説明

ヒドロキシカルボン酸の脂肪酸エステルに基づく新規抗菌剤

本発明は、脂肪酸とヒドロキシカルボン酸との脂肪酸エステルと、ポリリジン、プロタミン、それらの塩及びこの混合物から選ばれる抗菌剤との組み合わせに基づく抗菌性組成物に関する。該ヒドロキシカルボン酸は、その遊離形、その塩形及び/又はそのエステル形にある酸として存在しうる。本発明はさらに、種々の製品、適用及び方法において、該組成物をグラム陰性菌に対する抗菌剤として用いる方法に向けられる。さらに、本発明は、該抗菌剤を含む製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシカルボン酸の脂肪酸エステルに基づく抗菌性組成物、及び種々の製品及び適用におけるグラム陰性菌に対する抗菌剤としてのその使用方法に関する。本発明はさらに、該抗菌剤を含む製品及び特には食品製品に関する。
【0002】
本発明の脂肪酸エステルは、例えば乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸及び酒石酸などのヒドロキシカルボン酸の脂肪酸エステルを含み、ここで該ヒドロキシカルボン酸は、塩又はエステルの形にもありうる。さらに、該ヒドロキシカルボン酸は、例えばラクチレートの場合などにおいて、1以上の重合した酸モノマーを含みうる。
【背景技術】
【0003】
ヒドロキシカルボン酸のこれらの脂肪酸エステルの大部分は、乳化剤として適用される。例えば、乳酸の脂肪酸エステル、ラクチレート及びアシルラクチレートとも呼ばれる、はそれらの乳化効果についてよく知られている。それらは一般に、ベーカリー産業において適用される。
【0004】
関心のあるラクチレートのいくつかが、米国特許第3,275,503号明細書、欧州特許出願公開第0572271号明細書及び欧州特許出願公開第1000542号明細書に記載されており、そして、一般式:
【化1】

により表され、ここで、RCOは、4〜12の炭素原子を有する脂肪酸のアシル基であり、Yは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、銀、アンモニウム又は、1以上のC1〜C3アルキル又はヒドロキシアルキル基を有する置換アンモニウムから選ばれる陽イオンであり、nは該陽イオンの価数を表し且つmは1〜nの整数であり、xは1〜6、好ましくは1〜3、の数である。
【0005】
米国特許第3,275,503号明細書に記載されたラクチレートは、8〜12の炭素原子を有するアシル基RCOを有し、そして、例えばRhizopus、Penicillum、Aspergillus、Trichophyton及びSaccaromycesに由来する酵母及び菌類による白カビ及びカビ発達の成長を抑制すると記載されている。問題の該ラクチレートは、Staphylococcus aureus及びBacillus mesentericus(両方ともグラム陽性菌である)に対するいくらかの抗菌活性も示す。
【0006】
欧州特許出願公開第0572271号明細書に記載されたラクチレートは、4〜7の炭素原子を有するアシル基RCOを有し、そして、Pseudomonas cepacia(グラム陰性菌である)に対するいくらかの抗菌活性を有する。
【0007】
欧州特許出願公開第1000542号明細書は、Enterococcus faecalis(グラム陽性菌である)に対する、及びCandida albicans(真菌である)に対するいくらかの抗菌活性を有するカプリル−ラクチル−ラクチレートのナトリウム塩を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ラクチレート及びより特には8〜12の炭素原子を有するアシル基RCOを有する上記式のラクチレートは、グラム陰性菌、例えばEscherichia coli、Salmonella及びCampylobacterなど、に対して非常に有効であると知られていない。それ故に、それらは、抗菌剤として用いられない。実際に、それらの規制状況は、乳化剤として用いられているそれらの規制だけである。
【0009】
同じことが、他のヒドロキシカルボン酸の脂肪酸エステル、例えばクエン酸、リンゴ酸及び酒石酸の脂肪酸エステルなど、に当てはまる。これらのエステルは主に種々の種類の製品において乳化剤として用いられ、そして抗菌の目的の為に用いられていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、グラム陰性菌に対する能力の上記言及された欠如を打破する為の解決策を提供する。本発明は、上記で記載されたとおりのヒドロキシカルボン酸の脂肪酸エステルのグループを、グラム陰性菌に対して有意により活性にする為の手段を提供し、それにより、それらを、広くさまざまな食品製品、飲料製品及び他の製品における、例えば餌用途における、洗剤及び化粧料製品におけるなど、の適用の為の抗菌剤として非常に有用なものにする。
【0011】
ここに、本発明は、脂肪酸とヒドロキシカルボン酸並びに/又は該ヒドロキシカルボン酸の塩及び/若しくはエステルとの脂肪酸エステル、及びポリリジン、プロタミン及びそれらの塩から選ばれる1以上の抗菌剤の組み合わせを含む抗菌性組成物に向けられる。
【発明の効果】
【0012】
上記言及された抗菌剤は、ヒドロキシカルボン酸の脂肪酸エステルの活性を単に増大せず(該増大する効果は該脂肪酸エステルと該抗菌剤との個々の活性の合計である)、本発明の該抗菌剤及び該脂肪酸は相乗的に働き、該抗菌性組成物の個々の成分の活性の合計よりも有意に高い抗菌活性を結果する。この相乗作用に起因して、本発明の該脂肪酸エステルは、ポリリジン、プロタミン、それらの塩又はこれの任意の組み合わせを含む組成物において、抗微生物剤として非常に有効に用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】C8−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下におけるSalmonella typhimuriumの実験的に観察された相対的増殖速度(OC8L.pLys)対C8−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下における予測された相対的増殖速度(OC8L・OpLys)のプロットを表すグラフである。
【図2】C8−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下におけるSalmonella entiritidisの実験的に観察された相対的増殖速度(OC8L・pLys)対C8−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下における予測された相対的増殖速度(OC8L・OpLys)のプロットを表すグラフである。
【図3】C10−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下におけるSalmonella typhimuriumの実験的に観察された相対的増殖速度(OC10L.pLys)対C10−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下における予測された相対的増殖速度(OC10L・pLys)のプロットを表すグラフである。
【図4】C10−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下におけるSalmonella entiritidisの実験的に観察された相対的増殖速度(OC10L.pLys)対C10−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下における予測された相対的増殖速度(OC10L・OpLys)のプロットを表すグラフである。
【図5】C12−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下におけるSalmonella typhimuriumの実験的に観察された相対的増殖速度(OC12L.pLys)対C12−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下における予測された相対的増殖速度(OC12L・pLys)のプロットを表すグラフである。
【図6】C12−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下におけるSalmonella entiritidisの実験的に観察された相対的増殖速度(OC12L.pLys)対C12−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下における予測された相対的増殖速度(OC12L・pLys)のプロットを表すグラフである。
【図7】C14−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下におけるSalmonella typhimuriumの実験的に観察された相対的増殖速度(OC14L・pLys)対C14−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下における予測された相対的増殖速度(OC14L・pLys)のプロットを表すグラフである。
【図8】C12−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下におけるSalmonella entiritidisの実験的に観察された相対的増殖速度(OC12L pLys)対C12−ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下における予測された相対的増殖速度(OC12L・pLys)のプロットを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリリジンは、グラム陰性菌に対して抗菌活性を発揮すると知られている。α−ポリリジン及びε−ポリリジンの両方が、抗菌活性を有するが、後者は、Shimaら(Nov. 1984)により記載されるとおり、有意により大きな程度で抗菌活性を有する。該文献は、ε−ポリリジンが、グラム陽性菌及びグラム陰性菌、例えばEscherichia coliなど、に対して、1ml当たり約1〜8μgの濃度で有効に用いられうることを記載する。
【0015】
Hirakiら(2000)は、ε−ポリリジンと、抗菌剤、例えばグリシン、酢酸/酢、エタノール又はチアミンラウリルスルホネートなど、との組み合わせを記載する。しかしながら、ポリリジンが、グラム陰性菌に対する抗菌剤として有効であるヒドロキシカルボン酸の脂肪酸エステルと組み合わせられるところの組成物は言及されていない。
【0016】
特開2000−270821号公報、特開平07−135943号公報、特開平04−8273号公報は、グリセロール脂肪酸エステル、プロタミン、エタノール、グリシン及び/又はヒドロキシカルボン酸及びそれらの塩と一緒にε−ポリリジンを含む組成物を記載する。上記言及された組成物は、酵母、真菌及び腐敗細菌又は食品損傷細菌、例えばCandida及びLuconostocなど、に対して有効であると記載されている。しかしながら、ポリリジン及び/又はこの塩とヒドロキシカルボン酸の脂肪酸エステルとの特定の組み合わせは開示されていない。
【0017】
プロタミンもまた、一般に適用される抗菌剤である。多くの日本の特許出願が、プロタミンと、種々の他の抗菌性成分、例えばグリセリド、ヒドロキシカルボン酸及び/又はそれらの塩、アミノ酸、ポリリジン、エタノールなど、との組み合わせを含む抗菌性組成物を記載する。しかしながら、プロタミン及び/又はこの塩とヒドロキシカルボン酸の脂肪酸エステルとの特定の組み合わせは言及されていない。
【0018】
すなわち、脂肪酸とヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩との脂肪酸エステルと、遊離形及び/又は塩の形にあるポリリジン又はプロタミン並びに/又はこの任意の組み合わせとの上記言及された組み合わせは、以前に記載されていない。グラム陰性菌に対する該組み合わせの相乗的抗菌活性も、以前に認められていない。本発明は、ポリリジン(及び/又はこの塩)、プロタミン(及び/又はこの塩)又はこれらの任意の組み合わせを含む組成物中において、抗微生物剤として、脂肪酸とヒドロキシカルボン酸との該脂肪酸エステルを使用する方法に関する。
【0019】
本発明の抗菌性組成物中において用いられるときの該脂肪酸エステルは、脂肪酸とヒドロキシカルボン酸及び/又はこの塩とのエステルである。当技術分野の当業者が知るとおり、そのようなエステルは、例えばエステル化又は酵素的処理を介して得られうる。一般に知られているとおり、脂肪酸エステルの製造の為の大抵の処理は、脂肪酸エステルの混合物を結果し、該混合物は例えば種々の脂肪酸尾部又は種々のエステル尾部の脂肪酸エステルの混合物である。純粋な形にある特定の脂肪酸は、当技術分野の当業者によく知られている種々の手段により、この混合物から得られうる。
【0020】
該脂肪酸反応物質は、4〜18、好ましくは8〜18の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪酸でありうる。この非限定的な例は、酪酸(すなわちブタン酸(C4))、カプロン酸(すなわちヘキサン酸(C6))、ミリスチン酸(すなわちテトラデカン酸(C14))、ステアリン酸(すなわちオクタデカン酸(C18))、ミリストレイン酸(C14)及び/又はオレイン酸(C18)である。
【0021】
該ヒドロキシカルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸の1つのモノマー又は重合化結合により互いに連結されたヒドロキシカルボン酸のいくつかのモノマーを含みうる。ヒドロキシカルボン酸の該モノマーは、1〜6の炭素原子を含んでよく、例えば乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸及び酒石酸のモノマーなどでありうる。さらに、該ヒドロキシカルボン酸の該塩及び/又はエステルもまた、本発明に従う抗菌性組成物にとって非常に適当である。
【0022】
本発明の好ましい実施態様において、該抗菌性組成物は、乳酸及び/又は乳酸の塩の脂肪酸エステル、ラクチレートとも言われる、を含む。
【0023】
本発明のラクチレートは、以下の式:
【化2】

を有し、
ここでRCOは4〜18の炭素原子、好ましくは8〜18の炭素原子、を有する脂肪酸のアシル基であり、Yは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、鉄、アンモニウム及び、1以上のC1〜C3アルキル又はヒドロキシアルキルの基を有する置換アンモニウムから選ばれる陽イオンであり;nは該陽イオンの価数を表し且つmは1〜nの整数であり;xはモノマー単位の数を表し且つ1〜6、好ましくは1〜3の値を有する。
【0024】
xが例えば1であるところの成分は、モノラクチレート(すなわち1つだけの乳酸分子を含む)と言われ、そしてxが2であるところの成分は、ジラクチレート(2つの重合化した/エステル化した乳酸分子を含む)と呼ばれる。該ラクチレート成分はしばしば、例えば、それらが調製される方法に起因して、大部分がモノラクチレートの混合物の、及び、さらにジラクチレートを含む混合物として得られる。より多く重合化されたラクチレートも該混合物中に存在することは、非常によく可能でありうる。上記で記載された該パラメータx、m及びnは、すなわち、平均の数を示す。
【0025】
該ラクチレートは、例えばクロマトグラフィーの分離の手段により、又は当技術分野の当業者に既知の任意の他の手段によりそれらの純粋な形(例えばモノ形だけ)で得られうる。
【0026】
良い結果が、オクタン酸(C8)、又はデカン酸(C10)、又はドデカン酸(C12)、又はテトラデカン酸(C14)、又はパルミチン酸(C16)、又はオレイン酸(C18:1)及びこのナトリウム、カリウム及びカルシウム塩のモノ−及び/又はジ−ラクチレートエステルを主に含む混合物により得られた。
【0027】
例えば、オクタン酸のモノ−ラクチレートエステルのカルシウム塩は、RCOがオクタン酸のアシル基であり、xが1であり、Yがカルシウムでありそしてすなわち該陽イオンの価数を表すnが2であり、及び最後のパラメータmが1でありうる(すなわち水酸化カルシウム塩)が好ましくは2である、上記式により表される。
【0028】
乳酸のエステルも、脂肪酸エステルを形成するために用いられうること、そして次に本発明の抗菌性組成物において用いられうることが観察された。すなわち、脂肪酸、例えばオクタン酸又はドデカン酸など、と、ラクテートエステル、例えばエチルラクテートなど、との脂肪酸エステルは、本発明に従い、1以上の抗菌剤、例えばポリリジン、プロタミン及び/又はこの塩と一緒に、抗菌剤又は抗微生物剤として、よく働く。
【0029】
ポリリジンは、ε−ポリリジンとして、α−ポリリジンとして又はこれらの混合物として存在しうる。ε−ポリリジンは、それが、他の形のポリリジンよりもグラム陰性菌に対してより高い抗菌活性を有し及びすなわち適用においてより少ない量のこの抗菌剤が必要とされるので好ましい。ε−ポリリジンは、25〜35のL−リジン残基を含むホモポリマーである。ε−ポリリジンの系統名は、ポリ(イミノ(2−アミノ−1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル))である。典型的なε−ポリリジンホモポリマーについての実験式は、約4700の分子量(30のL−リジン残基)を有するC1803626031である。ε−ポリリジンについてのChemical Abstract Service(CAS)番号は、28211−04−3である。本発明の脂肪酸エステルは、1以上のポリリジン塩とも一緒にされうる。この例は、無機酸、例えば塩化水素酸、硫酸、リン酸など、の塩、又は有機酸、例えば乳酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸など、の塩である。抗菌効果における実質的な差異は無いが、ポリリジンは、塩形におけるポリリジンの限られた溶解性の故に、ときどき好ましくは遊離形で用いられる。
【0030】
プロタミン(アルギニンに富む小さなタンパク質)もまた、その遊離形において及びその塩形において用いられうる。適当なプロタミンは例えば、プロタミンサルフェート又はプロタミンハイドロクロライドである。
【0031】
任意的に、本発明の抗菌性組成物はさらに、1以上の金属キレート剤を含みうる。該キレート剤は例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩、種々のホスフェートに基づく化合物、例えばヘキサメタホスフェートナトリウム、酸性ピロホスフェートナトリウム(sodium acid pyrophosphate)及びポリリン酸、オルガノホスフェートキレーティング化合物、例えば:フィチン酸、1,1−ジホスホン酸、シデロフォア及び鉄結合性タンパク質、例えばエンテロバクテリン(enterobacterin)及びラクトフェリンなど、及びヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩、例えばコハク酸、アスコルビン酸、グリコール酸、安息香酸、ソルビン酸、オクタン酸、アジピン酸などであるがこれらに限定されない、から選ばれうる。
【0032】
本発明の抗菌性組成物は好ましくは、乳酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、グルコン酸、プロピオン酸、カプロン酸及びフィチン酸から選ばれる1以上の有機酸及び/又はそれらの塩若しくはエステルを好ましくは含みうる。なぜなら、これらの酸はさらに抗菌活性を増大し、一方で、例えば味、テクスチャー、色及び臭いの点でそれらが適用される製品の品質に悪影響を及ぼさないからである。
【0033】
さらに好ましい実施態様において、本発明の抗菌性組成物はさらに、グリセロールに基づく脂肪酸エステルを含む。該グリセロール脂肪酸エステル(グリセリドとも言われる)は、グリセロールのモノエステル、ジエステル若しくはトリエステル又はこれらの混合物を含みうる。該グリセリドは、グラム陰性菌に対する抗菌効果をさらに増すことが観察された。
【0034】
本発明はさらに、グラム陰性菌に対する抗菌剤として、本発明の抗菌性組成物を使用する方法に関する。本発明の抗菌性組成物は特にEscherichia coli、Salmonella種、Pseudomonas種及びCampylobacter種に対する非常に高い(相乗的な)活性を示すことがわかる。従って、脂肪酸とヒドロキシカルボン酸との脂肪酸エステル(及び/又はこのエステルの塩)は、グラム陰性菌に対して、及び特には、Escherichia coli、Salmonella種、Pseudomonas種及びCampylobacter種に対して、本発明に従う組成物(すなわちポリリジン、プロタミン、この塩及びこの任意の組み合わせを含む)において抗菌剤として有効に用いられうる。
【0035】
本発明の種々の記載された抗菌性組成物は、低い及び高いpH値の製品、非常に濃厚な及び希釈された製品、例えば工業的分野において(例えば産業的な使用又は家庭用の使用の為の洗剤において)、医薬の分野において(例えば装置の洗浄/殺菌の為の又は医薬組成物の調製又はそれらのパッケージングにおいて)、パーソナルケアにおいて(例えば化粧料、シャンプー、クリーム及びローションの製造において)、飼料産業において(例えば装置の洗浄の為、動物の飼料及び飲料製品の製造、貯蔵、取扱い及び調製において)及び食品及び飲料の産業において使用可能な製品に及ぶ、非常に広くさまざまな製品及び用途に適用可能である。
【0036】
従って、本発明は、食品製品若しくは飲料品製品、動物の為の飼料製品又は飲料製品、化粧料又はパーソナルケア製品、クリーニング製品又は洗剤の製造、取扱い、貯蔵及び調製において又はそれらの為に、グラム陰性菌、及び特にはEscherichia coli、Salmonella、Pseudomonas又はCampylobacterのファミリーからの菌、の存在、増殖又は活動の減少又は防止の為に、本発明の抗菌性組成物を使用する方法に関する。
【0037】
さらに、本発明は、脂肪酸とヒドロキシカルボン酸との脂肪酸エステル(及び/又はこのエステルの塩)、特にはオクタン酸(C8)、又はデカン酸(C10)、又はドデカン酸(C12)、又はテトラデカン酸(C14)、又はパルミチン酸(C16)、又はオレイン酸(C18:1)のモノ−及び/又はジ−ラクチレートエステル、並びにこれらのナトリウム、カリウム及びカルシウムの塩を、抗菌剤として、特にはグラム陰性菌に対する抗菌剤として、ポリリジン、プロタミン及び/又はこれらの任意の塩又は組み合わせを含む組成物において使用する方法に向けられる。
【0038】
本発明の抗菌性組成物は特に、食品製品及び飲料品製品の製造、取扱い、適用、貯蔵及び調製において、任意のグラム陰性菌細胞の存在、増殖及び/又は活動を減少し及び/又は防止する為に非常に適している。
【0039】
それは、食品及び飲料品製品、例えば飲料(例えば炭酸ソフトドリンク、果実/野菜に基づくジュース)、タンパク質高含有製品、例えば食肉製品及び魚製品、ドレッシング及びトッピング、すぐに食べられる(ready-to-eat)製品及びすぐに飲むことができる(ready-to-drink)製品、冷凍された製品及び高温処理された製品など、における適用にとって非常に適当である。
【0040】
該食品製品又は飲料品製品において適用されるときに、本発明の脂肪酸エステル、例えばラクチレートなど、は、通常は、該製品において、該製品の多くとも1重量%、好ましくは0.0001重量%〜1重量%、又は0.0001重量%〜0.1重量%さえ、及び最も好ましくは0.0001重量%〜0.01重量%の量で存在するであろう。
【0041】
ポリリジン及び/又はプロタミンは、食品製品又は飲料品製品において、該製品の最大で1重量%、好ましくは0.0001重量%〜1重量%、又は0.0001重量%〜0.1重量%さえ、より好ましくは0.0001重量%〜0.01重量%、及び最も好ましくは0.0001重量%〜0.001重量%の量で存在しうる。
【0042】
EDTA、オルガノホスフェート及びポリホスフェートは通常、食品製品又は飲料品製品中において、該製品の多くとも1重量%、好ましくは0.0001重量%〜1重量%の量で、存在するであろう。
【0043】
有機酸、例えば乳酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、グリコール酸、安息香酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、リンゴ酸及びアジピン酸など、が食品製品又は飲料品製品において、該製品の多くとも10重量%、好ましくは0.0001重量%〜10重量%、好ましくは0.0001重量%〜5重量%の量で存在しうる。
【0044】
上記言及された適用において、本発明の抗菌性組成物は、該最終的な食品製品又は飲料品製品において成分として存在する。
【0045】
該抗菌性組成物は、該製品の表面に又は該製品の内側に存在しうる。本発明は、食品製品又は飲料品製品におけるグラム陰性菌の存在、増殖又は活動を減少し又は防止する為の方法であって、該食品製品又は飲料品製品の製造、取扱い、貯蔵及び/又は調製の工程を含む、食品処理プロセスにおける1以上の種々の工程の間に該食品製品又は飲料品製品と、本発明の抗菌性組成物とを接触させることを含む上記方法に関する。それは、最終製品工程においてだけでなく、例えば食肉製品の製造における枝肉の殺菌の間若しくは当該殺菌において又は果実及び野菜に適用される洗浄工程においても、適用されうる。該抗菌性組成物は、例えばスプレー、リンス若しくは洗浄溶液として又は種々の食品製品が浸される溶液としてなど、種々の手段により施与され又は導入されうる。本発明の抗菌性組成物は、該食品製品及び/又は飲料品製品へと、注入により導入されてもよい。さらに、該抗菌性組成物は、該食品製品及び飲料品製品をパッケージングする前に、当該パッケージングと同時に、又は当該パッケージングの後に、容器を処理する為に用いられうる。
【0046】
適用の種類によって及び本発明の抗菌性組成物が最終製品中の活性成分として又は例えば洗浄溶液若しくはスプレー溶液の成分として用いられるかどうかによって、抗菌性組成物の成分は、当技術分野の当業者に明らかであろう濃度及び内部比で変わるであろう。
【0047】
該抗菌性組成物は、固体又は液体の形で利用可能でありうる。もし該抗菌性組成物が液体の形にあるならば、それは一般的に、水性組成物の形にあり、これは溶液又は分散物でありうる。本発明に従うそのような水性の抗菌性組成物は一般的に、該溶液の合計重量に基づき、0.0001重量%〜最大で40重量%、より好ましくは0.1重量%〜35重量%、及び最も好ましくは1〜25重量%の本発明の抗菌剤、例えばポリリジンなど、と、0.0001重量%〜最大で45重量%、より好ましくは1〜40重量%、及び最も好ましくは5〜35重量%の本発明に従う脂肪酸エステル、例えばラクチレートなど、とを含む。該抗菌性組成物は、0〜45重量%、より好ましくは0〜35重量%、の量のグリセリド、及びさらに0〜45重量%、及びより好ましくは0〜30重量%の有機酸を、さらに含みうる。
【0048】
本発明に従う抗菌性組成物の成分は、キャリアにより該液体の抗菌性組成物中に導入されうる。当技術分野の当業者は、どのタイプのキャリアが用いられうるかを知っている。種々のよく知られたキャリアのなかで、ポリエチレングリコール及び/又はラクテートがキャリアとして非常に良く働くことが分かった。該キャリアは、約50〜98重量%の濃度で存在しうる。さらに、当技術分野の当業者に既知の種々の乳化剤が添加されうる。好ましくは、乳化剤、例えばポリソルベート(例えばポリソルベート60又は80)及びレシチンが、100%脂肪酸誘導体、例えばグリセリド及び/又はラクチレートなど、に基づき、例えば0.1〜25%、より好ましくは1〜10%及び最も好ましくは2〜4%の濃度で適用される。
【0049】
もし該抗菌性組成物が固体の形にあるならば、それは一般に、適切な成分の粒子を含む粉の形にあるであろう。固体の形にある該抗菌性組成物は一般に、該粉の合計重量に基づき、0.0001重量%〜最大で40重量%、より好ましくは0.1重量%〜35重量%、及び最も好ましくは1〜25重量%の本発明の抗菌剤、例えばポリリジンなど、と、0.0001重量%〜最大で45重量%、より好ましくは1〜40重量%、及び最も好ましくは5〜35重量%の本発明に従う脂肪酸エステル誘導体、例えばラクチレートなど、とを含む。
【0050】
キャリアが使用されうる。非常に適当なキャリアはシリカ及び/又はマルトデキストリンであり、これらは最大で50〜98重量%の濃度で存在する。
【0051】
該抗菌性組成物は、0〜45重量%及びより好ましくは0〜35重量%の量でグリセリドと、さらに0〜45重量%及びより好ましくは0〜30重量%の有機酸とをさらに含みうる。
【0052】
以下の非限定的な実施例がさらに本発明を説明する。
【実施例1】
【0053】
以下の培養物が研究において用いられた:Escherichia coli 血清型O157:H7(ATCC 700728)、Salmonella typhimurium(ATCC 13311)及びSalmonella entiritidis(ATCC 13076)。全ての培養物は、10mlのブレインハートインフュージン培地を含むスクリューキャップチューブ中に毎日移された。培養物は、攪拌無しで、30℃でインキュベートされた。ブレインハートインフュージョン培地は、ラクチレート及びポリリジンの増加する量とともに調製された。カプリリック(C8)ラクチレートについての濃度範囲は、10の0.05%ステップで0から0.45%までのとおりであり、カプリック(C10)ラクチレートについての濃度範囲は、10の0.01%ステップで0から0.09%までのとおりであり、ラウリック(C12)ラクチレートについての濃度範囲は、10の0.001%ステップで0から0.009までのとおりであり、そしてテトラデカノイック(C14)ラクチレートについての濃度範囲は、10の0.001%ステップで0から0.009%までのとおりであった。ラクチレートはポリリジンと一緒にされた。該ポリリジンの濃度範囲は、10の0.0075%ステップで0から0.0675%までのとおりであった。これは、100の異なる培地を結果した。該培地のpHは、1NのHCl又は1NのNaOHにより6.1〜6.2に調節された。培地は、10mlの量で調製され、そしてろ過により滅菌された。300μlのそれぞれの培地が、滅菌したBioscreen(商標)ハニカム100ウェルプレートのパネルに移された。ウェルプレートが、ブレインハートインフュージョン培地中で一晩増殖された培養物の5μlにより、滅菌した5μlのリピーティングディスペンサーを用いて植菌された。増殖速度は、垂直測光(vertical photometry)により濁度の発達を動的に測定するBioscreen(商標)Cにより決定された。該プレートは37℃で16〜24時間インキュベートされ、該培養物の光学密度は、ワイドバンドフィルターを用いて420−580nmで30分毎に測定された。Bioscreen(商標)は、設定時間間隔で、該培養物の光学密度を測定する。これらのデータから、Bioscreen(商標)は、最大の比増殖速度を計算する。さらなるデータ処理の目的は、2つのアミノ酸が互いに独立して働くかどうか又はそれらがそれらの抑制作用において互いに刺激するか(相乗作用)若しくは抑制効果を互いに打ち消すか(拮抗作用)どうかを確認することである。或る化合物が生物に対して効果を有さない場合、この生物の比増殖速度(μ)は、例えばモノーの方程式により、増殖限定性基質濃度(s)の関数(f)として表されうる、これはμ=μmax・s/(K+s)と読め、ここでμmaxは、最大比増殖速度を表し、sは培地中の増殖限定性基質の不変濃度(standing concentration)を表し、そしてKはμ=0.5μmaxであるところの基質濃度を表す。しかしながら、インヒビターPの存在が細胞増殖に影響する場合、μについての関数fは修正されなければならない、すなわちμ=f(s,p)、ここでpはインヒビターPの濃度を表す。バクテリアの増殖抑制速度論のたくさんの研究が、多くのインヒビターが非競合的インヒビターとして振舞うことを示している。これは、最大比増殖速度(μmax)の値だけが影響され、そして、親和性(K)は影響されないことを暗示する。それ故に、インヒビターの存在下における比増殖速度は、

、ここでμiはインヒビターPの存在下における最大比増殖速度である、として記載されうる。μiとμmaxとの間の関係及びインヒビターPの濃度は、ロジスティック用量応答方程式を用いて記載され、これは

と読める(Jungbauer, A. (2001). The logistic dose response function: a robust fitting function for transition phenomena in life sciences. J. Clinical Ligand Assay 24: 270 - 274)。この方程式において、pはインヒビターPの濃度を表し、そして、p0.5は、μi=0.5μmaxであるところのPの濃度を表す;μmaxは、インヒビターPの不在下における比増殖速度である最大比増殖速度であり、bは次元の無い量であり、これはμiとpとの間の関係を決定する。モノー方程式及びロジスティック用量応答方程式とを併せると、

と記載されることができる。sが通常、Ksよりも何倍も大きいバッチカルチャーにおいて、この方程式は

に変形される。同じ条件下で増殖された異なる生物を比較する場合、又は異なる条件下で増殖された同じ生物を比較する場合、比較の基準として絶対的増殖速度よりもむしろ、相対的増殖速度を用いることがより意味がある。相対的増殖速度(O)は、最大増殖速度(μmax)に対する増殖速度(μ)の比であり、すなわちO=μ/μmaxである。μ及びμmaxが(時間)−1の次元を有する一方で、それらの比Oは次元無し、すなわち純粋な数であると見られることができる。同様に、我々は、相対的インヒビター濃度εをp/p0.5として定義することができる。該変形されたモノー及びロジスティック用量応答方程式は今、

として記載されうる。2つのインヒビターX及びYについて、例えばOについての以下の2つの式が定義されうる:

。O及びOは、標的生物の増殖速度に対するX又はYのいずれかの抑制効果を試験することにより実験的に評価されうる。O及びOについての該評価された関数を知ることにより、理論的な独立の効果がOx・として定義される。該相対的増殖速度に対するX及びYの組み合わせの実験的に観察された効果はOxyとして定義される。X及びYが或る生物に対して互いに独立に作用するという仮説は、数学的に

に言い換えられる。この仮説の棄却は、X及びYの組み合わせられた効果が、独立の効果でなく、相乗的又は拮抗的であることをほのめかす。インヒビターX及びYが該標的生物に対して相乗的に作用する場合、

(しかし>0)である。インヒビターX及びYの組み合わされた効果が拮抗的である場合、

である。
【0054】
相乗作用、独立の効果、及び拮抗作用は、Oxy対Ox・のプロットにおいて可視化されうる。これは図1〜8において例示され、ここでSalmonella typhimurium(ATCC 13311)及びSalmonella entiritidis(ATCC 13076)についてのOCxL pLys(ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下において実験的に観察された相対的増殖速度)対OCxL・pLys(ラクチレート及びポリリジンの混合物の存在下において予測された相対的増殖速度)の種々のプロットが与えられ、ラクチレートとポリリジンとの間の、抑制における相乗作用を示す。これらのグラフ中の実線は、該実験的に観察された相対的増殖速度(OCxL pLys)が該予測された相対的増殖速度(OCxL・OpLys)に等しく且つ該ラクチレート及びポリリジンが独立的なインヒビターとして作用するところの線を表す。
【0055】
図1〜8は、Oxy/Ox・<1及び>0である(実線の下のドットにより表される)ので、試験された種々の組み合わせにおけるポリリジン及びラクチレートが、該標的生物に対して相乗的に作用することを実証する。
【0056】
表1に、相乗作用のさらなる例、例えば0.0225%(w/w)ポリリジン及び0.45%(w/w)C8−ラクチレートの間の、又は0.0225%(w/w)ポリリジン及び0.09%(w/w)C10−ラクチレートの間の、又は0.0225%(w/w)ポリリジン及び0.009%C12−ラクチレートの間の、又は0.0225(w/w)ポリリジン及び0.009%C14−ラクチレートの間の相乗作用など、が与えられる。
【0057】
該表から観察されうるとおり、0.0225%(w/w)ポリリジン及び0.45%(w/w)C8−ラクチレート、又は0.0225%(w/w)ポリリジン及び0.09%(w/w)C10−ラクチレート、又は0.0225%(w/w)ポリリジン及び0.009%C12−ラクチレート、又は0.0225(w/w)ポリリジン及び0.009%C14−ラクチレートを含む培地中における、Escherichia coli(ATCC 8739)、Escherichia coli血清型O157:H7(ATCC 700728)、Salmonella typhimurium(ATCC 13311)又はSalmonella entiritidis(ATCC 13076)の相対的増殖速度は、ポリリジン又は該ラクチレートエステルの1つを含む培地中におけるこれらの生物の相対的増殖速度に基づき予測されうるものよりも低い。
【0058】
【表1】


【実施例2】
【0059】
汚染されたチキンフィレ及び乳における抗微生物効果
【0060】
材料及び方法
【0061】
培養及び培養条件
Salmonella Typhimurium ATCC 13311及びEscherichia coli O157:H7 ATCC 700728が、ブレインハートインフュージョン培地を含む滅菌されたスクリューキャップチューブ中で、18〜24時間、30℃で増殖された。
【0062】
チキンフィレの調製
チキンフィレ(150〜200g)が切り取られ、真空パックされ、そして4〜7℃で保蔵された。フィレは次にガンマ線照射により滅菌された(平均放射線量:12キログレイ)。
【0063】
Salmonella Typhimuriumによるチキンフィレの接種
ブレインハートインフュージョン培地中のSalmonella Typhimuriumの一晩培養物の1mlが、滅菌された0.8%(w/v)NaCl及び0.1%(w/v)ペプトンにより1000倍に希釈された。この希釈された培養物の0.5mlが、該フィレの一面に移された。該接種材料が、該フィレの全部の表面に穏やかにこすりつけることにより分布された。これが、該フィレの他方の面についても繰り返された。接種は6℃で実施された。接種されたフィレは、6℃で60〜120分間休まされて、細胞の付着を許した。
【0064】
チキンフィレの汚染除去
チキンフィレは、適切な処方を有する1lの溶液中に手短に浸され且つ完全に沈められ、そして次に、適切な処方の5mlを含む、400mlのBagfilter(商標)ラテラルフィルターバッグ(Interscience、St Nom、フランス)に移された。バッグは真空シールされ、そして、さらなる分析まで、最大で7日間、12℃でインキュベートされた。時間ゼロの試料が、浸漬後30分以内にプレートされた。
【0065】
チキンフィレの微生物分析
チキンフィレ上に生存しているSalmonella Typhimuriumが以下のとおりに計数された:封されたバッグが開けられ、そしてこれに、合計重量の2倍の滅菌された希釈流体(8.5%(w/v)NaCl及び0.1%(w/v)細菌学的ペプトン(bacteriological peptone))が添加された。同じフィレが、1分間、Bagmixer(商標)400パドルラボブレンダー(Interscience、St Nom、フランス)中で、ホモジナイズされた。50μlのホモジネート又はその希釈物が、Eddyjetタイプ1.23スパイラルプレーター(IUL Instruments、バルセロナ、スペイン)を用いて、セフスロジン、ノボビオシンの補充(SR0194)(Oxoid、Basingstoke、英国)を有する同じSalmonella発色アガープレート(CM1007)上にプレートされた。プレートは、30℃で24〜48時間インキュベートされ、そして次に計数された。Salmonellaの数は、1mlのホモジネート当たりのlog10コロニー形成ユニットとして表された。
【0066】
抗微生物性処方物により処理された乳の接種
滅菌された低脂肪乳が地域のスーパーマーケットから購入され、そして100mlの量が、一連の滅菌スクリューキャップボトルに移された。ε−ポリリジン、オクタノイルラクチレートのナトリウム塩(C8−ラクチレート)及びデカノイルラクチレートのナトリウム塩(C10−ラクチレート)が、表2に示されるとおりの濃度に添加された。種々の乳調製物が、Escherichia coli O157:H7の一晩培養物により接種された。開始時の細胞密度はlog10 2.5〜3.0であった。
【0067】
乳培養物の微生物分析
生存しているEscherichia coli O157:H7が以下のとおりに計数された:乳培養物又はその希釈物の同じ50μl試料が、Eddyjetタイプ1.23スパイラルプレーター(IUL Instruments、バルセロナ、スペイン)を用いて、同じViolet Red Bile Glucose(VRBG)アガープレート(CM0485 Oxoid、Basingstoke、英国)上にプレートされた。プレートは、24〜48時間、30℃でインキュベートされ、そして次に計数された。Escherichia coliの数は、1mlのホモジネート当たりのlog10コロニー形成ユニットとして表された。
【0068】
抗微生物性処方物の調製
研究された処方物の組成が表2に示される。ε−ポリリジン及びラクチレートが脱塩水中に溶解され、そして20分間、120℃で滅菌された。
【0069】
【表2】

【0070】
化学物質
ε−ポリリジンは、Chisso America Inc(ニューヨーク、米国)から購入された。オクタノイルラクチレートのナトリウム塩(C8−ラクチレート)及びデカノイルラクチレートのナトリウム塩(C10 ラクチレート)は、Caravan Ingredients(Lenexa、カンザス、USA)から購入された。
【0071】
チキンフィレの汚染除去の結果
チキンフィレ上に存在するSalmonella Typhimurium ATCC 13311の、ε−ポリリジンと中鎖脂肪酸エステルの乳酸エステルとの組み合わせへの曝露は、約90%だけ、生存細胞数のほぼ即時の減少を結果した(表3)。12℃での1日後、数における減少は、4log10より大きい。該試験された組み合わせによる増殖抑制は永続的でない;4日後に数は増加したが、接種後7日後で該処方物と該ブランク処方物との間の差異は2log10以上であり、そしてすなわち、本発明の組成物は抗微生物活性をなお発揮する。
【0072】
表3
12℃でのチキンフィレ上のSalmonella Typhimuriumに対する、ε−ポリリジン(ε−PL)と中鎖脂肪酸エステルの乳酸エステルとの組み合わせの効果;log10コロニー形成ユニット(CFU)/mlで表される
【表3】

【0073】
個々には、該ラクチレートは、表4において観察されうるとおり、ε−ポリリジンの不在下において、殺傷する効果又は増殖を抑制する効果を何も示さなかった。ε−ポリリジンそれ自体は細胞数を減少するが、その効果は、脂肪酸誘導体の1つと組み合わされた場合よりも小さかった。これは特に、インキュベーションの1日後に明らかであった。該組み合わせについての数の減少は4log10から5log10に及んだが(表3)、単独添加としてのε−ポリリジンについての減少は2log10だけであった(表4)。これは、ε−ポリリジンと該脂肪酸誘導体との間の抑制における相乗作用の形があることを示唆する。これは、これらの組み合わせの効果が培養物中において研究されたin vitro研究により確認される(実験1)。
【0074】
表4
12℃でのチキンフィレ上のSalmonella Typhimuriumに対する、ε−ポリリジン並びに中鎖脂肪酸エステルのC8及びC10乳酸エステルの個々の効果;log10コロニー形成ユニット(CFU)/mlで表される
【表4】

【0075】
乳中のEscherichia coli O157:H7の抑制の結果
ε−ポリリジンと中鎖脂肪酸エステルの乳酸エステルとの組み合わせによる強力な増殖抑制も、無脂肪乳において増殖するEscherichia coli O157:H7について観察された(表5)。
【0076】
表5
12℃での乳中におけるEscherichia coli O157:H7に対する、ε−ポリリジン(ε−PL)と中鎖脂肪酸エステルの乳酸エステルとの組み合わせの効果;log10コロニー形成ユニット(CFU)/mlで表される(ND:データ無し)
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.脂肪酸とヒドロキシカルボン酸又はこの塩若しくはエステルとの脂肪酸エステルと、
b.ポリリジン及びその塩、プロタミン及びその塩、並びにこれらの混合物から選ばれる抗菌剤
との組み合わせを含む抗菌性組成物。
【請求項2】
該脂肪酸が4〜18の炭素原子を含む、請求項1の抗菌性組成物。
【請求項3】
該ヒドロキシカルボン酸が、ヒドロキシカルボン酸の1以上のモノマーを含みうる、請求項1又は2の抗菌性組成物。
【請求項4】
該ヒドロキシカルボン酸が1〜6の炭素原子を含みうる、請求項1、2又は3の抗菌性組成物。
【請求項5】
該ヒドロキシカルボン酸が、乳酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸及びこれらの混合物から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項の抗菌性組成物。
【請求項6】
該脂肪酸エステルが、以下の式
【化3】

により表されるラクチレート又はラクチレートの混合物であって、
RCOは4〜18の炭素原子を有する脂肪酸のアシル基であり、Yは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、鉄、アンモニウム又は、1以上のC1〜C3アルキル又はヒドロキシアルキル基を有する置換アンモニウムから選ばれるカチオンであり;nは、該カチオンの価数を表し;mは1からnの整数であり、xは1〜6の数であり、且つx、m及びnが平均の数を表す、請求項1〜5のいずれか1項の抗菌性組成物。
【請求項7】
xが1〜3の値を有し且つ、該ラクチレートが、遊離形にある又は塩としての、オクタノイルラクチレート、デカノイルラクチレート、ドデカノイルラクチレート、テトラデカノイル−ラクチレート、オレイック−ラクチレート、及びこれらの混合物から選ばれる、請求項6の抗菌性組成物。
【請求項8】
ポリリジンがε−ポリリジンである、請求項1〜7のいずれか1項の抗菌性組成物。
【請求項9】
金属キレート剤、有機酸又はこの塩もしくはエステル、グリセロールに基づく脂肪酸エステル又はこれらの混合物から選ばれる1以上の添加物をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項の抗菌性組成物。
【請求項10】
該有機酸が、乳酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、グルコン酸、プロピオン酸、カプロン酸及びフィチン酸から選ばれる、請求項9の抗菌性組成物。
【請求項11】
該グリセロールの脂肪酸エステルが、グリセロールのモノ−若しくはジ−エステル又はこれらの混合物である、請求項9の抗菌性組成物。
【請求項12】
該組成物が液体の形又は固体の形にあり、且つ、該組成物が0.0001〜40重量%の該抗菌剤、0.0001〜45重量%の、脂肪酸とヒドロキシカルボン酸又はこの塩若しくはエステルとの該脂肪酸エステル、0〜45重量%の、グリセロールに基づく脂肪酸エステル、0〜45重量%の有機酸又はこの塩若しくはエステル、及び0〜98重量%のキャリアを含む、請求項1〜11のいずれか1項の抗菌性組成物。
【請求項13】
製品又は表面の中の又は上のグラム陰性菌の存在、増殖又は活動の減少又は防止の為の方法であって、製品又は表面の中の又は上の該バクテリアを、請求項1〜12のいずれか1項の抗菌性組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項14】
該菌が、Escherichia coli、Salmonella、Pseudomonas又はCampylobacterのファミリーからの菌である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項の抗菌性組成物を含む、食品製品若しくは飲料製品、化粧料製品、パーソナルケア製品、クリーニング製品、洗剤又は動物の為の飼料製品若しくは飲料製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−538630(P2010−538630A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524525(P2010−524525)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062340
【国際公開番号】WO2009/037269
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(306003419)ピュラック バイオケム ビー.ブイ. (40)
【Fターム(参考)】