説明

ヒト血清アルブミンの結晶化の方法

本発明は、さまざまな起源に由来するヒトアルブミンの、結晶化および繰り返しの結晶化による精製および製造に関する。発明された製法の基本的特徴は、アルブミン結晶化を最大にする特定の反応条件および沈澱化試薬を提供することを含む。発明した方法の工程管理のための基礎として溶解度図を利用する。本発明は具体的には、リン酸塩濃度、pHおよび温度を調節して、結晶化動力学および結晶収率を正確に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトアルブミンを結晶化する信頼性が高い方法および商業的に実現可能な方法を提供する。より詳細には、本発明は、特に遺伝子導入動物または他の組み換え起源を含むさまざまなアルブミン起源から精製された、結晶性ヒトアルブミンを製造する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ヒト血清アルブミン(「hSA」)(本明細書において、hSAをヒト血清アルブミンの語と互換的に用いる)を結晶化する改良法に関する。本方法は、好ましくは治療用途においてまたは医薬調製物中の添加物として後で利用することができる組み換えhSAの精製手順を向上させるために行われる。医薬調製物に関して、本明細書に記載の通り精製されたヒトアルブミンを、治療剤としてまたは添加物として使用することができる。いずれの場合にも、適当な処方は、それぞれ参照により本開示に含まれる非特許文献1および非特許文献2に見出すことができる。
hSAの治療用途について、アルブミン投与の目的は主に、血漿コロイド浸透圧を維持することによって循環血漿量を維持すること、および血管内への腔内および間隙液を血管へ移動させることによって他の方法では難治性の重度の浮腫を治療することである。
【0003】
アルブミン製品は、急性低タンパク血症に起因する症状、および他の治療法に抵抗性である慢性低タンパク血症の結果として生じる症状において、アルブミンを補充することによって症状の一過性改善を達成するために用いられる。
アルブミンは、血液増量剤としての臨床利用のための最初の天然コロイド組成物であり、およびアルブミンは他のコロイド製品との比較のための標準コロイド剤である。アルブミンを用いて、患者において血管内コロイド浸透圧を上昇させそれによって血管内容量を増大させることができる具体的な医療適応として以下のものを含む:血液量減少性ショック;重度;成人呼吸窮迫症候群(ARDS);腹水;肝不全;膵炎および心肺バイパスを受けている患者において(非特許文献3)。アルブミンはまた、新生児高ビリルビン血症、低タンパク血症、およびネフローゼ症候群を治療するのに用いることができる(非特許文献4)。
ヒト血液のアルブミン部分は3つの主な生理学的役割を果たす:(1)血漿コロイド浸透圧の維持,(2)ビリルビンの輸送および捕捉、および(3)ホルモンおよび酵素といった、脂肪酸および他の中間代謝体の輸送。(非特許文献5)。アルブミンは血漿のコロイド浸透圧の約80%を占めるため、血清アルブミン濃度の50%低下は結果としてコロイド浸透圧の66%低下を生じる(非特許文献6)。危篤状態の患者では、死亡の危険性は血清アルブミン濃度と反比例する(非特許文献3)。GoldwaserとFeldmanは、血清アルブミン濃度の低下2.5g/dLごとに、死亡の危険性が24%〜56%上昇すると推計している(非特許文献7)。この概算は他の共変数(たとえば、腎機能、血清 トランスアミナーゼ、乳酸アシドーシス)について補正後に行われ、およびアルブミン輸液が直接的な細胞保護作用を有しうることを強く示唆する(非特許文献3)。
上記を考慮すると、hSAを記載する入手可能な科学文献の量およびそれが用いられる工業用途の数の両方から判断して、hSAはおそらく、血漿タンパク質すべてのうちで最も良く知られていることは明らかである。しかし、この豊富な知識量は主にその生理学およびアルブミンの臨床用途に注目しており、それを精製するのに用いられる方法論または血漿分画以外のものからその分子を調達することには注目していない。最も良く知られておりかつ今尚幅広く用いられている精製方法は、Cohnと共同研究者によって60年前に開発された(非特許文献8)。Cohn血漿分画法は、幅広い臨床用途のための精製血漿製品を製造するために主に用いられる。Cohnはまた、ヒト血清アルブミンについての使用のための血漿分画法からよく知られているものと同様の原理を利用する、幅広く用いられている結晶化方法を開発した。しかしながら、本方法はかなり非効率であり、さらに高度に精製されたhSAの適当な供給をしばしば提供しない。
【0004】
pHの効果
pHの効果はタンパク質結晶化における主要な因子の1つである。通常、タンパク質結晶は溶解度の明確な最小点を特定のpHで有する。タンパク質結晶化の一般的文献では、この最小溶解度は標的タンパク質の等電点にあることが非常に多い。しかし、hSAは、幅広いイオン強度に亘り、等電点で高度に可溶性である。したがって、アルブミンの結晶化特性は多数の他のタンパク質のものよりもはるかに複雑であり、信頼性の高い結晶化および/または精製を困難にしている。
アルブミンは、受けた化学処理に応じて、さまざまな等電点を有する。6つの結合脂肪酸の完全な補完を伴うとき、hSAのpIは通常は4.6であるが、しかし、完全に脱脂された場合そのpIは5.6になるであろう。したがって、hSAの結晶化特性は、その「天然」および脱脂状態の間で異なり、さらにhSA自体の結晶化について報告されている最適pHは、下はpH4.6から上はpH8.0まで相当に異なり、さらに、バッチ毎におけるhSAの分子状態に高度に依存する。このように、文献中に記載のhSAの結晶化に最適と考えられているpHの幅広さは混乱を招き、およびさまざまな沈澱化試薬に明らかに依存し、使用された沈澱化試薬はそれぞれさまざまな濃度を有し、さらに、hSAの可能な分子状態のうち1つにしか最適でない可能性がある。
【0005】
たとえば、Cohnアルコール処理で予想されるような、イオン強度の低いhSAについては、結晶化は天然アルブミンの等電点に近いpH4.9〜5.3で最適に進行する。より高いイオン強度の条件下でかつ強く緩衝されている場合、PEG溶液による結晶化のための最適pHは7.4である。つまり、hSAの最適結晶化について報告されているpH効果は、見かけ上不規則な様式で試薬組成に依存するため、先行技術および先行技術の方法論を参照することによって確かな結論を下すことができない。実際、先行技術の教示の状況を考えると、新しい試薬および技術を特定のpHまたは他の一変数に従って苦労して最適化し、結晶化条件を導く間それを一定に保たなければならない。
【0006】
沈澱化試薬の効果
hSAはさまざまな塩濃度において非常に高い溶解度を有することに注意すべきである。hSAは低イオン強度でエタノール(Cohn法;非特許文献8)または他の溶媒を加えて沈澱または結晶化することができる。あるいは、非常に高い塩濃度を用いて塩析することが可能であり、さらに初期の文献はその大部分が、硫酸アンモニウムまたはエタノールを用いたことを記載している。より近年の文献では、さまざまな分子量のPEG溶液が広く利用されている。しかし、文献に現れる試薬は、残る夾雑物のために、得られたhSAの臨床用途に許容されない。先行技術のうちでは沈澱化試薬のエタノールおよび硫酸アンモニウムだけがhasの製造に有用である。しかし、それらは両方とも、重大で実際的な問題を有する。エタノールを用いる結晶化は、ベンゼンまたは重金属といった有毒な有機修飾剤の添加を必要とする。硫酸アンモニウムは最終アルブミン処方に適した塩ではなく、したがって除去する必要がある。
【0007】
特定の試薬の効果
他の特性に加えて、アルブミンは幅広い低分子およびイオンを結合および付着させる並外れた能力を有する。さまざまな長鎖アルコールおよび脂肪酸のhSAとの結合は、分子hSAの結晶化プロファイルに強く影響し、さらに臨床品質のヒト血清アルブミンの製造を非常に変動しやすくおよび予測不能にするように作用する。hSAの結晶化プロファイルに顕著に影響を及ぼし得る試薬の例として:デカノール、パルミチン酸およびカプリル酸が挙げられる。
【0008】
温度の効果
エタノール溶液中でhSAを結晶化させるための先行技術の試みは、典型的には0〜10℃の範囲の低温で行われていることにもまた注意すべきである。高塩およびPEG手順はしばしば4〜20℃のより広い温度範囲で行われている。これらの先行技術の試みでは、アルブミン沈澱に対する温度の効果が実際に何であるかは明らかでない。エタノール中で結晶溶解度は見かけ上、低温ではより低い。温度の効果は、先行技術で見出されるPEGおよび塩の方法においては明らかに説明されていない。製造効率および商業的に実現可能な製法のためには、温度は主要な因子の1つである。全体として、温度の意義は先行技術によって説明または開示されていない。
【0009】
動力学および種結晶添加
先行技術によると、所定の反応が完了するアルブミンの結晶化に必要な時間は、最大で数日を要しうる。しかし、先行技術の方法の中では、エタノールを使用する方法が最も迅速であり、結晶化を開始するのに12ないし24時間しか必要としない。同じく先行技術の方法によると、アルブミンの実際の結晶化は、先行する反応から形成された結晶を反応混合物に播種することを含む添加剤無しでは全く不可能であろう。加えて、PEGに依存する結晶化の方法は、この種類の添加剤を利用してもしなくてもよい。本分野における混乱を考えて、一貫して信頼性の高い結果を与えるかまたは高収量の結晶を生じる利用可能な参考文献は一般的に存在しないが、種結晶添加は結晶成長を有意に加速させることに注意すべきである。
【表1】

【0010】
無機塩を用いる先行技術の方法論
先行技術(非特許文献9)は、ヒト血清アルブミンを、50%飽和(NHSO;15〜20%NaSO;2.2Mリン酸K(pH6.8)および3Mリン酸Na(pH5.0)を含むさまざまな無機塩を用いて結晶化する方法を提供した。これらの先行技術の方法において、デカノールは必須の結晶化助剤であることが見出された。分子骨格中に5個を超える炭素原子を有する他の脂肪族アルコールもまた有用であることが見出された。しかし、結晶化条件および手順についての記載が非常に少ない。物質バランスは示されていない。この引用文献から利用可能なデータに基づいて、十分に制御されたかまたは信頼性の高い方法でアルブミンの結晶化を行うことは不可能である。
【0011】
先行技術文献の概観は、提案された結晶化方法がいくつかある一方で、該当する引用文献は、工業または商業スケールで効率的である製法を教示せず、治療薬または添加物の製造における用途には利用できない方法を教示し、またはX線回折研究においてのみ有用な単結晶の製造にのみ有用な製法を提供することを示す。このように、先行技術の制限は、治療用、医薬添加物、または医療用アジュバントの役割におけるhSAの大スケール結晶化製法の設計に必要な結晶化条件の広範囲の知識の発展を妨げる。さらに、先行技術は、ヒト血漿以外の起源を使用することを教示しない。したがって、アルブミンの結晶を信頼性高くおよび商業スケールでさまざまな起源から製造する物理的および化学的条件を理解する必要が存在する。
【非特許文献1】REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES(16th and18th Eds.,Mack Publishing,Easton,Pa.(1980 and 1990) )
【非特許文献2】INTRODUCTION TO PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS (4th Edition,Lea & Febiger,Philadelphia (1985) )
【非特許文献3】Cochrane et al.,1998
【非特許文献4】Vermeulen et al.,1995
【非特許文献5】Peters,T et.al.
【非特許文献6】Rainey T.G.,et al.,1994
【非特許文献7】Goldwaser et al.,1997
【非特許文献8】Cohn E.J.et al.,1947
【非特許文献9】Haupt and Heide (1967)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は結晶性ヒトアルブミンを製造するための改良法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本方法は:ヒト血漿、および培養哺乳類細胞、遺伝子導入哺乳類の乳汁およびその他の体液、遺伝子導入植物、遺伝子導入鳥類、培養組み換え細菌細胞、培養組み換え酵母細胞または培養組み換え昆虫細胞といった組み換えアルブミン起源由来を含むさまざまなアルブミン起源に適する。すなわち、本方法は結晶化されたおよび医薬品質のhSAの製造に、それが由来する供給流に関わりなく有用である。本方法は高い精製力を有するため、結晶性アルブミンを特定の開始材料または供給流中に存在する他のタンパク質、細菌、脂肪酸または他の分子種から効果的に分離することができる。本発明の別の一実施形態では、アルブミンを結晶化媒体中で加熱および冷却サイクルによって溶解および再結晶化することができる。この、再結晶化手順は、本発明の使用者の必要に従って無制限の回数反復することができる。アルブミンの純度は再結晶化手順において規則的に改善される。
【0014】
本発明の方法はまた、結晶性ヒトアルブミンの製造の最適化を可能にする試薬および条件の正確な組み合わせを提供する。これらの方法において、pHおよび温度といった重要な製法パラメーターは正確に操作される。本発明の別の一実施形態は、リン酸ナトリウムまたはカリウムおよび/またはカプリル酸またはカプリル酸塩の沈澱化剤の最適濃度を提供する。
【0015】
本発明の製法は、ヒトアルブミンの結晶化に影響を与える主要な因子に基づく。好ましくは、本発明の製法は、下記の通り結晶化手順パラメーターを最適化するために、特定の方法で下記の変数を最適化する:
1.リン酸塩濃度を計画的段階で変化させる;
2.反応混合物の温度を、加熱および冷却手順を連続的に加える計画的段階で変化させる;
3.反応混合物のpHを、計画的段階の方法で調節するかまたは変化させる;
4.これらの特定段階の適用が、所定の供給流からのヒトアルブミンの精製および結晶化を可能にする。
【0016】
本発明の他の特性および利点は、添付の図面を参照しながら、下記の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明で明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
下記の略語は本明細書中で指定の意味を有する:
略語キーワード
pH よく知られた科学パラメーターに従って化学物質または化合物の水素イオン活性を記載するために用いられる用語
PEG ポリエチレングリコールの略語
用語の説明
コロイド 毛細管壁を容易に通過しない大きな分子をいう。これらの化合物はコロイド浸透圧(すなわち、それらは液体を引き寄せる)負荷を有し、および通常は血管内容量を回復させおよび組織灌流を改善するために投与される
ダイアフィルトレーション 効率的に塩または他の低分子を高分子溶液から除去するために限外濾過膜を組み込んだ操作。目的は溶液中のアルブミンから低分子を除去しおよび次の手順のために緩衝液を調整することである
組織灌流 組織への血流の量
供給流 工程または方法のために提供されおよび目的のタンパク質を含む、原材料または原溶液。
【0018】
hSAの結晶化のための本発明の方法は、さまざまな他のタンパク質成分を含む供給流からアルブミンを分離および精製するための非常に望ましい方法を提供する。結晶はタンパク質の最も純粋な形態であり、いったん沈澱すると結晶は非晶質沈澱よりも顕著に良好な機械的取り扱い特性を有し、および本分野で知られたさまざまな方法によって分離することができる。たとえば、結晶は工業フィルター上で効率的に分離および洗浄することができる。結晶化は精製化学品および医薬品の最も良く用いられる最終精製方法である。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態では、アルブミンはリン酸ナトリウムおよびカリウムの混合物を用いて結晶化される。結晶化は発明された処理条件を系統的な方法で用いることによって最適化される。条件が最適に調整されていない場合、アルブミンは非晶質相、小液滴またはゲルとして沈澱する。非晶質沈澱は取り扱いが非常に難しく、フィルター上で効率的に分離および洗浄することができない。非晶質相は結晶に容易に変換しない。結晶の製造は本発明に従って処理条件を調整する際に最適化される。本発明のさまざまな実施形態を下記に示す。
【0020】
1.リン酸塩:
結晶化はリン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムの何れかを単独で用いて行ってもよいが、リン酸ナトリウムおよびカリウムの混合物が好ましく用いられる。リン酸塩NaHPOおよびKHPOは、4Mの水溶液まで濃縮液に溶解させることができるため好ましい。これらの4Mリン酸塩は、さまざまな望ましいpH値を持つ4M結晶化緩衝液を作製するためにあらゆる割合で混合することができる。
【0021】
好ましくは、アルブミンは、相対的に高いリン酸塩濃度、典型的には約2.7M以上で結晶化する。リン酸塩の濃度の意義は、異なるモル濃度のリン酸塩でのアルブミン結晶の溶解度を示す図1および2で非常に明らかに示される。図2の半対数プロットは、結晶溶解度がリン酸塩のモル濃度を上昇させることによって体系的に低下することを示す。より高いモル濃度のリン酸塩を用いることによって、その製法におけるアルブミン収率を望ましいレベルに調整することができる。使用可能なリン酸塩の濃度の上限は、リン酸塩の溶解度によって設定される。リン酸塩の溶解度は、温度を下げかつアルブミン濃度を上げることによって低下する。本製法の一実施形態では、リン酸塩の溶解度は試薬温度を10℃未満に下げることによって顕著に低下する。試薬温度を下げ、かつアルブミン濃度を上げることによって、有効水分の濃度(available water concentration)も下がる。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態によると、不純物の大部分は開始材料においてリン酸塩濃度2.0〜2.7Mで効果的に沈澱し、この範囲でアルブミンは室温(25〜30℃)では容易に結晶化しない。不純物は濾過されることによって取り除かれる(リン酸塩濃度を2.0〜2.7Mに調整後)。その後、アルブミンが結晶化する10℃に濾液を冷蔵する。さらに、リン酸塩濃度を上昇させて、結晶中のアルブミン収率を上げることができる(図1および2の情報を利用)。表2および図4も参照。
【0023】
2.pHの意義
本発明によると、結晶化バッチのpHは、リン酸塩混合物を用いて完全に調節する。さまざまなpH値を持つ混合物の例、およびアルブミン結晶に対する効果を表1に示す。アルブミン結晶溶解度に対するpHの効果を図2に図式的に示す(表2も参照)。アルブミン結晶溶解度は、pHをpH5.6から約6.6に上昇させることによって低下する。結晶溶解度は少なくともpH7.4まで非常に低レベルに留まる。pH5.5未満は結晶が完全に溶解する。
【0024】
pHは結晶化動力学に対して特異的効果を有し、従ってより高いpH範囲6.3〜7.4は、単純な方法では用いることができない。より高いpH範囲では、そのようなpHを処理の最初に調節した場合、アルブミンは非晶質(小液滴)相として沈澱する。このように、結晶化処理は、好ましくは最初はリン酸塩(pH6.2)を用いて行われる(リン酸塩の混合配合については表1をおよび図2および3を参照)。後でアルブミンが大部分結晶化したとき、結晶収率を高めるために、リン酸塩濃度を高め、pHをより高い値に調整する。より高いpHはまた、結晶を洗浄する際にアルブミンの損失が少なくなるため有利に用いられる。
【0025】
3.温度の効果
異なる温度およびリン酸塩濃度でのアルブミン結晶の溶解度を図3に図示する。アルブミン結晶溶解度はより高い温度で上昇する。最低の溶解度は約0℃で認められる。しかしながら、より低い温度ではリン酸塩が結晶化して製法を制御不能にする可能性があるため、好ましい結晶化温度は約10℃である。リン酸塩の結晶化は相対的に遅いため、約0℃の実施例の方法を実施することは可能であった。
【0026】
アルブミンの結晶化動力学は室温では非常に遅い。したがって、アルブミンを沈澱化または結晶化することなく、リン酸塩濃度を2.6−2.7に室温で調整することができる。しかし、不純物は室温で容易に沈澱する。濾過後、アルブミン溶液を好ましくは10℃で冷蔵する。溶液を攪拌し、アルブミンを結晶化させる。
【0027】
加熱サイクルを利用することによってアルブミンを再結晶させることができる。結晶は45℃に加熱することによって溶解する。アルブミンは10℃に冷却することによって再び結晶化される。再結晶化を用いて、結晶純度を改善することができる。各結晶化後に、濾過することによって母液を除去する。冷却した3Mリン酸塩を用いて結晶をフィルター上で洗浄する。再結晶化サイクルは無限回反復することができる。再結晶化を用いて、アルブミン純度を改善することができる。表7および8および図7を参照のこと。
【0028】
アルブミンは相対的に熱安定性である。アルブミンは、65〜70℃の温度まで長時間加熱することができる。大部分の他のタンパク質は、そのような高温では変性および沈澱する。このように、65〜70℃での加熱処理を、結晶化前にアルブミン溶液を精製するために用いることができる。最高許容温度は、アルブミン溶液の組成およびpHに関係する。高いリン酸塩濃度(pH6.2)では、最高温度は65℃である。低塩溶媒およびpH5.4では、70℃で2〜3時間の加熱が可能である。熱処理の効果の実施例を表2および3および図6に示す。
【0029】
4.カプリル酸塩
アルブミンは、結晶化可能となるにはカプリル酸塩で飽和する必要がある。カプリル酸塩はまた、アルブミン、特に熱安定性に対して、安定化効果を有する。他の長鎖脂肪酸および長鎖アルコールも代替として有用である。デカノールは非常に効果的であり、先行技術で周知である。カプリル酸塩はそれがどのように用いられるかによって二つの効果を有する。カプリル酸塩はアルブミンの結合部位を飽和するためだけに用いられる場合に有益である。しかし、過剰のカプリル酸塩は結晶を溶解させ、さらにアルブミン収率を低下させる。
【0030】
カプリル酸塩の効果を図4で明らかにする。洗浄した結晶へのカプリル酸塩の添加は、明らかに結晶溶解度を高めた。結晶溶解度は、カプリル酸塩を10mMまで上昇させた際に速やかに上昇した。カプリル酸塩を10mMから20mMに増加させた場合、溶解度の上昇はより小さかったが、なお有意であった。リン酸塩濃度2.63Mおよび温度10℃で、アルブミン溶解度は、10mMカプリル酸塩での9mg/mlから、10mMカプリル酸塩での21mg/mlに上昇した。より高いリン酸塩濃度2.82Mおよび温度10℃では、アルブミン溶解度は、0mMカプリル酸塩での2mg/mlから、10mMカプリル酸塩での12mg/mlに上昇した。
【0031】
カプリル酸塩の溶解効果は顕著であるため、遊離カプリル酸塩の濃度を、結晶化工程において、よく制御しかつ可能な限り低く維持すべきである。1〜2mMの低レベルの遊離カプリル酸塩は、そうしなければアルブミン結晶の溶解度が非常に低くなるような条件の場合、許容可能である。図2から図7を参照のこと。
5.アルブミン:濃度、純度
実験用溶液では、開始溶液中のアルブミン濃度は、使用した条件における結晶の溶解度よりも高いレベルに設定される。本発明によると、遺伝子導入動物または培養細胞を起源とする供給流を扱う場合、通常、最初の清澄化工程を用いて、hSA結晶の溶解度よりも高くなるようにアルブミン濃度および他の化学パラメーターが調整または操作された溶液を提供する。これらの両方の場合においてアルブミン回収率は、状態図における溶解度情報を用いることによって推定することができる(図1〜4)。本発明によると、供給流溶液中のアルブミンの濃度レベルは通常、結晶化バッチ1リットル中にアルブミン15〜300グラムの範囲にある。生物起源由来のおよびhSAの商業的または工業的製造に使用可能な供給流において、これらと同様の範囲の濃度が認められる。
【0032】
さらに、本発明の好ましい実施形態によると、結晶化過程において、アルブミンは純粋である必要がない。本発明によって開発および提供される方法は、原料物質中のアルブミンを結晶化して採取するのに利用することができ、その純度レベルは約10%であり、すなわち、与えられた溶液の総タンパク質のうち10%だけをアルブミンが占める。たとえば、遺伝子導入起源または培養細胞のどちらかを起源とするhSAについては、清澄化手順後に残っている不純物の大部分は、2.6M濃度レベルまでのリン酸塩の最初の添加による沈澱後に除去することができる。典型的には乳汁であるが血液または尿といった他の体液も含む遺伝子導入起源は、それら体液または組織におけるhSA(または他の目的タンパク質)の安定発現をもたらすように設計されたDNA構造の挿入の結果としてhSAを含むことに注意する。沈澱および濾過した後に、アルブミン濃度レベルを高めるために濾液をさらに限外濾過によって濃縮する。その後、濃縮されたアルブミン溶液を、本発明に従って冷蔵および結晶化する。
【実施例】
【0033】
実施例1
好ましい結晶化製法
この製法の説明は、精製アルブミン溶液の結晶化について行われ、その目的のために、リン酸塩溶液の使用についてのみ記載する。しかし、本発明によると、この方法は、本明細書において提供する追加の工程を加えて、遺伝子導入または培養細胞供給流から見出されような、不純なまたは部分精製しかされていない開始材料でも用いることができる。本発明の方法の変法、たとえば相当に不純な材料を用いた開始溶液を利用することを、以下に示す。
【0034】
工程1.沈澱
2.8モルのNaHPOおよび1.2モルのKHPOを水に溶解し、1.0リットルにメスアップしたリン酸塩ストック溶液を結晶化に用いた。この4Mリン酸塩溶液は、0.5Mへの希釈後に測定したときpH6.2であった。その後、精製されたアルブミン溶液200mlを、pH6.2の4.0Mリン酸塩ストック溶液371mlを加えることによって沈澱させた。加えた量に基づいて、リン酸塩濃度は2.6Mであった。溶液を室温で4〜18時間沈澱させた。先行技術の方法ではすべての場合で24時間未満であるが、本発明のこの変法での時間はそれと比して短い。生じた沈澱の量はアルブミン溶液中の不純物の量と直接関連する。
【0035】
工程2.濾過
その後、沈澱したhSAを、約1μm孔径を有するグラスファイバーまたはセルロース繊維紙を通して濾過した。濾過した溶液はその後、本発明に記載の好ましい結晶化手順で使用した。
【0036】
工程3.結晶化
結晶化は10℃サーモスタットインキュベーター内で実施した。上部駆動式プロペラを用いてバッチを低速で攪拌した(約70rpm)。pH6.2での4Mリン酸塩229mlを加えることによって、リン酸塩濃度を2.6Mから3Mに徐々に増加させた。結晶化バッチは、採集および洗浄の前に4日間継続した。
【0037】
工程4.結晶の採集および洗浄
本発明の好ましい一実施形態によると、グラスファイバー紙(孔径1μm、直径142mm)を用いてバッチを濾過することによってhSA結晶を採取した。濾過した後、次いで冷却した3Mリン酸塩pH6.2約80mlを用いて結晶を洗浄した。その後、冷却した3Mリン酸塩pH6.2約150mlに結晶を再懸濁させた。
【0038】
以下の表2および本発明の好ましい結晶化製法に関して、混合容量比は固定して保たれれば好ましい。好ましくは、緩衝液混合物を作製後、pHを調整しない。pH値はリン酸塩濃度の変化と共に変わるため、本発明のこの実施形態についてpH値は概算である。本発明の緩衝液は、結晶溶解度に対するpHの効果の試験で用いた。下記の表2に見られる通り、緩衝液番号10は、結晶発生について一貫して最適化された条件を提供し、およびこの緩衝液について与えられたその条件は本発明の標準緩衝液のために好ましい条件である。(図11〜13も参照)。
【表2】

【0039】
また、本開示の図6で、2.63Mリン酸塩中のアルブミンの溶解度のプロファイルを、カプリル酸塩濃度および温度の関数として示していることにも注意する:白丸(○)は10℃でインキュベートした試料を示し、黒四角(■)は5℃でインキュベートした試料を示す。
【0040】
実施例2
微量拡散法を用いたアルブミンの結晶化
48試料からの結晶化試料を、本分野で既知であるハンギング液滴微量拡散法に従って調製した。試料溶液は、精製されたアルブミン198mg/mlおよびカプリル酸ナトリウム3.2mg/mlを含む。アルブミン溶液3μlを1.8〜2.3Mリン酸塩3μlと混合することによってアルブミンの溶液を調製した。密閉した微量拡散ウェル内で液滴を平衡化させ、5℃で冷蔵した。本発明のこの実施形態に従って、結晶は24時間以内に形成された。本発明によると、他の原料物質由来の供給流、特に、遺伝子導入および培養細胞起源もまた、微量拡散ハンギング液滴法で利用することができる。
【0041】
結晶を顕微鏡で観察し、さらにデジタルカメラで写真撮影した。結晶の形成に関する情報を表19および20に示す。これらの実施例は、カプリル酸塩で飽和したアルブミンは、明確に定められたpH範囲、すなわちpH5.0〜6.4にある1.8Mから2.3Mリン酸塩中で結晶化することを示す。結晶形成に最も好ましいpHは、下記の表3に示すとおり、pH6.2であった。与えられた実験条件は、代替的な供給流起源において見られた濃度および溶液パラメーターの範囲を有効に包含する(表4を参照)。
【表3】

【表4】

【0042】
実施例3
不純な開始材料中のアルブミンの結晶化
下記の製法の説明は、結晶化に干渉する多量の不純物を含む組み換えhSA開始材料のために行う。最初の処理工程は、不純物の除去のために必要である。より高純度のアルブミンが用いられる場合、工程数を対応して減らす。
【0043】
工程1.濃縮
開始材料は限外濾過によって可能な限り濾過して濃縮すべきである。高いタンパク質濃度はリン酸塩の使用を減らし、さらに結晶化可能なrhSAの収率を上昇させる。また、事前の処理工程に由来する塩を減少させるために、濃縮手順の最後に水を用いて材料を濾過すべきである。タンパク質濃度のガイドライン:A280nm=150〜200。
【0044】
工程2.リン酸塩を用いた最初の沈殿
4Mリン酸塩(pH6.2)の2.5容量をrhSA濃縮液1.5容量に加える。この工程でのリン酸塩終濃度は、不純物を沈殿させるがアルブミンは沈殿させない2.5Mである。この手順は好ましくは室温で実施する。
【0045】
工程3.濾過
ブフナー漏斗または圧力容器フィルターを用いて濾別した沈澱を除去する。沈澱は非常に粒子の細かい非晶質物質であるため、珪藻土を濾過助剤として用いる。沈澱は液体上に浮かばないため、遠心分離は便利な選択ではない。
【0046】
工程4.結晶化
hSAの結晶化は、4Mリン酸塩(pH6.2)を濃度が2.8Mとなるまで濾液に追加することによって開始する。結晶化は、低温、好ましくは約5.0℃で実施する。hSAの結晶化は、本発明のこの実施形態によると、24時間以内に自発的に開始する。代替的な一実施形態では、種結晶の添加がその過程をより迅速化する。
【0047】
工程5.結晶の洗浄
本発明の好ましい実施形態によると、結晶を遠心分離によって、あるいは好ましくは濾過することによって、洗浄する。遠心分離では、結晶はリン酸緩衝液の上に浮かぶ。洗浄は2.8Mリン酸塩溶液を用いて約+5℃の温度で実施する。結晶洗浄は、0.1bar未満の低い圧力差で行うべきである。洗浄は、濾液の可溶性タンパク質がほぼ一定の低レベル、A280nm=1.0以下のままとなるまで、3〜4回繰り返す。
【0048】
工程6.結晶ストックの作成
洗浄した結晶を少量の2.8Mリン酸緩衝液に分散する。結晶は次の工程のために処方するまでこの中で保存することができる。
【0049】
実施例4
熱処理後の不純なアルブミンの結晶化
開始材料
この実施例に用いられた供給流材料は、相当量のタンパク質を不純物として有していた。アルブミンは、存在するタンパク質の約30%であった。既述のように、これは清澄化または部分精製された遺伝子導入または培養細胞起源から供給される供給流材料の通常の範囲内である。使用した溶液は4Mリン酸塩pH6.2を107ml含み、開始材料溶液(この工程の前に2Mリン酸塩溶液であった)200mlに加えて2.70M溶液を得た。本発明によるとこの沈澱した溶液を結晶化のための開始溶液として使用した。
【0050】
熱処理
沈澱した開始溶液(2.70Mリン酸塩溶液)を55℃で90分間インキュベートした。相当量の桿状結晶が非晶質沈澱と共にこの熱処理の結果として形成された。総タンパク質の約75%から80%が結晶化または沈澱した。結晶および沈澱は、スラリーが熱いうちにグラスファイバーフィルターを通して濾過することによって除去した。いくらかの珪藻土を濾過助剤として使用した。アルブミンを含む上清濾液だけを次の工程のために採取した。
【0051】
濃縮および濾過
濾過した後、溶液は結晶化には低すぎるアルブミン濃度を有していた。したがって、これを55℃でFresenius Polysulfone UF 6.2 Hemoflow F5HPS透析カートリッジを用いて濃縮およびダイアフィルトレーションした。処理工程の詳細なデータを表6に示す。
【0052】
hSA結晶化
濃縮溶液のリン酸塩濃度を高め、ゆっくりと2.8に調整した。hSAを結晶化させるため、同時にバッチを冷蔵庫内で緩やかに攪拌した。
【0053】
hSA結晶を真空濾過によって採取および洗浄した。洗浄溶液は2.88Mリン酸塩pH6.4であった。下記の表5および図7に示すとおり、不純物の熱結晶化は、開始材料溶液の主な不純物を除去するための技術的に容易および迅速な方法である
【表5】

【表6】

【0054】
実施例5
加熱および冷却サイクルを用いることによるアルブミンの再結晶化
以前に作製した、2.7Mリン酸塩pH6.2中のタンパク質濃度37.5g/lのhSA結晶スラリーを、本発明の好ましい一実施形態に従って実施したこの試験のための開始材料として使用した。結晶スラリーの試料5点、各0.50mlをそれぞれ、40、45、55、65または70℃で60分間インキュベートした。結晶は試験したすべての温度で溶解した。加熱の最後に、0.45μmフィルターを通して試料を濾過した。濾液の可溶性タンパク質を、280nmでの吸光度を測定することによって測定した。
【0055】
表7および8におよび図13に示すとおり、結晶スラリーを40〜50℃で1時間インキュベートした場合、総タンパク質の約10%が沈澱した。この値はこの温度範囲ではかなり一定しており、それは加熱濾過手順で除去された不純物を表した。温度を65から70℃に上げた場合、試料の可溶性タンパク質は83%から37%に減少した。濾過した後、試料1から5までを65℃まで加熱し、5℃に設定した冷蔵庫内で18時間後にすべて良好に再結晶化した。試料5を70℃でインキュベートした場合、濾液中に結晶は生じず、これはアルブミンがその温度では2.7Mリン酸塩中で安定でないことを示す(表8を参照)。これらの実施例は、本発明の好ましい一実施形態によると、65℃まで加熱し、その後濾過し、さらに適当な再結晶化サイクルを経ることによって、アルブミンを良好に精製できることを示す。
【表7】

【表8】

【0056】
実施例6
より高いpHでのアルブミンの結晶化
本発明に従って実施した試験は、アルブミン結晶溶解度および結晶化がpHに依存しうることを示す。もう一つの問題は、リン酸緩衝液の存在化でのカプリル酸塩の分離である。カプリル酸塩の溶解度は、より高いpHで上昇する。したがって、わずかに高いpHでさえ最適な結晶形成には望ましい。本発明に基づき、3つの異なるリン酸塩のモル濃度で、pH6.2〜6.6の範囲で結晶化の試行を行った。実験の詳細を以下の表9に示す。
【0057】
結果の評価
以下の表9に示されるように、pHが6.4および6.5に上昇したとき、アルブミンは非常に効果的に結晶化した。アルブミンの溶解度は、pH6.4より高いpHでは非常に低かった。残念ながら、より高いpHレベルでは、アルブミンは非常に小さい針状として結晶化した(図10〜13を参照)。結晶の大きさは、結晶化をより低いpH6.2または6.3で開始することによって、より大きく成長する傾向がある。ほぼ平衡を達成後、4M KHPOを徐々に加えることによってpHをより高いレベルに調整することができる。
【表9】

【0058】
実施例7
アルブミン結晶の再結晶化および洗浄
再結晶化および洗浄
洗浄した結晶(102−12)を5分間45℃で加熱した。結晶は速やかに溶解した。溶液を温かいうちに0.45μmシリンジフィルターを用いて濾過した。濾過した溶液を2℃で結晶化するまで攪拌した(3日間)。そのバッチはよく結晶化した(図2)。結晶は2.82MpH6.2リン酸塩を用いて0.45μm(直径50mm)Sartorius膜上で濾過および洗浄することによって採集した。洗浄した結晶は2.82Mリン酸緩衝液中に分散した。
【表10】

【0059】
適応および用途
血液量減少
血液量減少は、本発明の方法によって精製されかつ利用可能になったアルブミン、25%溶液、Buminate25%の可能な適応である。血液量減少を逆転させることにおけるその有効性は全般に、間質液を循環中に引き寄せるその能力に依存する。よく水分補給されている患者について非常に効果的である。血液量減少が長期にわたり、さらに低アルブミン血症が適当な水和または浮腫を伴って存在する場合には、25%アルブミンは5%タンパク質溶液よりも好ましい。しかし、適当なまたは過剰な水和の非存在下では、5%タンパク質溶液を用いるべきであるかまたは、結晶質で25%アルブミンを希釈すべきである。結晶質溶液およびコロイド含有代用血漿をショックの緊急処置に用いることができるが、アルブミンは長い血管内半減期を有する。血液量不足が出血によるものである場合は、適合する赤血球または全血を可能な限り速やかに投与すべきである。
【0060】
低アルブミン血症
低アルブミン血症は、本発明の方法によって精製されかつ利用可能になったアルブミン、25%溶液、Buminate25%の用途のためのもう一つの可能な適応である。低アルブミン血症は下記のうち一つ以上の結果として生じうる:産生不全(栄養失調、火傷、大きな外傷、感染症、など);過剰な異化作用(火傷、大きな外傷、膵炎、など);体からの損失(出血、過剰な腎排泄、火傷滲出物、など);および体内再分布(大きな外科手術、さまざまな炎症性症状、など)。
【0061】
アルブミン欠乏が過剰なタンパク質損失の結果である場合は、その基になる疾患が逆転されない限りアルブミンの投与の効果は一時的である。大部分の場合には、基になる疾患の同時の治療に伴うアミノ酸および/またはタンパク質の栄養置換の増加が、アルブミン溶液よりも効果的に正常な血漿アルブミンレベルを回復する。時々、重度の外傷、感染症または膵炎に伴う低アルブミン血症は迅速に逆転することができず、および栄養補助で血清アルブミンレベルを回復できない可能性がある。これらの場合には、アルブミン(ヒト)、25%溶液、Buminate25%は有用な治療用添加剤となりうる。
【0062】
火傷
火傷の初期治療におけるアルブミン、電解質および液体の使用のための最適な投薬計画は確立されていないが、しかし、適当な結晶質療法と併せて、アルブミン(ヒト)、25%溶液、Buminate25%を、広範囲火傷の最初の24時間後のコロイド浸透圧不足の治療、および重度火傷に伴うタンパク質損失の回復に適用することができる。
【0063】
成人呼吸窮迫症候群(ARDS)
ARDSの特徴は、間質性肺水腫の原因として関係している可能性がある低タンパク血症的状態である。これらの患者におけるアルブミン輸液の正確な適応に関して不確実性はあるが、低アルブミン血症を伴う肺過負荷が存在する場合、25%アルブミン溶液は利尿剤と併用する場合に治療効果を有するであろう。
【0064】
ネフローゼ
アルブミン(ヒト)、25%溶液は、ステロイドおよび/または利尿剤を投与されている重度のネフローゼの患者において浮腫を治療するのに有用な助剤であろう。
【0065】
心肺バイパス手術
アルブミン(ヒト)、25%溶液、Buminate25%は、心肺バイパス手術の前またはその間に推奨されているが、結晶質溶液よりも優れていることを示す明らかなデータは存在しない。
【0066】
新生児溶血性疾患(HDN)
アルブミン(ヒト)、25%溶液、Buminate25%は、重度のHDNを有する乳児において非結合ビリルビンを結合および無毒化する目的で投与することができる。
【0067】
本発明の方法によって精製されたアルブミンを、医薬品の輸送のための添加物として用いることもまた可能である。
【0068】
結晶スクリーニング実験
ハンギングドロップスクリーン(hanging drop screen)を、4行(A、B、C、D)および6列に分割した24ウェルを持つ箱の中に作製する。そのスクリーンは、下記の通り試薬の一覧としてのみ予備報告書に示す。結果への短いコメントが提供されている。最終報告書では結果は下記の表の実施例と同様の、完全な詳細を含む表で提供されている。
【0069】
顕微鏡法と表
顕微鏡法による試料評価を実験の始めに、2〜3日の頻度で、および後に週1回で行った。表中の顕微鏡観察は下記の記号を用いた短縮形である:
N=沈澱または他の相分離なし
C=いくらかの結晶が存在
CC=相当な量の結晶が存在
A=非晶質沈澱、雲または茶系の煙のように見える不透明な粒子の雲、粒子の大きさは光学顕微鏡の分解能の下限界に近い
AA=相当な量の非晶質沈澱
L=液相分離、球状の透明な小滴、水中油のように見える
LL=顕著な液体分離
G=ゲル塊、直径数ミリメートルの不規則なガラス性透明粒子
GG=相当な量のゲル
X=汚染または乾燥した液滴、中断された実験
【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【0070】
組み換え産生
ますます多数の組み換えタンパク質が治療および診断用途のために開発されている。しかし、これらのタンパク質の多くは、機能する形でおよび/または必要な量を従来の方法を用いて製造するのは困難であるかまたは費用がかかる。従来の方法は、特定のタンパク質の産生を担う遺伝子を、細菌、酵母、または哺乳類細胞、たとえば、COSまたはCHO細胞といった宿主細胞に挿入し、さらに次いでその細胞を培地中で増殖させることを含む。その後、培養細胞が目的タンパク質を合成する。従来の細菌または酵母系は、機能する形態で多数の複雑なタンパク質を産生することができない場合がある。哺乳類細胞は複雑なタンパク質を複製することができる一方、哺乳類細胞は一般的に増殖させるのが困難でありおよび費用を要し、およびしばしばmg/L量のタンパク質しか産生しない。加えて、非分泌タンパク質は培地中に分泌されないため、原核または哺乳類細胞から精製するのが相対的に困難である。
【0071】
一般的に、遺伝子導入技術は、通常は分泌されないタンパク質(非分泌タンパク質)を作製および分泌させる方法を扱う。本方法は、以下のものを含む核酸構造からタンパク質を発現させることを含む:
(a)プロモーター、たとえば、乳腺上皮特異的プロモーター、たとえば、乳タンパク質プロモーター;
(b)タンパク質の分泌を導くことができるシグナル配列、たとえば乳汁特異的タンパク質由来のシグナル配列;
(c)随意的に、遺伝子導入哺乳類のたとえば乳汁中への非分泌タンパク質の分泌を可能にするのに十分な、分泌タンパク質、たとえば、乳汁中に分泌されるタンパク質の、アミノ末端コード領域の一部分をコードする配列;および
(d)非分泌タンパク質をコードする配列であって、
要素(a)、(b)、必要に応じて(c)、および(d)は好ましくは記載の順に調節可能に結合している。
【0072】
好ましい実施形態では:要素a、b、c(あれば)、およびdは同一の遺伝子に由来する;要素a、b、c(あれば)、およびdは2個以上の遺伝子に由来する。
【0073】
好ましい実施形態では分泌は遺伝子導入哺乳類の乳汁中に行われる。
【0074】
好ましい実施形態では:シグナル配列はβ−カゼインシグナル配列である;プロモーターはβ−カゼインプロモーター配列である。
【0075】
好ましい実施形態では、非分泌タンパク質コード配列は:ヒト起源である;短縮ポリペプチド、核ポリペプチド、または細胞質ポリペプチドをコードする;ヒト血清アルブミンまたは他の望ましい目的タンパク質をコードする。
【0076】
本発明の実施は、別に指定されない限り、本分野の技術内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学、組み換えDNA、および免疫学の従来の方法を使用する。そのような方法は文献に記載されている。たとえば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989); DNA Cloning,Volumes I and II (D.N.Glover ed.,1985); Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait ed.,1984); Mullis et al.U.S.Patent No : 4,683,195; Nucleic Acid Hybridization (B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984);Transcription And Translation (B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984); Culture Of Animal Cells (R.I.Freslmey,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press,1986); B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); the treatise,Methods In Enzymology (Academic Press,Inc.,N.Y.) ; GeneTransfer Vectors For Mamlmalian Cells (J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology,Vols.154 and 155 (Wu et al.eds.)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,19
87) ; Handbook Of Experimental Immunology,VolumesI-IV (D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986); Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照。
乳汁特異的プロモーター
本発明の実施に有用な転写プロモーターは、カゼイン、ベータラクトグロブリン(Clark et al.,(1989)Bio/Technology 7:487-492)、乳漿酸性タンパク質 (Gorton et al.(1987) Bio/Technology5:1183-1187)、およびラクトアルブミン (Soulier et al.,(1992)FEBSLetts.297:13)といった乳タンパク質をコードする遺伝子を調節するプロモーターを含む、乳腺上皮細胞で優先的に活性化されるプロモーターである。カゼインプロモーターは、任意の哺乳類種のアルファ、ベータ、ガンマまたはカッパカゼイン遺伝子に由来することができる;好ましいプロモーターはヤギベータカゼイン遺伝子に由来する(DiTullio,(1992)Bio/Technology 10: 74-77)。乳汁特異的タンパク質プロモーターまたは乳腺組織で特異的に活性化されるプロモーターは、cDNAまたはゲノム配列のどちらかに由来しうる。好ましくは、それらはゲノム起源である。
【0077】
上に列記した乳腺特異的遺伝子のすべてについて、少なくとも1種類、およびしばしば数種類の生物において、DNA配列情報が利用可能である。たとえば、Richards et al.,J.Biol.Chem.256,526-532 (1981) (α−ラクトアルブミン、ラット); Campbell et al.,Nucleic Acids Res.12,8685-8697 (1984) (ラットWAP); Jones et al.,J.Biol.Chem.260,7042-7050 (1985) (ラットβ−カゼイン) ; Yu-Lee & Rosen,J.Biol.Chem.258,10794-10804 (1983) (ラットγ−カゼイン); Hall,Biocheen.J.242,735-742 (1987) (α−ラクトアルブミン、ヒト); Stewart,Nucleic Acids Res.12,389 (1984)(ウシαs1およびκカゼインcDNA); Gorodetsky et al.,Gene 66,87-96 (1988) (ウシβカゼイン); Alexander et al.,Eur.J.Biochem.178,395-401 (1988) (ウシκカゼイン); Brignon et al.,FEBSLett.188,48-55 (1977) (ウシαS2カゼイン) ; Jamieson et al.,Gene 61,85-90 (1987)、 Ivanov et al.,Biol.Chem.Hoppe-Seyler 369,425-429 (1988)、 Alexander et al.,Nucleic Acids Res.17,6739 (1989) (ウシβラクトグロブリン); Vilotte et al.,Biochimie 69,609-620 (1987) (ウシα−ラクトアルブミン)を参照。さまざまな乳タンパク質遺伝子の構造および機能はMercier &Vilotte,J.Dairy Sci.76,3079-3098 (1993)による総説がある(その全体が参照により本開示に含まれる)。追加の配列データが必要とされうる程度まで、既に得られた領域に隣接する配列は、既存の配列をプローブとして用いて容易にクローニングすることができる。さまざまな生物に由来する乳腺特異的調節配列は、既知の同族ヌクレオチド配列、または同族タンパク質に対する抗体をプローブとして用いて、そのような生物に由来するライブラリをスクリーニングすることによって同様に得られる。
【0078】
シグナル配列
本発明に従って有用であるシグナル配列には、真核または原核タンパク質の分泌を結果として生じる、乳汁特異的シグナル配列または他のシグナル配列がある。好ましくはそのシグナル配列は乳汁特異的シグナル配列から選択される、すなわち、それは乳汁中へ分泌される産物をコードする遺伝子に由来する。非常に好ましくは、乳汁特異的シグナル配列は、本発明の発現系に用いられる乳汁特異的プロモーターと関係している。シグナル配列の大きさは本発明のために決定的ではない。必要なのは、その配列がたとえば乳腺組織において、組み換えタンパク質の分泌を起こさせるのに十分な大きさであることだけである。たとえば、アルファ、ベータ、ガンマまたはカッパカゼインといったカゼイン、ベータラクトグロブリン、乳漿酸性タンパク質、およびラクトアルブミンをコードする遺伝子に由来するシグナル配列が本発明において有用である。好ましいシグナル配列はヤギβ−カゼインシグナル配列である。
【0079】
他の分泌タンパク質、たとえば、肝細胞、腎細胞、または膵細胞によって分泌されるタンパク質に由来するシグナル配列もまた使用することができる。
【0080】
遺伝子導入哺乳類
目的タンパク質、この場合はヒト血清アルブミンのDNA構造は、哺乳類の生殖細胞系へ導入される。たとえば、その構造の1コピーまたは数コピーを、標準的な遺伝子導入法によって哺乳類胚のゲノムへ組み込むことができる。
【0081】
任意の非ヒト哺乳類を本発明において有効に用いることができる。哺乳類とはここでは、乳腺を有しおよび乳汁を産生する、ヒトを除くすべての動物と定義する。好ましくは、多量の乳汁を産生しおよび長い乳汁分泌期間を有する哺乳類が好ましい。好ましい哺乳類は、乳牛、ヒツジ、ヤギ、マウス、雄牛、ラクダおよびブタである。もちろん、これらの哺乳類のそれぞれは、本発明の任意の所定の発現配列について他の哺乳類ほど有効でない可能性がある。たとえば、ある特定の乳汁特異的プロモーターまたはシグナル配列は、1種類の哺乳類において他の哺乳類よりも有効でありうる。しかし、当業者は本発明の教示に従うことによってそのような選択を容易に行いうる。
【0082】
上記の発明を、理解を目的とした図および実施例によって一部の詳細を説明してきたが、一定の変更および改変を実施しうることは当業者に明らかとなる。したがって、説明および実施例は、付属の請求項によって線引きされる本発明の範囲を制限すると解釈してはならない。
【0083】
アルブミンはさまざまな化合物、エタノールおよびリン酸塩を含む無機塩を用いて結晶化される一方、リン酸塩を用いた結晶化の工業的方法は文献に見出されないことにもまた注意する。本発明の好ましい実施形態を通じて、本発明の発明された主要な処理パラメーターおよび/または条件を十分に利用することによってリン酸塩を用いてヒトアルブミンを有利に結晶化することができることが現在見出されている。発明されたパラメーターおよびその変形の一部が上記に列挙および説明されている。
【0084】
したがって、結晶化および精製されたヒトアルブミンを提供する本発明の実施形態は、本発明の原理の応用の単なる説明であることが理解される。開示内容の要素の、形態、使用方法、応用における変化を、本発明の精神、または付属の請求項の範囲を離れることなく用いることができることが上記の説明から明らかとなる。
【0085】
参照により本開示に含まれる先行技術文献
【参考文献】
【0086】


【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、組み換えヒト血清アルブミンの結晶化についての製法フローチャートを示す。
【図2】図2は、異なる温度でpH6.2でのアルブミン溶解度を、指数近似曲線と共に示す。
【図3】図3は、異なる温度でpH6.2でのアルブミン溶解度を、近似直線と共に示す。
【図4】図4は15℃でのアルブミン結晶のpH溶解度を示す。
【図5】図5は、pH6.2の様々なリン酸塩溶液中での、洗浄したアルブミン結晶の溶解度試験を示す。
【図6】図6は、さまざまなカプリル酸塩濃度の2.63Mリン酸塩溶液中での、洗浄したアルブミン結晶の溶解度試験を示す。
【図7】図7は、2.7Mリン酸塩pH6.2中のhSA結晶スラリーの熱沈澱試験を示す。
【図8】図8は、アルブミンの予備的結晶化についての製法フローチャートを示す。
【図9】図9は、組み換えヒト血清アルブミンの結晶化についての製法フローチャートを示す。
【図10】図10は、組み換えヒト血清アルブミンの再結晶化についての製法フローチャートを示す。
【図11】図11は、pH6.2の2.3Mリン酸Na−K;カプリル酸塩1.4mg/ml;hSA80mg/mlの混合溶液中、4℃で一夜、2時間室温(RT)で気密室内で結晶化した結晶化ヒトアルブミンを示す。
【図12】図12は結晶化ヒトアルブミンを示す。pH6.2の2.5Mリン酸Na−K;カプリル酸塩で飽和;hSA46.5mg/mlの混合溶液中で、4℃で一夜結晶化した結晶化ヒトアルブミンを示す。
【図13】図13は、pH6.2の2.3Mリン酸Na−K;カプリル酸塩1.4mg/ml;hSA80mg/mlの混合溶液中で、4℃で一夜、0時間室温(RT)で気密室内で結晶化した結晶化ヒトアルブミンを示す。
【図14】図14は、より多くの非晶質沈澱と共に本発明のアルブミン結晶を示す。典型的な結晶の大きさは約0.1×0.4mmである。沈澱は時間の経過と共に消失し結晶性となる。結晶は0.08%デカノール;0.05Mリン酸Na−Kを含むpH7.4の2.7M硫酸アンモニウム中で4℃で調製した。4℃で結晶化した。hSA58.7mg/ml。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む方法によって得られる物質の少なくとも一部を含む結晶性ヒトアルブミン製品:
a)アルブミン含有溶液を、該溶液が溶液1リットル当たり少なくとも15グラムのアルブミンを含むようになるまで濃縮し;
b)第一のリン酸塩混合物を、該リン酸塩混合物の濃度が2.4〜2.6Mになるまで前記アルブミン含有溶液に加え;
c)前記アルブミン含有溶液に第一の濾過を行い、不純物を除去して結晶化バッチ溶液を形成し;
d)前記結晶化バッチ溶液の濾液を、15℃以下の温度まで冷却し;
e)前記結晶化バッチ溶液中のヒトアルブミンを結晶化させ;
f)最高で3.0Mの濃度にするのに十分な、前記第一のリン酸塩混合物を前記結晶化バッチ溶液に加え;
g)残りの液体からのアルブミン結晶の第一の分離を行い;
h)アルブミン結晶の第一の分離によって得られたアルブミン結晶を、2.7〜3.0Mの濃度の第二のリン酸塩混合物に懸濁させ;
i)前記アルブミン結晶の結晶懸濁液を、40〜50℃の温度まで加熱して結晶を溶解させ;
j)前記溶解したアルブミン結晶の結晶懸濁液に第二の濾過を行い;
k)前記濾過したアルブミン結晶の結晶懸濁液を、15℃以下の温度まで冷却し;さらに
l)前記冷却した結晶懸濁液からアルブミン結晶を形成させ;それによって、所定のヒトアルブミンを含む供給流からのヒトアルブミンの精製および結晶化をもたらす。
【請求項2】
前記第一のリン酸塩混合物がリン酸ナトリウム塩から成ることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項3】
前記第一のリン酸塩混合物がリン酸カリウム塩であることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項4】
前記第一のリン酸塩混合物がナトリウム塩およびカリウム塩の両方から成ることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項5】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル中15〜50グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項6】
添加時の前記第一のリン酸塩混合物の温度が20〜30℃であることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項7】
添加時の前記第一のリン酸塩混合物が、pH6.0〜6.7のpHを有することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項8】
前記結晶化バッチ溶液を濾過した後に回収される濾液を、10℃以下の温度まで冷却することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項9】
前記結晶化バッチ溶液を、最長で12時間結晶化させることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項10】
前記結晶化バッチ溶液を、最長で24時間結晶化させることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項11】
前記結晶化バッチ溶液を、少なくとも24時間結晶化させることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項12】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、濾過によって達成されることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項13】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、遠心分離によって達成されることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項14】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、比重分離によって達成されることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項15】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、乾燥によって達成されることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項16】
前記第二のリン酸塩混合物がリン酸ナトリウム塩から成ることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項17】
前記第二のリン酸塩混合物がリン酸カリウム塩であることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項18】
前記第二のリン酸塩混合物がナトリウム塩およびカリウム塩の両方から成ることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項19】
アルブミン結晶の第一の分離からの溶解した結晶懸濁液を、10℃以下の温度まで冷却することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項20】
溶解した結晶懸濁液から析出するアルブミン結晶を、少なくとも1回、溶液中に再度溶解させて戻しさらに再結晶させることを特徴とする請求項19記載の製品。
【請求項21】
前記アルブミン含有溶液が、溶液中から不純物を除去するために事前に清澄化されていることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項22】
前記供給流が、遺伝子導入哺乳類に由来する乳汁または他の体液であることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項23】
遺伝子導入哺乳類に由来する乳汁が、清澄化されて不純物および一部の乳タンパク質を除去されていることを特徴とする請求項22記載の製品。
【請求項24】
与えられた供給流中の純度レベルが少なくとも10%であり、すなわち、与えられた溶液中の総タンパク質の少なくとも10%をヒトアルブミンが構成することを特徴とする請求項22記載の製品。
【請求項25】
前記結晶化バッチ溶液のpHが5.6〜7.8であることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項26】
前記結晶化バッチ溶液のpHが6.0〜6.5であることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項27】
前記結晶化バッチ溶液のpHが7.0〜7.8であることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項28】
前記第一のリン酸塩混合物の濃度が2.2〜3.0Mであることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項29】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり2〜400グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項30】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜300グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項31】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜100グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項32】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜40グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項33】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり2〜10グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項34】
医薬調製物中の添加物として利用されることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項35】
医薬組成物中の治療剤として利用されることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項36】
前記供給流が組み換えヒトアルブミンを発現する宿主に由来する培養上清または体液であることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項37】
前記宿主が哺乳類培養細胞であることを特徴とする請求項36記載の製品。
【請求項38】
前記宿主が酵母培養細胞であることを特徴とする請求項36記載の製品。
【請求項39】
前記宿主が昆虫培養細胞であることを特徴とする請求項36記載の製品。
【請求項40】
前記宿主が原核培養細胞であることを特徴とする請求項36記載の製品。
【請求項41】
疾患の治療に利用されることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項42】
前記疾患が
a)浮腫;
b)血液量減少;
c)低アルブミン血症;
d)成人呼吸窮迫症候群(ARDS);
e)ネフローゼ;
f)新生児溶血性疾患(HDN);
g)重度火傷;
h)低タンパク血症;および,
i)急性膵炎:より成る群から選択されることを特徴とする請求項41記載の製品。
【請求項43】
心肺バイパス手術中に利用されることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項44】
以下の工程を含むことを特徴とする、結晶性ヒトアルブミンを製造する方法:
a)アルブミン含有溶液を、該溶液が溶液1リットル当たり少なくとも15グラムのアルブミンを含むようになるまで濃縮し;
b)第一のリン酸塩混合物を、該リン酸塩混合物の濃度が2.4〜2.6Mになるまで前記アルブミン含有溶液に加え;
c)前記アルブミン含有溶液に第一の濾過を行い、不純物を除去して結晶化バッチ溶液を形成し;
d)前記結晶化バッチ溶液の濾液を、15℃以下の温度まで冷却し;
e)前記結晶化バッチ溶液中のヒトアルブミンを結晶化させ;
f)最高で3.0Mの濃度にするのに十分な、前記第一のリン酸塩混合物を前記結晶化バッチ溶液に加え;
g)残りの液体からのアルブミン結晶の第一の分離を行い;
h)アルブミン結晶の第一の分離によって得られたアルブミン結晶を、2.7〜3.0Mの濃度の第二のリン酸塩混合物に懸濁させ;
i)前記アルブミン結晶の結晶懸濁液を、40〜50℃の温度まで加熱して結晶を溶解させ;
j)前記溶解したアルブミン結晶の結晶懸濁液に第二の濾過を行い;
k)前記濾過したアルブミン結晶の結晶懸濁液を、15℃以下の温度まで冷却し;さらに
l)前記冷却した結晶懸濁液からアルブミン結晶を形成させ;それによって、所定のヒトアルブミンを含む供給流からのヒトアルブミンの精製および結晶化をもたらす。
【請求項45】
前記第一のリン酸塩混合物がリン酸ナトリウム塩から成ることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記第一のリン酸塩混合物がリン酸カリウム塩であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記第一のリン酸塩混合物がナトリウム塩およびカリウム塩の両方から成ることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項48】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル中15〜50グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項49】
添加時の前記第一のリン酸塩混合物の温度が20〜30℃であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項50】
添加時の前記第一のリン酸塩混合物が、pH6.0〜6.7のpHを有することを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項51】
前記結晶化バッチ溶液を濾過した後に回収される濾液を、10℃以下の温度まで冷却することを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項52】
前記結晶化バッチ溶液を、最長で12時間結晶化させることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項53】
前記結晶化バッチ溶液を、最長で24時間結晶化させることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項54】
前記結晶化バッチ溶液を、少なくとも24時間結晶化させることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項55】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、濾過によって達成されることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項56】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、遠心分離によって達成されることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項57】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、比重分離によって達成されることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項58】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、乾燥によって達成されることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項59】
前記第二のリン酸塩混合物がリン酸ナトリウム塩から成ることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項60】
前記第二のリン酸塩混合物がリン酸カリウム塩であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項61】
前記第二のリン酸塩混合物がナトリウム塩およびカリウム塩の両方から成ることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項62】
アルブミン結晶の第一の分離からの溶解した結晶懸濁液を、10℃以下の温度まで冷却することを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項63】
溶解した結晶懸濁液から析出するアルブミン結晶を、少なくとも1回、溶液中に再度溶解させて戻しさらに再結晶させることを特徴とする請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記アルブミン含有溶液が、溶液中から不純物を除去するために事前に清澄化されていることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項65】
前記供給流が、遺伝子導入哺乳類に由来する乳汁または他の体液であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項66】
遺伝子導入哺乳類に由来する乳汁が、清澄化されて不純物および一部の乳タンパク質を除去されていることを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項67】
与えられた供給流中の純度レベルが少なくとも10%であり、すなわち、与えられた溶液中の総タンパク質の少なくとも10%をヒトアルブミンが構成することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項68】
前記結晶化バッチ溶液のpHが5.6〜7.8であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項69】
前記結晶化バッチ溶液のpHが6.0〜6.5であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項70】
前記結晶化バッチ溶液のpHが7.0〜7.8であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項71】
前記第一のリン酸塩混合物の濃度が2.2〜3.0Mであることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項72】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり2〜400グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項73】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜300グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項74】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜100グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項75】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜40グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項76】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり2〜10グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項77】
前記結晶性ヒトアルブミンが、医薬調製物中の添加物として利用されることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項78】
前記結晶性ヒトアルブミンが、医薬組成物中の治療剤として利用されることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項79】
前記供給流が、組み換えヒトアルブミンを発現する宿主に由来する培養上清または体液であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項80】
前記宿主が哺乳類培養細胞であることを特徴とする請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記宿主が酵母培養細胞であることを特徴とする請求項79記載の方法。
【請求項82】
前記宿主が昆虫培養細胞であることを特徴とする請求項79記載の方法。
【請求項83】
前記宿主が原核細胞であることを特徴とする請求項79記載の方法。
【請求項84】
前記結晶性ヒトアルブミンが、疾患の治療に利用されることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項85】
前記疾患が、
a)浮腫;
b)血液量減少;
c)低アルブミン血症;
d)成人呼吸窮迫症候群(ARDS);
e)ネフローゼ;
f)新生児溶血性疾患(HDN);
g)重度火傷;
h)低タンパク血症;および,
i)急性膵炎
:より成る群から選択されることを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記結晶性ヒトアルブミンが、心肺バイパス手術中に利用されることを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項87】
以下の工程を含む方法によって得られる物質の少なくとも一部を含むヒトアルブミン製品:
a)アルブミン含有溶液を、該溶液が溶液1リットル当たり少なくとも15グラムのアルブミンを含むようになるまで濃縮し;
b)第一のリン酸塩混合物を、該リン酸塩混合物の濃度が2.6〜3.0MでかつpHが6.1〜6.3になるまで、前記アルブミン含有溶液に加え;
c)結晶化バッチ溶液の濾液を、15℃以下の温度まで冷却し;
d)前記結晶化バッチ溶液中のヒトアルブミンを結晶化させ;さらに
e)アルブミン結晶を残りの液体から分離し;それによって、所定のヒトアルブミンを含む供給流からのヒトアルブミンの精製および結晶化をもたらす。
【請求項88】
前記第一のリン酸塩混合物がリン酸ナトリウム塩から成ることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項89】
前記第一のリン酸塩混合物がリン酸カリウム塩であることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項90】
前記第一のリン酸塩混合物がナトリウム塩およびカリウム塩の両方から成ることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項91】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル中15〜50グラムのアルブミンの濃度を有することを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項92】
添加時の前記第一のリン酸塩混合物の温度が20〜30℃であることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項93】
前記結晶化バッチ溶液を、最長で12時間結晶化させることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項94】
前記結晶化バッチ溶液を、最長で24時間結晶化させることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項95】
前記結晶化バッチ溶液を、少なくとも24時間結晶化させることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項96】
アルブミン結晶の第一の分離が、濾過によって達成されることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項97】
アルブミン結晶の第一の分離が、遠心分離によって達成されることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項98】
アルブミン結晶の第一の分離が、比重分離によって達成されることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項99】
アルブミン結晶の第一の分離が、乾燥によって達成されることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項100】
溶解した結晶懸濁液から析出するアルブミン結晶を、少なくとも1回、溶液中に再度溶解させて戻しさらに再結晶させることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項101】
前記供給流に由来する前記アルブミン含有溶液が、溶液中から不純物を除去するために事前に清澄化されていることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項102】
前記供給流が、遺伝子導入哺乳類に由来する乳汁または他の体液であることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項103】
遺伝子導入哺乳類に由来する乳汁が、清澄化されて不純物および一部の乳タンパク質を除去されていることを特徴とする請求項102記載の製品。
【請求項104】
所定の供給流中の純度レベルが少なくとも10%であり、すなわち、所定の溶液中の総タンパク質の少なくとも10%をヒトアルブミンが構成することを特徴とする請求項102記載の製品。
【請求項105】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり2〜400グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項106】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜300グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項107】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜100グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項108】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜40グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項109】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり2〜10グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項110】
医薬調製物中の添加物として利用されることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項111】
医薬組成物中の治療剤として利用されることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項112】
前記供給流が、組み換えヒトアルブミンを発現する宿主に由来する培養上清または体液であるか、あるいはそれらに由来することを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項113】
前記宿主が哺乳類培養細胞であることを特徴とする請求項112記載の製品。
【請求項114】
前記宿主が遺伝子導入哺乳類であることを特徴とする請求項112記載の製品。
【請求項115】
前記宿主が遺伝子導入鳥類であることを特徴とする請求項112記載の製品。
【請求項116】
前記宿主が遺伝子導入植物であることを特徴とする請求項112記載の製品。
【請求項117】
前記宿主が酵母培養細胞であることを特徴とする請求項112記載の製品。
【請求項118】
前記宿主が昆虫培養細胞であることを特徴とする請求項112記載の製品。
【請求項119】
前記宿主が原核培養細胞であることを特徴とする請求項112記載の製品。
【請求項120】
疾患の治療に利用されることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項121】
前記疾患が、
a)浮腫;
b)血液量減少;
c)低アルブミン血症;
d)成人呼吸窮迫症候群(ARDS);
e)ネフローゼ;
f)新生児溶血性疾患(HDN);
g)重度火傷;
h)低タンパク血症;および,
i)急性膵炎:より成る群から選択されることを特徴とする請求項120記載の製品。
【請求項122】
心肺バイパス手術中に利用されることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項123】
以下の工程を含む1または複数回の再結晶によって、アルブミン結晶がさらに精製されることを特徴とする請求項87記載の製品:
a)アルブミン結晶の第一の分離によって得られたアルブミン結晶を、2.7〜3.0Mの濃度および6.1〜6.3のpHを有する第二のリン酸塩混合物中に懸濁させ;
b)前記アルブミン結晶の結晶懸濁液を、40〜50℃の温度まで加熱して結晶を溶解させ;
c)前記溶解したアルブミン結晶の結晶懸濁液に第二の濾過を行い;
d)前記濾過したアルブミン結晶の結晶懸濁液を、15℃以下の温度まで冷却する;
e)前記冷却した結晶懸濁液からアルブミン結晶を形成させ;さらに
f)アルブミン結晶を残りの液体から分離し;それによって、所定の供給流からのヒトアルブミンの精製および結晶化をもたらす。
【請求項124】
前記第二のリン酸塩混合物がリン酸ナトリウム塩から成ることを特徴とする請求項123記載の製品。
【請求項125】
前記第二のリン酸塩混合物がリン酸カリウム塩であることを特徴とする請求項123記載の製品。
【請求項126】
前記第二のリン酸塩混合物がナトリウム塩およびカリウム塩の両方から成ることを特徴とする請求項123記載の製品。
【請求項127】
以下の工程を含む方法によって得られる物質の少なくとも一部を含むヒトアルブミン製品:
a)アルブミン含有溶液を、該溶液が溶液1リットル当たり少なくとも15グラムのアルブミンを含むようになるまで濃縮し;
b)第一のリン酸塩混合物を、該リン酸塩混合物の濃度が最高で2.6MでかつpHが6.1〜6.3になるまで、前記アルブミン含有溶液に加え;
c)前記アルブミン含有溶液に第一の濾過を行い、不純物を除去して結晶化バッチ溶液を形成し;
d)前記結晶化バッチ溶液の濾液を、15℃以下の温度まで冷却し;
e)最高で3.0Mの濃度にするのに十分な、前記第一のリン酸塩混合物を前記結晶化バッチ溶液に加え;
f)前記結晶化バッチ溶液中のヒトアルブミンを結晶化させ;さらに
g)アルブミン結晶を残りの液体から分離し;それによって、所定の供給流からのヒトアルブミンの精製および結晶化をもたらす。
【請求項128】
前記第一のリン酸塩混合物がリン酸ナトリウム塩から成ることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項129】
前記第一のリン酸塩混合物がリン酸カリウム塩であることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項130】
前記第一のリン酸塩混合物がナトリウム塩およびカリウム塩の両方から成ることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項131】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル中に15〜50グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項132】
添加時の前記第一のリン酸塩混合物の温度が20〜30℃であることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項133】
前記結晶化バッチ溶液を、最長で12時間結晶化させることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項134】
前記結晶化バッチ溶液を、最長で24時間結晶化させることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項135】
前記結晶化バッチ溶液を、少なくとも24時間結晶化させることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項136】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、濾過によって達成されることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項137】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、遠心分離によって達成されることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項138】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、比重分離によって達成されることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項139】
アルブミン結晶の前記第一の分離が、乾燥によって達成されることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項140】
溶解した結晶懸濁液から析出するアルブミン結晶を、少なくとも1回、溶液中に再度溶解させて戻しさらに再結晶させることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項141】
前記供給流に由来する前記ヒトアルブミン含有溶液が、溶液中から不純物を除去するために事前に清澄化されていることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項142】
前記供給流が、遺伝子導入哺乳類に由来する乳汁または他の体液であることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項143】
遺伝子導入哺乳類に由来する乳汁が、清澄化されて不純物および一部の乳タンパク質を除去されていることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項144】
所定の供給流中の純度レベルが少なくとも10%であり、すなわち、所定の溶液中の総タンパク質の少なくとも10%をヒトアルブミンが構成することを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項145】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり2〜400グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項146】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜300グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項147】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜100グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項148】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり3〜40グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項149】
前記アルブミン含有溶液が、溶液1リットル当たり2〜10グラムのアルブミン濃度を有することを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項150】
医薬調製物中の添加物として利用されることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項151】
医薬調製物中の治療剤として利用されることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項152】
前記供給流が、組み換えヒトアルブミンを発現する宿主に由来する培養上清または体液であることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項153】
前記宿主が哺乳類培養細胞であることを特徴とする請求項152記載の製品。
【請求項154】
前記宿主が遺伝子導入哺乳類であることを特徴とする請求項152記載の製品。
【請求項155】
前記宿主が遺伝子導入鳥類であることを特徴とする請求項152記載の製品。
【請求項156】
前記宿主が遺伝子導入植物であることを特徴とする請求項152記載の製品。
【請求項157】
前記宿主が酵母培養細胞であることを特徴とする請求項152記載の製品。
【請求項158】
前記宿主が昆虫培養細胞であることを特徴とする請求項152記載の製品。
【請求項159】
前記宿主が原核培養細胞であることを特徴とする請求項152記載の製品。
【請求項160】
疾患の治療に利用されることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項161】
前記疾患が、
a)浮腫;
b)血液量減少;
c)低アルブミン血症;
d)成人呼吸窮迫症候群(ARDS);
e)ネフローゼ;
f)新生児溶血性疾患(HDN);
g)重度火傷;
h)低タンパク血症;および,
i)急性膵炎
:より成る群から選択されることを特徴とする請求項160記載の製品。
【請求項162】
心肺バイパス手術中に利用されることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項163】
以下の工程を含む1または複数回の再結晶によって、アルブミン結晶がさらに精製されることを特徴とする請求項127記載の製品:
g)アルブミン結晶の第一の分離によって得られたアルブミン結晶を、2.7〜3.0Mの濃度および6.1〜6.3のpHを有する第二のリン酸塩混合物中に懸濁させ;
h)前記アルブミン結晶の結晶懸濁液を、40〜50℃の温度まで加熱して結晶を溶解させ;
i)前記溶解したアルブミン結晶の結晶懸濁液に第二の濾過を行い;
j)前記濾過したアルブミン結晶の結晶懸濁液を、15℃以下の温度まで冷却し;
k)前記冷却した結晶懸濁液からアルブミン結晶を形成させ;さらに
l)アルブミン結晶を残りの液体から分離し;それによって、所定の供給流からのヒトアルブミンの精製および結晶化をもたらす。
【請求項164】
前記第二のリン酸塩混合物がリン酸ナトリウム塩から成ることを特徴とする請求項163記載の製品。
【請求項165】
前記第二のリン酸塩混合物がリン酸カリウム塩であることを特徴とする請求項163記載の製品。
【請求項166】
前記第二のリン酸塩混合物がナトリウム塩およびカリウム塩の両方から成ることを特徴とする請求項163記載の製品。
【請求項167】
前記ヒトアルブミンを含む供給流が、溶解したヒト血清アルブミン製品に結合した化合物を含み、該化合物が、
a)カプリル酸塩;
b)脂肪酸;および
c)長鎖アルコール
:より成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項168】
前記ヒトアルブミン製品が濃縮物に精製され、該濃縮物は、
a)結晶;
b)ゲル;
c)沈澱物;および
d)小滴
:より成る群から選択される状態の相の何れかにあることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項169】
前記ヒトアルブミンを含む供給流が、溶解したヒト血清アルブミン製品に結合した化合物を含み、該化合物が、
a)カプリル酸塩;
b)脂肪酸;および
c)長鎖アルコール
:より成る群から選択されることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項170】
前記ヒトアルブミン製品が濃縮物に精製され、該濃縮物は、
a)結晶;
b)ゲル;
c)沈澱物;および
d)小滴
:より成る群から選択される状態の相にあることを特徴とする請求項87記載の製品。
【請求項171】
前記ヒトアルブミンを含む供給流が、溶解したヒト血清アルブミン製品に結合した化合物を含み、該化合物が、
a)カプリル酸塩;
b)脂肪酸;および
c)長鎖アルコール
:より成る群から選択されることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項172】
前記ヒトアルブミン製品が濃縮物へ精製され、前記濃縮物は
a)結晶;
b)ゲル;
c)沈澱物;および
d)小滴
:より成る群から選択される状態の相の何れかにあることを特徴とする請求項127記載の製品。
【請求項173】
以下の工程を含むことを特徴とする、結晶性ヒトアルブミンを製造する方法:
a)アルブミン含有溶液を、該液体が溶液1リットル当たり少なくとも15グラムのアルブミンを含むようになるまで濃縮し;
b)第一の化学修飾剤の十分量を、前記アルブミン含有溶液に加え;
c)前記アルブミン含有溶液に第一の濾過を行い、不純物を除去して結晶化バッチ溶液を形成し;
d)前記結晶化バッチ溶液の濾液を、20℃以下の温度まで冷却し;
e)前記結晶化バッチ溶液中のヒトアルブミンを結晶化させ;
f)最高で3.0Mの濃度にするのに十分な、前記第一の化学修飾剤を前記結晶化バッチ溶液に加え;
g)残りの液体からのアルブミン結晶の第一の分離を行い;
h)アルブミン結晶の第一の分離によって得られたアルブミン結晶を、第二の化学修飾剤に懸濁させ;
i)前記溶解したアルブミン結晶の結晶懸濁液を、40〜50℃の温度まで加熱して結晶を溶解させ;
j)前記溶解したアルブミン結晶の結晶懸濁液に第二の濾過を行い;
k)前記濾過したアルブミン結晶の結晶懸濁液を、15℃以下の温度まで冷却し;さらに
l)前記冷却した結晶懸濁液からアルブミン結晶を形成させ;それによって、所定のヒトアルブミンを含む供給流からのヒトアルブミンの精製および結晶化をもたらす。
【請求項174】
前記第一の化学修飾剤がポリエチレングリコールであり、かつ前記第二の化学修飾剤がデカノールであることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項175】
前記第一の化学修飾剤が(NHSOであり、かつ前記第二の化学修飾剤がデカノールであることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項176】
前記第一の化学修飾剤がポリエチレングリコールであり、かつ前記第二の化学修飾剤がカプリル酸であることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項177】
前記第一の化学修飾剤が(NHSOであり、かつ前記第二の化学修飾剤がカプリル酸であることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項178】
前記第一の化学修飾剤が2−プロパノールであり、かつ前記第二の化学修飾剤がMgClであることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項179】
前記第一の化学修飾剤がベンジルアルコールであり、かつ前記第二の化学修飾剤がMgClであることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項180】
前記第一の化学修飾剤が塩化カリウムであり、かつ前記第二の化学修飾剤が塩化カリウムであることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項181】
前記第一の化学修飾剤がポリエチレングリコールであり、かつ前記第二の化学修飾剤が酢酸アンモニウムであることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項182】
前記第一の化学修飾剤がポリエチレングリコールであり、かつ前記第二の化学修飾剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項173記載の方法。
【請求項183】
前記第一の化学修飾剤がポリエチレングリコールであり、かつ前記第二の化学修飾剤が2−プロパノールであることを特徴とする請求項173記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−506435(P2006−506435A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553487(P2004−553487)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/034205
【国際公開番号】WO2004/046311
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(503459453)トーラス エイチエスエイ エルエルシー (2)
【氏名又は名称原語表記】Taurus hSA LLC
【Fターム(参考)】