説明

ヒト乳脂代用物

ヒト乳脂(HMF)代用物、その調製方法、その使用、ならびにHMFを含む脂肪混合物および調製粉乳が開示される。本発明の脂肪ベース組成物は、sn−2位に結合した脂肪酸残基の50%未満が飽和しており;および/またはグリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が飽和脂肪酸残基の総量の約43.5%未満である、植物由来トリグリセリドの混合物を含んでいる。通常、グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸の実質的に全てがパルミチン酸残基である。また、少なくとも25%または少なくとも30%の本発明の前記脂肪ベース組成物とそれぞれ最大75%または最大70%の少なくとも1種の植物油との混合物を含む代用HMF組成物が開示される。脂肪ベース組成物および混合物を調製する方法も開示される。さらに、脂肪ベース組成物または代用ヒト乳脂組成物を含む調製粉乳が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト乳脂代用物、その調製方法、その使用、ならびにヒト乳脂代用物を含む脂肪混合物および調製粉乳に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願において言及する全ての出版物および引用する全ての参考文献は、ここに参照することで全文を本明細書に含むものとする。
【0003】
一般に脂質は、生物の構成要素である。脂質は、膜、細胞、組織の構成要素として、直接のまたは貯蔵されるエネルギー源として、他の様々な生体分子の前駆体として、また生化学的信号として用いられる。すべての生化学的過程において、脂質は、重要な役割を担っている。
【0004】
多くの脂質、特にトリグリセリドは、ヒトの栄養分として日々摂取されている。ほとんどの場合これらの脂質は、代謝されて、エネルギー貯蔵に用いられるか他の脂質または生体分子の生合成用前駆体に用いられる。代謝経路における脂質の最終産物がどのようなものであれ、摂取される間または摂取の後、脂質は、他の栄養分またはそれらの代謝産物と相互に作用する。
【0005】
人乳およびほとんどの調製粉乳において、食物性カロリーの約50%は、脂肪として新生児に与えられる。乳脂の98%以上は、トリグリセリドの形状であり、グリセロールにエステル結合した飽和および不飽和脂肪酸を含んでいる。
【0006】
ヒト乳脂に含まれる脂肪酸のグリセロール骨格における位置分布は、非常に特異的である。この特異な配置が、栄養吸収の効率に大きな影響を及ぼすことが知られている。
【0007】
パルミチン酸(C16:0)は、成熟人乳において脂肪酸の20〜25%を構成する、主要な飽和脂肪酸(SAFA)である。この脂肪酸の70〜75%は、トリグリセリドのsn−2位にエステル結合している。これに対して、調製粉乳の製造に最もよく用いられている植物油中に存在するパルミチン酸は、sn−1位およびsn−3位にエステル結合しており、sn−2位は、主に不飽和脂肪酸によって占められている。
【0008】
リノール酸(18:2)およびリノレン酸(C18:3)は、動物組織内で合成することができず、食物から、すなわち結局のところ植物から得なければならない。これらのいわゆる「必須脂肪酸」は、成長、生殖、健康に絶対に必要である。ヒト母乳中のトリグリセリドでは、全C18:3の5〜20%と全C18:2の20〜23%とが、グリセロール骨格のsn−2位にエステル結合している[Lopez-Lopez A. (2002) European Journal of Clinical Nutrition;56:1242-54、Innis S.M. (1994) Lipids;29:541-5]。
【0009】
乳児によるトリグリセリド消化
新生児におけるトリグリセリド消化過程は、複雑である。消化過程は、胃液リパーゼまたは舌リパーゼにより触媒作用を受ける胃相から始まる[Hamosh M. (1990) Nutrition;6:421-8]。この初期の脂肪分解があることで、消化過程の腸相において、膵臓補リパーゼ依存性リパーゼが、最大の活性を発揮できる。膵臓リパーゼ系は、高い位置特異性でトリグリセリドに作用する。脂肪分解は、主にsn−1位およびsn−3位で起こり、2個の遊離脂肪酸と1個の2−モノグリセリドを生じる[Mattson F.H.およびBeck L.H. (1956) J. Biol. Chem.;219:735-740]。モノグリセリドは、含んでいる脂肪酸成分の種類に関わらず、よく吸収される。これに対して遊離脂肪酸の吸収は、その化学的構造に応じて様々に異なる。モノおよびポリ不飽和脂肪酸は、よく吸収され、鎖長が12炭素以下の飽和脂肪酸も、同様によく吸収される。遊離する長鎖飽和脂肪酸すなわちパルミチン酸の吸収係数は、比較的低い[Jensen C.他 (1988) Am. J. Clin. Nutr.;43:745-51]。これは一つには、その融点が体温より高く(〜63℃)、これらの脂肪酸が腸管のpHでカルシウムやマグネシウムなどのミネラルと水和脂肪酸石鹸を形成しやすい、ということが理由である[Small D.M. (1991) Annu. Rev. Nutr.;11:413-434]。
【0010】
幾つかの研究は、パルミチン酸がトリグリセリドのsn−2位にある場合に吸収されやすいことを示している[Lien E.L.他 (1997) J. Ped. Gastr. Nutr.;52(2):167-174;Carnielli V.P.他 (1995) Am. J. Clin. Nutr.;61:1037-1042;Innis S.M.他 (1993) Am. J. Clin. Nutr.;57:382-390;Filer L.J.他 (1969) J. Nutr.;99:293-8]。パルミチン酸吸収について人乳と調合乳とを比較した研究は、人乳においてパルミチン酸の吸収がより高いことを示している[Chappel J.E.他 (1986) J. Pediatr.;108:439-447;Hanna F.M.他 (1970) Pediatr.;45:216-224;Tommarelli R.M.他 (1968) J. Nutr.;95:583-90]。調合乳を与えられた乳児と比較して、母乳栄養児において脂肪とカルシウムがより多く吸収されるということには、脂肪分解酵素(胆汁刺激性リパーゼ)が母乳に存在することと、トリグリセリドのsn−2位に比較的高い割合でパルミチン酸が存在することの、2つの要因が寄与していると考えられている[Hernell O.他 (1988) Perinatal Nutrition.ニューヨーク州:Academic Press.;259-272;Wang CS.他 (1983) J. Biol. Chem.;258:9197-9202]。トリグリセリドのsn−2位にエステル結合したパルミチン酸を多く含む調合乳は、主にsn−1、3位にエステル結合したパルミチン酸を含む調合乳と比較して、吸収されるパルミチン酸量が多い[Lopez-Lopez A.他 (2001) Early Hum. Dev.;65:S83-S94]。
【0011】
脂肪とカルシウムの吸収について、パーム油とダイズ油との混合物(sn−1、3位にパルミチン酸が多い)を含む調合乳を与えられた乳児と、ダイズ油とヤシ油との混合物(パルミチン酸が少ない)を含む調合乳を与えられた乳児とを比較した研究では、ヒト乳脂のものに近いパルミチン酸対オレイン酸比を有しているにもかかわらず、パーム油とダイズ油との混合物の吸収が低いことが示されている[Nelson SE. 他 (1996) Am. J. Clin. Nutr.;64:291-296]。別の研究では、ラードを含む調合乳を与えた乳児における脂肪吸収は、ラード中に高い割合で存在するsn−2パルミチン酸を化学的にランダム化して33%に低減した場合に、低下することが示されている[Filer (1969) 前述文献同箇所]。
【0012】
腸細胞でトリグリセリドを形成する再エステル化の間、sn−2モノグリセリドとして吸収された脂肪酸の約70%は元の位置に保持されているので、腸管腔から吸収されるモノグリセリドの組成は、循環脂質の脂肪酸分布にとって重要である。[Small (1991) 前述文献同箇所]。
【0013】
子豚を用いた研究の結果、パルミチン酸は、再構成トリグリセリドを含む乳または調合乳からsn−2モノグリセリドとして吸収された場合、腸細胞におけるトリグリセリド再構築過程と血漿リポ蛋白質トリグリセリド中の分泌過程を通じて、保持される証拠が示された[Innis S.M.他 (1995) J. Nutr.;125:73-81]。人乳および調製粉乳における飽和脂肪酸の分布が、乳児血漿トリグリセリドおよびリン脂質の脂肪酸分布の決定因子であることも示されている[Innis S.M.他 (1994) Lipids.;29:541-545]。
【0014】
誕生から1年すると、乳児の体重は、誕生時と比べて3倍となり、身長は、50%増加する。骨格質量が急速に増す必要に合わせて、成長過程にある乳児は、生物学的に利用可能なカルシウム源を必要とする。人工栄養児にとって、カルシウムを利用できるか否かは、調合乳の組成に依存している[Ostrom KM.他 (2002) J. Am. Coll. Nutr.;21(6):564-569]。
【0015】
上記したように、トリグリセリドの消化では、脂肪がsn−1位および3位において分解され、遊離脂肪酸と2−モノグリセリドとが形成される。ほとんどの調製粉乳の場合に当てはまるが、パルミチン酸がsn−1、3位にある場合、遊離脂肪酸として切り離され、不溶性カルシウム石鹸を形成しやすい。これに対して人乳のように、sn−2位にエステル結合したパルミチン酸は、カルシウム石鹸を形成しない[Small (1991) 前述文献同箇所]。
【0016】
幾つかの研究では、トリグリセリドのsn−1、3位に位置するパルミチン酸が多い調合乳と、低いカルシウム吸収との間に、相関関係があることが示されている[Nelson S. E.他 (1998) J. Amer. Coll. Nutr.;17:327-332;Lucas A.他 (1997) Arch. Dis. Child.;77:F178-F187;Carnielli V.P.他 (1996) J. Pediatr. Gastroenterol. Nutr.23:553-560;Ostrom (2002) 前述文献同箇所;Hanna (1970) 前述文献同箇所]。さらに人乳のように、n−2位を主にパルミチン酸が占める食物性トリグリセリドは、正期産児と早期産児との両方において、脂肪およびカルシウムの腸内吸収に有益な影響を顕著にもたらすことが示されている[Carnielli (1996) 前述文献同箇所;Carnielli (1995) 前述文献同箇所;Lucas (1997) 前述文献同箇所]。sn−1、3位のパルミチン酸が多い調合乳を与えられた乳児では、カルシウムの糞便中排泄量が多く、パルミチン酸の少ない調合乳を与えられた乳児と比較して、カルシウムの吸収率が低い[Nelson (1996) 前述文献同箇所]。カルシウムの糞便中排泄量は、脂肪の糞便中排泄量と密接な関係があった。この研究ではまた、sn−1、3位のパルミチン酸が多い調合乳を乳児に与えた場合、リンの尿中排泄量が増加し、リンの保持量が低下したことも示された。これらの知見はおそらく、骨に沈着するカルシウム量の低さを反映している。
【0017】
石鹸形成は、カルシウム吸収に深刻な影響を与える可能性がある。多くの調製粉乳は、そこに含まれるカルシウムの実質的に全てと石鹸を形成しうる量の飽和脂肪酸を含んでいる。
【0018】
調合乳投与に関連するその他の重要な問題として、正期産児と早期産児両方における便秘があり、後者では生死に関わる合併症に至る可能性もある。これに対して母乳栄養児の便秘は、稀である。便の硬さと母乳または調合乳の組成について母乳栄養児と人工栄養児とを比較する研究では、カルシウム脂肪酸石鹸が便の硬さに明らかに関与していることが示されている。人工栄養児の便は、母乳栄養児のものより顕著に硬く、これは飽和脂肪酸の処理が異なっていることを示唆している[Quinlan PT.他 (1995) J. Pediatr. Gastr. and Nutr.;20:81-90]。
【0019】
カルシウム吸収の低下と硬い便の問題を解消するために、調製粉乳製造者は、パルミチン酸をラウリン酸に置き換えることで、あるいはポリ不飽和脂肪酸含有量を増加させることで、脂肪酸の特性を変えるようにしている。研究の結果、食用脂肪酸の組成が、成長している乳児組織の脂肪酸の組成に影響を与えること[Widdowson E.M. (1975) Br. Med. J.;1:633-5;Carlson S.E.他 (1986) Am. J. Clin. Nutr.;44:798-804;Innis S.M.他 (1990) Am. J. Clin. Nutr.;5:994-1000;Koletzko B.他 (1989) Eur. J. Pediatr.;148:669-75]、従ってリポ蛋白質および脂質代謝は、母乳栄養児と人工栄養児との間で異なっていること[Putnam J.C. 他 (1982) Am. J. Clin. Nutr.;36:106-114;Innis S.M.他 (1992) Am. Coll. Nutr.;11:63S-8S;Van Biervliet J.P.他 (1981) Acta. Paediatr. Scand.;70:851-6]が示されている。
【0020】
Innis他[Innis (1993) 前述文献同箇所]では、パーム油由来のC8〜C14、C16飽和脂肪酸(主にsn−1、3位に位置する)、および合成トリグリセリド由来のC16飽和脂肪酸(主にsn−2位に位置する)をほぼ等量で含む3種類の調製粉乳を比較した場合、調製粉乳に含まれる飽和脂肪酸の鎖長が、食物性のオレイン酸、リノール酸およびα−リノレン酸の代謝に影響することが示された。この研究ではさらに、人乳トリグリセリドにおけるC16飽和脂肪酸のsn−2配置が、吸収以外にも独特な特性を示すことも示された。そうした特性には、HDLおよびコレステロ−ルの濃度や、コレステロ−ルエステル脂肪酸組成に与える影響などがある。
【0021】
欧州特許出願公開第0209327号には、調製粉乳中の脂肪代替品として好適な代用乳脂組成物が開示されている。請求の範囲に記載される脂肪組成物において、全飽和脂肪酸残基の少なくとも43.5%が、トリグリセリドのsn−2位に結合している。さらに、sn−2位を占める脂肪酸の少なくとも50%が、飽和している。この発明の脂肪組成物は、飽和脂肪酸(具体的にはパルミチン酸)含有量の多い油脂または脂肪から得られる。
【0022】
欧州特許出願公開第0495456号にも、代用ヒト乳脂組成物が開示されている。請求の範囲に記載される組成物では、全飽和脂肪酸の少なくとも40%が、組成物に含まれるトリグリセリドのsn−2位に位置している。さらにこれらの脂肪組成物は、0.2〜7%のリノレン酸部分(C18:3、ω−3)を含み、そのうち70%がグリセロール部分のsn−1および3位に結合していることを特徴とする。欧州特許出願公開第0495456号の脂肪組成物は、飽和脂肪酸(具体的にはパルミチン酸)に富んだトリグリセリド源のエステル交換反応によっても得られる。このトリグリセリド源、例えばパーム油の最上画分は、パルミチン酸を80%より高い濃度で、あるいは90%より高い濃度で、含むことが可能である。
【0023】
米国特許第5,658,768号には、40%を超える飽和脂肪酸部分がsn−2位に位置するトリグリセリド組成物を調製する多段階方法が開示されている。ステップの多くは、酵素修飾を必要とする。
【0024】
出願人による国際特許出願公開番号WO2004/036987は、ヒト乳脂と高レベルの類似性を有するヒト乳脂代用物の製造に用いることのできる、および/または比較的低い濃度で用いてそのようなヒト乳脂代用物を得ることのできる、脂肪組成物を開示している。この組成物は、パルミチン酸に富んだトリグリセリド源から出発しても得られる。
【0025】
上述した脂肪組成物は、ヒト乳脂(HMF)と高レベルの類似性を有するHMF代用物の調製に用いることができ、調製されたHMF代用物を、最終的な調製粉乳の製造に用いることができるが、得られるHMF代用物は、非常に高価であり、商業用の調製粉乳の調製としては実用的でない。
【0026】
本発明の発明者らは、上述の国際特許出願公開番号WO2004/036987において、独自の脂肪組成物を製造することで費用の問題に取り組んでおり、調製粉乳に用いる全脂肪混合物に当該発明の比較的少量の合成脂肪ベース組成物を用いることで、HMFと高レベルの類似性を有するHMF代用物を提供している。
【0027】
費用の障害を克服する別の方法では、全飽和脂肪酸のうち比較的高い割合がsn−2位に位置するHMF代用物が提供されている。全飽和脂肪酸のうち40%を超える(かつ50%未満である)飽和脂肪酸がsn−2位に位置する脂肪組成物が得られる。このようなHMF代用物は、欧州特許出願公開第0209327号または第0495456号に記載されるように、脂肪ベース組成物を単純で安価な植物油で高度希釈することで得られる。しかしこれらの混合物は、全パルミチン酸に対するsn−2パルミチン酸の比(〜40から43%)が、HMFにおける比(〜70%)より低い。にもかかわらず臨床研究の結果[Lien 他 Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition 1997、167-74]、これらの混合物は、複数の植物油を単に混ぜたものをベースとする調製粉乳と比べて、摂取されるカルシウムおよび脂肪酸の量がより多いことが示されている。ヒト乳脂に非常に近い代用物は、出願人による上述の国際特許出願公開番号WO2004/036987に記載されている[InFat 1、表1]。いずれの場合においても、少なくとも40%の飽和脂肪酸がsn−2位に位置することを特徴とするこれらのHMF代用物は、sn−2パルミチン酸含有量が多くsn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比の高い脂肪ベースを、様々な植物トリグリセリドで希釈することで混合物として得られる。この比は通常、40〜45%である。これらのHMF代用物の調製に用いられる脂肪ベースは、オレイン酸に富んだ遊離脂肪酸の混合物を過剰量用いて、パルミチン酸に富んだトリグリセリドをエステル交換することによって生成される。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0209327号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0495456号
【特許文献3】米国特許第5,658,768号
【特許文献4】国際特許出願公開番号WO2004/036987
【非特許文献1】[Lopez-Lopez A. (2002) European Journal of Clinical Nutrition;56:1242-54、Innis S.M. (1994) Lipids;29:541-5]
【非特許文献2】[Hamosh M. (1990) Nutrition;6:421-8]
【非特許文献3】[Mattson F.H.およびBeck L.H. (1956) J. Biol. Chem.;219:735-740]
【非特許文献4】[Jensen C.他 (1988) Am. J. Clin. Nutr.;43:745-51]
【非特許文献5】[Small D.M. (1991) Annu. Rev. Nutr.;11:413-434]
【非特許文献6】[Lien E.L.他 (1997) J. Ped. Gastr. Nutr.;52(2):167-174;Carnielli V.P.他 (1995) Am. J. Clin. Nutr.;61:1037-1042;Innis S.M.他 (1993) Am. J. Clin. Nutr.;57:382-390;Filer L.J.他 (1969) J. Nutr.;99:293-8]
【非特許文献7】[Chappel J.E.他 (1986) J. Pediatr.;108:439-447;Hanna F.M.他 (1970) Pediatr.;45:216-224;Tommarelli R.M.他 (1968) J. Nutr.;95:583-90]
【非特許文献8】[Hernell O.他 (1988) Perinatal Nutrition.ニューヨーク州:Academic Press.;259-272;Wang CS.他 (1983) J. Biol. Chem.;258:9197-9202]
【非特許文献9】[Lopez-Lopez A.他 (2001) Early Hum. Dev.;65:S83-S94]
【非特許文献10】[Innis S.M.他 (1995) J. Nutr.;125:73-81]
【非特許文献11】[[Ostrom KM.他 (2002) J. Am. Coll. Nutr.;21(6):564-569]
【非特許文献12】[Nelson S. E.他 (1998) J. Amer. Coll. Nutr.;17:327-332;Lucas A.他 (1997) Arch. Dis. Child.;77:F178-F187;Carnielli V.P.他 (1996) J. Pediatr. Gastroenterol. Nutr.23:553-560;Ostrom (2002) 前述文献同箇所;Hanna (1970) 前述文献同箇所]
【非特許文献13】[Quinlan PT.他 (1995) J. Pediatr. Gastr. and Nutr.;20:81-90]
【非特許文献14】[Widdowson E.M. (1975) Br. Med. J.;1:633-5;Carlson S.E.他 (1986) Am. J. Clin. Nutr.;44:798-804;Innis S.M.他 (1990) Am. J. Clin. Nutr.;5:994-1000;Koletzko B.他 (1989) Eur. J. Pediatr.;148:669-75]
【非特許文献15】[Putnam J.C. 他 (1982) Am. J. Clin. Nutr.;36:106-114;Innis S.M.他 (1992) Am. Coll. Nutr.;11:63S-8S;Van Biervliet J.P.他 (1981) Acta. Paediatr. Scand.;70:851-6]
【非特許文献16】[Lien 他 Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition 1997、167-74]
【非特許文献17】[TantibhedhyangkulおよびHashim (1978) Pediatrics. 61(4):537-45;FinleyおよびDavidson (1980) Pediatrics. 65(1):132-8;Lien (1994) J. Pediatr. 125(5):S62-8;Lien他 (1997) J Pediatr Gastroenterol Nutr. 25(2):167-74]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、良好なHMF類似物としての利点を有しつつ安価に製造することのできる、新規で脂肪を主成分とした(fat-base)組成物を提供することにある。
【0029】
本発明のさらなる目的は、様々な調製粉乳に用いるのに好適なHMF類似脂肪ベース(fat base)および脂肪混合物を安価に製造する、新規な方法を提供することにある。
【0030】
本発明の上記およびその他の目的は、以下の説明により明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0031】
発明の概要
第1の態様において本発明は、sn−2位に結合した脂肪酸残基の50%未満が飽和しており;および/またはグリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が飽和脂肪酸残基の総量の約43.5%未満であることを特徴とする酵素的に調製した植物由来トリグリセリド混合物を含む脂肪ベース組成物に関する。前記脂肪酸残基はC12、C12、C16またはC16脂肪酸、任意選択で他の脂肪酸、およびそのうち少なくとも2種の脂肪酸を含む混合物である。
【0032】
本発明の脂肪ベース組成物の好ましい実施形態において、グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸の実質的に全てがパルミチン酸残基である。特に、グリセロール骨格のsn−2位にある飽和脂肪酸の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%がパルミチン酸残基である。
【0033】
本発明の脂肪ベース組成物の特定の実施形態において、sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも40%、好ましくは45〜65%がオレイン酸部分である。特に、sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも45%、好ましくは54〜65%がオレイン酸部分である。あるいは、sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも35%、好ましくは40〜52%がオレイン酸部分である。
【0034】
さらに、本発明の脂肪ベース組成物において、sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも5%、好ましくは7〜15%がリノール酸部分であってもよい。具体的には、sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも9%、好ましくは10〜20%がリノール酸部分である。あるいは、sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも4%、好ましくは5〜10%がリノール酸部分である。
【0035】
本発明の脂肪ベース組成物の別の特定の実施形態において、sn−1位およびsn−3位にある全脂肪酸部分の約0.2〜約15%、好ましくは約7%〜約14%、より好ましくは約11%〜約12.5%がラウリン酸部分である。
【0036】
さらなる態様において本発明は、少なくとも25%または少なくとも30%の本発明の脂肪ベース組成物とそれぞれ最大75%または最大70%の少なくとも1種の植物油との混合物を含む代用ヒト乳脂組成物に関する。植物油は、ダイズ油、パーム油、カノーラ油、ヤシ油、パームナッツ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油およびナタネ油からなる群より選ばれてもよいが、これらに限定されない。これらの油は、後に詳述するように、脂肪ベース組成物と混合する前にランダム化してもよい。
【0037】
本発明の代用ヒト乳脂組成物の特定の実施形態において、全パルミチン酸残基の約33%〜約45%、好ましくは約36%〜約43%、より好ましくは約40%が、グリセロール骨格のsn−2位に結合している。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、本発明の脂肪ベース組成物または代用ヒト乳脂組成物を含む調製粉乳に関し、特に少なくとも1種のタンパク質成分および少なくとも1種の脂肪成分を含む調製粉乳であって、前記脂肪成分は、本発明の脂肪ベース組成物または代用ヒト乳脂組成物であり、調製粉乳はビタミン、ミネラル、ヌクレオチド、アミノ酸および炭水化物、および栄養面で利点のあるその他の成分を任意選択でさらに含むことを特徴とする調製粉乳に関する。
【0039】
さらなる態様において本発明は、上で定義した本発明の脂肪ベース組成物を調製する第1の方法に関する。本方法は以下のステップを含む。
【0040】
(a)全脂肪酸のうち好ましくは60%未満、より好ましくは57%未満、さらにより好ましくは53%未満の実質的に低い飽和脂肪酸含有量、好ましくはパルミチン酸含有量を有するトリグリセリド混合物と、オレイン酸に富んだ遊離不飽和脂肪酸源とを、不溶性触媒の存在下、前記遊離脂肪酸と前記グリセリド混合物との比を約1.5:1〜約1:1で反応させるステップ;
(b)触媒を除去するステップ;
(c)過剰な遊離脂肪酸を蒸留除去するステップ;
(d)前記油脂を脱色する任意選択のステップ;および
(e)ステップ(d)の生成物を脱臭する任意選択のステップ。
【0041】
あるいは、(sn−2位に結合した飽和脂肪酸の構成比を増やすことによって)sn−2位にある飽和脂肪酸を強化する目的で、反応の前にトリグリセリド混合物をランダム化する。ランダム化は、塩基性または酸性触媒を用いて化学的に行ってもよいし、非選択性リパーゼを用いて酵素的に行ってもよい。
【0042】
本発明の第1の方法は、ステップ(e)の前に、分留するステップを更に含んでいてもよい。
【0043】
本発明の本方法で用いる前記トリグリセリド混合物は、飽和脂肪酸、好ましくはパルミチン酸を、好ましくは48〜57%の量で含んでいてもよい。
【0044】
本発明の本方法で用いる前記遊離脂肪酸源は、好ましくは約2〜5%のC16:0脂肪酸、60〜80%のC18:1脂肪酸および1〜4%のC18:0脂肪酸を含んでいてもよい。
【0045】
さらなる実施形態において本発明は、上で定義した本発明の代用ヒト乳脂組成物を調製する方法に関する。本方法は、本発明の脂肪ベース組成物と少なくとも1種の植物油とを、好ましくは約0.4:1〜約4:1の比で混合して、グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が、飽和脂肪酸残基の総量の約33%〜約43.5、好ましくは約43%、より好ましくは約40%である混合物を得るステップを含む。
【0046】
あるいは本発明の脂肪ベース組成物を、植物油と約2.3:1〜約1:1の比で混合して、グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が、飽和脂肪酸残基の総量の約33%〜約40%である混合物を得る。
【0047】
パルミチン酸残基の33%がsn−2位においてエステル化されるように、代用ヒト乳脂の調製に用いられる混合植物油を、任意選択でランダム化してもよい。ランダム化することで、飽和脂肪酸残基の総量のうちsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基を所望の比で有する、調製粉乳用の代用乳脂組成物を調製するのに必要な脂肪ベースの量を、大幅に減らすことができる。本実施形態はコストの面で非常に重要である。上記したように、混合植物油のランダム化は、塩基性または酸性触媒を用いて化学的に、または非選択性リパーゼを用いて酵素的に行うことができる。
【0048】
さらに別の態様において、本発明は上で定義した本発明の脂肪ベース組成物を調製する第2の方法に関する。本方法は以下のステップを含む。
【0049】
(a)全脂肪酸のうち好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の高いパルミチン酸含有量を有するトリグリセリド混合物と、等重量またはより低い重量の、オレイン酸および炭素数14以下の飽和脂肪酸、好ましくはラウリン酸に富んだ遊離不飽和脂肪酸源とを、不溶性触媒の存在下、前記遊離脂肪酸と前記グリセリド混合物との比を約1:1〜約2:1で反応させるステップ;
(b)触媒を除去するステップ;
(c)過剰な遊離脂肪酸を蒸留除去するステップ;
(d)前記油脂を脱色する任意選択のステップ;および
(e)ステップ(d)の生成物を脱臭する任意選択のステップ。
【0050】
本発明の第1の方法のように、グリセロール骨格のsn−2位にある飽和脂肪酸部分を強化する目的で、反応の前にトリグリセリド混合物を任意選択でランダム化する。ランダム化は、標準的なエステル交換法によって、酸性または塩基性触媒(例えばナトリウムメトキシド)を用いて化学的に行ってもよいし、非選択性リパーゼを用いて酵素的に行ってもよい。
【0051】
本発明の第2の方法において、好ましくは前記遊離不飽和脂肪酸源は、炭素数14以下の飽和脂肪酸、好ましくはラウリン酸を約10%〜約25%の割合で含む。
【0052】
本発明の第2の方法は、脱臭するステップ(e)の前に、分留するステップを更に含んでいてもよい。
【0053】
本発明の第2の方法の特定の実施形態において、トリグリセリド混合物は少なくとも75%がパルミチン酸であってもよい。遊離脂肪酸源は、全脂肪酸のうち約5〜25%がC12:0脂肪酸、0.05〜2%がC14:0脂肪酸、1〜5%がC16:0脂肪酸、55〜75%がC18:1脂肪酸および1〜5%がC18:0脂肪酸であってもよい。
【0054】
さらなる態様において本発明は、上で定義した本発明の代用ヒト乳脂組成物を調製する方法に関する。本方法は、本発明の脂肪ベース組成物と少なくとも1種の植物油とを、好ましくは約0.4:1〜約4:1の比で混合して、グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が、飽和脂肪酸残基の総量の約33%〜約43.5、好ましくは約43%、より好ましくは約40%である混合物を得るステップを含む。
【0055】
あるいは本発明の脂肪ベース組成物を、植物油と約2.3:1〜約1:1の比で混合して、グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が、飽和脂肪酸残基の総量の約33%〜約40%である混合物を得る。
【0056】
またこれらの実施形態において、全パルミチン酸残基の約33%がsn−2位においてエステル化されるように、混合植物油を任意選択でランダム化してもよい。ランダム化することで、飽和脂肪酸残基の総量のうちsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基を所望の比で有する、代用HMF調製物を得るのに必要な脂肪ベースの量を、大幅に減らすことができる。混合植物油のランダム化は、塩基性または酸性触媒を用いて化学的に、または非選択性リパーゼを用いて酵素的に行うことができる。
【0057】
別の態様において、本発明はHMF類似組成物を調製する方法に関する。本方法は以下のステップを含む。
【0058】
(a)全脂肪酸のうち少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは70%以上のパルミチン酸含有量を有するトリグリセリド混合物と、全遊離脂肪酸のうち10%未満、好ましくは5%未満のパルミチン酸を含む遊離不飽和脂肪酸源とを、不溶性触媒の存在下、前記遊離脂肪酸と前記グリセリド混合物との比を約5:1〜約1:1で反応させるステップ;
(b)触媒を除去するステップ;
(c)過剰な遊離脂肪酸を蒸留除去するステップ;
(d)前記油脂を脱色する任意選択のステップ;および
(e)ステップ(d)の生成物を脱臭する任意選択のステップ。
【0059】
得られる生成物はC12:0脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜20%、好ましくは10〜15%;C14:0脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜15%、好ましくは5〜10%;C16:0脂肪酸を全脂肪酸のうち8〜30%、好ましくは20〜25%;C18:0脂肪酸を全脂肪酸のうち1〜6%、好ましくは3〜5%;C18:1脂肪酸を全脂肪酸のうち20〜50%、好ましくは30〜40%;C18:2脂肪酸を全脂肪酸のうち5〜30%、好ましくは10〜20%;C18:3脂肪酸を全脂肪酸のうち0.2〜4%、好ましくは1.5〜3%で含み;他の脂肪酸は、全脂肪酸のうち10%未満、好ましくは5%未満の量で含む。この生成物の主な利点は、さらに混合することを必要とせずに、調製粉乳の成分として好適に用いることが可能であることにある。
【0060】
あるいは、sn−2位にある飽和脂肪酸部分を強化するために、反応前に、源であるトリグリセリド混合物を、化学的または酵素的にランダム化する。
【0061】
本発明はまた、HMFに類似し、本発明の方法により作成可能なHMF代替物として作用する脂肪組成物に関する。このようなHMF代用物組成物は、乳児栄養に好適な脂肪酸プロファイルによって特徴付けられるのが好ましく、好ましくはHMFの脂肪酸プロファイルを模倣する、最も好ましくは脂肪酸石鹸形成を通じたカルシウム損失を最小化するものであってもよい。この組成物は、全飽和脂肪酸に対するsn−2飽和脂肪酸が少なくとも33%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは45%以上、さらにより好ましくは50%以上、最も好ましくは59%以上である。この組成物は、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比が少なくとも40%、好ましくは43%以上、より好ましくは45%以上である。
【0062】
さらにまた本発明は、調製粉乳用の代用ヒト乳脂組成物の調製における、本発明の脂肪ベース組成物の使用、または本発明の方法のいずれかによって調製した脂肪ベース組成物の使用に関する。
【0063】
さらなる態様において、本発明は、代用HMF組成物を調製する方法に関する。この方法は、好適な脂肪ベース組成物と少なくとも1種の植物油とを混合するステップを含み、前記脂肪ベース組成物と混合する前に植物油をランダム化することを特徴とする。好適な脂肪ベースは、グリセリドと遊離脂肪酸とを立体特異的選択性リパーゼの存在下に反応して得られる構造脂質の混合物である。この脂肪ベースは、C12:0脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜20%、好ましくは10〜15%;C14:0脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜15%、好ましくは5〜10%;C16:0脂肪酸を全脂肪酸のうち20〜55%(そのうち38%以上がsn−2位でエステル化されている);C18:0脂肪酸を全脂肪酸のうち1〜7%、好ましくは3〜5%;C18:1脂肪酸を全脂肪酸のうち25〜65%、好ましくは30〜40%;C18:2脂肪酸を全脂肪酸のうち2〜40%、好ましくは10〜20%;C18:3脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜8%、好ましくは1.5〜3%で含み;他の脂肪酸を、全脂肪酸のうち8%未満、好ましくは5%未満の量で含む。
【0064】
植物油は、ダイズ油、パーム油、カノーラ油、ヤシ油、パームナッツ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油およびナタネ油からなる群より選ばれてもよいが、これらに限定されない。
【0065】
本態様において、代用ヒト乳脂の調製に用いる混合植物油はランダム化されたものである。ランダム化により、パルミチン酸残基の33%がグリセロール骨格のsn−2位においてエステル化された油脂が得られる。ランダム化することで、飽和脂肪酸残基の総量のうちn−2位に結合した飽和脂肪酸残基を所望の比で有する、調製粉乳用の代用乳脂組成物を調製するのに必要な脂肪ベースの量を、大幅に減らすことができる。本実施形態はコストの面で非常に重要である。上記した他の実施形態におけるように、混合植物油のランダム化は、塩基性または酸性触媒を用いて化学的に、または非選択性リパーゼを用いて酵素的に行うことができる。
【0066】
混合油のランダム化は、費用効果のほかに、とりわけ重要な側面を有する。天然油と比較して、ランダム化混合油では、γ−リノレン酸(C18:3)およびリノール酸(C18:2)の分布が、HMFと非常によく似たものとなる。
【0067】
脂肪ベース組成物と油とは好適な比で混合するが、この比は、得られる混合物における所望のプロファイルによって決めらることができる。例えば脂肪ベース組成物と混合油とを約0.13:1〜約4:1の比で混合することで、グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が飽和脂肪酸残基の総量の約33%〜約43.5、好ましくは約43%、より好ましくは約40%である混合物を提供する。あるいは、グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が43.5%以上である混合物を得る。成分比はこのように、所望のまたは所与の脂肪酸プロファイルを有する混合物を得るように、調整することができる。
【0068】
さらなる態様において本発明は、調製粉乳の成分として使用するのに好適な脂肪ベース組成物を調製する、以下のステップを含む方法に関する。(a)好適な脂肪酸プロファイル、全脂肪酸のうち約35%を超えるパルミチン酸含有量を有する、ランダム化したトリグリセリド混合物と、全遊離脂肪酸の10%未満の量でパルミチン酸を含む好適な遊離不飽和脂肪酸源とを、不溶性触媒の存在下、前記遊離脂肪酸と前記グリセリド混合物との比を約7:1〜約1:1で反応させるステップ;(b)触媒を除去するステップ;(c)過剰な遊離脂肪酸を蒸留除去するステップ;(d)前記油脂を脱色する任意選択のステップ;および(e)ステップ(d)の生成物を脱臭する任意選択のステップ。トリグリセリド混合物のランダム化は、塩基性または酸性触媒を用いて化学的に、または非選択性リパーゼを用いて酵素的に行うことができる。
【0069】
特に好ましい実施形態によって本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の態様】
【0070】
栄養面で利点を有しつつ製造の安価なHMF代用物を研究した結果、本発明者らは、sn−2脂肪酸の50%未満が飽和脂肪酸であることを特徴とする新規な脂肪ベース組成物を作成した。これらの新規なHMF代用物は、パルミチン酸含有量が比較的に少ないトリグリセリドをエステル交換することで得られる。脂肪ベース組成物は、HMFに類似した全飽和脂肪酸(特にパルミチン酸)含有量であり、かつsn−2飽和脂肪酸(実質的にはパルミチン酸)対全飽和脂肪酸(パルミチン酸)比が33%より高く、好ましくは43.5%未満、より好ましくは40%未満であることを特徴とする、脂肪混合物(最終的には、調製粉乳成分として直ちに使用可能である)の調製に用いることができる。この脂肪ベース組成物、その調製方法、およびそのさまざまな使用が、本発明の第1の態様を構成する。
【0071】
従って第1の実施形態において本発明は、先行技術に記載したものほどには出発原料のパルミチン酸が多くなく、トリグリセリド原材料として、パルミチン酸含有量が約50%で全飽和脂肪酸含有量が60%未満である植物油の組み合わせを用いる、エステル交換法による濃縮脂肪の製造に関する。2種のトリグリセリド出発原料例の組成を、表1に示す。
【表1】

【0072】
これらの原材料を、エステル交換法における出発原料として用いて、好適な特異的1,3−リパーゼを使用して脂肪ベース組成物を生成し、次にこれを用いて上記したようなHMF代用物(代替物)を生成することができる。これらの代用物は、33%より高いsn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比を有するという限られた部分でHMFと類似しており、その結果、乳児におけるカルシウムの吸収とエネルギー源として用いられる脂肪酸の吸収とが向上する。これら本発明のHMF代用物は、調製粉乳に用いられる植物油の単純な混合物に比べてカルシウム吸収が向上しており、好ましくは最大比が1:3(33%)のsn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比を有しており、そして従来技術の脂肪ベース(sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比が50%を超えるものなど)から得られるHMF代用物と比較して安価に製造される。
【0073】
上で説明したパルミチン酸量の少ない原材料トリグリセリドは、エステル交換(後述)の前にランダム化してもよいし、さらに、比較的多い量のオレイン酸を含む遊離脂肪酸混合物と、実施例1のように1.5:1(FFA:トリグリセリド)の比で反応させるか、実施例2のように1:1の低い比で反応させてもよい。なお先行技術の組成物では、概して5:1〜3:1(FFA:脂肪)の比である。実施例1および2でトリグリセリドから生成した脂肪ベースの脂肪酸組成物(FAC)を、表2に示す。
【表2】

【0074】
略号:FAC−脂肪酸組成物; SAFA−飽和脂肪酸; FFA−遊離脂肪酸
両方の実施例において、得られる脂肪ベースは、sn−2飽和脂肪酸(SAFA)含有量が50%未満であり、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比が50%未満である。
【0075】
これらの脂肪ベースを、さらに植物油と混合して、sn−2飽和FA対全飽和FA比が33%より高く(実施例2の脂肪ベースを用いた場合39.3%)、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸の比が約44%(実施例2の脂肪ベースを用いた場合44.2%)である最終HMF代用物/代替物を生成することができる。
【0076】
表3および4は、実施例2の脂肪ベースに混合する植物油の詳細と、混合物の組成とを示す。HMFでの含有量に匹敵する全パルミチン酸量は、22%である。
【表3】

【表4】

【0077】
従ってこの態様において本発明は、トリグリセリドが、パーム油とエステル交換したパームステアリン、ナタネ油とエステル交換したパームステアリンなどの混合物である方法と、それに使用されるトリグリセリド組成物とを提供する。得られるトリグリセリド出発原料の典型的な脂肪酸組成は、全脂肪酸のうち60%未満、好ましくは約48〜約57%が飽和脂肪酸である。この段階で、sn−2位にあるSAFAと全SAFAとの最大比は約1:3(33%)である。用いられる遊離脂肪酸(FFA)は、オレイン酸に富み飽和脂肪酸の量が少ない脂肪酸源である。典型的な数値は、C16:0が2〜5%、C18:1が60〜80%、C18:0が1〜4%である。可能な脂肪酸源は、ナタネ脂肪酸、パームナッツ油C18画分の脂肪酸、オレイン酸に富むヒマワリ油FFAなどである。少なくとも2種の異なる脂肪酸源の組合せも、可能である。トリグリセリド(TAG)とFFAとの比は、通常、約40:60(TAG:FFA)〜約50:50である。
【0078】
sn−1位およびsn−3位の不飽和脂肪酸を強化するのに用いられる脂肪酸は、ここで例示するように、遊離脂肪酸由来のものであってもよいが、脂肪酸のアルキルエステル、好ましくはメチルまたはエチルエステル、およびグリセリドエステルに由来するものであってもよい。
【0079】
更なる態様において本発明は、トリグリセリド源と比較的少量の遊離脂肪酸とのエステル交換反応により生成した脂肪組成物に関する。加えてこの遊離脂肪酸源は、オレイン酸とラウリン酸との両方に富んでいる。エステル交換反応において大幅に過剰な不飽和脂肪酸を用いることで脂肪ベースが生成されることが、先行技術から知られている。脂肪に対して5倍量までの過剰なFFAが、用いられている。ほとんどの場合、脂肪に対して3:1または2:1で過剰となるFFAが、用いられている。すべての場合において、これらの脂肪酸混合物は、オレイン酸とその他のC18不飽和脂肪酸に富んでいた。これらの脂肪酸の混合物は、飽和脂肪酸、特にラウリン酸を含んでいなかった。本発明ではFFAと脂肪との比として1.5:1〜1:1を、連続床バッチシステムにおいて用いる。その上さらに、ラウリン酸を含む脂肪酸混合物を使用すると、不溶性カルシウム飽和脂肪複合体が形成される可能性を増やすことなく、sn−2飽和脂肪酸対全飽和脂肪酸比を、比較的低く保つことができる。これは、ラウリン酸は飽和しているがC16以上の長い飽和脂肪酸に起こるような不溶性カルシウム複合体を形成しないためであると考えられている[TantibhedhyangkulおよびHashim (1978) Pediatrics. 61(4):537-45;FinleyおよびDavidson (1980) Pediatrics. 65(1):132-8;Lien (1994) J. Pediatr. 125(5):S62-8;Lien他 (1997) J Pediatr Gastroenterol Nutr. 25(2):167-74].
従って第2の態様において本発明は、ラウリン酸も比較的多く(3%以上)含む、オレイン酸に富む複数の脂肪酸を低重量または等重量で混合したものを用いることを特徴とする濃縮脂肪ベースを調製する方法に関する。トリグリセリドは、多量の(好ましくは70%を超える)パルミチン酸と、極少量のリノレン酸とを含んでいる。
【0080】
本実施形態においてさらに、パルミチン酸に富んだトリグリセリドを、後述する標準的な化学的または酵素的エステル交換法によってランダム化してもよい。
【0081】
本発明のこの態様において、パルミチン酸に富んだトリグリセリドを、ラウリン酸含有量が比較的多い脂肪酸混合物と反応させ、これによってsn−2SAFA対全SAFA比を低下させる。一方、高いsn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比を有する脂肪ベースから得た類似の混合物と比較して、高いsn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比が維持され、かつ乳児によるカルシウムと脂肪酸の摂取に悪影響が及ばない(上記参照)。
【0082】
エステル交換法における脂肪酸とトリグリセリドの比は、1.5:1(実施例3、表5)〜2:1(実施例4、表6)である。
【表5】

【表6】

【0083】
実施例3および4からわかるように、得られる脂肪ベースはsn−2SAFA対全SAFA比が43.5未満であり、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比が約50%である。
【0084】
トリグリセリドは、概して、最大80%のパルミチン酸を有する、低いヨウ素価(IV)のパームステアリンである。トリグリセリドは、パーム油とエステル交換したパームステアリンと、ナタネ油、パーム油等とエステル交換したパームステアリンとの混合物であってもよい。トリグリセリドのsn−2SAFA対全SAFAの比は、最大33%である。
【0085】
遊離脂肪酸は、オレイン酸に富み、C14以上の飽和長鎖脂肪酸の量が少なく、ラウリン酸で強化された脂肪酸源である。典型的な数値は、全脂肪酸のうちC16:0が2〜5%、C18:1が60〜80%、C18:0が1〜4%、C12が5〜30%である。可能な脂肪酸源は、ナタネ脂肪酸、パームナッツ油C18画分の脂肪酸、ラウリン油(例えばパームナッツ油およびヤシ油)、オレイン酸に富むヒマワリ油遊離脂肪酸などである。2種以上の異なる脂肪酸源の組合せも可能である。
下記の表7は、実施例4の脂肪ベースに、表に詳述する植物油を添加した、混合物の調製を例示する。実施例で調製した混合植物油は、脂肪ベースと混合する前に、ランダム化した(後述)。
【0086】
得られる混合物の脂肪酸組成を、表8に示す。混合物のsn−2SAFA対全SAFA比は、37%であり、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比は、44%である。従ってこの混合物は、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比、全パルミチン酸含有量および結果として生ずるカルシウム摂取への寄与について、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比が顕著に高い脂肪ベースから得られる類似の混合物に匹敵する。
【表7】

【表8】

【0087】
さらなる実施形態において本発明は、植物油または他の油と事前に混合することなく調製粉乳の脂肪画分として用いることができ、またHMFに類似した全飽和脂肪酸(特にパルミチン酸)含有量であり、かつsn−2飽和脂肪酸(パルミチン酸)対全飽和脂肪酸(パルミチン酸)比が33%より高く、乳児栄養に必要とされる必須脂肪酸を全て含むことを特徴とするエステル交換脂肪生成物に関する。
【0088】
さらなる態様において本発明は、好適な脂肪ベースを得て次いで他の成分と混合するということを必要としない、上述した混合物に類似した脂肪酸組成とsn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比およびsn−2SAFA対全SAFA比とを有する、HMF代用物の直接生産に関する。本発明のこの態様によると、エステル交換の生成物は、脂肪酸組成および比が植物油の単純混合物と比較して改善され、その結果カルシウムおよび脂肪酸摂取が向上した調製粉乳用の最終HMF代替物として用いることができる。
【0089】
これは、好適なトリグリセリド混合物(本明細書に記載するように反応前にランダム化してもよい)を、多いオレイン酸含有量とHMFのsn−1、3脂肪酸プロファイルを実質的に模倣するように設計された全脂肪酸プロファイルとによって特徴付けられる脂肪酸混合物と反応することによって得られる。トリグリセリドは、所望のHMF代用物の標的とする等級やHMF類似レベルに応じて、多いパルミチン酸含有量にも、(上記したように)少ないパルミチン酸含有量にもなりうる。
【0090】
エステル交換に用いられる脂肪酸混合物としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸およびリノール酸などのモノ−/ジ−不飽和脂肪酸、ならびにリノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸などのポリ不飽和脂肪酸などのC8〜C24脂肪酸が挙げられる。
【0091】
所望の脂肪酸混合物は、表9に示すように植物油および脂肪を混合して得られる。これは、粗トリグリセリド源の一例である。このトリグリセリドは、標準的な方法でグリセロールおよび遊離脂肪酸に分離される。派生する遊離脂肪酸の組成は、粗トリグリセリドの組成と同一である。
【0092】
エステル交換反応における脂肪酸混合物とトリグリセリドとの比は、5:1〜1:2、好ましくは3:1〜1:1とすることができ、エステル交換反応は、好ましくは固定化されて1,3リパーゼ活性を有する生体触媒を用いて、連続床法または固定床法によって行うことができる。
【0093】
この方法を用いて、出願人による前述の国際特許出願公開番号WO2004/036987および欧州特許出願公開第209327号に記載される生成物(異なる種類の混合物)を得ることができる。
【0094】
得られるHMF代用物は、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比が33%以上、好ましくは40%以上、最大80%のものであってもよい。
【0095】
下記の表10は、実施例5(表9)の遊離脂肪酸混合物とランダム化パーム油とを1.2:1の比で用いて生成したHMF代用物を例示する。HMF代用物のsn−2SAFA対全SAFA比は、34.5%であり、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比は、45.3%である。従ってこの組成物は、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸、全パルミチン酸含有量および結果として生ずるカルシウム摂取への寄与について、脂肪ベースから得られる類似の混合物に匹敵する。
【表9】

【表10】

【0096】
さらなる態様において本発明は、上で得られた脂肪ベーストリグリセリド出発原料のランダム化、および脂肪ベースと混合する前の混合油のランダム化に関する。本発明のこれら両方の態様は、以下に詳細に例示説明する大きな利点がある。なおランダム化自体は公知の方法であるが、(特に乳児、幼児、小児、子供用の)栄養食品製造を目的としたトリグリセリド出発原料のランダム化や、調製粉乳の調製に用いられる混合油のランダム化については、これまでに報告がない。これは、本願において示される独自の成果である。
【0097】
脂肪ベース組成物調製の出発原料として用いられる、上で得られたトリグリセリドは、好ましくは標準的なエステル交換法で、酸性または塩基性触媒(例えばナトリウムメトキシド)を用いて化学的に、または非選択性リパーゼを用いて酵素的にランダム化する。上記したように、ランダム化することによって、sn−2位にある飽和脂肪酸が、脂肪混合物中の飽和脂肪酸パーセントに達する。sn−2飽和脂肪酸を増加させることで、sn−2飽和脂肪酸に富んだ脂肪ベースが得られ、従ってHMF代用物混合物中で量の少ない脂肪ベースを利用することができるので、費用が大幅に節約できる。
【0098】
例えば標準的パーム油は、全脂肪酸のうち約40%がC16で、全C16のうち5〜20%のC16のみがsn−2位においてエステル化されている。パーム油のランダムエステル交換反応を行うと、全C16のうち33%のC16が、sn−2位に結合する。
【0099】
別の例としてパームステアリンIV15が挙げられ、全脂肪酸のうち79%がC16であり、そのうち27.4%のみがsn−2位においてエステル化されている。ナトリウムメトキシドを用いた化学的ランダム化の結果得られる生成物は、全脂肪酸のうち79%がC16であり、全C16のうちsn−2位においてエステル化されたC16が、33%である。
【0100】
下記の表11は、ランダム化パームステアリンを用いて得た脂肪ベースと、非ランダム化パームステアリンを用いて得た脂肪ベースを比較している。ランダム化および非ランダム化パームステアリンIV15はそれぞれ、パームステアリン:遊離脂肪酸=1:4として、市販のオレイン遊離脂肪酸と反応させた。反応終了後、触媒を分離し、蒸気蒸留を用いて遊離脂肪酸を除去し、トリグリセリド画分を分析した。表11は、非ランダム化パームステアリンを用いると、全脂肪酸のうち29.8%がC16であり、そのうち63.1%のみがsn−2位においてエステル化されている脂肪ベースが得られることを実証している。一方、ランダム化パームステアリンを用いると、全脂肪酸のうちのC16の割合と、全C16のうちsn−2位においてエステル化されたC16の割合が、それぞれ32.2%と68.1%に増加する。
【表11】

【0101】
トリグリセリド出発原料をランダム化すると、本発明に記載する脂肪ベースのほかにも、より良質な脂肪ベースを生成できるという利点がある。従って別の実施形態において本発明は、粗トリグリセリド源を化学的にまたは酵素的にランダム化する、脂肪ベース組成物を調製する方法に関する。
【0102】
混合に用いられる混合植物油は、脂肪ベース組成物と混合する前に化学的または酵素的にランダム化されているのが好ましい。ランダム化処理により、油または脂肪の脂肪酸が、グリセロール骨格上の3個のsn位の間でランダムに分配される。従って植物油の低いsn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比が、33%まで増加する。ランダム化処理は、特定の用途に合わせて物理的特性を変える(例えば脂肪の融点を変える)ことを主な目的として、様々な油や脂肪に対して当分野で日常的に行われている。しかし下記に述べるように本発明のこの態様においては、混合油のsn−2飽和脂肪酸対全飽和脂肪酸比を改善して、混合油が混合物のsn−2飽和脂肪酸対全飽和脂肪酸比に与えるマイナスの影響を最小化する目的で、ランダム化を行う。
【0103】
混合油の全C16のうちsn−2位にあるC16の割合を増加させることで、より少量の脂肪ベースで、特定のC16パーセントと特定のsn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比とを得ることができる。大量の脂肪ベースを使用する必要があるということが、脂肪混合物を調製する際の費用面での主な問題の一つであるので、混合油のランダム化によって、単純かつ効率よく費用が節減される。表12は、C16を約21%含みそのうち42%がsn−2位にエステル結合した典型的な調合乳を得るには、混合油をランダム化していない場合、実施例2の脂肪ベースの65%が必要であることを示している。表13は、C16を21%含みそのうち42%がsn−2位にエステル結合した調合乳を得るためには、混合油をランダム化した場合、同じ脂肪ベースを47%しか必要としないことを示している。脂肪ベース必要量のこの顕著な差は、ランダム化混合油の使用が費用削減に重要であることを明示している。
【表12】

【表13】

【0104】
重要なことに、表12の混合物は表3のものと比較してC16の割合が低く、sn−2パルミチン酸対全パルミチン酸比が低いので、表12の混合物の製造に必要な実施例2の脂肪ベースは、表3の混合物の製造に必要な脂肪ベースより少ない。
【0105】
混合油のランダム化は、本発明に記載する脂肪ベース以外の脂肪ベースからなる混合物にも利点がある。欧州特許出願公開第0209327号または第0495456号あるいは出願人による上述の国際特許出願公開番WO2004/036987に記載の脂肪ベースを、天然植物油ではなくランダム化植物油と混合してもよい。本発明のこの態様を用いることで、上記した用途と同一のC16パーセント、同一のsn−2パルミチン酸残基対全パルミチン酸残基比を、より少ない量の脂肪ベースで得ることができ、従って混合物の製造費を節約することができる。
【0106】
表14は、欧州特許出願公開第0209327号の混合物2の組成物(C16を26%含みそのうち52.6%がsn−2位にエステル結合しているもの)を得るためには、欧州特許出願公開第0209327号で用いられている非ランダム化混合油を用いた場合、同特許の試料1の脂肪ベースの50%を必要とすることを示している。表15から明らかなように、C16を26%含みそのうち52.6%がsn−2位にエステル結合しているものを得るためには、本発明のランダム化混合油を用いた場合、欧州特許出願公開第0209327号の試料1の脂肪ベースを43%しか必要としない。脂肪ベース必要量のこの顕著な差(14%節約)は、本発明で記載した脂肪ベースおよび本発明の主題とする脂肪ベース以外の脂肪ベースから得た混合物についても、ランダム化混合油の使用が費用削減に重要かつ有利であることを実証している。
【0107】
表16は、欧州特許出願公開第0209327号(EP0209327)に記載の混合物(混合物1〜4)において、ランダム化混合油を用いた場合、全パルミチン酸残基のうちのsn−2パルミチン酸残基の割合を向上させることが可能であることを示している。
【表14】

【表15】

【表16】

【0108】
混合油のランダム化は、費用効果のほかに、とりわけ重要な側面を有する。天然油と比較して、ランダム化混合油では、γ−リノレン酸(C18:3)およびリノール酸(C18:2)の分布が、HMFに非常によく似たものとなる。
【0109】
ナタネ油およびダイズ油は、植物性リノレン酸の主要源であり、調製粉乳の製造に一般に的に用いられている。表17は、リノール酸およびリノレン酸のsn−2分布について、HMF、天然およびランダム化ナタネ油、天然およびランダム化ダイズ油における違いを示す。ナタネ油では、45〜61%のリノレン酸残基と、32〜47%のリノール酸残基がsn−2位でエステル化している。ナタネ油におけるリノレン酸とリノール酸の分布は、HMFにおけるものとは大きく異なっている。HMFでは、5〜20%のリノレン酸と、20〜23%のリノール酸のみが、sn−2位でエステル化されている。ナタネ油をランダム化すると、33%のγ−リノレン酸と33%のリノール酸がsn−2位に結合し、従って脂肪代用物のHMFに対する類似性が向上している。
【0110】
ダイズ油において、リノレン酸の分布(27〜29%のγ−リノレン酸がsn−2位に結合)は、ランダム化ダイズ油の分布(33%)に類似している。
【0111】
しかし天然ダイズ油では、40〜43%のリノール酸が、sn−2位でエステル化しており、一方ランダム化ダイズ油では、わずかに33%のリノール酸が、sn−2位でエステル化している。HMFでは、わずかに20〜23%のリノール酸残基が、sn−2位に結合している。従って天然ダイズ油の代わりにランダム化ダイズ油を用いると、類似のγ−リノレン酸分布が維持されつつ、リノール酸分布が、HMFにおける分布とさらに似たものとなる。
【表17】

【0112】
混合植物油のランダム化は、塩基性または酸性触媒(例えばナトリウムメトキシド)を用いて化学的に、または非選択性リパーゼを用いて酵素的に、標準的なエステル交換法によって行うことができる。
【0113】
本発明の様々な態様のHMF代用物はいずれも、調製粉乳の脂肪画分として、また離乳食、幼児用食、小児用食、若年用食、および大人用栄養分の脂肪画分として、用いることが可能である。
【0114】
本明細書において「脂肪」および「脂質」の語は、交換可能に用いられる。
【0115】
本発明の範囲において、脂質は、トリグリセリドとその派生物(モノ−およびジ−グリセリドなど)を含む。
【0116】
本明細書において「脂肪酸」、「脂肪酸アシル」および「脂肪酸残基」(および特定の脂肪酸を言及する全ての同等表現)の語は、交換可能に用いられる。
【0117】
本明細書において「調製粉乳」の語は、調製粉乳(新生児から6ヶ月の乳児用)、フォローアップ調合乳(6〜12ヶ月の乳児用)および成長用調合乳(1〜3歳の幼児用)を含む。
【0118】
本発明を開示および説明してきたが、本明細書に記載する本発明は、特定の実施例、方法ステップおよび材料に限定されるものではなく、そのような方法ステップおよび材料の改変は、ある程度可能であることは理解されよう。また本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明する目的のみに用いられているのであって、限定することを企図しないことは理解されよう。本発明の範囲は、付属の請求の範囲およびその均等物によってのみ限定される。
【0119】
なお、本明細書および請求の範囲で用いられる単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その(the)」は、文脈から明らかとされる場合を除いては、複数形を含むものとする。
【0120】
本明細書および請求の範囲を通じて、文脈から明らかとされる場合を除いては、「含む(comprise)」の語と、その活用形「含む(comprises)」「含んでいる(comprising)」などは、言及したその完全なるもの(integer)またはステップ、あるいはその完全なるものからなる群またはステップ群を包括することを意味するが、その他全ての完全なるものまたはステップあるいは完全なるものからなる群またはステップ群を除外するわけではないことは理解されよう。
【0121】
本明細書における実施例は、本発明の態様を実施するにあたり、本発明者らが用いた技術の代表例である。これらの技術は、本発明を実施する上で好ましい実施形態の典型例であり、本発明の開示に照らし合わせて、本発明の精神および本発明の意図する範囲内で、様々な改変が可能であるということが、当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
sn−2位に結合した脂肪酸残基の50%未満が飽和しており;および/または
グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が飽和脂肪酸残基の総量の約43.5%未満である
ことを特徴とする酵素的に調製した植物由来トリグリセリド混合物を含む脂肪ベース組成物。
【請求項2】
前記グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸の実質的に全てがパルミチン酸残基であることを特徴とする請求項1に記載の脂肪ベース組成物。
【請求項3】
前記グリセロール骨格のsn−2位にある飽和脂肪酸の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%がパルミチン酸残基であることを特徴とする請求項2に記載の脂肪ベース組成物。
【請求項4】
sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも40%、好ましくは45〜65%がオレイン酸部分であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物。
【請求項5】
sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも45%、好ましくは54〜65%がオレイン酸部分であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物。
【請求項6】
sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも35%、好ましくは40〜52%がオレイン酸部分であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物。
【請求項7】
sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも5%、好ましくは7〜15%がリノール酸部分であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物。
【請求項8】
sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも9%、好ましくは10〜20%がリノール酸部分であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物。
【請求項9】
sn−1位およびsn−3位にある不飽和脂肪酸部分の少なくとも4%、好ましくは5〜10%がリノール酸部分であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物。
【請求項10】
sn−1位およびsn−3位にある全脂肪酸部分の約0.2〜15%、好ましくは約7〜14%、より好ましくは約11〜12.5%がラウリン酸部分であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物。
【請求項11】
少なくとも25%または少なくとも30%の請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物とそれぞれ最大75%または最大70%の少なくとも1種の植物油との混合物を含む代用ヒト乳脂組成物であって、前記植物油は任意選択でランダム化されていることを特徴とする組成物。
【請求項12】
前記植物油は、ダイズ油、パーム油、カノーラ油、ヤシ油、パームナッツ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油およびナタネ油からなる群より選ばれることを特徴とする請求項11に記載の代用ヒト乳脂組成物。
【請求項13】
全パルミチン酸残基の約33〜45%、好ましくは約36〜43%、より好ましくは約40%が、グリセロール骨格のsn−2位に結合していることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の代用ヒト乳脂組成物。
【請求項14】
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の代用ヒト乳脂組成物または請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物を含む調製粉乳。
【請求項15】
少なくとも1種のタンパク質成分および少なくとも1種の脂肪成分を含む調製粉乳であって、
前記脂肪成分は請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の代用ヒト乳脂組成物または請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物であり、
調製粉乳はビタミン、ミネラル、ヌクレオチド、アミノ酸および炭水化物を任意選択でさらに含む
ことを特徴とする調製粉乳。
【請求項16】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物を調製する方法であって、
(a)全脂肪酸のうち好ましくは60%未満、より好ましくは53%未満の低い飽和脂肪酸含有量、好ましくはパルミチン酸含有量を有するトリグリセリド混合物であって、化学的または酵素的に任意選択でランダム化してもよいトリグリセリド混合物と、オレイン酸に富んだ遊離不飽和脂肪酸源とを、不溶性触媒の存在下、前記遊離脂肪酸と前記グリセリド混合物との比を約1.5:1〜約1:1で反応させるステップ;
(b)触媒を除去するステップ;
(c)過剰な遊離脂肪酸を蒸留除去するステップ;
(d)前記油脂を脱色する任意選択のステップ;および
(e)ステップ(d)の生成物を脱臭する任意選択のステップ
を含む方法。
【請求項17】
前記脱臭するステップ(e)の前に、分留するステップを更に含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記トリグリセリド混合物は、飽和脂肪酸、好ましくはパルミチン酸を全脂肪酸のうち最大80%、好ましくは60%未満、より好ましくは48〜57%の量で含むことを特徴とする請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記遊離脂肪酸源は、約2〜5%のC16:0脂肪酸、60〜80%のC18:1脂肪酸および1〜4%のC18:0脂肪酸を含むことを特徴とする請求項16から請求項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物と少なくとも1種の植物油とを混合するステップを含む、請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の代用ヒト乳脂組成物を調製する方法であって、
前記脂肪ベース組成物と混合する前に、前記植物油を任意選択で化学的または酵素的にランダム化することを特徴とする方法。
【請求項21】
前記脂肪ベース組成物を、前記植物油と約0.4:1〜約4:1の比で混合して、
グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が、飽和脂肪酸残基の総量の約33%〜約43.5、好ましくは約43%、より好ましくは約40%である混合物を得ること
を特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記 脂肪ベース組成物を、前記植物油と約2.3:1〜約1:1の比で混合して、
グリセロール骨格のsn−2位に結合した飽和脂肪酸残基の量が、飽和脂肪酸残基の総量の約33%〜約40%である混合物を得ること
を特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物を調製する方法であって、
(a)全脂肪酸のうち好ましくは少なくとも70%未満、より好ましくは少なくとも80%の高いパルミチン酸含有量を有するトリグリセリド混合物であって、化学的または酵素的に任意選択でランダム化してもよいトリグリセリド混合物と、等重量またはより低い重量の、オレイン酸および炭素数14以下の飽和脂肪酸、好ましくはラウリン酸に富んだ遊離不飽和脂肪酸源とを、不溶性触媒の存在下、前記遊離脂肪酸と前記グリセリド混合物との比を約1:1〜約2:1で反応させるステップ;
(b)触媒を除去するステップ;
(c)過剰な遊離脂肪酸を蒸留除去するステップ;
(d)前記油脂を脱色する任意選択のステップ;および
(e)ステップ(d)の生成物を脱臭する任意選択のステップ
を含む方法。
【請求項24】
前記遊離不飽和脂肪酸源は、炭素数14以下の飽和脂肪酸、好ましくはラウリン酸を、全脂肪酸のうち約10%〜約25%の割合で含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記脱臭するステップ(e)の前に、分留するステップを更に含む請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記トリグリセリドは、全脂肪酸のうち少なくとも75%がパルミチン酸であることを特徴とする請求項24または請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記遊離脂肪酸源は、約5〜25%のC12:0脂肪酸、0.05〜2%のC14:0脂肪酸、1〜5%のC16:0脂肪酸、55〜75%のC18:1脂肪酸および1〜5%のC18:0脂肪酸を含むことを特徴とする請求項23から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ヒト乳脂の組成と実質的に類似した組成を有する脂質組成物を調製する方法であって、
(a)全脂肪酸のうち少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上のパルミチン酸含有量を有するトリグリセリド混合物であって、化学的または酵素的に任意選択でランダム化してもよいトリグリセリド混合物と、全遊離脂肪酸のうち10%未満、好ましくは5%未満のパルミチン酸を含む遊離不飽和脂肪酸源とを、不溶性触媒の存在下、前記遊離脂肪酸と前記グリセリド混合物との比を約5:1〜約1:1で反応させるステップ;
(b)触媒を除去するステップ;
(c)過剰な遊離脂肪酸を蒸留除去するステップ;
(d)前記油脂を脱色する任意選択のステップ;および
(e)ステップ(d)の生成物を脱臭する任意選択のステップ
を含む方法。
【請求項29】
C12:0脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜20%、好ましくは10〜15%;C14:0脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜15%、好ましくは5〜10%;C16:0脂肪酸を全脂肪酸のうち8〜30%、好ましくは20〜25%;C18:0脂肪酸を全脂肪酸のうち1〜6%、好ましくは3〜5%;C18:1脂肪酸を全脂肪酸のうち20〜50%、好ましくは30〜40%;C18:2脂肪酸を全脂肪酸のうち5〜30%、好ましくは10〜20%;C18:3脂肪酸を全脂肪酸のうち0.2〜4%、好ましくは1.5〜3%で含み;他の脂肪酸を、全脂肪酸のうち10%未満、好ましくは5%未満の量で含むことを特徴とする脂質組成物。
【請求項30】
調製粉乳用の代用ヒト乳脂組成物の調製における、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の脂肪ベース組成物の使用。
【請求項31】
調製粉乳の調製における、請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の脂肪組成物または請求項28に記載の方法により調製した脂肪組成物の使用。
【請求項32】
好適な脂肪ベース組成物と少なくとも1種の植物油とを混合するステップを含む代用ヒト乳脂組成物を調製する方法であって、
前記脂肪ベース組成物と混合する前に、前記植物油を化学的または酵素的にランダム化することを特徴とする方法。
【請求項33】
前記脂肪ベースは、C12:0脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜20%、好ましくは10〜15%;C14:0脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜15%、好ましくは5〜10%;C16:0脂肪酸を全脂肪酸のうち20〜55%含み、このうち38%を超える量がsn−2位でエステル化されている前記量;C18:0脂肪酸を全脂肪酸のうち1〜7%、好ましくは3〜5%;C18:1脂肪酸を全脂肪酸のうち25〜65%、好ましくは30〜40%;C18:2脂肪酸を全脂肪酸のうち2〜40%、好ましくは10〜20%;C18:3脂肪酸を全脂肪酸のうち0〜8%、好ましくは1.5〜3%で含み;他の脂肪酸を、全脂肪酸のうち8%未満、好ましくは5%未満の量で含む、構造脂質の混合物であることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記植物油は、ダイズ油、パーム油、カノーラ油、ヤシ油、パームナッツ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油およびナタネ油からなる群より選ばれることを特徴とする請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記脂肪ベース組成物と前記油とが好適な比、好ましくは約0.13:1〜約4:1の比で混合されることを特徴とする請求項32から請求項34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
調製粉乳の成分として用いる脂肪ベース組成物を調製する方法であって、
(a)好適な脂肪酸プロファイル、好ましくは全脂肪酸のうち約35%を超えるパルミチン酸含有量を有する、化学的または酵素的に任意選択でランダム化したトリグリセリド混合物と、全遊離脂肪酸の10%未満の量でパルミチン酸を含む好適な遊離不飽和脂肪酸源とを、不溶性触媒の存在下、前記遊離脂肪酸と前記グリセリド混合物との比を約7:1〜約1:1で反応させるステップ;
(b)触媒を除去するステップ;
(c)過剰な遊離脂肪酸を蒸留除去するステップ;
(d)前記油脂を脱色する任意選択のステップ;および
(e)ステップ(d)の生成物を脱臭する任意選択のステップ
を含む方法。

【公表番号】特表2008−538915(P2008−538915A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508414(P2008−508414)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000511
【国際公開番号】WO2006/114791
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(504263439)エンジィモテック リミテッド (5)
【Fターム(参考)】