説明

ヒトデの処理方法並びに、それにより得られる材料を用いた動物忌避用のシート及び消臭剤

【課題】なるべく悪臭が残らないようにヒトデを処理する。
【解決手段】(2)処理物混合工程においてヒトデと水分調整材(処理床)を混合する。(4)処理床攪拌工程において混合物の温度及び水分量を適切に調整しつつ、混合物を攪拌し、微生物により分解させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトデの処理方法並びに、それにより得られる材料を用いた動物忌避用のシート及び消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヒトデから液状防虫剤を抽出する方法として、ペースト状に加工したヒトデに乳酸菌酵母主体の活性液を加え、ヒトデを分解するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−196899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒトデの処理物には悪臭が発生することが多い。特許文献1の段落0027にも、ヒトデ本来の臭みが残るとある。しかしながら、本発明者によると、このような臭みは、ヒトデを適切に処理することにより十分に除去することができるものである。
【0005】
本発明の目的は、なるべく悪臭が残らないようにヒトデを処理する方法並びに、それにより得られる材料を用いた動物忌避用のシート及び消臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水分を吸収可能な水分調整材をヒトデと混合する混合工程と、前記混合工程により得られた混合物の水分量及び温度を調整しつつ前記混合物を攪拌する攪拌工程とを備えており、前記混合物を微生物により分解させるというものである。
【発明の効果】
【0007】
ヒトデ処理物によくある悪臭は、微生物による有機物の分解が不十分であることによる。ヒトデと水分調整材との混合物を水分量及び温度を適切に調整しつつ攪拌することにより、微生物の働きを活発化でき、混合物中の有機物を十分に分解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒトデ処理方法の工程を示すフローチャートである。
【図2】図1の攪拌工程において処理床を収容するピットの斜視図である。
【図3】図3(a)は、本実施形態の処理方法により得られた抽出液を使用したカラス忌避シートの一実施例の正面図である。図3(b)は、図3(a)のB−B線拡大断面図である。
【図4】図3のカラス忌避シートを設置する方法に係る一実施例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
本実施形態に係るヒトデ処理方法は、図1に示すように、複数の工程により実施される。まず、(1)処理床設置工程において、処理対象物を分解する放線菌を主体とした土壌菌群の菌床となる処理床を設置する。処理床の母材は、多孔質の有機物素材等からなる主材と食物残渣等からなる副資材とからなる。主材の具体例としては、おがくず、木チップなどの木質系、乾燥牧草などが用いられる。おがくずの重量は処理対象物の重量と同程度、木チップの重量は処理対象物の重量の1/3〜半分程度、乾燥牧草の重量は処理対象物の重量の1/7〜1/5程度が好ましい。副資材には、米ぬか、カニから、大豆油かす、魚かす、海草ミネラル等と共に、有用土壌菌群が含まれている。有用土壌菌群は、好気性の複数種類の微生物をそれぞれタンク培養により大量に生産し、所定の配合率で処理床に投入する。なお、有用土壌菌群として嫌気性微生物を用い、下記の工程を嫌気性微生物に適した方法に置き換えて実施してもよい。
【0011】
次に、(2)処理物投入工程において、処理床の温度、水分率等の条件を調整しつつ、処理対象物を処理床に投入する。具体的には、処理床内の発酵温度を65〜75℃とし、処理物が投入された際の処理床全体の水分率を50〜60%とする。処理対象物は、本実施形態においてはヒトデであるが、その他、牛糞、残渣などを含むものであってよい。通常、処理対象物は、水分率85%以下で投入する。このとき、上記の乾燥牧草、木質系材料は、処理対象物を投入した際に水分調整材として機能し、処理床全体が上記の適切な水分率となるように配合されている。処理対象物がヒトデの場合、投入当初はヒトデの体内に水分が閉じ込められた状態であるが、投入後、分解が始まると、数日でヒトデ内の水分が外部に排出される。したがって、ヒトデを処理対象物とする場合の水分調整は、ヒトデの分解開始から数日後以降になすとよい。なお、処理床の水分率の測定には市販の水分計等を用いる。投入される処理対象物は固形であっても、粉状に粉砕されていてもよい。また、ヒトデは、乾燥させたものでも水分を豊富に含んだ状態でもよいし、各個体全体が完全な状態のまま用いられてもよい。
【0012】
処理対象物を投入した直後、(3)処理床混合工程において、タイヤショベルなどの重機により、処理床を攪拌して混合する。これにより、処理床全体に酸素が十分にいきわたり、その後の微生物による分解が促進される。図2は、このときに処理床が放置されるピット10を示している。ピット10は、仕切り11によって複数の区画に区分けされており、各区画には数トン〜10トン程度の処理床20が収容されている。この状態で処理床20を放置すると、処理床20内部の微生物の活動により、処理床20中の有機物が分解されると共に、処理床20内の温度が上昇する。そして、処理床20内の温度が65℃以上になるまで放置する。
【0013】
処理床20内の温度が65℃以上になった後、(4)処理床攪拌工程において、所定の期間中、定期的に処理床を攪拌する。このとき、処理床を下記の管理条件1を満たすように管理する。[管理条件1]温度:65〜75℃、水分率:50〜60%、pH:6.8〜7.4。温度範囲は、上限を超えるたびに(例えば、毎日)処理床を攪拌することにより調整する。水分率は、定期的に水分計で測定し、下限を下回った場合、処理床に水を噴霧することにより調整する。
【0014】
これらを所定の期間(例えば、2〜4週間の期間)繰り返すと、処理床20内の温度が低下してくる。そして、処理床20内の温度が管理条件1の下限である50℃を下回ると、(5)処理床熟成工程に移行する。処理床熟成工程では、噴霧による水の投入を停止し、定期的に攪拌のみを実施する。これにより、処理床を整置して有用土壌菌による気化分解活動を活発化させる。処理床熟成工程では、処理床を下記の管理条件2を満たすように管理する。[管理条件2]温度:30〜35℃、水分率:20〜30%、pH:6.8〜7.4。処理床をこれらの条件に調整する方法は上記と同様である。次に、(6)液体抽出工程において(1)〜(5)の工程を経た処理物(以下、「最終処理物」とする)から抽出液を以下の通りに取得する。タンクに水を入れ、さらに(1)〜(5)の工程を経た処理物を投入して攪拌する。所定の期間放置した後、その液体をろ紙によりろ過することにより、抽出液を得る。なお、水ではなく、エタノールなどの別の溶媒を用いてもよい。
【0015】
以上の工程によると、処理床を適切に攪拌することによって、処理床内全体に酸素がいきわたる。このように、本実施形態では、好気性微生物のための好適な活動条件が整えられる。本実施形態ではこのように、処理床内に酸素がいきわたるため、微生物により有機物が分解する際に有機物から切り離される水素は、処理床内の酸素と結合して水(HO)となりやすい。これにより、処理床内から大量の水蒸気が放出される。一方で、嫌気性微生物を利用して有機物を分解した場合、有機物から切り離された水素は窒素や硫黄と結びつき、アンモニア(NH)、硫化水素(HS)などの悪臭のする有害な物質が発生しやすい。これにより、周辺環境の劣化をまねくおそれがある。これに対して本実施形態では、上記の通り、処理床を攪拌して好気性微生物の活動条件を整えることにより、有機物の分解を促進すると共に、アンモニアや硫化水素が発生することが抑制されている。
【0016】
また、本実施形態では、(2)〜(5)の工程において、処理床の環境を温度、水分率及びpHに関し、微生物の活動環境として好適な条件に管理しているため、微生物により有機物が十分に分解される。一方で、微生物の活動環境の管理が不適切な場合、有機物が十分に分解されない。このため、処理物から悪臭や汚水が発生しやすい。これに対して本実施形態では、有機物が十分に分解され、処理物から悪臭や汚水が発生するのが抑制される。
【0017】
なお、本実施形態の処理方法に係る一実施例では、チャンバー式北川ガス吸引法により、二酸化窒素等の窒素酸化物など、有機化合物の分解の際に発生する無機系ガスが処理床から放出されていることが検出された。これにより、本方法においては、処理床内で好気性微生物による気化分解が促進されていることが確認される。また、最終処理物の一部を成分分析した結果、肥料要素の17大元素が確認され、有機化合物が無機物に分解されたことが確認された。
【0018】
本実施形態の(2)〜(5)の工程により、最終処理物が到達すべき腐熟度は、いわゆる完熟にほぼ相当する程度である。堆肥の腐熟度において、完熟の状態を示す判定基準の一例として、微生物による酸素消費量がある。腐熟度がまだそれほど高くない状態では、微生物により分解されるべき(易分解性の)有機物が残存しているため、微生物による有機物の分解に伴う酸素の消費が大きい。しかし、分解が進むと残存する有機物が減少するため酸素の消費量が徐々に低下していく。そして、分解されるべき有機物が払底すると、微生物による酸素消費も最低(一定)になる。微生物による酸素消費量に基づいて腐熟度を判定する具体的な方法として、コンポテスターを用いる方法がある。
【0019】
また、腐熟度が高くなると、処理物中の硝酸態窒素が増加してくることを利用し、ジフェニルアミン溶液により硝酸態窒素を検出する方法を採用してもよい。具体的には、最終処理物に蒸留水を加えて攪拌したものをろ過する。そして、ろ液の一部を容器にとり、ジフェニルアミン溶液を数ミリリットル加える。ジフェニルアミン溶液は、例えば、濃硫酸25ミリリットルにジフェニルアミン30ミリグラムを溶解させたものである。その結果、容器内の液体に発現する青色を観察し、濃青色を呈した場合は、硝酸態窒素が多量に存在し、ほぼ完熟に到達しているとみなすことができる。さらに、腐熟度が高くなると、カドミウムなどの重金属、ヒ素が検出されにくくなること、大腸菌などの細菌の数が減ることが知られている(後述の実施例参照)。
【0020】
以下、上記処理方法により得られた最終処理物や抽出液の用途に係る各実施例について説明する。
【0021】
(消臭剤としての実施例1)
1リットルの密閉が可能なガラス容器に、最終処理物10グラム程度を収納すると共に、アンモニアと空気の混合物をアンモニアが200〜250ppmの濃度となるように封入する。その後、2時間経過してから容器内のアンモニアの濃度を検知管にて測定したところ、アンモニア濃度が初期値の3%以下に低下した。
【0022】
(消臭剤としての実施例2)
下記の条件にて、密閉容器中に粉末状の最終処理物を封入すると共に、密閉容器中にアンモニアと空気の混合物をアンモニアが5ppmの濃度となるように封入する。その後、時間の経過に伴うアンモニア濃度の変化を測定した。また、対照試験として、密閉容器中にアンモニアと空気の混合物をアンモニアが5ppmの濃度となるように封入し、気体以外は何も入れない。その後、時間の経過に伴うアンモニア濃度の変化を測定した。これら2つの試験結果が表1(単位はppm)である。
密閉容器:アズワン社製真空盤(13リットル)、ヘッドスペース:関東化学社製試薬を使用、測定:ガステック社製検知管
【0023】
【表1】

【0024】
(消臭剤としての実施例3)
下記の条件にて、密閉容器中に粉末状の最終処理物を封入すると共に、密閉容器中に硫化水素と空気の混合物を硫化水素が10ppmの濃度となるように封入する。その後、時間の経過に伴う硫化水素濃度の変化を測定した。また、対照試験として、密閉容器中に硫化水素と空気の混合物を硫化水素が13ppmの濃度となるように封入し、気体以外は何も入れない。その後、時間の経過に伴う硫化水素濃度の変化を測定した。これら2つの試験結果が表2(単位はppm)である。
密閉容器:アズワン社製真空盤(13リットル)、ヘッドスペース:下水汚泥を使用、測定:ガステック社製検知管
【0025】
【表2】

【0026】
(消臭剤としての実施例4)
本実施形態における工程と若干異なる工程により処理された最終処理物を用いて、上記の「消臭剤としての実施例2」と同様の消臭試験を行った。本実施例の最終処理物は、上記の実施形態と異なり、水分調整や攪拌を十分に行わない条件でヒトデを分解することにより得た。その結果、腐熟度が完熟の程度に達さず、においが残った。そこで、におい抑制のために、木酢液等の不純物が最終処理物に混合された。試験結果は表3のとおりである。表1と比べて、アンモニア濃度が十分に低下しなかった。
【0027】
【表3】

【0028】
(消臭剤としての実施例5)
「消臭剤としての実施例4」と同様の最終処理物を用いて、上記の「消臭剤としての実施例3」と同様の試験を行った。試験結果は表4のとおりである。表2と比べて、硫化水素濃度が十分に低下しなかった。
【0029】
【表4】

【0030】
(忌避シートとしての実施例)
図3に示すようなカラス忌避シート30を作成した。カラス忌避シート30は、それぞれ合成樹脂素材からなる1枚の塗布シート31及び2枚の透明シート32を有している。塗布シート31は、全体に黄色や青色などの色のついた正方形の透明又は半透明のシート基材を有しており、このシート基材には表及び裏のそれぞれの面に抽出液が塗布されている。透明シート32は、塗布シート31より一回り大きいほぼ正方形のシートであり、塗布シート31の表及び裏のそれぞれの面に圧着加工により貼り合わされている。透明シート32には、紫外線をカットするUVカットフィルムが用いられている。これにより、塗布シート31の劣化が抑制されている。塗布シート31及び透明シート32の積層体全体は、4つのハトメリング33(補強具)により補強されている。ハトメリング33は、塗布シート31の四隅付近に配置されている。あるいは、ハトメリング33の代わりに、図3(c)のシリコン補強具38が用いられてもよい。シリコン補強具38は、三角形の2枚のシリコンシートからなる。シリコンシート同士は、透明シート32の角部を互いの間に挟むように透明シート32に圧着されている。
【0031】
透明シート32の四隅の一つは、切り口32aに示すとおりに切り取られている。切り口32aは、正方形のゴムシート34によって覆われている。ゴムシート34は間に切り口32aを挟みこむように対角線を折り目にして2つ折りにされ、4つのハトメリング33のうちの1つによって透明シート32に固定されている。このハトメリング33にはリング35が通されている。リング35は、ベアリングを用いたサルカン36を介してリング37と接続されている。サルカン36は、上半分が下半分に対してQ方向に回転する回転部材である。カラス忌避シート30は、以上の構成により、屋外にて風雨に晒されても破損しにくい。これは、(イ)塗布シート31が透明シート32により保護されていること;(ロ)塗布シート31の四隅がハトメリング33等により補強されていること;(ハ)風に煽られてもサルカン36によりリング35以下の部分が回転すること;及び(ニ)リング35がハトメリング33とゴムシート34を介して接続されているため、最も破損しやすい接続部分が特に補強されていることによる。
【0032】
カラス忌避シート30はリング37を介してぶら下げて用いる。図4は、取り付け具40を用いてカラス忌避シート30を家屋の軒下から水平に離れた位置にぶら下げる場合を示している。取り付け具40は、固定棒41と保護ホース42とを有している。固定棒41は、金属製の部材であり、軒下に固定される。固定棒41には、軒下から水平に延びる部分と、当該部分の先端から折れ曲がり、鉛直下方へと向かう部分とが含まれている。固定棒41の下端には、鉤部41aが設けられ、リング37を吊り下げることができる。保護ホース42は、ゴムなどの弾性材料から構成され、固定棒41の鉛直方向に沿った部分を覆うように取り付けられている。カラス忌避シート30が風に煽られて取り付け具40にぶつかっても、保護ホース42の弾性によりシートが破損しにくい。
【0033】
なお、カラス忌避シート30では、正方形の角にリング35等が取り付けられているが、辺の中央など、別の位置に取り付けられてもよい。また、シートの形状が正方形でなく長方形であってもよい。さらに、ハトメリング33による補強でなく、2枚の透明シート32の四隅を溶融してこれらを貫通する溶着孔を形成することにより補強してもよい。
【0034】
カラス忌避シート30の設置により、数ヶ月間、カラスがその周辺に近寄らなくなる。この効果は、カラス忌避シート30が破損したりして抽出液の塗布面が劣化しない限り、ほぼ継続する。また、電線に止まったカラスに人がカラス忌避シート30をかざすと、カラスが飛び立って逃げる。数十羽が一斉に逃げることもある。
【0035】
(忌避シートの分光学的特性)
本発明者は、カラス忌避シート30にキセノンショートアークランプからの光を照射し、その透過光の強度及び反射光の強度を分光して測定することにより、各波長における透過率及び反射率を測定した。カラス忌避シート30としては、抽出液の濃度やサイズ、色などに関していろいろな種類のものを用意した。
【0036】
その結果、黄色系のシートにおいては、約490ナノメートル以下の波長領域では概ね透過率が低く(0.05〜0.3程度)、約420〜460ナノメートルの波長領域では透過率がほぼ最低(ほぼ0.1未満)であった。約490〜520ナノメートルの波長領域にかけて急激に透過率が上昇し、520ナノメートル以上の波長領域では透過率はほぼ一定(0.8〜0.9程度)であった。これは、シートが黄色であることに対応した結果である。一方、近紫外領域に掛かる360〜420ナノメートルの波長領域においても概ね透過率が低かった(0.05〜0.3程度)が、430ナノメートルあたりから波長が小さいほど、透過率が多少、上昇していた。しかし、あるシートにおいては、370〜470ナノメートルの波長領域に亘って透過率が最低値付近(0.05前後)であった。また、反射率は、いずれのシートも総じて低かった(0.1〜0.3程度)。
【0037】
青色系のシートでは、420〜530ナノメートルの領域(青色付近)、及び、740ナノメートル以上の近赤外領域において透過率が比較的高い(0.2〜0.6)。一方、近紫外領域に掛かる370〜400ナノメートルの領域、及び、530〜740ナノメートルの領域において透過率が低かった(0.1〜0.15程度)。また、反射率は、420〜530ナノメートルの領域、及び、740ナノメートル以上の領域において高く(0.4〜0.6程度)、近紫外領域に掛かる370〜400ナノメートルの領域、及び、530〜740ナノメートルの領域において低かった(0.25〜0.3程度)。
【0038】
以上の通り、いずれのシートにおいても、近紫外領域に透過率が低い領域が存在すると共に、この領域では反射率もそれほど高くない。このことから、いずれのシートも近紫外領域に吸収が大きい領域があることが分かる。本発明者は、カラスが紫外領域の光を認知できるとされていることから、カラス忌避シート30における紫外領域の吸収特性と忌避効果とが強く関連していると考えている。
【0039】
(忌避ごみ袋としての実施例)
抽出液を塗布したごみ袋と、抽出液を塗布しないごみ袋とにごみを入れ、両者を野外のごみ回収所付近に隣り合わせて設置し、34日間放置したが、いずれのごみ袋にもカラスによる被害は全くなかった。この期間内のある日の朝に、ごみ回収所付近で周囲を観察すると、何羽かのカラスが飛来したが、ごみ袋付近には降りてこなかった。ごみ袋は、黄色や青色等の着色が施された透明又は半透明の樹脂製のシート材を基材とする。
【0040】
(忌避ごみ袋及び忌避液としての実施例)
(イ)通常のごみ袋、(ロ)抽出液を練りこんで含有させた合成樹脂からなる袋、及び、(ハ)(ロ)の袋にさらに、抽出液を表面に塗布したステッカーを貼り付けると共に抽出液を噴霧したものを用意し、(イ)〜(ハ)のそれぞれに食品を収納して口を閉じたものを、建物屋上に互いに20mほど離隔させて配置した。その後数日間、経過を観察したところ、1日目、2日目にはいずれも異常はなかったが、6日目の観察では、(イ)の袋内の食品は完全に食べられており、(ロ)は多少突付かれた跡があった。(ハ)には突付かれた跡が全くなかった。(ロ)の袋は、黄色や青色等の着色が施された透明又は半透明の樹脂製のシート材を基材とする。
【0041】
(普通肥料としての実施例)
ある実施例において、最終処理物における堆肥成分の分析結果は以下のとおりであった。
【0042】
【表5】

【0043】
(有害成分等分析結果)
表6は、最終処理物に含まれるひ素、カドミウム、水銀の分析結果である。表7は、最終処理物に含まれる各種細菌の分析結果である。
【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
(品質保持剤としての実施例)
りんごとバナナを切り分け、それぞれ一切れを容器にいれたものを(イ)〜(ホ)の5つ用意し、(ロ)〜(ホ)には最終処理物を10グラム程度封入すると共に、(ハ)と(ホ)にはりんごとバナナが浸からないようにさらに水を入れた。そして、(イ)〜(ホ)を日光が当たる窓際に置き、(ニ)及び(ホ)はダンボールで覆って日よけを施した。これを8日間放置したところ、(イ)においてはりんごもバナナも腐敗が進むと共に、カビが発生した。(ロ)及び(ハ)にはカビが発生したが、腐敗はそれほど進行しなかった。(ニ)及び(ホ)はカビも発生せず、腐敗もそれほど進行しなかった。これは、最終処理物がエチレンガスを吸収する性質を有しているからと考えられる。
【0047】
(その他の用途)
ヒトデは一般的に、動物に対する忌避効果が知られていることから、抽出液の散布等により、虫や他の動物など、カラス以外にも忌避効果が得られると予測される。また、抽出液を噴霧することにより消臭液として用いてもよい。さらに、ごみ収集所などに抽出液を散布するだけでもカラスが近寄りにくくなることも確認されている。
【0048】
(各用途に係る本実施形態の有効性)
以上の通り、本実施形態による最終処理物は、カラス忌避、消臭剤、品質保持剤など、広い用途に応用できる。本実施形態の応用上、最も重要な点は、最終処理物の腐熟度がほぼ完熟の程度にまで至ることにある。腐熟が不完全であるとヒトデ特有の悪臭が残り、製造時や使用時の取り扱いが困難になるためである。特に、消臭剤としての用途においては、剤自体が悪臭を放っていては全く価値がない。また、腐熟が不完全であると、カラス忌避や消臭剤としての有効成分が十分に生成されず、これらの効果が低くなる場合もあることが、本発明者によって確認されている。消臭剤や品質保持剤には化学物質が用いられることが多いが、本実施形態の最終処理物を用いた消臭剤や品質保持剤は、天然素材からなる。また、廃棄物として処理されることが多いヒトデを有効に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
30 カラス忌避シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を吸収可能な水分調整材をヒトデと混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合物の水分量及び温度を調整しつつ前記混合物を攪拌する攪拌工程とを備えており、
前記混合物を微生物により分解させることを特徴とするヒトデの処理方法。
【請求項2】
前記混合物における腐熟度がほぼ完熟になる程度まで、前記混合物を微生物により分解させることを特徴とする請求項1に記載のヒトデの処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の処理方法により処理されて得られたヒトデ処理物を溶媒に浸して得られた抽出液を塗布され又は含有していることを特徴とする動物忌避用のシート。
【請求項4】
前記抽出液を塗布され又は含有する透明又は半透明のシート材を有していることを特徴とする請求項3に記載の動物忌避用のシート。
【請求項5】
前記シート材の端部に取り付けられた第1部分と、前記第1部分に対して回転する第2部分とを含む回転部材をさらに有していることを特徴とする請求項4に記載の動物忌避用のシート。
【請求項6】
前記シート材の端部に孔が貫通しており、
前記孔にリング部材が通されており、
前記第1部分が前記リング部材を介して前記シート材の端部に取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の動物忌避用のシート。
【請求項7】
互いに端部において補強具に留められつつ接合された複数のシート材を有し、
前記複数のシート材のうちの少なくともいずれかが前記抽出液を塗布され又は含有するシート材であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の動物忌避用のシート。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の処理方法により処理されて得られたヒトデ処理物を含有することを特徴とする消臭剤。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−232293(P2012−232293A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94834(P2012−94834)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(511099571)株式会社ダイチ (1)
【Fターム(参考)】