説明

ヒュージング用端子構造

【課題】電線の潰し過ぎを防止して、被覆電線の断線を未然に防止することのできるヒュージング用端子構造を提供すること。
【解決手段】被覆電線とその電線と端子とを電気的に導通するために加工電極で圧接しつつ電流を流して固相接合するヒュージング用端子構造であって、前記端子側にヒュージング加工時の電流を分流させるための第一の突起と、前記第一の突起と被覆電線との間に位置し、第一の突起に比して高さ寸法の低い第二の突起を備えたので、電線の潰し過ぎを招くことなく、電流と端子との電気的接続性を安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エナメル線等の被膜加工の施された電線と端子とを被膜を剥離するとともに、固相接合である熱カシメによって電気的に導通させるヒュージング加工に適したヒュージング用端子構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にヒュージング加工は、被覆電線を端子に物理的に係止した後、上下を加工電極で挟んで電流を流すと、電極先端と端子が発熱し、端子と接触している被覆電線の温度も上昇する。すると、電線を被覆していた被膜が剥離し端子と導通し、更に許容通電量が大きくなった時点で電流を増加して、電線と端子とを熱変形することで熱カシメします。
図3は、従来のヒュージング用端子構造によるヒュージング加工の一例を示す説明図である。図3において、略V字状に折曲された端子1で被覆電線2を狭持し、ヒュージング加工用電極3、4で上下から押圧するとともに、通電します。図3(a)に示すように通電による発熱で電線2の被膜が剥離し、更に、図3(b)に示すように電流を増加すると、電流I1と分流I2が流れ、電線2と端子1とを熱カシメします。
【0003】
しかし、ヒュージング加工においては、電流や加工圧力を適切に管理する必要がある。また、加工電極は、常に一定の発生量を保持するように研磨や交換が不可欠であり、端子の形状や加工電極との接触が不安定等の理由によって端子が電流に耐えられず、端子がスパークしてしまい、接合不能になることが存在した。
また、図4に示すように電極表面粗さが大きく、接触抵抗が増大し、過大な熱が発生して、被覆電線が潰れ過ぎる場合が存在した。
そこで、図5に示すような端子形状が提案されていた。
【0004】
図5(a)は、端子5の折り返した先端5aを更に対向する端子側に折曲して構成した構造である。
このように構成した場合、折曲した先端5aが分流路を形成して、端子がスパークすることを防止し、ヒュージング加工を安定させることができる。
【0005】
図5(b)は、端子6の折り返した先端6aの近傍で対向する端子側に突起6bを形成した構造である。
このように構成した場合、突起6bが分流路を形成して、端子がスパークすることを防止し、ヒュージング加工を安定させることができる。
図5(c)は、端子7の折り返した先端近傍に対向する基端側に突起7aを形成した構造である。
このように構成した場合、突起7aが分流路を形成して、端子がスパークすることを防止し、ヒュージング加工を安定させることができる。
また、特許文献1にも端子本体部に薄肉部を形成し、折曲した際に肉厚部同士が接触し、薄肉部に挟まれた被覆電線が潰れ過ぎないようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−348785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような構成の従来のヒュージング用端子構造において分流路を形成しても、加工電極の表面粗さの大小による接触抵抗の差異が生じ、発生熱量が過大になり押圧力が均一であっても、被覆電線を潰し過ぎてしまう場合が存在した。このため、被覆電線を潰し過ぎた製品が市場に流通した場合、その後の温度ストレスによって被覆電線が破断して製品性能の低下を招来する虞れが存在した。
【0008】
この発明は、上記に鑑み提案されたもので、端子側にヒュージング加工時の電流を分流させるための第一の突起と、前記第一の突起と被覆電線との間に位置し、第一の突起に比して高さ寸法の低い第二の突起を備えたので、量産工程中に突発的な過大発熱が発生しても被覆電線の潰し過ぎを防止し、接続の信頼性を向上して品質の安定を図ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為に、被覆電線とその電線と端子とを電気的に導通するために加工電極で圧接しつつ電流を流して固相接合するヒュージング用端子構造であって、前記端子側にヒュージング加工時の電流を分流させるための第一の突起と、前記第一の突起と被覆電線との間に位置し、第一の突起に比して高さ寸法の低い第二の突起を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明において、前記第二の突起の高さ寸法は、前記被覆電線の外径の60%程度であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記端子は、一側端を略V字状に折曲するとともに、折曲端から被覆電線、第二の突起、第一の突起の順に狭持配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明は上記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0013】
本発明では、被覆電線とその電線と端子とを電気的に導通するために加工電極で圧接しつつ電流を流して固相接合するヒュージング用端子構造であって、前記端子側にヒュージング加工時の電流を分流させるための第一の突起と、前記第一の突起と被覆電線との間に位置し、第一の突起に比して高さ寸法の低い第二の突起を備えたので、量産工程中に突発的な過大発熱が発生しても被覆電線の潰し過ぎを防止し、品質の安定を図ることができる。
【0014】
また、本発明において前記第二の突起の高さ寸法は、前記被覆電線の外径の60%程度であるので、端子の板厚や形状に拘わらず被覆電線の潰し過ぎを防止することができる。したがって、端子と被覆電線の接続信頼性を向上できる。
【0015】
また、本発明において前記端子は、一側端を略V字状に折曲するとともに、折曲端から被覆電線、第二の突起、第一の突起の順に狭持配置したので、量産工程中に突発的な過大発熱が発生しても被覆電線の潰し過ぎを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係るヒュージング用端子構造の一例を示す側断面図である。
【図2】図2は、同ヒュージング用端子構造によるヒュージング加工状態を示す説明図である。
【図3】図3(a)(b)は、従来のヒュージング用端子構造によるヒュージング加工の一例を示す説明図である。
【図4】図4は、従来のヒュージング用端子構造によるヒュージング加工状態を示す要部側断面である。
【図5】図5(a)〜(c)は、従来の他のヒュージング用端子構造の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ヒュージング用端子構造において、端子側にヒュージング加工時の電流を分流させるための第一の突起と、前記第一の突起と被覆電線との間に位置し、第一の突起に比して高さ寸法の低い第二の突起を備えたので、量産工程中に突発的な過大発熱が発生しても被覆電線の潰し過ぎを防止し、接続の信頼性を向上して品質の安定を図ることができる。
【実施例】
【0018】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明に係るヒュージング用端子構造の一例を示す側断面図、図2は本願発明のヒュージング用端子構造によるヒュージング加工状態を示す説明図である。ここで、ヒュージング用端子構造10は、被覆電線11とその電線と端子12とを電気的に導通するために加工電極13、14で圧接しつつ電流を流して固相接合するものであって、端子12側にヒュージング加工時の電流を分流させるための第一の突起15と、第一の突起15と被覆電線11との間に位置し、第一の突起15に比して高さ寸法の低い第二の突起16を備えている。
【0019】
端子12は、板状の長尺材の一側端を略V字状に折曲するとともに、折曲端12a側から被覆電線11、第二の突起16、第一の突起15の順に配置し、折曲した端子12bで挟み込むように構成する。第一の突起15、第二の突起16は、それぞれ端子材の表面から突出形成されており、例えば、半球状をしている。また、第二の突起16の高さ寸法Hは、端子12の板厚や形状にも左右されるが、被覆電線11の外径Dの60%程度とする。
【0020】
以上のよう構成されたヒュージング用端子構造は、図1に示すように加工電極13、14の間に挟み、被覆剥離工程を行う。被覆剥離工程では、被覆電線11を端子12と折曲した端子12bで挟み込に、加工電極13、14で加圧しながら剥離電流を印加する。すると、被覆材は、熱可塑性であるため熱と加圧により電線から剥離して、端子12と電線11が導通状態となる。
【0021】
次に、端子12のみでなく、端子−電線−端子の通電路により許容通電量の大きくなった時点で、通電量を増し熱カシメ工程を実施する。熱カシメ工程では、通電電流を増して発熱量を増加して、電線11と端子12とを熱カシメする。この際、第一の突起15と電線11との間に位置し、第一の突起15に比して高さ寸法の低い第二の突起16を備えたので、熱カシメ工程中に突発的な過剰電流が流れても電線11の潰し過ぎを防止し、接続の信頼性を向上して品質の安定を図ることができる。
【0022】
このように本願発明のヒュージング用端子構造によれば、設備や加工電極のバラツキ等に起因する過剰発熱が生じても、電線の潰しすぎを未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 ヒュージング用端子構造
11 被覆電線
12 端子
12a 折曲端
12b 折曲した端子
13 加工電極
14 加工電極
15 第一の突起
16 第二の突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線とその電線と端子とを電気的に導通するために加工電極で圧接しつつ電流を流して固相接合するヒュージング用端子構造であって、
前記端子側にヒュージング加工時の電流を分流させるための第一の突起と、
前記第一の突起と被覆電線との間に位置し、
第一の突起に比して高さ寸法の低い第二の突起を備えたことを特徴とするヒュージング用端子構造。
【請求項2】
前記第二の突起の高さ寸法は、前記被覆電線の外径の60%程度であることを特徴とする請求項1に記載のヒュージング用端子構造。
【請求項3】
前記端子は、一側端を略V字状に折曲するとともに、折曲端から被覆電線、第二の突起、第一の突起の順に狭持配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のヒュージング用端子構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−119063(P2012−119063A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264803(P2010−264803)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000174426)阪神エレクトリック株式会社 (291)
【Fターム(参考)】