説明

ヒト腫瘍壊死因子αに対する特異性を有する抗体分子およびそれらの使用

【課題】ヒト腫瘍壊死因子(TNFα)の抗原決定基に対する特異性を有する個体分子、および、その抗体分子の治療使用および製造法の提供。
【解決手段】ヒト腫瘍壊死因子(TNFα)の抗原決定基に対して特異性を有するマウスモノクローナル抗体に由来する少なくとも1つのCDRを含む抗体分子、および、少なくとも1つのCDRがハイブリッドCDRであるCDR移植抗体。さらに、それらの抗体分子の鎖をコードするDNA配列、ベクター形質転換宿主、および、メトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合している抗体分子、TNFαによって媒介される疾病の治療におけるそれらの抗体分子の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒト腫瘍壊死因子(TNFα)の抗原決定基に対する特異性を有する抗体分子に関する。本発明はまた、その抗体分子の治療的使用およびその抗体分子の製造方法に関する。
【0002】
本発明は抗体分子に関する。抗体分子中には二本の重鎖および二本の軽鎖がある。各軽鎖及び重鎖はそのN-末端に可変領域を有する。各可変領域は4つのフレームワーク領域(framework region)(FR)からなっており、3つの相補性決定領域(CDR)と交互になっている。可変領域中の残基はKabatらによって考えられた系に従って慣用的に番号付けられている。この系はKabatら、1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Departement of Health and Human Services, NIH,USA(以下、Kabatら(上述))に述べられている。特に示さない限り本明細書でこの番号付け体系が使用される。
【0003】
Kabat残基命名法はアミノ酸残基の直線的番号付けと必ずしも直接一致しない。実際の直線的アミノ酸配列は、基本可変領域構造の構造的要素、フレームワークまたはCDRのいずれにせよ、その短縮または挿入に対応して、厳格なKabat番号付けにおけるよりも少ないまたは追加のアミノ酸を有することがある。残基の正確なKabatの番号付けは、与えられた抗体について、「標準的」Kabat番号付けされた配列と抗体の配列中の相同性残基を整列させることによって決定されるであろう。
【0004】
重鎖可変領域のCDRはKabat番号付けに従って31-35番残基(CDRH1)、50-65番残基(CDRH2)、および95-102番残基(CDRH3)に位置している。
軽鎖可変領域のCDRは、Kabat番号付けに従って、24-34番残基(CDRL1)、50-56番残基(CDRL2)、および89-97番残基(CDRL3)に位置している。
【背景技術】
【0005】
CDR移植抗体の構築は欧州特許出願EP-A-0239400に記載されており、そこではマウスモノクローナル抗体のCDRが、長いオリゴヌクレオチドを用いた部位特異的変異導入により、ヒトイムノグロブリンの可変領域のフレームワーク領域に移植される方法が開示されている。CDRは抗体の抗原結合特異性を決定し、可変領域のフレームワーク領域上に保持される比較的短いペプチド配列である。
【0006】
CDR移植によるモノクローナル抗体のヒト化に関する初期の研究は、NPのような合成抗原を認識するモノクローナル抗体について行われた。しかしながら、リゾチームを認識するマウスモノクローナル抗体およびヒトT細胞上の抗原を認識するラットモノクローナル抗体がCDR移植によってヒト化された例が、Verhoeyenら(Science, 239, 1534-1536, 1988)およびRiechamnnら(Nature, 332, 323-324, 1988)にそれぞれ記載されている。
【0007】
RiechmannらはCDR単独の移植(Kabat(Kabatら(上述))およびWuら、J. Exp. Med., 132, 211-250, 1970によって規定された)ではCDR移植産物に満足のいく抗原結合活性を与えるには充分でないことを見いだした。ドナーフレームワーク領域の残基に一致するようにいくつかのフレームワーク残基を改変しなければならないことが見いだされた。どのフレームワーク領域残基を改変しなければならないかの基準の提案が国際出願WO 90/07861に記載されている。
【0008】
CDR移植抗体を論じた多数の総説が刊行されており、たとえばVaughanら(Nature Biotechnology, 16, 535-539, 1998)が含まれる。
TNFαは免疫系の細胞によって放出され、それらの細胞と相互作用する催炎作用性サイトカインである。従って、TNFαはグラム陰性細菌のリポポリサッカライド(LPS)によって活性化されたマクロファージによって放出される。このように、TNFαはバクテリア敗血症と関連した内毒素性ショックの発生と病理に関与する非常に重要な内在性仲介物質であるように見える。TNFαは、慢性関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎および多発性硬化病のような慢性疾病を含む多くのヒト疾病においてアップレギュレーションされることが示されている。ヒトTNFαについてトランスジェニックであるマウスは構成的に高レベルのTNFαを産生し、慢性関節リウマチに似た自発的破壊性多発性関節炎を発生させる(Kafferら、EMBO J, 10, 4025-4031, 1991)。従って、TNFαはプロ催炎作用性サイトカインと称される。
【0009】
TNFαに対するモノクローナル抗体は先行技術中に記載されている。Meagerら(Hybridoma, 6, 305-311, 1987)には組換えTNFαに対するマウスモノクローナル抗体が記載されている。Fendlyら(Hybridoma, 6, 359-370, 1987)には、TNFに対する中和エピトープの同定において組換えTNFαに対するマウスモノクローナル抗体の使用が記載されている。Shimamotoら、(Immunology Letters, 17, 311-318, 1988)にはTNFγに対するマウスモノクローナル抗体の使用およびマウスにおける内毒素性ショックの阻止におけるその使用が記載されている。更に、国際出願WO 92/11383には、CDR移植抗体を含むTNFαに特異的な組換え抗体が開示されている。Rankinら(British J. Rheumatology, 34, 334-342, 1995)には、慢性関節リウマチの治療におけるそのようなCDR移植抗体の使用が記載されている。US-A-5 919 452には、抗TNFキメラ抗体およびTNFの存在と関連した病理の治療におけるそれらの使用が記載されている。
【0010】
TNFαに対する抗体は内毒素性ショックに対する予防及び治療のために提案されている(Beutlerら Science, 234, 470-474, 1985)。Bodmerら(Critical Care Medicine, 21, S441-S446, 1993)およびWherryら(Critical Care Medicine, 21, S436-S440, 1993)では、敗血症性ショックの治療における抗TNFα抗体の治療の可能性について議論されている。敗血症性ショックの治療における抗TNFα抗体の使用はKirshcenbaumら(Critical Care Medicine, 26, 1625-1626, 1998)でも議論されている。コラーゲン誘導関節炎は抗TNFαモノクローナル抗体を用いて効果的に治療できる(Williamsら、(PNAS-USA, 89, 9784-9788, 1992))。
【0011】
TNFαのレベルの上昇が慢性関節リウマチ(rheumatoid arthritis)にかかった患者の関節液および末梢血の両方において見いだされている。TNFα阻害剤が慢性関節リウマチにかかった患者に投与された場合、患者の炎症は低減し、症状が改善され、関節損傷が阻害される(McKownら、(Arthritis Rheum., 42, 1204-1208, 1999))。
【0012】
慢性関節リウマチおよびクローン病の治療における抗TNFα抗体の使用は、Feldmanら(Transplantation Proceedings, 30, 4126-4127, 1998)、Adoriniら、(Trends in Immunology Today, 18, 209-211, 1997)およびFeldmanら(Advances in Immunology, 64, 283-350, 1997)において論じられている。そのような治療において使用されるTNFαに対する抗体は一般にキメラ抗体であり、US-A-5 919 452に記載されたようなものである。
【0013】
慢性関節リウマチの治療のために2つのTNFα阻害産物が現在認可されている。第一は、エタネルセプト(etanercept)と呼ばれるものであり、イムネックス社からEnbrelTMとして市場に出されている。これは、ヒトイムノグロブリンのFc部分に結合した2つのp75可溶性TNFレセプタードメインを含む組換え融合タンパク質である。第2は、インフリキシマブ(infliximab)と呼ばれるものであり、セントコア社からRemicadeTMとして市場に出されている。これはマウス抗TNFα可変領域およびヒトIgG1定常領域を有するキメラ抗体である。
【0014】
先行技術の組換え抗TNFα抗体分子は一般に、可変領域またはCDRが由来する抗体に比較してTNFαに対して低下したアフィニティーを有しており、一般には哺乳動物細胞で生産しなければならず、製造のために費用がかかる。先行技術の抗TNFα抗体はStephensら(Immunology, 85,; 668-674, 1995)、GB-A-2 246 570およびGB-A-2 297 145に記載されている。
【0015】
繰り返し使用でき、簡単かつ効率的に生産できる、慢性炎症性疾病を治療するための抗体分子に対する需要が存在する。また、TNFαに対して高いアフィニティーを有しヒトにおいて低い免疫原性を有する抗体分子に対する需要が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、第一の側面において、TNFαに対する特異性を有し、可変領域がCDRH1として図3にH1として記載した配列(配列番号1)、CDRH2として図3にH2'として(配列番号2)または図3にH2として(配列番号7)記載した配列、または、CDRH3として図3にH3として記載した(配列番号3)配列を有するCDR(Kabatによる定義(上述))を含む重鎖を含む、抗体分子を提供する。
【0017】
本発明の第1の側面による抗体分子は、重鎖可変領域としてH1、H2'またはH2、およびH3(配列番号1,配列番号2または配列番号7、および配列番号3)から選ばれる少なくとも1つのCDRを含む。好ましくは本抗体分子は、重鎖可変領域中に少なくとも2つのCDR、より好ましくは3つの全てのCDRを含む。
【0018】
本発明の第2の側面において、TNFαに対する特異性を有し、可変領域がCDRL1として図3にL1として記載した配列(配列番号4)、CDRL2として図3にL2として(配列番号5)記載した配列、または、CDRL3として図3にL3として記載した(配列番号6)配列を有するCDR(Kabatによる定義(上述))を含む軽鎖を含む、抗体分子が提供される。
【0019】
本発明の第2の側面による抗体分子は、軽鎖可変領域としてL1、L2およびL3(配列番号4から配列番号6)から選ばれる少なくとも一つのCDRを含む。好ましくは、本抗体分子は軽鎖可変領域中に少なくとも2つのCDR、より好ましくは3つの全てのCDRを含む。
【0020】
本発明の第1および第2の側面による抗体分子はそれぞれ相補性軽鎖または相補性重鎖を有することが好ましい。
好ましくは、本発明の第1または第2の側面による抗体分子は、可変領域がCDRH1として図3にH1として記載した配列(配列番号1)、CDRH2として図3にH2'として(配列番号2)または図3にH2として(配列番号7)記載した配列、または、CDRH3として図3にH3として記載した(配列番号3)配列を有するCDR(Kabatによる定義(上述))を含む重鎖、並びに、可変領域がCDRL1として図3にL1として記載した配列(配列番号4)、CDRL2として図3にL2として(配列番号5)記載した配列、または、CDRL3として図3にL3として記載した(配列番号6)配列を有するCDR(Kabatによる定義(上述))を含む軽鎖、を含む。
【0021】
上述した、配列番号1および3から7、および図3に記載したCDRはマウスモノクローナル抗体hTNF40に由来する。しかしながら配列番号2はハイブリッドCDRからなる。ハイブリッドCDRはマウスモノクローナル抗体hTNF40からの重鎖CDR2の一部(配列番号7)および、ヒトグループ3生殖系列V領域配列からの重鎖CDR2の一部を含んでいる。
【0022】
マウスhTNF40抗体の可変領域の完全な配列は図6(軽鎖)(配列番号99)および図7(重鎖)(配列番号100)に示してある。このマウス抗体は以下では「ドナー抗体」と呼ぶ。
【0023】
本発明の第1または第2の側面の別の好ましい第1の実施態様は、それぞれ図6(配列番号99)および図7(配列番号100)に示した軽鎖及び重鎖可変領域を有する、マウスモノクローナル抗体hTNF40である。hTNF40の軽鎖定常領域はκであり重鎖定常領域はIgG2aである。
【0024】
第2の別の実施態様では、本発明の第1または第2のいずれかの側面による抗体はマウス/ヒトキメラ抗体分子であり、本明細書ではキメラhTNF40抗体分子と呼ばれる。このキメラ抗体分子はマウスモノクローナル抗体hTNF40の可変領域(配列番号99および100)およびヒト定常領域を含む。好ましくは、キメラhTNF40抗体分子は軽鎖中にヒトCκ領域(Hieterら、Cell, 22, 197-207, 1980; Genebankアクセッション番号J00241)および重鎖中にヒトγ4領域(Flanaganら、Nature, 300, 709-713, 1982)を含んでいる。
【0025】
また第3の別の好ましい実施態様では、本発明の第1または第2のいずれかの側面による抗体はCDR移植抗体分子である。本明細書において、用語「CDR移植抗体分子」とは、重鎖および/または軽鎖が、アクセプター抗体(例えばヒト抗体)の重鎖および/または軽鎖の可変領域フレームワークに移植されているドナー抗体(例えばマウスモノクローナル抗体)由来の1以上のCDR(所望であればハイブリッドCDRを含む)を含む抗体分子を言う。
【0026】
好ましくは、このようなCDR移植抗体はヒトアクセプターフレームワーク領域および1以上の上述したドナーCDRを含む可変領域を有する。
CDRが移植される場合、そのCDRが由来するドナー抗体のクラス/タイプを考慮しつつ、マウス、霊長類およびヒトフレームワーク領域を含むどんな適当なアクセプター可変領域フレームワーク配列も使用することができる。本発明において使用し得るヒトフレームワークの例はKOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAYおよびPOM(Kabatら、上述)である。例えば、KOLおよびNEWMは重鎖に使用でき、REIは軽鎖に使用でき、EU、LAYおよびPOMは重鎖及び軽鎖のいずれにも使用できる。軽鎖のための好ましいフレームワーク領域は図1に示したヒトグループ1フレームワーク領域(配列番号83、85、87および89)である。重鎖のための好ましいフレームワーク領域は図2に示したグループ1およびグループ3フレームワーク領域である(それぞれ、配列番号91、93、95および97、および配列番号106、107、108および109)。
【0027】
本発明のCDR移植抗体において、アクセプター抗体としてドナー抗体の鎖に相同である鎖を有するものを使用することが好ましい。アクセプター重鎖および軽鎖は必ずしも同じ抗体に由来する必要はなく、所望であれば異なる鎖に由来するフレームワークを有する複合鎖を含んでもよい。
【0028】
また、本発明のCDR移植抗体において、フレームワーク領域はアクセプター抗体のフレームワーク領域と正確に同じ配列を有している必要はない。例えば、普通でない残基をそのアクセプター鎖クラスまたはタイプにおいてより頻度高く現れる残基に変えてもよい。あるいは、アクセプターフレームワーク領域中の選択した残基をドナー抗体において同じ位置に見られる残基に一致するように変えてもよい。そのような交換はドナー抗体のアフィニティーを回復するために必要最小限にとどめるべきである。アクセプターフレームワークにおける変化させるべき残基の選択のためのプロトコールはWO 91/09967に述べられている。
【0029】
好ましくは、本発明のCDR移植抗体分子において、アクセプター重鎖がヒトグループ1フレームワーク領域(図2に示した)(配列番号91、93、95および97)を有する場合、重鎖のアクセプターフレームワーク領域は、1以上のドナーCDRに加えて、位置28、69および71(Kabatらによる(上述))にドナー残基を含む。
【0030】
あるいは、アクセプター重鎖がグループ1フレームワーク領域を含む場合に、重鎖のアクセプターフレームワーク領域は、1以上のドナーCDRに加えて、位置28、38、46、67、69および71(Kabatらによる(上述))にドナー残基を含む。
【0031】
好ましくは、本発明のCDR移植抗体分子において、アクセプター重鎖がヒトグループ3フレームワーク領域(図2に示した)(配列番号106、107、108および109)を有する場合、重鎖のアクセプターフレームワーク領域は、1以上のドナーCDRに加えて、位置27、28、30、48、49、69、71、73、76および78(Kabatらによる(上述))にドナー残基を含む。
【0032】
好ましくは、本発明のCDR移植抗体分子において、アクセプター軽鎖がヒトグループ1フレームワーク領域(図1に示した)(配列番号83、85、87および89)を有する場合、軽鎖のアクセプターフレームワーク領域は位置46および60(Kabatらによる(上述))にドナー残基を含む。
【0033】
ドナー残基はドナー抗体、すなわち、CDRが元々由来する抗体から由来する残基である。
本発明の抗体分子は以下を含み得る:完全長重鎖および軽鎖を有する完全な抗体分子;Fab、改変Fab、Fab'、F(ab')2、またはFv断片のような、それらの断片;軽鎖又は重鎖モノマー、またはダイマー;一本鎖抗体、例えば重鎖および軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって結合している一本鎖Fv。同様に、重鎖及び軽鎖可変領域は適宜他の抗体領域と結合していても良い。
【0034】
好ましくは、本発明の抗体分子はFab断片である。好ましくはこのFab断片は配列番号111に記載した配列を有する重鎖および配列番号113に記載した配列を有する軽鎖を有する。配列番号111および配列番号113に記載のアミノ酸配列は好ましくはそれぞれ配列番号110および配列番号112に記載のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0035】
あるいは、本発明の抗体分子は改変Fab断片であって、その改変がエフェクターまたはレポーター分子の付加(attachment)を可能とするための、1以上のアミノ酸のその重鎖C-末端への付加であることが好ましい。追加のアミノ酸はエフェクターまたはレポーター分子が付加し得る1または2個のシステイン残基を含む改変ヒンジ領域を形成することが好ましい。そのような改変Fab断片は好ましくは配列番号115に記載の配列を有する重鎖、および、配列番号113に記載の配列を有する軽鎖を有する。配列番号115に記載のアミノ酸配列は好ましくは配列番号114に記載のヌクレオチド配列にコードされる。
【0036】
好ましいエフェクターグループは、改変Fab断片に付加してその半減期をin vivoで増加させることのあるポリマー分子である。
このポリマー分子は、一般には、合成ポリマーまたは天然に存在するポリマーであってよく、例えば場合によっては置換されていても良い、直鎖若しくは分枝したポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー、または分枝若しくは非分枝の多糖、例えば、ホモ-多糖またはヘテロ-多糖であってよい。
【0037】
場合により上述した合成ポリマー上に存在してもよい具体的な置換基には、1以上のヒドロキシ、メチルまたはメトキシ基が含まれる。合成ポリマーの具体例には、場合により置換されていても良い直鎖または分枝鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)またはそれらの誘導体、特に、場合により置換されていても良いポリ(エチレングリコール)例えばメトキシポリ(エチレングリコール)またはそれらの誘導体が含まれる。具体的な天然に存在するポリマーには、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲンまたはそれらの誘導体が含まれる。本明細書において「誘導体」とは、反応性誘導体を含むことを意図しており、例えば、マレイミドその他のような、チオール選択的反応性基を含むことを意図している。反応性基はポリマーに直接またはリンカーセグメントを介して結合していて良い。そのような基の残基はある場合には、抗体断片とポリマー間のリンキング基のように、産物の一部を形成するであろう。
【0038】
ポリマーの大きさは所望により変動させて良いが、一般には平均分子量500Daから50000Da、好ましくは5000から40000Da、より好ましくは25000から40000Daであろう。ポリマーサイズは特に産物の意図した用途に基づいて選ばれる。従って、例えば産物が循環流を離れ組織に侵入することを意図している場合、例えば腫瘍の治療における使用のためには、低分子量ポリマー、例えば5000Da付近の分子量を有するポリマーを使用することが有利であろう。産物が循環流にとどまる適用例のためには、より高分子量のポリマー、例えば25000Daから40000Daの範囲の分子量を有するポリマーを使用することが有利かもしれない。
【0039】
特に好ましいポリマーには、ポリ(エチレングリコール)、または、特に、メトキシポリ(エチレングリコール)またはそれらの誘導体のようなポリアルキレンポリマー、特に約25000Daから約40000Daの範囲の分子量のものである。
【0040】
改変抗体断片に結合した各ポリマー分子はその断片中に位置するシステイン残基のイオウ原子に共有結合的に連結(covalently linked)していてもよい。共有結合的な連結は一般にジスルフィド結合、または、特にイオウ−炭素結合であろう。
【0041】
所望であれば、抗体分子はそれに結合した1以上のエフェクターまたはレポーター分子を有していて良い。エフェクター分子またはレポーター分子は、断片中に位置するいかなる利用できるアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基、例えばいかなる遊離アミノ、イミノ、ヒドロキシルまたはカルボキシル基を介して抗体断片に結合していても良い。
【0042】
上述したポリマー改変抗体断片の調製において活性化ポリマーを出発材料として使用してよい。活性化ポリマーはα-ハロカルボン酸またはエステル、例えば、ヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホンまたはジスルフィドのようなチオール反応性基を含むどんなポリマーでもよい。そのような出発材料は商業的に入手可能であるか(例えば、Shearwater Polymers社、Huntsville, AL, USA)、または商業的に入手可能な出発材料から慣用された化学的方法を用いて調製してもよい。
【0043】
付加している(attaching)ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分については、"Poly(ethyleneglycol) Chemistry, Biotechnical and Biomedical Applications", 1992, J. Milton Harris(編集), Plenum Press, New York, "Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications", 1997, J. Milton HarrisとS.Zalipsky(編集), American Chemical Society, Washington DC、および、"Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences", 1998, M. AslamとA.Dent, Grove Publishers, New Yorkを参照することができる。
【0044】
エフェクターまたはレポーター分子に連結した(linked)抗体分子を得ることが望まれる場合は、それは標準的な化学的手段又は組換えDNA法によって調製してよく、そこでは抗体分子は適宜活性化ポリマーとの反応前又は後のいずれかで直接またはカップリング試薬によりエフェクター分子またはレポータ分子に連結される。具体的な化学的方法には、例えば、WO 93/62331、WO 92/22583、WO 90,195および WO 89/1476に記載されたものが含まれる。あるいは、エフェクターまたはレポータ分子がタンパク質またはポリペプチドである場合、連結は組み合えDNA法、例えばWO 86/01533およびEP-A-0392745に記載されたような方法を用いて達成できる。
【0045】
好ましくは、本発明の改変Fab断片は、EP-A-0948544に開示された方法によりPEG化されている(すなわち共有結合的に付加されたPEG(ポリ(エチレングリコール))を有する)。好ましくは、本発明の抗体分子は図13に示したようなPEG化された改変Fab断片である。図13に示したように、改変Fab断片は、改変されたヒンジ領域中の単一のチオール基に共有結合的に連結したマレイミド基を有する。リジン残基はマレイミド基に共有結合的に連結している。リジン残基上の各アミン基にはおよそ20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーが付加している。全エフェクター分子の総分子量は従って、およそ40,000Daである。
【0046】
好ましくは、図13に示した化合物中、抗体部分の重鎖は配列番号115に記載した配列を有し、軽鎖は配列番号113に記載した配列を有する。この化合物を本明細書ではCDP870と呼ぶ。
【0047】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、もし存在するのであれば、抗体分子の提案される機能を考慮して選ばれてよく、特に必要とされるかもしれないエフェクター機能が考慮される。例えば、定常領域ドメインはヒトIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMドメインであってよい。特に,ヒトIgG定常領域ドメインを使用してよく、特に抗体分子が治療的使用を意図しており、抗体エフェクター機能が要求される場合はIgG1およびIgG3アイソタイプのものを使用することができる。あるいは、抗体分子が治療目的で意図されており、抗体エフェクター機能が要求されない場合、例えば単にTNFα阻害活性を意図されている場合は、IgG2およびIgG4アイソタイプを使用することができる。
【0048】
また、本発明の抗体分子はそれに付加されたエフェクターまたはレポーター分子を有していてもよい。例えば、共有結合架橋構造によって付加した、重金属原子をキレートするためのマクロ環またはリシンのような毒素を有していてもよい。あるいは、組換えDNA技術の方法を用いてFc断片(CH2、CH3およびヒンジ領域)、完全なイムノグロブリン分子のCH2およびCH3ドメインまたはCH3ドメインが酵素または毒素分子のような機能性非イムノグロブリンタンパク質によって置き換えられ、またはペプチド連結によってそれらに付加した抗体分子を作製してもよい。
【0049】
本発明の抗体分子は少なくとも0.85x10-10Mの結合アフィニティー、より好ましくは少なくとも0.75x10-10M、最も好ましくは少なくとも0.5x10-10Mの結合アフィニティーを有している。(以下に記載する本発明の好ましいヒト化抗体分子は、約0.5x10-10Mのアフィニティーを有しており、それが由来するマウスモノクローナル抗体のアフィニティーよりも優れていることは述べるに値するであろう。マウス抗体は約0.85x10-10Mのアフィニティーを有している。)
好ましくは、本発明の抗体分子は軽鎖可変領域hTNF40-gL1(配列番号8)および重鎖可変領域gh3hTNF40.4(配列番号11)を含んでいる。これらの軽鎖および重鎖の可変領域の配列はそれぞれ図8および11に示した。
【0050】
本発明はまた、本発明の抗体分子の変異体であってTNFαに対する改善されたアフィニティーを有するものに関する。そのような変異体はCDRの変異誘導(Yangら、J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、鎖シャッフリング(Marksら、Bio/Technology, 10, 779-783)、E.coliの変異誘発株の使用(Lowら、J. Mol. Biol., 250, 359-368, 1996)、DNAシャッフリング(Pattenら、Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J. Mol. Biol., 256, 77-88, 1996)および有性PCR(sexual PCR)(Crameriら、Nature, 391, 288-291, 1998)を含む種々のアフィニティー成熟化プロトコール(maturation protocol)によって得ることができる。Vaughanら(上述)はこれらのアフィニティー成熟化プロトコールについて論じている。
【0051】
本発明はまた本発明の抗体分子の重鎖および/または軽鎖をコードするDNA配列を提供する。
好ましくは、本DNA配列は本発明の抗体分子の重鎖または軽鎖をコードする。
【0052】
一つの実施態様において、本DNA配列は軽鎖をコードし、配列番号8(hTNF40-gL1)または配列番号9(h-TNF-40-gL2)またはそれらの縮重した等価物を含む。
別の好ましい態様では、本DNA配列は重鎖をコードし、配列番号10(gh1hTNF40.4)または配列番号11(gh3hTNF40.4)またはそれらの縮重した等価物を含む。
【0053】
本発明のDNA配列は合成DNA、例えば化学的方法によって作製されたもの、cDNA、ゲノムDNAまたはそれらのどんな組み合わせを含んでいてもよい。
本発明はまた、本発明の1以上のDNA配列を含むクローニングベクターまたは発現ベクターに関する。好ましくは、本クローニングベクターまたは発現ベクターは本発明の抗体分子の軽鎖および重鎖をそれぞれコードする2つのDNA配列を含む。
【0054】
好ましい実施態様では、本発明は本発明のDNA配列を含む大腸菌(E.coli)発現ベクターを提供する。好ましくは本発現ベクターは図22に模式的に示したpTTO(CDP870)である。
本発明はまた図19に示したベクターpDNAbEng-G1を含む。
【0055】
ベクターを構築することができる一般的な方法、トランスフェクション方法および培養方法は当業者によく知られたものである。この点について、"Current Protocols in Molecular Biology", 1999, F.M. Ausubel(編集), Wiley Interscience, New YorkおよびCold Spring Harbor Publishingから出版されているManiatisマニュアルを参照することができる。
【0056】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は当業者によく知られた方法によって得ることができる。例えば、抗体重鎖および軽鎖の一部又は全部をコードするDNA配列は所望により決定したDNA配列または対応するアミノ酸配列に基づいて合成することができる。
【0057】
アクセプターフレームワーク配列をコードするDNAは当業者には広く入手可能であり、既知のアミノ酸配列に基づいて容易に合成することができる。
本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製するために分子生物学の標準的な技法を使用することができる。所望のDNA配列はオリゴヌクレオチド合成技法を用いて完全にまたは部分的に合成することができる。適切ならば、部位特異的変異導入およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用することができる。
【0058】
本発明の抗体分子をコードすDNA配列の発現のために、どのような適切な宿主細胞/ベクター系を使用してもよい。例えば大腸菌および他の微生物系のようなバクテリア系を特にFabおよびF(ab')2断片のような抗体断片、特にFv断片および一本鎖抗体断片、例えば一本鎖Fvの発現に使用してもよい。真核生物の、例えば哺乳動物細胞発現系を、完全な抗体分子を含む、より大きな抗体分子の産生のために使用することができる。適切な哺乳動物宿主細胞にはCHO、ミエローマまたはハイブリドーマ細胞が含まれる。
【0059】
本発明はまた、本発明のベクターを含む宿主細胞を本発明の抗体分子をコードするDNAからのタンパク質発現を誘導するために適切な条件下で培養し、前記抗体分子を単離することを含む、本発明の抗体分子を製造する方法を提供する。
【0060】
好ましくは、本発明の抗体分子の製造方法は、本発明のDNA配列を含む大腸菌発現ベクターを含む大腸菌を前記DNA配列からのタンパク質発現を誘導するために適した条件下で培養し、前記抗体分子を単離することを含む。抗体分子は適切なシグナル配列によって細胞から分泌され、またはペリプラズムに標的化されうる。あるいは、本抗体分子は細胞の細胞質内に蓄積することもある。好ましくは、本抗体分子はペリプラズムに標的化される。産生される抗体分子および使用する方法に依存して、抗体分子が再フォールディングし、機能性コンフォメーションをとれることが好ましい。抗体分子の再フォールディングを可能にする方法は当業者によく知られている。
【0061】
抗体分子は重鎖または軽鎖ポリペプチドのみを含んでもよく、その場合は重鎖または軽鎖ポリペプチドコード配列のみを宿主細胞をトランスフェクションするために使用する必要がある。重鎖および軽鎖の両方を含む産物の産生のためには、細胞株は2つのベクター、軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクターおよび重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターでトランスフェクションしてもよい。あるいは、軽鎖および重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む、単一のベクターを使用してもよい。
【0062】
本発明はまた、製薬的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせた本発明の抗体分子を含む治療用または診断用組成物を提供する。
本発明はまた、本発明の抗体分子を製薬的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体と混合することを含む、治療用または診断用組成物を調製する方法を提供する。
【0063】
抗体分子は治療用または診断用組成物中で唯一の活性成分であってもよいし、他の抗体成分を含む他の活性成分、例えば抗T細胞抗体、抗IFN-γ抗体または抗LPS抗体、またはキサンチンのような非抗体成分を伴っていてもよい。
【0064】
本医薬組成物は好ましくは治療上効果的な量の本発明の抗体を含む。本明細書において「治療上効果的な量」とは、対象とする疾病または状態を治療、改善または予防するために必要な、または、検出し得る治療又は予防効果を顕在化させるために必要な治療剤の量をいう。どの抗体についても、治療上効果的な用量は、最初に細胞培養アッセイまたは動物モデル、通常げっ歯類、ウサギ、イヌまた霊長類において評価することができる。動物モデルはまた、投与の適切な濃度範囲及び経路を決定するためにも使用できる。そのような情報は、次に、ヒトにおいて有用な投与用量及び経路を決定するために使用することができる。
【0065】
ヒト患者に関する正確な効果的量は疾病状態の重篤度、患者の一般的健康、患者の年齢、体重及び性別、食餌、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、治療に対する反応感受性および寛容性/応答に依存するであろう。この量は、日常的な実験法によって決定することができ、医師の判断の範囲内である。一般には、効果的な用量は0.01mg/kg〜50mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜20mg/kg、より好ましくは約15mg/kgである。以下の実施例に示すように、1、5および20mg/kgの用量は慢性関節リウマチにかかった患者の治療に使用される。
【0066】
組成物は個々に患者に与えられてよく、他の物質、薬剤またはホルモンと組み合わせて投与されてもよい。
本発明の抗体分子が投与される用量は、治療される状態の性質、所望のレベルを越えて生じた中和すべきまたは中和されると期待されるTNFαのレベルの程度、および、抗体分子が予防的に使用されるか既存の状態を治療するために使用されるかに依存する。
【0067】
従って、例えば、産物が慢性関節リウマチのような慢性炎症性疾病の治療または予防のためである場合、本発明の抗体分子の適切な用量は0.5〜50mg/kgの範囲、より好ましくは1〜20mg/kgの範囲にあり、もっとも好ましくは約15mg/kgである。投与頻度は抗体分子の半減期およびその効果の持続性に依存する。
【0068】
抗体分子が短い半減期(例えば2〜10時間)を有する場合、1日に1回以上の投与が必要かもしれない。あるいは、抗体が長い半減期(例えば2〜15日)を有する場合、1日、1週間に1回のみ、または1〜2ヶ月に1回のみの投与しか必要でないかもしれない。
【0069】
医薬組成物は抗体の投与のために製薬的に許容できる担体を含んでいてもよい。担体は、それ自体はその組成物を受けた患者に有害な抗体の産生を誘導してはならず、毒性であってはならない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子のような、大きな、ゆっくりと代謝される巨大分子であってよい。
【0070】
製薬的に許容できる塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩のような無機酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩のような有機酸塩を使用することができる。
【0071】
治療組成物中の製薬的に許容できる担体は更に、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールのような液体を含んでいてもよい。更に、湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝物質のような補助物質もその様な組成物中に存在しても良い。そのような担体は、患者による摂食のため、本医薬組成物を錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、および懸濁液として製剤化することを可能とする。
【0072】
投与のための好ましい形態には、非経口投与、例えばボーラス静脈注射または連続インフュージョンによる注射またはインフュージョンのために適切な形態が含まれる。産物が注射またはインフュージョン用である場合、懸濁液、溶液または油性または水性ビヒクル中の乳液の形態をとることができ、懸濁剤、保存剤、安定化剤および/または分散剤のような製剤化剤を含んでいてもよい。あるいは、抗体分子は、使用前に適切な滅菌液体による再構成用に乾燥形態であっても良い。
【0073】
製剤化されたならば、本発明の組成物は患者に直接投与することができる。治療すべき患者は動物であってもよい。しかしながら、本組成物はヒト患者に投与するために適合化されることが好ましい。
【0074】
本発明の医薬組成物は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、動脈内経路、骨髄内経路、鞘内経路、心室内経路、経皮経路(transdermal)、経皮膚経路(transcutaneous)(例えば、WO 98/20734を参照せよ)、皮下経路、腹腔内経路、鼻腔経路、経腸経路、局所的経路、舌下経路、腟内経路または直腸経路(これらに限定されない)を含む種々の経路によって投与されても良い。ハイポスプレーも本発明の医薬組成物を投与するために使用することができる。典型的には、本治療組成物は液体溶液または懸濁液ののいずれにしろ注射可能に調製されるであろう。注射に先立つ液体ビヒクル中の溶液または懸濁液のために適切な固体形態も調製することができる。
【0075】
本組成物の直接デリバリーは一般には、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内注射、または、組織の間質空隙へのデリバリーによって達成される。本組成物はまた病巣部へ投与することもできる。投薬治療は単一投与スケジュールでも複数投与スケジュールでも良い。
【0076】
本組成物中の活性成分は抗体分子であることが認識できるであろう。そうであるから、消化管における分解が疑われるであろう。従って、本組成物が消化管を利用した経路によって投与される場合、本組成物は抗体を分解から保護するが消化管から吸収されたならば抗体を放出する物質を含む必要があるであろう。
【0077】
製薬的に許容できる担体の詳細な議論はRemington's Pharmaceutical Sciences(Mark Publishing Company, N.J. 1991)から得ることができる。
また、本発明の抗体は遺伝子治療の利用によって投与することができることも予測される。これを達成するためには、適切なDNA要素の制御下にある、抗体分子の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列を患者に導入し、抗体鎖をそのDNA配列から発現させin situでアッセンブルさせる。
【0078】
本発明はまた、TNFαによって媒介される疾病の治療に使用するための本発明の抗体を提供する。
本発明はさらに、TNFαによって媒介される疾病の治療のための医薬品の製造における本発明の抗体の使用を提供する。
【0079】
本発明の抗体分子はヒトまたは動物の体内に存在する生物学的に活性なTNFαのレベルを低減することが望まれるどのような治療においても使用することができる。TNFαは体内において循環していることも体内の特定の部位に望ましくない高レベルで局在することもある。
【0080】
例えば、TNFαの上昇したレベルは、敗血症性ショック、内毒素性ショック、および心血管性ショック、炎症性疾病、神経変性疾病、悪性疾病およびアルコール誘導性疾病を含む、急性および慢性の免疫異常および免疫調節異常、感染に関与している。TNFαと上昇したレベルと関連した種々の疾病の詳細がUS-A-5 919 452に述べられている。本発明の抗体分子はTNFαによって媒介される疾病の治療に使用することができる。本発明の抗体分子によって治療しえる特に関連のある疾病には、敗血症、うっ血性心不全、敗血症性ショックまたは内毒素性ショック、悪液質、成人呼吸障害症候群、AIDS、アレルギー、乾癬、TB、炎症性骨疾患、血液凝固疾患、火傷、器官又は組織移植に伴う拒絶の発症、クローン病、甲状腺炎および慢性関節リウマチ及び骨関節炎のような自己免疫疾患が含まれる。
【0081】
さらに、本抗体分子又は組成物は以下に使用できる:腫瘍治療中のTNFα生成と関連した副作用の低減;抗リンパ細胞抗体の使用による移植拒絶の治療または阻止と関連したショック-関連症候群の除去または低減;または、多臓器不全の治療。
【0082】
本発明の抗体分子は好ましくは慢性関節リウマチまたは骨関節炎の治療に使用される。
本発明はまた、TNFαによって媒介される疾病にかかった、またはその危険のあるヒト若しくは動物患者の治療方法であって、患者に本発明の抗体の効果的量を投与することを含む前記方法を提供する。
【0083】
本発明の抗体分子は診断、例えば、TNFαの上昇したレベルと関連する疾病状態のin vivo診断および画像解析にも使用することができる。
本発明は、短縮された(truncated)ドナーCDR配列を含むハイブリッドCDRを含む抗体分子も提供する。その短縮されたドナーCDRの欠失部分は異なる配列によって置換され、機能のあるCDRを形成している。本明細書において、用語「ハイブリッドCDR」は1以上の位置において、例えばその末端の一方または両端において短縮されたドナーCDRを含むCDRを意味する。その短縮されたドナーCDRの欠失部分は異なる配列によって置換され、完全かつ機能のあるCDRを形成している。ハイブリッドCDRは完全なドナーCDRに比較して少なくとも一つのアミノ酸置換を有する。CDRの短縮された部分を置換する配列はどのような配列であってもよい。好ましくは、CDR配列の非ドナー部分は、生殖細胞系列抗体配列のような、その抗体分子のフレームワーク領域が由来する抗体に由来するものである。
【0084】
ハイブリッドCDRを含む抗体分子は完全なドナーCDRを含む抗体分子と本質的に同じ結合アフィニティーを維持することが明らかにされた。本明細書において「本質的に同じ結合アフィニティー」とは、完全なドナーCDRを含む対応する抗体分子の結合アフィニティーの少なくとも70%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも95%を意味する。上述したように、ある場合には、本発明の抗体のアフィニティーはドナー抗体のアフィニティーよりも高いことがある。ハイブリッドCDRの使用は抗体分子内に存在する外来性(すなわちドナーの)配列の量を低下させるという利点を与え、完全なドナーCDRを含む対応する抗体分子に比較して抗体分子の結合アフィニティーを上昇させることもある。
【0085】
抗体分子のどのCDRがハイブリッドであってよい。好ましくは、重鎖のCDR2が抗体分子中でハイブリッドである。
好ましくは、ドナーCDRの短縮は1〜8アミノ酸、より好ましくは4〜6アミノ酸である。短縮はCDRのC-末端で行われることがさらに好ましい。
【0086】
CDRの短縮された部分およびその失われた部分を置換する異なる配列に依存して、いくつかのアミノ酸置換がなされ得る。好ましくは、少なくとも2つのアミノ酸置換がなされ、より好ましくは少なくとも3つのアミノ酸置換がなされ、もっとも好ましくは少なくとも4つのアミノ酸置換がなされる。
【0087】
本発明のこの側面の特定の実施態様は、本発明の第一の側面による抗体であって、重鎖中の第2番目のCDRが配列番号2に示した配列を有するものである。これはそのCDRの部分が由来するドナー抗体よりもその抗原に対してより良好なアフィニティーを有する。
【0088】
本発明はまた、本発明のハイブリッドCDRを含む抗体分子をコードする核酸配列を提供する。
本発明はまた、本発明のハイブリッドCDRを含む抗体分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターを提供する。
【0089】
本発明はまた、本発明のベクターで形質転換した宿主細胞も提供する。
本発明はまた、本発明の宿主細胞を培養し、抗体分子を単離することを含む、ハイブリッドCDRを含む抗体分子を生産する方法を提供する。
【0090】
本発明は更に添付の図面を参照する以下の実施例において例示として記載される。
【実施例】
【0091】
実施例
キメラhTNF40抗体分子の遺伝子クローニングおよび発現

hTNF40ハイブリドーマ細胞からのRNA調製
全RNAを以下に示すように3x107個のハイブリドーマ細胞から調製した。
【0092】
細胞を生理食塩水で洗浄し、RNAzol(106個の細胞に対して0.2ml)中で溶解した。クロロホルム(ホモゲネート2mlに対して0.2ml)を加え、混合物を15秒間激しく振盪し、氷中で15分間放置した。得られた水性相および有機相をエッペンドルフ遠心管で15分間遠心することにより分離し、等体積のイソプロパノールの添加により水性相からRNAを沈殿させた。氷上で15分間後、RNAを遠心によりペレット化し、70%エタノールで洗浄し、乾燥させ、滅菌した無RNAse水に溶解した。RNAの収量は400μgであった。
【0093】
hTNF40 VhおよびVlのPCRクローニング
hTNF40重鎖および軽鎖の可変領域をコードするcDNA配列を逆転写酵素を使って合成し、全RNA中に存在するmRNAの一本鎖cDNAコピーを作製し、続いてそのcDNAに対して特異的オリゴヌクレオチドプライマーによりポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
【0094】
a)cDNA合成
以下の試薬を含む20μlの反応体積中でcDNAを合成した:50mM Tris-HCl pH8.3、75mM KCl、10mM ジチオスレイトール、3mM MgCl2、0.5mMの各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、20ユニットRNAsin、75ngのランダムヘキサヌクレオチドプライマー、2μgのhTNF40 RNAおよび200ユニットのモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素。42℃にて60分間インキュベーション後、95℃にて5分間加熱することにより反応を停止させた。
【0095】
b)PCR
cDNAのアリコートを重鎖および軽鎖に特異的なプライマーの組合せを用いてPCRにかけた。重鎖および軽鎖のために5'プライマーヌクレオチド配列はそれぞれ表1および表2に示した。これらの配列はすべて、順に、その5'末端から7ヌクレオチドから始まる制限酵素部位、生じるmRNAの最適翻訳を可能とするための配列GCCGCCACC(配列番号12)、開始コドン、および既知のマウス抗体のリーダーペプチド配列(Kabatら、Sequences of proteins of immunological interest, 第5版、1991、米国保健社会福祉省, 公衆衛生局, 国立衛生研究所)に基づく20〜30ヌクレオチドを含んでいる。
【0096】
3'プライマーは表3に示してある。軽鎖プライマーは、抗体のJ-C結合部にまたがっており、Vl PCR断片のクローニングを容易にするために酵素SplIの制限酵素部位を含んでいる。重鎖3'プライマーは抗体のJ-C結合部をまたがるように設計された混合物である。3'プライマーはクローニングを容易にするためにApaI制限部位を含んでいる。プライマーの3'領域は既知のマウス抗体に見られる配列に(Kabatら、1991、上述)基づいた混合配列を含んでいる。
【0097】
上述したプライマーの組合わせは、VhおよびVlについてのPCR産物を直接適切な発現ベクター(以下を参照せよ)にクローン化してキメラ(マウス-ヒト)重鎖及び軽鎖を作製し、それらの遺伝子を哺乳動物細胞中で発現させて所望のアイソタイプのキメラ抗体を産生することを可能にする。
【0098】
PCRのためのインキュベーション(100μl)は以下のように設定した。各反応は、10mM Tris-HCl pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.01% w/vゼラチン、0.25mMの各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、10pmoleの5'プライマー混合物(表4)、10pmoleの3'プライマー(CL12(軽鎖)またはR2155(重鎖)(表3))、1μl cDNAおよび1ユニットTaq ポリメラーゼを含んでいた。反応物を95℃にて5分間インキュベーションし、次に、94℃で1分間、55℃にて1分間および72℃にて1分間のサイクルにかけた。
【0099】
30サイクル後、各反応のアリコートをアガロースゲル上の電気泳動で解析した。軽鎖プール1、2および7からの5'プライマー混合物を含む軽鎖反応物は完全長Vl断片と一致する大きさのバンドを生成し、一方、重鎖反応プール3からの反応はVh遺伝子に期待される大きさの断片を生成した。軽鎖プール1プライマーによって生成されたバンドは、従前の結果からハイブリドーマによって作られた軽鎖疑似遺伝子に対応すると示されていたので追跡調査しなかった。軽鎖プール7プライマーによって生成されたバンドはプール2プライマーからのバンドよりも弱く、従って追跡しなかった。最も強いバンドであった軽鎖反応プール2からのバンドのみをさらに調査した。
【0100】
c)PCR断片の分子クローニング
軽鎖反応プール2において生成されたDNA断片を酵素BstBIおよびSplIで消化し、エタノール沈殿により濃縮し、1.4%アガロースゲル上で電気泳動して、400塩基対の範囲のDNAバンドを回収した。これらをBstBIおよびSplIで切断しておいたベクターpMR15.1(図4)中にライゲーションによりクローン化した。ライゲーション後、混合物で大腸菌LM1035を形質転換し、得られたバクテリアコロニーからのプラスミドをBstBIおよびSplI消化により挿入物についてスクリーニングした。各ライゲーションからの挿入物を有する代表物をさらにヌクレオチドシーケンシングによって解析した。
【0101】
同様な方法で、重鎖反応プール3において生成されたDNA断片をHindIIIおよびApaIで消化し、HindIIIおよびApaIで切断しておいたベクターpMR14(図5)にクローン化した。ここでも、挿入物を含む代表的プラスミドをヌクレオチドシーケンシングにより解析した。
【0102】
d)ヌクレオチド配列解析
多数の単離物からのVh挿入物を含むプラスミドDNAをプライマーR1053(表5参照)(pMR14中のHCMVプロモーターの3'領域でプライミングする)およびR720(表5参照)(ヒトC-γ4の5'領域中でプライミングし、pMR14上のDNA挿入物を通してシーケンシングを可能とする)を用いてシーケンシングした。多数のクローン中のVh挿入物のヌクレオチド配列はシグナルペプチドおよびJ領域の相違を除いて同一であることが見いだされた。このことは、調べたクローンがPCR段階でオリゴヌクレオチド混合物からの異なるプライマーが利用されたことによって生じた独立の単離物であったことを示している。抗体hTNF40の重鎖の可変領域(hTNF40Vh)の決定したヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列は図7に示した(配列番号100)。
【0103】
軽鎖クローンを解析するためにR1053(表5参照)およびR684(配列番号62)(ヒトC-κの5'領域内でプライミングし、pMR15.1上のDNA挿入物を通してシーケンシングを可能とする)によるプライミングに由来する配列を調べた。プール2における反応から生じるVl遺伝子のヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列を同様に解析した。ここでも、多数のクローン中のVl挿入物のヌクレオチド配列はシグナルペプチドおよびJ領域の相違を除いて同一であることが見いだされ、このことは、調べたクローンがPCR段階でオリゴヌクレオチド混合物からの異なるプライマーが利用されたことによって生じた独立の単離物であったことを示している。抗体hTNF40の軽鎖の可変領域(hTNF40Vl)の決定したヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列は図6に示した(配列番号99)。

表1 マウス重鎖の5'領域のためのオリゴヌクレオチドプライマー
CH1 : 5'ATGAAATGCAGCTGGGTCAT(G,C)TTCTT3' (配列番号:13)
CH2 : 5'ATGGGATGGAGCT(A,G)TATCAT(C,G)(C,T)TCTT3' (配列番号:14)
CH3 : 5'ATGAAG(A,T)TGTGGTTAAACTGGGTTTT3' (配列番号:15)
CH4 : 5'ATG(G,A)ACTTTGGG(T,C)TCAGCTTG(G,A)T3' (配列番号:16)
CH5 : 5'ATGGACTCCAGGCTCAATTTAGTTTT3' (配列番号:17)
CH6 : 5'ATGGCTGTC(C,T)T(G,A)G(G,C)GCT(G,A)CTCTTCTG3' (配列番号:18)
CH7 : 5'ATGG(G,A)ATGGAGC(G,T)GG(G,A)TCTTT(A,C)TCTT3' (配列番号:19)
CH8 : 5'ATGAGAGTGCTGATTCTTTTGTG3' (配列番号:20)
CH9 : 5'ATGG(C,A)TTGGGTGTGGA(A,C)CTTGCTATT3' (配列番号:21)
CH10 : 5'ATGGGCAGACTTACATTCTCATTCCT3'(配列番号:22)
CH11 : 5'ATGGATTTTGGGCTGATTTTTTTTATTG3' (配列番号:23)
CH12 : 5'ATGATGGTGTTAAGTCTTCTGTACCT3' (配列番号:24)

上記プライマーのそれぞれは、その5'末端に加えた配列5' GCGCGCAAGCTTGCCGCCACC 3' (配列番号25)を有している。

表2 マウス軽鎖の5'領域のためのオリゴヌクレオチドプライマー
CL1 : 5'ATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGGTGCT3' (配列番号:26)
CL2 : 5'ATGGAG(T,A)CAGACACACTCCTG(T,C)TATGGGT3' (配列番号:27)
CL3 : 5'ATGAGTGTGCTCACTCAGGTCCT3' (配列番号:28)
CL4 : 5'ATGAGG(G,A)CCCCTGCTCAG(A,T)TT(C,T)TTGG3' (配列番号:29)
CL5 : 5'ATGGATTT(T,A)CAGGTGCAGATT(T,A)TCAGCTT3' (配列番号:30)
CL5A : 5'ATGGATTT(T,A)CA(A,G)GTGCAGATT(T,A)TCAGCTT3' (配列番号:31)
CL6 : 5'ATGAGGT(T,G)C(T,C)(T,C)TG(T,C)T(G,C)AG(T,C)T(T,C)CTG(A,G)G3'(配列番号:32)
CL7 : 5'ATGGGC(T,A)TCAAGATGGAGTCACA3' (配列番号:33)
CL8 : 5'ATGTGGGGA(T,C)CT(G,T)TTT(T,C)C(A,C)(A,C)TTTTTCAAT3'(配列番号:34)
CL9 : 5'ATGGT(G,A)TCC(T,A)CA(G,C)CTCAGTTCCTT3' (配列番号:35)
CL10 : 5'ATGTATATATGTTTGTTGTCTATTTC3' (配列番号:36)
CL11 : 5'ATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTCTCTT3'(配列番号:37)
CL12A : 5'ATG(A,G)AGT(T,C)(A,T)CAGACCCAGGTCTT(T,C)(A,G)T3' (配列番号:38)
CL12B : 5'ATGGAGACACATTCTCAGGTCTTTGT3' (配列番号:39)
CL13 : 5'ATGGATTCACAGGCCCAGGTTCTTAT3' (配列番号:40)
CL14 : 5'ATGATGAGTCCTGCCCAGTTCCTGTT3' (配列番号:41)
CL15 : 5'ATGAATTTGCCTGTTCATCTCTTGGTGCT3' (配列番号:42)
CL16 : 5'ATGGATTTTCAATTGGTCCTCATCTCCTT3' (配列番号:43)
CL17A : 5'ATGAGGTGCCTA(A,G)CT(C,G)AGTTCCTG(A,G)G3' (配列番号:44)
CL17B : 5'ATGAAGTACTCTGCTCAGTTTCTAGG3' (配列番号:45)
CL17C : 5'ATGAGGCATTCTCTTCAATTCTTGGG3' (配列番号:46)

上記プライマーのそれぞれは、その5'末端に付加した配列5' GGACTGTTCGAAGCCGCCACC 3'(配列番号47)を有している。

表3 マウスVhおよびVl遺伝子の3'末端のためのオリゴヌクレオチドプライマー
軽鎖 (CL12 ) :
5'GGATACAGTTGGTGCAGCATCCGTACGTTT3' (配列番号:48)
重鎖 ( R2155 ) :
5'GCAGATGGGCCCTTCGTTGAGGCTG(A,C)(A,G)GAGAC(G,T,A)GTGA3' (配列番号:49)

表4
a)軽鎖PCR反応のための5'プライマー混合物
プール1 : CL2
プール2 : CL7
プール3 : CL13
プール4 : CL6
プール5 : CL5A, CL9, CL17A
プール6 : CL8
プール7 : CL12A
プール8 : CL1, CL3, CL4, CL5, CL10, CL11, CL2B, CL14, CL15, CL16, CL17B, CL17C

b)重鎖PCR反応のための5'プライマー混合物
プール1 : CH1, CH2, CH3, CH4
プール2 : CH5, CH6, CH7, CH8
プール3 : CH9, CH10, CH11, CH12

表5 ヌクレオチド配列解析に用いたプライマー
R1053 : 5'GCTGACAGACTAACAGACTGTTCC3' (配列番号:50)
R720 : 5'GCTCTCGGAGGTGCTCCT3' (配列番号:51)

キメラ遺伝子の活性の評価
キメラ遺伝子の活性はそれらを哺乳動物細胞で発現させ、新たに合成された抗体を精製し定量することによって評価した。このための方法論は以下に記載してあり、続いてこの抗体の生物学的特徴づけのために使用した生化学的および細胞ベースのアッセイについて記載してある。
【0104】
a)キメラhTNF40抗体分子の産生
生物学的評価のためのキメラ抗体は、適切な重鎖および軽鎖対のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞へのリン酸カルシウム沈殿を用いた共トランスフェクション後に一過性発現によって作製した。
【0105】
トランスフェクションの前日に、CHO-L761細胞の半コンフルエントのフラスコをトリプシン処理し、細胞を数え、T75フラスコがそれぞれ107個の細胞を含むように設定した。
翌日、トランスフェクションの3時間前に培養液を交換した。トランスフェクションのために、50μgの各重鎖および軽鎖発現ベクターを含む0.25M のCaCl2 1.25mlを1.25mlの2xHBS(1リットル中、16.36g NaCl、11.0g HEPESおよび0.4g Na2HPO4、NaOHでpH7.1に調整)と混合してリンサンカルシウム沈殿を調製し、直ちに細胞の培地に添加した。CO2インキュベーター中で37℃にて3時間後、培地および沈殿を除去し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の15mlの15%グリセロールを1分間添加することにより細胞にショックを与えた。グリセロールを除去し、細胞をPBSで一度洗浄し、10mM酪酸ナトリウムを含む25mlの培地中で48〜96時間インキュベーションした。抗体は、プロテインA-セファロースへの結合と溶出によって培地から精製することができる。
【0106】
b)ELISA
ELISAのために、Nunc ELISAプレートをコーティングバッファー(15mM炭酸ナトリウム、35mM炭酸水素ナトリウム、pH6.9)中の5μg/mlの抗ヒトFc断片特異的ポリクローナルヤギ抗体のF(ab)2断片(Jackson Immunoresearch, コード 109-006-098)で4℃にて一晩コーティングした。蒸留水で5回洗浄することによりコーティングしなかった抗体を除去した。定量すべきサンプルおよび精製標準品をコンジュゲートバッファー(0.1M Tris-HCl、pH7.0、0.1M NaCl、0.2% v/v Tween 20、0.2%ハマーステン(Hammersten)カゼイン)中でおよそ1μg/mlに希釈した。サンプルをマイクロタイターウェル内で2倍系列希釈して各ウェル最終体積0.1mlとし、振盪しながら室温にて1時間インキュベーションした。第1のインキュベーション工程後、プレートを蒸留水で10回洗浄し、次に前のように、コンジュゲートバッファー中で1:700希釈した0.1mlのマウスモノクローナル抗ヒトκ(クローンGD12)ペルオキシダーゼコンジュゲート抗体(The Binging Site, コードMP135)と1時間インキュベーションした。再びプレートを洗浄し、基質溶液(0.1ml)をウェルに添加した。基質溶液は、150μlのN, N, N, N-テトラメチルベンジジン(DMSO中10mg/ml)、10mlの0.1M酢酸ナトリウム/クエン酸ナトリウム、pH6.0溶液中の150μlの過酸化水素(30%溶液)を含む。プレートを630nmでの吸光度が適当になるまで5〜10分間現像した。プレート読み取り機を用いて630nmにおける吸光度を測定し、標準品の滴定曲線と比較することによってサンプルの濃度を測定した。
【0107】
c)BiaCore解析によるアフィニティー定数の測定
hTNF40とヒトTNFの間の結合相互作用は、BIA技術を用いて調べた。hTNF40の定常領域に対するアフィニティー精製したヤギポリクローナル抗体を、標準的なNHS/EDC化学を用いてデキストランポリマーセンサーチップ表面に固体化した。質量輸送効果が最小になるように比較的低レベル(200〜500 RU)のhTNF40を捕捉した。種々の濃度のヒトTNFを捕捉したhTNF40上に通過させ、結合キネティクスを評価できるようにした。リガンドの注入につづいてバッファーを表面上に通過させ解離を測定できるようにした。固相hTNF40とヒトTNFとの相互作用について結合および解離速度定数を計算し、KD値を導いた。

実施例1
hTNF40のCDR移植
hTNF40抗体の重鎖および軽鎖の可変領域に対する遺伝子の分子クローニングおよびキメラ(マウス-ヒト)hTNF40抗体を作製するためのそれらの使用を上述した。マウスhTNF40 VlおよびVhのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をそれぞれ図6および7に示した(配列番号99および配列番号100)。本実施例ではhTNF40抗体のCDR移植を記載する。
【0108】
hTNF40軽鎖のCDR移植
hTNF40軽鎖のフレームワーク領域と4つのヒト軽鎖サブグループのフレームワーク領域(Kabatら、1991, 上述)とのアラインメントは、hTNF40はヒト軽鎖サブグループ1の抗体と最も相同であることを明らかにした。従って、CDR移植軽鎖の構築のためにヒトグループ1コンセンサス配列に対応するフレームワーク領域を選んだ。
【0109】
マウスhTNF40のフレームワーク領域とヒトグループ1軽鎖コンセンサス配列のアミノ酸配列との比較を図1に示した。またその2つの配列間に22個の相違(下線部)があることを記載した。そして、これらのフレームワークの相違のいずれかが抗原結合性にあたえるかもしれない寄与についての解析は、調べるべき2つの残基を明らかにした;それらは位置46および60にある。この解析に基づき、CDR移植軽鎖の2つの型を構築した。これらの第1のもの、hTNF40-gL1(配列番号8)では、46番および60番残基はhTNF40軽鎖に由来し、一方、第2のもの、hTNF40-gL2(配列番号9)では、全ての残基は、hTNF40軽鎖に由来する第60番残基を除いてヒトコンセンサスである。
【0110】
CDR移植軽鎖hTNF40-gL1の構築
hTNF40-gL1の構築を以下に詳細に記載した。以下の重複するオリゴヌクレオチド(P7982-P7986)をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に使用して、短縮された移植軽鎖をアッセンブルした。アッセンブルした断片は抗体リーダー配列およびフレームワーク1の最初の17アミノ酸を欠失している。
【0111】
オリゴ1 P7982:
5'GAATTCAGGGTCACCATCACTTGTAAAGCCAGTCAGAACGTAGGTACTAACGTAGCCTGGTATCAGCAAA3' (配列番号:52)

オリゴ2 P7983:
5' ATAGAGGAAAGAGGCACTGTAGATGAGGGCTTTTGGGGCTTTACCTGGTTTTTGCTGATACCAGGCTACGT3' (配列番号:53)

オリゴ3 P7984:
5' TACAGTGCCTCTTTCCTCTATAGTGGTGTACCATACAGGTTCAGCGGATCCGGTAGTGGTACTGATTTCAC3' (配列番号:54)

オリゴ4 P7985:
5'GACAGTAATAAGTGGCGAAATCTTCTGGCTGGAGGCTACTGATCGTGAGGGTGAAATCAGTACCACTACCG3' (配列番号:55)

オリゴ5 P7986:
5'ATTTCGCCACTTATTACTGTCAACAGTATAACATCTACCCACTCACATTCGGTCAGGGTACTAAAGTAGAAATCAAACGTACGGAATTC3' (配列番号:56)

Fwd P7981:
5'GAATTCAGGGTCACCATCACTTGTAAAGCC3' (配列番号:57)

Bwd P7980:
5'GAATTCCGTACGTTTGATTTCTACTTTAGT3' (配列番号:58),

PCR反応、100μlは、10mM Tris-HCl、pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.01% w/v ゼラチン、0.25mMの各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、2pmoleのP7982、P7983、P7984、P7985、P7986、10pmoleのP7980、P7981および1ユニットのTaqポリメラーゼを含むように設定した。反応は、94℃にて1分間、55℃にて1分間および72℃にて1分間を繰り返した。30サイクル後、各反応をアガロースゲル上の電気泳動で解析し、ゲルからPCR断片を切り出しMermaid Kitを用いて回収した。回収した断片を適当なバッファー中で酵素BstEIIおよびSplIで切断した。得られた産物を最終的にアガロースゲル上で電気泳動し、270塩基対のDNA断片をゲル切片から回収し、同じ酵素で予め消化しておいたベクターCTIL5-gL6(図12)へライゲーションした。上述のベクターは欠失していた抗体リーダー配列およびフレームワーク1の最初の17アミノ酸を提供する。
【0112】
このライゲーション混合物を用いて大腸菌株LM1035を形質転換し、得られたコロニーをPCR、制限酵素消化およびヌクレオチドシーケンシングによって解析した。hTNF40-gL1のVl領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は図8に示した(配列番号8)。
【0113】
CDR移植軽鎖hTNF40-gL2の構築
hTNF40-gL2(配列番号9)をPCRを用いて構築した。以下のオリゴヌクレオチドを用いてアミノ酸変異を導入した:
R1053: 5'GCTGACAGACTAACAGACTGTTCC3' (配列番号:59)

R5350: 5'TCTAGATGGCACACCATCTGCTAAGTTTGATGCAGCATAGATCAGGAGCTTAGGAGC3' (配列番号:60)

R5349: 5'GCAGATGGTGTGCCATCTAGATTCAGTGGCAGTGGATCAGGCACAGACTTTACCCTAAC3' (配列番号:61)

R684: 5'TTCAACTGCTCATCAGAT3' (配列番号:62)

それぞれが20μlの2つの反応を設定した。それぞれ、10mM Tris-HCl pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.01% w/vゼラチン、0.25mMの各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、0.1μgのhTNF40-gL1、6pmoleのR1053/R5350またはR5349/R684および0.25ユニットのTaqポリメラーゼを含む。反応は、94℃にて1分間、55℃にて1分間、および72℃にて1分間を繰り返した。30サイクル後、各反応をアガロースゲル上の電気泳動により解析し、ゲルからPCR断片を切りだし、Mermaid Kitを用いて回収した。
【0114】
次に、これらのアリコートを第2回のPCRにかけた。反応、100μlは、10mM Tris-HCl pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.01% w/vゼラチン、第1のそれぞれの反応の組からのPCR断片の1/5、30pmoleのR1053およびR684および2.5ユニットのTaqポリメラーゼを含む。反応温度は上述したものである。PCR後、混合物をフェノール/クロロホルムで抽出し、次にクロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。エタノール沈殿物を遠心により回収し、適当なバッファーに溶解し、酵素BstEIIおよびSplIで切断した。得られた産物を最後にアガロースゲル上で電気泳動し、270塩基対DNA断片をゲル切片から回収し、予め同じ酵素で消化しておいたベクターpMR15.1(図4)にライゲーションした。
【0115】
このライゲーション混合物を用いて大腸菌LM1035を形質転換し、生じたコロニーをPCR、制限酵素消化およびヌクレオチドシーケンシングによって解析した。hTNF40-glL2のVl領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を図9に示した(配列番号9)。
【0116】
hTNF40重鎖のCDR移植
hTNF40重鎖のCDR移植は、軽鎖について記載したのと同じストラテジーを用いて行った。hTNF40重鎖はサブグループ1に属するヒト重鎖に最も相同であることが見いだされ、従って、ヒトサブグループ1フレームワークのコンセンサス配列をhTNF40重鎖CDRを受け入れるために選択した。
【0117】
CDR移植のためのアクセプターフレームワークとして機能するための相同ヒトフレームワークの要求性を調べるために、第2のフレームワーク、ヒトグループ3を選んでhTNF40重鎖をヒト化した。
【0118】
2つの異なるフレームワーク領域とhTNF40の比較は図2に示した。図2では、hTNF40はヒトサブグループ1コンセンサスと32カ所(下線部)において異なっており、ヒトサブグループ3とは40カ所(下線)において異なることが分かる。これらのいずれかが抗原結合にするかもしれない寄与を解析したところ、残基28、38、46、67、69および71はグループ1フレームワークを用いたCDR移植重鎖ghlhTNF40.1においてドナーとして維持されていた。残基27、28、30、48、49、69、71、73、76および78はCDR移植重鎖、グループ3フレームワークを用いたgh3hTNF40.4においてドナーとして維持されていた。残基28、69および71はCDR移植重鎖、グループ1フレームワークを用いたgh1hTNF40.4においてドナーとして維持されていた。
【0119】
CDR移植重鎖gh1hTNF40.4の構築
重複するオリゴヌクレオチドを適切なプライマーの存在下でPCRにかけることによりgh1hTNF40.4(配列番号10)をアッセンブルした。PCRでは以下のオリゴヌクレオチドを用いた:
グループ1移植
オリゴ1 P7989:
5'GAAGCACCAGGCTTCTTAACCTCTGCTCCTGACTGGACCAGCTGCACCTGAGAGTGCACGAATTC3' (配列番号:63)

オリゴ2 P7990:
5'GGTTAAGAAGCCTGGTGCTTCCGTCAAAGTTTCGTGTAAGGCCTCAGGCTACGTGTTCACAGACTATGGTA3' (配列番号:64)

オリゴ3 P7991:
5'CCAACCCATCCATTTCAGGCCTTGTCCCGGGGCCTGCTTGACCCAATTCATACCATAGTCTGTGAACACGT3' (配列番号:65)

オリゴ4 P7995:
5'GGCCTGAAATGGATGGGTTGGATTAATACTTACATTGGAGAGCCTATTTATGTTGACGACTTCAAGGGCAGATTCACGTTC3' (配列番号:66)

オリゴ5 P7992:
5'CCATGTATGCAGTGCGTTGTGGAGGTGTCTAGAGTGAACGTGAATCTGCCCTTGAA3' (配列番号:67)

オリゴ6 P7993:
5'CCACAAGCACTGCATACATGGAGCTGTCATCTCTGAGATCCGAGGACACCGCAGTGTACTAT3' (配列番号:68)

オリゴ7 P7994:
5'GAATTCGGTACCCTGGCCCCAGTAGTCCATGGCATAAGATCTGTATCCTCTAGCACAATAGTACACTGCGGTGTCCTC3' (配列番号:69)

Fwd:P7988
5'GAATTCGTGCACTCTCAGGTGCAGCTGGTC3' (配列番号:70)

Bwd:P7987
5'GAATTCGGTACCCTGGCCCCAGTAGTCCAT3' (配列番号:71)

アッセンブリ反応、100μlは、10mM Tris-HCl pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.01% w/v ゼラチン、0.25mM 各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、各2pmoleのp7989、p7990、p7991、p7995、p7992、p7993およびp7994、各10pmoleのp7988およびp7987および1ユニットのTaqポリメラーゼを含む。反応は、94℃にて1分間、55℃にて1分間および72℃にて1分間を繰り返した。30サイクル後、反応物をフェノール/クロロホルム(1/1)で抽出し、次にクロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。遠心後、DNAを適当な制限酵素バッファーに溶解しApaLIおよびKpnIで消化した。生じた断片をアガロースゲルから単離し、予め同じ酵素で消化しておいたpMR14(図5)にライゲーションした。pMR14はヒトγ4重鎖定常領域を含んでおり、ApaLIとKpnIで消化した場合に、開裂させたベクターは消化したDNAの3'末端がγ4定常領域をコードする配列の5'末端にリーディングフレーム内で接続するように消化したDNAを受け入れることができる。従って、このベクターから発現される重鎖はγ4アイソタイプである。このライゲーション混合物を用いて大腸菌LM1035を形質転換し、得られたバクテリアコロニーは制限酵素消化およびヌクレオチドシーケンシング解析によりスクリーニングした。このようにして、gh1hTNF40.4の正しい配列(図10)(配列番号10)を含むプラスミドを同定した。
【0120】
CDR移植重鎖gh3hTNF40.4の構築
重複するオリゴヌクレオチドを適切なプライマーの存在下でPCRにかけることによりgh3hTNF40.4(配列番号11)をアッセンブルした。PCRでは以下のオリゴヌクレオチドを用いた:
グループ3移植
オリゴ1 P7999:
5'GATCCGCCAGGCTGCACGAGACCGCCTCCTGACTCGACCAGCTGAACCTCAGAGTGCACGAATTC3' (配列番号:72)

オリゴ2 P8000:
5'TCTCGTGCAGCCTGGCGGATCGCTGAGATTGTCCTGTGCTGCATCTGGTTACGTCTTCACAGACTATGGAA3' (配列番号:73)

オリゴ3 P8001:
5'CCAACCCATCCATTTCAGGCCCTTTCCCGGGGCCTGCTTAACCCAATTCATTCCATAGTCTGTGAAGACGT3' (配列番号:74)

オリゴ4 P7995:
5'GGCCTGAAATGGATGGGTTGGATTAATACTTACATTGGAGAGCCTATTTATGTTGACGACTTCAAGGGCAGATTCACGTTC3' (配列番号:66)

オリゴ5 P7997:
5'GGAGGTATGCTGTTGACTTGGATGTGTCTAGAGAGAACGTGAATCTGCCCTTGAA3' (配列番号:75)

オリゴ6 P7998:
5'CCAAGTCAACAGCATACCTCCAAATGAATAGCCTGAGAGCAGAGGACACCGCAGTGTACTAT3' (配列番号:76)

オリゴ7 P7993:
5'GAATTCGGTACCCTGGCCCCAGTAGTCCATGGCATAAGATCTGTATCCTCTAGCACAATAGTACACTGCGGTGTCCTC3' (配列番号:77)

Fwd P7996:
5'GAATTCGTGCACTCTGAGGTTCAGCTGGTC3' (配列番号:78)

Bwd P7987:
5'GAATTCGGTACCCTGGCCCCAGTAGTCCAT3' (配列番号:71)

アッセンブリ反応、100μlは、10mM Tris-HCl pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.01% w/v ゼラチン、0.25mM 各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、各2pmoleのp7999、p8000、p8001、p7995、p7997、p7998およびp7993、各10pmoleのp7996およびp7987および1ユニットのTaqポリメラーゼを含む。反応は、94℃にて1分間、55℃にて1分間および72℃にて1分間を繰り返した。30サイクル後、反応物をフェノール/クロロホルム(1/1)で抽出し、次にクロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。遠心後、DNAを適当な制限酵素バッファーに溶解しApaLIおよびKpnIで消化した。生じた断片をアガロースゲルから単離し、予め同じ酵素で消化しておいたpMR14(図5)にライゲーションした。pMR14はヒトγ4重鎖定常領域を含んでいる。pMR14をApaLIとKpnIで消化すると、開裂させたベクターは消化したDNAの3'末端がγ4定常領域をコードする配列の5'末端にリーディングフレーム内で接続するように、消化したDNAを受け入れることができる。従って、このベクターから発現される重鎖はγ4アイソタイプである。このライゲーション混合物を用いて大腸菌LM1035を形質転換し、得られたバクテリアコロニーは制限酵素消化およびヌクレオチドシーケンシング解析によりスクリーニングした。このようにして、gh3hTNF40.4の正しい配列(配列番号11)(図11)を含むプラスミドを同定した。
【0121】
CDR移植改変Fab断片の作製
抗体hTNF40に基づくCDR移植改変Fab断片を大腸菌ベクターpTTO-1を用いて構築した。抗体hTNF40の可変領域をこのベクターにサブクローニングし、遺伝子間配列を最適化してpTTO(CDP870)を作製した。pTTO発現ベクターは、可溶性組換えタンパク質のペリプラズム蓄積を生じさせるように設計されている。このプラスミドの主要な特徴は以下のとおりである:
(i)テトラサイクリン耐性マーカー − 耐性遺伝子の産物によっては不活性化されない抗生物質であり、従って、プラスミド保持細胞の選抜が維持される;
(ii)低コピー数 − 複製起点はp15A由来であり、colE1由来レプリコンを含むプラスミドと和合性である;
(iii)クローン化した遺伝子のための強力な、誘導可能tacプロモーター;
(iv)lacIq遺伝子 − lacリプレッサータンパク質の構成的発現を生じさせ、IPTG/アロラクトースによる誘導までtacプロモーターを抑制状態に維持する;
(v)OmpAシグナル配列 − クローン化した遺伝子のペリプラズム分泌を生じさせる;および
(vi)翻訳の効率的開始を起こすため、OmpAシグナル配列とlacZ短ペプチドとの翻訳共役。
【0122】
このベクターは、4つの目的に応じて作られたカセットのシリーズから最適な遺伝子間配列を経験的に選択するための方法という計画による2シストロン性メッセンジャーからの改変Fab断片発現のために開発されたものである。pTTO(CDP870)の構築におけるこの適用例を記載する。

材料と方法
DNA技術
DNA制限処理、アガロース電気泳動、ライゲーションおよび形質転換を含むプロトコルには標準的な方法を用いた。制限酵素およびDNA修飾酵素はNew England BiolabsまたはBoehringer Mannheimから入手し、供給者の推奨に従って使用した。DNA断片はGeneCleanプロトコル(BIO 101)を用いてアガロースから精製した。オリゴヌクレオチドはOswel Oligonucleotide Serviceから供給され、40nmスケールで合成された。プラスミドDNAはQiagenのPlasmid DNA Mini/Midiキットを用いて単離した。PCRはPerkin Elmerの"Amplitaq"を用いて推奨されたように行った。DNAシーケンシングはApplied Biosystems Taqサイクルシーケンシングキットを用いて行った。
【0123】
振盪フラスコ誘導
大腸菌W3110培養物はテトラサイクリン(7.5μg/ml)を補充したL-培地で増殖させた。誘導のため、新しい一晩培養物(30℃で増殖させた)を2Lバッフル付きフラスコ中で200mlのL-培地中で0.1のOD600に希釈し、30℃にて回転式インキュベータにて増殖させた。0.5のOD600にてIPTGを200μMになるように添加した。サンプル(ODについて正規化した)を時々採取した。
【0124】
ペリプラズム抽出
培養サンプルを氷上で冷却し(5分間)、次に細胞を遠心で収集した。抽出バッファー(100mM Tris.HCl, 10mM EDTA, pH7.4)中での再懸濁に続き、サンプルを一晩30℃でインキュベーションし、次に遠心により清澄化した。
【0125】
アッセンブリアッセイ
改変Fab濃度はELISAによって測定した。プレートを抗ヒトFd 6045(コーティングバッファー、生理食塩水中2μg/ml、ウェルあたり100μl)により一晩4℃にてコーティングした。洗浄後、ウェルあたり100μlのサンプルを装荷した;精製A5B7γ-1Fab'、初期2μg/ml、を標準として使用した。サンプルをサンプルコンジュゲートバッファー(1リットルあたり、6.05gのトリスアミノメタン;2.92g NaCl;0.1ml Tween-20;1mlカゼイン(0.2%))中でプレートをまたがって系列的に二倍希釈した;プレートを室温にて振盪しながら1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し乾燥させ、次に100μlの抗ヒトC-κ(GD12)−ペルオキシダーゼを添加した(サンプルコンジュゲートバッファーで希釈)。インキュベーションは振盪しながら室温にて1時間行った。プレートを洗浄し、乾燥させ、100μlの基質溶液(10ml酢酸ナトリム/クエン酸ナトリウム溶液(0.1M、pH6);100μl H2O2溶液;100μlテトラメチルベンジジン溶液)(ジメチルスルホキシド中10mg/ml))を添加した。基質添加後、630nmにおける吸光度を4〜6分間読み取った。
【0126】
プラスミドpTTO-1の構築
(a)pTTQ9ポリリンカーの置換
プラスミドpTTQ9はAmershamから入手したものであり、図14に示した。アリコート(2μg)を制限酵素SalIおよびEcoRIで消化し、消化物を1%アガロースゲルに流し、大きなDNA断片(4520bp)を精製した。アニーリングするとOmpAポリリンカー領域(図15)をコードする二本のオリゴヌクレオチドが合成された。この配列はpTTQ9の切断により生じるSalIおよびEcoRI末端に適合する接着末端を有している。このオリゴヌクレオチド「カセット」をpTTQ9ベクターにクローニングすると、SalIは生成されないが、EcoRI部位は維持される。このカセットは大腸菌外膜タンパク質Omp-Aのシグナル配列の最初の13アミノ酸をコードしており、その前にOmpA遺伝子のシャインダルガーノリボソーム結合部位が存在している。加えて、酵素XbaI、MunI、StyIおよびSplIの制限酵素部位が存在している。MunIおよびStyI部位はOmpAシグナル配列のコード領域の内部にあり、遺伝子の挿入のための5'クローニング部位として意図されている。このカセットを作り出す2つのオリゴヌクレオチドを5pmol/μlの濃度で混合し、水槽で95℃にて3分間加熱し、次に、ゆっくりと室温に冷却することによってアニーリングした。アニーリングした配列を次にSalI/EcoRI切断したpTTQ9と接続した。得られたプラスミド中間体、pTTQompをDNAシーケンシングにより確認した。
【0127】
(b)断片調製およびライゲーション
プラスミドpACYC184からの1つのDNA断片とpTQOmpから生成した2つの断片とをライゲーションすることによってプラスミドpTTO-1を構築した。プラスミドpACYC184はNew England Biolabsから入手し、制限酵素地図を図16に記載した。アリコート(2μg)を制限酵素StyIで完全に消化し、次にMung Beanヌクレアーゼで処理した:この処理は5'塩基オーバーハングを削り取ることにより平滑末端を作り出す。フェノール抽出およびエタノール沈殿に続いて、このDNAを酵素PvuIIで切断し、2348、1081、412および403bpの断片を生成した。2348bp断片をアガロースゲル電気泳動いによって精製した。この断片はテトラサイクリン耐性マーカーおよびp15A複製起点をコードしている。次にこの断片を仔ウシ腸アルカリホスファターゼで処理して5'末端のリン酸を除去し、それによってこの分子の自己ライゲーションを阻止した。
【0128】
プラスミドpTQOmpのアリコート(2μg)を酵素SspIとEcoRIで消化し、アガロース電気泳動に続いて2350bp断片を不要な2040bpおよび170bpの断片から精製した;この断片は転写終結領域およびlacIq遺伝子をコードしている。pTQOmpの別のアリコート(2μg)をEcoRIとXmnIで消化し、2289、1670、350および250bpの断片を生成した。350bpの断片はtacプロモーター、OmpAシグナル配列およびマルチクローニング部位をコードしており、これをゲル精製した。
【0129】
この3つの断片を、各断片のほぼ等モル量を用いてライゲーションし、プラスミドpTTO-1を作製した。全てのクローニング結合部をDNAシーケンシングによって確かめた。このプラスミドの制限酵素地図を図17に示した。次に、ヒトIg軽鎖κ定常領域をコードするDNAを挿入することによってpTTO-2を生成した。これはプラスミドpHC132のSplI−EcoRI制限断片として得られ、pTTO-1の対応する部位へ挿入した。プラスミドpTTO-2は図18に示した。
【0130】
ヒト化hTNF40可変領域のpTTO-2への挿入
可変軽鎖領域hTNF40gL1(配列番号8)は哺乳動物細胞発現のための対応するベクターpMR10.1からPCR「レスキュー」によって得た。OmpAリーダー配列が元々のIgリーダーと置き変わっている。PCRプライマーの配列は以下のとおりである:
5'プライマー:
CGCGCGGCAATTGCAGTGGCCTTGGCTGGTTTCGCTACCGTAGCGCAAGCTGACATTCAAATGACCCAGAGCCC(配列番号79)

3'プライマー: TTCAACTGCTCATCAGATGG(配列番号80)
標準的条件の下でのPCR後、産物を精製し、酵素MunIおよびSplIで消化し、次にゲル精製した。次に精製した断片をpTTO-2のMunI/SplI部位に挿入し、軽鎖中間体pTTO(hTNF40L)を作製した。
【0131】
gh3hTNF40.4の重鎖可変領域はベクターpGamma-4から同様にして得た。PCRプライマーの配列は以下の通りである:
5'プライマー:
GCTATCGCAATTGCAGTGGCGCTAGCTGGTTTCGCCACCGTGGCGCAAGCTGAGGTTCAGCTGGTCGAGTCAGGAGGC(配列番号81)

3'プライマー: GCCTGAGTTCCACGACAC(配列番号82)
PCRに続いて、産物を精製し、酵素NheIおよびApaIで消化し、次にベクターpDNAbEng-G1(図19)にサブクローニングした。DNAシーケンシングにより確認後、重鎖を酵素EcoRIで切断し、pTTO(hTNF40L)のEcoRI部位にサブクローニングし、大腸菌発現プラスミドpTTO(hTNF40)を作製した。
【0132】
改変Fab発現のための遺伝子間配列の最適化
pTTOベクターにおいては、改変Fab発現は初めに軽鎖、次に重鎖をコードする2シストロン性メッセンジャーから起こる。2つの遺伝子の間の配列(遺伝子間配列(intergenic sequence)、IGS)は、翻訳開始速度に影響を与えることにより重鎖の発現レベルに影響し得る。例えば、短い遺伝子間配列は、翻訳中のリボソームは軽鎖合成の完了後、重鎖合成を開始する前に完全には解離しないかもしれないという点で、軽鎖及び重鎖の翻訳共役を生じさせる。シャインダルガーノ(SD)リボソーム結合部位(16S rRNA)の「強度」も影響を与え得るものであり、SDとATG開始コドンの間の距離および配列構成も同様である。ATG付近のmRNAの可能な二次構造は別の重要な要因である;ATGは「ループ」中になければならず、「ステム」内部に束縛されていてはならず、一方SDについてはその逆が適用される。
【0133】
従って、IGSの構成及び長さを改変することにより、翻訳開始強度を改変し、従って、重鎖産生のレベルを改変することができる。与えられたFabの重鎖の発現を最大化するためには翻訳開始の最適速度を達成する必要がありそうである。例えば、おそらく異なる分泌効率またはフォールディング効率が理由となって、一つの改変Fabでは高レベルの発現は寛容性であるかもしれないが、異なるアミノ酸配列を有する異なる改変Fabでは、高レベルの発現は毒性であることが分かるかもしれない。このため、hTNF40ベースの改変Fabについて最適IGSを経験的に決定することが可能となるよう、4つの一連の遺伝子間配列を設計した(図20)。IGS1およびIGS2は非常に短い遺伝子間配列(それぞれ−1および+1)を有しており、密接に共役した翻訳を生ずると期待される;SD配列(下線)は僅かに異なる。これらの2つの配列は高レベルの翻訳開始を与える可能性が高い。IGS3およびIGS4は開始コドンと停止コドンの間がより長く(+13)、その配列構成が異なっている;IGS3は「より強力な」SD配列を有している。全ての配列はその二次構造について調べ(m/foldプログラム使用)、可能な限り「最適化」した;しかしながら、2本の鎖の強固な翻訳共役によりリボソーム解離がないことはmRNAが「裸」ではないであろうことを意味し、二次構造の形成を妨げることを意味する。
【0134】
IGS変異体のクローニング
図20に示したIGSカセットは側方にSacIおよびMunIクローニング部位を有する。これらは相補的オリゴヌクレオチド対をアニーリングさせることによって構築した。pTTO(hTNF40)をSacIおよびNotIで消化することによってベクター断片を調製し、pDNAbENgG1(hTNF40H)をMunIおよびNotIで消化することによって重鎖断片を調製した。次に等モル量の2つの制限酵素断片とおよそ0.05pmoleの各アニーリングしたオリゴカセットを用いて3者ライゲーションを行った。これにより4つの発現プラスミドpTTO(hTNF40 IGS-1)、pTTO(hTNF40 IGS-2)、pTTO(hTNF40 IGS-3)、pTTO(hTNF40 IGS-4)を作製した。
【0135】
振盪フラスコ発現解析
元の発現構築物とともに4つのプラスミドで大腸菌株W3110を形質転換し、記載したように振盪フラスコ内での発現について解析した。典型的な実験の結果を図21に示した。異なる遺伝子間配列は異なる発現プロフィールを与える。IGS1およびIGS2は改変Fabをペリプラズムに急速に蓄積させ、誘導後1時間にピークを有し、その後レベルが落ちる。IGS1についてピークはより大きく低下はより鋭い。これらの結果はこれらの構築物についての翻訳共役について期待されるように、高レベルの合成と対応する。IGS1はIGS2よりも高レベルの重鎖発現を与えるようである。この例では、ペリプラズム発現レベルは1時間のピークの後に落ちるので、発現が高レベルであることはあまり寛容でないようである。これは、誘導後1時間にピークがありその後落ちるというIGS1培養物(提示せず)の増殖プロフィールに見られる。このことは細胞の死及び溶解を示唆する。
【0136】
IGS3は改変Fabをよりゆるやかに蓄積するが、誘導後2時間により高いピーク値(325ng/ml/OD)を有し、その後低下する。この培養物の増殖は誘導後3時間まで続きより高いピークバイオマスに達した(提示せず)。このことは、重鎖合成のより低いレベルと矛盾しない。IGS4は更に遅い速度で物質を蓄積し、他の3つの構築物の高い生産性まで到達しなかった。全てのIGS改変体が、元のベクターを有意に超えて機能した。異なるIGS配列が異なる翻訳開始速度を与えるという仮説はこれらの実験結果によって支持される。hTNF40に基づく改変Fabについては、重鎖翻訳開始速度が非常に速いことはあまり寛容性でなく、従って、最適でないようである。IGS3によって与えられるような、より遅い速度はより良好な増殖特性を生じさせ、従って、長時間にわたって優れた収量が蓄積する。
【0137】
発酵槽における生産性の比較に基づき、IGS3構築物を最も高収量のものとして選択し、pTTO(CDP870)と名付けた−図22参照。
プラスミドpTTO(CDP870)によってコードされる重鎖は配列番号115に記載の配列を有し、軽鎖は配列番号113に記載の配列を有している。
【0138】
CDR移植された、hTNF40ベースの改変FabのPEG化
精製した改変Fabを分枝したPEG分子と部位特異的にコンジュゲートさせる。このことは改変Fabの短縮されたヒンジ領域中の単一のシステイン残基を活性化させ、従前に記載されたように(A.P. Chapmanら、Nature Biotechnology 17, 780-783, 199)(PEG)-リシル−マレイミドと反応させることによって達成される。PEG化した分子は、CDP870と呼ばれ、図13に示した。
【0139】
PEG化CDR移植hTNF40ベース改変Fab(CDP870)の慢性関節リウマチの治療における効能
CDP870はおよそ11日という長い半減期を有する。
我々は、RAにかかった患者のランダム化二重−盲目プラセボ−制御用量増加試験(double-blind placebo-controlled dose escalating trial)における静脈内CDP870の安全性及び効能を評価した。
【0140】
方法
患者:
18才から75才の、慢性関節リウマチに関する1987年改訂American College of Rheumatology(ACR)診断基準(Arnettら、Arthritis Rheum., 31, 315-324, 1988)を満たす患者をロンドン、ケンブリッジ、ノルフォークおよびノルウィッチ(英国)Rheumatologyクリニックの外来患者から集めた。患者は、以下の基準のうちの少なくとも3つを有することによって定義される、臨床的に活性な疾病を有することが要求された:6以上の痛みのあるまたは触覚過敏関節;45分間以上の早朝硬直;および28mm/hr以上の赤血球沈降速度(ESR)。患者らは、少なくとも一つの疾病改変抗リウマチ剤(Disease Modifying Anti-Rheumatic Drug, DRARD)に対して応答しなかったことが必要で、少なくとも4週間治療を受けていないことを必要とした。コルチコステロイドはその用量がプレドニソロンの7.5mg/日以上であったならば許容した。妊娠した女性、授乳女性および効果的な避妊法を用いていない出産可能な女性は除外した。また、悪性履歴、重篤な制御できない随伴医学的状態、以前のTNFα-中和治療法の失敗またはポリエチレングリコールに対するアレルギーの経歴がある場合もその患者を除外した。文書化したインフォームドコンセントを登録前に各患者から受けとった。研究は、地域の研究倫理委員会に承認された。
【0141】
治療プロトコル:
36人のRA患者を3つのグループに分け、それぞれに試験薬剤を用量を増加させて(1、5または20mg/kg)与えた。12人の各グループをランダムにCDP870を与える8人とプラセボを与える4人に分けた。CDP870は60分間にわたる1回の静脈注入(総量100ml)として与えた。プラセボ(酢酸ナトリウムバッファー)を同様に60分間にわたって1回の100mlの静脈注入として与えた。治療は外来患者に基づいて行った。8週間後、全ての患者に5または20mg/kgのCCDP870を受ける機会を公開で与えた。
【0142】
臨床評価:
RA疾病活性は、28関節についての世界保健機構およびリウマチ学協会国際連盟(International League of Associations for Rheumatology)(Boersら、J. Rheumatol−Supplement, 41, 86-89, 1994)および対リウマチヨーロッパ連合(European League Against Rheumatism)(EULAR)(Scottら、Clin. Exp. Rheumatol., 10, 521-525, 1992)スコアデータセットに基づいて評価した。疾病活性の変化は疾病活性スコア(Disease Activity Score)(Prevooら、Arthritis Rheum., 38, 44-48, 1995)およびACR応答基準(Felsonら、Arthritis Rheum., 38, 727-735, 1995)によって評価した。評価は治療前、および治療後1、2、4、6および8週間で行った。患者は試験薬の安全性および寛容性についても評価した。血液学、生化学、項CDP-870抗体および有害な事象を各訪問ごとに評価した。
【0143】
CDP870血漿濃度および抗CDP870抗体:
CDP870は酵素結合免疫固相アッセイ(ELISA)によって測定した。患者の血清の系列希釈物を、組換えヒトTNFα(Strathmann Biotech GmbH, Hannover)でコーティングしたマイクロタイタープレート(Nunc)中でインキュベーションした。捕捉されたCDP870をホースラディッシュコンジュゲートヤギ抗ヒトκ軽鎖(Cappel, ICN)および続いてテトラメチルベンジジン(TMB)基質で顕在化させた。
【0144】
二重抗原サンドイッチELISAをビオチン化CDP870を第2層として用いて、CDP870に対する抗体をスクリーニングした(1/10希釈の血清において)。結合した抗体をHRP-ストレプトアビジンおよびTMB基質を用いて明らかにした。アッセイは過免疫ウサギIgG標準品を用いて較正した。活性の1ユニットは1μgのウサギ標準品と等価とする。
【0145】
統計解析
本研究は研究的性質のものであり、サンプルサイズは類似の薬剤についての以前の経験に基づいたものである。CDP870の効能を非公開試験手順を用い、疾病活性スコア(DAS)を計算すること、および治療意図およびプロトコルごと(per-protocol)に対するCDR20/50応答によって解析した。疾病活性スコアは以下のように計算した:DAS=0.555x(28触覚過敏関節)1/2+0.284x(28腫脹関節)1/2+0.7xIn(ESR)+0.0142x(患者の全体的評価)。まず、集めた活性グループをプラセボと比較した。この比較が5%水準で有意であった場合、各用量投与グループをプラセボと比較した。全ての比較は有意水準5%で両側検定した。全てのP-値は実地調査解析から導いたもので、推論的解釈に用いてはならない。
【0146】
結果
人口統計学:
RAの36人の患者を集めた。患者の人口統計学的データは表6に示した。平均年齢は56歳で30人の患者は女性であった。RAの平均期間は13年であり21人の患者はリウマチ因子陽性であった。異なるグループの患者は同様な人口統計学的特徴を有している。盲目投与期間において、6/12人のプラセボ処理した患者は投与4週間以上で悪化RAについての研究から離脱した。2/24人のCDP870処置患者は、投与4週間以降で1mg/kg群のどちらについても悪化RA/消失についての追跡調査から離脱した。差異は統計的に有意であった(p=0.009、フィッシャー完全検定(Fisher exact test))。
【0147】
【表1】

【0148】
臨床的有効性:
前に行った最新の観察についてのプロトコル集団ごとのACR20の改善のあった患者の割合は、4週間後にてプラセボ、1、5および20mg/kg CDP870で16.7、50、87.5および62.5%であり(合わせた治療効果P=0.012)、8週間後にて16.7、25、75および75%であった(P=0.032)。前に行った最新の観察についてのプロトコル集団ごとのDASスコア(メジアン)の低下は、4週間後にてプラセボ、1、5および20mg/kg CDP870で0.15、1.14、1.91および1.95(合わせた治療効果P=0.001)であり、8週間後にて0.31、0.09、2.09および1.76(P=0.008)であった(図23)。世界保健機構およびリウマチ学協会国際連盟におけるスコアデータセットの個々の要素の変化を図24に示す。
【0149】
CDP870の公開標識投与(open labeled dose)の結果、同様な有益な効果が達成された。調査のため集められた36人の患者のうち、32人にはCDP870の第2回インフュージョンを行った。第1回予備的インフュージョンからACR20改善のあった患者の割合は、5および20mg/kgのCDP870投与後4週間にて72.2および55.6%であり、8週間にて55.6および66.7%であった。
【0150】
有害事象
治療はインフュージョン関連反応が無くよく許容された。アレルギー反応または皮膚発疹は全く報告されなかった。二重盲目フェーズでは、プラセボ、1,5および20mg/kgの群でそれぞれ、19、38、8および14の有害事象が起こった。最も一般的なのは5人の患者(プラセボ1人、1mg/kgで3人、20mg/kgで1人)で9例起こった頭痛であった。プラセボを与えられた1人の患者およびCDP870を与えられた3人の患者(1人は5mg/kg、2人は20mg/kg)は低度の呼吸気道感染を起した。これらは軽いまたは中程度のものとして報告された。それらの患者は経口抗生物質で治療し、1〜2週間の間に回復した。1および5mg/kg群中の各3人の患者および20mg/kgの1人の患者はCDP870処置の1〜2か月後に尿道感染を起した。1mg/kgのインフュージョンの3日後に、頚部痛という有害事象が1例起こり、それは重篤と評価された。抗核抗体の上昇が4人の患者で見られた:プラセボ群に1人(1/40に対して陰性)、1mg/kg群に2人(1/40に対して陰性、1/80に対して陰性)および、20mg/kg群に1人(1/40に対して陰性)。抗-DNAおよび抗-カルジオリピン抗体に変化は見られなかった。
【0151】
CDP870血漿濃度および抗CDP870レベル
予測されたように、CDP870の全ての用量レベルについて、インフュージョンの終わりに血漿濃度のピークがあり、ピーク血漿濃度は用量比例的であり、血漿濃度はその後緩やかに減少した。CDP870の血漿濃度プロフィールは有志者において以前に見られたものと非常に類似しており、そこでは半減期はおよそ14日であると計算された。再投与において、単一回投与インフュージョンと類似のプロフィールが見られた。
【0152】
単一回静脈インフュージョン後、抗CDP870レベルは低いか、または検出できなかった。
考察
TNFαを中和することはRAにおける効果的な治療戦略である。現在、これはキメラmAbまたは可溶性レセプター/ヒトFc融合タンパク質のような生物学的試薬の使用を必要とし、それらは製造に費用がかかる。TNFα中和治療剤はTNFαと高アフィニティーで結合する必要があり、長い血漿半減期、低抗原性および高い寛容性と安全性を有する必要がある。またTNFα遮断薬の利益を得られるであろうRAのすべての患者に入手できることが必要である。この目的を達成し得る一つの技術は、大腸菌で作られたTNFα結合抗体断片とポリエチレングルコールを結合させることである。この予備的研究において、我々は、PEG化された、抗TNFα改変FabであるCDP870が効果的でRA患者によく許容されることを見いだした。
【0153】
In vitro研究はCDP870はマウス抗TNFα親抗体と同様なTNFα中和活性を有することが示された。この研究により、CDP870はRAにおける炎症を低減させ、RAの症状を改善することが確かめられた。5および20mg/kg群におけるACR20応答基準によって測定した臨床的改善(75%、75%)はエタネルセプト(etanercept)(60%) (Morelanら、Annals Int. Med., 130, 478-486, 1999)およびインフリキシマブ(infliximab)(50%)(Mainiら、Lancet, 354, 1932-1939, 1999)と同等であった。試験した中投与レベルおよび最高投与レベルでは、治療効果は8週間続き、他の従前のmAB(Elliottら、Lancet, 344、1105−1110, 1194およびRankinら、Br.J. Rheumatol., 34, 334-342, 1995)と同等である。従前の研究により、抗TNFα抗体の治療効果はその血漿半減期および循環抗体の生成と関連していることが示されている(Mainiら、Arthritis Rheum., 38(補遺):S186 1995(要約))。我々の研究によりCDP870は14日の血漿半減期を有し、これは抗体全体の半減期と等価であり(Rankinら、(上述))、非結合Fab'抗体の半減期よりも長いことが示された。さらに、CDP870は非常に低い抗体応答しか引き起こさない。
【0154】
本研究の重要な目的の一つは、このPEG化Fab'の投与の寛容性と安全性を調べることである。我々の研究では、CD870はよく寛容されるようである。しかしながら、長期毒性、特にエタネルセプトおよびインフリキシマブについて報告されている脱髄性疾患、感染および皮膚発疹の危険性を評価するためには更なる研究が必要であろう。
【0155】
まとめると、CDP870はRAにおいて治療的に有効であり短期的な本研究においてはよく寛容された。
上述した例は単なる例示であって請求の範囲に定義した本発明の範囲を制限するものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、hTNF40軽鎖のフレームワーク領域と比較したヒト軽鎖サブグループ1のフレームワーク領域を示す(配列番号83から90);
【図2】図2は、hTNF40重鎖のフレームワーク領域と比較したヒト重鎖サブグループ1およびサブグループ3のフレームワーク領域を示す(配列番号91から98、および106から109);
【図3】図3は、hTNF40のCDRのアミノ酸配列を示す(配列番号1から7)。ここでCDR H2'はC-末端の6個のアミノ酸がヒトサブグループ3生殖細胞系列抗体のH2 CDR配列に由来するハイブリッドCDRであって、このハイブリッド化に起因するその配列のアミノ酸置換は下線を引いてある。
【図4】図4は、ベクターpMR15.1を示す。
【図5】図5は、ベクターpMR14を示す。
【図6】図6は、マウスhTNF40Vlのヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列を示す(配列番号99)。
【図7】図7は、マウスhTNF40Vhのヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列を示す(配列番号100)。
【図8】図8は、hTNF40-gL1のヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列を示す(配列番号8)。
【図9】図9は、hTNF40-gL2のヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列を示す(配列番号9)。
【図10】図10は、gh1hTNF40.4のヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列を示す(配列番号10)。
【図11】図11は、gh3hTNF40.4のヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列を示す(配列番号11)。
【図12】図12は、ベクターCTIL5-gL6を示す。
【図13】図13は、抗体hTNF40に由来する改変Fab断片を含むCDP870と呼ばれる化合物の構造を示す。この抗体hTNF40に由来する改変Fab断片はリシル−マレイミドリンカーにシステイン残基によって共有結合的に連結し、リシル残基上の各アミノ基はそれに共有結合的に付加したメトキシPEG残基(式中nは約420)を有する。
【図14】図14は、ベクターpTTQ9を示す。
【図15】図15は、OmpAオリゴヌクレオチドアダプターの配列を示す(配列番号101)。
【図16】図16は、ベクターpACYC184を示す。
【図17】図17は、ベクターpTTO-1を示す。
【図18】図18は、ベクターpTTO-2を示す。
【図19】図19は、ベクターpDNAbEng-G1を示す。
【図20】図20は、大腸菌改変Fab発現のための種々の遺伝子間配列をコードするオリゴヌクレオチドカセットを示す(配列番号102から105)。
【図21】図21は、IGS変異体の改変Fabのペリプラズム蓄積を示す。
【図22】図22は、ベクターpTTO(CDP870)を示す。
【図23】図23は、CDP870の異なる用量およびプラセボで治療した患者における疾病活性スコア(disease activity score)(DAS)を示す。メジアンおよびIQ範囲は前に行った最後の観察についてのプロトコルあたりの(per-protocol)集団数に対して示してある。小さな四角はプラセボを表し、菱形は1mg/kgを表し、三角は5mg/kgを示し、大きな四角は20mg/kgを表す。
【図24A】CDP870の異なる用量およびプラセボで治療した患者における、触覚過敏関節数(tender joint count)、腫脹関節数(swollen join count)、疼痛スコア(pain score)、疾病活性の評価者による全体評価、改変健康評価質問(HAQ)、C反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)を示す。メジアンおよびIQ範囲は前に行った最後の観察についてのプロトコルあたりの集団数に対して示してある。小さな四角はプラセボを表し、菱形は1mg/kgを表し、三角は5mg/kgを示し、大きな四角は20mg/kgを表す。
【図24B】CDP870の異なる用量およびプラセボで治療した患者における、触覚過敏関節数(tender joint count)、腫脹関節数(swollen join count)、疼痛スコア(pain score)、疾病活性の評価者による全体評価、改変健康評価質問(HAQ)、C反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)を示す。メジアンおよびIQ範囲は前に行った最後の観察についてのプロトコルあたりの集団数に対して示してある。小さな四角はプラセボを表し、菱形は1mg/kgを表し、三角は5mg/kgを示し、大きな四角は20mg/kgを表す。
【図24C】CDP870の異なる用量およびプラセボで治療した患者における、触覚過敏関節数(tender joint count)、腫脹関節数(swollen join count)、疼痛スコア(pain score)、疾病活性の評価者による全体評価、改変健康評価質問(HAQ)、C反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)を示す。メジアンおよびIQ範囲は前に行った最後の観察についてのプロトコルあたりの集団数に対して示してある。小さな四角はプラセボを表し、菱形は1mg/kgを表し、三角は5mg/kgを示し、大きな四角は20mg/kgを表す。
【図24D】CDP870の異なる用量およびプラセボで治療した患者における、触覚過敏関節数(tender joint count)、腫脹関節数(swollen join count)、疼痛スコア(pain score)、疾病活性の評価者による全体評価、改変健康評価質問(HAQ)、C反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)を示す。メジアンおよびIQ範囲は前に行った最後の観察についてのプロトコルあたりの集団数に対して示してある。小さな四角はプラセボを表し、菱形は1mg/kgを表し、三角は5mg/kgを示し、大きな四角は20mg/kgを表す。
【図24E】CDP870の異なる用量およびプラセボで治療した患者における、触覚過敏関節数(tender joint count)、腫脹関節数(swollen join count)、疼痛スコア(pain score)、疾病活性の評価者による全体評価、改変健康評価質問(HAQ)、C反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)を示す。メジアンおよびIQ範囲は前に行った最後の観察についてのプロトコルあたりの集団数に対して示してある。小さな四角はプラセボを表し、菱形は1mg/kgを表し、三角は5mg/kgを示し、大きな四角は20mg/kgを表す。
【図24F】CDP870の異なる用量およびプラセボで治療した患者における、触覚過敏関節数(tender joint count)、腫脹関節数(swollen join count)、疼痛スコア(pain score)、疾病活性の評価者による全体評価、改変健康評価質問(HAQ)、C反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)を示す。メジアンおよびIQ範囲は前に行った最後の観察についてのプロトコルあたりの集団数に対して示してある。小さな四角はプラセボを表し、菱形は1mg/kgを表し、三角は5mg/kgを示し、大きな四角は20mg/kgを表す。
【図24G】CDP870の異なる用量およびプラセボで治療した患者における、触覚過敏関節数(tender joint count)、腫脹関節数(swollen join count)、疼痛スコア(pain score)、疾病活性の評価者による全体評価、改変健康評価質問(HAQ)、C反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)を示す。メジアンおよびIQ範囲は前に行った最後の観察についてのプロトコルあたりの集団数に対して示してある。小さな四角はプラセボを表し、菱形は1mg/kgを表し、三角は5mg/kgを示し、大きな四角は20mg/kgを表す。
【図24H】CDP870の異なる用量およびプラセボで治療した患者における、触覚過敏関節数(tender joint count)、腫脹関節数(swollen join count)、疼痛スコア(pain score)、疾病活性の評価者による全体評価、改変健康評価質問(HAQ)、C反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)を示す。メジアンおよびIQ範囲は前に行った最後の観察についてのプロトコルあたりの集団数に対して示してある。小さな四角はプラセボを表し、菱形は1mg/kgを表し、三角は5mg/kgを示し、大きな四角は20mg/kgを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子であって、可変領域がCDRH1として図3中にH1として記載した配列(配列番号1)、CDRH2として図3中にH2’として記載した配列(配列番号2)若しくは図3中にH2として記載した配列(配列番号7)、またはCDRH3として図3中にH3として記載した配列(配列番号3)からなるCDRを含む重鎖を含む、前記抗体分子。
【請求項2】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子であって、可変領域がCDRL1として図3中にL1として記載した配列(配列番号4)、CDRL2として図3中にL2として記載した配列(配列番号5)またはCDRL3として図3中でL3として記載した配列(配列番号6)からなるCDRを含む軽鎖を含む、前記抗体分子。
【請求項3】
可変領域がCDRH1として配列番号1、CDRH2として配列番号2若しくは配列番号7、またはCDRH3として配列番号3に記載の配列からなるCDRを含む重鎖、並びに可変領域がCDRL1として配列番号4、CDRL2として配列番号5またはCDRL3として配列番号6に記載の配列からなるCDRを含む軽鎖を含む、請求項1または2に記載の抗体分子。
【請求項4】
CDRH1として配列番号1、CDRH2として配列番号2若しくは配列番号7、CDRH3として配列番号3、CDRL1として配列番号4、CDRL2として配列番号5、そしてCDRL3として配列番号6を含む、請求項3に記載の抗体分子。
【請求項5】
CDRH2として配列番号2を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項6】
CDR移植抗体分子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項7】
可変領域がヒトアクセプターフレームワーク領域および非ヒトドナーCDRを含む、請求項6に記載の抗体分子。
【請求項8】
重鎖の可変領域のヒトアクセプターフレームワーク領域がヒトグループ1コンセンサス配列に基づき、そして位置28、69および71にドナー残基を含む、請求項7に記載の抗体分子。
【請求項9】
重鎖の可変領域のヒトアクセプターフレームワーク領域がヒトグループ1コンセンサス配列に基づき、そして位置28、38、46、67、69および71にドナー残基を含む、請求項7に記載の抗体分子。
【請求項10】
重鎖の可変領域のヒトアクセプターフレームワーク領域がヒトグループ3コンセンサス配列に基づき、そして位置27、28、30、48、49、69、71、73、76および78にドナー残基を含む、請求項7に記載の抗体分子。
【請求項11】
軽鎖の可変領域のヒトアクセプターフレームワーク領域がヒトグループ1コンセンサス配列に基づき、そして位置46および60にドナー残基を含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項12】
ドナー残基が、非ヒトドナー残基である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項13】
少なくとも1つのヒト定常領域を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項14】
ヒト定常領域がIgG1である、請求項13に記載の抗体分子。
【請求項15】
相同であるアクセプター鎖およびドナー鎖を含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項16】
軽鎖可変領域hTNF40−gL1(配列番号8)および重鎖可変領域gh3hTNF40.4(配列番号11)を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項17】
軽鎖可変領域hTNF40−gL2(配列番号9)および重鎖可変領域gh1hTNF40.4(配列番号13)の少なくとも1つを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項18】
抗体断片である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項19】
Fab断片である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項20】
配列番号111に記載の配列を含む重鎖および配列番号113に記載の配列を含む軽鎖を含むFab断片である、請求項16〜19のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項21】
エフェクター分子又はレポーター分子が付加し得るように1以上のアミノ酸を重鎖のC−末端に有する改変Fab断片である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項22】
追加のアミノ酸が、エフェクター分子またはレポーター分子が付加し得る1または2個のシステイン残基を含有する改変ヒンジ領域を形成する、請求項21に記載の抗体分子。
【請求項23】
配列番号115に記載の配列を含む重鎖および配列番号113に記載の配列を含む軽鎖を含む改変Fab断片である、請求項21または22に記載の抗体分子。
【請求項24】
配列番号113に記載の配列を含む軽鎖を含む、ヒトTNFαに特異性を有する抗体分子。
【請求項25】
配列番号113に記載の配列からなる軽鎖を含む、ヒトTNFαに特異性を有する抗体分子。
【請求項26】
配列番号115に記載の配列を含む重鎖を含む、ヒトTNFαに特異性を有する抗体分子。
【請求項27】
配列番号115に記載の配列からなる重鎖を含む、ヒトTNFαに特異性を有する抗体分子。
【請求項28】
配列番号113に記載の配列を含む軽鎖および配列番号115に記載の配列を含む重鎖を含む、ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子。
【請求項29】
配列番号113に記載の配列からなる軽鎖および配列番号115に記載の配列からなる重鎖を含む、ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子。
【請求項30】
TNFαに対して改善されたアフィニティーを有する、請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体分子の遺伝的変異体。
【請求項31】
マウス抗TNFαモノクローナル抗体hTNF40である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項32】
請求項31に記載のモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖可変領域を含むキメラ抗体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項33】
軽鎖および重鎖中にヒト定常領域を含む、請求項32に記載の抗体分子。
【請求項34】
請求項21〜29のいずれか1項に記載の抗体分子を含み、その重鎖のC−末端またはその付近のアミノ酸に共有結合的に付加したエフェクターまたはレポーター分子を有する化合物。
【請求項35】
エフェクター分子を含む、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
エフェクター分子が1以上のポリマーを含む、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
1以上のポリマーが、場合により置換されていてもよい、直鎖若しくは分枝鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー、または分枝若しくは非分枝の多糖である、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
1以上のポリマーがメトキシポリ(エチレングリコール)である、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
重鎖のC−末端のシステイン残基のひとつにリシル−マレイミド基が付加した請求項23に記載の抗体分子を含む化合物であって、前記リシル残基の各アミノ基に分子量約20,000Daのメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合的に連結している、前記化合物。
【請求項40】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列を含む軽鎖および配列番号115に記載の配列を含む重鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つに1以上の合成または天然に存在するポリマーが付加している、前記化合物。
【請求項41】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列からなる軽鎖および配列番号115に記載の配列からなる重鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つに1以上の合成または天然に存在するポリマーが付加している、前記化合物。
【請求項42】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列を含む軽鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリシル−マレイミド基が付加しており、前記リシル残基の各アミノ基に500Daから50,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合的に連結している、前記化合物。
【請求項43】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列からなる軽鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリシル−マレイミド基が付加しており、前記リシル残基の各アミノ基に500Daから50,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合的に連結している、前記化合物。
【請求項44】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号115に記載の配列を含む重鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリシル−マレイミド基が付加しており、前記リシル残基の各アミノ基に500Daから50,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合的に連結している、前記化合物。
【請求項45】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号115に記載の配列からなる重鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリシル−マレイミド基が付加しており、前記リシル残基の各アミノ基に500Daから50,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合的に連結している、前記化合物。
【請求項46】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列を含む軽鎖および配列番号115に記載の配列を含む重鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリシル−マレイミド基が付加しており、前記リシル残基の各アミノ基に500Daから50,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合的に連結している、前記化合物。
【請求項47】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列からなる軽鎖および配列番号115に記載の配列からなる重鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリシル−マレイミド基が付加しており、前記リシル残基の各アミノ基に500Daから50,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合的に連結している、前記化合物。
【請求項48】
メトキシポリ(エチレングリコール)残基が、約20,000Daの分子量を有する、請求項34〜47のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項49】
少なくとも約11日のin vivo半減期を有する、請求項34〜47のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項50】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列を含む軽鎖および配列番号111に記載の配列を含む重鎖を含み、ここで当該重鎖はさらに1または2のシステイン残基を含むC−末端ポリペプチドを含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリンカーセグメントが付加しており、次いでそれに、1または2の、場合により置換されていてもよい、直鎖若しくは分枝鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレンまたはポリオキシアルキレンポリマーが共有結合的に連結している、ここで当該ポリマーの総平均分子量は、約500Daから100,000Daである、前記化合物。
【請求項51】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列を含む軽鎖および配列番号115に記載の配列を含む重鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリンカーセグメントが付加しており、次いでそれに、1または2の、場合により置換されていてもよい、直鎖若しくは分枝鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレンまたはポリオキシアルキレンポリマーが共有結合的に連結している、ここで当該ポリマーの総平均分子量は、約500Daから100,000Daである、前記化合物。
【請求項52】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列からなる軽鎖および配列番号115に記載の配列からなる重鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリンカーセグメントが付加しており、次いでそれに、1または2の、場合により置換されていてもよい、直鎖若しくは分枝鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレンまたはポリオキシアルキレンポリマーが共有結合的に連結している、ここで当該ポリマーの総平均分子量は、約500Daから100,000Daである、前記化合物。
【請求項53】
ポリマーの総平均分子量が、10,000Daから80,000Daである、請求項50〜52のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項54】
ポリマーの総平均分子量が、約40,000Daである、請求項50〜52のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項55】
ポリマーが、場合により置換されていてもよい直鎖若しくは分枝鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)およびポリ(ビニルアルコール)からなる群より選択される、請求項50〜54のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項56】
ポリマーが、メトキシポリ(エチレングリコール)である、請求項55に記載の化合物。
【請求項57】
リンカーセグメントが、リシル−マレイミドに由来する基である、請求項50〜56のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項58】
リンカーセグメントが、[1[[[2−[[3−(2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル)−1−オキソプロピル]アミノ]エチル]アミノ]カルボニル]−1,5−ペンタンジイル]ビス(イミノカルボニル)である、請求項50〜56のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項59】
ヒトTNFαに対する特異性を有する抗体分子を含む化合物であって、配列番号113に記載の配列からなる軽鎖および配列番号115に記載の配列からなる重鎖を含み、重鎖のC−末端のシステイン残基の一つにリシル−マレイミドに由来する基が付加しており、当該リシル残基には2つのメトキシポリ(エチレングリコール)残基がそれぞれリシルアミノ基において共有結合的に連結している、ここで当該メトキシポリ(エチレングリコールの総平均分子量は約40,000Daである、前記化合物。
【請求項60】
請求項21〜29のいずれか1項に記載の抗体分子を含む化合物であって、式:
【化1】

(式中、nは約420である)
を有する、前記化合物。
【請求項61】
短縮されたドナーCDR配列を含むハイブリッドCDRを含み、前記ドナーCDRの欠失部分が異なる配列で置換されており、そして機能性CDRを形成している、請求項1〜33のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項62】
CDR配列の置換された部分が、前記抗体分子のフレームワーク領域が由来する抗体に由来するものである、請求項61に記載の抗体分子。
【請求項63】
CDR配列の置換された部分が、コンセンサスフレームワーク領域を有する生殖細胞系列抗体に由来する、請求項62に記載の抗体分子。
【請求項64】
重鎖のCDRH2が抗体分子中でハイブリッドになっている、請求項61〜63のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項65】
CDRH2が配列番号2に記載の配列を有する、請求項64に記載の抗体分子。
【請求項66】
ドナーCDRの短縮が1〜8アミノ酸である、請求項61〜64のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項67】
短縮が4〜6アミノ酸である、請求項66に記載の抗体分子。
【請求項68】
短縮がCDRのC−末端で行われる、請求項61〜67のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項69】
請求項1〜33および61〜68のいずれか1項に記載の抗体分子の重鎖および/または軽鎖をコードする、単離されたDNA。
【請求項70】
配列番号8または10に記載の配列を含む、請求項69に記載の単離されたDNA。
【請求項71】
配列番号10または11に記載の配列を含む、請求項69に記載の単離されたDNA。
【請求項72】
配列番号110、112または114に記載の配列を含む、請求項69に記載の単離されたDNA。
【請求項73】
請求項69〜72のいずれか1項に記載のDNAを含有する、クローニングベクターまたは発現ベクター。
【請求項74】
請求項69〜72のいずれか1項に記載のDNAを含む大腸菌発現ベクター。
【請求項75】
pTTO(CDP870)である、請求項74に記載の大腸菌発現ベクター。
【請求項76】
請求項73〜75のいずれか1項に記載のベクターで形質転換した宿主細胞。
【請求項77】
請求項76に記載の宿主細胞を培養し、抗体分子を単離することを含む、請求項1〜33および61〜68のいずれか1項に記載の抗体分子を製造する方法。
【請求項78】
請求項73〜75のいずれか1項に記載のDNAを含む大腸菌発現ベクターを含む大腸菌を培養し、そして抗体分子を単離することを含む、請求項1〜33および61〜68のいずれか1項に記載の抗体分子を製造する方法。
【請求項79】
抗体分子がペリプラズムに標的化されている、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
請求項1〜33および61〜68のいずれか1項に記載の抗体分子または請求項34〜60のいずれか1項に記載の化合物を含む、治療用組成物または診断用組成物。
【請求項81】
さらに製薬的に許容できる希釈剤または担体を含む、請求項80に記載の組成物。
【請求項82】
治療に使用するための、ヒトTNFαに対する特異性を有する請求項1〜33および61〜68のいずれか1項に記載の抗体分子又は請求項34〜60のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項83】
ヒトTNFαに対する特異性を有する請求項1〜33および61〜68のいずれか1項に記載の抗体分子又は請求項34〜60のいずれか1項に記載の化合物の、TNFαによって媒介される病理状態の治療のための医薬の製造における使用。
【請求項84】
病理状態が、関節リウマチまたは骨関節炎である、請求項83に記載の使用。
【請求項85】
図19に記載のベクターpDNAbEng−G1。
【請求項86】
図22に記載のベクターpTTO(CDP870)。
【請求項87】
配列番号1〜7のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項88】
遺伝子治療に使用するための、請求項70〜73のいずれか1項に記載のDNA。
【請求項89】
少なくとも0.85x10−10Mの親和性を有する、請求項1〜33および61〜68のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項90】
少なくとも0.75x10−10Mの親和性を有する、請求項1〜33および61〜68のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項91】
少なくとも0.5x10−10Mの親和性を有する、請求項1〜33および61〜68のいずれか1項に記載の抗体分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図24F】
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【図24G】
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【図24H】
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【公開番号】特開2007−105043(P2007−105043A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285205(P2006−285205)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【分割の表示】特願2002−502126(P2002−502126)の分割
【原出願日】平成13年6月5日(2001.6.5)
【出願人】(501460693)セルテック アール アンド ディ リミテッド (29)
【Fターム(参考)】