反応を、50μlの基質−TMB(3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン;シグマ,Cat.No.T0440)をそれぞれのウェルに加えることによって、室温でさらに30分間行なった。発色反応を、100μlの停止溶液(1N 硫酸)をそれぞれのウェル中に分注することによって停止し、そして吸光度を450nmで読み取った。
【0099】
結果
血清中和抗体を誘導するものとして最もよく性質決定された(Qadri I et al,1992;Kropff B et al.,1993)、およびCG3抗原(図1A)中でクローン化された、hCMV抗原の一つである糖タンパク質BのAD2領域への結合に基づいて、ELISAに対する強い反応性(1:64希釈で陽性;サンプルは、IgG 抗gBが1/4またはそれ以上の希釈で存在する場合に陽性であると考えられる)と共に、ヒトPBMCを、血清中で著しいhCMV中和力価(1:105希釈で50%中和)を示すhCMV患者(CMV7)から得た。さらに、CMV7の血清は、hCMVビリオンタンパク質全体を使用した別のELISAにおいて陽性であって、74AU/mlの活性を示した(サンプルは、結果が少なくとも10AU/mlであるとき、抗hCMV IgGがある場合に陽性であると考えられる)。
【0100】
CMV7患者由来のB細胞を、PCT/EP2005/056871およびPCT/EP2006/069780に開示されているEBV型不死化方法を用いて、IgGを分泌するB細胞が高度に濃縮された不死化ポリクローナル細胞培養を製造するために使用した。別の提供者(CMV5)由来の抗hCMV抗体の選択について開示している後者の文献と比較して、当該継代培養を最初のバルク、すなわちCpG2006および上清の非存在下にある不死化細胞のポリクローナル群から調製し、そして当該上清を、マイクロ中和アッセイによってhCMV感染力を中和する抗体の存在についてまず選択し、次いで選択されたhCMV抗原に結合する抗体についてのみ選択した。
【0101】
hCMVマイクロ中和アッセイを、培養3週目において、活発に増殖している細胞群であると判明した継代培養にのみ適用した。324ウェル由来の上清を、はじめにhCMV中和アッセイでスクリーニングし、これらのうちの20上清が、少なくとも40%までhCMV AD169株の感染力を減らすことが分かった。これらのウェル中のhCMV結合活性について性質決定したとき、2つのみが、(CG3抗原またはgB(Ag)−GST融合タンパク質としてのいずれかである)gBに対して陽性であり、(gH(Ag)−GST融合タンパク質としての;図1B)gHに対して陰性であり、そして18ウェルは、いずれに対しても陰性であった(図2)。
【0102】
それぞれのウェル中に最初に蒔かれる細胞の数が少ない(20細胞/ウェル)ために、特に、増殖し、そしてhCMV中和IgGを分泌すると期待される不死化ポリクローナル細胞群中の細胞の発生頻度が低い場合には、hCMV中和活性を示すそれぞれの継代培養は、モノクローナル抗体(すなわち、単一の、特定の不死化細胞によって、クローン的に得られる細胞によって分泌される抗体)を産生するであろう。これらの仮定を確認するために、さらなる実験を計画した。
【0103】
実施例2:26A1抗体の性質決定
材料および方法
26A1継代培養の増殖および性質決定
26A1の最初の継代培養由来の細胞を、(10%FCSおよびNEAAを添加した)放射線を照射したIMDM培地中の同種PBMC上に増殖させ、そしてhCMV中和活性を、実施例1に記載の通りのhCMVマイクロ中和アッセイを使用して、この増殖段階の間に少なくとも2回確認した(表1参照)。
【0104】
26A1継代培養によって分泌される抗体量を、製造業者の指示に従って、市販の定量的ヒトIgGELISAキット(イムノテック(Immunotek);cod.0801182;ゼプトメトリクス(Zeptometrix)社)を使用して、24、48、および72時間で決定した。26A1抗体のサブクラスを、市販のアッセイ(PeliClass ヒトIgGサブクラスELISA コンビ−キット;cod.#RDI−M1551cib,フィッツジェラルド インダストリーズ(Fitzgerald Industries Intl.)のRDI部門)を使用して決定した。
【0105】
細胞培養は、48ウェルプレートの一のウェル中に、96ウェルプレートの一のウェル中に含まれる細胞(約1x105)を、5%FCSを加えたIMDM中にある、放射線を照射した同種のPBMC上に蒔くことによって、徐々に増殖した。5〜7日後に、支持細胞層の非存在下、5%FCSを加えたIMDMを含む24ウェルプレートの一のウェルに細胞が増殖した。その後、細胞(5x105/ml)を、支持細胞層の非存在下、2.5%FCSを加えた50%IMDMおよび50%ハイブリドーマ−SFM(ジブコ(Gibco)、cod.12045−084)を入れた6ウェルプレートに蒔いた。細胞をこれらの条件で少なくとも1週間培養した。対数増殖期細胞を、その後洗浄し、T75フラスコ中で、5x105〜106/mlの濃度のハイブリドーマ−SFM中で培養した。細胞培養上清を回収し、IgGを定量し、そしてプロテインAカラムで精製し、PBS緩衝液で透析し、そしてろ過した(0.2μM)。
【0106】
26A1継代培養によって分泌された抗体の性質決定
BEIA−CMV、gB型、およびgH型ELISAアッセイを、実施例1で記載した(図1および2)。HSVアッセイを、文献に従って行なった(Laquerre S et al,1998)。
【0107】
hCMVプラーク減少アッセイを、hCMV AD169株を使用して行なった。すなわち、ウィルスを1000PFU/反応、に希釈した。等量のウィルス(0.1ml)およびそれぞれの抗体または細胞培養上清を混合し、そして37℃で1時間インキュベートした。当該混合物を、(24ウェルプレート中の)HELF細胞単層に添加し、そして37℃で1時間吸着させた。その後、抗体−ウィルス混合物を除去し、そして1%メチルセルロース重層−MEM−2%FCSを感染細胞に加えた。感染後10または12日目で感染力の基準として、プラーク数を数えた。
【0108】
26A1細胞培養上清を、非感染のHELFまたはHUVEC細胞上で免疫蛍光法を用いて試験した。すなわち、細胞(7x104/ml)を、24ウェルプレート中に、10%FCSを添加したMEM中で、ゼラチンで被覆したカバーグラス上に蒔き、それから半集密に増殖させた。細胞をその後、暖めたPBSを用いて2度洗浄し、あらかじめ冷却した(−20℃)50%アセトン/50%メタノールの混合液で、室温(RT)で1分間固定化し、それからPBSで洗浄した。固定化された細胞を、0.2%トリトン X−100のPBS溶液を用いて、20分間氷上で透過処理し、PBSで洗浄し、そして停止溶液(2%FCSを添加したPBS)を用いて、RTで15分間インキュベートした。あるいは、固定化された細胞を、抗体が細胞表面の構成要素を認識する能力を決定するために、透過処理しなかった。この場合において、固定化された細胞をPBSで洗浄し、停止溶液(2%FCSを添加したPBS)を用いてRTで15分間インキュベートし、そして26A1細胞培養上清(80μl)とともに37℃で2時間インキュベートした。細胞をその後、暖めたPBSを用いて洗浄し(3度)、そして80μlのFITC結合性ウサギ抗ヒトIgG F(ab’)2(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson ImmunoResearch))とともにインキュベートし、緑色のヒトIgG着色を検知した。二次抗体を0.05%のTween80を添加したPBSで1:50に希釈し、そして細胞へ暗所下、37℃で1時間添加した。その後細胞を、暖められたPBSで洗浄し(3度)、そしてヨウ化プロピジウム(0.25μg/ml PBS溶液;シグマ)を用いて対比染色した。カバーグラスを、マウンティング培地(ベクター・ラボラトリーズ)を使用したスライドグラス上にのせた。画像をオリンパス Fluoview−IX70倒立型共焦点レーザー顕微鏡を用いて記録した。
【0109】
26A1 IgG DNA/タンパク質配列および組み換え発現の特徴付け
初期26A1細胞培養の発現から得られた細胞培養の一定分量を、フュージョン・アンチボディーズ(Fusion Antibodies)社によって確立された技術に従って、26A1抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VL)可変領域の配列決定のために使用した。(少なくとも50,000個の細胞を含む)凍結細胞のペレットを、全てのRNAを抽出するために使用した。対応するcDNAを、オリゴ(dT)プライマーを用いた逆転写によって製造した。IgG特異的プライマー混合物を使用してVH領域を、およびIgk/λプライマーの混合物を使用してVL領域を増幅するために、PCR反応を行なった。2つの増幅反応のPCR産物を、シーケンシング・ベクター(pCR2.1;インビトロジェン(Invitrogen))中のEco RI制限部位を使用してクローン化し、そしてTOP10 E.コリ細胞を形質転換するために使用した。
【0110】
二つの形質転換体から得られた、少なくとも10個の選択されたコロニーを取り出し、そして配列決定により分析した。得られたDNA配列を整列化し、そしてVH 26A1のコンセンサスDNAおよびタンパク質配列(それぞれ配列番号4、および配列番号5)ならびにVL 26A1のコンセンサスDNAおよびタンパク質配列(それぞれ配列番号9および10)を生じるタンパク質配列へと翻訳した。VH 26A1およびVL 26A1タンパク質配列を、公有のデータベースに存在する配列と(GenomeQuest、GeneSeq、およびEBIデータベースを使用して)比較し、そして配列化した。VH 26A1(配列番号5,7および8)およびVL 26A1(配列番号11、12、および13)のタンパク質配列の性質を決定するCDRを、IMGTデータベース(Giudicelli V et al,2004)によって予想した。
【0111】
既に対応する(ヒトIgG1重鎖およびヒトIgラムダ鎖に対する)定常領域を含んでいる同じ発現ベクター中、および両方の抗体鎖の発現をすることができる二重プロモーターベクター中にある、コンセンサス26A1重鎖および軽鎖可変領域配列をクローン化することにより、組み換えヒト26A1モノクローナル抗体を真核細胞中で発現した。ベクター中の組み換えヒト26A1モノクローナル抗体の完全な配列を、DNA配列決定法により確認し、そして無血清懸濁培養中で増殖するように適応し、125mlスピナーフラスコ中に1x106細胞/mlで蒔かれたCHO DG44細胞(Derouazi M et al,2006)を一時的に形質移入するために使用した。形質移入を、300μgの発現ベクターと900μgの直鎖状25kDaポリ(エチレンイミン)との混合物を用いて行なった。培地を回収する前に、細胞をスピナーフラスコ中で6日間、5%CO2下、37℃でインキュベートした。組み換え抗体を、製造業者による標準的なプログラムに従って、アクタ・プライム(Akta Prime)クロマトグラフィーユニットに充填したプロテインGカラムを使用して精製した。
【0112】
結果
増殖し、およびIgGを分泌する細胞を含む継代培養の中で、それらの幾つかの細胞培養上清は、hCMV感染を中和する抗体を含んでいたが、ELISAによって試験された特定の組み換え抗原gBおよびgHに対して、著しい結合を示さなかった(図1および2)。特に、IgG1を分泌する26A1継代培養は、より強くそしてより再現可能なhCMV中和活性を示し、そしてそれは、より詳細な分子的および生物学的性質決定のために選択された。
【0113】
26A1継代培養由来の上清に含まれるIgGのhCMVへの結合を、hCMVタンパク質の混合物を含むELISA(BEIA−CMV)を使用して確認した。同時に、この上清は、2つのヒト宿主細胞系における異なるhCMV株に対して、(表1に示す通り)著しいhCMV中和活性を示した。この活性は、上清がHSV特異的中和アッセイにおいて使用された時には観察されなかった。
【0114】
さらに、26A1継代培養を増殖させ、そしてhCMV中和ヒトIgG1の発現の観点から、そのモノクローナル性を確認するために、10細胞/ウェルでさらにサブクローニングした。実際、細胞増殖を示すウェルの中で、初代のAD169型アッセイにおいて、50〜98%の範囲で、全てが中和活性を示し、そして初代の26A1継代培養を用いて得られた結果を確認した。
【0115】
初代の26A1継代培養における細胞を、IgG産生のスケールアップのために使用し、そしてそれは徐々に、IgGが精製され、そしてhCMVアッセイにおいて試験される、より大きな培養を生じた。しだいに26A1培養を増殖させることにより、そして細胞培養における増殖に対する幾つかの要件(例えば支持細胞層、牛胎児血清)を排除することによって、より大きい培養を生じた。この方法を使用することにより、初代の26A1継代培養から生じたより大きな細胞培養が、約16μg/ml/106細胞の濃度でIgG1を分泌することが実証された。より大きなこれらの培養は、支持細胞層の非存在下においても4日間の倍増時間を示し、そしてhCMV中和活性を2ヶ月以上、培養中で維持した。
【0116】
hCMV中和アッセイを、大きな細胞培養からアフィニティクロマトグラフィーによって精製された、ヒトIgGの形態である26A1抗体を用いて繰り返した。hCMV感染力の50%阻害に必要な濃度(阻害濃度50またはIC50)を評価するために、26A1 IgGを、用量−反応実験で試験した。当該結果は、プロテインA精製された天然型26A1 IgGの強い中和活性は、細胞種またはウィルス種のいずれにも特異的ではなく、そして、約1μg/mlのIC50値およびいずれのアッセイにおいても100%に達する中和効果を提供するものとして定量的に評価され得ることを示した(図3)。
【0117】
HUVEC細胞における臨床分離株に対する、プロテインA精製した天然型26A1 IgGの中和活性と、市販の、hCMVに対する高力価IgG(IVIg)調製物(サイトテクト、バイオテスト)のそれとを比較した時、26A1のIC50は、この市販調製物について必要とされたものよりも25倍低く、そしてそれは、26A1抗体の強い中和活性を実証している。
【0118】
26A1継代培養由来の上清中に存在する中和活性が、細胞表面分子との結合に起因することを除外するために、未感染のHELFまたはHUVEC細胞を用いて、当該上清を免疫蛍光法にて試験した。このアッセイは、26A1培養によって産生されるIgG1が未感染のヒト細胞に結合しないことを示した。同じ細胞上清を関連のあるhCMV抗原に対するELISAで試験した時、当該抗体はそのようなタンパク質とは結合せず(図4)、そしてそのことは、26A1抗体が中和抗体の産生を誘導する、hCMVエンベロープ上にある、別の未だ決定されていない抗原を認識している可能性があることを示している。
【0119】
26A1由来細胞培養中で分泌されたhCMV中和抗体のモノクローナル性は、この細胞培養から得られたIgG特異的PCR産物の配列決定によって、さらに確認された。細胞ペレットを、26A1継代培養由来の細胞を使用したRNA抽出および逆転写のために調製した。得られたcDNAをその後、ヒトIgG重鎖および軽鎖のそれぞれの可変領域のための特定のプライマーを使用して、VHおよびVL配列を増幅するために使用した。PCR産物をその後、細菌性細胞を形質転換するために使用されるプラスミド中にクローン化した。細菌性形質転換体を無作為に取り出し、そしてクローン化されたPCR産物の配列決定のために使用した。全てのクローンは、おそらくPCRによって誘導されたエラーに起因する微小の違いを別として、ヒト26A1モノクローナル抗体の重鎖(図5)および軽鎖(図6)可変領域のコンセンサス配列およびCDRを決定させる、同じDNA配列を示した。
【0120】
26A1抗体のVHおよびVL領域をコードする配列は、抗体断片(FabまたはScFv)としての、または特定のアイソタイプおよびサブクラス(例えばIgA,IgG1またはIgG4)を有する完全なヒト組み換え抗体内の、26A1可変領域の好適な発現のための、発現ベクター中で再クローン化され得る。これらの組み換え抗体を、好適なアッセイによって、特定のhCMV中和活性を確認するために試験した。
【0121】
重鎖(図7)および軽鎖(図8)をコードするDNAを、一時的発現実験においてCHO細胞を形質移入するために使用されている好適な発現ベクター中でクローン化することによって、組み換えヒト26A1モノクローナル抗体を、組み換えヒトIgG1として真核細胞中で産生した。組み換えヒト26A1モノクローナル抗体を、細胞培養上清によってアフィニティ精製し、そしてhCMV中和のための異なる試験において試験した。マイクロ中和試験およびプラーク減少アッセイのいずれも、AD169/HELF細胞系を用いて、試験を行なった。組み換えヒト26A1モノクローナル抗体は、約1μg/mlの計算されたIC50を有するプロテインA精製された天然型26A1抗体と同程度に、効率的にhCMV感染力を中和した(図9)。hCMV株と標的細胞との異なる組み合わせに基づいた中和およびプラーク減少アッセイにおいて、同様に試験が行なわれ、そして全てについて、天然型および組み換えヒト26A1モノクローナル抗体の両方において同程度の有効性が確認された(図10)。
【0122】
したがって、天然型または組み換えヒトモノクローナル抗体のいずれかの形態にある、26A1抗体は、hCMV感染症およびhCMV関連疾患の臨床管理のために使用され得る抗体である
【0123】
【表1】
【0124】
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【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ヒト細胞に感染するウィルスに特異的な生物学的活性を有する、ヒトB細胞から単離された新規抗体配列に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトサイトメガロウィルス(hCMV)は、広く蔓延し、高度に種特異的なヘルペスウィルスであり、免疫抑制された、または免疫的に未成熟な個人において著しい罹患および致死を引き起こす。
【0003】
近年の幾つかの総説が、hHCMVの生物学および臨床症状を分析している(Landolfo S et al,2003;Gandhi M and Khanna R,2004;Soderberg−Naucler C,2006a)。このウィルス性病原菌は、上部消化器系または呼吸器系の内皮細胞および上皮細胞を通じて、あるいは泌尿生殖器系を通じて入ってくるので、世界全体の人口の大部分で感染しており、そして体液接触の後に小児期で獲得される。hCMVに対する血清反応陽性は、発展途上国または低所得地域において、より蔓延している。
【0004】
初期感染の後、hCMVは骨髄細胞系列の特定の宿主細胞で、潜伏状態で残存し、複製され、および多くの異なる細胞種(造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、または線維芽細胞)に転移し、ならびに宿主の免疫系から逃れている。完全にhCMVを除去することはほとんどできないが、hCMVの感染および転移は、免疫系による調整下において防御されているので、CMVの感染は通常、健常人においては無症状である。実際hCMVは、ウィルスゲノムが、選択された部位で潜伏状態のまま残存できるような有効な機構を発達させた。
【0005】
ストレス条件または特定の治療のような、免疫機能を弱める幾つかの状況は、hCMVの再活性化へと導き得る。hCMVの臨床症状(網膜炎、腸炎、胃炎、または肝炎)は、ウィルスの一次感染、再感染または再活性化の後に起こり得る。胎盤を通じた母親から感染、分娩中、または授乳を通じて、約10%の幼児は6ヶ月齢までに感染する。
【0006】
hCMVビリオンは、直線状の、鎖長230kbである二本鎖DNAゲノムを含む20面体のヌクレオカプシドからなる。hCMVゲノムの発現は、ウィルスの感染、潜伏、および複製に関わる多くの生物学的活性に関与する200以上のタンパク質の合成へと導く転写現象の複雑なカスケードによって制御される。(Britt W and Mach M,1996)。
【0007】
構造タンパク質は、非常に複雑で、いまだ完全に明らかにされていないビリオンエンベロープを形成する。それは、他のヘルペスウィルス科で確認された構造タンパク質の相同体であって、ビリオン中で、ジスルフィドで連結されたタンパク質複合体を形成し得る糖タンパク質:gCI(gBのみを含む)、gCII(gMおよびgNを含む)、gCIII (gH、gLおよびgOを含む)を含む。gB、gHおよびgN遺伝子はまた、hCMV株の遺伝子解析のために使用された(Coaquette A et al.,2004;Dar L,2007)。
【0008】
糖タンパク質gNおよびgMは、最も豊富に存在し、そしてgHおよびgBと共に、hCMVエンベロープと宿主細胞表面との間の初期相互作用に必須であり、そして結果的に感染性hCMVの産生のために必須であることが示された。この理由のため、gB、gH、gNおよび/またはgMを標的とする化合物は、hCMV感染、再感染または再活性化の後に起こる、細胞内への循環性hCMVビリオンの進入を防ぐことによって、効果的にhCMVの完成を阻害することができる。
【0009】
利用可能な治療法の選択肢がほとんどないため、hCMVの治療は困難である。ウィルスの複製を阻害する、現在利用できる薬剤化合物(ガンシクロビル、シドフォビル、フォスカルネット、マリバビル、および開発中の他の薬剤)は、著しい臨床改善を実現するが、乏しい経口バイオアベイラビリティ、低い活性、(ウィルス標的の変異による)hCMV耐性の出現、および用量を制限する毒性に悩まされるかもしれない(De Clercq E,2003;Baldanti F and Gerna G,2003;Gilbert C and Boivin G,2005)。
【0010】
hCMV感染を予防および治療する新規手段が、特に免疫不全の患者のために、移植手術の準備において、および出産前の予防において必要とされている。実際、hCMVは、HIVの患者において、および臓器移植者において臨床的に重大な日和見病原性菌であり、そしてそれは移植片拒絶とは独立して移植片喪失に寄与し、最終的に罹患および死亡へとつながる(Puius Y and Snydman D,2007)。骨髄および固体組織移植の増加は、hHCMV性網膜炎のようなhCMVの臨床症状の可能性を上昇させる(Wiegand T and Young L, 2006)。さらに、hCMVは、hCMVに感染している母親によって先天的に、または周産期において感染させられることによる(難聴、発育遅延または知能発育不全のような)出生異常の主要な感染性の原因である(Griffiths P and Walter S,2005)。
【0011】
したがって、万能であって、早期予防的hCMV特異的治療のための、例えば移植患者における(Hebart H and Einsele H,2004;KaKl A et al.,2005;Snydman D,2006)、hCMV関連性神経性病態を発症している患者における(Griffiths P,2004)、または垂直感染および胎児ならびに新生児の生命を危険にさらすhCMV感染を予防するために、リスクのある妊娠における(Schleiss M,2003)hCMV疾患予防のための薬剤を提供することは重要である。
【0012】
さらに、hCMVに対する医薬組成物は、(心血管系疾患および自己免疫疾患または幾つかの種類の癌のような)他のより広範囲にわたる疾患の治療のために有用であるかもしれず、この場合、hCMVは補助因子の可能性があり、そして/または免疫抑制治療中において再活性化され得る。例えば、hCMVは、細胞のアポトーシス、分化および転移における腫瘍調節効果を有するかもしれないため、hCMVは現在、腫瘍侵襲による、および免疫回避による長期合併症のような疾患において重要性の増しているヒト病原菌である。自己免疫疾患または血管疾患において、hCMV感染は免疫性および炎症性反応を変化させるしれない(Cinatl J et al.,2004;Soderberg−Naucler C,2006b)。
【0013】
多くの高リスクにある患者群に対して予防を提供する目的において、hCMV感染を予防する別の方法はワクチン接種である。しかし、ワクチン接種と、結果的に生ずる免疫応答との間の相関性が完全に理解されておらず、そして(特定の候補抗原または生弱毒化ワクチンを用いた)最適なワクチン接種法は、予防の標的とされている患者群に依存するようである。したがって、予防ワクチン接種法はいまだに評価段階にある(McLean G et al.,2006;Schleiss M,2005)。
【0014】
hCMV感染に対する薬理学的手法の現時点における制限という観点において、宿主−hCMVの関係についての知識、および特にhCMV−特異的な免疫応答の知識の増加によって、免疫を基盤とした治療法は、hCMV関連の合併症の良好な治療法として、既存の治療法と置き換わる、または補完する優れた代替手段となっている(Gandhi M and Khanna R,2004)。近年、免疫不全のマウスにおいて、致死へと向かうCMV感染からの長期の予防が、ウィルス特異的メモリーB細胞を移植することで達成され、そしてこのことは、そのような細胞が治療的有用性を有するかもしれないことを示唆している(Klenovsek K et al.,2007)。
【0015】
細胞を基盤とした治療のより簡便な別の方法は、ヒトまたはウィルス性抗原(例えば、hCMV)に対して、明確な中和活性を有する治療抗体を含む医薬組成物を患者へ投与することからなる、受動免疫療法であり得る。
【0016】
この治療方法は、抗原結合に基づいて、ならびにウィルスの治療標的に向かっていく抗体および抗体断片の生物学的特性に基づいて考案された(Dunman P and Nesin M,2003;Keller M and Stiehm E,2000)。受動免疫療法は、臨床診療に導入され、速やかに(感染症、免疫介在疾患および癌を含む)広範囲にわたる疾患の治療機会を拡張した。この方法は、免疫系が標的分子を阻害および/または除去するために必要とされる量の、および/または特異性のある抗体を産生することのできない患者において特に有効であり得る(Chatenoud L,2005;Laffly E and Sodoyer R,2005)。
【0017】
hCMV治療の分野において、この手法は、高力価の抗hCMV抗体を有するヒト血漿を貯留することで得られ、そして臨床用途のために(サイトテクト(Cytotect)またはサイトガムという名前で)市販されている、ヒト免疫グロブリン調製物を静脈内投与することによって行われる。しかし、これらの製品は、hCMV感染を阻害するための、部分的にのみ満足できる解決策である。実際に、この治療法は、免疫不全の患者に対して大部分が予防療法として、および抗ウィルス剤が通常同時投与される予防法として使用される(Marasco W and Sui J,2007;Nigro G et al.,2005;Bonaros N et al.,2004;Kocher A et al.,2003;Kruger R et al.,2003)。さらに、文献で報告されている通り、安全上の問題およびそのような調製物の不足についての関心が高まっている(Bayry J et al,2007;Hamrock D,2006)。
【0018】
hCMVエンベロープ上に発現している抗原に対して高い親和性を有し、そして感染を中和することができるヒト組み換え抗体は、受動免疫法のためのより好適な薬剤となるだろう。エンベロープタンパク質の化学量論量は可変であり、そして宿主の免疫応答を避けるように変化するかもしれないが、実際、幾つかのhCMV糖タンパク質は、ウィルスを中和する抗体の産生を含む強い宿主免疫応答を誘発する。この応答は、宿主免疫の重要な構成要素であると考えられ、そして抗体およびワクチンの両方の発展における目標を示している。
【0019】
ヒトモノクローナル抗体は、マウスモノクローナル抗体の本質的な制限のために、臨床適用のための最も好ましい抗体である。しかし、以前に同定されたhCMV治療用ヒト抗体の発展は(Matsumoto Y et al.,1986)、例えば造血幹細胞における(Boeckh M et al.,2001)、または網膜炎における(Gilpin A et al.,2003)そのような抗体の有効性を評価した研究において、臨床的有益性が観察されなかったために中断されている。これらの失敗した試験により、最も広範囲のhCMV株を、より効果的に中和できるヒトモノクローナル抗体を選択することを目指したさらなる研究が必要とされている。CMV感染の治療は、培養中で培養されたヒトB細胞から精製されるヒトモノクローナル抗体か、または哺乳類細胞株中に導入されたヒト配列によって発現された、組み換えタンパク質として産生されるヒトモノクローナル抗体を含む、より活性のある医薬組成物を有することによって利益を受けるだろう。
【発明の概要】
【0020】
発明の開示
本発明は、hCMVと結合し、および中和し、ならびにhCMV感染またはhCMV関連疾患を検出、治療、阻害、予防および/または改善するために使用され得る新規抗体配列を提供する。
【0021】
ヒトB細胞は、hCMV血清反応陽性患者から得られ、そして不死化された。この不死化されたヒトB細胞のポリクローナル群は、インビトロにおいてhCMVの感染力を中和する、細胞培養上清中の抗体(免疫グロブリンG、IgG)の存在について検査された継代培養を製造するために分けられた。特に、活性を中和する形態、アイソタイプおよびクローン性は、26A1と名づけられた継代培養によって分泌された抗体から決定された。当該抗体は、初代細胞培養上清および組み換えヒトモノクローナル抗体の両方からアフィニティ精製され、これは、hCMV感染のインビトロにおけるモデルを使用することによる、hCMV特異的中和活性を確認する。この抗体は、hCMVエンベロープ上にある抗原に対する中和の性質決定に使用され得る。
【0022】
26A1継代培養によって分泌される抗体の可変領域をコードするDNA配列は、増幅され、クローン化され、そして配列決定された。対応するタンパク質配列は、hCMV特異的生物活性の原因となる相補鎖決定領域(CDR)を同定するために分析された。これらの配列は、組み換えタンパク質を産生するための好適な技術を使用して、hCMV特異的結合特性および中和特性を有する、完全抗体、抗体断片または他の形態にある構造タンパク質(例えば生理活性ペプチド、融合タンパク質)の形態となっているタンパク質を産生するために使用され得る。
【0023】
hCMV感染症およびhCMV関連疾患の取扱いにおける、治療的、予防的および/または診断的有用性を有する組成物は、本発明のタンパク質を使用して、組み換えタンパク質か、または26A1継代培養由来の細胞培養から精製される天然型抗体として産生され得る。そのような組成物は、抗ウィルス化合物および/または静脈注射用免疫グロブリン(IVIg)調製物に基づく現在のhCMV治療を補完する、または置き換えるために使用されるかもしれない。
【0024】
本発明のさらなる実施形態は、以下の詳細な説明において提供されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(A)は、文献(Rothe M et al,2001)に記載されている通りの、gB特異的ELISA中に取り付けられ、そして使用されたCG3抗原の模式図である。組み換え株間融合CG3は、hCMV株AD169(SwissProt Acc. No.P06473;アミノ酸27−84)およびタウン(Towne)(スイスプロット Acc. No.P13201;アミノ酸27−84)由来のgB抗原領域2(AD2、配列番号1および2)の組み合わせに相当する。AD領域は、異なるウィルス株中で保存されている、および中和抗体によって認識されることが示されている部位(アミノ酸70〜81、下線部)を含む(Qadri I et al.,1992;Kropff B et al.,1993)。図1(B)は、gH特異的ELISAアッセイに使用されるgH(Ag)−GST融合タンパク質を含む、gH抗原の模式図である。組み換え抗原gH(Ag)−GSTは、hCMV株VR1814(Revello M et al.,2001)からのgHアミノ末端領域(アミノ酸16〜144;配列番号3)と、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との間の読み枠内融合に相当する。gHのアミノ末端は、中和抗体によって認識されるリニアー抗体結合部位(アミノ酸34〜43;下線部)を含む(Urban M et al.,1992)。
【図2】図2は、hCMVと結合し、および中和するIgG抗体を含む継代培養(ウェル)を同定し、およびその特性を明らかにする選択過程の概要である。継代培養は、PCT/EP2005/056871に開示されている、EBV型の不死化方法を用いて、hCMV患者(CMV7)由来のB細胞を不死化することによって得られた。著しい細胞増殖を示す継代培養(ウェル)からの上清は、マイクロ中和試験アッセイにおいて直接スクリーニングされた。中和活性を示す上清はその後、gBおよびgH特異的ELISAを用いてスクリーニングされた。それぞれのスクリーニングアッセイにおける陽性ウェルの数は、灰色の楕円で示される。
【図3】図3は、無血清培地中で培養された、26A1継代培養由来細胞培養の上清由来であるプロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって精製された、天然型26A1抗体のhCMV中和活性を示す。用量反応曲線は、hCMV株AD169(1000PFU/反応;IC50 0.82μg/ml)と共にヒト胚線維芽細胞(HELF)を含む、またはhCMV株VR1814(1000PFU/反応;IC50 0.67μg/ml)と共にヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を含む、いずれかの場合におけるhCMV中和アッセイについて描かれた。
【図4】図4は、不死化ヒトB細胞継代培養由来のIgGを含む上清における、gH(Ag)特異的(A)、およびCG3抗原特異的(B)結合活性を示す。ELISAは、細胞培地のみ(培地、陰性対照)または26A1、1F7(欧州特許出願第07111741号明細書に記載されている通り、CMV5提供者から得られた不死化細胞において同定された)および8C10(本特許出願および欧州特許出願第07115410号において記載されている通り、CMV7提供者から得られた不死化細胞において同定された)継代培養由来の上清を使用して行われた。点線は、継代培養が陽性であるとみなすための閾値(O.D.=0.1)を表す。
【図5】図5(A)は、26A1 IgG(VH 26A1;配列番号4および5)の重鎖可変領域における、DNA(下側のもの、393個の塩基対)およびタンパク質(上側のもの、131個のアミノ酸)コンセンサス配列のアラインメントである。図5(B)は、予想されるCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3、下線部、配列番号6、7および8)を示した、VH26A1のタンパク質コンセンサス配列である。単離されたE.コリ(E.coli)形質転換体由来のプラスミド中においてクローン化されたDNA配列によってコードされた別のアミノ酸が、コンセンサスタンパク質配列の下側に示されている。
【図6】図6(A)は、26A1 IgG(VL 26A1;配列番号9および10)の軽鎖可変領域における、DNA(下側のもの、330個の塩基対)およびタンパク質(上側のもの、110個のアミノ酸)コンセンサス配列のアラインメントである。図6(B)は、VL26A1の予想されるCDR(LCDRl、LCDR2およびLCDR3、下線部、配列番号11、12、13)を示した、VL26A1のタンパク質コンセンサス配列である。
【図7】図7は、組み換えヒト26A1モノクローナル抗体(配列番号15)の重鎖のDNA(下側のもの、1449個の塩基対、配列番号14)およびタンパク質(上側のもの、482個のアミノ酸)コンセンサス配列のアラインメントである。SignalP 3.0オンライン予想プログラム(Bendtsen J et al,2004)を使用して決定されるように、シグナルペプチドとして最も起こり得る切断部位は、19番目と20番目との間(VLS−QV)である。26A1継代培養における細胞から作製されたcDNAにおいて最初に同定された配列は、下線が引かれている(図5を参照)。アミノ酸153〜482番目は、ヒトIgG1重鎖定常領域に相当する(SwissProt Acc.No.P01857)。
【図8】図8は、組み換えヒト26A1 IgG(配列番号17)の重鎖のDNA(下側のもの、705個の塩基対、配列番号16)およびタンパク質(上側のもの、234個のアミノ酸)コンセンサス配列のアラインメントである。SignalP 3.0オンライン予想プログラム(Bendtsen J et al,2004)を使用して決定されるように、シグナルペプチドとして最も起こり得る切断部位は、16番目と17番目との間(CTG−SV)である。26A1継代培養における細胞から作製されたcDNAにおいて最初に同定された配列は、下線が引かれている(図5を参照)。アミノ酸1〜19番目および131〜234番目は、ヒトIgラムダ鎖に相当する(SwissProt Acc.No.Q8N355)。
【図9】図9は、プロテインA精製された天然型26A1抗体と比較した、組み換えヒト26A1抗体のhCMV中和活性を示す。活性は、マイクロ中和試験アッセイ(A;1000PFU/反応、感染後72時間)またはプラーク減少アッセイ(B)において、HELF細胞およびAD169hCMV株を用いて試験された。
【図10】図10は、プロテインAから精製された天然型26A1抗体と比較した、組み換えヒト26A1モノクローナル抗体のhCMV中和活性を示す。活性は、マイクロ中和試験アッセイ(A;1000PFU/反応)においてUVECヒト細胞およびVR1814hCMV株を用いて、またはプラーク減少アッセイ(B;1000PFU/反応)においてHELFヒト細胞およびAL−1 hCMV株を用いて試験された。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
PCT/EP2005/056871に記載された方法によって、生物学的活性(例えば、ヒトまたはウィルス標的との結合および/または中和)を有する抗体を血液中に含む患者から得られる、アイソタイプ特異的ヒトB細胞の効率的不死化を、そのような生理活性を有する抗体を分泌する細胞のポリクローナル群を得るという観点から行うことができる。低細胞密度(例えば1ウェルあたり50、20細胞またはそれよりも少ない量)での一段階のクローニングの後に、広範囲のスクリーニングアッセイが、これらの方法によって獲得された継代培養の上清を使用して行われ得る。この方法によって、多くのレパートリーのIgG分泌継代培養が特徴付けられ、そして結果的に、抗原に対する所望の結合特異性および/または生物学的活性を有する多くのヒトモノクローナルIgGが同定され得る、不死化B細胞のポリクローナル群を得ることが可能である。
【0027】
本発明において、IgGを分泌する、不死化ヒトB細胞のポリクローナル群は、その血清が生物学的活性として強いhCMV中和活性を示す、hCMV患者の血液から得られた。当該ポリクローナル群は、1ウェルあたり20細胞である一段階の継代培養において、そして所望の培養条件において、不死化ヒトB細胞を含む何千もの継代培養を作製するために使用された。より強い活性を示すものを選択する目的において、特定の生物学的活性が、何百もの効率的に増殖された細胞培養の上清を用いて試験され、そしてその後、分泌された抗体のアイソタイプ、および可能であればエピトープを決定した。
【0028】
26A1と名付けられた、最も期待のできる継代培養の一つは、大規模培養から天然型ヒト抗体を精製すること、および不死化B細胞からそのような抗体をコードするDNAを単離することの両方のために使用された。前記DNA配列は、組み換えヒト抗体と同様、天然型ヒト抗体を産生するために使用された。天然型、および組み換えヒト26A1モノクローナル抗体は、より広範囲な生物学的アッセイを行うために、およびhCMV関連の臨床適用における潜在的有益性を評価するために使用された。
【0029】
実施例は、同様の生物学的活性を有する細胞培養上清、天然型ヒト抗体および組み換えヒト抗体が、どのようにして、最初の血清およびヒトEBV−不死化B細胞のポリクローナル群において決定されたのかを示している。これらの証拠は、PCT/EP2005/056871に記載されている方法によって、生物学的に活性を有する、アイソタイプ特異的な、天然型および組み換えヒトモノクローナル抗体の同定、性質決定および産生をすることができることを裏付けている。実際、細胞の不死化および細胞培養条件における増殖の完全な方法は、ヒト抗体のレパートリーを速やかに、効率的におよび直接的に利用できるようにする。さらに、前記方法により得られた細胞は凍結され、そして異なる生物学的活性および/または抗原のために、異なる時期に、または同時にスクリーニングされ得る。
【0030】
一の実施形態において、本発明は、26A1抗体(配列番号8)のHCDR3(重鎖可変領域のCDR3)の配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むタンパク質を提供する。HCDR1およびHCDR2(配列番号6および7)と共に、このHCDR3は、26A1抗体の重鎖の可変領域(VH 26A1;図5;配列番号5)中に含まれている。この配列は、26A1抗体を分泌する、最初の継代培養から得られた細胞を使用して増幅およびクローン化されたDNA配列(図5A;配列番号4)によってコードされている。したがって、本発明のタンパク質は、26A1抗体のHCDR3(配列番号8)と共に、26A1抗体のHCDR1(配列番号6)および/またはHCDR2(配列番号7)の配列を含んでもよい(図5B)。そのようなタンパク質は、26A1抗体の重鎖可変領域の全配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含んでもよい。
【0031】
26A1抗体はまた、前記と同様の方法を用いて、特定のLCDR(配列番号11、12、および13)と共に、DNA(配列番号9)およびタンパク質(配列番号10)の配列が決定された軽鎖可変領域を含んでもよい(図6)。したがって、本発明のタンパク質は、26A1抗体の単一のLCDRからなる群(配列番号11、12、および13)から選択される、一またはそれ以上の配列をさらに含むことができ、そしてそれは、VL 26A1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むタンパク質として供給され得る(図6B;配列番号10)。これは、天然型VL 26A1およびVH 26A1配列の両方を、(二つの軽鎖および二つの重鎖を含む四量体複合体の天然高次構造において、または天然型抗体の組み換え変形体としての単一のタンパク質において)軽鎖および重鎖として含む、ヒト組み換え抗体が望ましいときに特に適用される。
【0032】
同一性のレベルがどこで示されたとしても、この同一性のレベルは、本発明に関連のある配列の完全長に基づいて決定されるべきである。
【0033】
26A1抗体のHCDR3は、実施例で示されるように、hCMVと結合し、および中和することができる特異的ヒト抗体の抗原結合部位を特徴づけるものだと考えられる。抗体の幾つかの、または全てのCDRは通常、抗原結合表面に達するために必要とされているが、HCDR3は配列の観点のみならず、長さの観点からも抗体間で最も大きな違いを示すCDRである。そのような多様性は、体液性免疫機構によって基本的にいかなる抗原をも認識することができる、結合領域の根本的な要素である(Xu and Davis,2000;Barrios Y et al.2004;Bond C et al.,2003)。あるいは、CDRの組み合わせは、近年概説されたように(Ladner R,2007)、元来の結合特性を保持している非常に短いタンパク質で互いに接続され得る。
【0034】
したがってhCMV中和タンパク質は、hCMV結合部位である、26A1抗体のHCDR3を使用して、26A1抗体由来の他のCDRと組み合わせて、または組み合わせずに産生され、そしてそれは、抗体タンパク質フレームワーク中で(Knappik A et al.,2000)、または抗体と関連のないタンパク質フレームワーク中で(Kiss C et al.,2006)発現され得る。
【0035】
26A1抗体(または単離されたHCDRおよびLCDRのような、選択された部位)を形成する重鎖および軽鎖の可変領域は、Scfv(一本鎖可変断片)、Fab(可変性重/軽鎖ヘテロ二量体)、二重特異性抗体(diabody)、ペプタボディ(peptabody)、VHH(重鎖抗体の可変領域)単離された重鎖または軽鎖、二重特異性抗体(bispecific antibodies)および他の非臨床/臨床適用のための改変抗体変形体のような、異なる名前で文献に記載されている通りの、機能的抗体断片としての他の全てのタンパク質形態中に含まれ得る(Jain M et al.,2007;Laffly E and Sodoyer R,2005)。
【0036】
別の抗体は、軽鎖可変領域(VL)シャッフリング法を通じて、26A1抗体の配列を用いて作製され得る。実際、親和性、安定性および/または組み換え体産生の観点において、改善された特性を有するVH/VLの組み合わせを決定する目的において、VL領域ライブラリーと結合された、(26A1の一つのような)一本鎖重鎖可変領域VHを用いて、幾つかの異なる抗体が作製され、そしてhCMV特異的活性を試験され得る(Ohlin M et al.,1996;Rojas G et al.,2004;Watkins N et al.,2004)。
【0037】
新規生理活性ペプチドを開発するための新しい手法はまた、元の活性を維持し、そしてより好適な薬理学的プロファイルを有するかもしれない、L−アミノ酸および/またはD−アミノ酸を含む、CDR由来ペプチドを合成する可能性を示す(Smith J et al.,1995; Levi M et al.,2000;Wijkhuisen A et al.,2003)。
【0038】
したがって、26A1抗体のHCDR3のみならず、26A1抗体のHCDR3と高い類似性を有する配列、それを含む融合タンパク質、および(例えば、正常な、またはレトロ−インバーソ(retro−inverso)型の高次構造において、L−アミノ酸、D−アミノ酸を含む)それら由来の合成ペプチドが試験され、そしてhCMV結合タンパク質および中和タンパク質として使用され得る。
【0039】
さらに、改善された特性のある抗体を有するために、特に、(より良い薬物動態特性、または抗原に対するより高い親和性のような)臨床適用のために、抗体は特定の位置において修飾されていてもよいことが知られている。これらの変更は、26A1抗体のCDRおよび/またはフレームワーク中でなされ、そして当該配列は、親和性成熟法および他の方法を使用する、抗体の合理的設計のための任意の専用技術を適用することによって選択され得る(Kim S et al.,2005;Jain M et al,2007)。
【0040】
本発明のタンパク質は、通常、特定のアイソタイプを有する完全ヒトモノクローナル抗体のような抗体として提供されてもよい。例えば、IgGアイソタイプは、ほとんど全ての承認された治療抗体の抗体形態である(Laffly E and Sodoyer R,2005)。しかし、HIV中和IgG1から単離された抗原結合部位がヒトIgA配列上に導入され、そして得られた抗体は、同様にHIV感染を阻害することができる(Mantis N et al.,2007)。
【0041】
本発明のタンパク質はまた、抗体断片、生理活性ペプチドまたは融合タンパク質として提供されるかもしれない。これらの全て代替的な分子は、26A1抗体で決定された元のhCMV結合および中和特性を、高めるとまではいかなくても、維持するはずである。融合タンパク質の場合において、異種タンパク質配列は、hCMV特異的部位(例えば抗体断片)の正確な発現および生物学的活性に影響を与えることなく、26A1由来の配列のN末端またはC末端に位置され得る。
【0042】
用語「異種タンパク質配列」とは、hCMV特異的部位(例えば抗体断片)のN末端またはC末端の、天然に存在しないタンパク質配列を示す。このタンパク質配列をコードするDNA配列は通常、組み換えDNA技術によって融合され、そして少なくとも5アミノ酸をコードする配列を含む。
【0043】
そのような異種タンパク質配列は通常、特定の診断的および/または治療的使用のために、hCMV特異的抗体断片に追加の特性を提供するために選択される。そのような追加の特性の例は:検出もしくは精製手段、追加の結合部位もしくは生物学的リガンド、または融合タンパク質の翻訳後修飾(例えばリン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、SUMO化またはタンパク質内部分解性切断)を含む。
【0044】
あるいは(または異種タンパク質配列との融合に加えて)、本発明のタンパク質の活性は、治療剤、安定化剤または診断剤のような、異なる化合物との結合によって改善されるかもしれない。これらの薬剤の例は、化学的リンカーまたは重合体を使用して結合され得る、検出可能な標識(例えば放射標識、蛍光化合物、毒素、金属原子、化学発光物質、生物発光物質または酵素)である。hCMV特異的な生物学的活性は、代謝および/または診断的もしくは治療的適用における安定性を変化させるタンパク質または重合体のような、別の治療用タンパク質との融合によって改善されるかもしれない。
【0045】
タンパク質部位、リガンドおよび好適なリンカーを選択ならびに設計する方法だけでなく、融合タンパク質の構築、精製、検出および使用のための手法も、文献中で提供されており(Nilsson J et al,1997;「キメラ遺伝子およびハイブリッドタンパク質の適用」Methods Enzymol.Vol.326〜328,Academic Press,2000;国際公開第01/77137号)、そして臨床において、および研究室おいて一般に利用可能である。例えば、融合タンパク質は、融合タンパク質のインビボおよび/またはインビトロにおける同定またはその精製を容易にすることができる、(ポリヒスチジン、FLAG、c−MycまたはHAタグのようなタグを含む)市販の抗体によって認識される配列を含んでもよい。
【0046】
他のタンパク質配列は、(緑色蛍光タンパク質の場合のような)直接的蛍光分析によって、または特定の基質もしくは酵素によって(例えばタンパク質分解部位を使用して)、同定され得る。hCMV特異的抗体、抗体断片、生理活性ペプチドおよび融合タンパク質の安定性は、ファージコートタンパク質(cp3またはcp8)、マルトース結合タンパク質(MBP)、ウシ血清アルブミン(BSA)またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)のような担体タンパク質との融合によって改善されるかもしれない。
【0047】
26A1抗体は、本発明の主要な目的であり、そしてそれは、特定の継代培養の上清中において、hCMVを中和する能力によって選択された、ヒトIgG1モノクローナル抗体として特徴付けられた。この性質は、細胞培養上清(表1)、およびその後の、プロテインA精製(図3)、ならびに組み換えヒトモノクローナル抗体(図9および10、配列番号15および17)を使用したインビトロ中和アッセイによって決定された。
【0048】
26A1抗体によって認識される特定のhCMV抗原は、ウィルス抗原中の既知のhCMV中和エピトープの一群を使用して決定された(図1、2および4参照)。結果的に、このIgG抗体は、hCMV中和エピトープ、およびそのようなエピトープを認識することによってhCMV感染を中和することができる、(例えば抗体、抗体断片、生理活性ペプチド、融合タンパク質または任意の天然型/組み換えタンパク質の形態である)抗原と結合するタンパク質を明らかにするために使用され得る。
【0049】
従来、hCMV特異的短縮タンパク質または合成ペプチドを用いる、ELISAまたはウェスタンブロットが同様に使用され(Greijer A et al.,1999; hlin M et al.,1993)、この方法において、hCMVに向かう抗体は、それらの抗原である糖タンパク質H(国際公開第94/16730号、国際公開第94/09136号、国際公開第92/11018号)、糖タンパク質B(欧州特許第248909号明細書、国際公開第93/21952号)または糖タンパク質M/糖タンパク質N(Shimamura M et al.,2006)に従って明らかにされた。さらに、hCMVビリオンの他の構成要素は、pUL130およびpUL128の場合のように、ウィルス親和性に影響を及ぼすのみならず、hCMV中和抗体の標的となり得る(Wang D and Shenk T,2005)。したがって、26A1抗体によって認識されるCMV抗原/エピトープは、上記の文献に基づく異なるインビトロアッセイによって同定され得る。
【0050】
本発明のさらなる実施形態は、26A1継代培養によって分泌されたヒトIgG1抗体であり、そしてそれは、hCMVと結合しおよび中和する、プロテインA精製された天然型抗体として提供され得る。このIgG1抗体は、同様にhCMVと結合および中和し得る競合タンパク質を同定するために使用され得る。同様のタンパク質が、上記中においておよび実施例中において、特に組み換えヒト抗体および抗体断片として提供される。
【0051】
hCMV中和の機構は、そしてそれは26A1抗体および上記の他のタンパク質によって認識されるウィルスエピトープと関わりがあるのだが、ヒト血清(Navarro Det al,1997;Klein M et al.,1999;Weber B et al.,1993;Rasmussen L et al,1991;Marshall G et al.,2000)またはモノクローナル抗体(Schoppel K et al.,1996;Simpson J et al.,1993;Gicklhorn D et al.,2003)を使用した、文献に記載されているような、特定の構造hCMVタンパク質および/または株のために利用可能なアッセイを使用して、性質決定され得る。
【0052】
本発明のさらなる目的は、任意の抗体、抗体断片、融合タンパク質、生理活性ペプチド、または単離された上記のHCDRおよびLCDRをコードする核酸である。実施例は、特に、26A1の重鎖(配列番号4)および軽鎖(配列番号9)の完全な可変領域をコードする配列を提供する(図5Aおよび6A)。これらのDNA配列(または特定のHCDRおよびLCDRをコードするもののような、選択された部分;図5および6)は、抗体の別の形態の一つ(例えば、完全な、親和性の成熟した、またはCDRが移植された抗体、もしくは抗体断片)または融合タンパク質にそれらを発現させるために、ベクター中に導入され得る。これらの核酸は、配列番号4と少なくとも90%の同一性を有する配列であって、配列番号9と少なくとも90%の同一性を有するものをさらに含む配列を有するかまたは有さない前記配列を含むことができ、そしてそれは、26A1の重鎖のみに由来する配列が必要とされるのか、または重鎖および軽鎖の両方が必要とされるのかに依存する。
【0053】
完全ヒト抗体が望ましい時、抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgAおよびIgE定常領域からなる群から選択される重鎖定常領域をさらに含むべきである。好ましくは、重鎖定常領域は、ヒトIgA、(26A1継代培養から性質決定された、天然型26A1抗体に見られる)IgG1、IgG2またはIgG4である。26A1重鎖および軽鎖の完全可変領域をコードする核酸配列は、クローン化され、そしてPCR反応、および得られたPCR産物を含む、Eコリ細胞を形質転換するために使用されたベクターを用いて、その性質が明らかとされた。そのような配列は、別のベクター中に、特に、ベクターの、または好適な制御配列(例えばプロモーター、転写ターミネーター)と作動可能に連結されている別個のベクターの発現カセット中に、(一部、または完全な形で)導入され得る。
【0054】
ヒト26A1モノクローナル抗体、またはそのような抗体由来の他のタンパク質配列は、好適な宿主細胞を形質転換するためのベクターを使用して、組み換えタンパク質として発現され得る。本発明の核酸を含む宿主細胞は、原核または真核宿主細胞であることができ、そして所望の組み換えタンパク質を分泌することができるはずである。そのようなタンパク質を産生する方法は、タンパク質発現および宿主細胞培養からのタンパク質の回収に好適な条件下で、それらをコードした配列を含む発現ベクターを用いて形質転換された宿主細胞を培養することを含む。当該ベクターは、プロモーター、(必要に応じて)リボソーム結合部位、開始/終始コドン、およびリーダー/分泌配列を含むべきであり、そしてそれは、所望のタンパク質のモノまたはバイシストロニック転写物の発現を促進し得る。当該ベクターによって、原核または真核宿主細胞中における組み換えタンパク質の発現ができる。そのような細胞を十分に含む細胞株は、その後単離され、安定な細胞株を提供する。
【0055】
核酸および宿主細胞は、一般的な組み換えDNA技術を適用することによって、本発明のタンパク質を産生するために使用され得る。つまり、所望のDNA配列は、制限酵素を用いた初代クローニングベクターの消化によって抽出されるか、またはそのようなベクターをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の鋳型として、ならびに重鎖および軽鎖の完全な可変領域またはそれらの一部のみ(例えばHCDR3配列)を特異的に増幅するためのPCRプライマーとして使用することで増幅され得る。これらのDNA断片はその後、オックスフォード大学出版より出版された「実用的手法」というシリーズ名のもの(「DNAクローニング 2:発現系」,1995;「DNAクローニング 4:哺乳類系」,1996;「タンパク質の発現」,1999;「タンパク質精製技術」,2001)を含めて、クローン化および組み換えタンパク質を産生する方法についての本および総説中に記載されている通りの方法で、原核または真核宿主細胞中で発現させるための、より好適なベクターへ導入され得る。
【0056】
真核宿主細胞(例えばイースト、虫または哺乳類の細胞)において、異なる転写および翻訳調節配列は、宿主の性質に依存して使用されてもよい。それらは、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス、シミアンウィルスなどのようなウィルス源由来であり、そしてそこで、調節シグナルは、高レベルに発現している特定の遺伝子と関わりがある。具体例は、ヘルペスウィルスのTKプロモーター、SV40早期プロモーター、イーストgal4遺伝子プロモーターなどである。転写開始調節シグナルは、一過性の(または恒常的)抑制および活性化ならびに遺伝性発現を調節することができるように選択されるかもしれない。
【0057】
組み換えタンパク質をコードしている配列は、例えば、コドンの利用および制限部位が、クローン化に、ならびに特定のベクターおよび宿主細胞中において組み換えタンパク質を発現させるために最も好適であるDNA配列を選択するためのソフトウェアを使用して決定され得る、DNAレベルのみでの修飾を行うために、順応され、そして再クローン化され得る(Grote A et al,2005;Carton J et al.,2007)。
【0058】
さらなるクローニング化段階中において、タンパク質配列は、所望の抗体形態(Scfv,Fab、抗体フラグメント、完全ヒト抗体など)と関連して、または一またはそれ以上の内部アミノ酸の導入、置換または除去と関連して付加され得る。これらの技術はまた、構造上、および機能上のさらなる性質決定、ならびに一般的にはタンパク質の、および特に抗体の(Kim S et al.,2005)治療上の特性のさらなる最適化のために、あるいは安定なインビボ送達をすることができるベクターを製造するために(Fang J et al.,2005)使用され得る。例えば、組み換え抗体はまた、可変領域と融合している特定のFc領域を選択することにより(Furebring C et al.,2002;Logtenberg T,2007)、一本鎖抗体断片を作製することにより(Gilliland L et al.,1996)、および安定なペプチド配列(国際公開第01/49713号)、ポリマーまたは化学的に修飾された残基を有する放射化学物質(Chapman A et al.,1999)を付加することにより、構造および/または活性のレベルで修飾され得る。
【0059】
組み換えタンパク質をコードしているDNA配列は、好適なエピソーム中へ、または非相同的もしくは相同的な組み込みベクター中へ挿入されると、形質転換するための幾つかの好適な手段(形質転換、接合、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、直接的マイクロインジェクションなど)によって適切な宿主細胞に導入され得る。特定のベクターを選択する時、考えられ得る重要な要素は:ベクターを含む宿主細胞が認識および選択される容易さ;所望のベクターのコピー数;および、ベクターが異なる種の宿主細胞間で「シャトル」できるかどうか、を含む。
【0060】
導入されたDNAによって安定に形質転換された細胞は、発現ベクターを含む宿主細胞の選択をすることができる、一またはそれ以上のマーカーを同様に導入することによって選択され得る。当該マーカーはまた、栄養要求性の宿主への光合成栄養、殺生物剤、例えば抗生剤、または銅のような重金属、に対する抵抗性などを提供してもよく、そして必要であれば、切断可能または抑制されてもよい。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるべきDNA遺伝子配列と直接に結合されているか、または同時形質移入によって同じ細胞中へ導入され得る。さらなる転写制御因子はまた、最適な発現のために必要とされてもよい。
【0061】
宿主細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれかであってよい。原核宿主細胞の中で好ましいものは、B.サブチリス(B.subtilis)またはE.コリである。真核宿主細胞の中で好ましいものは、イースト、昆虫または哺乳類細胞である。特に、ヒト、サル、マウス、(バキュロウィルスを基盤とした発現系を用いた)昆虫および(実施例中に示されるような)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、正確な折り畳み、または正確な部位への特定の形式のグリコシル化を含む、タンパク質分子への翻訳後修飾を提供する。同様に、イースト細胞は、グリコシル化を含む、翻訳後ペプチド修飾を行うことができる。強力なプロモーター配列、およびイースト中で所望のタンパク質の産生のために利用される高コピー数のプラスミドを利用する、多くの組み換えDNA手法が存在する。イーストは、クローン化哺乳類遺伝子産物中のリーダー配列を認識し、そしてリーダー配列を有するペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。
【0062】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類培養細胞株は、当該分野において既知であり、そしてアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から利用可能な、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、サル腎臓(COS)、C127、3T3、BHK,HEK293、Per.C6、ボウズ(Bowes)メラノーマ、およびヒト肝細胞(例えばHep G2)ならびにその他の培養細胞株を含むが、それらに限定されない、多くの不死化培養細胞株を含む。バキュロウィルス系において、バキュロウィルス/昆虫発現系のための原料は、キット形態で市販されている(例えば、インビトロジェンによって商品化されている)。
【0063】
組み換えポリペプチドの長期間、高収率の産生において、安定な発現が好ましい。例えば、興味のあるポリペプチドを安定に発現する培養細胞株は、ウィルス性の複製および/または内因性発現要素、ならびに同じまたは別のベクター上に存在する選択可能なマーカー遺伝子を含んでもよい発現ベクターを使用して形質転換されてもよい。ベクターの導入の後に、細胞は、それらが選択培地に切り替えられる前に、強化培地中で一日またはそれ以上の日数の間培養されてもよい。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する抵抗性を付与することであり、そしてその存在によって、導入された配列を首尾よく発現することができる細胞の増殖および回収をすることができる。安定に形質転換された細胞の抵抗性クローンは、細胞の種類に対して好適である組織培養技術を使用して増殖されてもよい。そのような細胞の十分に豊富な培養細胞株はその後、安定な培養細胞株を提供するために単離され得る。
【0064】
完全組み換えヒト免疫グロブリンの場合において、重要な段階は、特定のアイソタイプおよび定常領域の選択である。所望のアイソタイプおよびサブタイプ(例えば、ヒトIgA、IgG1、IgG2、またはIgG4)を有する抗体を発現するために特に設計されたベクターは、広く文献に記載されている。その結果、完全抗体または融合タンパク質は、原核細胞生命体(例えばエスケリキア コリ(Escherichia coli);Sorensen H and Mortensen K,2005;Venturi M et al,2002)、植物(Ma J et al,2005)、または真核細胞中において組み換えタンパク質として発現されることができ、そしてそれは、一過性の、または安定な形質転換細胞として高レベルの発現をすることができる(Dinnis D and James D,2005)。これは、抗体の性質決定が、インビボアッセイを含めて、より洗練されたアッセイを用いておこなわれなければならないときに、そしてそこで、抗体の半減期が決定され得るときに特に必要とされる。宿主細胞は、組み換えタンパク質の発現レベルに基づいて、さらに選択され得る。
【0065】
さらに、タンパク質が、特に抗体として真核宿主細胞(特に哺乳類培養細胞株)中で発現されるとき、異なるベクターおよび発現系が、形質移入された培養細胞株の安定なプールを生じさせるために設計された(Aldrich T et al.,2003;Bianchi A and McGrew J,2003)。組み換え抗体の高レベルの、最適化された、安定な発現はまた、細胞培養条件の最適化によって(Grunberg J et al.,2003;Yoon S et al.,2004)、およびより高レベルの抗体産生ならびに分泌を行うクローンを選択または設計することによって(Bohm E et al.,2004;Butler M,2005;)達成された(Schlatter S et al.,2005)。
【0066】
抗体、抗体断片、生理活性ペプチド、融合タンパク質、およびhCMVと結合ならびに中和できる、上に定義した他のタンパク質は、細胞培養または合成精製品のいずれかからの非組み換え/組み換えタンパク質の単離をすることができる、確立した技術によって精製され得る。これらの技術は、hCMVに関連のある予防的、診断的および治療的使用のための、より広範囲な性質決定および検証を行うために十分なタンパク質を(マイクログラムからミリグラムの範囲で)提供するはずである。この目的のために、組み換え、または天然型タンパク質の調製物は、インビトロまたはインビボアッセイ(生化学的、組織または細胞を基盤としたアッセイ、げっ歯類または霊長類で確立された疾患モデル、親和性を測定するための生物物理学的手法、エピトープマッピングなど)において、特に実施例またはhCMV病理学および免疫生物学の研究に関する、開示されてある任意のものを使用して試験され得る。
【0067】
ヒトB細胞上清由来の調製物から精製された、または組み換えタンパク質として発現された抗体は、文献既知の、組織または細胞を基盤としたインビトロアッセイを用いてさらに評価され得る(Eggers M et al.1998;Lam V et al,2006;Reinhardt B et al.,2003;Forthal D et al.,2001;Goodrum F et al.,2002)。さらに、関連のある前臨床試験が、hCMV感染動物において、特にヒト宿主細胞が移植されたモデルにおいてなされ得る(Barry P et al.,2006;Gosselin J et al.,2005;Thomsen M et al.,2005)。
【0068】
本発明の組み換えタンパク質の精製は、この目的のために知られた任意の従来法、すなわち、抽出、沈殿法、クロマトグラフィーなどに関する任意の方法によって行われ得る。特に、抗体精製の方法は、プロテインA、プロテインGまたは合成基質に対する(Verdoliva A et al.,2002;Roque A et al.,2004)、あるいは特定の抗原またはエピトープに対する(Murray A et al.,2002;Jensen L et al.,2004)、抗体の強い親和性を利用した、カラム中に含まれる固定化されたゲルマトリクスを使用して行われ得る(Nisnevitch M and Firer M,2001;Huse K et al.,2002;Horenstein A et al.,2003)。洗浄後、タンパク質はpHまたはイオン強度を変化させることによって、当該ゲルから溶出される。または、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)が使用され得る。溶出は通常、タンパク質の精製において用いられる水−アセトニトリルを基盤とした溶媒を使用して行われ得る。
【0069】
抗体、抗体断片、生理活性ペプチド、融合タンパク質、および26A1抗体の配列を使用する、上に定義した他のタンパク質は、hCMV感染の検出、治療、阻害、予防および/または寛解のために使用され得る。この目的のために、そのような化合物は、hCMV感染に対応するための診断用、治療用または予防用の組成物を調製するために使用され得る。
【0070】
特に、そのような化合物は、幾つかの薬学的に許容され得るビヒクルまたは担体とともに、医薬組成物を調製するために使用され得る。これらの組成物は、ワクチン、hCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン調製物、免疫調整性化合物および/または抗ウィルス化合物のような、幾つかの追加の治療薬または予防薬をさらに含んでもよい。文献は、hCMV複製に作用する化合物(フォスカルネット、バンガンシクロビル(Vanganciclovir)、ホミビルセンまたはガンシクロビル)、およびヒトにおいて単剤でまたは静注用免疫グロブリン調製物との併用で既に試験された化合物の幾つかの例を提供する(De Clercq E,2003;Nigra G et al,2005)。
【0071】
さらに、最近の文献は、ヒトモノクローナル抗体が、静注用免疫グロブリン調製物および/または抗ウィルス化合物のような現在の治療を補完する(および可能ならば置き換わる)ために使用されることができ、そしてそれが、医薬組成物の投薬回数および/または用量を減らす機会を与えることを示唆している(Bayry J et al.,2007)。
【0072】
これらの組成物は、抗体、抗体断片、生理活性ペプチド、融合タンパク質およびヒト26A1モノクローナル抗体の配列および活性に基づく、上に定義した他のタンパク質を含んでもよい。当該組成物は、異なるhCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン(IVIg)調製物および/または抗ウィルス化合物をさらに含んでもよい。異なるhCMV中和抗体は、既に文献に記載されている、または欧州特許出願第07114782号明細書、第07115410号明細書、および第07111741号明細書(それぞれ10B7、8C10、1F7)に記載されているものであって、gH、gB,または他のhCMV抗原と関わりのあるもののような、異なるエピトープによって性質決定されるべきである。実際、文献は、ウィルスまたはヒト標的に向かう二またはそれ以上の抗体が医薬組成物と結合している時、得られる組成物が単なる相加効果ではなく、特定の相乗効果による、改善された治療有効性を有するかもしれない多くの例を示している(Logtenberg T,2007)。
【0073】
任意のタンパク質(例えば抗体、抗体断片、融合タンパク質、生理活性ペプチド)および上に定義した核酸を含む組成物は、hCMV関連の診断、治療または予防目的で、患者に使用および投与され得る。これらの組成物は、hCMVビリオンを標的とすることによって、治療患者におけるウィルスの増殖を阻害し、そして集団におけるウィルス感染の発生を潜在的に阻害することができる治療用化合物(特に治療用抗体または治療用抗体断片)を提供する、hCMV特異的受動免疫のための手段として投与され得る。
【0074】
特定の使用に応じて、当該組成物は、より長い期間またはより短い期間における、被験者(特に妊婦、またはhCMVもしくはhCMV感染者と接触をしたためにhCMVに対するリスクがあると考えられるその他の患者)に対する化合物を提供するはずである。この目的のために、当該組成物は、単回投与でまたは複数回投与で、および/または好適な装置を用いて、異なる経路:すなわち筋肉内、静脈内、皮下、局所、粘膜を通じて、噴霧器もしくは吸入器により、点眼剤として、生物分解性のないマトリクス物質中において、または微粒子の薬物送達系を使用して、投与され得る。特に、当該組成物を局所的投与または眼球投与してもよく、そしてそれは、粘膜および眼にhCMVが存在する場合において有用な方法を示している。さらに、抗体および抗体断片は、創傷(Streit M et al,2006)、角膜(Brereton H et al.,2005)または膣(Castle P et al.,2002)に、局所的に投与されたとき、有効であり得る。
【0075】
本発明の医薬組成物は、十分な期間、その活性を発現するために化合物を投与できる被験者に対して、治療用にまたは予防用に有効な量の化合物を提供するはずである。所望の効果は、hCMVの感染、再活性化、および/または再感染を調節することによって、ならびに網膜炎または肺炎のような、hCMV感染の少なくとも幾つかの臨床症状を減らすことによって、hCMV患者の状態を改善することである(Landolfo S et al.,2003)。例えば、当該組成物は、投与経路、投与回数、および患者の状態に依存するが、約0.005から約50mg/kg/体重の有効量で投与されるべきである。
【0076】
診断的用途を有する組成物の場合において、当該化合物は、生体サンプル中のウィルスを検出するための、臨床および研究室において一般的に確立された技術(例えばELISAまたは他の血清学的アッセイ)を使用して、あるいはインビボで、被験者において投与後少なくとも1、2、5、10、24時間またはそれ以上経過したときに検出されるべきである。hCMVの検出は、本発明のタンパク質を使用して、インビトロで得られたデータと臨床状態との間に相関がある場合において、免疫応答性の、および免疫不全の宿主の両方のリスクのある集団において、慢性のまたは急性のhCMV感染を観察するための確立された既知の手法および手順と置き換えて、または組み合わせて行なわれ得る(Gilbert G,2002;Gerna G and Lilleri D,2006;Lazzarotto T et al,2007)。
【0077】
hCMVもしくはhCMV関連疾患の治療、予防または診断法は、上で定義したタンパク質または核酸の投与を含み得る。当該方法は、異なるhCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン(IVIg)調製物および/または抗ウィルス化合物の投与をさらに含んでもよい。
【0078】
臨床開発および臨床的使用は、抗体の薬物動態および薬物力学に(Lobo E et al., 2004;Arizono H et al.,1994)、前臨床および臨床の安全性試験のデータに(Tabrizi M and Riskos L,2007)、ならびにヒトに対する治療およびインビボ診断のために使用されるべきモノクローナル抗体の産生および品質調整のための国際的基準の遵守(Harris R et al.2004)に基づいて行なわれるべきである。
【0079】
本発明のタンパク質はまた、hCMV関連性またはhCMV付随性疾患として定義され得る、他のより蔓延している(心血管系および自己免疫疾患または幾つかの種類の癌のような)疾患を検出、治療、阻害、予防および/または寛解するための組成物の調製のために使用され得る。このウィルスは、(Fc受容体、細胞接着分子、ケモカインおよびサイトカインの発現を刺激することによる)細胞性/免疫性炎症疾患過程、(例えばアテローム性動脈硬化、再狭窄における)自己免疫活性、および(MHCクラスIおよびIIの発現を阻害することによる)例えば血管中および活発に増殖している細胞中における、細胞のアポトーシス、分化、および遊走につながる抗原提示経路の変化、と関わりがあることがよく知られているため、これらの条件において、hCMVは、可能性のある補助因子と考えられる(Cinatl J et al,2004;Soderberg−Naucler C,2006b)。
【0080】
さらに、hCMV感染はまた、細胞代謝の変化(Munger J et al.,2007)、抑制(Phillips A et al.,2007)または血栓事象に対する危険因子(Fridlender Z et al.,2007)と関わりがあることが判明した。hCMVの再活性化および関連のある合併症はまた、癌患者において(Sandherr M et al.,2006;Han X,2007)、または炎症性結合組織疾患を患っている患者において(Yoda Y et al., 2006)、および通常、副腎皮質ステロイドのような免疫抑制治療(Yamashita M et al.,2006)下にある、または化学療法および他の抗体を基盤とした免疫抑制療法(O‘Brien S et al.,2006;Scheinberg P et al.,2007)下にある患者において見られた。
【0081】
本発明は、以下の実施例によってこれから記載されるが、それはいかなる場合においても本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0082】
実施例1:hCMVの感染力を中和するヒトモノクローナル抗体を分泌する細胞培養の製造
材料および方法
血清中にhCMVを中和するIgG抗体を有する、ヒト提供者の選択
これらのhCMV特異的アッセイを、PCT/EP2005/056871に記載されている通りに、または下記に要約された、文献記載の通りに行なった。
【0083】
hCMV中和抗体を、ヒト胎児肺線維芽細胞(HELF細胞)およびhCMV AD169株(ATCC,cod.VR−538由来のhCMV実験室株)を基盤にしたhCMVマイクロ中和アッセイに従って検出した。
【0084】
hCMVマイクロ中和アッセイを、同様に、内皮親和性hCMV VR1814株、妊婦の頸部スワブから回収された臨床分離株の誘導体(Revello M et al.,2001)、およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて行なった。これらの細胞を、臍帯血の酵素処理によって、および2%ウシ胎児血清(FBS)、ヒト組み換え血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ヒト上皮細胞増殖因子(hEGF)、インスリン増殖因子(IGF−1)、ヒドロコルチゾン、アスコルビン酸、ヘパリン、ゲンタマイシンおよびアムホテリシンB(それぞれ1μg/ml)を加えた内皮細胞増殖培地(EGM−2、ケンブレックス(Cambrex)バイオサイエンス)中で培養した。実験を、第2〜6継代の細胞を用いて行なった。
【0085】
臨床および実験室株を使用した、hCMV感染および複製を研究するためのHELFおよびHUVEC細胞の利用は、多くの論文に記載されている(Gerna G et al.,2002)。本発明の場合において、当該細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)、1mMピルビン酸ナトリウム(NaP)、およびGPS(2mM グルタミン、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン)を有するミニマムエッセンシャル培地(MEM;Gibco−BRL)を含む、100μlの増殖培地入りの、96ウェルプレートの平底のウェル上に蒔いた(2.0〜2.5x104/ウェル)。細胞を、37℃で24時間培養した。
【0086】
50μlの抗体を含む(ヒト血清、細胞培養上清、またはプロテインAで精製された、指示濃度の天然型もしくは組み換えIgGの)サンプルを、実験室株hCMV AD169(5%FCSを有する50μlのMEM中、500プラーク形成単位(pfu);混合物の合計量は100μl)で、37℃で1時間、インキュベートした。抗体調製物およびウィルスの混合物にその後、HELF細胞単層(hCMV AD169およびAL−1株に対して)またはHUVEC細胞単層(hCMV VR1814に対して)を添加し、そして1時間インキュベートした。増殖培地を細胞単層から除去し、そして抗体−ウィルス混合物と交換した。プレートをその後、2,000gで30分間遠心分離し、そして5%CO2存在中、37℃で90分間インキュベートした。増殖培地(100μl)を添加し、そして当該培養を恒温器中でさらに72時間保存した。
【0087】
hCMVの感染力におけるB細胞上清の効果を、間接的免疫ペルオキシダーゼ染色によって、hCMV中間体早期抗原(IE1+IE2)を染色することによって測定した。細胞単層を、(−20℃で保管された)アセトン/メタノール溶液で1分間固定化し、その後、PBSで洗浄した。当該細胞を、1%H2O2を含んだ0.1%トリトンX−100のPBS溶液中で、氷上で5分間透過処理し、その後PBSを用いて洗浄した。内因性ペルオキダーゼを、50%メタノールおよび0.6%H2O2入りのPBSを用いて、暗所中において室温で30分間阻害し、その後PBSで洗浄した。50μlのタンパク質遮断薬(ウルトラ テック(Ultra Tech)HRP500〜600テスト;ストレプトアビジン−ビオチン万能検出系;PN IM2391)を室温で10分間付加し、それからPBSを用いて洗い流した。マウス抗HCMV IEA(クローンE13;アルジーン バイオソフト(Argene Biosoft);11−003参照)をウェルへ室温で60分間付加した。洗浄後、細胞を50μlのビオチン結合性二次抗ヒトIgG(ウルトラ テックHRP500〜600テスト;ストレプトアビジン−ビオチン万能検出系;PN IM2391)、またはペルオキシダーゼ結合性ヤギ抗マウスIgG(ウルトラテックHRP)と共に10分間インキュベートした。DAB基質(Merck;no.1.02924.0001)の0.1%H2O2溶液を、暗所にて20℃で30〜45分間添加し、そして反応を、PBSを用いて希釈することにより停止した。IEA−陽性の核を顕微鏡で数えた。
【0088】
培地のみ、または無関係のIgG抗体を含む細胞上清を、陰性対照として使用した。hCMV血清陽性の患者の血清から精製された、ヒトIgGの市販の調製物(サイトテクト;バイオテスト(Biotest))を、125μg/mlから始めて希釈させながら、陽性対照として使用した。陽性を、陰性対照ウェルと比較して、IEA陽性細胞を≧40%阻害するものとして定義した。
【0089】
Reed−Munch法を使用して計算された50%阻害の終点は、中和力価(NT)と考えられるだろう:
NT=抗体希釈の逆数[>50%阻害]x[(50%超の%阻害−50%)/(50%超の%阻害−50%未満の%阻害)]
【0090】
hCMVエンベロープ糖タンパク質gBまたはgHの領域と結合するIgG血清の存在に基づいたヒト提供者の選択
hCMV特異的結合アッセイを、PCT/EP2005/056871に記載されている通りか、または製造業者によって指示された通りに行い、そしてCMV特異的IgG抗体の市販混合物(サイトテクト、バイオテスト)を用いて検証した。血清を、市販である、hCMVビリオンタンパク質と結合するヒトIgG特異的ELISA(BEIA−CMV IgG Quant;Bouty,cod.21465)、および同様に市販である、gB(AD2)hCMV IgG ELISA(CG3抗原バイオテストAG,cod.807035;図1A)を用いて試験した。
【0091】
すなわち、失活した(実験室株AD169由来の)hCMVタンパク質混合物で覆われた壊れやすい条片を、マイクロプレート中に置き、そして(800μlのBEIA系のサンプル希釈液に10μlの上清を加えて)1:81に希釈されたB細胞上清とインキュベートし、そして当該プレートを30分間、室温でインキュベートした。洗浄サイクルの後、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合した、希釈前のモノクローナル抗ヒトIgG抗体(100μl)を加え、そしてプレートをさらに30分間、室温でインキュベートした。第二の洗浄サイクルの後、希釈前の基質−TMB溶液(100μl)を加え、そしてプレートを15分間室温でインキュベートした。反応を、停止溶液(100μl/ウェル)を用いて停止し、そして吸光度を450/620nmにおける2つの色収差(bi−chromatism)を用いて測定した。
【0092】
不死化B細胞培養の製造
血清中にhCMV中和抗体が存在しているため、急性hCMV感染(CMV7)から回復した患者から、末梢血単核球(PBMC)を得た。CMV7患者由来のPBMCがその後にさらされるEBV不死化過程を、PCT/EP2005/056871の技術に従って行なった。短時間で、従来法のフィコール/ハイパックを用いた密度勾配遠心法によって、PBMCを末梢血から精製した。CD22陽性細胞を、製造業者によって記載された通りのバリオマックス(VarioMACS)技術(ミルテニー(Miltenyi)バイオテック社)を使用することによる、抗ヒトCD22被覆ビーズを用いて、新鮮なPBMC(>90%中純度)から単離した。精製された細胞を、CpG2006(コーリー(Coley)、1μg/ml)およびIL−2(ロシュ、200U/ml)の併用で刺激した。4日間の刺激の後、細胞を新鮮な細胞培地(RPMI−1640)で洗浄し、そしてB細胞を、製造業者の指示に従って、バリオマックス(VarioMACS)技術(ミルテニー(Miltenyi)バイオテック社)を使用することによる、抗ヒトIgG被覆ビーズを用いてIgG陽性細胞中で高度に濃縮した。
【0093】
選択され、および刺激された細胞を、5%CO2下、37℃で、24ウェルプレート中で、10%(v/v)の熱失活したFCS(ウシ胎児血清)、1mMピルビン酸ナトリウム、100μg/mlストレプトマイシンおよび100U/mlペニシリンを追加したRPMI−1640細胞培養培地中で懸濁し、そして保存した。B95.8細胞上清を使用して(1:1 v/v、16時間)、EBV不死化を行なった。
【0094】
当該過程の最後に、不死化細胞を新鮮な培養培地(10%ウシ胎児血清を付加したRPMI1640)で洗浄し、そして支持細胞層(5x105細胞/ウェルで蒔かれた、放射線を照射した同種PBMC)を用いて、CpG2006無しで(そしてCMV5ドナーから得られたPBMCから開始した過程において、PCT/EP2006/069780に記載されているCPG2006を用いること無く)、24ウェルプレート中で1.5x106細胞/mlの濃度で3週間培養した。
【0095】
hCMV中和抗体を分泌する不死化ヒトB細胞の継代培養の選択
EBVにさらされてから15日後、hCMV中和活性を、上記のAD169/HELFを基盤としたマイクロ中和アッセイを用いて、増殖したポリクローナル細胞培養中で確認した。その後細胞を、CpG2006およびIL−2の非存在下、10%FCSおよび非必須アミノ酸(NEAA、100Xの原液から1Xに希釈された;ユーロクローン(EuroClone))を添加した100μlIMDL中の、放射線を照射した(30Gy)同種PBMC(50,000/ウェル)上に、20細胞/ウェルで蒔いた。全体で4224個の継代培養を製造し、そして2週間後、50μlの同じ培地を加えた。さらに1〜2週間の培養の後、増殖および凝集した細胞を有する細胞培養上清を、HELF細胞およびhCMV株AD169型hCMV中和アッセイを使用して同時に試験した。
【0096】
hCMV中和活性を示す細胞培養上清を、gB hCMVエンベロープ糖タンパク質または上記の全体hCMVタンパク質領域への、ヒトIgGの結合を検出するELISAを使用して試験した。
【0097】
あるいは、gBまたはgH型の抗原をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として製造した。gB(Ag)−GST抗原の場合においては、hCMV株C194由来のgB免疫優性領域をGST(バイオデザイン(BioDesign)、Cat.No.R18102;GS−4Bセファロース親和性精製、1mg/ml)と融合した。gH(Ag)−GST抗原の場合においては、HCMV株VR1814のgH糖タンパク質断片を、PCRでクローン化し、GST遺伝子と融合し、E.コリ中で産生し、そしてGST親和性に基づいて、細菌細胞溶解物から精製した。組み換えgH(Ag)−GST抗原は、hCMV株VR1814由来のgHアミノ末端領域(アミノ酸16〜144;図1B)とGSTとの間におけるインフレーム融合に相当する。GST単体を陰性対照として使用した。
【0098】
これらのELISAを、96ウェル形式で、一般的なELISAの手順に軽微な変更を加えて適用することによって行なった。簡潔に言えば、抗原をPBS中2μg/mlで希釈し、そして50μlの(細菌を使用して発現された融合タンパク質を100ng含む)このタンパク質溶液を、EIAポリスチレンプレート(Nunc;Cat No.469949)を被覆するために使用した。ELISAプレートの被覆を4℃で一晩行い、そしてタンパク質溶液を除去した後、当該プレートを150μlの洗浄緩衝液(0.05%のTween20を含むPBS)を用いて4度洗浄した。非特異的結合を阻害する処置を、1%のミルクを含む100μlのPBSをそれぞれのウェルへ、37℃で一時間分注することによって行なった。150μlの洗浄緩衝液を用いた4度の洗浄サイクルの後、細胞培養由来の50μlの上清をそれぞれのウェル中で、37℃で2時間インキュベートし、そして50μl/ウェルの細胞培養培地を陰性対照として使用した。4度の洗浄サイクルの後、50μlの二次抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼと結合したヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)抗体;洗浄緩衝液中1:30,000希釈;Sigma,No.A0170)をそれぞれのウェル中に分注し、そしてプレートを室温で1時間インキュベートした。さらに4度の洗浄サイクルの後、酵素反応を、50μlの基質−TMB(3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン;シグマ,Cat.No.T0440)をそれぞれのウェルに加えることによって、室温でさらに30分間行なった。発色反応を、100μlの停止溶液(1N 硫酸)をそれぞれのウェル中に分注することによって停止し、そして吸光度を450nmで読み取った。
【0099】
結果
血清中和抗体を誘導するものとして最もよく性質決定された(Qadri I et al,1992;Kropff B et al.,1993)、およびCG3抗原(図1A)中でクローン化された、hCMV抗原の一つである糖タンパク質BのAD2領域への結合に基づいて、ELISAに対する強い反応性(1:64希釈で陽性;サンプルは、IgG 抗gBが1/4またはそれ以上の希釈で存在する場合に陽性であると考えられる)と共に、ヒトPBMCを、血清中で著しいhCMV中和力価(1:105希釈で50%中和)を示すhCMV患者(CMV7)から得た。さらに、CMV7の血清は、hCMVビリオンタンパク質全体を使用した別のELISAにおいて陽性であって、74AU/mlの活性を示した(サンプルは、結果が少なくとも10AU/mlであるとき、抗hCMV IgGがある場合に陽性であると考えられる)。
【0100】
CMV7患者由来のB細胞を、PCT/EP2005/056871およびPCT/EP2006/069780に開示されているEBV型不死化方法を用いて、IgGを分泌するB細胞が高度に濃縮された不死化ポリクローナル細胞培養を製造するために使用した。別の提供者(CMV5)由来の抗hCMV抗体の選択について開示している後者の文献と比較して、当該継代培養を最初のバルク、すなわちCpG2006および上清の非存在下にある不死化細胞のポリクローナル群から調製し、そして当該上清を、マイクロ中和アッセイによってhCMV感染力を中和する抗体の存在についてまず選択し、次いで選択されたhCMV抗原に結合する抗体についてのみ選択した。
【0101】
hCMVマイクロ中和アッセイを、培養3週目において、活発に増殖している細胞群であると判明した継代培養にのみ適用した。324ウェル由来の上清を、はじめにhCMV中和アッセイでスクリーニングし、これらのうちの20上清が、少なくとも40%までhCMV AD169株の感染力を減らすことが分かった。これらのウェル中のhCMV結合活性について性質決定したとき、2つのみが、(CG3抗原またはgB(Ag)−GST融合タンパク質としてのいずれかである)gBに対して陽性であり、(gH(Ag)−GST融合タンパク質としての;図1B)gHに対して陰性であり、そして18ウェルは、いずれに対しても陰性であった(図2)。
【0102】
それぞれのウェル中に最初に蒔かれる細胞の数が少ない(20細胞/ウェル)ために、特に、増殖し、そしてhCMV中和IgGを分泌すると期待される不死化ポリクローナル細胞群中の細胞の発生頻度が低い場合には、hCMV中和活性を示すそれぞれの継代培養は、モノクローナル抗体(すなわち、単一の、特定の不死化細胞によって、クローン的に得られる細胞によって分泌される抗体)を産生するであろう。これらの仮定を確認するために、さらなる実験を計画した。
【0103】
実施例2:26A1抗体の性質決定
材料および方法
26A1継代培養の増殖および性質決定
26A1の最初の継代培養由来の細胞を、(10%FCSおよびNEAAを添加した)放射線を照射したIMDM培地中の同種PBMC上に増殖させ、そしてhCMV中和活性を、実施例1に記載の通りのhCMVマイクロ中和アッセイを使用して、この増殖段階の間に少なくとも2回確認した(表1参照)。
【0104】
26A1継代培養によって分泌される抗体量を、製造業者の指示に従って、市販の定量的ヒトIgGELISAキット(イムノテック(Immunotek);cod.0801182;ゼプトメトリクス(Zeptometrix)社)を使用して、24、48、および72時間で決定した。26A1抗体のサブクラスを、市販のアッセイ(PeliClass ヒトIgGサブクラスELISA コンビ−キット;cod.#RDI−M1551cib,フィッツジェラルド インダストリーズ(Fitzgerald Industries Intl.)のRDI部門)を使用して決定した。
【0105】
細胞培養は、48ウェルプレートの一のウェル中に、96ウェルプレートの一のウェル中に含まれる細胞(約1x105)を、5%FCSを加えたIMDM中にある、放射線を照射した同種のPBMC上に蒔くことによって、徐々に増殖した。5〜7日後に、支持細胞層の非存在下、5%FCSを加えたIMDMを含む24ウェルプレートの一のウェルに細胞が増殖した。その後、細胞(5x105/ml)を、支持細胞層の非存在下、2.5%FCSを加えた50%IMDMおよび50%ハイブリドーマ−SFM(ジブコ(Gibco)、cod.12045−084)を入れた6ウェルプレートに蒔いた。細胞をこれらの条件で少なくとも1週間培養した。対数増殖期細胞を、その後洗浄し、T75フラスコ中で、5x105〜106/mlの濃度のハイブリドーマ−SFM中で培養した。細胞培養上清を回収し、IgGを定量し、そしてプロテインAカラムで精製し、PBS緩衝液で透析し、そしてろ過した(0.2μM)。
【0106】
26A1継代培養によって分泌された抗体の性質決定
BEIA−CMV、gB型、およびgH型ELISAアッセイを、実施例1で記載した(図1および2)。HSVアッセイを、文献に従って行なった(Laquerre S et al,1998)。
【0107】
hCMVプラーク減少アッセイを、hCMV AD169株を使用して行なった。すなわち、ウィルスを1000PFU/反応、に希釈した。等量のウィルス(0.1ml)およびそれぞれの抗体または細胞培養上清を混合し、そして37℃で1時間インキュベートした。当該混合物を、(24ウェルプレート中の)HELF細胞単層に添加し、そして37℃で1時間吸着させた。その後、抗体−ウィルス混合物を除去し、そして1%メチルセルロース重層−MEM−2%FCSを感染細胞に加えた。感染後10または12日目で感染力の基準として、プラーク数を数えた。
【0108】
26A1細胞培養上清を、非感染のHELFまたはHUVEC細胞上で免疫蛍光法を用いて試験した。すなわち、細胞(7x104/ml)を、24ウェルプレート中に、10%FCSを添加したMEM中で、ゼラチンで被覆したカバーグラス上に蒔き、それから半集密に増殖させた。細胞をその後、暖めたPBSを用いて2度洗浄し、あらかじめ冷却した(−20℃)50%アセトン/50%メタノールの混合液で、室温(RT)で1分間固定化し、それからPBSで洗浄した。固定化された細胞を、0.2%トリトン X−100のPBS溶液を用いて、20分間氷上で透過処理し、PBSで洗浄し、そして停止溶液(2%FCSを添加したPBS)を用いて、RTで15分間インキュベートした。あるいは、固定化された細胞を、抗体が細胞表面の構成要素を認識する能力を決定するために、透過処理しなかった。この場合において、固定化された細胞をPBSで洗浄し、停止溶液(2%FCSを添加したPBS)を用いてRTで15分間インキュベートし、そして26A1細胞培養上清(80μl)とともに37℃で2時間インキュベートした。細胞をその後、暖めたPBSを用いて洗浄し(3度)、そして80μlのFITC結合性ウサギ抗ヒトIgG F(ab’)2(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson ImmunoResearch))とともにインキュベートし、緑色のヒトIgG着色を検知した。二次抗体を0.05%のTween80を添加したPBSで1:50に希釈し、そして細胞へ暗所下、37℃で1時間添加した。その後細胞を、暖められたPBSで洗浄し(3度)、そしてヨウ化プロピジウム(0.25μg/ml PBS溶液;シグマ)を用いて対比染色した。カバーグラスを、マウンティング培地(ベクター・ラボラトリーズ)を使用したスライドグラス上にのせた。画像をオリンパス Fluoview−IX70倒立型共焦点レーザー顕微鏡を用いて記録した。
【0109】
26A1 IgG DNA/タンパク質配列および組み換え発現の特徴付け
初期26A1細胞培養の発現から得られた細胞培養の一定分量を、フュージョン・アンチボディーズ(Fusion Antibodies)社によって確立された技術に従って、26A1抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VL)可変領域の配列決定のために使用した。(少なくとも50,000個の細胞を含む)凍結細胞のペレットを、全てのRNAを抽出するために使用した。対応するcDNAを、オリゴ(dT)プライマーを用いた逆転写によって製造した。IgG特異的プライマー混合物を使用してVH領域を、およびIgk/λプライマーの混合物を使用してVL領域を増幅するために、PCR反応を行なった。2つの増幅反応のPCR産物を、シーケンシング・ベクター(pCR2.1;インビトロジェン(Invitrogen))中のEco RI制限部位を使用してクローン化し、そしてTOP10 E.コリ細胞を形質転換するために使用した。
【0110】
二つの形質転換体から得られた、少なくとも10個の選択されたコロニーを取り出し、そして配列決定により分析した。得られたDNA配列を整列化し、そしてVH 26A1のコンセンサスDNAおよびタンパク質配列(それぞれ配列番号4、および配列番号5)ならびにVL 26A1のコンセンサスDNAおよびタンパク質配列(それぞれ配列番号9および10)を生じるタンパク質配列へと翻訳した。VH 26A1およびVL 26A1タンパク質配列を、公有のデータベースに存在する配列と(GenomeQuest、GeneSeq、およびEBIデータベースを使用して)比較し、そして配列化した。VH 26A1(配列番号5,7および8)およびVL 26A1(配列番号11、12、および13)のタンパク質配列の性質を決定するCDRを、IMGTデータベース(Giudicelli V et al,2004)によって予想した。
【0111】
既に対応する(ヒトIgG1重鎖およびヒトIgラムダ鎖に対する)定常領域を含んでいる同じ発現ベクター中、および両方の抗体鎖の発現をすることができる二重プロモーターベクター中にある、コンセンサス26A1重鎖および軽鎖可変領域配列をクローン化することにより、組み換えヒト26A1モノクローナル抗体を真核細胞中で発現した。ベクター中の組み換えヒト26A1モノクローナル抗体の完全な配列を、DNA配列決定法により確認し、そして無血清懸濁培養中で増殖するように適応し、125mlスピナーフラスコ中に1x106細胞/mlで蒔かれたCHO DG44細胞(Derouazi M et al,2006)を一時的に形質移入するために使用した。形質移入を、300μgの発現ベクターと900μgの直鎖状25kDaポリ(エチレンイミン)との混合物を用いて行なった。培地を回収する前に、細胞をスピナーフラスコ中で6日間、5%CO2下、37℃でインキュベートした。組み換え抗体を、製造業者による標準的なプログラムに従って、アクタ・プライム(Akta Prime)クロマトグラフィーユニットに充填したプロテインGカラムを使用して精製した。
【0112】
結果
増殖し、およびIgGを分泌する細胞を含む継代培養の中で、それらの幾つかの細胞培養上清は、hCMV感染を中和する抗体を含んでいたが、ELISAによって試験された特定の組み換え抗原gBおよびgHに対して、著しい結合を示さなかった(図1および2)。特に、IgG1を分泌する26A1継代培養は、より強くそしてより再現可能なhCMV中和活性を示し、そしてそれは、より詳細な分子的および生物学的性質決定のために選択された。
【0113】
26A1継代培養由来の上清に含まれるIgGのhCMVへの結合を、hCMVタンパク質の混合物を含むELISA(BEIA−CMV)を使用して確認した。同時に、この上清は、2つのヒト宿主細胞系における異なるhCMV株に対して、(表1に示す通り)著しいhCMV中和活性を示した。この活性は、上清がHSV特異的中和アッセイにおいて使用された時には観察されなかった。
【0114】
さらに、26A1継代培養を増殖させ、そしてhCMV中和ヒトIgG1の発現の観点から、そのモノクローナル性を確認するために、10細胞/ウェルでさらにサブクローニングした。実際、細胞増殖を示すウェルの中で、初代のAD169型アッセイにおいて、50〜98%の範囲で、全てが中和活性を示し、そして初代の26A1継代培養を用いて得られた結果を確認した。
【0115】
初代の26A1継代培養における細胞を、IgG産生のスケールアップのために使用し、そしてそれは徐々に、IgGが精製され、そしてhCMVアッセイにおいて試験される、より大きな培養を生じた。しだいに26A1培養を増殖させることにより、そして細胞培養における増殖に対する幾つかの要件(例えば支持細胞層、牛胎児血清)を排除することによって、より大きい培養を生じた。この方法を使用することにより、初代の26A1継代培養から生じたより大きな細胞培養が、約16μg/ml/106細胞の濃度でIgG1を分泌することが実証された。より大きなこれらの培養は、支持細胞層の非存在下においても4日間の倍増時間を示し、そしてhCMV中和活性を2ヶ月以上、培養中で維持した。
【0116】
hCMV中和アッセイを、大きな細胞培養からアフィニティクロマトグラフィーによって精製された、ヒトIgGの形態である26A1抗体を用いて繰り返した。hCMV感染力の50%阻害に必要な濃度(阻害濃度50またはIC50)を評価するために、26A1 IgGを、用量−反応実験で試験した。当該結果は、プロテインA精製された天然型26A1 IgGの強い中和活性は、細胞種またはウィルス種のいずれにも特異的ではなく、そして、約1μg/mlのIC50値およびいずれのアッセイにおいても100%に達する中和効果を提供するものとして定量的に評価され得ることを示した(図3)。
【0117】
HUVEC細胞における臨床分離株に対する、プロテインA精製した天然型26A1 IgGの中和活性と、市販の、hCMVに対する高力価IgG(IVIg)調製物(サイトテクト、バイオテスト)のそれとを比較した時、26A1のIC50は、この市販調製物について必要とされたものよりも25倍低く、そしてそれは、26A1抗体の強い中和活性を実証している。
【0118】
26A1継代培養由来の上清中に存在する中和活性が、細胞表面分子との結合に起因することを除外するために、未感染のHELFまたはHUVEC細胞を用いて、当該上清を免疫蛍光法にて試験した。このアッセイは、26A1培養によって産生されるIgG1が未感染のヒト細胞に結合しないことを示した。同じ細胞上清を関連のあるhCMV抗原に対するELISAで試験した時、当該抗体はそのようなタンパク質とは結合せず(図4)、そしてそのことは、26A1抗体が中和抗体の産生を誘導する、hCMVエンベロープ上にある、別の未だ決定されていない抗原を認識している可能性があることを示している。
【0119】
26A1由来細胞培養中で分泌されたhCMV中和抗体のモノクローナル性は、この細胞培養から得られたIgG特異的PCR産物の配列決定によって、さらに確認された。細胞ペレットを、26A1継代培養由来の細胞を使用したRNA抽出および逆転写のために調製した。得られたcDNAをその後、ヒトIgG重鎖および軽鎖のそれぞれの可変領域のための特定のプライマーを使用して、VHおよびVL配列を増幅するために使用した。PCR産物をその後、細菌性細胞を形質転換するために使用されるプラスミド中にクローン化した。細菌性形質転換体を無作為に取り出し、そしてクローン化されたPCR産物の配列決定のために使用した。全てのクローンは、おそらくPCRによって誘導されたエラーに起因する微小の違いを別として、ヒト26A1モノクローナル抗体の重鎖(図5)および軽鎖(図6)可変領域のコンセンサス配列およびCDRを決定させる、同じDNA配列を示した。
【0120】
26A1抗体のVHおよびVL領域をコードする配列は、抗体断片(FabまたはScFv)としての、または特定のアイソタイプおよびサブクラス(例えばIgA,IgG1またはIgG4)を有する完全なヒト組み換え抗体内の、26A1可変領域の好適な発現のための、発現ベクター中で再クローン化され得る。これらの組み換え抗体を、好適なアッセイによって、特定のhCMV中和活性を確認するために試験した。
【0121】
重鎖(図7)および軽鎖(図8)をコードするDNAを、一時的発現実験においてCHO細胞を形質移入するために使用されている好適な発現ベクター中でクローン化することによって、組み換えヒト26A1モノクローナル抗体を、組み換えヒトIgG1として真核細胞中で産生した。組み換えヒト26A1モノクローナル抗体を、細胞培養上清によってアフィニティ精製し、そしてhCMV中和のための異なる試験において試験した。マイクロ中和試験およびプラーク減少アッセイのいずれも、AD169/HELF細胞系を用いて、試験を行なった。組み換えヒト26A1モノクローナル抗体は、約1μg/mlの計算されたIC50を有するプロテインA精製された天然型26A1抗体と同程度に、効率的にhCMV感染力を中和した(図9)。hCMV株と標的細胞との異なる組み合わせに基づいた中和およびプラーク減少アッセイにおいて、同様に試験が行なわれ、そして全てについて、天然型および組み換えヒト26A1モノクローナル抗体の両方において同程度の有効性が確認された(図10)。
【0122】
したがって、天然型または組み換えヒトモノクローナル抗体のいずれかの形態にある、26A1抗体は、hCMV感染症およびhCMV関連疾患の臨床管理のために使用され得る抗体である
【0123】
【表1】
【0124】
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Yamashita M et al.,(2006).Clin Exp Rheumatol.24:649〜55.
Yoda Y et al.,(2006).Mod Rheumatol.16:137〜42.
Yoon S et al.,(2004).Biotechnol Prog.20:1683〜8.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号8と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むタンパク質。
【請求項2】
配列番号6および/または配列番号7をさらに含む、請求項1記載のタンパク質。
【請求項3】
配列番号5と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項2記載のタンパク質。
【請求項4】
配列番号11、配列番号12および配列番号13からなる群から選択される、一またはそれ以上の配列をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
配列番号10と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項4記載のタンパク質。
【請求項6】
抗体、抗体断片、生理活性ペプチドまたは融合タンパク質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記抗体がヒト組み換え抗体である、請求項6記載のタンパク質。
【請求項8】
前記抗体が、配列番号15と少なくとも90%の同一性があるタンパク質配列を有する重鎖、および配列番号17と少なくとも90%の同一性があるタンパク質配列を有する軽鎖を含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項9】
前記抗体断片が、可変性重鎖/軽鎖ヘテロ二量体または一本鎖可変断片である、請求項6記載のタンパク質。
【請求項10】
ヒトサイトメガロウィルス(hCMV)と結合し、および中和する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項11】
26A1継代培養によって分泌される、ヒトIgG1抗体。
【請求項12】
hCMVの結合および中和において、請求項11記載のIgG1抗体と競合するタンパク質。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質である、請求項12記載のタンパク質。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項15】
配列番号4と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項14記載の核酸。
【請求項16】
配列番号9と少なくとも90%の同一性を有する配列をさらに含む、請求項15記載の核酸。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸を含む、原核または真核宿主細胞。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のタンパク質を分泌する、請求項18記載の宿主細胞。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のタンパク質の産生のための、請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸、または請求項18もしくは19の宿主細胞の使用。
【請求項21】
hCMV感染症またはhCMV関連疾患の検出、治療、阻害、予防および/または寛解のための組成物の製造における、請求項1〜12のいずれか一項に記載のタンパク質の使用。
【請求項22】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のタンパク質、または請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸を含むhCMV感染症またはhCMV関連疾患のための、治療用、予防用または診断用組成物。
【請求項23】
眼球投与用または局所投与用である、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
異なるhCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン調製物および/または抗ウィルス化合物をさらに含む、請求項22または23記載の組成物。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のタンパク質、または請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸の投与を含む、hCMV感染症またはhCMV関連疾患の治療、予防または診断方法。
【請求項26】
異なるhCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン調製物および/または抗ウィルス化合物の投与をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項1】
配列番号8と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むタンパク質。
【請求項2】
配列番号6および/または配列番号7をさらに含む、請求項1記載のタンパク質。
【請求項3】
配列番号5と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項2記載のタンパク質。
【請求項4】
配列番号11、配列番号12および配列番号13からなる群から選択される、一またはそれ以上の配列をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
配列番号10と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項4記載のタンパク質。
【請求項6】
抗体、抗体断片、生理活性ペプチドまたは融合タンパク質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記抗体がヒト組み換え抗体である、請求項6記載のタンパク質。
【請求項8】
前記抗体が、配列番号15と少なくとも90%の同一性があるタンパク質配列を有する重鎖、および配列番号17と少なくとも90%の同一性があるタンパク質配列を有する軽鎖を含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項9】
前記抗体断片が、可変性重鎖/軽鎖ヘテロ二量体または一本鎖可変断片である、請求項6記載のタンパク質。
【請求項10】
ヒトサイトメガロウィルス(hCMV)と結合し、および中和する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項11】
26A1継代培養によって分泌される、ヒトIgG1抗体。
【請求項12】
hCMVの結合および中和において、請求項11記載のIgG1抗体と競合するタンパク質。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質である、請求項12記載のタンパク質。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項15】
配列番号4と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項14記載の核酸。
【請求項16】
配列番号9と少なくとも90%の同一性を有する配列をさらに含む、請求項15記載の核酸。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸を含む、原核または真核宿主細胞。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のタンパク質を分泌する、請求項18記載の宿主細胞。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のタンパク質の産生のための、請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸、または請求項18もしくは19の宿主細胞の使用。
【請求項21】
hCMV感染症またはhCMV関連疾患の検出、治療、阻害、予防および/または寛解のための組成物の製造における、請求項1〜12のいずれか一項に記載のタンパク質の使用。
【請求項22】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のタンパク質、または請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸を含むhCMV感染症またはhCMV関連疾患のための、治療用、予防用または診断用組成物。
【請求項23】
眼球投与用または局所投与用である、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
異なるhCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン調製物および/または抗ウィルス化合物をさらに含む、請求項22または23記載の組成物。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のタンパク質、または請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸の投与を含む、hCMV感染症またはhCMV関連疾患の治療、予防または診断方法。
【請求項26】
異なるhCMV中和抗体、静注用免疫グロブリン調製物および/または抗ウィルス化合物の投与をさらに含む、請求項25記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A)】
【図5B)】
【図6A)】
【図6B)】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A)】
【図5B)】
【図6A)】
【図6B)】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−512736(P2010−512736A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540793(P2009−540793)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064094
【国際公開番号】WO2008/071806
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508178478)リボバックス バイオテクノロジーズ ソシエテ アノニム (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064094
【国際公開番号】WO2008/071806
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508178478)リボバックス バイオテクノロジーズ ソシエテ アノニム (6)
【Fターム(参考)】
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