説明

ヒューズユニット及びそれを用いた電池モジュール、並びにヒューズユニットの製造方法

【課題】簡単に製造することができ、かつ、異金属との抵抗溶接も可能な、小型で安価なヒューズユニットを提供する。
【解決手段】第1の金属層11及び開口部20を有する第2の金属層12が積層されたクラッド材10を圧延して、開口部20内に第1の金属層11の一部を押し出すことによって、開口部20内に、第1の金属層11aを埋設した後、クラッド材10を所定のパターンで打ち抜く。開口部20内の第1の領域31を打ち抜くことによって、第1の金属層11のみで構成されたヒューズ部41が形成され、開口部20外であって、第1の領域31と接続する第2の領域32を打ち抜くことによって、ヒューズ部41に連結し、第1の金属層11及び第2の金属層12で構成された溶接部42が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズ部と該ヒューズ部の溶接点となる溶接部とを備えたヒューズユニット、及びヒューズユニットを用いた電池モジュール、並びにヒューズユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流ヒューズ(以下、単に、「ヒューズ」という。)は、各種の電子機器や配線等に広く用いられ、規定値以上の電流が流れると溶断して、電子機器等への電流を遮断することによって、電子機器等の安全を図っている。
【0003】
例えば、複数の電池を配列して構成された電池モジュールにおいて、電池モジュールを構成する電池が、異常時に安全弁が作動して高温ガスが電池外に放出された場合、周囲の電池が高温ガスに曝されると、正常な電池まで連鎖的な劣化を引き起こす畏れがある。また、複数の電池を並列接続した電池モジュールにおいては、電池モジュールを構成する電池が内部短絡等で、電池としての機能を果たせなくなると、当該電池が抵抗体となり、電池モジュール全体の性能を低下させてしまう畏れがある。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1には、図15に示したように、複数の電池100が、接続体110、120によって並列接続された電池モジュールにおいて、各電池100の正極150及び負極160を、それぞれヒューズ130、140を介して接続体110、120に接続する技術が記載されている。これにより、一つの電池100に内部短絡等が発生した場合、この電池100に接続されたヒューズ130、140が過電流により溶断されることにより、内部短絡等が発生した電池100を、他の電池100から電気的に分離することができる。
【0005】
また、このようなヒューズの構成として、特許文献2には、図16に示したように、ヒューズ金属層200の両端に、端子部210、220を形成した技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7671565号明細書
【特許文献2】特開2010−3528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術では、ヒューズ130、140を、それぞれ、接続体110、120及び電池100の電極端子150、160にワイヤーボンディングして接合する必要がある。そのため、製造工程が複雑になり、製造コストの上昇を招く。また、ヒューズ130、140をアルミニウムで構成した場合、電池100の電極端子150、160は、鉄等の異種金属で構成されているため、ヒューズ130、140を電極端子150、160に抵抗溶接で接合することは困難である。そのため、レーザ溶接や超音波溶接等の方法で接合することになり、製造コストの上昇を招く。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術では、ヒューズ金属層200の両面に銅層を形成した後、銅層をエッチングレジスト層を用いてエッチングすることによって、ヒューズ金属層200の両面に端子部210、220が形成される。このエッチングは、銅のみをエッチングし、ヒューズ金属層200をエッチングしない、いわゆる選択エッチングが好ましい。しかしながら、ヒューズ金属層200の材料によっては、選択性の高いエッチング液を得ることが難しい場合がある。また、仮に、選択性の高いエッチング液でエッチングしても、ヒューズ金属層200の表面はエッチング液に曝されるため、ヒューズ金属層200の表面が荒れたり、場合によっては、表面が変質したりするおそれがあり、その結果、ヒューズ特性のバラツキを招く。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その主な目的は、簡単に製造することができ、かつ、異金属との抵抗溶接も可能な、小型で安価なヒューズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るヒューズユニットの製造方法は、ヒューズ部及び該ヒューズ部の溶接点となる溶接部を備えたヒューズユニットの製造方法であって、
第1の金属層及び開口部を有する第2の金属層が積層されたクラッド材を用意する工程(a)と、
クラッド材を圧延して、開口部内に第1の金属層の一部を押し出すことによって、開口部内に、第1の金属層を埋設する工程(b)と、
クラッド材を打ち抜く工程(c)と
を有し、
工程(c)において、
開口部内の第1の領域を打ち抜くことによって、第1の金属層のみで構成されたヒューズ部が形成され、
開口部外であって、第1の領域と接続する第2の領域を打ち抜くことによって、ヒューズ部に連結し、第1の金属層及び第2の金属層で構成された溶接部が形成されることを特徴とする。
【0011】
ある好適な実施形態において、上記工程(b)において、開口部内に埋設された第1の金属層の厚さは、第2の金属層の厚さと、略同一である。また、第1の金属層は、第2の金属層よりも、融点が低く、かつ展延性の高い材料からなる。
【0012】
ある好適な実施形態において、上記開口部は、複数個形成されており、
上記工程(c)において、
各開口部内の第1の領域をそれぞれ打ち抜くことによって、第1の金属層のみで構成されたヒューズ部が複数個形成され、
各開口部外であって、第1の領域と接続する第2の領域をそれぞれ打ち抜くことによって、各ヒューズ部の一端にそれぞれ連結し、第1の金属層及び第2の金属層で構成された溶接部が複数個形成され、
各開口部外であって、第1の領域と接続する第3の領域を打ち抜くことによって、各ヒューズ部の他端に連結し、第1の金属層及び第2の金属層で構成されたリンク部が形成されている。
【0013】
本発明に係るヒューズユニットは、第1の金属層及び第2の金属層からなるクラッド材で構成されたヒューズユニットであって、第1の金属層のみで構成されたヒューズ部と、ヒューズ部に連結し、第1の金属層及び第2の金属層で構成された溶接部とを有し、ヒューズ部における第1の金属層の厚さは、溶接部における第1の金属層及び第2の金属層の積層厚みと、略同一であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る他のヒューズユニットは、第1の金属層及び第2の金属層からなるクラッド材で構成されたヒューズユニットであって、第1の金属層のみで構成された複数のヒューズ部と、各ヒューズ部の一端にそれぞれ連結し、第1の金属層及び第2の金属層で構成された複数の溶接部と、各ヒューズ部の他端に連結し、第1の金属層及び第2の金属層で構成されたリンク部とを有し、ヒューズ部における第1の金属層の厚さは、溶接部及びリンク部における第1の金属層及び第2の金属層の積層厚みと、略同一であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電池モジュールは、複数の電池が配列されて構成された電池モジュールであって、第1の金属層及び第2の金属層からなるクラッド材で構成されたヒューズユニットを備え、ヒューズユニットは、第1の金属層のみで構成された複数のヒューズ部と、各ヒューズ部の一端にそれぞれ連結し、第1の金属層及び第2の金属層で構成された複数の溶接部と、各ヒューズ部の他端に連結し、第1の金属層及び第2の金属層で構成されたリンク部とを有し、ヒューズ部における第1の金属層の厚さは、溶接部及びリンク部における第1の金属層及び第2の金属層の積層厚みと、略同一であり、各溶接部は、各電池の電極部に冶金的接合によって、それぞれ接続されているとともに、リンク部によって、各電池の電極部が並列接続されていることを特徴とする。なお、ここでいう冶金的接合とは、抵抗溶接の他、超音波溶接やレーザ溶接等を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単に製造することができ、かつ、異金属との抵抗溶接が可能な、小型で安価なヒューズユニットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)、(b)は、アルミニウム層及びニッケル層のクラッド材の形成方法を説明した断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態におけるヒューズユニットの製造方法を示した平面図である。
【図3】(a)、(b)は、図2(a)のIIIa−IIIa線に沿った断面図である。
【図4】図3(b)の矢印で示した領域4Aを拡大した拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるヒューズユニットの構成を示した斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態における電池モジュールの分解斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態におけるヒューズユニットを備えた電池モジュールの底面図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明の他の実施形態におけるヒューズユニットの製造方法を示した断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態におけるヒューズユニットの斜視図である。
【図10】クラッド材を打ち抜くパターンの変形例を示した図である。
【図11】(a)〜(c)は、打ち抜き後のヒューズユニットの構成を示した平面図である。
【図12】(a)〜(e)は、ヒューズ部の形状の変形例を示した平面図である。
【図13】(a)〜(d)は、ヒューズ部の形状の他の変形例を示した平面図である。
【図14】(a)〜(d)は、ヒューズ部の形状の他の変形例を示した平面図である。
【図15】従来のヒューズリンクを備えた電池モジュールの断面図である。
【図16】従来のヒューズの構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明を想到するに至った経緯を説明する。
【0019】
本件出願人は、PCT/JP2011/002725の出願明細書に、複数の電池を配列した電池モジュールにおいて、通常動作時は、一列に配列された電池を並列接続する機能を維持し、内部短絡時は、ヒューズとして機能するヒューズリンクを開示している。具体的には、複数の電池をアルミニウム細線で接続し、内部短絡時に、内部短絡した電池に接続されたアルミニウム細線を、短絡電流によるジュール熱で溶断するようにしたものである。
【0020】
一様な断面積(A)で長さ(L)のアルミニウム細線に、短絡電流(I)が流れたときに、時間t後のジュール熱(E)による温度上昇ΔTは、以下の式(1)から算出される。
【0021】
ΔT=E/(Cp・M)
=(I・R・t)/(Cp・ρ・A・L)
=(I・r・L/A・t)/(Cp・ρ・A・L)
=(I・r・t)/(Cp・ρ・A) ・・・式(1)
ここで、Cpは比熱容量、Mは質量、Rは抵抗、ρは密度、rは電気抵抗率である。ここで、放熱が無視できるほど小さければ、温度上昇ΔTは、アルミニウム細線の長さ(L)に依存しないことが分かる。
【0022】
例えば、アルミニウム細線の断面積が0.12mm(直径が約0.4mm)の場合、内部短絡時を想定した電流(I=100A)での1秒後の温度上昇ΔTは、式(1)から、約7,500℃となる。従って、アルミニウムの融点は660℃であるため、内部短絡が発生すると、1秒以内にアルミニウム細線は溶断すると考えられる。
【0023】
一方、アルミニウム細線の長さ(L)を20mmとすると、抵抗(R)は4mΩとなるが、通常動作時に並列接続したアルミニウム細線に流れる電流は、0.1A以下と小さいため、電圧降下は0.4mV程度となる。従って、電池モジュールの特性にほとんど影響を与えることはない。
【0024】
このように、複数の電池を、所定の断面積を有するアルミニウム細線で並列接続することによって、通常動作時は、一列に配列された電池を並列接続する機能を維持し、内部短絡や外部短絡時は、ヒューズとして機能することができる。これにより、非常に簡単な構成でヒューズリンクを実現することができる。
【0025】
しかしながら、このようなアルミニウム細線は、断面積が小さい(典型的には、0.3mm以下)ため、多数の電池を並列接続すると、アルミニウム細線が長くなり、取り扱いが難しくなる。また、例えば、負極端子を兼ねる電池ケースが鉄で構成されている場合、アルミニウム細線を負極に抵抗溶接することは困難である。
【0026】
本願発明者等は、アルミニウム細線のジュール熱による温度上昇ΔTが、長さに依存しない点に着目し、ヒューズ部となり得る領域だけ短く形成し、他の領域を、異種金属との溶接部になり得る大きさに形成することができれば、小型で、かつ異種金属との抵抗溶接が可能なヒューズ、もしくはヒューズリンクが実現できると考えた。
【0027】
それには、アルミニウムと、例えばニッケルとのクラッド材を用意し、このクラッド材のうち、アルミニウムだけで構成された領域を、ヒューズ部に加工することによって、上記のようなヒューズ、もしくはヒューズリンクを実現することができる。
【0028】
しかし、アルミニウムの表面にニッケルを厚くメッキすることは難しく、特に、抵抗溶接に耐え得るだけの厚さのメッキを形成することは困難である。
【0029】
一方、図1(a)に示すように、アルミニウム層11上に、溶接部となるニッケル層12を積層させ、図1(b)に示すように、両者を圧接して拡散接合させることによって、アルミニウム層11とニッケル層のクラッド材を得ることができる。
【0030】
しかしながら、アルミニウム層11は、柔らかいため(展延性が大きい)ため、両者を圧接した際、図1(b)に示すように、アルミニウム層11とニッケル層12との境界で、アルミニウム層11が押し上げられる。そのため、アルミニウム層とニッケル層との境界近傍では、アルミニウム層11の厚さが変動し、このような領域にヒューズ部を形成しても、ヒューズ特性のバラツキが大きくなり、ヒューズ設計が困難になる。
【0031】
一方、アルミニウム層11とニッケル層12との境界から離れたところでは、アルミニウム層11の厚みが一定の領域があるが、このような領域にヒューズ部を形成しても、溶接部(ニッケル層)12から離れた位置になるため、小型のヒューズ、もしくはヒューズリンクを実現することはできない。
【0032】
本願発明者等は、アルミニウムの展延性を積極的に利用して、溶接部の近傍にヒューズ部を形成することのできる製造方法を見出し、本願発明を想到するに至った。
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。
【0034】
図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態におけるヒューズユニット40の製造方法を示した平面図で、図3(a)、(b)は、図2(a)のIIIa−IIIa線に沿った断面図である。また、図4は、図3(b)の矢印で示した領域4Aを拡大した拡大図で、図5は、ヒューズユニット40の構成を示した斜視図である。
【0035】
図2(a)、図3(a)に示すように、第1の金属層11の上に複数の開口部20を有する第2の金属層12が積層されたクラッド材10を用意する。
【0036】
次に、図3(b)に示すように、クラッド材10を圧延して、開口部20内に第1の金属層11の一部を押し出すことによって、開口部20内に、第1の金属層11aを埋設させる。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、クラッド材10を、ハッチングで示した所定のパターンで打ち抜く。すなわち、各開口部20内の第1の領域31をそれぞれ打ち抜くことによって、図2(c)及び図5に示すように、第1の金属層11のみで構成された、高さH、幅Wのヒューズ部41を複数個形成する。また、各開口部20外であって、第1の領域31と接続する第2の領域32をそれぞれ打ち抜くことによって、図2(c)及び図5に示すように、各ヒューズ部41の一端にそれぞれ連結し、第1の金属層11及び第2の金属層12で構成された溶接部42を複数個形成する。さらに、各開口部20外であって、第1の領域31と接続する第3の領域33を打ち抜くことによって、図2(c)及び図5に示すように、各ヒューズ部41の他端に連結し、第1の金属層11及び第2の金属層12で構成されたリンク部43を形成する。
【0038】
ここで、クラッド材10の圧延は、例えば、ロールプレス法を用いて行うことができる。また、第1の金属層11は、第2の金属層12よりも、融点が低く、かつ展延性の高い材料からなる。例えば、第1の金属層11として、アルミニウム、黄銅等を用いることができる。また、第2の金属層12としては、例えば、ニッケル、銅、鉄等を用いることができる。
【0039】
図3(b)に示すように、第1の金属層11は展延性が高い(柔らかい)ため、クラッド材10を圧延すると、開口部20内に第1の金属層11の一部が押し出される。このとき、開口部20内に押し出された第1の金属層11aの表面は、ローラによって押圧されているので、開口部20内に埋設された第1の金属層11aは、その厚さが第2の金属層12の厚さと略同一となって、開口部20内に埋設される。
【0040】
これにより、開口部20内に埋設された第1の金属層11aは、第2の金属層12の厚さで制御された均一な厚みを有する。従って、各開口部20内の第1の領域31を打ち抜いて形成されたヒューズ部41は、これを構成する第1の金属層11の厚みが一定しているため、ヒューズ特性のバラツキを小さくすることができる。
【0041】
なお、図4に示すように、開口部20内に埋設された第1の金属層11aのうち、第2の金属層12との境界に、窪みBが残る場合もある。しかしながら、ヒューズ部41を形成する第1の領域を、窪みBから離れたところに設けることによって、ヒューズ特性のバラツキに影響を与えることはない。
【0042】
上述したように、開口部20内に埋設された第1の金属層11aは、圧延前の第1の金属層11から供給されるが、開口部20内に埋設された第1の金属層11aの容積は、第2の金属層12の厚みによって定められる。従って、開口部20内に埋設される第1の金属層11aの提供に不足を生じさせないためには、圧延前の第2の金属層12の厚さTは、第1の金属層11の厚さTの1/2以下であることが好ましい。
【0043】
また、第1の金属層11の厚さTは、圧延によって薄くなるが、ヒューズ部41の高さHのバラツキを少なくするためには、圧延後の第1の金属層の厚さT’は、圧延前の第1の金属層Tの厚さに対して、40〜80%の範囲にあることが好ましい。
【0044】
ヒューズ部41は、図5に示したように、高さH、幅Wの形状をなすが、その断面積A(=H×W)は、式(1)において、短絡電流Iが流れたときの温度上昇ΔTが、第1の金属層11を構成する金属材料の融点を超えるように設定される。
【0045】
例えば、第1の金属層11をアルミニウムで構成した場合、短絡電流Iを100Aとすると、ヒューズ部41における第1の金属層の断面積Aは、0.3mm以下であることが好ましい。
【0046】
具体的な数値を例示すると、圧延前の第1の金属層11の厚みTを0.2mm、圧延後の第1の金属層の厚さT’を0.15mm、第2の金属層12の厚みを0.1mmとすると、ヒューズ部41の高さHは、0.25mmとなり、幅Wを0.5mmにすると、ヒューズ部41の断面積Aは、0.125mmとなる。そして、短絡電流Iを100Aとすると、1秒後のヒューズ部41の温度上昇ΔTは、式(1)から、約7,500℃となる。従って、アルミニウムで構成されたヒューズ部41の温度は、少なくとも1秒以内に融点(660℃)を超えて、ヒューズ部41は溶断する。
【0047】
ここで、開口部20の形状は、特に限定されず、例えば、図2(a)に示したような円形の他、矩形等の形状を取り得る。また、開口部20の面積は、特に限定されないが、10〜40mmの範囲にすると、開口部20内に埋設される第1の金属層11aの厚みのバラツキをより小さくすることができる。また、開口部20の面積を小さくすれば、ヒューズ部41を、溶接部42により接近して形成することができるため、ヒューズユニット40をより小型化できる。
【0048】
次に、図6及び図7を参照しながら、本実施形態におけるヒューズユニット40を、複数の電池が配列された電池モジュールに適用する例を説明する。ここで、図6は、電池モジュールの分解斜視図で、図7は、ヒューズユニット40を備えた電池モジュールの底面図である。
【0049】
図6に示すように、複数の電池50が、互いに千鳥状に配置されており、各電池50は、個々に、中空筒状のパイプホルダ60の収容部60aに収容されている。なお、複数のパイプホルダ60は、互いに集合、接合されて、電池50を収容するホルダを構成している。ここで、電池50の正極端子51と反対側の電池ケースの底部は、負極端子を兼ねている。
【0050】
電池50の正極端子51には、絶縁性のスペーサ(不図示)を介して、各電池50の正極端子51を電気的に並列接続する正極板(不図示)が配置されている。
【0051】
一方、電池50の負極端子側には、絶縁性のスペーサ70を介して、ヒューズユニット40が配置されている。ここで、スペーサ70には、各電池50の配列に対応する位置に、複数の孔70aが形成されている。また、ヒューズユニット40には、各電池50の配列に対応する位置に、複数の溶接部42が形成されており、各溶接部42に連結されたヒューズ部41の一端は、それぞれリンク部43に連結されている。
【0052】
図7に示すように、各溶接部42は、スペーサ(不図示)70の孔(不図示)70aを介して、各電池50の電池ケース底部(負極端子)に、抵抗溶接によって接続されている。また、各溶接部42は、ヒューズ部41を介してリンク部43に連結されているため、各電池50の負極端子は並列接続されている。
【0053】
このように、ヒューズ部41、溶接部42、及びリンク部43が一体となって形成されたヒューズユニット40を用いることによって、電池モジュールを構成する各電池50を並列接続できるとともに、内部短絡が発生した電池50を、該電池50に接続されたヒューズ部41を溶断することにより、電池モジュールから切り離すことができる。また、溶接部42を構成する第2の金属層を、負極端子と抵抗溶接が可能な材料(ニッケルなど)にすることによって、ヒューズ部41を負極端子に接続させることができる。
【0054】
図8及び図9は、本発明の他の実施形態におけるヒューズユニット40の構成を示した図で、図8(a)、(b)は、ヒューズユニット40の製造方法を示した断面図、図9は、ヒューズユニット40の斜視図である。
【0055】
図8(a)に示すように、第1の金属層11の両面に、開口部20a、20bを有する第2の金属層12a、12bを積層したクラッド材10を用意する。
【0056】
次に、図8(b)に示すように、クラッド材10を圧延して、開口部20a、20b内に第1の金属層11の一部を押し出すことによって、開口部20a、20b内に、第1の金属層11a、11bを埋設する。
【0057】
次に、図2(b)のハッチングで示したパターンと同様のパターンを用いて、クラッド材10を打ち抜く。すなわち、各開口部20内の第1の領域31をそれぞれ打ち抜くことによって、図9に示すように、第1の金属層11のみで構成されたヒューズ部41が複数個形成される。また、各開口部20外であって、第1の領域31と接続する第2の領域32をそれぞれ打ち抜くことによって、各ヒューズ部41の一端にそれぞれ連結し、第1の金属層11を第2の金属層12a、12bで挟持して構成された溶接部42が複数個形成される。さらに、各開口部20外であって、第1の領域31と接続する第3の領域33を打ち抜くことによって、各ヒューズ部41の他端に連結し、第1の金属層11を第2の金属層12a、12bで挟持して構成されたリンク部43が形成される。
【0058】
このような構成により、溶接部42の両面に、第2の金属層12a、12bを設けることができるため、溶接部42の両面を、第1の金属層11と異種の金属に抵抗溶接する際の溶接点にすることができる。また、リンク部43の両面にも、第2の金属層12a、12bが設けられているため、リンク部43を、第1の金属層11と異種の金属と抵抗溶接する際のハーネス線として用いることができる。また反対に、リンク部43の第1の金属層に異種金属である材料(例えばハーネス線のニッケル端子など)を直接抵抗溶接することもできる。
【0059】
第2の金属層12a、12bは、用途によって、異なる材料としてもよい。例えば、電池が第2の金属層12aに溶接されることが必要で、第2の金属層12bは溶接性が不要で強度のみが必要であれば、第2の金属層12aをニッケルなど、第2の金属層12bを鉄などとしてもよい。
【0060】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態においては、クラッド材10の打ち抜きを、図2(b)に示したようなパターンを用いて行ったが、これに限定されず、例えば、図10(a)〜(c)に示すようなクラッド材10の打ち抜きパターンを用いてもよい。なお、図11(a)〜(c)は、打ち抜き後のヒューズユニット40の構成を示した平面図である。
【0061】
また、上記実施形態では、ヒューズ部41の形状を、図2(c)に示したような形状にしたが、これに限定されず、例えば、図12(a)〜(e)、図13(a)〜(d)、図14(a)〜(d)に示すような形状にしてもよい。ここで、図12(a)〜(e)は、ヒューズ部41の長さを変えた変形例、図13(a)〜(d)は、ヒューズ部41の一部に、さらに断面積の小さい部分を設けた変形例、図14(a)〜(d)は、他の変形例を示す。
【0062】
また、本発明における「ヒューズニット」は、ヒューズ部41及び溶接部42のみからなる単体のヒューズや、いわゆるヒューズリンクも含まれる。また、電池モジュール以外の他の電子機器等にも、勿論適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 クラッド材
11 アルミニウム層(第1の金属層)
11a、11b 第1の金属層
12 ニッケル層(第2の金属層)
12a、12b 第2の金属層
20 開口部
20a、20b 開口部
31 第1の領域
32 第2の領域
33 第3の領域
40 ヒューズユニット
41 ヒューズ部
42 溶接部
43 リンク部
50 電池
51 正極端子
60 パイプホルダ
60a 収容部
70 スペーサ
70a 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズ部及び該ヒューズ部の溶接点となる溶接部を備えたヒューズユニットの製造方法であって、
第1の金属層及び開口部を有する第2の金属層が積層されたクラッド材を用意する工程(a)と、
前記クラッド材を圧延して、前記開口部内に前記第1の金属層の一部を押し出すことによって、前記開口部内に、前記第1の金属層を埋設する工程(b)と、
前記クラッド材を打ち抜く工程(c)と
を有し、
前記工程(c)において、
前記開口部内の第1の領域を打ち抜くことによって、前記第1の金属層のみで構成された前記ヒューズ部が形成され、
前記開口部外であって、前記第1の領域と接続する第2の領域を打ち抜くことによって、前記ヒューズ部に連結し、前記第1の金属層及び前記第2の金属層で構成された前記溶接部が形成される、ヒューズユニットの製造方法。
【請求項2】
前記工程(b)において、前記開口部内に埋設された前記第1の金属層の厚さは、前記第2の金属層の厚さと、略同一である、請求項1に記載のヒューズユニットの製造方法。
【請求項3】
前記工程(b)において、前記第1の金属層の厚さは、圧延前の厚さに対して、40〜80%の範囲にある、請求項1に記載のヒューズユニットの製造方法。
【請求項4】
前記開口部の面積は、10〜40mmの範囲にある、請求項1に記載のヒューズユニットの製造方法。
【請求項5】
前記開口部は、複数個形成されており、
前記工程(c)において、
前記各開口部内の第1の領域をそれぞれ打ち抜くことによって、前記第1の金属層のみで構成されたヒューズ部が複数個形成され、
前記各開口部外であって、前記第1の領域と接続する第2の領域をそれぞれ打ち抜くことによって、前記各ヒューズ部の一端にそれぞれ連結し、前記第1の金属層及び前記第2の金属層で構成された溶接部が複数個形成され、
前記各開口部外であって、前記第1の領域と接続する第3の領域を打ち抜くことによって、前記各ヒューズ部の他端に連結し、前記第1の金属層及び前記第2の金属層で構成されたリンク部が形成されている、請求項1に記載のヒューズユニットの製造方法。
【請求項6】
前記クラッド材は、前記第1の金属層の両面に、前記開口部を有する第2の金属層を積層した構成をなしており、
前記工程(c)において、
前記各開口部内の第1の領域をそれぞれ打ち抜くことによって、前記第1の金属層のみで構成されたヒューズ部が複数個形成され、
前記各開口部外であって、前記第1の領域と接続する第2の領域をそれぞれ打ち抜くことによって、前記各ヒューズ部の一端にそれぞれ連結し、前記第1の金属層を前記第2の金属層で挟持して構成された溶接部が複数個形成され、
前記各開口部外であって、前記第1の領域と接続する第3の領域を打ち抜くことによって、前記各ヒューズ部の他端に連結し、前記第1の金属層を前記第2の金属層で挟持して構成されたリンク部が形成されている、請求項1に記載のヒューズユニットの製造方法。
【請求項7】
第1の金属層及び第2の金属層からなるクラッド材で構成されたヒューズユニットであって、
前記第1の金属層のみで構成されたヒューズ部と、
前記ヒューズ部に連結し、前記第1の金属層及び前記第2の金属層で構成された溶接部と
を有し、
前記ヒューズ部における前記第1の金属層の厚さは、前記溶接部における前記第1の金属層及び前記第2の金属層の積層厚みと、略同一である、ヒューズユニット。
【請求項8】
第1の金属層及び第2の金属層からなるクラッド材で構成されたヒューズユニットであって、
前記第1の金属層のみで構成された複数のヒューズ部と、
前記各ヒューズ部の一端にそれぞれ連結し、前記第1の金属層及び前記第2の金属層で構成された複数の溶接部と、
前記各ヒューズ部の他端に連結し、前記第1の金属層及び前記第2の金属層で構成されたリンク部と
を有し、
前記ヒューズ部における前記第1の金属層の厚さは、前記溶接部及び前記リンク部における前記第1の金属層及び前記第2の金属層の積層厚みと、略同一である、ヒューズユニット。
【請求項9】
前記第1の金属層は、前記第2の金属層よりも、融点が低く、かつ展延性が高い材料からなる、請求項7または8に記載のヒューズユニット。
【請求項10】
前記第2の金属層の厚さは、前記第1の金属層の厚さの1/2以下である、請求項7または8に記載のヒューズユニット。
【請求項11】
前記第1の金属層は、アルミニウムで構成され、前記ヒューズ部における第1の金属層の断面積は、0.3mm以下である、請求項7または8に記載のヒューズユニット。
【請求項12】
前記第1の金属層はアルミニウムで構成され、前記第2の金属層はニッケルで構成されている、請求項7または8に記載のヒューズユニット。
【請求項13】
前記溶接部は、前記ヒューズユニットを、前記第1の金属層と異種の金属に抵抗溶接する際の溶接点となる、請求項7または8に記載のヒューズユニット。
【請求項14】
複数の電池が配列されて構成された電池モジュールであって、
第1の金属層及び第2の金属層からなるクラッド材で構成されたヒューズユニットを備え、
前記ヒューズユニットは、
前記第1の金属層のみで構成された複数のヒューズ部と、
前記各ヒューズ部の一端にそれぞれ連結し、前記第1の金属層及び前記第2の金属層で構成された複数の溶接部と、
前記各ヒューズ部の他端に連結し、前記第1の金属層及び前記第2の金属層で構成されたリンク部と
を有し、
前記ヒューズ部における前記第1の金属層の厚さは、前記溶接部及び前記リンク部における前記第1の金属層及び前記第2の金属層の積層厚みと、略同一であり、
前記各溶接部は、前記各電池の電極部に抵抗溶接によって、それぞれ接続されているとともに、前記リンク部によって、前記各電池の電極部が並列接続されている、電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−30393(P2013−30393A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166454(P2011−166454)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】