説明

ヒドリドシランの不均化によるジオルガノシランの合成方法

【課題】安全かつ簡便な条件下でジオルガノシランをオンデマンドで製造する方法の提供。具体的には1つ以上のSiH結合を含んでなるシロキサンの不均化によるジオルガノシランの簡便な調製方法の提供。
【解決手段】ルイス酸触媒の存在下、SiH結合を含んでなるシロキサンを不均化反応させ、ケイ素原子における水素とシロキサン結合の置換を行わせる。この急速な反応により、最終的にジオルガノシラン及び高分子量シロキサンを含んでなる混合生成物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はルイス酸触媒の存在下で、1つ以上の末端SiH基及び1つ以上のシロキサン結合を含んでなるヒドリドシロキサンの不均化によるジオルガノシランの調製方法に関する。本発明はまた、上記の反応の副産物として得られるオリゴシロキサンにも関する。
【背景技術】
【0002】
通常シロキサンオリゴマー及びポリマーの合成に用いられる2つの方法としては、環状シロキサンの開環重合及び重縮合が挙げられる。官能性シラン間又はオリゴシロキサン間の重縮合反応により、シロキサン結合の形成及び低分子量の副産物の除去が行われる。低分子量のシロキサノール油の重縮合はポリシロキサン合成の最も一般的な方法であり、副産物として水を生じさせる。あるいは、異なる副産物を生じさせる別の非加水分解縮合反応を用いる場合もある(例えば特許文献1を参照)。大部分のこれらの縮合反応は触媒の存在を必要とする。最近、有機ホウ素化合物が、ハイドロシランとシラノールを反応させ、副産物として水素を発生させる、極めて効果的な触媒であることが報告されている(特許文献2)。
【0003】
ハイドロシラン及び有機ホウ素化合物は、アルデヒド、ケトン、エステル、イミン及び他の官能基の優れた還元剤としても周知である。これらのシステムを用いて、ツーステップ反応でアルコール類を還元することも可能である。すなわち第一に、アルコールのシリル化によりアルコキシシランが形成され、さらに第二段階としてそれが切断され、炭化水素及びジシロキサンを生じさせる。B(Cのようなルイス酸触媒の存在下における、シリル水素化物によるSiOC結合の裂開は多くの場合容易に生じ、ポリシロキサンの合成にも適用できる程に急速なものである(特許文献1)。このポリシロキサンの調製方法は非常に魅力的であると考えられるが、それはSiOR及びSiH基を保持する基質は市販されており、またそれは安価でかつ取り扱いが容易であるからである。この縮合の副産物は炭化水素であり、その反応は穏やかな条件下で急速に生じる。
【0004】
ジオルガノシランすなわちRSiHは通常強力な還元剤の存在下でジクロロシランを還元することによって調製されるが、それは高価であり、かつ取り扱いが非常に危険である。これらの化合物は、電子材料、半導体、集積回路への使用が見出され、また新規なシロキサンと有機シリコーンとの共重合体、並びに小分子(例えばシラヒドロカーボン)の調製のための中間体としても有用である。ジメチルシラン(MeSiH)及びトリメチルシラン(MeSiH)はまた、化学蒸着(CVD)技術を使用して形成される低K誘電コーティングのための重要な基質でもある。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0127668号公報
【特許文献2】国際公開第01/74938号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゆえに、安全かつ簡便な条件下でジオルガノシランをオンデマンドで製造するための方法は大変望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1つ以上のSiH結合を含んでなるシロキサンの不均化によるジオルガノシランの調製のための簡便な方法の提供に関する。ルイス酸触媒の存在下、SiH結合を含んでなるシロキサンが不均化反応し、ケイ素原子における水素とシロキサン結合の置換が行われる。この急速な反応により、最終的にジオルガノシラン及び高分子量シロキサンを含んでなる混合生成物が得られる。
【0007】
本発明の一実施態様は、反応混合物中で有効量のルイス酸触媒と、1つ以上の末端SiH基及び1つ以上のシロキサン結合を含んでなるヒドリドシロキサンとを接触させることによってジオルガノシランを調製する方法の提供に関し、それにより、1つ以上のジオルガノシラン及び1つ以上のオリゴシロキサンを含んでなる混合生成物が提供される。
【0008】
本発明の他の実施態様は、ジアルキルシランの調製方法に関し、前記方法は、有効量のB(Cと、1つ以上のジアルキル置換された端末SiH基及び1つ以上のシロキサン結合を含んでなるヒドリドシロキサンとを反応混合物中で接触させる処理を含んでなる。
【0009】
本発明の更なる実施態様は、ジメチルシランの調製方法に関し、前記方法は、有効量のB(C触媒と、1つ以上のジメチル置換された末端SiH基及び1つ以上のシロキサン結合を含んでなるヒドリドシロキサンとを反応混合物中で接触させる処理を含んでなる。
【0010】
本発明の他の様々な特徴、態様及び効果は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲の参照により更に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
明細書の以下の記載及び請求項における多くの用語は、以下に定義する意味を有するものとして用いられる。
【0012】
単数形「1つの」及び「その」とは、その前後関係において特に明記されない限りその複数形を包含するものとする。
【0013】
本発明では、用語「脂肪族基」とは、環状でない、直鎖状若しくは分岐状の原子配列からなる1以上の原子価を有する有機基のことを指す。脂肪族基は1つ以上の炭素原子を含むものとして定義される。脂肪族基を含んでなる原子の配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレニウム及び酸素のようなヘテロ原子を含んでもよく、又は炭素及び水素だけの構成であってもよい。便宜上、本発明の用語「脂肪族基」には、「環状でない、直鎖状若しくは分岐状の原子配列」としての広範囲にわたる官能基が包含され、その一部の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばカルボン酸誘導体(エステル及びアミド)、アミン基、ニトロ基などが挙げられる。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含んでなるC脂肪族基であり、当該メチル基がアルキル官能基として機能する。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含んでなるC脂肪族化合物基であり、当該ニトロ基が官能基として機能する。脂肪族基は、同じ若しくは異なる1つ以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であってもよい。ハロゲン原子としては例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。1つ以上のハロゲン原子を含んでなる脂肪族基としては、ハロゲン化アルキルトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチルを含む、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば−CHCHBrCH−)などが挙げられる。脂肪族基の更なる例としては、アリル、アミノカルボニル(すなわち−CONH)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(すなわち−CHC(CN)CH−)、メチル(すなわち−CH)、メチレン(すなわち−CH−)、エチル、エチレン、ホルミル(すなわち−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(すなわち−CHOH)、メルカプトメチル(すなわち−CHSH)、メチルチオ(すなわち−SCH)、メチルチオメチル(すなわち−CHSCH)、メトキシ、メトキシカルボニル(すなわちCHOCO−)、ニトロメチル(すなわち−CHNO)、チオカルボニル、トリメチルシリル(すなわち(CHSi−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(すなわち(CHO)SiCHCHCH−)、ビニル、ビニリデンなどが挙げられる。更なる例として、C−C10脂肪族基は、少なくとも1個であるが10個以内の炭素原子を含む。メチレン基(すなわちCH−)は、C脂肪族基の一例である。デシル基(すなわちCH(CH−)は、C10脂肪族基の一例である。
【0014】
本発明における「芳香族基」という用語は、1つ以上の芳香族基を有する、1以上の原子価を有する原子の配列のことを指す。1つ以上の芳香族基を有する、1以上の原子価を有する原子の配列とは、ヘテロ原子(例えば窒素、硫黄、セレニウム、シリコン及び酸素)を含んでもよく、又は炭素及び水素だけの構成であってもよい。本発明における用語「芳香族基」としては、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン及びビフェニル基が挙げられるが、これに限定されるものではない。前述のように、芳香族基は1つ以上の芳香族基を含む。芳香族基とは例外なく、4n+2個の「非局在化」した電子を有する環状構造であり、式中「n」が1以上の整数である(フェニル群(n=1)、チエニル群(n=1)、フラニル群(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル群(n=2)、アントラセニル群(n=3)など)。芳香族基は、非芳香族の構成要素を含んでもよい。例えば、ベンジル群は、フェニル環(芳香族基)及びメチレン基(非芳香族の構成要素)を含んでなる芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、非芳香族の構成要素−(CH−と結合した芳香族基(C)を含んでなる芳香族基である。便宜上、本発明における用語「芳香族基」は様々な官能基を包含してもよく、その一部の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばカルボン酸誘導体(エステル及びアミド)、アミン基、ニトロ基が挙げられる。例えば、A−メチルフェニル基とは、メチル基を含むC芳香族基であり、メチル基がアルキル官能基として機能する。同様に、2−ニトロフェニル基とは、ニトロ基を含むC芳香族基であり、ニトロ基が官能基として機能する。芳香族基はハロゲン化された芳香族基であってもよく、例えば4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェノール−1−イルオキシ)(すなわち−OPhC(CFPhO−)、4−クロロメチルフェン−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(すなわち3−CClPh−)、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(すなわち4−BrCHCHCHPh−)などが挙げられる。芳香族基の更なる例としては、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(すなわち4−HNPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(すなわちNHCOPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェノール−1−イルオキシ)(すなわち−OPhC(CN)PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(4−フェノール−1−イルオキシ)(すなわち−OPhCHPhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェノール−1−イルオキシ)(すなわち−OPh(CHPhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(すなわち4−HOCHPh−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(すなわち4−HSCHPh−)、4−メチルチオフェン−1−イル(すなわち4−CHSPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例えばメチルサリチル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(すなわち2−NOCHPh)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェン−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)基などが挙げられる。「C−C10芳香族基」という用語には、少なくとも3個であり10個以内の炭素原子を含む芳香族基が包含される。芳香族基である1−イミダゾリル(C−)基は、C芳香族化合物の1つである。(C−)ベンジル基は、C芳香族基の1つである。
【0015】
本発明における用語「脂環式基」とは、1以上の原子価を有し、環状であるが芳香族でない原子の配列を含んでなる基のことを指す。本明細書で定義されるように、「脂環式基」は芳香族基を含まない。「脂環式基」は1つ以上の非環状の構成要素を含んでもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C11CH−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族でない原子の配列)及びメチレン基(非環状の構成要素)を含んでなる脂環式基である。脂環式基は、ヘテロ原子(例えば窒素、硫黄、セレニウム、ケイ素及び酸素)を含んでもよく、又は炭素及び水素だけの構成であってもよい。便宜上、本発明における用語「脂環式基」は、様々な官能基を包含してもよく、その一部の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばカルボン酸誘導体(エステル及びアミド)、アミン基、ニトロ基が挙げられる。例えば、4−メチルシクロペント−1−イル基は、メチル基を含んでなるC脂環式基であり、メチル基がアルキル官能として機能する。同様に、2−ニトロシクロブト−1−イル基は、ニトロ基を含んでなるC脂環式基であり、ニトロ基が官能基として機能する。脂環式基は、同じ若しくは異なる1つ以上のハロゲン原子を含んでもよい。ハロゲン原子としては例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。1つ以上のハロゲン原子を含んでなる脂環式基としては、2−トリフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクト−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン2,2−ビス(シクロヘキス−4−イル)(すなわち−C10C(CF10−)、2−クロロメチルシクロヘキス−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキス−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキス−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキス−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペント−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキス−1−イルオキシ(例えばCHCHBrCH10−)などが挙げられる。脂環式基の更なる例としては、4−アリルオキシシクロヘキス−1−イル、4−アミノシクロヘキス−1−イル(すなわちHNC10−)、4−アミノカルボニルシクロペント−1−イル(すなわちNHCOC−)、4−アセチルオキシシクロヘキス−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(すなわち−OC10C(CN)10O−)、3−メチルシクロヘキス−1−イル、メチレンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(すなわち−OCIOCH10O−)、1−エチルシクロブト−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テラハイドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(すなわち−OC10(CH10O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキス−1−イル(すなわち4−HOCH10−)、4−メルカプトメチルシクロヘキス−1−イル(すなわち4−HSCH10−)、4−メチルチオシクロヘキス−1−イル(すなわち4−CHSC10−)、4−メトキシシクロヘキス−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキス−1−イルオキシ(2−CHOCOC10O−)、4−ニトロメチルシクロヘキス−1−イル(すなわちNOCH10−)、3−トリメチルシリルシクロヘキス−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペント−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキス−1−イル(例えば(CHO)SiCHCH10−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などが挙げられる。「C−C10脂環式基」という用語には、少なくとも3個であるが10個以内の炭素原子を含んでなる脂環式基が包含される。脂環式基である2−テトラヒドロフラニル(CO−)はC脂環式基の一例である。(C11CH−)シクロヘキシルメチル基はC脂環式基の一例である。
【0016】
前述のように本発明はジオルガノシランを調製する方法の提供に関し、当該方法は反応混合物中で有効量のルイス酸触媒と、1つ以上の末端SiH基及び1つ以上のシロキサン結合を含んでなるヒドリドシロキサンとを、接触させることを含んでなり、それにより1つ以上のジオルガノシラン及び1つ以上のオリゴシロキサンを含んでなる混合生成物が提供される。
【0017】
本発明の一実施態様では、ヒドリドシロキサン出発原料は構造式(I)で表される。
【化1】

式中、R、Rは各々独立にC−C20脂肪族基、C−C40芳香族基又はC−C40脂環式基であり、
Zは構造(II)で表されるシロキサン部分である。
(II) MM’D’T’
式中、添字b、c、d、e、f及びgは独立に0又は正の整数であり、
Mは以下の式で表され、
SiO1/2
M’は以下の式で表され、
(Y)RSiO1/2
Dは以下の式で表され、
SiO2/2
D’は以下の式で表され、
(Y)RSiO2/2
Tは以下の式で表され、
SiO3/2
T’は以下の式で表され、
(Y)SiO3/2
Qは以下の式で表され、
SiO4/2
式中、R、R、R、R及びRは各々独立にC−C20脂肪族基、C−C40芳香族基又はC−C40脂環式基であり、Yは水素原子である。
【0018】
本発明の一実施態様では、構造式IIにおける添字b、c、d、e、f及びgは独立に0〜約1000の数である。本発明の別の実施態様では、構造式IIにおける添字b、c、d、e、f及びgは独立に0〜約500の数である。本発明の更に別の実施態様では、構造式IIにおける添字b、c、d、e、f及びgは独立に0〜約100の数である。すなわち、本発明の構造式IIの例示的な一実施態様はポリシロキサン部分、MeSiO(SiMeO)500−であり、当該ポリシロキサン部分は約500の平均鎖長を有し、当該ポリシロキサン部分は末端にトリメチルシリル基を有する。構造IIにより表される前述の例示的なポリシロキサン部分(MeSiO(SiMeO)−)は、添字「a」が1、「b」がゼロ、「c」が500、「d」がゼロ、「e」がゼロ、「f」がゼロ、「g」がゼロであり、R及びRがメチル(Me)基である。
【0019】
生成物のジオルガノシランは構造式(III)で表される。
【化2】

式中、R及びRは各々独立にC−C20脂肪族基、C−C40芳香族基又はC−C40脂環式基である。通常、R、R、R、R、R、R及びR基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、1,1,1−トリフルオロプロピル、フェニル、ナフチル、ベンジル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0020】
前述のように、本発明の方法は適当な触媒の使用を必要とする。一実施形態において、当該触媒はルイス酸触媒である。好ましいルイス酸触媒としては無機ルイス酸触媒(例えばFeCl、AlCl、ZnCl、ZnBr、BFなど)が挙げられる。本発明の新規な反応を生じさせる個々のルイス酸の能力は、酸性の強さ、酸及び基質の立体障害、並びにルイス酸及び基質の反応溶媒中への可溶性と相関する。通常、無機ルイス酸(例えばFeCl、AlCl、ZnCl、ZnBr、BFなど)は反応中のシロキサン材料中への溶解性が低い。この触媒の低い可溶性により、無機ルイス酸触媒が所望の反応を生じさせる能力が損なわれうる。シロキサン溶媒に対するより高い可溶性を有するルイス酸触媒が好適である。すなわち本発明の一態様では、式(IV)で表される1つ以上の有機ルイス酸触媒を使用する、
(IV) MR
式中、MはB、Al、Ga及びTlからなる群から選択され、各Rは独立に5〜14個の炭素原子数の芳香族基であり、Xはハロゲン原子であり、xは1、2又は3であり、yは0、1又は2であり、但しx+y=3であり、但し当該触媒が1つ以上の電子吸引基を含んでなる。適切な電子吸引基としてはハロゲン原子、−CF基、−NO基及び−CN基が挙げられる。1つ以上の当該電子吸引基はRの一部を形成する官能基であってもよく、又は、yが1若しくは2であるとき、当該電子吸引基はM基と直接結合してもよい。一実施態様では、当該触媒は5〜14の炭素原子数の芳香族基としての1つ以上のR基を含んでなり、前記R基は少なくとも2つのハロゲン原子で置換されている。
【0021】
他の実施態様では、当該触媒は式(V)で表される1つ以上の有機ルイス酸を含んでなる。
(V) BR
式中、各Rは独立に5〜14の炭素原子数の芳香族基であり、Xはハロゲン原子であり、xは1、2又は3であり、yは0、1又は2であり、但しx+y=3であり、但し当該触媒が1つ以上の電子吸引基を含んでなる。適切な電子吸引基としてはハロゲン原子、−CF基、−NO基及び−CN基が挙げられる。1つ以上の当該電子吸引基はRの一部を形成する官能基であってもよく、又は、yが1若しくは2であるとき、当該電子吸引基はM基と直接結合してもよい(例えば式XII、XIII、XVI及びXVIIを参照)。一実施態様では、当該触媒は5〜14の炭素原子数の芳香族基としての1つ以上のR基を含んでなり、前記R基は少なくとも2つのハロゲン原子で置換されている。一実施態様では、各Rは非置換フェニル基であり、Xはハロゲンである(例えば以下の式XVI及びXVIIを参照)。式(V)で表されるかかる有機ルイス酸触媒の典型例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(X) (C)(C
(XI) (C
(XII) (C)BF
(XIII) BF(C
(XIV) B(C
(XV) B(C)(C
(XVI) BCl(C
(XVII) BCl(C
(XVIII) [C(m−CF)]
(XIX) [C(p−CF)]
(XX) [C−2,4,6−(CF
(XXI) [C−3,4,5−(CF
構造式(X)及び(XI)では、4つのフッ素原子は2,3,4,5,6位のいずれにおいて置換されてもよく、残りの炭素原子では水素で置換される。
【0022】
ジアルキルシランの調製方法に係る本発明の一実施態様では、当該方法は反応混合物中で、有効量のB(Cと構造式(XXII)のヒドリドシロキサンを接触させる工程を含んでなり、
【化7】

それにより1つ以上のジアルキルシラン及び1つ以上のオリゴシロキサンを含んでなる混合生成物が得られ、その場合、R及びR10は各々独立にC−C10アルキル基であり、Zは構造式(II)で表されるシロキサンである。本実施態様では、生成物のジアルキルシランは以下の構造式(XXIII)で表される。
【化8】

式中、R及びR10は各々独立に一価のC−C10アルキル基である。
【0023】
本発明の更なる実施態様はジメチルシランの調製方法に関し、当該方法は、反応混合物中で有効量のB(C触媒と構造式(XXIV)で表されるヒドリドシロキサンを接触させる工程を含んでなる。
【化9】

式中、Zは構造式(II)で表されるシロキサンである。
【0024】
当該触媒は通常、反応混合物の合計量に対して約1重量ppm〜約50000重量ppm、好ましくは反応混合物の合計量に対して約10重量ppm〜約10000重量ppm、最も好ましくは反応混合物の合計量に対して約50重量ppm〜約5000重量ppmで用いられる。
【0025】
溶媒の存在下で反応を実施してもよい。あるいは、溶媒の非存在下で反応を実施してもよい。当該溶媒は単一の溶媒又は溶媒の混合物であってもよい。溶媒の存在により、反応混合物の粘性が制御され、反応速度を増加させる能力が提供され、更に反応の際の発熱を制御するための有効な手段が提供される。好ましい溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、並びにSi−H結合を含まないオリゴマー状の環状ジオルガノシロキサンが挙げられる。当該反応は室温で実施してもよく、又は試薬及び触媒の化学構造、触媒の濃度及び存在する溶媒のタイプなどの因子次第では高い温度で実施してもよい。
【0026】
ジオルガノシラン化合物の物理的な状態は、ケイ素原子上の置換基の特性、温度、圧力及び他の一般的な反応条件などの因子に依存する。この生成物を単離してもよく、好ましくは、蒸留などの周知の標準的な手法で精製してもよい。ジオルガノシラン生成物を回収し保存する方法は当業者に公知で、本発明の方法に使用してもよい。本願明細書に記載されているジオルガノシラン化合物は、電子材料、半導体、集積回路への使用が見出され、また新規なシロキサンと有機シリコーンとの共重合体、並びに小分子(例えばシラヒドロカーボン)の調製のための中間体としても有用である。ジオルガノシラン化合物はまた、CVDプロセスによって形成される低K誘電コーティングのための重要な基質でもある。
【0027】
更なる詳細な説明を行わずとも、当業者であれば、本願明細書の説明から、本発明を最大限の範囲において利用できると考えられる。以下に実施例を記載し、当業者が特許請求された本発明を実施する際の付加的なガイダンスを提供する。提供される実施例は本出願を教示する際の単なる代表例に過ぎない。したがって、これらの実施例は、いかなる形であれ、添付の特許請求の範囲において定義した本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0028】
以下の実施例においては、1,1,3,3−テトラメチルシロキサンはABCRから入手し、更に精製し、水素化カルシウム中で保存した。1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−1,3,5,7−テトラシロキサンはChrusciel博士(Lodz Technical University)からの供与を受けた。触媒、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(B(C)はAldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン)から入手し、更に事前に精製したトルエン中に、乾燥窒素雰囲気下で溶解させ、0.1Mの標準的な触媒溶液を調製した。反応生成物は質量分析計と連結させたガスクロマトグラフィ(GC/MS)を使用して分析した。
【0029】
<実施例1>1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのオリゴマー化
反応フラスコ中に0.755gの(5.62mmoles)の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び予め精製したトルエンを、高真空ラインを使用して添加した。次いでフラスコに乾燥窒素及び0.225gのドデカン(GC分析用の内部標準)を充填し、0.0124g(0.024mmoles)の触媒(B(C)を、乾燥窒素流中で精密なハミルトンシリンジを使用して添加した。この時点でガスの急速な発生が観察された。一定の時限間隔でサンプリングし、過剰の3−エチルピリジンで急冷し、ガスクロマトグラフィで分析した。シグナルのアサインメントは、化学イオン化法を使用したGC−MS分析により実施した。GC−MS分析の結果、主要な反応生成物が、MeSiH、一般式HMeSi(OSiMeOSiMeHのオリゴマー(式中、n=1、2、3…)及び(MeSiO)の環状シロキサンのシリーズ(n=3、4及び5)であることが示された。
【0030】
反応の進行を、基質の濃度の減少をモニターしながら観察した結果、基質の転換が十分円滑に進行し、主要な生成物としてMeSiH及びHMeSi(OSiMe)OSiMeHが得られたことが確認された。他の生成物(HMeSi(OSiMeOSiMeHシリーズの高分子オリゴマー、n>1)が、オリゴマー(n=1)よりも遅く形成された。環状の生成物D(ヘキサメチルシクロトリシロキサン)及びD(オクタメチルシクロテトラシロキサン)も生成していた。少量のDが反応の初期に生じたが、その濃度はやがて横ばいになった。Dの形成は徐々に行われていたが、反応系中での濃度は着実に増加していた。
【0031】
<実施例2>1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサンの反応
反応フラスコ中に0.980g(4.10mmoles)の1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、及び予め精製されたトルエンを、高真空ラインを使用して添加した。次いでフラスコに乾燥窒素及び0.225gのドデカン(GC分析用の内部標準)を充填し、0.0303g(0.06mmoles)の触媒(B(C)を、乾燥窒素流中で精密なハミルトンシリンジを使用して添加した。この時点でガスの急速な発生が観察された。一定の時限間隔でサンプリングし、過剰の3−エチルピリジンでクエンチし、ガスクロマトグラフィで分析した。シグナルのアサインメントは、化学イオン化法を使用したGC−MS分析により実施した。GC−MS分析の結果、主要な反応生成物がMeSiH及びヘキサメチルシクロトリシロキサン(D)であることが示された。
【0032】
反応の進行を、基質の濃度の減少をモニターしながら観察した結果、最初に基質の急速な転換(1分未満で57%の減少)が観察され、その後基質の濃度は比較的緩やかな減少を示した。主要な反応生成物はDであり、その速い濃度増加が、基質の速い濃度減少に対応していた。高分子の直鎖状及び環状のオリゴマーの形成も見られたが、その量は非常に少なかった。
【0033】
本発明を典型的な実施例に基づき例示したが、本発明は開示された態様に限定されない。何故なら、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、様々な変更及び置換を任意の形態で行うことができるからである。すなわち、本願明細書に開示された本発明における更なる変更態様及び均等技術は、当業者がルーチン試験を行っている際に生じることもありえ、ゆえに全てのかかる変更態様及び均等技術は添付の特許請求の範囲に記載する、本発明の範囲内であると解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオルガノシランの調製方法であって、前記方法が反応混合物中で有効量のルイス酸触媒と、1つ以上の末端SiH基及び1つ以上のシロキサン結合を含んでなるヒドリドシロキサンとを接触させることを含んでなり、それにより1つ以上のジオルガノシラン及び1つ以上のオリゴシロキサンを含んでなる混合生成物が得られる方法。
【請求項2】
前記ヒドリドシロキサンが以下の構造式(I)で表される、請求項1記載の方法。
【化1】

(式中、R、Rは各々独立にC−C20脂肪族基、C−C40芳香族基又はC−C40脂環式基であり、Zは構造式(II)で表されるシロキサン部分であり、
(II) MM’D’T’
式中、添字b、c、d、e、f及びgは独立に0又は正の整数であり、
Mは以下の式で表され、
SiO1/2
M’は以下の式で表され、
(Y)RSiO1/2
Dは以下の式で表され、
SiO2/2
D’は以下の式で表され、
(Y)RSiO2/2
Tは以下の式で表され、
SiO3/2
T’は以下の式で表され、
(Y)SiO3/2
Qは以下の式で表され、
SiO4/2
式中、R、R、R、R及びRは各々独立にC−C20脂肪族基、C−C40芳香族基又はC−C40脂環式基であり、Yは水素原子である。)
【請求項3】
前記ジオルガノシランが以下の構造式(III)で表される、請求項1記載の方法。
【化2】

(式中、R及びRは各々独立にC−C20脂肪族基、C−C40芳香族基又はC−C40脂環式基である。)
【請求項4】
、R、R、R、R、R及びR基の少なくとも1つがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、1,1,1−トリフルオロプロピル、フェニル、ナフチル、ベンジル、シクロヘキシル及びメチルシクロヘキシル基からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が反応混合物の合計量に対して約1重量ppm〜約50000重量ppmの範囲の量で用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が式(IV)で表される、請求項1記載の方法。
(IV) MR
(式中、MはB、Al、Ga及びTlからなる群から選択され、各Rは独立に5〜14個の炭素原子数の芳香族基であり、Xはハロゲン原子であり、xは1、2又は3であり、yは0、1又は2であり、但しx+y=3であり、但し当該触媒が1つ以上の電子吸引基を含んでなる。)
【請求項7】
がハロゲン原子、−CF基、−NO基及び−CN基からなる群から選択される1つ以上の電子吸引基である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
が少なくとも2つのハロゲン原子を含んでなる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が式(V)で表される、請求項1記載の方法。
(V) BR
(式中、各Rは独立に5〜14の炭素原子数の芳香族基であり、当該触媒は1つ以上の電子吸引基を含んでなり、Xはハロゲン原子であり、xは1、2又は3であり、yは0、1又は2であり、但しx+y=3である。)
【請求項10】
がハロゲン原子、−CF基、−NO基及び−CN基からなる群から選択される1つ以上の電子吸引基である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
が少なくとも2つのハロゲン原子を含んでなる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、以下の構造式(VI)〜(XXI)で表されるホウ素化合物からなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(X) (C)(C
(XI) (C
(XII) (C)BF
(XIII) BF(C
(XIV) B(C
(XV) B(C)(C
(XVI) BCl(C
(XVII) BCl(C
(XVIII) [C(m−CF)]
(XIX) [C(p−CF)]
(XX) [C−2,4,6−(CF
(XXI) [C−3,4,5−(CF
【請求項13】
前記触媒がトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物が更に1つ以上の溶媒を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記接触が、約0℃〜約150℃の範囲の温度における加熱工程を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記ジオルガノシランが蒸留によって混合生成物から単離される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
ジアルキルシランの調製方法であって、反応混合物中で有効量のB(Cと構造式(XXII)のヒドリドシロキサンとを接触させる工程を含んでなり、
【化7】

それにより1つ以上のジアルキルシラン及び1つ以上のオリゴシロキサンを含んでなる混合生成物を得る方法。
(式中、R及びR10が各々独立にC−C10アルキル基であり、
Zが構造式(II)で表されるシロキサンであり、
(II) MM’D’T’
添字b、c、d、e、f及びgは独立に0又は正の整数であり、
Mは以下の式で表され、
SiO1/2
M’は以下の式で表され、
(Y)RSiO1/2
Dは以下の式で表され、
SiO2/2
D’は以下の式で表され、
(Y)RSiO2/2
Tは以下の式で表され、
SiO3/2
T’は以下の式で表され、
(Y)SiO3/2
Qは以下の式で表され、
SiO4/2
式中、R、R、R、R及びRは各々独立にC−C20脂肪族基、C−C40芳香族基又はC−C40脂環式基であり、Yは水素原子である。)
【請求項18】
前記ジアルキルシランが構造式(XXIII)で表される、請求項17記載の方法。
【化8】

(式中、R及びR10は各々独立にC−C10アルキル基である。)
【請求項19】
ジメチルシランの調製方法であって、前記方法が反応混合物中で有効量のB(C触媒と構造式(XXIV)で表されるヒドリドシロキサンを接触させる工程を含んでなる方法。
【化9】

(式中、Zは構造式(II)で表されるシロキサンであり、
(II) MM’D’T’
添字b、c、d、e、f及びgは独立に0又は正の整数であり、
Mは以下の式で表され、
SiO1/2
M’は以下の式で表され、
(Y)RSiO1/2
Dは以下の式で表され、
SiO2/2
D’は以下の式で表され、
(Y)RSiO2/2
Tは以下の式で表され、
SiO3/2
T’は以下の式で表され、
(Y)SiO3/2
Qは以下の式で表され、
SiO4/2
式中、R、R、R、R及びRは各々独立にC−C20脂肪族基、C−C40芳香族基又はC−C40脂環式基であり、Yは水素原子である。)

【公表番号】特表2009−500321(P2009−500321A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519254(P2008−519254)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/030653
【国際公開番号】WO2007/005037
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】