説明

ヒト又は動物の器官を再構築するための予備的に血管形成された(praevaskularisierte)組織移植構築物

本発明は、ヒト又は動物の器官を再構築するための組織移植構築物に関する。この場合、
(a) 生物学的に適合性の無細胞の膜;及び
(b) 前記膜を貫通する微小血管内皮細胞、
を有し、前記膜内で前記微小血管内皮細胞からなる微小血管構造が形成されていることが考慮されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の器官を再構築するための組織移植構築物、前記組織移植構築物の製造方法並びに前記組織移植構築物を使用する方法に関する。本発明は、特に下部泌尿器器官、特に膀胱を再構築するための組織移植構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
ティッシュエンジニアリング(“tissue engineering”)の目的は、障害を持った、損傷した又は欠失した身体組織を生物学的に許容される代用材料に置き換えることである。現在のところ、組織再生の促進のために、細胞コーティング技術も、細胞コーティングしない技術も組織アーキテクチュアにおいて研究されている(非特許文献1)。細胞コーティング技術(又は細胞組織アーキテクチュア)は、in vitroで初期に培養された細胞で被覆された生物学的に分解可能な膜を利用し、その際、この細胞は天然のホスト組織のバイオプシーから得られている。この構成された移植組織は、次いで再生プロセスの継続のためにホスト中にもたらされる。細胞コーティングしない技術は、ホスト中への未被覆の生物学的に分解可能な材料のin vivoでの直接配置を含み、前記材料は次いで骨格として機能し、従ってin vivoでの自然な再生プロセスが行われる。これらの技術は組織再生を支援するものであり、この組織再生は興味のある器官の通常の胚発生に類似している。
【0003】
無細胞の生物学的材料は、細胞コーティングされた又は細胞コーティングされていない膜よりもin vivoでの組織再生の場合に良好な結果を示す(非特許文献2)。実際に、この生物学的に分解可能な材料は多様な器官の組織アーキテクチュアにおいて、天然の、分解可能でかつ多孔性の材料として使用されており、in vitroで培養した細胞との分子的な相互作用のための生物学的に特異的なシグナルを提供し、さらに移植後に目標組織の細胞と相互作用することは公知である。
【0004】
しかしながら、この移植物はいったんホスト中に移植された場合に、in vitroで表面上又はマトリックス中で成長した細胞(細胞コーティング技術)又は移植後にマトリックスに侵入した細胞(細胞コーティングしない技術)を生存させる能力に重大な障害がある。数立方ミリメートルを超える体積を有する組織片は、栄養素の拡散によっては生存できず、重要な栄養素及び酸素の供給のために毛細血管の存在が必要となることが明らかになった(非特許文献3)。従って、血管形成の遅れは移植失敗の原因となりえる。今日までにおける、移植技術の成功は、移植物の酸素及び栄養素に関する要求を満たすのにホストによる移植後の血管形形成で十分である、比較的薄い又は無血管の組織(例えば皮膚及び軟骨)に限定される(非特許文献4)。この血管形成は、より厚い、代謝に関して要求の高い器官、例えば心臓、脳及び膀胱に関する開発の際に重大な障害となっている。
【0005】
組織の骨格に予備的に血管形成できることは、基本的な治療学的な手法及び限定的な組織再生の回避による組織工学において意味のある進歩である。予備的に血管形成されたマトリックスは該マトリックスの血管形成を促進し、in vivoでの前記マトリックスの血液灌流及び前記マトリックスの生存を改善する。特に複雑な組織及び器官は、移植物の生存を保証しかつ生体人工器官を機能するようにするために、血管により養う必要がある(非特許文献5)。血管新生の方法は、内皮細胞からの新しい血管の形成である。血管形成(vasclogenesis)といわれるこの方法は、通常、胚発生の間に器官の形成の際に行われる(非特許文献6)。
【0006】
下部尿路(膀胱、尿管及び尿道)の再構築のための材料の予備的な血管形成が特に重要である。これらの器官は、血管により十分に養われる。この下部泌尿器の組織アーキテクチュアの細胞コーティング技術においては、今までは単に生物学的膜上での尿路上皮細胞及び筋細胞の培養に限定して試みがなされてきた(非特許文献1)。これらの細胞は小さな膀胱バイオプシーから容易に獲得することができる。
【0007】
どんな種類の内皮細胞が、in vivoに移植されるべき生物学的な骨格の予備的血管形成のために使用できるのかが現在の未解決の問題である。内皮細胞の表現型が血管及び器官に依存して著しく変化し、この組織特異性が器官の局所的な生理学において重要な役割を担うことは公知である(非特許文献4)。
【0008】
Schultheis et al.は、非特許文献7に、平滑筋細胞、尿路上皮細胞及び内皮前駆細胞が埋め込まれている生物学的無細胞のマトリックスを記載している。この前駆細胞は、血液細胞フラクションから得られた。組織移植構築物を製造するために、マトリックスに平滑筋細胞及び尿路上皮細胞で、次いで血液からの内皮前駆細胞でコーティングを施す。これらの細胞は、しかしながら前記マトリックス中に血管構造を形成することはできない。さらに、前記内皮前駆細胞は器官特異的ではない。これは、さらに成熟した内皮細胞ではない。
【非特許文献1】Alberti et al., 2004
【非特許文献2】Atala et al., 2000
【非特許文献3】Mooney et al.,1999
【非特許文献4】Jam et al., 2005
【非特許文献5】Mertsching et al., 2005
【非特許文献6】Risau et al., 1995
【非特許文献7】Biological vascularized matrix for bladder tissue engineering: matrix preparation, reseeding technique and short-term implantation in a porcine model, J. Urol. Jan 2005; 173(1): 276-80
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、先行技術による欠点を取り除くことである。特に、組織移植構築物は、膜を内皮細胞でコーティングする(及び膜内に血管構造を形成する)場合に、移植後の骨格中における周辺組織の迅速かつ良好な生成を可能にするか、又は膜を内皮細胞並びに他の器官特異的な細胞(例えば尿路上皮細胞、筋細胞及び/又は間質細胞)でコーティングする場合に、移植後にその中に含まれる細胞を良好に養うことができることを示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1,11及び28の特徴により解決される。本発明の有利な実施態様は、引用形式請求項の特徴から生じる。
【0011】
本発明の場合には、
(a) 生物学的に適合性の無細胞の膜;及び
(b) 前記膜を貫通する微小血管内皮細胞

を含み、前記膜内で微小血管内皮細胞の微小血管構造が形成されている、ヒト又は動物の器官を再構築するための組織移植構築物が考慮されている。
【0012】
この微小血管内皮細胞は、好ましくは器官特異的な微小血管内皮細胞である。
適用された微小血管内皮細胞から形成されているこの微小血管構造により、前記構築物の移植後に、下部泌尿器の残りの細胞、特に尿路上皮細胞、筋細胞、間質細胞への栄養素及び酸素の供給が可能となる。同様に、移植後に前記構築物中に侵入する他の細胞も養われる。
【0013】
本発明による組織移植構築物は、移植前に膜に適用されかつそこで培養されている他の組織特異的な細胞、例えば尿路上皮細胞及び/又は平滑筋細胞及び/又は間質細胞を含むことができる。従って、これらの細胞も組織移植構築物の移植後に微小血管構造により養われる。
【0014】
従って、本発明はまず、組織移植構築物の表面だけでなくその構築物内の細胞を養うことが可能である組織移植構築物を提供する。従って、前記構築物は器官の再構築のために特に適している。
【0015】
本発明は、特に膀胱の器官特異的な微小血管内皮細胞(微小血管膀胱内皮細胞)を、下部泌尿器の再構築のために使用されるべきマトリックスの予備的血管形成のために使用する。この微小血管膀胱内皮細胞は、この器官からなる僅かなバイオプシー材料から単離することができ、かつ多様な生物学的な無細胞マトリックス中で内皮血管ネットワークを形成するために使用することができた。好ましいマトリックスは、無細胞の膀胱マトリックス、無細胞の尿道マトリックス、無細胞の膀胱粘膜下組織、小腸粘膜下組織、無細胞の皮膚マトリックス、無細胞の大静脈マトリックスである。
【0016】
微小血管膀胱内皮細胞の他にさらに、真皮性の微小血管内皮細胞を使用することもできる。真皮性の微小血管内皮細胞は、下部泌尿器又は他の器官の再構築のために利用することができる組織移植構築物の製造のためにも使用することもできる。しかしながら、膀胱の再構築のために、微小血管膀胱内皮細胞の使用はこの組織特異性に基づき有利である。
【0017】
本発明は、特に多様な生物学的マトリックス上での微小血管内皮細胞のin vitro培養及び軟部組織、特に膀胱、尿管及び尿道の再構築のための安定な血管ネットワーク構造の形成を可能にする。微小血管膀胱内皮細胞を有するマトリックスの予備的血管形成を誘導するために、血管形成成長因子が準備された培養系中で培養が行われる。製造された組織移植構築物中の血管構造の形成は、膀胱間質細胞、骨髄間質前駆細胞及び膀胱尿路上皮細胞により、特にこれらの細胞でコンディショニングされている培地により誘導される。この間質細胞、骨髄間質前駆細胞及び上皮細胞、例えば尿路上皮細胞がin vitroでの血管形成の誘導に関連することは公知である(Velazquez et al., 2002; Markowicz et al., 2005; Thompson et al., 2006)。
【0018】
本発明は、しかしながら、下部泌尿器の再構築のための組織移植構築物に限定されるものではなく、他の器官、特に軟部器官にも転用することができる。
本明細書において使用される場合に「器官特異的」という語句は、再構築されるべき同一の細胞又は同じ器官の細胞が膜に適用されることであると解釈される。例えば膀胱が再構築されるべき場合には、器官特異的な微小血管内皮細胞とは膀胱からの微小血管内皮細胞であると解釈される。
【0019】
器官とは、身体の機能的な単位である。好ましい例は、膀胱である。
【0020】
「微小血管構造」という語句は、膜の内部での毛細管構造の形成であると解釈される。毛細管構造は、好ましくは、微小血管内皮細胞から形成されたストランド状の及び/又は小管状のユニットからなる。この小管状のユニットは、好ましくは完全に形成された管腔(Lumina)を有する。このストランド状の及び/又は小管状のユニットは、好ましくは相互に架橋されている。本発明による構築物を再構築されるべき器官中へ移植しかつ前記構築物の微小血管構造がin vivoの血管構造と結合した後に、構築物の内皮細胞及び他の細胞は養われることが保証される。この構築物は、従って、この微小血管構造によって移植直後に栄養素及び酸素が供給される。この血管形成のプロセスは、血管新生とも言われる。予備的血管形成とは、移植前にすでに微小血管構造が存在していることを意味する。
【0021】
「膜」及び「マトリックス」という語句は、ここでは他に記載がない限り、同義に使用される。この膜は、細胞外マトリックス(ECM)、特にその成長因子の成分を含有しているのが好ましい。好ましくは、この膜は生物学的な膜である。この膜は、三次元的な生物学的な骨格を形成し、その骨格中に培養の間に設けられた微小血管内皮細胞が侵入している。
【0022】
この膜は、好ましくは無細胞のヒト又はブタの膀胱、無細胞のヒト又はブタの膀胱粘膜下組織、無細胞のヒト又はブタの真皮、無細胞のヒト又はブタの小腸、無細胞のヒト又はブタの大動脈又は無細胞のヒト又はブタの尿道である。この膜はコラーゲンを含有する。好ましくは、この膜は機械的に安定である。
【0023】
この膜の外部表面積は、好ましくは40cmまで大きく、それより大きくてもよい。この膜の厚さは、有利には100μm〜100mmである。
【0024】
再構築とは、ヒト又は動物の器官、特に膀胱、尿道又は尿管の、損傷された又は疾病を有する領域の置き換えを意味する。
【0025】
「侵入」という語句は、ここでは、微小血管内皮細胞が膜の表面から膜の内部へ入り込んで、膜の内部に微小血管内皮細胞が定着することを意味する。「侵入」という語句は、この場合「浸潤」という語句に相当する。
【0026】
間質性誘導とは、間質により誘導された微小血管内皮細胞の増殖であると解釈される。好ましくは、この間質性誘導は、膀胱間質細胞及び骨髄間質前駆細胞を用いた誘導である。
【0027】
上皮性誘導とは、上皮細胞により誘導された微小血管内皮細胞の増殖であると解釈される。下部尿路の場合には、この上皮細胞は尿路上皮細胞であるため、尿路上皮性誘導について述べる。
【0028】
上皮性−間質性誘導とは、間質細胞と上皮細胞との混合物により誘導された微小血管内皮細胞の増殖であると解釈される。好ましくは、この尿路上皮性−間質性誘導は尿路上皮細胞−膀胱間質細胞による誘導である。下部尿路の場合には、この上皮細胞は尿路上皮細胞であるため、尿路上皮性−間質性誘導について述べる。
【0029】
膀胱間質細胞と膀胱尿路上皮細胞とからなる混合物は、以後尿路上皮−膀胱間質細胞、尿路上皮−間質細胞、間質−尿路上皮細胞又は膀胱尿路上皮−間質細胞という。
【0030】
膀胱は、粘膜(尿路上皮細胞)及び間質(線維芽細胞、平滑筋細胞及び血管内皮細胞)からなる。
【0031】
本発明による組織移植構築物は、好ましくは下部尿路、特に好ましくは膀胱、尿道又は尿管の再構築のために使用される。この場合に、再構築されるべきヒト又は動物の器官は膀胱であるが、他方で器官特異的な微小血管内皮細胞は、微小血管膀胱内皮細胞及び/又は真皮性の微小血管内皮細胞である。
【0032】
より好ましくは、この微小血管内皮細胞は自己由来の微小血管内皮細胞であり、つまりこの微小血管内皮細胞は患者の組織から単離され、前記患者の器官は本発明による組織移植構築物で再構築される。
【0033】
同様に、微小血管内皮細胞を皮膚から単離し、かつこれを膜の予備的血管形成のために使用できることが有利である。
【0034】
本発明の場合には、さらに、
(a) 微小血管内皮細胞を単離する工程、
(b) 前記微小血管内皮細胞を生物学的に適合性の無細胞の膜に設ける工程、及び
(c) 前記生物学的に適合性の無細胞の膜に設けられている微小血管内皮細胞を、間質性誘導又は上皮性−間質性誘導のもとで培養する工程、
を含む、ヒト又は動物の器官を再構築するための組織移植構築物の製造方法が提供される。
【0035】
この間質性誘導は、好ましくはヒト又は動物の膀胱間質細胞を使用して又はヒト又は動物の骨髄間質前駆細胞を使用して実施される。
【0036】
間質性誘導のもとでの培養は、好ましくはコンディショニングされた培地を用いて実施され、その際、このコンディショニングされた培地はヒト又は動物の膀胱間質細胞又はヒト又は動物の骨髄間質前駆細胞を用いてコンディショニングされている。コンディショニングされた培地は、コンディショニングされていない培地を、ヒト又は動物の膀胱間質細胞又はヒト又は動物の骨髄間質前駆細胞と共に培養し、引き続き前記培地を膀胱間質細胞又は骨髄間質前駆細胞から上清として除去することにより得ることができる。このコンディショニングされた培地を、以後、間質性にコンディショニングされた培地又は間質細胞でコンディショニングされた培地という。
【0037】
この上皮性−間質性誘導は、好ましくは尿路上皮性−間質性誘導であり、これは尿路上皮−膀胱間質細胞を使用して実施される。
【0038】
上皮性−間質性誘導のもとでの培養は、特に好ましくはコンディショニングされた培地を用いて実施され、その際、このコンディショニングされた培地はヒト又は動物の上皮細胞、特に尿路上皮細胞及び膀胱間質細胞を用いてコンディショニングされている。コンディショニングされた培地は、コンディショニングされていない培地をヒト又は動物の上皮細胞と共に培養し、引き続き前記培地を上皮細胞及び間質細胞の混合物から上清として除去することにより得ることができる。
【0039】
上皮性誘導のもとでの培養は、特に好ましくはコンディショニングされた培地を用いて実施され、その際、このコンディショニングされた培地はヒト又は動物の上皮細胞、特に尿路上皮細胞を用いてコンディショニングされている。コンディショニングされた培地は、コンディショニングされていない培地をヒト又は動物の上皮細胞と共に培養し、引き続き前記培地を上皮細胞から上清として除去することにより得ることができる。
【0040】
この微小血管内皮細胞は有利に再構築されるべき器官の間質組織から得られる。これは、本発明の1つの実施態様においては、
(i) 前記間質組織をコラゲナーゼを用いて消化し、
(ii) 工程(i)において得られた混合物から、微小血管内皮細胞を、常磁性のレクチン結合粒子又は抗体結合粒子を用いて分離し、その前記抗体は血小板−内皮細胞−接着分子−1(PECAM 1)又はCD105に対するモノクロナール抗体であり、
(iii) こうして得られた微小血管内皮細胞を増殖させ、及び
(iv) 工程(iii)で得られた混合物から微小血管内皮細胞を常磁性のレクチン結合粒子又は抗体結合粒子を用いて分離し、その際、前記抗体は血小板−内皮細胞−接着分子−1(PECAM 1)又はCD105に対するモノクロナール抗体であり、そして、こうして得られた微小血管内皮細胞が、全ての分離された細胞の数を基準として少なくとも95%の純度を有する混合物であることにより、行うことができる。
【0041】
工程(ii)で残留した前記混合物の残留物は、特に好ましくは、コンディショニングされた培地の製造のために使用される。あるいは、前記混合物の残留物は、予備的に血管新生された膜で工程(c)に引き続き尿路上皮細胞と共に培養し、それにより複合的な活性の組織移植構築物を形成することができる。
【0042】
本発明は、本発明による予備的に血管新生された生物学的マトリックスを用いた下部尿路の再構築のための方法であって、組織生成がin vitroで始められる方法を提供し、その際、同時に、微小血管膀胱−内皮細胞の増殖が促進され、その微小血管形成が改善される。この本発明による組織移植構築物は、微小血管内皮細胞の他に、他の組織特異的細胞、例えば上皮細胞及び間質細胞を含むことができる。
【0043】
本発明のこの有利な結果は、発明者の次の知見に基づく:血管形成は、細胞外マトリックス(ECM)及び血管内皮細胞が関与し、かつ多様な血管形成因子により調節される、複合的な工程である。毛管状/小管状のネットワークを形成する能力は、内皮細胞(EC)の特別な機能であり、内皮細胞インバージョン、マイグレーション、増殖、小管形成及び前記構造間の接合からなる特別なカスケードの工程を必要とする(Cameliet et al., 2000; Yancopoulos et al., 2000; Blau et al., 2001; Ferrara et al., 1999; Keshet et al., 1999)。このように、内皮細胞は、前記内皮細胞を取り囲むマトリックスの微小環境からのシグナルにより導かれる(Berthod et al., 2006)。
【0044】
この微小血管形成及びその維持をin vitroで促進するために、好ましくは無細胞の膀胱マトリックス又は尿管マトリックスが使用され、このマトリックスは膀胱間質又は尿管間質の主成分を内皮細胞インバージョン及び内皮細胞分化のための生理学的マトリックスとして有している。同様に、他の生物学的な無細胞マトリックスを使用することができるのが有利であり、このマトリックスは主成分としてコラーゲンを有し、これは同様に間質の主成分である。全てのマトリックス内での微小血管構造形成が確認されたという事実は、ヒトの微小血管内皮細胞のこの能力が生物学的マトリックスの1つのタイプだけに限定されないことを示す。
【0045】
内皮細胞はまた、その微小環境の他の細胞からのシグナルにより活性化されることについても知られている(Berthod et al., 2006; Velasquez et al., 2002)。間質細胞(線維芽細胞及び平滑筋細胞)はしばしば内皮細胞に付着し、形態形成及び最終的に毛細管/小管状の表現型への分化に寄与する。間質細胞及び特に線維芽細胞は、血管配置及び他の器官構造のための骨格として利用されるマトリックスタンパク質の産生と関連している。これらの細胞は、同様に血管形成成長因子の豊富な供給源であり(Honorati et al., 2005)、内皮細胞増殖及び内皮細胞分化を引き起こし(Erdag et al., 2004; Hudon et al. 2003)、かつin vitroでの血管の安定化と関連する(Velazquez et al., 2002)。さらに、上皮細胞が血管形成を誘導する成長因子を分泌することも公知である(Thompson et al., 2006)。
【0046】
「Darland et al., 2001」では、間質細胞、例えば分化した周皮細胞は内皮細胞と一緒の培養で成長因子を製造し、この成長因子が内皮細胞の生存及び/又は安定化を促進することが観察された。
【0047】
成熟した骨髄間葉幹細胞は著しく増殖する多分化能細胞であり、この細胞は多様な成長因子を放出することができ(Tang et al., 2004)、この成長因子は内皮細胞の生存及び/又は安定化を促進する(Markowicz et al., 2005)。これらの細胞が損傷箇所内への血管の侵入を促進する局所環境を提供することは公知である(Gruber et al., 2005)。
【0048】
本発明の場合には、膀胱間質細胞、骨髄間質前駆細胞及び膀胱尿路上皮細胞の誘導作用をコンディショニングされた培地により調査した(Velazquez et al., 2002; Gruber et al., 2005; Thomson et al., 2006)。この目的のために、骨髄から由来する間質細胞、器官特異的な膀胱間質細胞及び器官特異的な膀胱尿路上皮細胞の上清を使用して、間質細胞及び尿路上皮細胞のパラクリン機能により、生物学的な骨格に付着している単離された微小血管膀胱内皮細胞及び真皮性の微小血管内皮細胞の増殖を促進した。
【0049】
本発明の基礎をなす試験において、まずヒト微小血管膀胱内皮細胞又は真皮性の微小血管内皮細胞を単層としてマトリックス上で培養した。引き続き、この培養された細胞を間質性にコンディショニングされた培地又は上皮性−間質性にコンディショニングされた培地を用いて培養した。対照試験において、この培養された細胞を、尿路上皮性にコンディショニングされた培地又はコンディショニングされていない培地を用いて培養した。無細胞の生物学的に分解可能な材料上での微小血管内皮細胞の増殖、分化及び安定化を調節する間質細胞及び尿路上皮細胞の能力を測定するために、in vitroでの血管形成を増殖、侵入、毛細管状/小管状のネットワーク形成及び表現型の測定のための組織学的及び免疫組織化学的分析により評価した。3つの血管形成パラメータが存在し、これは小管状のネットワーク形成の試験に関する文献において提案されている:毛細管の長さ、毛細管の数及び相対的な毛細管の領域。この実施された試験において、毛細管の長さはアッセイにより測定された(Watanable et al., 2005)。この場合、それぞれ1つの膀胱から得られた細胞の3つの異なる構築物のそれぞれ3つの組織学的縦断面における毛細管の長さを、光学顕微鏡分析で測定した。
【0050】
間質細胞及び間質細胞と尿路上皮細胞とからなる混合物でコンディショニングされた三次元的な生物学的マトリックス上での微小血管内皮細胞の組織学的及び免疫組織化学的試験では、活性化された侵入性細胞であって、その細胞周辺マトリックスを構築し、他方でその分化された表現型を保持する侵入性細胞が示された。これらの細胞が三次元的な細胞外のマトリックス中へ放出されるとすぐ、これらの細胞は他の細胞へのマイグレーションを始め、内皮細胞束に整列する。この微小血管形成は重なり合って成長し、間質細胞及び間質細胞と尿路上皮細胞との混合物からのパラクリン性のサイトカインシグナルのもとで他の微小管と接合する。このシステムとの比較において、コンディショニングされていない培地又は尿路上皮性にコンディショニングされただけの培地が添加された培養は、間質性にコンディショニングされた及び尿路上皮性−間質性にコンディショニングされた培養と比較して、内皮細胞構造の数の向上がより僅かで、内皮細胞によって被覆された面積がより小さく、かつ管腔を有する血管状の構造に関する割合がより僅かである。
【0051】
KI−67を用いた増殖アッセイでは、コンディショニングされていない培養システムにおいて又は尿路上皮性にコンディショニングされただけの培養システムにおいて並びに尿路上皮性にコンディショニングされたシステムにおいて、内皮細胞が1週間〜2週間の期間で、大部分は2週間で潜在性であることが示された。間質性又は尿路上皮性−間質性にコンディショニングされた培養システムでは、内皮細胞は少なくとも4週間増殖したままであり、これにより、コンディショニングされていない又は尿路上皮性にコンディショニングされただけの培養システムでの構築物の場合よりもより高い細胞密度を有する構築物が生じる。
【0052】
毛細管状/小管状のネットワーク形成を測定するためのアッセイも同様に、間質性又は尿路上皮性−間質性にコンディショニングされたシステム中において、フィールドあたりより長い毛細管形成を示した。
【0053】
従って、間質細胞並びに間質細胞と尿路上皮細胞とからの混合物はその上清に、内皮細胞の浸潤及び微小血管構造の形成を刺激することができる因子を提供する。この結果から、間質細胞又は間質細胞と尿路上皮細胞との混合物が、分裂促進性及び細胞遊走促進性(mkotogenen)の内皮性の作用を有する重要なシグナルを提供し、これが内皮細胞からの小管構造の構築を促進すると結論づけられる。
【0054】
毛細管の微小血管構造の発達は、間質細胞又は間質細胞と尿路上皮細胞との混合物を必要とするだけでなく、同様に細胞外マトリックス(ECM)の存在も必要とする。実際に内皮細胞は、二次元の慣用の培養皿における間質性誘導又は尿路上皮性−間質性誘導の下で小管構造を形成しない。生物学的膜のECM成分は、骨格としても、内皮細胞のためのインダクタとしても機能することができる。相乗的に、内皮細胞を細胞外マトリックスにさらすことにより内皮細胞が活性化され、間質細胞又は間質細胞と尿路上皮細胞とからなる混合物により、本当の毛細管形態形成のために、前記内皮細胞のマイグレーション、生存及び分化を促進するためのシグナルが提供されることは明らかである。
【0055】
膀胱間質細胞、骨髄間質前駆細胞又は尿路上皮細胞と間質細胞との混合物によりコンディショニングされた培地による内皮細胞の高められた増殖及び分化から、間質細胞又は間質細胞と尿路上皮細胞との混合物により媒介される毛細管状のモルホロジーに関する作用について器官特異性を推測することができないという事実は、内皮細胞の状態をコントロールする際に間質細胞又は尿路上皮細胞と間質細胞との混合物が重要な役割を有することを意味している。
【0056】
血管内皮成長因子(VEGF)は、最も有効な内皮細胞マイトジェンである(Pepper et al., 1992 - Lazarous et al., 1997)。これは、マトリックス−メタロプロテイナーゼの発現、増殖、マイグレーション及び単離された内皮細胞の小管形成をin vitroで刺激しかつ血管の発達をin vivoで刺激する因子の1つである(Gruber et al., 2005)。
【0057】
コンディショニングされた培地中でのこの血管形成の及び血管由来の重要なファクターの存在を決定するために、この血管内皮成長因子(VEGF)の濃度をELISAテストで試験した。この結果は、VEGFの検出可能な濃度を示し、これはこのサイトカインの測定可能な濃度が間質細胞によって分泌されることを示唆するものである。本発明による構築物は、従って、特に間質細胞及び間質細胞と尿路上皮細胞との混合物による成長因子発現の能力に基づく。この成長因子に関しては、前記尿路上皮細胞が高い値を生産する。尿路上皮細胞と間質細胞とからなる混合培養により前記サイトカインは最も強く形成し、その際、最も高い濃度のVEGFは間質細胞と尿路上皮細胞との混合物でコンディショニングされた培地中で測定することができた。
【0058】
この増殖及び小管−毛細管形成は尿路上皮細胞(この細胞によってVEGFが産生されるにもかかわらず)だけでコンディショニングされた培地によりあまり誘導されないという事実は、内皮細胞の誘導には間質細胞の付加的な存在が有利であることを示唆している。間質細胞自体のこの誘導作用は、尿路上皮細胞によって高めることができる。
【0059】
他方で、無細胞のマトリックス上の単一層としての微小血管内皮細胞の培養の後での、コンディショニングされた培地なしでの(つまり、間質性又は尿路上皮性−間質性の誘導なしでの)又は尿路上皮性にコンディショニングされた培地だけでのさらなる培養は、単一層からの細胞の剥離及びこの細胞のマトリックス中への浸潤を引き起こすが、下側にあるマトリックスへの浸潤は、間質細胞又は間質細胞と尿路上皮細胞との混合物を用いてコンディショニングされた条件下のようには高くなかった。さらに、前記内皮細胞は、僅かな分岐を有するあまり分極していない束の形で整列し、その中の僅かが完全に形成された管腔を示すだけである。従って、無細胞マトリックスは下側の無細胞層中への初期のマイグレーションのために重要であるが、さらなる移動の促進及び無細胞マトリックス内での成熟した小管構造の形成のためには不十分である。これらの結果は、間質性誘導又は尿路上皮性−間質性誘導が、適切なマイグレーション及び浸潤のために及び成熟した管腔状の構造の形成のために必要であることを示すものである。
【0060】
全体として、本発明が基づいているin vitroでのこの結果は、小さな膀胱バイオプシー又は皮膚から得られ、かつ膀胱間質細胞、骨髄間質前駆細胞又は膀胱尿路上皮細胞と膀胱間質細胞との混合物により誘導された自己の単離微小血管内皮細胞による、生物学的無細胞のマトリックスの予備的血管形成が、下部尿路の欠点を治療できる可能性を表すことを示すものである。
【0061】
この知見は、しかしながら、下部尿路、特に膀胱に限定されるものではなく、他の器官、特に軟部器官に適用することもできる。
【0062】
次に本発明を実施例を用いて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0063】
図1 コンディショニングされた培地及びコンディショニングされていない培地におけるVEGF濃度を示す棒グラフ。
【0064】
図2 多様なコンディショニングされた培地を用いた培養後の膜内での微小血管内皮細胞の細胞増殖を示す棒グラフ。
【0065】
図3 多様な培地を用いて微小血管内皮細胞を培養した組織移植構築物中での微小血管構造の長さを示す棒グラフ。
【0066】
図4A 14日目における、間質性若しくは尿路上皮性−間質性の誘導の下での無細胞マトリックスの表面に播かれた微小血管膀胱内皮細胞のin vitroでの培養を特性決定するための組織学的写真。この場合、前記膀胱内皮細胞は、間質性若しくは尿路上皮性−間質性の可溶性因子を用いた誘導の際にマトリックスの表面から剥離し、マトリックスの骨格内へ侵入している。まず、細胞により内側が覆われているストランドが形成される。次第に、完全に構成された管腔を認識することができる(矢印)。
【0067】
図4B 14日目における、間質性若しくは尿路上皮性−間質性の誘導の下での無細胞マトリックスの表面に播かれた微小血管膀胱内皮細胞のin vitroでの培養を特性決定するための組織学的写真。前記細胞は誘導下で骨格の内部に小管を形成する。
【0068】
図4C 21日目における、間質性若しくは尿路上皮性−間質性にコンディショニングされた培地を用いた誘導の下での無細胞マトリクスの表面に播かれた微小血管膀胱内皮細胞のin vitroでの培養を特性決定するための組織学的写真。その際、微小血管膀胱内皮細胞で内側が覆われている完全に構成された管腔を有する小管の新らしい分岐(矢印)を確認することができる。
【0069】
図4D 28日目における、間質性若しくは尿路上皮性−間質性のコンディショニングされた培地を用いた誘導の下での無細胞マトリックスの表面に播かれた微小血管膀胱内皮細胞のin vitroでの培養を特性決定するための組織学的写真。管腔構造は膀胱内皮細胞により内側が覆われていて、その際、内皮マーカーであるフォン・ウィルブランド因子のポジティブな発現を認識することができる。マトリックス表面上に播かれた微小血管膀胱内皮細胞の複数の層は、前記抗体もポジティブに発現した。
【実施例】
【0070】
次の実施例は本発明による下部泌尿器用の組織移植構築物の製造方法を具体的に説明する。
【0071】
他に記載がない限り、この省略形は次の意味を有する:
b-FGF b−線維芽細胞成長因子
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
UEA-1 ウレックス・エウロペアウス凝集素 1 レクチン(Ulex Europeaus Agglutinin 1 Lectin)
材料及び方法:
(a) 無細胞マトリックスの製造
ヒト又はブタの膀胱及び膀胱粘膜下組織、尿道、真皮及び小腸を、リン酸塩で緩衝した食塩溶液(PBA)(Invitrogen、ドイツ国)で洗浄し、37℃で注意深く振盪しながらTriton X 1 %で24〜48時間処理した。マトリックスの無細胞性は組織学的に調査した。
【0072】
(b) ヒトの微小血管膀胱内皮細胞及び真皮の微小血管内皮細胞の単離、培養及び特性決定
微小血管膀胱内皮細胞の単離のために、ヒト膀胱組織を膀胱の開腹手術を行った4人の患者から得た。尿路上皮を顕微解剖し、間質組織を酵素分解により切断し、1mg/mlのコラゲナーゼ タイプII(Worthington Biochemical Corporation, USA)/ディスパーゼ(0.05mg/ml)(Invitrogen)/16μg/mlのデオキシリボヌクレアーゼ タイプI(Boeringer Mannheim GmbH、ドイツ国)を用いて、0.2%の血清アルブミン(Sigma Aldrich、ドイツ国)を有するDMEM培地中で、37℃で2時間連続的に撹拌しながら消化した。この消化された材料を、2000rpmで遠心分離し、細胞懸濁液を集め、DMEM培地中で希釈し、40μmナイロンメッシュ(BD Labware、ドイツ国)を備えた細胞濾過装置を通して濾過した。この濾過された材料を、2.5%のヒト血清を含有するDMEM培地(Invitrogen、ドイツ国)中で希釈した。常磁性のポリスチレン粒子(Dynabeads)(Dynal、ドイツ国)を、レクチンUEA-1(Sigma Aldrich、ドイツ国)又は血小板−内皮細胞−接着分子−1用のモノクロナール抗体(PECAM 1; CD 31)(Dakocytomation、デンマーク)と、室温で24時間で前記レクチン又は前記抗体CD31と共に10のDynabeadsのインキュベーションにより、オーバーヘッド回転下で、製造元の指示に従って結合させた。このDynabeadsを磁性粒子の濃縮のための装置の使用下で捕集し、PBS/0.1%血清アルブミン中で3回洗浄した。微小血管膀胱内皮細胞をカウントし、4℃で10分間、UEA−1又はCD31で被覆したDynabeadsを、オーバーヘッド回転下でインキュベーションした。ポジティブに選択された細胞を、引き続き混合細胞集団から、磁性粒子の濃縮のための装置(Dynabeads/内皮細胞の比 10:1)の使用下で除去した。前記Dynabeadsに付着した細胞(内皮細胞)を回収し、DMEM/2.5%のヒト血清中で10回洗浄した。ネガティブに選択された付着しない細胞(膀胱間質細胞)をPBS中で洗浄し、培養フラスコ中で(c)に記載された条件下で培養した。この精製された内皮細胞を培養基中に懸濁し、培養シャーレ中に10個の細胞/cmを播種した。この培地を2〜3日ごとに交換した。この細胞を70%コンフルエントで継代した。第2の継代の後に、細胞を再びレクチンUEA−1又はCD31に結合するDynabeadsで精製した。この細胞の内皮表現型を、フォン・ウィルブランド因子及びCD−34−抗体(両方ともDako)の使用下での免疫組織化学的染色により確認した。この細胞はまた、CD105若しくはCD31(Miltenyi、ドイツ国)が結合したDynabeadsの適用下でも分離することができた。
【0073】
こうして得られた第3代から第5代の継代の微小血管膀胱内皮細胞を液体窒素中で貯蔵し、試験のために使用した。
【0074】
ヒトの真皮の微小血管内皮細胞の単離のために、切除された患者のヒト包皮をPBSで数回洗浄した。皮下脂肪から真皮を微小はさみで分離した。この組織を、表皮から真皮を分離するために0.25%のディスパーゼ(Boeringer Mannheim、ドイツ国)中で2時間培養した。この真皮を次いで細分化し、トリプシン(0.05%)/EDTA(0.01%)(Invitrogen、ドイツ国)中で30分間インキュベートした。この消化された細胞懸濁液を、ナイロンメッシュ(目開き40μm)を通して濾過し、遠心分離した。細胞ペレットをEGM−2(Cambrex、ドイツ国)中にサブコンフルエントまで希釈した。引き続き、この細胞を培養シャーレから取り出し、真皮の微小血管内皮細胞を、CD−31が結合しているDynabeadsの使用下でポジティブに選択した。第3代の継代の細胞に第2の分離法を行った。この細胞の内皮表現型を、フォン・ウィルブランド因子及びCD34用の免疫組織化学的染色により確認した。第3代から第5代の継代の細胞を液体窒素中で貯蔵し、さらなる試験のために使用した。
【0075】
(c) ヒト成熟膀胱間質細胞及び骨髄間質前駆細胞の単離及び培養
前記Dynabeadsに結合しなかった残りの(ネガティブに選択された)膀胱間質細胞を、PBS中で洗浄し、引き続きDMEM(Invitrogen、ドイツ国)中で付加的な血清及びペニシリン−ストレプトマイシンと共に培養した。免疫組織化学的特性を、α−平滑筋−アクチン、ビメンチン及び汎サイトケラチンに対する抗体を用いて評価した。
【0076】
骨髄間質前駆細胞は骨髄材料から得られ、これは、6人の健康な成人患者の腸骨稜から針穿刺吸引により得られ、ヘパリン処理された50ml試験管中に集められた。吸引された材料を、同じ体積のDMEM/10%血清と混合した。この細胞懸濁液を、10mlのFicoll-Paque(Amersham Pharmacia Biotech AB、スエーデン)の上側に積層し、400gで4℃で35分間遠心分離した。単核球を中間期から捕集し、100μmのナイロンメッシュを備えた細胞ろ過器(Becton Dickinson、ドイツ国)を通して濾過し、ヒト血清及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM中に細胞10個/cmの濃度で再懸濁させた。この細胞をフローサイトメトリーにより特性決定した。この目的で、骨髄間質前駆細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、CD34、CD45、CD44、CD73、CD90に対する抗体(全てBecton-Dickinson)及びCD133に対する抗体(Miltenyi Biotech、ドイツ国)と共にインキュベーションした。分析を、FACScaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて実施した。培養基を3〜4日ごとに交換して、細胞をコンフルエントまで広げさせた。
最初の5代の継代の膀胱間質細胞及び骨髄間質前駆細胞を、液体窒素中に貯蔵し、試験のために使用した。
【0077】
(d) 尿路上皮細胞及び尿路上皮膀胱間質細胞の単離及び培養
膀胱バイオプシーから顕微解剖により得られた膀胱尿路上皮細胞及び膀胱粘膜を培養するために、細い片に切断し、コラゲナーゼ タイプII 1mg/ml中で2時間消化し、2000rpmで5分間遠心分離し、25mlの培養シャーレ中でケラチノサイト不含の血清(Cambrex)と一緒に培養した。
【0078】
膀胱尿路上皮細胞及び膀胱間質細胞からなる混合物を得るために、膀胱尿路上皮及び膀胱間質からなる膀胱バイオプシーを小片に切断し、上記のように消化しかつ捕集した。最初の5代の継代の細胞を液体窒素中で貯蔵し、さらなる試験のために使用した。
【0079】
(e) 膀胱間質細胞、骨髄間質前駆細胞、尿路上皮細胞及び尿路上皮膀胱間質細胞でコンディショニングされた培地の製造:
それぞれ互いに独立して、膀胱間質細胞、骨髄間質前駆細胞、尿路上皮細胞及び尿路上皮膀胱間質細胞をコンフルエントまで増殖させ、その後で培地を、血清及び抗生物質を補充した20mlのDMEMに72時間変えた。このコンディショニングされた培地を滅菌フィルターで処理した。それぞれコンディショニングされた培地にb−FGF 20ng/mlを補充した。引き続き、この培地をアリコートに分け、−80℃で貯蔵した。
【0080】
コンディショニングされた培地中の血管内皮成長因子(VEGF)の濃度を決定するためにELISAを使用した。サイトカイン濃度の測定のために、血管内皮成長因子用の市販のキットの使用下での定量的ELISAを開発した(R&D-Systeme)。この試験のために、コンディショニングされた培地を72時間培養した後に集め、2000rpmで10分間遠心分離し、0.3μmのフィルターを通過させた。全ての分析はマイクロタイタープレート上で3回実施した。
【0081】
(f) 微小血管膀胱内皮細胞及び真皮の微小血管内皮細胞の生物学的な骨格上における培養
(a)により得られた微小血管膀胱内皮細胞又は真皮の微小血管内皮細胞を、培養シャーレ中でトリプシン/EDTAと共に培養し、70%コンフルエントで取り出し、カウントし、遠心分離して所望の数の細胞のペレットを得た。この細胞を培養基中に再懸濁させ、10/cmの最終濃度でマトリックスの表面上に均質に分配した。細胞培養は37℃で28日間実施した。この細胞を、
(a) 血清及びb−FGFを補充したDMEM(対照グループa);又は
(b) 膀胱間質細胞でコンディショニングされ、b−FGFを補充した培地(培養グループb);又は
(c) 骨髄間質前駆細胞でコンディショニングされ、b−FGFを補充した培地(培養グループc);又は
(d) 尿路上皮でコンディショニングされ、b−FGFを補充した培地(培養グループd);又は
(e) 尿路上皮膀胱間質細胞でコンディショニングされ、b−FGFを補充した培地(培養グループe)、
と一緒に培養した。
【0082】
全ての試験を少なくとも2倍で実施し、相互に独立して3回繰り返した。
【0083】
(g) 生物学的な骨格の上で培養した微小血管膀胱内皮細胞又は真皮の微小血管内皮細胞の顕微鏡分析
それぞれの試験の終わりに、ホルマリン固定した生物学的な骨格を、順番に高めた濃度のアルコールで脱水し、パラフィン中に包埋し、6mmの幅の切片に切断した。この構築物の組成を、ヘマトキシリン−エオシン(HE)及び抗ヒトフォン・ウィルブランド因子、内皮細胞特異的レクチンUEA−1、抗ヒトCD34及び抗ヒトCD31(PECAM−1)の使用下での免疫組織化学により分析し、位相差顕微鏡(Zeiss、ドイツ国)を用いて評価した。細胞増殖を増殖マーカーKI67を用いて評価した。血管形成の評価のために使用できる3つのパラメータは次のものである:毛細管の長さ、毛細管の数及び相対的な毛細管の面積。それぞれの試料の3つの異なる縦断面における毛細管の長さを分析により評価した(Watanable et al., 2005)。この場合、それぞれ1つの膀胱から得られた細胞の3つの異なる構築物のそれぞれ3つの組織学的縦断面における毛細管の長さを、光学顕微鏡分析で測定した。このために、マトリックス内の組織学的切片中の毛細管/小管状の構造の長さを、手動での小管の測定により定量化した。代表的な組織学的切片の細胞密度を同様に定量化した。
【0084】
結果
ヒト膀胱微小血管内皮細胞及び真皮の微小血管内皮細胞の単離及び培養
まず、第一に平滑筋細胞、線維芽細胞及び内皮細胞からなる(前記の(a)の節を参照)膀胱間質組織からの微小血管膀胱内皮細胞の初代培養を単離及び製造するために選択法を開発しなければならなかった。このため、レクチン被覆した又は抗体被覆したDynabead粒子を使用した。95%を超える純度の微小血管膀胱内皮細胞培養物を製造するためには、最初の5代の継代の間に付加的なDynabead精製が必要であることが確認された。付着したDynabeadsは、最初の2代の継代の間に洗浄され、血管内皮細胞の成長又は生存を妨げない。真皮の微小血管内皮細胞の分離は、80%の微小血管内皮細胞を有する培養物を生じさせた。3代の継代の第2の分離は、90%を超える純度を生じさせた。最初の継代の初代微小血管内皮細胞のモルホロジーは大きさ及び形状において若干の変動性を示した。継代数が増加すると共に、この細胞集団は均一なモルホロジーを示した。培養されたヒト微小血管膀胱内皮細胞は、内皮細胞に特徴的な特性を示した。これらは第VIII因子に関連する抗原及びCD34を発現した。
【0085】
膀胱間質細胞、骨髄間質前駆細胞及び膀胱尿路上皮間質細胞の単離、培養及び特性決定
膀胱間質細胞及び骨髄間質前駆細胞の初代培養物を、膀胱間質及び吸引された骨髄から正常に製造した。膀胱尿路上皮細胞及び膀胱間質細胞からなる混合培養も正常に行われ、尿路上皮細胞、平滑筋細胞及び線維芽細胞を含んでいた。純粋な尿路上皮細胞は、膀胱粘膜から正常に得られた。単離された細胞は、最初の2日間に接着及び成長し始めた。これらは3〜5日に不活性になり、次いで急速に増殖し始めた。膀胱間質細胞の培養は、スピンドル状の細胞を有する統一的なモルホロジーを示した。初代培養(P)の場合に、骨髄間質前駆細胞はサイズ及び形状において3種の異なるモルホロジーからなる変動性を示した。最初の継代の後に、この細胞は均一なスピンドル状のモルホロジーを示した。膀胱間質細胞及び骨髄間質前駆細胞は、互に類似した増殖活性能力及び成長パターンを示した。両方の培養において、約10日後にコンフルエントとなった。最後の継代(>P)において、スピンドル状の細胞は、平坦に広がったモルホロジーを示し始めた。従って、コンディショニングされた培地を、継代1〜5(P〜P)の細胞についてだけ収穫した。
【0086】
培養された尿路上皮細胞は、典型的な上皮性モルホロジーを示し、これは血清不含のコンディショニング下では統一的であった。尿路上皮細胞及び膀胱間質細胞からなるこの混合培養物は、同時に尿路上皮性表現型と間質性のスピンドル状の表現型とを有する細胞を示す。尿路上皮細胞培養及び尿路上皮膀胱間質細胞培養はサブコンフルエントで継代した。この場合、同様に最初の5代の継代の細胞をコンディショニングされた培地の製造のために利用した。
【0087】
骨髄間質前駆細胞を、フローサイトメトリーで、特徴的な造血性マーカーの存在又は不存在について試験した。これは、典型的に抗原CD105及びCD73を発現した。さらに、この細胞はCD90及びCD44を発現した。これは、典型的なリンパ球性マーカーのCD45及び早期造血性マーカーのCD34及びCD133についてネガティブであった。
【0088】
膀胱間質細胞の免疫組織化学分析は、この細胞が、α−平滑筋アクチンについてポジティブな発現を示す約50〜60%の細胞と、α−平滑筋アクチン発現を示さない40〜50%のビメンチン−ポジティブな細胞とからなる2つの細胞集団からなることを示した。この尿路上皮細胞培養は、もっぱら汎サイトケラチンを発現する細胞集団を形成する。尿路上皮膀胱間質細胞混合培養物は、同時に3つの細胞集団、つまり汎サイトカイン−ポジティブ細胞、α−平滑筋アクチン−ポジティブ細胞及びビメンチン−ポジティブ細胞からなる。後者の2つの細胞タイプは汎サイトケラチン抗体で染色されない。
【0089】
ELISA試験
培養された膀胱間質細胞、骨髄間質前駆細胞、尿路上皮細胞、又は膀胱尿路上皮細胞及び膀胱間質細胞の混合物から得られた培地は、ELISA試験において検出可能な濃度のVEGFを示し、この場合、最も高い濃度は膀胱尿路上皮細胞と膀胱間質細胞とからの混合培養物から算定された(図1)。
【0090】
生物学的な骨格の上で培養された微小血管膀胱内皮細胞の顕微鏡分析
生物学的な骨格の上で培養された微小血管内皮細胞の顕微鏡による調査は、微小血管内皮細胞が生物学的骨格の上に付着しかつ生存していることを示した。24時間後に、微小血管内皮細胞は無細胞の膜の表面に遊走し始め、この細胞はその分化した表現型を維持した(フォン・ウィルブランド因子、CD31及びCD34とのポジティブな免疫反応性及びUEA−1の結合)。この細胞は45cmのマトリックス表面積まで覆い、かつ2週間内で単一層としてコンフルエントに達し、これはコンディショニングされた系(培養グループb、c及びe)中で比較的高いマイグレーション能を示した。この細胞は、コンディショニングされた培地(培養グループb、c及びe)中で丸い表現型と、細長い管状の表現型とを有する2種の異なるモルホロジーを示し、かつコンディショニングされていない系(対照グループa)中で及び尿路上皮細胞だけでコンディショニングされた系(対照グループd)中ではたいていは丸いモルホロジーを示した。コンディショニングされた間質細胞(培養グループb、c及びe)を入れた培養は、培養中で28日後に、コンディショニングされていない対照の骨格(対照グループa)と比べてより高い全細胞密度を示した。この全細胞密度は尿路上皮膀胱間質細胞でコンディショニングされた培養系(培養グループe)中で最も高かった。尿路上皮細胞だけでコンディショニングされた培地(対照グループd)は、コンディショニングされていない系と比較して高い細胞数を示さなかった。実際に、コンディショニングされた培養系(培養グループb、c及びe)中で、マトリックス中での微小血管内皮細胞の増殖は28日目まで観察され(増殖マーカーKi67についての染色により示されたように)、この細胞密度は時間と共に高まった。これと比べて、微小血管内皮細胞はコンディショニングされていない培養系及び尿路上皮細胞だけでコンディショニングされた培地(培養グループd)中では最初の7〜14日間だけ増殖したが、培養の最後の2〜3週間の間にゆっくりと死んだ。観察した培養時間は、全てのグループにおいて28日であった。
【0091】
膀胱間質細胞を用いてコンディショニングされた培地(対照グループa)と、骨髄間質前駆細胞でコンディショニングされた培地(培養グループb)との間には、有意な差異は確認されなかった。この両方の培養系中で、微小血管膀胱内皮細胞の数は、対照グループa中の数よりも2.1〜2.2倍高かった(図2)。真皮の微小血管内皮細胞の数はこの両方の培養系(培養グループb及びc)中で、対照グループa中の数よりも1.5〜1.7倍高かった(図2)。尿路上皮膀胱間質細胞を用いてコンディショニングされた培地を有する培養系(培養グループe)中で、微小血管膀胱内皮細胞及び真皮の微小血管内皮細胞の数は、対照グループaと比較してそれぞれ3.2又は2.9倍高かった(図2)。
【0092】
コンディショニングされた培地(培養グループb、c及びe)の使用は、微小血管膀胱内皮細胞のマトリックス内への2.3mmまでの浸入深さでの浸入を引き起こす。このコンディショニングされた系中では、ストランド(小管)の形成(図4a)及び10〜14日後に毛細管ネットワークの形成も誘導された。ネットワーク形成の度合いは、28日目までの培養の期間に依存した。毛細管様の分化と一致して、微小血管膀胱内皮細胞もしくは真皮の微小血管内皮細胞が、完全に構築された毛細管の管腔をそれぞれ形成し、この管腔は微小血管内皮細胞の単一層で内側が覆われており(図4B、4C及び4D)、フォン・ウィルブランド因子に関してポジティブに染色されることが確認された(図4D)。
【0093】
コンディショニングされた培地の不在(対照グループa)、及び尿路上皮細胞だけでコンディショニングされた培養系(対照グループd)では、微小血管膀胱内皮細胞及び真皮の微小血管内皮細胞はマトリックス内への最低限の浸入を示し、かつわずかな未熟な断続的なストランドが培養期間にわたり形成されただけであった。
【0094】
血管形成活性の評価のために、それぞれの膀胱から得られた細胞の3つの異なる構築物のそれぞれ3つの組織学的縦断面における毛細管の長さを測定した。三次元的なin vitroでの血管形成の定量的評価を、形成された小管の長さの顕微鏡による3つの視界での測定により実施した。この値は図3に示す。この最も大きな毛細管の長さは、尿路上皮間質性の誘導下(グループe)での真皮の微小血管内皮細胞が示した。
【0095】
これらの培養系中で、微小血管膀胱内皮細胞は240μmの毛細管の全長に達し、真皮の微小血管膀胱内皮細胞は2100μmの毛細管の全長に達した(図3)。
間質サイトカイン及び尿路上皮間質サイトカインの存在下において、微小血管膀胱内皮細胞又は真皮の微小血管内皮細胞の全てについては浸潤のための適性は見られなかった。残りの付着した微小血管膀胱内皮細胞又は真皮の微小血管内皮細胞はマトリックス中へ浸入せず、マトリックスの表面上でのみマイグレーションし、その上で細胞の多層が形成され、これはそれによっておそらく異質の細胞集団の部分母集団を示す。
【0096】
尿路上皮細胞はVEGF産生のための供給源であるにもかかわらず、微小血管内皮細胞に関して尿路上皮細胞だけでコンディショニングされた培地の誘導作用は確認できなかった。この結果は、in vitroでの血管形成を誘導するために、尿路上皮細胞は膀胱間質細胞の付加的な効果を必要とすることを意味する。尿路上皮細胞と間質細胞との相乗作用は、細胞分化及び小管/毛細管形成に関して、微小血管内皮細胞へ最も強い誘導作用を示した。
【0097】
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【0098】
図1〜3の説明
図1:
コンディショニングされていない培地(a)と比較した、培養されたヒト膀胱間質細胞(b)、ヒト骨髄間質前駆細胞(c)、ヒト尿路上皮細胞(d)及びヒト尿路上皮−膀胱間質細胞(e)でコンディショニングした培地中の、ELISA分析により評価したVEGF定量化。これらの培地は、細胞がコンフルエントに達した後に72時間で回収した。グラフのそれぞれの棒は平均値±標準偏差を示した。
図2:
次の多様な培養基を供給した無細胞マトリックス上で培養された膀胱微小血管内皮細胞(A)及び真皮の微小血管内皮細胞(B)の相対的細胞集団:a−コンディショニングされていない培地、b−膀胱間質細胞でコンディショニングされた培地、c−骨髄間質前駆細胞でコンディショニングされた培地、d−尿路上皮細胞でコンディショニングされた培地、e−尿路上皮−膀胱間質細胞でコンディショニングされた培地。(平均値±標準偏差)。
図3:
播種後の28日目の無細胞マトリックス上で培養した、膀胱微小血管内皮細胞(A)及び真皮の微小血管内皮細胞により形成された小管の全体のネットワーク長さの光学顕微表分析の平均値。この全体のネットワーク長さは、それぞれ1つの膀胱から得られた細胞の3種の異なる構築物からなる組織学的縦断面の顕微鏡による可視化によって測定した。この小管の長さは、手動による測定によって計算した。微小血管内皮細胞培地には次のものが供給された:a−コンディショニングされていない培地、b−膀胱間質細胞でコンディショニングされた培地、c−骨髄間質前駆細胞でコンディショニングされた培地、d−尿路上皮細胞でコンディショニングされた培地、e−尿路上皮−膀胱間質細胞でコンディショニングされた培地。(平均値±標準偏差)
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、コンディショニングされた培地及びコンディショニングされていない培地におけるVEGF濃度を示す棒グラフである。
【図2】図2は、多様なコンディショニングされた培地を用いた培養後の膜内での微小血管内皮細胞の細胞増殖を示す棒グラフである。
【図3】図3は、多様な培地を用いて微小血管内皮細胞を培養した組織移植構築物中での微小血管構造の長さを示す棒グラフである。
【図4A】図4Aは、14日目における、間質性若しくは尿路上皮性−間質性の誘導の下での無細胞マトリックスの表面に播かれた微小血管膀胱内皮細胞のin vitroでの培養を特性決定するための組織学的写真を示す。
【図4B】図4Bは、14日目における、間質性若しくは尿路上皮性−間質性の誘導の下での無細胞マトリックスの表面に播かれた微小血管膀胱内皮細胞のin vitroでの培養を特性決定するための組織学的写真を示す。
【図4C】図4Cは、21日目における、間質性若しくは尿路上皮性−間質性にコンディショニングされた培地を用いた誘導の下での無細胞マトリクスの表面に播かれた微小血管膀胱内皮細胞のin vitroでの培養を特性決定するための組織学的写真を示す。
【図4D】図4Dは、28日目における、間質性若しくは尿路上皮性−間質性のコンディショニングされた培地を用いた誘導の下での無細胞マトリックスの表面に播かれた微小血管膀胱内皮細胞のin vitroでの培養を特性決定するための組織学的写真を示す。
【図4a】

【図4b】

【図4c】

【図4d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 生物学的に適合性の無細胞の膜;及び
(b) 前記膜を貫通する微小血管内皮細胞、
を含み、前記膜内で前記微小血管内皮細胞からなる微小血管構造が形成されている、ヒト又は動物の器官を再構築するための組織移植構築物。
【請求項2】
ヒト又は動物の器官が、膀胱、尿管及び尿道を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の組織移植構築物。
【請求項3】
微小血管内皮細胞が微小血管膀胱内皮細胞であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の組織移植構築物。
【請求項4】
微小血管内皮細胞が真皮の微小血管内皮細胞であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の組織移植構築物。
【請求項5】
微小血管内皮細胞が器官特異的な微小血管内皮細胞であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の組織移植構築物。
【請求項6】
微小血管内皮細胞が自己の微小血管内皮細胞であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の組織移植構築物。
【請求項7】
微小血管構築物が管腔を含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の組織移植構築物。
【請求項8】
微小血管構築物が架橋されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の組織移植構築物。
【請求項9】
微小血管構築物がin vitroで構築されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の組織移植構築物。
【請求項10】
膜が他の組織特異的な細胞によって貫通されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の組織移植構築物。
【請求項11】
(a) 微小血管内皮細胞を単離する工程、
(b) 前記微小血管内皮細胞を生物学的に適合性の無細胞の膜に設ける工程、及び
(c) 前記生物学的に適合性の無細胞の膜に設けられている微小血管内皮細胞を、間質性誘導又は上皮性−間質性誘導のもとで培養する工程、
を含む、ヒト又は動物の器官を再構築するための組織移植構築物の製造方法。
【請求項12】
ヒト又は動物の器官が、膀胱、尿管及び尿道を含む群から選択されることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
微小血管内皮細胞が微小血管膀胱内皮細胞であることを特徴とする、請求項11又は請求項12記載の方法。
【請求項14】
微小血管内皮細胞が真皮の微小血管内皮細胞であることを特徴とする、請求項11又は請求項12記載の方法。
【請求項15】
微小血管内皮細胞が器官特異的な微小血管内皮細胞であることを特徴とする、請求項11から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
微小血管内皮細胞が自己の微小血管内皮細胞であることを特徴とする、請求項11から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
間質性誘導をヒト又は動物の膀胱間質細胞又はヒト又は動物の骨髄間質前駆細胞の使用下で実施することを特徴とする、請求項11から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
培養を、コンディショニングされた培地を用いて間質性誘導下で実施し、その際、このコンディショニングされた培地はヒト又は動物の膀胱間質細胞又はヒト又は動物の骨髄間質前駆細胞を用いてコンディショニングされていることを特徴とする、請求項11から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
コンディショニングされた培地は、コンディショニングされていない培地をヒト又は動物の膀胱間質細胞又はヒト又は動物の骨髄間質前駆細胞と共に培養し、引き続き膀胱間質細胞又は骨髄間質前駆細胞から上清として除去することにより得られることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
上皮性−間質性誘導をヒト又は動物の尿路上皮−膀胱間質細胞の使用下で実施することを特徴とする、請求項11から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
培養を、コンディショニングされた培地を用いて上皮性−間質性誘導下で実施し、その際、このコンディショニングされた培地はヒト又は動物の尿路上皮−膀胱間質細胞を用いてコンディショニングされていることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
コンディショニングされた培地は、コンディショニングされていない培地をヒト又は動物の尿路上皮−膀胱間質細胞と共に培養し、引き続き尿路上皮−膀胱間質細胞から上清として除去することにより得られることを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
微小血管内皮細胞は再構築されるべき器官の間質組織から得られることを特徴とする、請求項11から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
真皮の微小血管内皮細胞は真皮から得られることを特徴とする、請求項14から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
(i) 前記間質組織をコラゲナーゼを用いて消化し、
(ii) 工程(i)において得られた混合物から、微小血管内皮細胞を、常磁性のレクチン結合粒子又は抗体結合粒子を使用して分離し、その際、前記抗体は血小板−内皮細胞−接着分子−1(PECAM 1)に対するモノクロナール抗体であり、
(iii) こうして得られた微小血管内皮細胞を増殖させ、及び
(iv) 工程(iii)で得られた混合物から微小血管内皮細胞を常磁性のレクチン結合粒子又は抗体結合粒子を使用して分離し、その際、前記抗体は血小板−内皮細胞−接着分子−1(PECAM 1)に対するモノクロナール抗体であり、そして、こうして得られた微小血管内皮細胞が、全ての細胞の数を基準として少なくとも95%の純度を有する混合物であることにより、
微小血管内皮細胞が構築されるべき器官の間質組織から得られることを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項26】
工程(ii)において残留した前記混合物の残留物をコンディショニングされた培地の製造のために使用することを特徴とする、請求項25記載の方法。
【請求項27】
間質性誘導又は尿路上皮−間質性誘導(工程(c))のもとでの、生物学的に適合性の無細胞の膜上に設けられている微小血管内皮細胞の培養の完了後に、他の組織特異的な細胞を前記膜上に適用し、そこで培養することを特徴とする、請求項11から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
ヒト又は動物の器官の再構築のために、請求項1から10までのいずれか1項記載の組織移植構築物を使用する方法。
【請求項29】
前記器官が膀胱、尿管及び尿道を含む群から選択されることを特徴とする、請求項28記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−528097(P2009−528097A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556652(P2008−556652)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000368
【国際公開番号】WO2007/098742
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(505350307)テヒニッシェ・ウニヴェルジテート・ドレスデン (5)
【Fターム(参考)】